トヨタの機械安全 - jmf 一般社団法人 日本機械工業連 ライド 1...

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スライド 1 トヨタの機械安全 トヨタ自動車㈱ 安全健康推進部 部付 主幹 宮川光雄 08.1.29 日機連講演会 ~生産技術部主体の取り組み~ トヨタの宮川です。昨年お話したものをベースに、現在トヨタ自動車では生産技術部が設 備安全に主体的に取り組んでいますので、そのへんのプロセスについてお話したいと思い ます。従って昨年と同じ部分があるかもしれませんが、その点はご容赦いただきたい。

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Page 1: トヨタの機械安全 - JMF 一般社団法人 日本機械工業連 ライド 1 トヨタの機械安全 トヨタ自動車 安全健康推進部部付 主幹 宮川光雄 08.1.29日機連講演会

スライド 1

ト ヨ タ の 機 械 安 全

ト ヨ タ 自 動 車 ㈱

安全健康推進部 部付

主 幹 宮 川 光 雄

08.1.29 日機連講演会

~生産技術部主体の取り組み~

トヨタの宮川です。昨年お話したものをベースに、現在トヨタ自動車では生産技術部が設

備安全に主体的に取り組んでいますので、そのへんのプロセスについてお話したいと思い

ます。従って昨年と同じ部分があるかもしれませんが、その点はご容赦いただきたい。

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スライド 2

安 全 活 動 の 経 緯

未然防止再発防止

法 対 応

再 発 防 止(個別対応)

未 然 防 止(包括対応)

・心得カード作成・周知等

・再発防止策設定・展開

・徹底度向上/対策充実‥等

第1フェーズ‥90年代~

⇒包括対応基礎づくり

第2フェーズ‥00年代~

⇒本質安全化の展開

法対応

S50年代 平 成 年 代S40年代~S30年代

生技主体の

安全設計

トヨタ自動車の戦後の安全活動の経緯ですが、昭和20、30年代はいわゆる法対応の時

代で、昭和40年代になりますと、自動化というものが急速に進み、怪我の発生状況がか

なり変わってきました。ただし、この時代は起きたものにたいしてモグラ叩きのごとく対

処しておりまして、ヨーロッパ流に言わせるとオールドアプローチの時代でありました。

そこで、これではいかんということで、平成年代にはいりまして、包括的対応に切り替え

ていったということです。包括的対応をやり始めたので、生産技術部のやるべきことも分

かってきたわけで、今では生産技術部が主体的に取り組んで設備安全をリードしているわ

けです。この包括的対応は、90年代の包括対応の基礎づくり、2000年代の本質安全

化の展開の大きく二つに分かれますので、このスッテプで話を進めたいと思います。

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スライド 3

包括的対応の基礎づくり

<第1フェーズ>

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スライド 4

包括的対応の必要性

事後対応、個別対応には限界

全機械対象に、網羅的に事前対応

【当時の状況】

【 背 景 要 因 】

・全災害300件前後で推移 ・時に大きな災害

‥80年代末頃

①点検表では摘出できない危険箇所・作業で発生

②機械・工程により

安全仕様にバラツキ

③新技術に適用する

安全規格が無い

ルール違反誘発

包括的対応の必要性ですが、80年代末頃は全災害が300件前後で推移し、時に大きな

災害が起きるというような状況でした。背景要因としては、個別対応時代はチェックリス

トに基づき個別に対応していたのですが、場合によってはチェックリストでは発見できな

い箇所あるいは作業で大きな災害が起こってくる。それからロボットや NC 機といった従

来と異なる制御機器が入ってきて、これらの安全対策レベルが入れるところによってまち

まちであるといった問題がありました。それから91年に全社の機械の総点検を実施した

ところ種々の問題点があちこちで出ました。そういうことを含めて、起きたものにたいし

て手を打って、そして徹底するということは必要ではあるが、それだけではやはり限界で

あるとのことで、事前に全機械、全作業対象について網羅的に 近の言葉でいえばリスク

を出して手を打っていくという取り組みが必要であろうと包括的対応ということでやった

わけです。ただし現在の包括的指針別表1にある11の危険源リスト全て対象ではなく、

この当時の部品メーカーを含む自動車工業会の過去死亡事故に基づく6項目の危険源に絞

ったストップシックスという形がとつかかりでやってきたわけです。

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スライド 5

全社安全設計検討会 ショップ別安全設計検討会

安推部担当役員(専務) 生技部担当執行役員

生技部長

ショップ別検討会事務局生産技術標準事務局

生技・製造・安全スタッフ代表

全社要件・レベルの設定問題解決の場

全社要件等の具体化ショップ固有の問題解決

安全健康推進部 チーフ指名

委員長

チーフ

委 員

役 割

事務局

安全設計検討会の設置

91年 会社総括安全衛生管理者

機械安全は生産技術部門の責務

そういった中で、91年に会社総括安全衛生管理者から「機械安全は生産技術部門の責務」

であるとのトップポリシーをいただいて活動を開始したわけです。そこで全社要件・レベ

ルの設定や問題解決の場の役割をもつ安推部担当役員をトップとし、事務局を安推部が務

める「全社安全設計検討会」と、沢山な工程ショップがありますが生技部担当役員がトッ

プを務め、全社要件等の具体化およびショップ固有の問題解決の場となるショップ別に生

技部主体の「ショップ別安全設計検討会」というものを設置したわけです。ここで事務局

の安推部は、沢山な工程ショップの全権代表といった位置づけです。というのはプレス、

機械、鍛造、鋳造等のショップを縦割りでやりますとどうしても個別対応となってしまい、

会社として包括的に対応できないので、横櫛で安全を見ている私達安全スタッフが任を全

うしなければならないというわけです。

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スライド 6

検討会での問題点

~ 言 葉 が 通 じ な い ~

【背景要因】‥ それぞれ立場が違う

①職場内の全機械

②災害の低減⇒受入可否の決定

安全スタッフ(使用部署)

生産技術各部

①担当ショップの機械

②リスクの低減⇒災害は現場の問題

設計値/規格ベース

確率論⇒残留リスクの許容

管理値/ルール遵守

確定論⇒残留リスク不可

進め方

先ほど非常に沢山の不具合が出てきたとの話をしましたが、その当時全工場で約10万台

の設備で約7万件の不具合がでてきました。その不具合というのは、個別規格を守ってい

ないということではなく、その点検というのは管理の見方で点検したものであり例えば高

さ1400という個別規格を守った安全柵は入ってくるが、中継ボックス付きの安全柵も

入ってくる。そうした場合乗り越えようとしても乗り越えられないようになっているか?

の点検シートで不具合となるケースがあるということです。そのように検討会での問題点

として、生産技術部と安全スタッフ(使用部署)でそれぞれ立場が違うことにより、言葉

が通じないということです。従ってそれぞれの立場が違うことをわきまえてきちんと議論

する場を設けることが大事であると痛感しています。例えば生産技術部は自分が担当して

いるショップの機械しか頭にありません。使用部署のほうはショップの全機械が対象であ

りそれらを纏めて使う人の安全という形でみています。それから生産技術部の人は 終的

にはリスクの低減です。災害防止のためにリスク低減は必要ですが、災害防止は結局は使

用部署が決めざるをえません。それは何故かというと、生産技術部あるいはメーカーさん

は、残留リスクは許容できますねとなるが、我々使用部署は残留リスクも不可なのです。

例えば高いところがあります。これは5年とか10年に一回です。ですから昇降設備はつ

けませんでしたとメーカーさんは言えるわけです。ところが、災害は10年後かもしれな

いが、明日にも起こるかも知れないので使用部署としては対処しなければならないという

ことがおこるわけです。そういうことを考えて 終的にリスクを受け入れるかどうかは使

用部署が判断しなければならないということです。それが逆にいうと生産技術が今まで主

体的にアクションがとれなかった背景でもあるのではないかと考えられます。

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スライド 7

主 な 論 点

やらない

判断ミス

認知ミス

不 安 全 行 為

不 安 全 状 態

・手段無し

・誤作動

・強度不足等

機械不備がルール違反誘発

やれない

知らない

伝わらない理解できない

どんなところで言葉が通じなかったということですが、災害の主原因は不安全状態、不安

全行為があり、圧倒的に不安全行為が多いといわれています。この不安全行為の背景とな

っている やれない、知らない、認知ミス、判断ミス、やらないといったものが機械の不

備が誘発しているケースが多いということが、なかなか理解できないため伝わらないとい

うことです。設備の誤作動とかいったものの情報はよく入ると思うのですが、こういった

情報はなかなか入ってこないと思います。

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スライド 8

具体例に基づく議論

やれない (ルールが守れない)

①ハード面不良

◆手段が無い(残圧抜き弁無し等)

◆止められない構成 ◆止めると作業が出来ない構成・・・

②人的過負荷(ムリ)

◆肉体的にムリ

◆行動特性上ムリ (咄嗟の行為等)

◆不安・心配で止められない

・止めると新たな異常発生? ・復帰出来ないかも?・・・

「やれない」の具体例ですが、残圧を抜けといわれても抜き弁がないためできない。止め

ろといわれても止められない。あるいは、止めると作業ができないといったハード面の不

良がある。人的過負荷では、肉体的、行動特性上はいいとして、不安心配で止められない

といった特にこのへんですね。止めると新たな異常が発生するかもしれない、止めると復

帰できないかもしれない。これらが、ルール違反、ルールを守れないといったことを誘発

しているのではないかということです。

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スライド 9

知らない

非常停止釦で止める?

却って危険‥!・自重で下降する

・刃具が破損/飛散する

・品質異常が発生する等

何れのスイッチで

止める?

止めるルールの徹底

停める ⇒ウエイト

止める ⇒ストップ(停止Cat0、1)

「知らない」ですが、もともとそんなものは現場の仕事でしょうというわけです。その当

時、現在も自動車業界での災害防止で 重要なのが機械を止めるということで、徹底しよ

うということになった。ところが、非常停止釦で止めてくれにたいし、却って危険だとの

意見噴出であった。それではどうすればいいのか?どう教えればいいのか?そこを答えて

くれない。そこで、人と機械が接触しても良い停止状態というのはいったい何なんだろう

ということですね。トヨタの場合、「とめる」は「停める(ウエイト)」「止める(ストップ)」

で、ストップで接触を許可しようとなった。今流で言えば、IEC60204 に停止カテゴリーの

定義がありますが、停止カテゴリー0、1で接触を許可しようとなったわけです。そこで

ようやく停止についての議論ができるようになったわけです。従ってメーカーさんあるい

は生技は、新しい設備を導入するさいに、停止スイッチについては停止カテゴリーいくつ

との使用情報を提示いただきたい。

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スライド 10

認知・判断ミス

停止範囲の誤認・・・

作業終了迄に、停止/起動回数が多い‥セフティブロック等

惰性時間が長い、待てない

操作盤が遠い

機内進入時、止める機械台数が多い

復帰に時間を要する‥処置10秒、復帰に10分等

頻発停止(チョコ動き)

やらない (ルールが守り難い)

「認知・判断ミス」ですが、停止範囲を間違えるということで、この当時、今もですが自

動車業界の「挟まれ」の災害情報をもらいますと、災害の起こる作動部の位置はどこにあ

るかというと、それは原位置にある。プレスでいうと上死点にあります。その状態で異常

があって中に入り、不意の起動で挟まれるといったケースです。スライドのストローク途

中で停止していて被災するというものはまれです。従って上死点にあるときは起動釦を押

さないと動かないと認識していますから、動かないと誤認してしまうということです。見

た目止まっているが、制御的には動けといっている、当時トヨタではこれを「だんまり停

止」と呼んでいました。それでは「だんまり停止」でないことはどこを見ればわかるのか?

わからないのです。こういったところもなんとかしようではないかと議論に入っていった

わけです。「やらない」ですが、このさいたるものにプレスのセイフティーブロックがあり

ます。私は、二年前から地域の安全指導をやっていますが、プレス工場を見させてもらう

とこのセイフティーブロックを使用しているか、使用していないかは外観、塗装のはげ具

合で一目瞭然です。また使用していないのが圧倒的に多いのです。その他、待てない、操

作盤が遠い、止める機械台数が多い、復帰に時間を要する、頻発停止(チョコ動き)とい

ったものがあります。地域の安全指導をやっての例ですが、案内された設備ラインを見さ

せてもらって、足跡がかなり多いのでこの設備の稼働率を問うたところ、85%というこ

とでありました。これを聞いて皆さんどう思いますか?一日の時間の15%は災害が起こ

る不安があるということです。生技の間では85%は問題になりますが、安全の分野では

この数値が問題となりませんでした。こういったところの問題提起をして議論を進めてき

ました。

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スライド 11

方 向 性 の 合 意

①人を主語に、機械安全の要件の明確化

②憲法的位置づけの規格制定・運用

・安全対策は、人に対して為されるものである

・人は、全機械に共通する

・全機械に適用する必須要件・レベルの明確化

・手段提示型規格から脱却

そのなかで合意を得たところはこんなところです。きわめて当たり前なのですが、安全対

策は人にたいして為されるものであるということです。非常停止したらものが壊れて飛ん

でくるなんだかんだはおかしいです。非常停止かけるのは人間だけではないですよね。雷

がなって電力会社がダウンして、ネズミがかじっても非常停止がかかりますよね。だから

おかしいことです。ただしこの理解をえるのに約10回の打ち合わせ、3~4 ヶ月かかりまし

た。もう一つは、包括的対応をしようとすると、人はどの設備も共通なので、人からみて

やりましょうということです。この背景には、トヨタは結構工程間の人の移動が激しいと

いうこともあると思います。それから、おなじつくるなら憲法的な規格をつくろう、また

それを絶対守るようにしようではないかと彼らもいってくれたので、それには今までの様

な手段提示型の規格でなく、必須要件・安全レベルを提示するものとしたわけです。

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スライド 12

ト ヨ タの安全設計原則

①機械は、人の安全確保の要求に

応えられる手段を有する

②手段は、人を騙さない

⇒信頼度、保証度の確保

③使い易い手段の構築に努める

そこで、安全設計の原則ですが、ここに示した順番で説明責任を果たしてくれ、これが設

備を導入したときのあなた方の責任だよとしたわけです。

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スライド 13

安全確保の要求

災 害

機 械 人

=安全確保の要求=

①運転中は、人と機械は隔離

②人が止めて入る

③止めた者の意思で停止維持

④人の意思で起動

要求毎に、安全

設計原則に基づき

基本規格制定

安全確保の要求項目としては、ここに示した4つと考えられるということです。これを基

に基本規格というものをつくりました。先般包括指針が改定されましたが、実はそれぞれ

に対応するように分割しており込んでいます。それは、包括指針はどちらかというと機械

のリスク低減のスペックでメーカーさん向け指針でありまして、安全に使うということを

考えると、こういった切り口で整理する必要があるのではないかということです。こうや

って決めるということは、ルールを徹底する原点になるということです。わかり易い例で

いいますと、止めるという話ですが、このスイッチで止めるんですよということを明確に

すれば、今度はこのスイッチを使えということを言っていかなければならない。使えない

時はどうするんだよといったルールも決めて徹底していかなければならない。ということ

で、いまだにこだわってトヨタの基本規格を作成して展開をしております。

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スライド 14

規格の構成・骨子

ライド 15

規格の階層化

=海外・国内==ト ヨタ=

・ISO12100安全設計原則

・ISO14121リスクアセスメント

・リスクアセスメント実施要領

・非常停止基本規格・隔離対策基本規格・他人の誤操作防止基本規格・起動装置基本規格

・動力源/動力遮断規格

・隔離対策細部規格‥等

・ロボット、コンベア‥等

・分野別規格

包括指針

・各種構造規格

・個別JIS規格等

(94年運用開始)

JIS(A・B)

指針類

国際規格との整合化実施

トヨタも94年からこういった形で規格の運用を始めております。個別規格Cは各生産技

術部が自由につくる規格で、安推部が主管している基本規格 A、要素規格Bの内容は必ず守

らなければならないとしています。逆にいうとC規格は自由につくってよいが、A、B規格

の内容の説明責任はきちっと果たしてくださいということです。こういうかたちで運用を

はかっております。もちろん、国際規格関連とも整合化をはかってやっております。

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スライド 16

規 格 の 特 徴

作業者も管理・監督者もルールを守り易く‥!

A:人と機械の隔離‥別表3①可動範囲の設定

②機械の全周隔離

③全モード物的隔離‥等

B:機械を止める‥別表2,4

①止める手段は

非常停止に統一

⇒動力遮断&急停止

②止め易い構成

③同一隔離・同一停止‥等

非定常作業時等の管理・監督者のポカヨケ

・指導・訓練が行い易い・ルールの遵守度向上

規格の特徴ですが、まず人ということですが、作業者だけでなく管理・監督者も含めて考

えているということです。先ほどいいましたが、非定常作業時の管理・監督というのは、

15%の部分の作業がいつどこでおこるか分らないわけですので、これを管理・監督者に

ちゃんとやれと要求するのは非常につらいわけです。ですから可動範囲をきめたら全周か

こってしまえ、プレスのキースイッチのごとくのモードを管理することは止めて全モード

有効にしてしまおうということで負担減をはかっているということです。あるいは止める

というはなしなのですが、指導・訓練が行い易いよう、ルールの順守が守り易いようにし

ようではないかということで、止める手段は非常停止釦に統一しました。全設備この非常

停止釦で動力遮断、緊急停止の要求にこたえるものにしようではないかのコンセンサスを

えました。これが決まれば止めやすい構成もできるということです。

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スライド 17

停止カテゴリーと止め易さの工夫例

記憶装置

演算装置

表示装置

検出機器

安 全 関 連 制 御 装 置

非常停止釦

ガードI/L 機器

保 護 装 置 ‥エリアセンサー等

制御装置

【停止カテゴリー:別表2解説】

カテゴリー0

カテゴリー1

カテゴリー2 HOLD停止等

要ロックアウト

(別表4)

制御カテゴリー2以上 (別表2)

停止カテゴリーですが、電源部はカテゴリー“0”、安全関連制御装置部はカテゴリー“1”、

制御装置はロボットでいえばホールド停止でこのところはカテゴリー“2”と考えていま

す。トヨタの場合は神経系と筋肉系は分けまして、カテゴリー“0”では止めますが、カ

テゴリー“1”では筋肉系は止めますが、神経系は生かしておきます。何故かというとこ

れも止めますと、異常処置とか復帰というのが非常に大変、すなわち演算装置が壊れて原

点復帰に非常に時間がかかる、表示装置が切れると故障原因がわからないモニターできな

い、検出装置の調整ができないといったことが発生するからです。従って、ここさえおさ

えれば、神経系はいいでしょうとしたわけです。現実、種々の会社さんにいきまして、こ

のスイッチで止めますと説明をうけますが、スイッチがごく奇麗な状態で押して止めた痕

跡がないのが大部分です。現場に行ってよく聞きますと先ほどの復帰が大変とのことで止

めていないと話してくれます。従ってきちんと分けてやりましょうということです。

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スライド 18

C:止めた状態の維持‥別表3

リスクに応じて、他人の誤操作防止策設定

リスク 評価の視点

・頻度‥高頻度

講じる防護方策

・全身が防護物内進入

・頻度‥低頻度・全身が防護物内進入

・常時保護検知・極小機械

進入作業者を検知する保護検知装置を追加設置

ロックアウトを標準(04年)中

低 未実施可

危険源ロックアウト 非常停止釦ロックアウト ガードI/L機器ロックアウト

止めた状態の維持ですが、リスクアセスメントをしましてロックアウトは標準装備にしま

した。全身が防護物内に入る場合で高頻度のリスクが高いケースは特別な保護検知装置を

設置することにしました。このようにして止めたものが止めたところで停止状態を維持す

るという考え方を展開しております。

スライド 19

D:起動時の安全‥別表2

①不意の起動防止

②運転前の安全確認が容易な構成等保護装置作動後は

Hiリスク機械には「起動警報」

・ブザー、音声、光で警報

機械的解除 電気的解除 起動可

起動時の安全ですが、これは時間の関係で説明は省略させていただきます。

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スライド 20

本質安全化の推進

<第2フェーズ>

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スライド 21

第1フェーズの課題と対応

【 課 題 】

基本規格制定後の新設機での災害ゼロ

<課 題> ①防護物無効時の災害防止

②生技部門の閉塞感

⇒遵守徹底型の限界

③CSRの要求・国際競争力確保

【 対 応 】

①徹底した本質安全化の追及、継続した展開

②自主性、自己責任に基づく安全設計・機能保証

リスクアセスメント実施要領制定

第一フェーズの課題と対応ですが、まず災害がどう推移したかととのことですが、90年

代の初めに約300件程度あった災害が2000年初めに170~180件程度に減少、

先ほどの重点6項目の災害が、スタートのときは年間80件ぐらいが2000年に25件

ぐらいに減少、なにより基本規格制定後の新設機での設備がらみの災害はゼロで一定の成

果をあげてはいました。問題となるのは、防護があるのだが、無効化することがどうして

もゼロにはできない。また、決められたことを決められたとおりやっているのは、評価は

あまりされないが、使い勝手の点で苦情はあるなどの状況での生技部門の閉塞感、一方国

内でも CSR,95年の CE マーク強制認証の適用ということで、国際競争力を確保しなけれ

ばならないということです。そのため RA にもとづいて活動を展開していこうとなった。こ

の RA の目的は、まず徹底した本質安全化の追求、継続した展開で、すなわちきちんと評価

していこうということと、ラインの長、あるいはラインのセクションのひとがそれぞれ責

任をもって自主性、自己責任に基づき安全設計・機能保証ができるようにすることという

考えかたで本質安全化を取り組んだものです。

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スライド 22

本 質 安 全 の 概 念

=トヨタの本質安全=

安心してモノづくりに集中できる現場づくり

推進のコンセプト

人のムリ・ムラ・ムダ排除

標 準 化定 着 ・ 徹 底

レベルアップ

本質安全

第一フェーズの対応

第2フェーズの対応

~ゼロの確かさ向上~

本質安全の概念図ですが、第一フェーズではトヨタのマネジメントである標準化 定着・

徹底 標準外れのあらだし対応のなかで、防護のための 低基準を決めてきた。ところが

先ほどの防護装置を無効化の件等があり、さらにゼロの確かさの向上、本質的に安全の確

かさを高めていこうとの取り組みが必要になってくる。そこでトヨタの本質安全としては、

書いたものはないのですが、安全というのは、モノづくりそのものということで、安心し

てモノづくりに集中できる現場づくり、それから推進のコンセプトは人のムリ・ムラ・ム

ダ排除ということです。

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スライド 23

接触頻度リ ス ク

①危険源の大きさ・傷害の型

②作用する身体部位・範囲・

時間‥等 ①危険状態の発生確率

②危険事象の発生確率

①危険事象認知の難易

②回避の時間的・空間的

余裕度‥等

見積り視点

傷害の大きさ 危険の回避性

①出力・推力低減

②間隙の確保等

機械のシンプル・スリム化

頻発停止低減作業のシンプル・スリム化

本質安全化の追求

使い易さ・保全性向上

作業の本質安全化機械の本質安全化

本質安全化の視点

防護不要に挑戦

本質安全化の視点ですが、当然のごとく RA の視点でやってきたわけです。

スライド 24

例1:「防護有りき」からの脱却

動力・電気・墜落の危険源への防護要

防護不要

①工事等の安全向上②CO2低減③スペース効率向上④投資額低減

教育・訓練/管理・監督の負担減

ランニングコスト低減

その主な事例ですが、エンジンのコンロッドを運んでいるエレベータです。以前は200

V/40Wのモーターでしたが、これだと防護要ですが、これをDC24V/20W・4

0Wのモーターにしますと防護不要のレベルです。付随的に教育・訓練/管理・監督の負

担減となり、ランニングコストも低減します。コスト面ではイニシャルコストだけでなく

ランニングコストを含めた低減の視点も重要です。

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スライド 25

例2:トップポリシーに基づく活動

生技部門の例

1.明確なトップポリシー①保全作業のバリアフリー②図面段階で安全仕様決定

2.現地現物でリスクアセスメント①生技、メーカー、保全、安全スタッフによる場の設定②検討回数:約40回

3.進め方

既設機の全保全作業摘出

保全員の動線を特定危険源摘出

本質的排除・低減

これは、データーが2000年とちょっと古いのですが、トップポリシーに基づく活動と

いうことで、生技部長が自動化ラインを造るなら、稼働率は保全で稼いでいるのだから保

全屋さんが仕事に集中できるように保全作業のバリアフリーをやろうではないか、また図

面段階での安全仕様決定すなわち後からの設置は許さないとの明確なトップポリシーを打

ち出しまして、このようなメンバーで合計40回の RA を実施、一回あたり6~7時間かか

ります。毎回出席率はよかった。これは自分達の仕事場をよくすることですから、保全の

人などは喜んで参加していました。このやり方は、既設機の全保全作業を摘出し、保全員

の動線・危険源を特定し、本質的に排除・低減するものです。

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スライド 26

【対策事例】

推力:1500N推力:250N

ピットの排除

低推力化

これがその例です。ピットがあるものは、これを排除しよう。低推力化では、昔はリニア

搬送、トランサーバによる一括搬送など大きな推力でやっていました。これをフリクショ

ンコンベア方式の採用ということで推力を小さくする。

スライド 27

ロボット修理用Iビーム設置 ティーチ足場設置

動線上の歩行障害物排除

簡易のケーブルクレーンでロボットを交換していたあぶない作業に修理用 I ビームの設置、

ティーチ用足場の設置、動線上の歩行障害物排除の例です。

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スライド 28

コーナー部面取り

通路への突起物排除

手摺りと固定物の間隙確保

コーナー部面取り、通路への突起物排除、手摺りと固定物の間隔確保といった例です。

スライド 29

4.実施結果-1

0

1

2

3

4

5設備の専有面積

設備の高さ

制御ゾーン数

危険源数

動力源数

自動化レベル

搬送数

搬送推力

搬送部位のアクチュエータ数低推力化レベル

搬送パワー効率

使用電圧

熱源レベル

発生物質数

最大騒音レベル

最大振動レベル

有害物質使用レベル

0

1

2

3

4

5動力遮断レベル

残圧対策レベル

落下防止対策レベル

慣性対策レベル

隔離対策レベル(1)

時間的隔離対策の有効レベル非常停止回路カテゴリー

墜落対策レベル

ロボット対策レベル

感電対策レベル

隔離対策レベル(2)

<1>本質安全度 <2>設備信頼度

<3>使い易さ度

0

1

2

3

4

5加工部位の見易さ

非常停止装置の設置位置

非常停止後の停止時間

非常停止範囲の認識

操作盤数

各個操作の手順数

操作盤の機能

バックアップ作業数

手動用落下防止対策数

手動用残圧対策数

復帰方法隔離範囲のラップ数隔離範囲内へのアクセス方法

操作盤からのアクセス距離

起動時の設備の見易さ

起動手順数

安全装置数

定期保全作業数

アクセス方法(号口)

アクセス方法(保全)

最低通路幅

最低通路高さ

バリアフリー度

本質安全度、設備信頼度、使い易さといった指標に示したのがこれです。何故指標にした

かというと、99年ころですので RA は欧州へのお付き合いの一面がありましたが、努力し

た評価の指標が必要だったわけで、またこの項目が本質安全化を進めることに有用と考え

たからです。ただし使い易さ度を今後マネジメントにどの様に使っていくかと考えている

ところです。

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スライド 32

0

0.5

1.0

設備面積

設備高さ

制御ゾーン

危険源数

搬送数

設備投資

使用エネルギ

旧ラインとの比較(旧ライン=1.0)旧ライン

新ライン

4.実施結果-2

本質安全化は地球環境対策

これは、設備投資に係る各種仕様です。それぞれが約半減しておりまして、設備投資も約

半減しています。これはロボットによる自動化ラインの例でして、以前は設備投資が約百

億円強でした。使用エネルギーも約半減しておりまして、本質安全化は、災害防止になる

だけでなく地球環境対策にも寄与することがわかります。

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スライド 35

例3:管理面の本質安全

手間、時間を要するものは、守り・守らせ難い…!

管理・監督リスクが高いランニングコストを要するものは

保護方策決定の考え方

リスク評価は必須

管理・監督のリスクも考慮して最終決定

~全体最適の追及~

管理面の本質安全ですが、手間、時間を要するものは守り・守らせ難く、ランニングコス

トを要するものは管理・監督リスクが高いということで、トヨタの保護方策決定の考え方

は、RA は必須だが、管理・監督のリスクを考慮して全体 適の観点で 終決定しています。

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スライド 36

【例1】安全制御部のユニット化&制御カテゴリー2以上

⇒設計・製作時の機能保証の精度確保&時間短縮

⇒機能維持管理の負担減&点検時間短縮

【例2】国内外全拠点の安全仕様統一

▼物的面

⇒設計・製作時の機能保証の精度確保

⇒予備品在庫のムダ排除/保全管理の負担減

▼人的面

⇒保全・安全教育のやり易さ向上、資料作成等の負担減

【例3】防護構造物等は、高カテゴリー対応

⇒改造時の問題発生(Lowリスク→Hiリスク)回避

一つの部で約2000~3000台の機械設備があり、その他たくさんの部で工場が構成

されているわけで、安全装置の在庫管理はどうするのか?保全時の取り付け交換時のミス

をどうするのか?なにより世界各地で生産しているわけだから、できるだけシンプルにす

るとの考え方です。

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スライド 39

第2フェーズ総括

スライド 40

本質安全のインセンティブ

機械、作業自体が良くなる

職場の知恵の結集

技術開発の促進

コスト、工数低減に寄与

達成感、充実感の享受

⇒安心して作業に集中

⇒リスク認識の共有化

⇒閉塞感の打破

企業、職場の体質強化、活力向上に寄与

機械、作業自体が良くなることにより安心して作業に集中できる。職場の知恵の結集で RA

を実施しますから、リスク認識の共有化がはかれ、RA をきちんとやることは安全教育の場

であり、職場の安全レベルがあがります。また技術開発の促進にもつながります。例えば

ヒンジ型から蛇型のロボットに切り替えることも含めて技術開発を進めています。その他

コスト、工数低減に寄与し、評価されますので達成感、充実感が享受され、本質安全化を

つうじて企業、職場の体質強化、活力向上に大きく寄与していくと考えています。

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スライド 41

本質安全化推進の背景

【意識面】‥究極点指向の活動

リスクの概念に基づき、災害ゼロの確かさ向上

「目的:災害防止」からの脱却(必要条件の一つ)

【プロセス】

社内基本規格遵守は必須

⇒本質安全化への動機付け、背水の陣

規格の階層化

⇒技術屋の知恵が出せるインフラ整備

⇒A,B規格は、生技開発時の安全立証の根拠

そういったことが何故できたのかというと、リスクの概念に基づきある一定レベル以下の

リスクは受け入れてきたということです。日本人は、危険ゼロすなわち絶対安全をかなり

追及しますので中々言えなかったわけですが、これをリスク1以下はいいとはっきり言っ

たということです。これが本質安全につながったということです。だから災害が起きても

いいかというそういう話ではないです。安心・安全というのは究極の目標であり、逆に言

うと安心・安全をしては、安心・安全の職場になることに近づけないということです。よ

く言われるのが災害発生の一里塚の話であり、無災害記録を達成直後またはフライイング

ぎみにその直前に災害が起こることが多いということが物語っているのではないでしょう

か。災害が起きたあと心配だから注意しているが、5年、6年、10年とたつとやること

があたりまえとなり、慢心して気がついたらやられていなくて災害がおきた。これを無く

するにはどうしらよいか?安心・安全をしてはいけないということであり、災害ゼロはな

いというリスクの概念を忘れてはいけないということではないでしょうか。それから、安

全対策というと災害防止、安全装置を付ける、ルールを守るという話なのですが、これは

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必須条件だがもっと本質的に発生源対策をしようではないかという話です。安全の全はす

べてという字ですね。私たちのすべてでありますし、会社のやることのすべてであります

し、安全をとおしてきちんとアプローチして、それぞれがやり易くしていこうということ

ではないかということです。そこでプロセスとしては、規格の階層化をして、ここでは省

略してありますが、かつコストアップはまかりならないという言葉がこの後についている

のです。だから生技も本質安全を追求しないとコストアップになるのです。上司に説明し

ないといけませんし、昔ならレベルダウンとの話もありましたが、今は A,B 規格は絶対守

れ、生技部長は首をかけてこいとのトップの姿勢ですので、ごまかすことは出来ないので

す。そうすると一生懸命に本質安全を考える動機付け、背水の陣となるわけです。ですか

らメーカーさんも安全装置をつけましたが、他社さんよりも安いですといって頂ければ絶

対に売れますので是非お願いしたいと思います。それから規格の階層化は技術屋さんが守

るべき A,B 規格はこれですと提示しているわけだから、仕事は非常にやり易いのでインフ

ラ整備になるわけです。

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スライド 42

機械安全のマネジメント

スライド 43

マネジメントの基本三軸

要求事項レベル決定

標準化周知徹底

確実な機能保証

標準公開システム

教育体制

安全衛生機能保証体制

標準化体制安全設計検討会

そのためのマネジメントシステムを簡単に紹介させていただきますと、先ほど紹介しまし

た安全設計検討会、その外に標準化体制、機能保証体制といったものを設置しています。

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スライド 44

安全設計検討会と標準化

電気専門委員会

油気圧専門委員会

A規格B

規格

C規格

全社検討会

ショップ別検討会

プレス

溶 接

機 械

鋳 造

鍛 造

生産技術部会

専門委員会

技術部会

品質部会

分野別委員会

標準化委員会

安衛専門委員会

(事務局:安推部)

標準化として全社検討会では、私達が事務局を務める安衛専門委員会で A,B 規格つくると

いうことです。今、情報化の時代で、設備メーカーさんなどがアクセスできるようになっ

ております。何年かまえに調査しましたが、月に約1万件のアクセスで、上位20件程度

は安全の規格です。

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スライド 45

安全衛生機能保証体制

リスクアセスメント

機能保証体制です。トヨタの場合は組織として保証しようとの考えで、この A,B,C,D の四

つアイテム毎に機能保証体制をやるとの考えで、生産技術部長の責任で安全適合宣言ラベ

ルを貼りなさいということで、ラインに責任を持たせた考えで機能保証をやっております。

スライド 46

計画~導入までのステップ

①設備安全性評価マニュアル②号口設備フィードバック依頼書③安全衛生適合確認実績表

④安全衛生点検チェックシート⑤トータルリンクシステム図⑥安全衛生不具合書

⑦標準類変更依頼書⑧立会い依頼書⑨号口移管資料

⑩設備状態表示⑪安全衛生適合ラベルツール類

工程計画 設備計画 設備製作 設備据付 工程・設備整備ステップ★発注 ★図面承認 ★号試開始 号口開始★

設備メーカ

設備計画部署

設備整備部署

診断員

保全部署

使用部署

技術員室

安衛部署

安全衛生推進部(安全設計検討会事務局)

計画

部署

製造

部署

安全

性評

設備

安全

仕様

の提

仕様

打合

号口

設備

情報

のフ

ィー

ドバ

ック

・適用除外検討・事例の全社展開

仕様

図提

出 仕様

図点

メー

カ立

会い

社内

立会

号口

移管

安全

装置

機能

点検

仕様

図検

立会い不具合の集計(全社)

立会い不具合の集計(工場)

③④

③④

⑤⑥

③④

⑤⑥

⑦⑧

⑦⑧

③④

⑤⑥

③④

⑤⑨

⑥ ⑦

安全健康推進部(安全設計検討会事務局)

これが具体的なプロセスです。ここのところで RA を行っております。

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スライド 47

リスクアセスメントの概要

リスクアセスメントの目的 (TMR QSS0300n)

①徹底した本質安全の追及・継続

②機能保証・CSR立証の根拠

1.ISO規格に基づき要領制定、世界各地で共通

2.安全衛生機能保証体制に組込み実施

3.安全スタッフのノウハウの、ラインへの移転

4.本質的低減努力の評価

生技&製造コミュニケーションのツール等

⇒国内:機械設備の届出時に実施・添付

⇒海外:CEマーキング認証のドキュメントとして活用等

⇒評価要素毎に、見積りの視点、要領の提示

トヨタの RA のアウトラインですが、世界各地で生産しておりますので、ISO14121 に基づ

いた実施要領を制定し世界各地で実施しています。安全衛生機能保証体制の中で実施し、

国内では、設備の届け出時に実施し添付する、海外では CE マークの認証のドキュメントと

して活用しているということです。それから、なによりもこの RA のプロセスというのは、

私達安全スタッフのノウハウを現場、ライン、生技に非常に伝えやすくなった。四点目に

本質的低減努力を評価していますし、生技と製造のコミュニュケーションのツールと位置

付けて活用しているということです。

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スライド 48

操作者,保全者,第3者に分けて,各々が暴露する危険源を記入する

リスクアセスメントシート1

ABC工業

アーク溶接ロボット 999L

××工場車両部品をアーク溶接し,組付けを行う

他 他

スライド 49

計画部署 Commissioning / /

機械メーカ Design / /日付 Date 決済 Sign 修正履歴 Revision

危険源-危険 Hazard - Risk番号

No.

暴露者

Who 詳細説明,図 Type, sketch & description

(方策前の)評価

Evaluation

保護方策 Protective measureSketch,description of Safeguardingand

reason why level of Safeguards could be choosen

安全防護物Safeguard

Level TMS(方策後の)

評価Evaluation

災害の程度Severity

災害の程度Severity

接近頻度Frequency

接近頻度Frequency

回避性Avoidance

回避性Avoidance

発生確率Probability

発生確率Probability

リスクレベル

RISK LEVEL

リスクレベル

RISK LEVEL

災害の程度Severity

災害のSeverity

程度

ページ PAGE

1.1

1.6

操作者

保全

ライトカーテン防護柵非常停止ボタン安全制御メカニカルストッパ

SQI0200nQSS0100nSQI0002n

接近頻度Frequency

接近頻度Frequency

回避性Avoidance

回避性Avoidance

発生確率Probability

発生確率Probability

リスクレベル

RISK LEVEL

リスクレベル

RISK LEVEL

災害の程度Severity

災害の程度Severity

接近頻度Frequency

接近頻度Frequency

回避性Avoidance

回避性Avoidance

発生確率Probability

発生確率Probability

リスクレベル

RISK LEVEL

リスクレベル

RISK LEVEL

リスクアセスメントシート2

シート1での結果に基づいて防護前・後のリスク評価

生技:低減努力の明示・評価

現場:機能維持の基礎データ

これが RA シートです。シートには二つありまして、防護をしていないスッピンの状態での

RA シート1と、防護後を RA シート2で評価しています。この狙いは、生技の低減努力を

評価するのと、現場では機能維持あるいは教育の基礎データーとして活用するということ

です。

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スライド 50

安全衛生教育

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スライド 51

安全衛生教育体系

役割・責務に応じたRA教育実施

(特別教育等の技能教育は省略)

職階層教育

新任部長研修‥1日

新任課長級研修(生技/製造)‥3日

新任SX研修‥法定(職長教育)

新入社員研修

生技・製造配属者研修‥1日本社研修

安全管理者研修‥法定+α

RA実務者研修‥プログラム再検討中

職種教育

スライド 52

トヨタ自動車グローバル安全衛生教育センター

①トヨタウエイ伝承の核

②現地現物で教育

~理解&納得~

・良い点、悪い点のフィードバック

・手作り教材

これらを社内でうまく展開できるように安全衛生教育をやっております。トヨタの中核を

なす職層教育、職種教育をこのような形で実施していまして、その場がこの教育センター

です。ここで先ほどの職種、職階層にトヨタウエイの伝承をしてゆこうということです。

そのコンセプトは現地現物に近い形で教育し、理解し、納得してもらうということです。

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スライド 53

カ リ キ ュ ラ ム の 例(生技新任課長級教育‥主催:安推部)

・導 入・役員講話

OSHMS リスクアセスメント研修 ・健康管理

・まとめ等

3日1日 2日

2.本質的リスク低減

3.安全・衛生防護

4.残留リスク対応

5.課長の役割討議等

1.リスク評価 図面によるリスク見積り・評価要領 2H

本質低減の視点の養成・立証

①防護の考え方・確保すべき要件②機能保証(有効性/機能確認)

適正配置・作業管理等

役割・責務の再確認

2H

6H

3H

2H

科 目 狙い・内容等 時間

これは生技の新任課長級の教育のカリキュラムです。3日間ありまして、RA に関する研修

をベースにやっております。2日間やっております。

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スライド 54

教 育 風 景

RAのステップに基づき研修

(生技新任課長級研修)

基礎研修

主張できる人材

研修のアウトラインですが、一応私共で研修のソフトを造っておりまして、これを利用し

てこういった定置スポットだとかきわめて簡単な設備を事例にして自ら実施し、お互いに

主張しあって、やってもらい、その後研修用の実機ラインで確認する。といった格好で研

修をして、生産技術、製造部それぞれにやってもらいお互いにコミュニュケーションをさ

らにはかれるように、それぞれにたいして安全な設備あるいは安全に使用できる人づくり

をはかっているというのが、トヨタの今の取り組みです。

以上で、生産技術部が主体となった経緯、取り組み方、その実体等についてご報告させて

いただきました。

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スライド 58

Drive Your Dreams人、社会、地球の新しい未来へ

ご清聴ありがとうございました