まずは、 境界不明kikanchiiki.net/contents/files/2013/12/16_030_031.pdf2013/12/16 · 30...
TRANSCRIPT
-
30
境界を探す
最初に訪ねたのは、豊岡引地地
区(旧鳳来町)の伊藤直樹さん。
定年退職で四十数年ぶりに地元に
戻ってきた方だ。
境界不明だと間伐もできない
兼業農家の父親が亡くなり、実
家の16
haの山を相続したのは14年
前。三重県四日市市に暮らす現役
のサラリーマンのときだった。
「相続したといっても仕事が忙し
かったからね。とても一人じゃ山
の手入れはできないし、この際地
元の森林組合にあずけようと10年
ほど前に相談に行ったんです」
ところが、「境界線が不明なと
ころの木は切れません。間伐の補
助金申請もできないよ」とキッパ
リ。山の境界線が確定しなければ、
施業委託はできなかったのだ。
「中学生のころ親父に山へ連れて
行かれて、うちの山はここだぞっ
て2、3度は境界線を教えられた
んだけど……」と伊藤さん。この
ままでは持ち山が行方不明にな
る! ?
先々、息子にも安心して相
続できない。
昨春、定年退職で本格的にUタ
ーンした際、伊藤さんは役場でふ
愛知県
新城市
(旧作手村)
(旧鳳来町)
名古屋市
「山を持ってはいるけど……、どこまでがうちの山なのだろう?」いま、そんな人たちが全国いたるところにいる。相続をきっかけに、山の境界線を確定しようと
「山の探偵」に依頼した愛知県新城市の山主たちを訪ねた。
うちの山はどこから、どこまで? 境界線確定の現場を訪ねた
高橋啓さん(47歳)NPO法人「穂の国森林探偵事務所」代表。東三河地方を中心に山の境界調査や不在山主を探す「山の探偵」だ
山に詳しい地元の 古老が元気なうちに 境界を確かめないと、 持ち山が行方不明に なりますね
伊藤直樹さん(64歳)Uターン2年目。14年前に16haの山を相続したが、境界不明なところは間伐を頼めないので、高橋さんに境界調査を依頼
境界がわからないので、 うちの山の広さが実際 どれくらいあるのかも わからないんです
境界不明まずは、 を何とかする
文=編集部 写真=大西暢夫
愛知県新城市
-
31 季 刊 地 域 W I N T E R 2 0 1 4
と「間伐や境界確定のための予算
は何かないですか?」と聞いてみ
た。「ああ、それなら2年前から
始まっている『森林整備加速化・
林業再生事業』というのがありま
す。境界明確化に対して4万50
00円/haの助成が出ますよ」と
の答えでラッキー。「やっぱり山
の境界のことは森林組合に相談す
るのがいいんでしょうか?」と聞
いて「2年前にこの予算で境界確
定を請け負った団体があります
よ」と紹介されたのが、NPO法
人「穂の国森林探偵事務所」の高
橋啓さんだった。
高橋さんは、19年前にIターン
で新城市に来て、地元の森林組合
に勤めていた経験もある。伊藤さ
んはさっそく補助事業を使って高
橋さんに境界確定を依頼したとい
うわけだ。
大雨のたびに土砂崩れが心配
今回、高橋さんと境界を調べる
のは、自宅から1㎞ほど離れた
4・3
haの山だ。高橋さんが事前
に森林計画図を取り込んだハンデ
ィGPSを持ってきたので、それ
を頼りに山の中を一緒に歩く(森
林計画図については40ページを参
照)。
山、見て見ぬふりをやめるとき
森林計画図の黄色のところが伊藤さんの山。かなり飛び地になっている
1960年代の拡大造林で棚田をつぶしてスギを植林したが、間伐をまったくしていないので、過密で光が入らずヒョロヒョロの木になってしまった
ハンディGPS。山の中は障害物が多く人工衛星の電波を拾いにくいので、山に入る前に電源を入れて衛星を十分に捕捉しておく