エ ネ ルギー 管理パ ツケ ー ジenemap -エネルギーを賢く使ラナ …

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ルギ ー 管理パ ツケ ジEnemap -エネルギーを賢 く使ラ ナ ビ ゲ ー シ ョ ン シ ス テ ム- *ソ リューシ ョン事業部 エ ンジニア リング本部 東 京 都 武 蔵 野 市 中 町2-9-32 *Yokogawa Electric Corporation, Solution Business Div., Engineering Depf., 2-9-32, Nakacho, Musashino-shi, Tokyo, Japan *URL: httpa/www.yokogawa.co.jp/si/enemap/ キ国ワー ド:ベ トミ ッ ク ス(bestmix),ナビ ゲ ー シ ョ ン シ ス テ ム (naVigatiOnSyStem),エ ネ ル ギ ー(energy). JLOOO10/05/4410-0742ゥ2005SICE 1. は じめ 地球 レベルの温暖化が深刻な問題 として認識されるよう に な っ て か ら久 しい.世 界 で4番 目 のCO2排 出 大 国 で あ る 日本 は,2005年2月に 発 効 され た 京 都 議 定 書 にお い て 2008年 ~2012年の間に1990年比6%のCO2排 出量削減 を約 束 して い る.こ の 目標 達 成 に向 け,産 業 の あ らゆ る分 野 にお い て徹 底 した 省 エ ネ ル ギ ー とCO2排 出 量 削 減 が 求 め られ て い る. 横 河 電 機 で は こ う し た情 勢 に 合 わ せ て,省 エ ネ ル ギ ーや 環境 負 荷 低 減 を月 的 と し た製 品 の 拡 充 を 進 め て きた が,エ ネルギー利用 め全体最適 を 目指 す製品 としてEnemapを開 発 し,エ ネ ル ギ ー を大 量 に消 費 す る工 場 の 原 動 力 設備 や 地 域 冷 暖 房 シス テ ム な どへ 納 入 して い る. 本 稿 で は,小 規 模 シス テ ム か ら大 規 模 シス テ ム まで フ レ キ シ ブ ル に対 応 して省 エ ネ ル ギ ー,省 コ ス ト,CO2排出量 削減 に貢献す るエ ネルギー管 理パ ッケージEnemapの機 能 概 要,特 長 につ い て 紹 介 す る. 2. Enemapの 概要 Enemapは当社 の汎用型 プラン ト情報管理 システム (PIMS)で あ るExaquantumを プ ラ ッ トホ ーム と して開 発 され た エ ネ ル ギ ー管 理 用 の パ ッケ ー ジ製 品 で あ る. そ の 機 能 は,以 下 の4つ で 構成 され て い る. (1) 需要負荷予測機能 (2) 最適運転計画機能 (3) 設 備傾 向分 析 機 能 (4) 管理帳票機能 Exaquantumの デ ー タベ ース に蓄 え られ た長 期 間 の 運 転 実 績 デ ー タ と気 象 予 報 デ ー タ を基 にエ ネ ル ギ ー 需 要 を 予 測 し,電 力,都 市 ガス,重 油 な どの エ ネルギー を最 も有 効 に 使 う組 合 せ(ベ ス ト ミック ス)を 導 き出 す.ま た,ボ イ ラや 熱 源 機 器 の運 転 台 数 や発 停 時 期 を 自動 計 画 し,そ の計 画 に 従 っ た 全 体 最 適 自動 運 転 まで も実 現 す る.Enemapは,エ ネ ル ギ ー利 用 効 率 向上 を使 命 と した ナ ビゲ ー シ ョ ンシ ス テ ムである. 3. Enemapの 特長 <機能の特長 > (1) 需要負荷予測機能 Exaquantumに 保存 される運転実績を学習データとして 気 象 予 報 値 な ど を予 測 因子 に使 い,未 来 に発 生 す る 熱 や 電 力などのエネルギー需要量 を予測する.こ の機能 により設 備に求められるエネルギー製造量(製 造 目標値)を 前もっ て手 に入れ るこ とがで きるが,Enemapの特長 は この 目標 値 を 時 刻 単 位 に48時 間先 まで の負 荷 パ タ ー ン と して提 供 で きることにある. 気 象 因 子 に 関 して は,気 象 予 報 デ ー タ 自動 配 信 サ ー ビ ス を受 け る こ とで 自動 的 に 更 新 す る こ と も可 能 とす る. 予 測 ア ル ゴ リズ ム は 回帰 手 法 を採 用 して い る.前 日 に立 て る長 期 予 測(48時間)に 加 え 当 日の補 正 予 測 機 能 を もち 予測 精度 を高 めてい る.イ ベ ン ト要 因 によ り決 定 され る需 要負荷 に対応 する ため,予 測因子 に基 づ く類似 日検索機 能 を備 え,過 去 の 需 要 パ タ ー ン を検 索 採 用 す る こ と もで きる. (2) 最適運転計画機能 需要負荷予測機能で入手 した時刻毎のエネルギー需要量 を賄 う に必 要 な熱 源 設 備 の 台 数 を演 算 す る こ と を基 本 とす る.台 数 決 定 演 算 は コ ス ト最 適,省 エ ネ ル ギ ー,CO2排 出 量 削 減 の3モ ー ドか ら選 択 可 能.必 要 とな る設 備 の運 転 台 数 は,任 意 に設 定 可 能 な 電 力 や ガ ス な どの料 金 デ ー タ(エ ネ ル ギ ー単 価),熱 源 機 器 の 能 力 や コ ンデ ィ シ ョ ン(設 備 デ ー タ)を 最 適 化 演 算 モ デ ル(線 形 プ ロ セ ス モ デ ル)に 与 え て 入 手 され る.時 刻 ご とに決 定 され た運 転 台 数 は ガ ン ト チ ャー ト形 式で運転計 画表 として画面表現 され る.当 日補 正 さ れ た予 測 負 荷 に 基 づ き運 転 計 画 の 修 正 も実 行 され る. 運 転 の評 価 は,単 位 当 た りの エ ネ ル ギ ー を製 造 す る た め に 必 要 と した 燃 料 費 や そ の 運 転 で排 出 さ れ たCO2量 を指標 と して グ ラ フ表 現 され る.過 去 の 運 転 実 績 デ ー タ を任 意 に 与 え運 転 評 価 を シ ミ ユ レー シ ョンす る こ と も で きる. (3) 設備傾向分析機能 最 適 な 運 転 を実 現 す る た め に は設 備 の コ ン デ ィシ ョ ンが 良 好 に保 た れ て い る こ とが 必 要 条 件 とな る.本 機 能 は 設 備 の 状 態 診 断 を 目的 に提 供 さ れ て お り,Exaquantumに 蓄積 742 計 測 と制 御 第44巻 第10号2005年10月

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Page 1: エ ネ ルギー 管理パ ツケ ー ジEnemap -エネルギーを賢く使ラナ …

エ ネ ルギ ー 管理パ ツ ケ ージEnemap

-エ ネルギーを賢く使ラナ ビゲ ーシ ョンシス テム-

*ソ リューシ ョン事業部 エ ンジニア リング本部

東 京 都 武 蔵 野 市 中 町2-9-32

*Yokogawa Electric Corporation, Solution Business Div., Engineering

Depf., 2-9-32, Nakacho, Musashino-shi, Tokyo, Japan*URL: httpa/www.yokogawa.co.jp/si/enemap/

キ 国 ワ ー ド:ベ ス トミ ッ ク ス(bestmix),ナ ビ ゲ ー シ ョ ン シ ス テ ム

(naVigatiOnSyStem),エ ネ ル ギ ー(energy).

JLOOO10/05/4410-0742ゥ2005SICE

1. は じ め に

地球 レベルの温暖化が深刻な問題 として認識されるよう

になってから久 しい.世 界で4番 目のCO2排 出大国であ

る日本は,2005年2月 に発効 された京都議定書 において

2008年 ~2012年 の間に1990年 比6%のCO2排 出量削減

を約束 している.こ の目標達成に向け,産 業のあらゆる分

野において徹底 した省エネルギーとCO2排 出量削減が求

められている.

横河電機ではこうした情勢に合わせて,省 エネルギーや

環境負荷低減を月 的とした製品の拡充を進めて きたが,エ

ネルギー利用め全体最適を目指す製品 としてEnemapを 開

発 し,エ ネルギーを大量に消費する工場の原動力設備や地

域冷暖房 システムなどへ納入 している.

本稿では,小 規模 システムから大規模 システムまでフレ

キシブルに対応 して省エネルギー,省 コス ト,CO2排 出量

削減に貢献するエネルギー管理パ ッケージEnemapの 機能

概要,特 長について紹介する.

2. Enemapの 概 要

Enemapは 当社 の汎用型 プラン ト情報管理 システム

(PIMS)で あるExaquantumを プラットホームとして開

発 されたエネルギー管理用のパ ッケージ製品である.

その機能は,以 下の4つ で構成 されている.

(1) 需要負荷予測機能

(2) 最適運転計画機能

(3) 設備傾 向分析機能

(4) 管理帳票機能

Exaquantumの データベースに蓄えられた長期間の運転

実績データと気象予報データを基 にエネルギー需要を予測

し,電 力,都 市ガス,重 油などのエネルギーを最 も有効に

使 う組合せ(ベ ス トミックス)を 導き出す.ま た,ボ イラや

熱源機器の運転台数や発停時期 を自動計画し,そ の計画に

従った全体最適 自動運転 までも実現する.Enemapは,エ

ネルギー利用効率向上 を使命 としたナビゲーションシステ

ムである.

3. Enemapの 特 長

<機能の特長 >

(1) 需要負荷予測機能

Exaquantumに 保存 される運転実績を学習データとして

気象予報値などを予測因子に使い,未 来に発生する熱や電

力などのエネルギー需要量 を予測する.こ の機能 により設

備に求められるエネルギー製造量(製 造 目標値)を 前もっ

て手に入れることができるが,Enemapの 特長はこの目標

値を時刻単位 に48時 間先 までの負荷パターンとして提供

で きることにある.

気象因子に関しては,気 象予報データ自動配信サービス

を受けることで自動的に更新することも可能 とする.

予測 アルゴリズムは回帰手法を採用 している.前 日に立

てる長期予測(48時 間)に 加え当日の補正予測機能をもち

予測精度を高めている.イ ベン ト要因により決定される需

要負荷 に対応するため,予 測因子に基づ く類似 日検索機能

を備え,過 去の需要パターンを検索採用することもで きる.

(2) 最適運転計画機能

需要負荷予測機能で入手 した時刻毎のエネルギー需要量

を賄 うに必要な熱源設備の台数を演算することを基本 とす

る.台 数決定演算はコスト最適,省 エネルギー,CO2排 出

量削減の3モ ー ドから選択可能.必 要 となる設備の運転台

数 は,任 意 に設定可能な電力やガスなどの料金データ(エ

ネ ルギー単価),熱 源機器の能力やコンディション(設 備

データ)を 最適化演算モデル(線 形プロセスモデル)に 与

えて入手 される.時 刻 ごとに決定 された運転台数はガン ト

チャー ト形式で運転計画表 として画面表現 される.当 日補

正された予測負荷に基づ き運転計画の修正 も実行 される.

運転の評価 は,単 位当た りのエネルギーを製造するために

必要 とした燃料費やその運転で排出されたCO2量 を指標

としてグラフ表現 される.過 去の運転実績データを任意に

与え運転評価をシミユレーシ ョンすることもできる.

(3) 設備傾向分析機能

最適な運転を実現するためには設備のコンディションが

良好に保たれていることが必要条件 となる.本 機能は設備

の状態診断を目的に提供されており,Exaquantumに 蓄積

742 計 測 と制 御 第44巻 第10号2005年10月 号

Page 2: エ ネ ルギー 管理パ ツケ ー ジEnemap -エネルギーを賢く使ラナ …

図1 エ ネ ル ギ-管 理 パ ッケ-ジEnemapの 機 能

された長期間の運転実績データを基 に設備能力の経年劣化

など状態の傾向を分析 し観察することができる.年 間ベー

ス トレン ドや複数年 トレン ドの重ね合わせ,散 布図表現へ

の近似線描画と領域判定,ヒ ス トグラム表現 と多彩な画面

表現手段に加え充実 したフィルタリング機能により,観 察

したいデータの抽出までを分析能力 として提供 している.

(4) 管理帳票機能

運転実績を帳票 として編集 し管理する機能である.Mi-

crosoft社 製Excelを 採用 し自由度の高い帳票機能に仕上

がっている.毎 日の運転実績を生値で記録する運転日報,管

理項 目ごとにデータを編集 した管理 日報/月 報を標準で用

意 し,シ フ ト報,季 報,年 報への積み上げも作成 しやすい

構 造になっている.設 備単体効率の演算式などはデフォル

トでもち,収 集データを紐付けするだけで帳票作成で きる.

欠測値 などの修正に対 して帳票 を再作成する機能 もある.

<製品の特長 >

パ ッケージ製品であるが適用に自由度を高めている.

(1) 機能分割

4つ の機能をバン ドル した商品であるが,必 要な機能を

個別に選択適用することも可能である.

(2) リサイズ対応

エネルギー管理に必要なポイント数(デ ータ数)に 応 じ

て段階的にシステム規模 を選ぶことができる.限 られた管

理範囲や設備数からス タリ トして最終的には工場全体の管

理へ成長することを想定 したシステム設計 としている.

(3) イ国ジ国オーダー

ユーザの所有する設備 に合わせて最適化モデルを作成,

調整できるようにイージーオーダー対応で機能実現する.

4. 適 用 事 例

省 コス トや 省 エ ネ ル ギ ー,CO2削 減 運 転 を 目的 と した 運

転 支 援 機 と して,ま た運 転 実 績 評 価(省 エ ネ 運 転 評 価)の

目的 に導 入 され て い る.プ ラ ン ト全 体 の省 エ ネ率(コ ス ト

削 減 幅/プ ラ ン ト総 エ ネ ル ギ ー源 費 用)1%以 上 を実 現 し

た事 例,需 要 負 荷 予 測 機 能 と最 適 運 転 計 画 機 能 を定 周 期 に

自動 計 算 させ る こ とで工 場 原 動 力 設 備 の無 人 自動 運 転 を実

現 した事 例 な どが あ る.

5. お わ り に

本 稿 で 紹 介 したEnemapは 地 域 冷 暖房 施 設 や エ ネ ル ギ ー

消 費 指 定 工 場 な どの 大規 模,中 規 模 の 設 備 を 保 宥 す る熱 源

設備 を対 象 と したエ ネル ギ ー 管 理 シ ス テ ムで あ る.一 方,広

域 に散 在 す る小 規 模 設備 の 管 理 が 問 題 と して残 る.当 社 で

は コ ジ ェ ネ レー タ設 備 を 中心 に した 遠 隔監 視 機 能 サ ー ビス

(Application Service Provider)を 展 開 して お り,こ の遠

隔監 視 シス テ ムへ 運 転 評 価 機 能 と してEnemapを 搭 載 す る

こ と を計 画 して い る.遠 方 に分 散 して 存 在 す る設 備 の 運転

を評 価 し運 転 方 法 の 向上 支 援 を 図 ろ う とす る も ので あ るが,

よ り広 い範 囲 で エ ネ ル ギ ー の 有 効 利 用 に繋 が る こ とを願 う

もの で あ る.(2005年6月30日 投稿受付)

参 考 文 献

1) 渡辺,福 沢,吉 川,安 部:PIMSを 活用 したプラン ト運転の最

適化アプリケーシ ョン,計 装2月 号,46-3,工 業技術社(2003)

2) 横河電機(株)2005年 度環境経営報告書Enemap

*Enemap, Exaquantumは,横 河電機株式会社の登録商標 です.

*Microsoft, Excelは,米 国Microsoft社 の登録商標です.

計測 と制御 第44巻 第10号2005年10月 号

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