お仕事 町工場のものづくりの仕事 ファイル...- 1 - 高校講座 仕事の現場...

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- 1 - 高校講座 仕事現場 real お仕事 ファイル 5 大野和明(おおの・かずあき) さん 東京都大田区出身の 35 歳 。入社 12 年目。東京・ 大森西の金属加工工場『大野精機』の 3 代目。 高校まで野球漬け、大学を経てスーパーマーケット に就職したが、将来に疑問を抱き 2 年半で退職。25 歳のとき、父親に頼み込んで家業に就く。“ 丸物 ” と呼 ばれる、旋盤を使って丸く削る部品の製作を得意とす る。一斗缶の蓋を密封する工具『クリンパー』や、橋 梁に使われるリベットの塗装をはがす『リベットシェー バー』などが代表作。 大田区の約 30 の町工場のプロジェクト『下町ボブス レー』のメンバーでもある。 ジャマイカ・チームにこの『下町ボブスレー』 が採用され、冬季五輪で金メダルを取るのが夢。 中田雄介(なかた・ゆうすけ) さん 北海道旭川市出身の 34 歳 。入社 15 年目。天文 機器や医療機器を製作する東京・三鷹『三鷹光器』の 製造部技術開発係長。 幼いころから換気扇を眺めたり、掃除機を分解した りするのが好きな少年だった。旭川工業高等専門学 校では “ ロボコン ”(http://www.official-robocon. com/)に熱中。テレビ番組で見たのがきっかけで、 ユニークな入社試験を経て現在の会社に入る。 世界シェア No.1 の外科手術用の顕微鏡製作が主な 仕事。他に大型望遠鏡や宇宙観測機器、太陽熱集光装 置などさまざまな製品づくりに従事。 世の中にないものをつくるのが夢。他社と競 合しない製品を開発したい。 今回の働く先輩 中田雄介さん(左)、大野和明さん(右) ナビゲーター:野呂佳代 働く先輩紹介 *:2016 年収録 町工場のものづくりの仕事 1960 年代から“Made in Japan”として高い品質 と性能に支えられた日本の製造業。その中心となっ たのが中小企業、つまり町工場です。1990 年代以 降、日本経済がかげりを見せると、町工場も減少し ていきました。しかしそんな中で、自分たちにしか できない製品をつくり続け、ものづくりの未来を開 拓しようとしているのが、今回ゲストのお 2 人。彼 らはどうして町工場を選んだのか? その 2 人が 魅せられたものづくりの魅力って一体何なのか?  2 人の先輩に仕事の real を聞いていきます! 上・ものづくりを愛する同僚たちと/左下・金属を削って決められた 形状に仕上げる/右下・外科手術用顕微鏡のテストをする中田さん 左上・金メダルを目指 す『下町ボブスレー』 /右上・リベットの塗 装をはがす『リベット シェーバー』/下・父 の義栄さん(中央)、 弟の真悟さん(左)

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Page 1: お仕事 町工場のものづくりの仕事 ファイル...- 1 - 高校講座 仕事の現場 real お仕事 ファイル 5 大野和明(おおの・かずあき)さん

- 1 - 高校講座

仕事の現場 real

お仕事 ファイル 5

大野和明(おおの・かずあき)さん

東京都大田区出身の35歳*。入社 12年目。東京・大森西の金属加工工場『大野精機』の3代目。高校まで野球漬け、大学を経てスーパーマーケット

に就職したが、将来に疑問を抱き2 年半で退職。25歳のとき、父親に頼み込んで家業に就く。“ 丸物 ”と呼ばれる、旋盤を使って丸く削る部品の製作を得意とする。一斗缶の蓋を密封する工具『クリンパー』や、橋梁に使われるリベットの塗装をはがす『リベットシェーバー』などが代表作。大田区の約 30の町工場のプロジェクト『下町ボブス

レー』のメンバーでもある。ジャマイカ・チームにこの『下町ボブスレー』が採用され、冬季五輪で金メダルを取るのが夢。

中田雄介(なかた・ゆうすけ)さん

北海道旭川市出身の 34歳*。入社 15年目。天文機器や医療機器を製作する東京・三鷹『三鷹光器』の製造部技術開発係長。幼いころから換気扇を眺めたり、掃除機を分解したりするのが好きな少年だった。旭川工業高等専門学校では “ ロボコン ”(http://www.official-robocon.com/)に熱中。テレビ番組で見たのがきっかけで、ユニークな入社試験を経て現在の会社に入る。世界シェアNo.1 の外科手術用の顕微鏡製作が主な仕事。他に大型望遠鏡や宇宙観測機器、太陽熱集光装置などさまざまな製品づくりに従事。

世の中にないものをつくるのが夢。他社と競合しない製品を開発したい。

今回の働く先輩中田雄介さん(左)、大野和明さん(右)

ナビゲーター:野呂佳代

働く先輩紹介

*:2016 年収録

町工場のものづくりの仕事

1960 年代から“Made in Japan”として高い品質と性能に支えられた日本の製造業。その中心となったのが中小企業、つまり町工場です。1990 年代以降、日本経済がかげりを見せると、町工場も減少していきました。しかしそんな中で、自分たちにしかできない製品をつくり続け、ものづくりの未来を開拓しようとしているのが、今回ゲストのお 2 人。彼らはどうして町工場を選んだのか? その 2 人が魅せられたものづくりの魅力って一体何なのか? 2 人の先輩に仕事の realを聞いていきます!

上・ものづくりを愛する同僚たちと/左下・金属を削って決められた形状に仕上げる/右下・外科手術用顕微鏡のテストをする中田さん

左上・金メダルを目指す『下町ボブスレー』/右上・リベットの塗装をはがす『リベットシェーバー』/下・父の義栄さん(中央)、弟の真悟さん(左)

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仕事の現場 real お仕事 ファイル 5  町工場のものづくりの仕事

 お仕事データ【町工場のものづくりの仕事をするには?】

⃝高校や高等専門学校、大学を卒業してから、工場を経営している会社の入社試験や面接を受けて就職するのが一般的です。特に資格は必要ありませんが、基礎的なことを学んでいる工業高校や高等専門学校出身者は、やや有利かも? でも、ものづくりが好きで、つくることに夢を持っている“あなた!” 夢に向かって挑戦してみては!

⃝ものづくりの仕事に就きたいけど、実際どのような作業や仕事なのか迷っている人は、事前に工場見学をさせてくれる会社もあるので、活用すると良いでしょう。社員食堂や社員寮のある会社もあります。

⃝週休2日制で、土日が休みというケースが一般的です。

HP  中小企業庁

 中小企業庁の「中小企業白書」を見ると中小企業の動向がわかります。https://www.chusho.meti.go.jp/

から、「白書・統計情報」 ↓「中小企業白書」へ

HP  厚生労働省

 全国の主要産業に雇用される労働者の賃金については厚生労働省の「賃金基本統計調査」を見るとわかります。https://www.mhlw.go.jp/

から、「統計情報・白書」 ↓

「各種統計調査」 ↓

「厚生労働統計一覧」 ↓

「8.賃金」

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仕事の現場 real お仕事 ファイル 5  町工場のものづくりの仕事

【番組の中で流れる町工場の音について】

 番組の中で数回、トークのバックに町工場の機械音が流れます。これは実際に大野さんの会社・大野精機で、機械を動かしてもらって録音したもの。大野さんが幼いころは、家の近所のどこに行ってもこんな音がしていたそうです。しかし近年、工場は次々と姿を消し、大野精機の周りはほとんど住宅街になってしまいました。「3D プリンターなどを使った、デジタル職人みたいな若者が、町工場にも出て来てほしい」。大野さんはそう語っていました。