インドの石油・エネルギー産業...

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JPEC レポート 1 平成 26 9 18 インドの石油・エネルギー産業 米国 DOE・エネルギー情報局( EIA)のレポー トを主なベースとして、インドのエネルギー産業 について紹介する。 1. インドの位置と地勢 インド概略地図を図 1 に示す。インドは南アジ アに位置し、陸上で 6 ヶ国(パキスタン、中国、 ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー)と、海上で 3 ヶ国(スリランカ、モ ルディブ、インドネシア)と国境を接している。東にベンガル湾・西にアラビア海・南は ラッカデイブ海に面している。ベンガル湾東部海域に浮かぶアンダマン諸島とニコバル諸 島もインド領である。ラッカデイブ海( Laccadive Sea )とはインドとスリランカおよびモ ルディブに囲まれた海域を言う。 1 インド概略地図 2014 年度 1 13 3 1. インドの位置と地勢.................... 1 2. インドの地方行政区画................ 2 3. インドの一般情報......................... 3 4. 石油 ................................................... 4 5. 天然ガス .........................................13 6. 石炭 .................................................16

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Page 1: インドの石油・エネルギー産業 年までに全国規模でユーロⅣ規格相当の「Bharat Stage IV 自動車燃料規格」を、さら に2016 年までに乗用車に対しユーロⅤ規格相当の「Bharat

JPEC レポート

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平成26年9月18日

インドの石油・エネルギー産業

米国DOE・エネルギー情報局(EIA)のレポー

トを主なベースとして、インドのエネルギー産業

について紹介する。

1. インドの位置と地勢

インド概略地図を図1に示す。インドは南アジ

アに位置し、陸上で6ヶ国(パキスタン、中国、

ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー)と、海上で3ヶ国(スリランカ、モ

ルディブ、インドネシア)と国境を接している。東にベンガル湾・西にアラビア海・南は

ラッカデイブ海に面している。ベンガル湾東部海域に浮かぶアンダマン諸島とニコバル諸

島もインド領である。ラッカデイブ海(Laccadive Sea)とはインドとスリランカおよびモ

ルディブに囲まれた海域を言う。

図1 インド概略地図

JJJPPPEEECCC レレレポポポーーートトト 2014 年度 第第 1133 回回

1. インドの位置と地勢 .................... 1

2. インドの地方行政区画 ................ 2

3. インドの一般情報 ......................... 3

4. 石油 ................................................... 4

5. 天然ガス......................................... 13

6. 石炭 ................................................. 16

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2. インドの地方行政区画

図2及び表1に示すように、インドの地方行政区画は29の州と7つの連邦直轄領で構成

されている。

図2 インドの州(1〜29)と連邦直轄領(A

〜G)

表1 インドの地方行政区画の名称 番号 地方行政区画の名称

1 アンドラプラデシュ州 2 アルナーチャルプラデシュ州 3 アッサム州 4 ビハール州 5 チャッティースガル州 6 ゴア州 7 グジャラート州 8 ハリアナ州 9 ヒマーチャルプラデシュ州 10 ジャンムー カシミール州 11 ジャールカンド州 12 カルナータカ州 13 ケララ州 14 マティアプラデシュ州 15 マハーラーシュトラ州 16 マニプル州 17 メーガーラヤ州 18 ミゾラム州 19 ナガランド州 20 オリッサ州 21 パンジャブ州 22 ラージャスターン州 23 シッキム州 24 タミルナドゥ州 25 トリプラ州 26 ウタールプラデシュ州 27 ウッタラーカンド州 28 西ベンガル州 29 テランガーナー州 A アンダマン・ニコバル諸島連邦直轄領 B チャンディーガル連邦直轄領 C ダードラー及びナガル・ハヴェーリー連邦直轄領 D ダマン・ディーウ連邦直轄領 E ラクシャディープ連邦直轄領 F デリー首都圏 G ポンディシェリ連邦直轄領

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3. インドの一般情報

3.1. 主な一般情報

インドの主な一般情報を表2に示す。

表2 インドの主な一般情報

通称国名 インド

正式国名及び国旗 インド

(外務省ホームページ準拠)

独立年 1947年、英国より独立 政体 共和制 首都 ニューデリー 人口 12億2,700万人(2012年、世界第2位)

公用語 連邦の公用語はヒンディー語

(他に憲法で公認されている州言語が21種ある) 通貨 ルピー(INR)

名目GDP 1兆8,710億ドル(2013年)

3.2. 石油・天然ガス・石炭についての主な情報

インドの石油・天然ガス・石炭についての主な情報を表3に示す。

表3 インドの石油・天然ガス・石炭の主な情報

石油確認埋蔵量 57億バレル

石油の輸出入 石油合計としては純輸入国

(原油は純輸入国、石油製品は純輸出国) 原油精製能力 435.5万BPD 製油所数 22

天然ガス確認埋蔵量 1.3兆m3 天然ガスの輸出入 純輸入国

特記事項 石炭確認埋蔵量は668億トンで世界第5位。石炭の生産

量・消費量とも世界第3位であるが、旺盛な消費が勝り

石炭の純輸入国になっている。

3.3. 各種エネルギー資源に関する概要

2011 年、インドは中国・米国・ロシアに次ぐ世界第 4 位のエネルギー消費国となった。

同国のエネルギー需要は経済成長と近代化の結果、過去数年間に亘り伸び続けてきた。2000

年以来、インドの経済成長率は年平均およそ7%を記録している。

2014 年 5 月に多数党として選出されたインド人民党(BJP)は今後 5 年間成長するイン

ドを治めることになる。現在、BJP は適切な価格のエネルギー資源の確保、エネルギーイ

ンフラ開発への投資の誘致によって、増加している国内エネルギー需要を満たすという課

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題に立ち向かおうとしている。

インドは大量の石炭埋蔵量を保持し、且つ天然ガス生産量の健全な伸びにも拘らず、過

去 20 年間に亘り益々化石燃料の輸入に依存している。2013 年、前石油天然ガス大臣は、

石油天然ガス省による在来型化石燃料の増産、炭層メタンやシェールガスの開発、炭化水

素資源上流分野における国内企業の外資企業買収、自動車燃料への補助金削減、石油およ

び天然ガス価格の適正化を実施して、2030年までにエネルギーの自給国となるための行動

計画を作成していると発表した。2014年5月、現石油天然ガス大臣も同じ目標を繰り返し

表明している。

図3のとおり、インド 大の消費エネルギー資源は石炭(44%)である。次いで石油(22%)

とバイオマス(22%)が同率で並び、天然ガスは7%と比較的少ない。発電分野が 大のエ

ネルギー需要先で、政府は石炭と他の発電資源を用いることで環境問題と電力需要増のバ

ランスをとろうと模索している。一方、輸送分野では政府はバイオ燃料などいくつかの代

替燃料の使用を義務化する方針である。さらに、大量輸送システムを広範囲に導入し、石

油の需要を抑える計画もある。

図3 インドの項目別一次エネルギー消費比率(2012年)

4. 石油

4.1. 製油所

インド政府は 1990 年代末からエネルギー企業がいくつかの製油所に投資することを奨

励し始め、2001年にインドが石油製品の純輸出国になるのを支援した。また、政府は輸入

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原油への関税を撤廃し、精製事業者へ供給する燃料の価格を下げ石油製品の国内生産をよ

り経済的なものにした。第 11 次 5 ヶ年計画(2007〜2012 年)において、政府はインドが

石油製品の世界への輸出ハブとなる目標を掲げている。

しかしながら、インドは依然として内需を満たすため灯油とLPGを輸入している。2009

年からいくつかの輸出指向型製油所は国内の自動車ガソリン、ディーゼル燃料、灯油、LPG

の不足を緩和するため方向転換し始めた。これら4種の石油製品はインドの石油製品消費

量合計の73%を占めている。なかでも、2013年にディーゼル燃料がインドで も消費され

た石油製品として42%を占めた。多くの農村地帯では調理の際に昔ながらのバイオマスと

共に灯油とLPGを用いている。政府は農村地帯で調理に使用される灯油をクリーンでより

安価なLPGに変えるよう勧めている。

表4~7のとおり、2013年末時点でインドは22製油所を保有し原油精製能力合計は435

万 5,000BPD である。そのうちの約 38%を民間企業が所有している。インド 大級の 2 つ

の製油所は、より安い原油の輸送コストを求めて中東産油国に近いインド北西部アラビア

海沿岸のグジャラート州ジャムナガールに位置している。世界 大級の石油製品輸出施設

を備え、両製油所とも民間のリライアンス インダストリーズ社(RIL)が所有している。

インドは現在進行中の5ヶ年計画に基づき、石油製品の内需と輸出需要の増加を満たすた

め、2017 年までに精製能力合計を 630 万BPD まで増やす計画である。この目標は全ての

提案されたプロジェクトが稼動するか否かにかかっているが、過去数年間いくつかの製油

所は計画の遅延に直面している。新設中のオリッサ州(20)の Paradip 製油所とタミルナ

ドゥ州(24)のCuddalore製油所は2015年までに稼動開始する予定で、その時点でインド

の精製能力は42万BPD増えることになる。複数の精製事業者は2020年までにいくつかの

既設装置群の拡張と2〜3の新製油所の建設を提案している。しかし、これらのプロジェク

トのスケジュールは景気回復と国内および輸出市場における燃料販売状況に左右されるで

あろう。

2000 年にインド政府は自動車を含む内燃エンジンから排出される有害な大気汚染物質

(一酸化炭素、炭化水素、NOx、PM)の量を規制する基準として、ユーロ(Euro)規格に

準じた「Bharat Stage 排ガス基準」を制定した。当該基準は自動車業界や機械メーカーに

対し自動車の種別ごと(トラック&バス、軽負荷ディーゼル車、軽負荷ガソリン車、2 輪

ガソリン車、3輪ガソリン車、2&3輪ディーゼル車など) およびディーゼル駆動機器の種

別ごと(建設機械、農業用トラクター、発電機など)に細かく規制している。2010年にイ

ンド全土に「Bharat Stage III(ユーロ III相当)」と13の州に「Bharat Stage IV(ユーロ IV

相当)」の排ガス基準を施行した。ただし、インドでは温暖化の原因物質の一つである自動

車排ガス中の炭酸ガス量を抑える燃費基準は未だ定められていない。

石油業界に対しては「Bharat Stage 排ガス基準」の中で自動車燃料規格を制定しており、

2015年までに全国規模でユーロⅣ規格相当の「Bharat Stage IV 自動車燃料規格」を、さら

に2016年までに乗用車に対しユーロⅤ規格相当の「Bharat Stage V 自動車燃料規格」を採

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用する計画である。インドの自動車燃料の硫黄分規格は表8のとおりで、複数の精製事業

者は厳しい当該規格に適合する高品質な自動車燃料を製造するためいくつかの既存製油所

をアップグレードするとしている。

表4 インドの国営企業所有の製油所

製油所名 原油精製能力 (万BPD)

立地 ()内は図2中の番号

操業会社

1 Barauni製油所 12.0 ビハール州(4) Indian Oil Corp. Ltd. 2 Bongaigaon製油所 4.7 アッサム州(3) Indian Oil Corp. Ltd. 3 Digboi製油所 1.3 アッサム州(3) Indian Oil Corp. Ltd. 4 Guwahat製油所 2.0 アッサム州(3) Indian Oil Corp. Ltd. 5 Haldia製油所 15.1 西ベンガル州(28) Indian Oil Corp. Ltd. 6 Koyali製油所 27.5 グジャラート州(7) Indian Oil Corp. Ltd. 7 Mathura製油所 16.0 ウタールプラデシュ州(26) Indian Oil Corp. Ltd. 8 Panipat製油所 30.1 ハリアナ州(8) Indian Oil Corp. Ltd. 9

Mahul製油所 13.1 マハーラーシュトラ州

ムンバイ(15)

Hindustan Petroleum Corp. Ltd. (HPCL)

10 Visakhapatnam製油所

16.6 アンドラプラデシュ州(1) Hindustan Petroleum Corp. Ltd .(HPCL)

11 Mahul製油所

24.1 マハーラーシュトラ州 ムンバイ(15)

Bharat Petroleum Corp. Ltd.

12 Kochi製油所 19.1 ケララ州(13) Bharat Petroleum Corp. Ltd. 13

Manali製油所 21.1 タミルナドゥ州

チェンナイ(24) Chennai Petroleum Corp. Ltd.

14 Nagapattinam製油所 2.0 タミルナドゥ州(24) Chennai Petroleum Corp. Ltd. 15 Numaligarh製油所 6.0 アッサム州(3) Numaligarh Refinery Ltd. 16

Mangalore製油所 30.2 カルナータカ州(12) Mangalore Refinery &

Petrochemicals Ltd 17

Tatipaka製油所 0.1 アンドラプラデシュ州(1) Oil & Natural Gas Corp. Ltd.

(ONGC) 国営17製油所合計 241.0

表5 インドの国営企業と外国企業の合同企業体(JV)所有の製油所

製油所名 原油精製能力 (万BPD)

立地 ()内は図2中の番号

操業会社

1 Barauni製油所 12.0 マティアプラデシュ州(14)Bharat-Oman Refinery Ltd.:イ

ンドのBharat Petroleum Co.とオマーンのOman Oil Co.のJV

2 Bathinda製油所 18.0 パンジャブ州(21)

HPCL-Mittal Energy Ltd.:イン

ドの Hindustan Petroleum Co. Ltd とシンガポールの Mittal Energy Investmant Pte LtdのJV

JV2製油所合計 30.0

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表6 インドの民間企業所有の製油所

製油所名 原油精製能力 (万BPD)

立地 ()内は図2中の番号

操業会社

1 Jamnagar製油所 66.0 グジャラート州

ジャムナガール(7) Reliance Industries Ltd.

2 SEZ (Special Economic

Zone) 製油所 58.0

グジャラート州 ジャムナガール(7)

Reliance Industries Ltd.

3 Vadinar製油所 40.5 グジャラート州(7) Essar Oil Ltd. 民間3製油所合計 164.5

表7 インドの原油精製能力合計 製油所数 原油精製能力(万BPD)

国営製油所 17 241.0

JV 製油所 2 30.0

民間製油所 3 164.5

総計 22 435.5

表8 インドの自動車燃料の硫黄分規格

(単位:質量ppm) Bharat Stage III

(ユーロ III相当)Bharat Stage IV

(ユーロ IV相当)Bharat Stage V

(ユーロV相当)

ガソリン 150以下 50以下 10以下 ディーゼル燃料 350以下 50以下 10以下

4.2. 石油パイプライン

石油天然ガス省によると、インドの原油パイプラインネットワークの総延長は 9,500km

弱、輸送能力の合計は280万BPDに及んでいる。国内におよそ30の原油ターミナルがあ

り、多くは輸入原油を受け入れるため北西部沿岸に位置している。これらの基地および国

内の産油地から複数の原油パイプラインがグジャラート州(7)、ウタールプラデシュ州(26)、

ハリアナ州(8)の大型製油所に至っている。一方、東部では西ベンガル州(28)からハリ

アナ州(8)のParadip製油所まで原油パイプラインが走っている。中部と南部には原油パ

イプラインは数少ない。なぜなら、製油所の多くが北西部と北東部に位置しているからで

ある。

インド国営石油(IOC)が石油製品パイプラインを制御・運用し、ほとんどの石油製品

を国内市場に供給している。石油製品パイプラインは北部と北東部に集中している。一方、

中部と南部では石油製品の配送はローリー車や貨物トラックなどの別の手段に依存してい

る。IOCは東部のオリッサ州(20)の新設予定の IOC社Paradip製油所からオリッサ州(20)

と隣接するジャールカンド州(11)およびチャッティースガル州(5)の需要中心地までの

1本を含む複数の石油製品パイプラインの建設を計画している。

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図4 インドの石油パイプライン経路図

4.3. 戦略的石油備蓄

2005年、インド政府は3ヶ所に合計3,700万バレル(588万kL)の原油の戦略的備蓄を

始めることを決定した。3ヶ所とはアンドラプラデシュ州(1)の東部沿岸の都市ヴィシャ

ーカナムとカルナータカ州(12)の港湾都市マンガロールおよびケララ州(13)の内陸の

村パドゥアーである。備蓄方式はいずれも安全を配慮して、地下の岩山洞窟タイプとなっ

ている。石油産業開発委員会が所有する特殊法人である Indian Strategic Petroleum Reserves

Limited (ISPRL)が 2015 年までに完成予定のこれら 3 ヶ所の原油備蓄基地を管理するこ

とになる。

さらに、政府は 2017 年までに原油の供給途絶からインドを守るため原油備蓄能力を

9,100 万バレル(1,447 万 kL)追加する計画を明らかにした。同時に、2020 年までにイン

ドの石油需要量の90日分を満たす原油備蓄を見込んでいる。

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4.4. 原油の生産と消費

過去 20 年間、インドの原油生産量合計は年率 2%未満の伸びで緩やかに増加してきた。

2011 年の99.6 万BPD がピークで、2013 年には僅かに減少し 98.2 万BPD であった。多く

の油田は西部地域、特にラジャスタン州(22)内とグジャラート州(7)の沖で発見されて

いる。同国北東部のAssam-Arakan盆地もまた重要な原油生産地域でインドの埋蔵量の23%

超、生産量の12%を占めている。

2013年実績では、インドは米国、中国、日本に次ぐ世界第4位の石油消費国であると同

時に、世界第 4 位の原油の純輸入国となっている。2013 年の原油の内需は 370 万BPD に

達した一方で、原油生産量は 100 万 BPD 未満に過ぎない。EIA はインドの石油の内需は

2040年までに倍増して820万BPDに達すると推定する一方、国内生産量は100万BPD前

後でほぼ横ばいに推移すると見ている。従って、インドの石油の需給ギャップが広がる傾

向は今後も続くだろう。

図5 インドの原油生産量と消費量 (2000年~2013年)

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図6 インドの原油輸入国内訳(2013年)

4.5. 原油の輸入、製品の輸出

インドは主要な原油輸入国である。インドの輸入原油の大部分はインド企業が直接投資

するアクセスをもたない中東から供給されている。インドの原油取扱い港のほとんどは中

東原油を受け入れるため同国の西海岸に位置している。2013年の原油輸入実績を地域別に

見ると、図6参照のとおり第1位が中東諸国で62%、第2位は西半球諸国で19%、次いで

アフリカ諸国の16%と続く。また、国別ではサウジアラビアがトップで20%のシェアをも

つ。なお、同年の原油輸入量合計は約390万BPDに達している。

近年、インドの輸入原油への依存度の高まりと並行して、イラン、リビア、スーダン、

ナイジェリアを含む数ヶ国からの供給不安がインドに原油輸入国の多様化を余儀なくさせ

ている。一例として、2011〜2012 年のイラン原油の輸入比率は 8.3%であったが、2013 年

は米国と欧州諸国のイラン原油の輸出に科した制裁により5.5%に落ちた。政府はインドの

エネルギー企業に原油の輸入元を多角化するように促している。それに呼応して、複数の

国営エネルギー企業が海外(南米、東南アジア、カスピ海地域)の油田やガス田の株式を

購入し始めている。同時に、インドの製油所はより安価な原油を購入しようと試みている。

昨年の中東原油の価格は西半球産原油の価格より高価であったため、インドの会社にラテ

ンアメリカ(主にベネズエラ、コロンビア、メキシコ)からより多くの原油を輸入するよ

う駆り立てている。

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インドは原油の純輸入国だが、

輸出指向に設計された製油所建

設に投資した結果、石油製品に

ついては純輸出国となっている。

図7のとおり、2013年の石油製

品の国別輸出比率はシンガポー

ル(13%)、サウジアラビア

(10%)、アラブ首長国連邦とオ

ランダ(各 7%)などの順とな

っており、日本にも 4%輸出さ

れている。企業ではグジャラー

ト州(7)のエッサール石油

(Essar Oil)とリライアンス イ

ンダストリーズ社(RIL)のナ

フサ、自動車用ガソリン、ディ

ーゼル燃料の国際市場(特にシ

ンガポール、サウジアラビア、

アラブ首長国連邦、オランダ)

への輸出が目立っている。RIL

はまた、米国市場もターゲットにしている。2008年にニューヨーク港に石油貯蔵スペース

を借り上げた。しかし、インド政府は各企業に対し海外で石油製品を販売する前に国内市

場に供給するよう促している。

4.6. 石油の探査

2014 年初頭時点のインドの石油確認埋蔵慮は 57 億バレルである。その 44%は内陸にあ

り、56%は海底にある。

Mumbai High盆地とグジャラート州(7)の盆地およびAssam-Arakan盆地は生産量が落

ちつつある成熟油田を保有している。これらの成熟油田には石油増産回収に取り組んでい

るいくつかの再開発プロジェクトがある。また、インド企業と外国企業は成熟油田からの

生産量低減を埋め合わすため辺境地の開発や盆地の限界域の開発プロジェクトを進めてお

り、2030年までに生産量を上げると見られている。また、Gujarat State Petroleum 社やAndhra

Pradesh Gas Infrastructure社のような小規模企業によるラジャスタン州(22)のBarmer盆地

やオフショアの Krishna Godavari 海盆での近年の大型発見がインドの石油生産を多様化す

る可能性がある。

政府は国内の石油産業を世界の原油価格の乱高下から保護する政策として、インド企業

が海外の上流側資産を取得することを奨励している。複数のインド企業はスーダンの

GNOP鉱区、ロシアのサハリンⅠプロジェクト、ベネズエラのSan Cristobal鉱区とCarabobo

鉱区で大きな権益を獲得した。また、2012 年にニューヨーク拠点のAmerada Hess 社はア

図7 インドの石油製品輸出先 (2013年)

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ゼルバイジャンの主要な油田をインドの石油天然ガス開発公社(ONGC)に売却した。さ

らに、ONGCとインド国営石油(IOC)およびリライアンス インダストリーズ社(RIL)

はモザンビークのガス事業、米国とカナダのシェールガス資産、ミャンマーのガス資産の

権益を取得した。2011年、いくつかの政府機関は海外のエネルギー獲得に融資する目的の

政府系ファンドの設立に同意している。

4.7. 石油関連機関と企業

インド政府が同国の炭化水素資源を国有化した1970年代からほぼ20年後の1991年から、

政府は新経済政策に着手し、様々なエネルギー分野に亘って市場競争のオープン化を後押

ししてきた。1999 年に政府は投資家に対し 100%の外国管理が可能な開発鉱区の応札を許

容するNew Exploration Licensing Policy(NELP)を導入した。第9次入札ラウンドに対する

契約を授与して2年余り後の現在、政府は第10次入札ラウンドの準備中である。因みに、

第9次入札ラウンドでは34鉱区のうち13鉱区が落札されている。第10次入札ラウンドは

NELP に基づき 46 の探査鉱区(内陸鉱区 17、浅瀬の鉱区 15、深海域鉱区 14)をオファ

ーしており、2014年2月に正式に開封される予定である。政府は上流側の石油産業に競合

の道を開き、いくつかの民間や外国投資を引き付けてはいるが、依然として主に国有企業

が所有している。国際投資は未だかなり低く、ほとんどのアナリストはNELPがインドの

石油依存低減に限定的な成功を収めただけだとしている。

石油天然ガス省(MOPNG)は石油分野の探査や生産、精製、供給、販売を含む石油の

に関する全ての活動を統制している。MOPNG の下部組織である炭化水素総局は、石油分

野及び炭層メタン(CBM)プロジェクト上流側を統制している。もう一つの下部組織であ

る石油天然ガス規制委員会(PNGRB)は石油製品の販売や配送を含む下流側の統制を行っ

ている。

2002年までは、市場価格よりむしろ石油分野における投資への所定の運用益を許容する

との原則に従ったAdministered Pricing Mechanism(APM)に基づき、政府が石油製品の価

格を設定していた。2002 年以後は、灯油と LPG にのみ統制価格が残り、他の石油製品に

対しては石油会社自身で価格設定が可能となった。多くの石油販売会社は公定価格より安

価である事を訴求するべく市場レベル以下の小売価格で石油製品を販売し続けけている。

政府は家庭用燃料価格の改正を始め、2010年6月(2012年から発効)から公式にガソリン

価格の規制緩和を実施した。近年の高い国際石油価格と石油製品の需要増は燃料補助金の

増加を招き国の財政赤字を増やしている。そお燃料補助金のコスト上昇が政府にいくつか

の石油製品に対する小売価格の上限を上げることを促し、2013年1月から月ごとにディー

ゼル燃料小売価格の段階的な規制緩和を始めた。

インド国営 2 社である石油天然ガス開発公社(ONGC)とインド国営石油(IOC)がイ

ンドにおける石油生産と精製事業の大部分をコントロールしている。ONGCはインド 大

の石油生産事業者で、2012 年実績ではインド全体の石油生産量の約 69%を占めた。他方、

政府は歳入を上げる取り組みとして、ONGCの株式保有率をゆっくりと下げている。いく

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つかの民間企業はここ 10 年間で主要な企業として頭角を現わしてきた。英国企業 Cairn

Energy の子会社 Cairn India はラジャスタン州(22)とグジャラート州(7)およびインド

東部沿岸沖の Krishna-Godavari(KG)海盆での事業権益の過半数を得て、インドの原油生

産量合計の20%以上をコントロールしている。他の国際石油企業はインドの上流側市場の

権益をほとんど保持していない。精製分野ではリライアンス インダストリーズ社(RIL)

やエッサール石油(Essar Oil)などのインドの民間企業が主要な精製事業者になってきて

いる。

5. 天然ガス

5.1. 天然ガスの生産・消費・輸入

2014 年初頭時点のインドの天然ガス確認埋蔵量は 1.3 兆 m3である。その 66%がオフシ

ョアに、残り34%が内陸に存在している。2002年に複数のエネルギー企業はインド東部沿

岸沖の Krishna-Godavari(KG)海盆で数多くの大型ガス田を発見した。しかし、近年その

多くの成熟ガス田の生産量が落ちてきている。2012年のインドの天然ガス生産量合計は0.4

兆m3で、2013年はさらに減り続けると見込まれている。

2004 年までインドは天然ガスを自給自足していたが、同年にカタールからLNG の輸入

を開始した。同国は国際レベルの十分な天然ガスインフラを構築できず、且つ内需を満た

す量の天然ガスを生産できていないため、益々輸入LNG に依存している。2000〜2012 年

の間、天然ガスの消費量は年率8%で伸びた。2012年の消費量は0.6兆m3で、その約29%

は輸入LNGで充当している。2013年には日本、韓国、中国に次いで世界第4位のLNG輸

入国となっている。

インドでは天然ガスは主に発電用石炭の代わりに使われている。また、肥料産業におい

て LPG や他の石油製品の代わりとしても使われている。2012 年における天然ガスの大口

需要分野は発電用33%、肥料産業28%、家庭用15%となっている。

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図8 インドの乾性天然ガス生産量と消費量 (2000~2012年)

5.2. 天然ガスパイプライン

インドガス販売公社(GAIL)とReliance Gas Transportation Infrastructure Limited (RGTIL)

の2社がインドの大規模な天然ガスパイプラインを運用している。国営のガス配送および

販売会社であるGAIL はインド北西部で総延長5,300kmに及ぶ2 本の主要なガスパイプラ

インを操業している。即ち、グジャラート州(7)からデリー首都圏(F)に至る

「Hazira-Vijaipur-Jagadishpur (HVJ)ガスパイプライン」と「Dahej-Vijaipur (DVPL)ガ

スパイプライン」の2本である。同社は主にインド北西部でガス事業を行っており、イン

ドのガスパイプライン網全体の70%超を占有している。一方、ガス配送分野でインド 大

の民間企業であるRGTILは総延長1,400mのガスパイプラインを運用している。

不十分なガスパイプライン網と全国的に統一したシステムが欠落していることがインド

における天然ガス需要を制約している主要な要因である。2013年にインドの天然ガスパイ

プライン網の総延長距離は14,800kmを超えたが、現在進行中の5ヶ年計画では2017年ま

でに29,000kmに拡張するとなっている。

政府は数件の国際プロジェクトのガスパイプラインを経由して天然ガスを輸入すること

を検討していたが、いくつかは実行不可能なことが判明した。2005年にインドとバングラ

デシュ政府間の越境パイプライン交渉が失敗に終わった。2006 年にはインドは

「Iran-Pakistan-India(IPI)ガスパイプライン」プロジェクトから撤退した。

しかし、インド政府はトルクメニスタンからインドに至るガスパイプラインプロジェク

トには依然として参加している。Trans-Afghanistan パイプラインとして知られる

「Turkmenistan-Afghanistan-Pakistan (TAPI)ガスパイプライン」プロジェクトは10年間に

亘り議論されてきたが、地政学上のリスクと技術的な困難さがプロジェクトの開始を妨げ

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ている。だが、関係諸国は2010年に枠組み協定に署名し、当該プロジェクトをいくらかは

前進させた。2012 年初頭にはパイプラインルートに対する通貨関税の統一に合意した。

2012年5月、インドはトルクメニスタンとの天然ガス売買契約に署名し、2013年2月初め

には当該パイプラインプロジェクトの参加国が投資ファンドに寄与するための特殊法人を

承認した。2013 年 11 月、参加 4 ヶ国は当該プロジェクトの技術的かつ財政的なアドバイ

ザーとしてアジア開発銀行(ADB)を選任した。因みに、ADB は当該パイプライン建設

コストを100〜120億ドルと見積もっている。

図9 インドの天然ガスパイプライン経路図

(赤点線はTrans-Afghanistanパイプラインの計画経路)

5.3. LNG

インドが2004年にカタールからLNGを輸入し始めて以来、LNGが同国のエネルギー源

の重要な部分を占めるようになってきている。2013 年に天然ガス換算で 0.2 兆m3のLNG

を輸入し、インドは世界第4位のLNG輸入国になった。インドガス販売公社(GAIL)と

石油天然ガス開発公社(ONGC)とインド国営石油(IOC)および海外数社の合弁企業で

ある Petronet 社が LNG の大手輸入業者である。Petronet 社は 2 つの LNG 基地を所有して

いる。即ち、Daheji基地とKocni基地で、拡張工事中のDaheji基地は2016年までに能力を

1.5倍に増強される。インド企業はLNGの長期供給契約とより高価なスポット契約の双方

を結んでいる。2件の契約(ガス換算合計0.1兆m3)を締結したカタールのRasGas社が唯

一のインドへの天然ガス長期供給契約者で、2013 年にはインドのLNG 輸入量合計の84%

を占めた。2010 年以降は様々なLNG 輸出国から受け入れており、ナイジェリア、エジプ

ト、イエメンがインドへの短期的な供給国となっている。インドの天然ガス輸入業者は多

様な新しい LNG 資源を活発に探し求め、過去数年間にいくつかの短期および長期の売買

協定に署名している。オーストラリアのGorgon LNG基地と米国の3基地(Sabine Pass、

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Cove Point、Main Pass)からのLNG受入協定が該当する。

輸入 LNG の平均価格は国内産天然ガスの 3 倍に跳ね上がっている。なぜなら、それは

管理価格メカニズム(APM)に基づいて政府が決める価格に従わなくてもよいからである。

インドの天然ガス生産事業者は政府に深海域への投資を正当化する手段として天然ガスの

井戸元価格を上げるように要請している。もし、提案されたガス価格改正が実行されれば、

輸入 LNG との競合が増している国内のガス開発事業者にとって大きな投資の動機付けと

なるであろう。石油天然ガス開発公社(ONGC)とインド国営石油(IOC)の国営 2 社が

インドの天然ガス分野の上流側を支配している。なかでも、ONGCはインド 大の天然ガ

ス生産事業者で2012年実績では国内生産量の62%を占めた。

5.4. 非在来型天然ガス

5.4.1. 炭層メタン(CBM)

インドは 2001 年から炭層メタン(CBM)開発鉱区授与を開始したが、これらの鉱区か

らの生産開始には10年以上かかった。インド石油省は米国地質調査所(USGS)およびイ

ンドの石油天然ガス開発公社(ONGC)と共に資源評価を行い、インドの内陸とオフショ

アを合わせて 0.3~2.6 兆 m3の炭層メタン(CBM)が埋蔵されていると見積もっている。

しかし、2013年のインドの炭層メタン(CBM)生産量合計は未だ約1.6億m3に過ぎない。

5.4.2. シェールガス

2013年に実施された世界のシェールガス埋蔵量評価で、EIAは技術的に回収可能なイン

ドのシェールガス埋蔵量を2.7兆m3と推定している。2010年中頃にグジャラート州(7)

内陸部のCambay盆地で、米国の Joshi Technologies社がインドで 初のシェールガスを発

見した。インド石油省の発表によると、近い将来に政府がシェールガスとシェールオイル

開発についての政策を明らかにし、シェールガス開発鉱区の授与を開始するとこととなっ

ている。けれども、これまで1鉱区も授与されていない。

6. 石炭

6.1. 石炭の生産と消費

2011 年時点のインドの石炭確認埋蔵量は 668 億トンで世界第 5 位にランクされている。

同年実績では、石炭の生産量と消費量とも世界第3位である。インド炭は概して硫黄分は

少ないが灰分が多く、且つ発熱量は中位以下である。インドの炭鉱の約90%は露天掘りで

費用対効果に優れ、且つ労働者にとって危険性が少ない。しかし、環境に対する影響度は

より大きい。

石炭はインドの主要なエネルギー源の一つで、発電が石炭の大口消費分野となっている。

2011年には同国全体の石炭消費量の69%を発電分野が消費した。発電所は石炭に頼り切っ

ているため、石炭不足が全国至る所で停電を起こしている。ここ数年、発電分野の石炭需

要が増大している。また、鉄鋼業とセメント産業も大きな石炭消費分野である。コークス

は鉄鋼生産に重要な原料物質である。ジャールカンド州(11)が も多くのコークス用石

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炭の埋蔵量を保持しているが、産業用の需要を満たすまで十分に供給されていない。この

不足を補うため、インドは海外からコークス用石炭を輸入している。

図10 インドの石炭生産量と消費量 (2000~2012年)

6.2. 石炭の輸入

2012年、インドは海外から1億

7,900万トンの石炭を購入し、中国

と日本に次いで世界第3位の石炭

輸入国となっている。インドネシ

アが 大の輸入元で、図11のとお

り 2012 年実績では全石炭輸入量

の55%を占めた。発電用の一般炭

は主にインドネシアと南アフリカ

から、鉄鋼業と製鉄業に使うコー

クス炭はオーストラリアから輸入

している。

図11 インドの石炭輸入元 (2012年)

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<出典および参考資料>

(1) 米国DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート 、India Country Analysis Brief、

http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=IN

(2) HMEL 、Home Page 、http://www.hmel.in/about-us

(3) Bharat Petroleum Co.、Home Page 、

http://www.bharatpetroleum.com/EnergisingBusiness/refineries.aspx?id=1

(4) Hindustan Petroleum Co. Ltd 、Home Page 、

http://www.hindustanpetroleum.com/

(5) India Strategic Petroleum Reserve Ltd 、Home Page 、

http://www.isprlindia.com/aboutus.htm

(6) Encyclopedia Britannica 、Amerada Hess Corporation 、

http://global.britannica.com/EBchecked/topic/19223/Amerada-Hess-Corporation

(7) THE HINDU 、http://www.hindu.com/2004/04/03/stories/2004040305901605.htm

(8) Joshi Technologies 、Home Page 、http://www.joshitech.com

(9) Projects & Operations 、

http://www.worldbank.org/projects/P009818/cambay-basin-petroleum-project?lang=en

(10) 外務省ホームページ、各国情勢 、http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html

以上

本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析

したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected] までお願いします。

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次回の JPECレポート(2014年度 第14回)は

「中国第5の石油企業ChemChina」

を予定しています。