ブラジルの税制と投資ƒ«ープ企業の商品を販売する。...

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ブラジルの税制と投資 Tax and Investment Profile Federative Republic of Brazil 2018

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Deloitte Touche Tohm

atsu Limited

ブラジルの税制と投資

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ブラジルの税制と投資Tax and Investment ProfileFederative Republic of Brazil 2018

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2,038 2016

2018 2

2018 3

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目次

第1章 概況

I. 地理 ………………………………………………………………………… 1

II. 気候 ………………………………………………………………………… 1

III. 人口と言語 …………………………………………………………………… 1

IV. 通貨 ………………………………………………………………………… 1

V. 政治 ………………………………………………………………………… 1

VI. 経済 ………………………………………………………………………… 1

VII. 銀行および金融 ……………………………………………………………… 1

VIII.外国貿易 …………………………………………………………………… 2

第2章 事業体の選択

I. 株式会社 (S.A.) および有限責任会社 (Limitada) の要件 …………… 5

II. 支店設立 …………………………………………………………………… 8

III. 会社設立 …………………………………………………………………… 8

第3章 事業を行うに際しての規制

I. 登録および許可 ……………………………………………………………… 11

II. 価格統制 …………………………………………………………………… 11

III. 取引の独占および規制 ……………………………………………………… 12

IV. 知的財産 …………………………………………………………………… 12

V. 合併および買収 ……………………………………………………………… 12

VI. 外国投資に対する奨励および規制 ………………………………………… 13

VII. 外国為替管理 ……………………………………………………………… 14

VIII.腐敗防止法 ………………………………………………………………… 14

第4章 法人税

I. 概要 ………………………………………………………………………… 17

II. 課税所得および税率 ………………………………………………………… 18

1. 税率 ……………………………………………………………………… 18

2. 損金処理 ………………………………………………………………… 19

3. 償却 ……………………………………………………………………… 19

4. 損失 ……………………………………………………………………… 19

5. 利子配当 ………………………………………………………………… 20

III. キャピタル ・ ゲイン課税 …………………………………………………… 20

IV. 源泉税 ……………………………………………………………………… 20

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1. 配当 ……………………………………………………………………… 20

2. 利子 ……………………………………………………………………… 20

3. 使用料 …………………………………………………………………… 20

V. 国外所得および租税条約 …………………………………………………… 21

VI. 関連者間取引 ……………………………………………………………… 23

1. 移転価格税制 …………………………………………………………… 23

2. 過小資本税制 …………………………………………………………… 24

3. 特定外国子会社 (Controlledforeigncompanies) …………………… 25

4. 連結納税 ………………………………………………………………… 25

VII. 売上税および他の間接税 …………………………………………………… 25

1. 輸入税 (II) ……………………………………………………………… 25

2. 社会統合計画 (PIS) および社会保険融資負担金 (COFINS) ……… 25

3. 工業製品税 (IPI) ……………………………………………………… 26

4. 商品流通サービス税 (ICMS) ………………………………………… 26

5. サービス税 (ISS) ……………………………………………………… 26

VIII.その他の税制 ……………………………………………………………… 26

1. 金融取引税 (IOF) ……………………………………………………… 26

2. 特別財源負担金 (CIDE) ……………………………………………… 27

3. 都市不動産所有税 (IPTU) …………………………………………… 27

4. 農地所有税 (ITR) ……………………………………………………… 27

5. 自動車所有税 (IPVA) ………………………………………………… 27

6. 不動産譲渡税 (ITBI) ………………………………………………… 27

7. 資産の無償移転税 (ITCMD) ………………………………………… 27

8. 社会保険 (INSS) ……………………………………………………… 28

IX. 税務申告および管理 ………………………………………………………… 28

第5章 個人所得税

I. 税率 ………………………………………………………………………… 29

II. 居住性の判断 ……………………………………………………………… 29

III. 課税所得および税率 ………………………………………………………… 30

IV. 海外駐在員向け特別税制 ………………………………………………… 31

V. 資本税 ……………………………………………………………………… 31

第6章 労働環境

I. 労働者の権利 ……………………………………………………………… 33

II. 賃金および給付 ……………………………………………………………… 33

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III. 社会保険 …………………………………………………………………… 34

IV. 雇用の終了 ………………………………………………………………… 35

V. 労使関係 …………………………………………………………………… 35

VI. 外国人の雇用 ……………………………………………………………… 36

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第1章 概況

I. 地理 ブラジル(正式国名はブラジル連邦共和国、Federative Republic of Brazil)の面積は

851.2万平方キロメートル(日本の 22倍超)と南米大陸の約半分(47.3%)を占めている。 II. 気候 気候は熱帯性気候、亜熱帯性気候、半砂漠型乾燥気候、高地の亜熱帯性気候、温帯性

気候に分類される。国土の 90%は熱帯地域に属するが、人口の 60%以上は温暖な地域に住んでいる。 III. 人口と言語 ブラジルの人口は約 2億 784万人(世界銀行、2015年)、公用語はポルトガル語である。

IV. 通貨 通貨はブラジル・レアル(BRL)であり、1991年以来、変動相場制を採用している。

V. 政治 ブラジルは共和国である。大統領は、下院(Chamber of Deputies)および上院(Senate)

で可決された政策を実行する。憲法見直しは独立した司法機関により行われる。 VI. 経済 豊富な天然資源に恵まれており、農業、畜産、林業および金属鉱業等、数多くの分野の生

産/産出に関して国際的に有利な条件下にある。 VII. 銀行および金融 多様かつ力強い伸びを見せているブラジルの金融セクターで中心的な役割を果たしている

のは商業銀行である。金融セクターの成長により形成された金融コングロマリットにおいては、

通常、商業銀行がグループの中心となり、投資銀行、保険会社およびリース金融会社等のグ

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に積極的である。 金融および商業の中心地はサンパウロだが、首都はブラジリアで、ここにほとんどの政府

機関が所在する。政府機関や銀行の中には、以前の首都であるリオデジャネイロに今でも本

部を置くものもある。 VIII. 外国貿易 ブラジルは、アルゼンチン、パラグアイ、ベネズエラおよびウルグアイと共に南米南部共同

市場(メルコスール)の加盟国である。1995 年に締結されたメルコスール関税同盟の概要は以下のとおりである。 原産地ルール(rules of origin): 原材料の現地調達率が 60%あれば、メルコスール加盟国

同士の取引は関税ゼロとなる。 例外関税リスト: メルコスール共通対外関税リストから免除される各加盟国の輸入品の種

類が明記されている。

二国間協定: ブラジルのマナウスフリーゾーンまたはアルゼンチンのティエラ・デル・フエゴで製造された製品のメルコスール域内における貿易は全て免税扱い。 またメルコスール加盟国はメキシコと自動車協定をそれぞれ締結し、自動

車とその部品の関税を相互に条件付きで免除している。 メルコスール加盟国がアンデス共同体(ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルーおよびベ

ネズエラ)の貿易圏統合に合意した 2004年メルコスール-アンデス共同体自由貿易圏(The 2004 Mercosur-Andean Community Free-Trade Area)では、輸入関税を条約署名から 15年以内に撤廃すべきであるとしている。メルコスール域内およびラテンアメリカ統合連合

(Latin American Integration Association)域内でこれまでに締結された二国間協定を尊重するため、メルコスール-アンデス共同体自由貿易圏に関しては、9 つの加盟国の間の輸入関税の引き下げおよび最終的な撤廃について 67の計画が予定されている。ブラジルは世界貿易機構(WTO)およびラテンアメリカ統合連合の加盟国でもある。

2004年メルコスールは、ボツワナ、レソト、ナミビア、南アフリカおよびスワジランドから成る南部アフリカ関税同盟(South African Customs Union)との貿易に関する特恵関税協定に署名した。当該協定は、関税の漸次引き下げおよび最終的な撤廃を意図するものである。同

様の協定が 2005年インドと結ばれている。

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また 2018年 1月現在において、メルコスールはEUと自由貿易協定(FTA)交渉中であり、別途、日本政府とも経済関係緊密化の対話を続けている。

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第2章 事業体の選択

事業の主な形態 外国企業は、既存の会社の買収またはブラジル子会社の設立により、ブラジル国内で事

業を行うことができる。外国企業の進出に適した形態は、有限責任会社( limited liability company; Limitada)と株式会社(Socidade Anónima; S.A.)の 2種類あり、その他の形態は外国からの投資には適していない。Limitada の設立は株式会社設立に比べ、事務手続きや開示が少ない。そのため多くの外国企業は Limitada の設立を選択することが多い。なお、買収による投資のケースで、買収先が株式会社であっても後に有限責任会社に会社形態を変

更することは可能である。 I. 株式会社(S.A.)および有限責任会社(Limitada)の要件 (1) 資本

S.A. : 上限も下限もなし。資本は全額引受され、最低 10%を銀行に預金する。現金または現物での払い込みが可能(現物出資の場合は、株主が指定する 3 人の専門家または専門機関による評価の後に株主が評価を行う)。年間所得の

最低 5%を資本金額の 20%に達するまで法定準備金として積み立てる。 Limitada : 上限も下限もなし。設立証書(founding deed)を改定するだけで資本金の変

更が可能。法定準備金に関する要件はなし。 (2) 設立者、株主

S.A. : 完全子会社の場合を除き、最低 2 人の設立者が必要。国籍要件も居住性要件もないが、外国株主はブラジルに法定代理人を置く必要がある。

Limitada : 最低 2 人。業務執行株主(managing shareholder)は必ずしもブラジル居住

者である必要はない。業務遂行のため海外の出資者は現地居住者に委任、

または経営を委任する個人を株主代理人として派遣することができる。業務

執行とは別にすべての外国持分所有者(foreign quota holders)はブラジルに法定代理人を置く必要がある。

(3) 取締役

S.A. : 最低 2人。居住者でなくてはならない。

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Limitada : 最低 1人。定款で general manager として任命される。S.A.と同様に居住者でなくてはならない。

(4) マネジメント

S.A. : 上場企業の場合は、経営審議会(administrative council)が必須。取締役会には最低3人のブラジル居住者が必要である。上級取締役のうち最低2人の個人がブラジル居住者でなければならない。構成員は株主により任期 3 年を上限として選出される。審議会はその構成員を選出および解任し、職責を決

定する。最大 3分の 1までの構成員が取締役と兼任できる。 Limitada : なし。

(5) 労働組合

S.A.および Limitada : 付属定款に規定されていない限り、労働組合代表が経営陣に加わる必要はない。

(6) 報告

S.A.および Limitada : 公開会社および公開会社以外の大会社(総資産の額がBRL2億4千万超または総収益 BRL3 億超の会社)の場合、国際会計基準(IFRS)に基づいて財務諸表を作成することに加えて、独立会計監査人による監査を受ける義務がある。なお、IFRS は 2010 年から施行されている。S.A は年次報告書、貸借対照表、損益計算書、

キャッシュフロー計算書、その他および年次総会の議事録を

Diario Oficial と名の通ったもう一紙に掲載しなくてはならない。 (7) 法人設立に際しての税金および手数料

S.A. : 登録費用(商業登記簿(Commercial Registry)および INPIへの登録)、弁護士費用および公証人費用は費用に含まれる。弁護士費用および公証人費用

は案件の複雑さや資本金によって金額が異なる。 Limitada : 商標登録コスト(企業が自身のブランドの保護を望む場合)、弁護士費用およ

び公証人費用 (8) 株式の種類

S.A. : 株式には額面価額を設定する必要はないが、額面価額がある場合は額面価額よりも低い額で発行できない。企業は、普通株式、優先株式、転換優先株

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式および発起人株を発行できる。議決権株式は ordinarias、優先株式はpreferenciais と呼ばれる。普通株式は全て同等の議決権を有する。優先株式は様々な種類のものを発行できる。優先株式が全発行株式の 3 分の 2 超を占めることは認められず、通常、3 年間無配が続いた場合、議決権を獲得する。2001 年 11 月 1 日以後に設立された企業またはその日以後に優先株式を発行した企業については、優先株式が全発行株式の 2分の 1を超えることは認められない。

発起人株を発行できるのは非上場企業のみであり、役務の対価(無形出資に

は額面価額がなく、資本として認められない)として与えられる。発起人株に

は利益の 10%までの権利を付与することができる。2001年 11月 1日以後に設立された S.A.については、優先株式数が発行済み株式総数の半数を超えてはならない。

既存の非上場企業が 2001 年 11 月 1 日以後に上場した場合も同様の制限が課せられる。2001年 10月 31日以前に設立された上場企業は、優先株式と議決権株式の上場前の比率を維持できる。株式公開買い付けにおいては

公募を行わなくてはならず、上場企業の 10%以上の持分(支配持分ではない)を保有する企業が当該上場企業の株式を取得する際には、証券取引委

員会(Securities Commission)の事前認可が必要である。上場企業の資本の 5%以上を単独で占める株主は情報開示を要求できる。

Limitada : 資本は各パートナーに配分される(各パートナーが責任を負う債務額)。定款

が規定している場合、構成員は、他のすべての構成員の同意なしに自身の

持分を売却することはできない。 (9) 支配

S.A. : 設立許可書(charter)の規定がない限り、少数株主は代表権を持たない。経営審議会(administrative council)が必要な際は、少なくとも 0.1%以上の議決権付き資本(corporate capital)を占める株主が、構成員を選出または解任するための複数議決権手続き(multiple voting procedure)を採択することができる。2002年 11月 1日以後に法人設立した上場企業については、議決権株式の 15%を占める株主または議決権のない優先株式の 10%を占める株主が、構成員を一人選出または解任できる。資本の 10%を占める株主は、財務審議会(fiscal council)の構成員を一人選出する権利(財務審議会の構成員が存在する場合)を有する。少数株主は、株主契約を通じて企業経営を

支配することができる。

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Limitada : 企業の設立証書(founding deed)に規定されているもの以外には規定なし。 II. 支店設立 企業はブラジルに支店を設立できる。しかし、設立までの期間がおおよそ 6 ヵ月かかり、設

立コストは他の業務形態とほとんど変わらないため、投資元国において相当の税制優遇(本

社課税所得からの為替損失控除等)がない限り、支店設立のメリットよりデメリットの方が大

きい。なお、支店利益等の利益送金に対する源泉税は免除される。 外国企業が支店を設立するには大統領命令が必要であり、支店のブラジルにおける名称

は母国と同じでなくてはならない(「do Brazil」または「para o Brazil」の言葉を追加することはできる)。また、全てに対して責任を有する常駐の代表者(国籍については規定なし)を保持し

なくてはならず、代表者の名前は登録する必要がある。 必要な政府認可の取得のため、外国企業は、その法的存在の根拠となる文書、定款の写

し、株主リスト、直近の貸借対照表およびブラジルでの支店開設に関する決議書の写しを提

出しなくてはならない。また、企業は一定額の資本金をその支店に配賦し、法的代理人(legal representative)を任命しなくてはならない。提出文書は全て公証され、ブラジル領事館による認証を受け、公的に翻訳されていなければならない。 支店は、登録し、その許可および証明文書が官報および地元の新聞に告知されるまでは

支店として機能しない。S.A.と同様の決算文書を保持しなくてはならず、付属定款および/または母国の法律によるが、その年次財務諸表以外の法人情報(corporate documents)をブラジルにおいて公表しなくてはならない。なお、年次総会を開催する必要はない。 III. 会社設立 株式会社は、上場企業または非上場企業として設立することができる。上場企業とはその

株式が株式市場または店頭市場で取引されている企業である。 有限責任会社は株式会社と似ているがより簡単な手続きで設立され、外部監査を必要とし

ない。また開示はほとんど求められない。Limitadaが、営業費用または当期利益等の財務情報を開示することはめったにない。Limitada は株式市場に登録することはできず、公的に証券取引所で取引することもできない。資本の銀行への最低必要預入金額もない。定款

(articles of association)で特に規定されていない限り、構成員は他のすべての構成員の同意なしに企業の持分(called quotas)を売却することはできない。Limitada は優先株式また

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は社債を発行することはできない。Limitadaはおおよそ 2週間で設立が可能で、Limitadaが営業するための追加の政府登録は事業活動および各法人の所在地によって異なる。 ブラジル新市場(Brazilian New Market)へ上場するには、ブラジル法上の基準よりも高い

基準のコーポレートガバナンスを満たさなくてはならない。例えば、ブラジル新市場の上場企

業は、議決権株式しか発行できず、資本金の少なくとも 25%に相当する株式を保有し、GAAPに準拠した年次報告書を提出する。

会計、工学、経済企画、工業デザインまたはマーケティング等の専門サービスを提供する

ためには、無限責任の小規模企業を設立することができる。簡易税制または最低代替税制

の対象にならない限り、これらの企業は事実上、標準税率で課税される。その形態に関わら

ず無限責任の小規模企業はすべて市町村のサービス業設立登記所(board of trade)に登録しなければならない。

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第3章 事業を行うに際しての規制

I. 登録および許可 ブラジルは、知的財産に関する法律を全面的に改定し、商標使用、技術移転およびフラン

チャイズ等のライセンス契約を増やし始めている。 国立工業所有権院(National Institute of Industrial Property; INPI)は、特許、商標、製造

プロセス、技術およびノウハウ等の工業所有権に関する事柄を管理する。INPI の本部はリオデジャネイロにあり、全ての業務を提供する 9つの支部および多くの事務所を全国に有する。使用料および手数料を海外に送金するには、所有権を登録した資産および技術移転はその

形式に関わらず全て INPIに登録しなければならない。関連費用の控除可否も一定の登録要件にかかっている。

INPI は、ライセンシー(被許諾者)の輸出を規制または管理、輸入材料または部品の原産地を規定するようなライセンス契約を承認することはない。このような取り決めはブラジルの

独占禁止法に違反するからである。 技術援助または技術移転契約の登録をするには、INPI に申請しなくてはならない。このよ

うな契約は通常5年間にわたって登録されるが、追加で更に5年延長することができる。技術移転でさらに時間が必要であれば、当局が延長を許可する場合がある。しかし、INPI が登録期間の 5 年延長を認めるのはまれであり、5 年未満の登録延長が通例である。INPI が技術移転期間を変更する権限は裁判所の判決によっても支持されている。 手数料を送金するには、INPI からの証明書および中央銀行への登録が必要である。親会

社または外国の非関連者であるライセンサー(許諾者)への使用料および手数料の送金は

通常、総売上の 1%-5%(製品の種類による)に制限されている。また、商標使用の支払いについては上記 5 年の制限はなく、契約期間の間、送金が認められている。売上高の 1%が送金の限度である。 II. 価格統制 国有企業または地方政府が供給する公共財および公共サービスの中には、現在も政府の

統制下に置かれているものがある。鉄道、電気通信および電気等の多くの公共サービスおよ

びインフラ投資は私有化、もしくは政府許認可という形で私有経営に移転されたが、連邦政

府は依然、これらのセクターを管轄する規制当局を通じて、料金および価格を監督している。

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III. 取引の独占および規制 1994年法第 8884号では一定の独占行為を禁止している。価格または販売条件に関する

同業者との談合、市場または供給源の配賦、新規参入者に対する市場参入規制、情報、機

器または流通経路へのアクセス阻害、公共調達事業入札での談合、そして生産制限協定な

どが禁止されている。 ブラジルおよびアルゼンチンの政府は 2003年、反競争的な行為に関する情報をそれぞれ

の独占禁止関連の団体が交換することに合意した。この協定には、問題がメルコスールに関

係する場合、ブラジルおよびアルゼンチンが行った分析をどのような条件でウルグアイおよび

パラグアイと共有するかについても規定している。 IV. 知的財産 前述のとおり、ブラジルは、著作権、特許、商標および工業デザインの保護強化を意図して、

知的財産に関する法制を全面的に改定した。 V. 合併および買収 独占的な状況を生み出すこと、または支配的な地位を濫用するような合併(一企業が地元

の市場における競争を排除することができるようになってしまう可能性のある合併)のみが禁

止されている。 市場の 20%以上を支配することとなる買収または合弁事業契約については、経済擁護行

政委員会(Administrative Council for Economic Defense; CADE)の認可を取得しなくてはならない。合算収益が BRL4億以上となる企業同士の合併についても CADEの審議が必要である。 石油、エネルギーおよび電気通信セクターにおける合併ならびに買収については、管轄の

規制当局による審議および認可が必要である。さらに、一般電気通信法(General Telecommunications Law)は、企業のパートナーが同業他グループの資産の 5%超を保有することを禁止している。 金融サービスセクターの合併および買収については、中央銀行が審議し、通貨審議会

(National Monetary Council)が認可する。ブラジルに参入する外国企業は大統領命令の発布を受ける必要がある。外国の金融機関は子会社を通じてブラジル市場に参入することはで

きない。代わりに、外国銀行は、ブラジルの金融機関を買収するか、既存の金融機関に出資

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しなくてはならない。

VI. 外国投資に対する奨励および規制 外国資本はブラジルへ自由に入ることが可能であり、通常はブラジル国内の資本と同様に

取り扱われる。外国資本による支配権取得を明示的に禁止する規定はないが、必要な登録

を行わないまま、株式市場での株式取得による支配権の取得はできない。 法的に登録を済ませた企業は、外国企業であれブラジル企業であれ、同じ権利および特

典を享受でき、契約入札や政府からの資金調達の際に対等の立場で競争する。外国企業は

鉱物採掘事業を行うこともできる。 外国投資家は、ブラジルの民間金融機関に資本参加することができるが、まず、中央銀行

に提案書を提出しなくてはならない。中央銀行は提案書を通貨審議会に提出し、認可申請を

行う。その後、大統領が大統領命令に署名をし、資本参加が正式に認められることとなる。 外国企業は、支店設立に該当せず、また金融サービス等の制限産業に従事しない限り、ブ

ラジルで事業を開始するにあたり、政府から特に認可を取得する必要はない。しかし、外国か

らの対内投資は 30 日以内に中央銀行に登録する必要があり、資本や配当を源泉徴収せずに本国へ送金する権利を取得、またはその他の手数料を送金するためには登録が必要であ

る。また、海外送金は特別規制の対象である。外国の技術に対する支払い、特に外国の親

会社への支払いも管理されており、当局への登録が必要である。 外貨債務の資本転換または為替予約付きの物品輸入による外国投資は、中央銀行から

の認可を必要とする。前者の場合、当該留保利益を企業の資本に含め、資金流入から 30日以内に登録申請を行わなければならない。後者の場合は、通常の輸入から生じる外国為替

予約付きの貿易債務を外国直接投資とみなし、全額両替可能かつ本国送金の権利の付いた

外国資本として登録する場合がある。ドローバック制度(加工して輸出を約束)や一時輸入制

度のもとで輸入されたため無為替で、ブラジルの輸入者が所有する資産としては登録されな

い輸入品は、外国直接投資として処理、登録することはできない。 プロジェクトで財政的な優遇策を受けるには関連当局からの認可が必要である。ほとんど

の優遇策は、輸出業者、発展途上の北部および北東部への投資、自動化を検討中の企業な

らびに特別セクター開発プログラムにおける他のプロジェクトに対し、連邦政府が認可する。

海外投資家は自由に事業を拡大することができるが、当初の投資に対して付与された優遇

策は、拡大された事業は自動的には適用されない。投資家は該当する当局に申請を行わな

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くてはならない。 VII. 外国為替管理 ブラジルの為替管理を行っているのは通貨審議会(National Monetary Council)である。

中央銀行は政策実行を担当しており、特に外国投資および為替を処理する部署を数多く有し

ている。 企業は通常、外国為替取引に対する事前認可を取得する必要はない。ただし、取引記録

を中央銀行に(オンラインで)提出しなくてはならない。 中央銀行はブラジル内における全ての外国投資(株式または債務)の登録を義務付けてい

る。投資家は、中央銀行が認可する金融機関から外国為替を直接購入する権利を確保する

ために登録を行う必要がある。投資家は、例えば、配当送金、利払いまたは資本の本国送金

を決定するたびに外国為替を購入する必要がある。銀行口座はブラジル通貨建てでなくては

ならず、中央銀行が設ける例外口座(例えば石油、ガスおよびエネルギーへの投資に関する

銀行口座等)以外は、外国通貨建て口座はブラジルでは禁止されている。 租税回避を防止するため、入国者および出国者は、R$10,000 相当の外貨、内貨を超える

現金を所持している場合は税関で申告しなくてはならない。税関はこれらの申告を連邦歳入

局(Secretariat of Federal Revenue)に報告する。 ブラジルは公的な商業用為替相場および「旅行者用」の変動為替相場を有している。

商業用為替相場は、輸出入取引、ブラジルにおける外国株式投資および融資等に適用

される。旅行者用為替相場は、ブラジル国外を旅行する個人がレアルを外国通貨に両替す

る際、または、ブラジル国内を旅行する外国人が外国通貨をレアルに両替する際に適用さ

れる。 VIII. 腐敗防止法

2014年 1月にブラジル腐敗防止法および 2015年 3月に同法施行令が施行された。これらは、ブラジル国内外の公共行政に対する法人罰を定める包括的規制法となっており、直接、

間接を問わず、公務員またはそれに関係する者に不当な利益を供与または約束等をした場

合の法人に対する司法処分(違反行為により取得された資産等の没収、事業の全部または

一部の停止、法人の強制解散、1~5 年の公共団体等からの補助金や税制優遇措置の禁止)および行政処分(前年度の総売上高の 0.1%~20%の罰金、違反事実の新聞、官報や

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Web 上での公表)について定めたものである。行政処分の決定に際しての考慮要素として内部統制が明記され、また、リニエンシーについても明記されている。

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第4章 法人税

I. 概要 ブラジル税制はおもに 1988 年連邦憲法(Federal Constitution)、1966 年国税法

(National Tax Code)、および連邦所得税法(Federal Income Tax Code)により規制されている。会社(companies)、有限責任会社(limited liability companies)、パートナーシップ、個人事業主、ならびに国外に本店を置く企業の支店および代理店を含む、ブラジル居住者であ

る民間事業体は、全て納税義務を負う。 税制は連邦税、州税および市町村税からなる。

ブラジルの法人税制は複雑であり、連邦政府により課される税には (1) 法人税(IRPJ) (2) 利益に対する社会負担金(CSLL) (3) 社会統合計画(PIS) (4) 社会保険融資負担金(COFINS) (5) 工業製品税(IPI) (6) 金融取引税(IOF) (7) 特定財源負担金(CIDE) (8) 農地所有税(ITR) (9) 社会保険院への負担金(INSS) がある。加えて輸入税(II)および輸出税(IE)が課される。

ブラジルの州およびブラジリア連邦直轄区(Federal District of Brasilia)では、物品および

サービスの流通に対して付加価値税(VAT)のひとつである商品流通サービス税(ICMS)が課されるほか、自動車所有税(IPVA)ならびに相続または贈与による資産の無償移転税(ITCMD)が課税される。 市町村および連邦直轄区では、サービス税(ISS)に加え、都市不動産所有税(IPTU)およ

び不動産譲渡税(ITBI)が課税される。 世界銀行の2016年の調べによればブラジルでは年間約2,000時間の税務対応工数が必

要と発表されており、主要先進国の 300時間前後と比較すると圧倒的な手間となっている。

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II. 課税所得および税率 居住者である企業は、全世界所得に対して課税される。ブラジルで法人設立された企業は、

ブラジルの居住者とされる。 外国企業は、ブラジルに拠点を置き、かつ、国内の買主に対して外国売主を法的に拘束す

る権限を有する代理人もしくは代表者、または外国売主のブラジル支店を通じてブラジルに

おいて一定の販売活動を行う場合にのみ、ブラジルにおいて課税対象となる。代表者が代理

人を務める場合、最終的な取引が国外において非居住者企業により行われる場合は、ブラ

ジルに法的な所在があるとはみなされない。

1. 税率 法人税(IRPJ)は事業体の課税利益に対して税率 15%で課される。年間 BRL24万を超過

する課税所得に対しては、IRPJに加え、10%の付加税が課税される。 利益に対する社会負担金(CSLL)は、ブラジル連邦社会保障制度の助成を目的に、IRPJ

の課税対象となる事業体に対して課税される。税率は金融機関に対しては 15%、他の機関に対しては 9%である。 企業がブラジルにおいて稼得した営業利益に対しては、基礎所得税が課される。営業利益

は、総営業収入(gross operating receipts)から、売上原価または提供したサービスの原価、広告・管理・営業費用、その他費用、準備金および法律により認められた損失を差し引いた

額である。他のブラジル企業からの受取配当および新株発行の際に受け取ったプレミアム部

分は課税所得には含まれない。 ブラジル企業は、実際所得に対する課税(Lucro Real)と推定所得に対する課税(みなし課

税所得制度; Lucro Presumido)のどちらかを選択することができる。Lucro Real方式は、暦年の年間または四半期課税所得に基づく課税方法で、Lucro Presumido 方式は、推定またはみなし課税所得に基づく課税である。

Lucro Real 方式における課税標準は、IRPJ および CSLL 控除前当期利益に、控除不可能な費用を加算し、配当所得等の非課税所得を減算した額である。IRPJおよびCSLLは、翌月の最終営業日までに支払う必要がある。

みなし課税所得制度(Lucro Presumido)は、前年度の総売上がBRL7,800万未満の企業

が選択できる税制であり、四半期ごとに計算される。IRPJおよび CSLLは、各四半期の売上に特定の比率を乗じて得られる値に、未収のその他収益およびキャピタル・ゲインを加えて算

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II. 課税所得および税率 居住者である企業は、全世界所得に対して課税される。ブラジルで法人設立された企業は、

ブラジルの居住者とされる。 外国企業は、ブラジルに拠点を置き、かつ、国内の買主に対して外国売主を法的に拘束す

る権限を有する代理人もしくは代表者、または外国売主のブラジル支店を通じてブラジルに

おいて一定の販売活動を行う場合にのみ、ブラジルにおいて課税対象となる。代表者が代理

人を務める場合、最終的な取引が国外において非居住者企業により行われる場合は、ブラ

ジルに法的な所在があるとはみなされない。

1. 税率 法人税(IRPJ)は事業体の課税利益に対して税率 15%で課される。年間 BRL24万を超過

する課税所得に対しては、IRPJに加え、10%の付加税が課税される。 利益に対する社会負担金(CSLL)は、ブラジル連邦社会保障制度の助成を目的に、IRPJ

の課税対象となる事業体に対して課税される。税率は金融機関に対しては 15%、他の機関に対しては 9%である。 企業がブラジルにおいて稼得した営業利益に対しては、基礎所得税が課される。営業利益

は、総営業収入(gross operating receipts)から、売上原価または提供したサービスの原価、広告・管理・営業費用、その他費用、準備金および法律により認められた損失を差し引いた

額である。他のブラジル企業からの受取配当および新株発行の際に受け取ったプレミアム部

分は課税所得には含まれない。 ブラジル企業は、実際所得に対する課税(Lucro Real)と推定所得に対する課税(みなし課

税所得制度; Lucro Presumido)のどちらかを選択することができる。Lucro Real方式は、暦年の年間または四半期課税所得に基づく課税方法で、Lucro Presumido 方式は、推定またはみなし課税所得に基づく課税である。

Lucro Real 方式における課税標準は、IRPJ および CSLL 控除前当期利益に、控除不可能な費用を加算し、配当所得等の非課税所得を減算した額である。IRPJおよびCSLLは、翌月の最終営業日までに支払う必要がある。

みなし課税所得制度(Lucro Presumido)は、前年度の総売上がBRL7,800万未満の企業

が選択できる税制であり、四半期ごとに計算される。IRPJおよび CSLLは、各四半期の売上に特定の比率を乗じて得られる値に、未収のその他収益およびキャピタル・ゲインを加えて算

出された推定利益に対して課税される。IRPJ の課税所得は、サービス収益に関しては 32%、製品・物品売上に関しては 8%の係数を用いて算出される。CSLLの計算に用いられるみなし利益率は、サービス収益に関しては 32%、製品・物品売上に関しては 12%である。IRPJおよび CSLLは、四半期ごとに、当該四半期終了翌月の最終営業日までに支払う必要がある。

2. 損金処理 企業活動のために必要な費用は、通常控除することができる。外貨建債務の為替差損益

は、納税者が年ごとに行う選択に基づき、発生主義または現金主義により課税される。発生

主義においては毎月、(実現の有無を問わず)為替差益は課税され、為替差損は控除される。

現金主義においては、為替差損益は実現時にのみ控除・課税される。 控除は、特別規定により制限される場合がある(使用料および報酬の控除制限等)。役員

に対して支払われるフリンジ・ベネフィットは控除できない。

3. 償却 税法上、減価償却費は定額法により計算される。固定資産は、特別規定においてより高い

償却率が定められていない限り、所定の資産区分ごとに指定されている償却率を用いて償

却する。年間償却率は建物に関しては 4%、車ならびにコンピューターのハードウェアおよびソフトウェアに関しては 20%、機械、設備および機器に関しては 10%である。 税法上、1日に 2交代制により操業している企業は、通常の償却率の 1.5倍の償却率によ

り、生産用の固定資産を償却することができる。1 日に 3 交代制により操業している企業は、通常の償却率の 2倍の償却率を用いることが認められる。 認可された税制恩典の対象となる技術開発投資では、研究開発に使用される機械および

設備について加速償却が認められる。 税法上、1,200 レアル以下の少額固定資産については、取得年度に費用処理することが

できる。

4. 損失 損失は「営業損失」と「非営業損失」に分けられる。非営業損失(固定資産等の売却損な

ど)は、非営業利益とのみ相殺可能である。ある事業年度に発生した税務欠損金(tax loss)は無期限に繰越可能であるが、繰越額は繰越年度の課税所得の 30%を上限とする。欠損金の繰戻は認められない。

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5. 利子配当 ブラジル法人税では、通常の配当の他に出資者に利子配当(投下資本に対する利息の支

払)を行うことができ、以下の条件を満たす場合、損金算入が認められている。 (i) 実際所得に対する課税(Lucro Real)方式に基づき法人税の納税申告を行う法人で

あること (ii) 利子配当は純資産に利率を乗じて算定されるが、利率はブラジル中央銀行の定める

長期金利(TJLP)以下であること (iii) 利子配当計上額は以下の控除限度額内であること

(a) 利益剰余金の 50% (b) 利子配当および法人税(IRPJ)計上前、かつ利益に対する社会負担金(CSLL)

控除後の当期利益の 50% III. キャピタル・ゲイン課税 キャピタル・ゲインは、通常利益と同様に取り扱われる。(キャピタル・ロスと通常利益の相

殺は制限される場合がある)。非居住者が、中央銀行に登録した投資により実現したキャピタ

ル・ゲインに対しては 15%の源泉税が課される。軽課税国の居住者が稼得したキャピタル・ゲインの場合、源泉税率は 25%に引き上げられる。金融市場の外国投資家に対しては異なる税率が適用される場合がある。 IV. 源泉税 1. 配当 非居住者および居住者に対する支払配当に源泉税は課されない。

2. 利子 非居住者に対する支払利子には、通常 15%の源泉税が課される(日本居住者の場合、

12.5%)。利子の受領者が軽課税国とされる国(すなわち所得に対する税率が 20%未満の国)の居住者である場合、源泉税率は 25%に引き上げられる。

3. 使用料 非居住者に対する支払使用料には、通常 15%の源泉税(日本居住者の場合、12.5%)お

よび 10%の特定財源負担金(CIDE)が課される。受領者が軽課税国とされる国の居住者である場合、源泉税率は 25%に引き上げられる。

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5. 利子配当 ブラジル法人税では、通常の配当の他に出資者に利子配当(投下資本に対する利息の支

払)を行うことができ、以下の条件を満たす場合、損金算入が認められている。 (i) 実際所得に対する課税(Lucro Real)方式に基づき法人税の納税申告を行う法人で

あること (ii) 利子配当は純資産に利率を乗じて算定されるが、利率はブラジル中央銀行の定める

長期金利(TJLP)以下であること (iii) 利子配当計上額は以下の控除限度額内であること

(a) 利益剰余金の 50% (b) 利子配当および法人税(IRPJ)計上前、かつ利益に対する社会負担金(CSLL)

控除後の当期利益の 50% III. キャピタル・ゲイン課税 キャピタル・ゲインは、通常利益と同様に取り扱われる。(キャピタル・ロスと通常利益の相

殺は制限される場合がある)。非居住者が、中央銀行に登録した投資により実現したキャピタ

ル・ゲインに対しては 15%の源泉税が課される。軽課税国の居住者が稼得したキャピタル・ゲインの場合、源泉税率は 25%に引き上げられる。金融市場の外国投資家に対しては異なる税率が適用される場合がある。 IV. 源泉税 1. 配当 非居住者および居住者に対する支払配当に源泉税は課されない。

2. 利子 非居住者に対する支払利子には、通常 15%の源泉税が課される(日本居住者の場合、

12.5%)。利子の受領者が軽課税国とされる国(すなわち所得に対する税率が 20%未満の国)の居住者である場合、源泉税率は 25%に引き上げられる。

3. 使用料 非居住者に対する支払使用料には、通常 15%の源泉税(日本居住者の場合、12.5%)お

よび 10%の特定財源負担金(CIDE)が課される。受領者が軽課税国とされる国の居住者である場合、源泉税率は 25%に引き上げられる。

V. 国外所得および租税条約 ブラジルは、配当、利子、使用料および技術協力報酬(technical assistance fees)に対す

る源泉税を原則引き下げる旨を定めた租税条約を多く締結している。 次の表は、ブラジル企業から非居住者に対して支払われる配当、利子および使用料に適

用される租税条約の下での源泉税率を示したものである。国内法による税率(D)の方が租税条約に定める税率より低い場合、または租税条約が軽減税率を規定していない場合は、国

内法による税率が適用される。

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ブラジルの租税条約における源泉税率

締結相手国 配当* 利子 (%) 使用料 (%)

アルゼンチン D D D

オーストリア D 15/25 10/15/25

ベルギー D 0/10/15/25 10/15/20

カナダ D 10/15/25 15/25

チリ D 15/25 15/25

中国 D 15/25 15/25

チェコ共和国 D 10/15/25 15/25

デンマーク D 15/25 15/25

エクアドル D 15/25 15/25

フィンランド D 15/25 10/15/25

フランス D 10/15/25 10/15/25

ハンガリー D 10/15/25 15/25

インド D 15/25 15/25

イスラエル D 15/25 10/15/25

イタリア D 15/25 15/25

日本 D 12.5/25 12.5/15/25

韓国 D 10/15/25 15/25

ルクセンブルク D 10/15/25 15/25

メキシコ D 15/25 15/25

オランダ D 10/15/25 15/25

ノルウェー D 15/25 15/25

トルコ D 15 15

ペルー D 15 15

ベネズエラ D 15 15

トリニダード・トバゴ D 15 15

フィリピン D 15/25 15/25

ポルトガル D 15/25 15

スロヴァキア D 10/15/25 15/25

南アフリカ共和国 D 15/25 10/15

スペイン D 15 10/15

スウェーデン D 15/25 15/25

ウクライナ D 15/25 15

※配当支払に対する源泉税は免除

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ブラジルの租税条約における源泉税率

締結相手国 配当* 利子 (%) 使用料 (%)

アルゼンチン D D D

オーストリア D 15/25 10/15/25

ベルギー D 0/10/15/25 10/15/20

カナダ D 10/15/25 15/25

チリ D 15/25 15/25

中国 D 15/25 15/25

チェコ共和国 D 10/15/25 15/25

デンマーク D 15/25 15/25

エクアドル D 15/25 15/25

フィンランド D 15/25 10/15/25

フランス D 10/15/25 10/15/25

ハンガリー D 10/15/25 15/25

インド D 15/25 15/25

イスラエル D 15/25 10/15/25

イタリア D 15/25 15/25

日本 D 12.5/25 12.5/15/25

韓国 D 10/15/25 15/25

ルクセンブルク D 10/15/25 15/25

メキシコ D 15/25 15/25

オランダ D 10/15/25 15/25

ノルウェー D 15/25 15/25

トルコ D 15 15

ペルー D 15 15

ベネズエラ D 15 15

トリニダード・トバゴ D 15 15

フィリピン D 15/25 15/25

ポルトガル D 15/25 15

スロヴァキア D 10/15/25 15/25

南アフリカ共和国 D 15/25 10/15

スペイン D 15 10/15

スウェーデン D 15/25 15/25

ウクライナ D 15/25 15

※配当支払に対する源泉税は免除

VI. 関連者間取引 1. 移転価格税制 ブラジルの移転価格税制には、多国籍企業のブラジル子会社が関連者からの輸入に対す

る過大請求という方法で国外に利益送金すること、または関連者への輸出に対する過少請

求という方法でブラジルにおける課税所得を減少させることを防止するための規定が盛り込

まれている。移転価格税制は、関連者間のクロスボーダー取引および軽課税国に所在する

事業体間の取引に対して適用される。 ブラジルの移転価格税制は、OECD 移転価格ガイドラインからは大きく逸脱している。移

転価格の計算において「独立企業間原則」を採用せず、固定利益率(fixed margin)を用いている。 ブラジル移転価格税制の主要な特徴は以下のとおり。 • 国外関連者の範囲がOECD移転価格ガイドラインに比して広く、出資基準は 10%となっており、ブラジル納税義務者が特定の独立代理人(uncontrolled agents)、販売業者もしくはコンソーシアム企業との間で行う取引、軽課税国もしくは資本参加に関する秘

密を認めている国の居住者との取引に対しても規制 • 対象企業比較(ベンチマーク分析)や製品群・グループ毎の計算(バスケット方式)は採用されていない

• 法定算定方法の中から任意選択となり、ベスト・メソッド・ルールは採用されていない • 事前確認制度(APA)が採用されていない

輸入取引時の独立企業間価格の算定方法は以下のとおり。 • 独立価格比準法(PIC):ブラジルまたは他国で行われた同様の支払条件下における、非関連者間による同種類の物品、サービス、無形資産の取引価格の平均値

• 再販売価格基準法(PRL):非関連者に販売した物品、サービス、無形資産の販売価格から売上にかかる税金等およびみなし利益率を差し引いた価額。みなし利益率は

20%を基本とし、一部業種に対しては 30%または 40%が適用される • 原価基準法(CPL):売手である国外関連者等が物品、サービス、無形資産を製造する際に支出した費用の平均値に輸出にかかる税金および 20%を加えた価額

輸出取引時の独立企業間価格の算定方法は以下のとおり。輸出取引に対してのみ、セー

フ・ハーバー規定が定められている。 • 独立価格比準法(PVEx):非関連者への輸出価額の平均値、または他の輸出者が行った同種の商品等の輸出価額の平均値

• 輸出先国卸値基準法(PVA):輸出国の卸売市場での販売価額の平均値から売上にか

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かる税金および 15%を差し引いた価額 • 輸出先国小売値基準法(PVV):輸出国の小売市場での同種または類似品の販売価額の平均値から売上にかかる税金および 30%を差し引いた価額

• 原価基準法(CAP):輸出品を取得または製造した際の費用に輸出にかかる税金および 15%を加えた価額

国外関連者間との金銭貸借取引については移転価格税制が適用される。ロイヤルティに

ついては契約が INPIに登録されている場合、移転価格税制は適用されない。

2. 過小資本税制 本税制においては、軽課税国に所在しない関連者または優遇税制の特典を享受していな

い関連者に対する支払利子は、以下の場合にのみ、法人税上、発生ベースで控除可能とな

る。 (i) 当該利子費用が企業の活動のために必要である (ii) 次の基準を両方とも満たしている

(a) 関連者の負債と、関連者が行った直接出資(direct equity investment)の比率である関連者の負債資本比率(debt-to-equity ratio)が 2:1以下である

(b) 負債総額と関連者が行った総直接出資額の比率である総負債純資産比率が2:1以下である

軽課税国に所在する、または、優遇税制の特典を享受している事業体もしくは個人に対す

る支払利子(関連者同士であるかを問わない)は、以下の場合にのみ控除可能である。 (i) 当該利子費用が企業の活動のために必要である (ii) 次の基準を両方とも満たしている

(a) ブラジル企業の軽課税国の居住者からの負債額が、当該ブラジル企業の純資産の 30%以下である

(b) 当該ブラジル企業の軽課税国に所在する全ての事業体または優遇税制の特典を享受している全ての事業体からの負債総額が、当該ブラジル企業の純資産の

30%以下である 超過分の支払利子は IRPJ および CSLL の計算上、控除が認められない。クロスボーダ

ー貸付(中央銀行に登録されている契約)に対する利子率は移転価格税制上、控除が認め

られる上限が規定されている。

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かる税金および 15%を差し引いた価額 • 輸出先国小売値基準法(PVV):輸出国の小売市場での同種または類似品の販売価額の平均値から売上にかかる税金および 30%を差し引いた価額

• 原価基準法(CAP):輸出品を取得または製造した際の費用に輸出にかかる税金および 15%を加えた価額

国外関連者間との金銭貸借取引については移転価格税制が適用される。ロイヤルティに

ついては契約が INPIに登録されている場合、移転価格税制は適用されない。

2. 過小資本税制 本税制においては、軽課税国に所在しない関連者または優遇税制の特典を享受していな

い関連者に対する支払利子は、以下の場合にのみ、法人税上、発生ベースで控除可能とな

る。 (i) 当該利子費用が企業の活動のために必要である (ii) 次の基準を両方とも満たしている

(a) 関連者の負債と、関連者が行った直接出資(direct equity investment)の比率である関連者の負債資本比率(debt-to-equity ratio)が 2:1以下である

(b) 負債総額と関連者が行った総直接出資額の比率である総負債純資産比率が2:1以下である

軽課税国に所在する、または、優遇税制の特典を享受している事業体もしくは個人に対す

る支払利子(関連者同士であるかを問わない)は、以下の場合にのみ控除可能である。 (i) 当該利子費用が企業の活動のために必要である (ii) 次の基準を両方とも満たしている

(a) ブラジル企業の軽課税国の居住者からの負債額が、当該ブラジル企業の純資産の 30%以下である

(b) 当該ブラジル企業の軽課税国に所在する全ての事業体または優遇税制の特典を享受している全ての事業体からの負債総額が、当該ブラジル企業の純資産の

30%以下である 超過分の支払利子は IRPJ および CSLL の計算上、控除が認められない。クロスボーダ

ー貸付(中央銀行に登録されている契約)に対する利子率は移転価格税制上、控除が認め

られる上限が規定されている。

3. 特定外国子会社(Controlled foreign companies) ブラジル企業の特定外国子会社(CFC)および一定の外国関係会社(支配関係にない子

会社)が稼得する利益は、配当とは関係なくブラジルの支配会社または親会社の IRPJ およびCSLLの計算上、課税標準に合算される。ブラジル企業の CFCおよび一定の外国関係会社が稼得した利益は、各課税年度末に、ブラジルの支配会社または親会社が受領したものと

みなされる(かつ課税対象となる)。

4. 連結納税 ブラジルには連結納税制度はない。法人は他の関連事業体とは別に単独で課税される。

VII. 売上税および他の間接税 1. 輸入税(II) 輸入税(II)はブラジル領土内への商品の輸入に対して課税される。IIの課税標準はCIF価

格であり、適用税率は、商品の性質およびメルコスール共通分類(Mercosur Common Nomenclature、NCM;通常 0%から 35%)に基づく分類により異なる。支払税額は、輸入コストの一部とされる(すなわち、IIは付加価値税ではない)。

2. 社会統合計画(PIS)および社会保険融資負担金(COFINS) 社会統合計画(PIS)および社会保険融資負担金(COFINS)は、法的事業体が稼得する

総売上に対して、毎月課税される連邦税である。PIS は、雇用主に義務付けられる被雇用

者貯蓄プログラムに対する拠出金であり、COFINS は社会保険制度助成のための拠出金

である。 PISとCOFINSの算出方法は原則として非累積方式であり、それぞれ 1.65%および 7.6%

の税率で総売上に対して課税され、企業の事業に密接に関連しかつ規制法に定めのある費

用に関しては仕入税額控除が認められる。 一定の業界および一定の種類の売上に対しては、他の計算方法および特別方式が適用さ

れる場合がある。企業がみなし課税制度(Lucro Presumido方式)に基づいて法人税を支払う場合、PIS と COFINSの税率はそれぞれ 0.65%および 3.0%に引き下げられるが、当該企業は仕入税額控除を受けることができない(累積課税方式)。2004 年 5 月から、PIS およびCOFINS は、国外からの物品およびサービスの輸入に対しても支払いが義務付けられた(輸入PISおよび輸入COFINS)。適用税率は同じく1.65%と7.6%であり、納税義務者が通常の非累積方式を用いて PISおよび COFINSを算出する場合、支払った税額は通常、仕入税額控除として回収可能である。物品およびサービスの輸出は、資金が実質的にブラジルに流入

している場合は非課税である。

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3. 工業製品税(IPI) 工業製品税(IPI)は、製造業者の売上ならびに輸入業者による輸入および販売に対して課

税される連邦物品税である。付加価値税(VAT)の性質を有するため、輸入品および他の課税仕入に関して支払った税額は通常、税額控除として回収可能であり、企業の IPI 売上税額と相殺することができる。IPI税率は 0%から 335%で、物品の種類により異なる。

4. 商品流通サービス税(ICMS) 商品流通サービス税(ICMS)は、物品の流通ならびに州間および市町村間の輸送および

通信サービスの提供に対して課される州税である。ICMS は、取引および当該サービス提供

が他の国において開始された場合にも適用される。ICMS は非累積方式の税であり、税率は、リオデジャネイロ州が 20%、サンパウロ州およびミナスジェライス州、パラナ州では 18%、ロンドニア州では 17.5%、それ以外の州においては 17%である。州間の製品の移動に対しては、受領者の所在地によって 12%および 7%の州間税率が適用される。また、2013 年 1 月から輸入品および輸入原材料が40%以上を占める製造品の州外への販売、移送は4%の州間税率を適用。 なお、各州の規定により、特定の商品サービスに対しては 25%や軽減税率 7%が適用され

る。機械などの資本財については課税標準額の軽減などの減免措置がある。また輸出やマ

ナウス免税地域の製造業に対する製品の販売などは免税となっている。 ICMS は、各州により、減免措置などに多少の違いはあるが、一般規定は連邦レベルの補

足法の下、同じ規定となっている。

5. サービス税(ISS) サービス税(ISS)は、ICMS が課税されないサービス提供に対して課される市町村税であ

る。該当するサービスのリストは、補完法(Complementary Law)に示されている。ISS の課

税標準は、提供されたサービスの価格である。ISS は通常、サービスを提供する企業が設立

された市が課税するが、実際のサービスが提供された市が会社所在地と異なる場合、サービ

スが行われた市により課税される。ISSの税率は 2%から 5%で、市町村およびサービスの種類により異なる。サービスの輸入も ISS の対象となるが、輸出は、サービス提供が国外で行

われる場合は免除となる。ISS は一部の例外事項を除き累積方式の税であるため、回収不

可能である(すなわち、仕入税額控除の適用を受けることはできない)。 VIII. その他の税制 1. 金融取引税(IOF) 金融取引税(IOF)は、融資、為替取引、保険取引および証券取引に適用される連邦税で

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3. 工業製品税(IPI) 工業製品税(IPI)は、製造業者の売上ならびに輸入業者による輸入および販売に対して課

税される連邦物品税である。付加価値税(VAT)の性質を有するため、輸入品および他の課税仕入に関して支払った税額は通常、税額控除として回収可能であり、企業の IPI 売上税額と相殺することができる。IPI税率は 0%から 335%で、物品の種類により異なる。

4. 商品流通サービス税(ICMS) 商品流通サービス税(ICMS)は、物品の流通ならびに州間および市町村間の輸送および

通信サービスの提供に対して課される州税である。ICMS は、取引および当該サービス提供

が他の国において開始された場合にも適用される。ICMS は非累積方式の税であり、税率は、リオデジャネイロ州が 20%、サンパウロ州およびミナスジェライス州、パラナ州では 18%、ロンドニア州では 17.5%、それ以外の州においては 17%である。州間の製品の移動に対しては、受領者の所在地によって 12%および 7%の州間税率が適用される。また、2013 年 1 月から輸入品および輸入原材料が40%以上を占める製造品の州外への販売、移送は4%の州間税率を適用。 なお、各州の規定により、特定の商品サービスに対しては 25%や軽減税率 7%が適用され

る。機械などの資本財については課税標準額の軽減などの減免措置がある。また輸出やマ

ナウス免税地域の製造業に対する製品の販売などは免税となっている。 ICMS は、各州により、減免措置などに多少の違いはあるが、一般規定は連邦レベルの補

足法の下、同じ規定となっている。

5. サービス税(ISS) サービス税(ISS)は、ICMS が課税されないサービス提供に対して課される市町村税であ

る。該当するサービスのリストは、補完法(Complementary Law)に示されている。ISS の課

税標準は、提供されたサービスの価格である。ISS は通常、サービスを提供する企業が設立

された市が課税するが、実際のサービスが提供された市が会社所在地と異なる場合、サービ

スが行われた市により課税される。ISSの税率は 2%から 5%で、市町村およびサービスの種類により異なる。サービスの輸入も ISS の対象となるが、輸出は、サービス提供が国外で行

われる場合は免除となる。ISS は一部の例外事項を除き累積方式の税であるため、回収不

可能である(すなわち、仕入税額控除の適用を受けることはできない)。 VIII. その他の税制 1. 金融取引税(IOF) 金融取引税(IOF)は、融資、為替取引、保険取引および証券取引に適用される連邦税で

ある。ブラジル国内の融資に対して日歩 0.0041%および取引額の 0.38%の付加税が課される。為替取引、保険取引および証券取引については、内容により税率は様々である。

2. 特別財源負担金(CIDE) 特別財源負担金(CIDE)は、技術が移転された場合、または提供されたサービスが技術支

援とみなされる場合ならびに海外へのロイヤルティの支払の場合に、使用料およびサービス

料の国外への支払に対して課される連邦税である。税率は10%である。CIDEの支払義務はブラジル企業にあり、国外受益者は CIDE に関して税額控除を受けることができない。ソフト

ウェア支払いに対するCIDEは2007年に廃止された。その結果、ソフトウェアプログラムの取引または販売のライセンスまたは権利に関する支払に対しては、技術移転が伴わない限り、

CIDEは課税されない。

3. 都市不動産所有税(IPTU) 都市不動産所有税(IPTU)は、都市部にある不動産の所有に対して年間ベースで課される

市税である。不動産が所在する市町村により徴収され、当該不動産のみなし「売却価格」に

基づいて算出される。不動産税の税率は市町村によって異なるが、おおよそ 0.3%から 1%の間である。

4. 農地所有税(ITR) 農地所有税(ITR)は、農村部にある土地の所有に対し、当該資産の所在する地域および

用途により 0.03%から 20%の税率で課税される年間ベースの連邦税である。

5. 自動車所有税(IPVA) 自動車所税(IPVA)は、車、ボートおよび航空機等の乗り物に対して年間ベースで課税さ

れる州税である。税率は州によって異なるが、おおよそ 1%から 6%の間である。

6. 不動産譲渡税(ITBI) 不動産譲渡税(ITBI)は、不動産の所有権譲渡の際に課される市税である。税率は各市で

決定できる。多くは累進税率で、売却価格のおおよそ 2%から 6%である。買主が不動産譲渡税の納付義務を負う。

7. 資産の無償移転税(ITCMD) 資産の無償移転税(ITCMD)は、相続または贈与による資産や権利の無償移転の際に課

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される州税である。税率は州によって異なるが、上限は 8%となっている。

8. 社会保険(INSS) 雇用主は、従業員の賃金の 20%をブラジルの公的年金制度である社会保険院(INSS)に

拠出することに加えて、最大 8.8%を他の社会保険料として拠出する必要がある。なお、従業員は給与額に応じて 8%から 11%(上限あり)を拠出する。 IX. 税務申告および管理 ブラジルの課税年度は暦年であり、税目ごとに申告期限が定められている。ブラジルの各

企業(法人、パートナーシップ、国外に拠点を置く会社の支店および代理店を含む)は、前年

の年間所得税申告書を 6 月の最終営業日までに提出しなければならない。法人税等(IRPJおよびCSLL)は通常、調整後の年間利益に関して課税され、毎月前払いを行う必要がある。過払い税額は翌期以降の税と相殺することができる。法人税の還付は一般的ではない。参

考までに、会計年度は企業が自由に定めることができる。 連邦税申告書(Return for Federal Tax Payments)および社会負担計算書(Statement of

Social Contribution Calculation)等の他の税務申告書は、毎月もしくは半年に一度提出する必要がある(総売上によって異なる)。 連邦税、州税および市町村税の納税遅延には罰金および利息が課される。

税務当局は、ブラジル公的電子記帳システム(Brazilian Public Digital Bookkeeping

System、SPED)への申告を義務付けている。SPED は、コンピューターにより情報を一元化

することにより、ブラジル企業の商業および税務上の簿記から成る帳簿や文書の受取、検証、

保管ならびに認証手続きのシステム化および統合を図るものである。SPEDの申告期限は企業の活動内容によって異なる。

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される州税である。税率は州によって異なるが、上限は 8%となっている。

8. 社会保険(INSS) 雇用主は、従業員の賃金の 20%をブラジルの公的年金制度である社会保険院(INSS)に

拠出することに加えて、最大 8.8%を他の社会保険料として拠出する必要がある。なお、従業員は給与額に応じて 8%から 11%(上限あり)を拠出する。 IX. 税務申告および管理 ブラジルの課税年度は暦年であり、税目ごとに申告期限が定められている。ブラジルの各

企業(法人、パートナーシップ、国外に拠点を置く会社の支店および代理店を含む)は、前年

の年間所得税申告書を 6 月の最終営業日までに提出しなければならない。法人税等(IRPJおよびCSLL)は通常、調整後の年間利益に関して課税され、毎月前払いを行う必要がある。過払い税額は翌期以降の税と相殺することができる。法人税の還付は一般的ではない。参

考までに、会計年度は企業が自由に定めることができる。 連邦税申告書(Return for Federal Tax Payments)および社会負担計算書(Statement of

Social Contribution Calculation)等の他の税務申告書は、毎月もしくは半年に一度提出する必要がある(総売上によって異なる)。 連邦税、州税および市町村税の納税遅延には罰金および利息が課される。

税務当局は、ブラジル公的電子記帳システム(Brazilian Public Digital Bookkeeping

System、SPED)への申告を義務付けている。SPED は、コンピューターにより情報を一元化

することにより、ブラジル企業の商業および税務上の簿記から成る帳簿や文書の受取、検証、

保管ならびに認証手続きのシステム化および統合を図るものである。SPEDの申告期限は企業の活動内容によって異なる。

第5章 個人所得税

I. 税率 ブラジルでは個人に対して個人所得税、社会保障税、贈与税および相続税等、様々な租

税が課税される。キャピタル・ゲインに対しては 15%から 22.5%までの累進税率で課税される。個人に対する地方または州の所得税はない。 納税は月次で行われ、給与所得者の場合は給与の源泉徴収、自営業者の場合は前払に

よる。ブラジルの税務上の居住者がブラジル国外で受領する所得については、月々の前払

が必要となる。所得税の対象である居住者はすべて、確定申告書を作成しなければならない

(翌課税年度の 4月末を期限とする)。 個人税は課税期間中に稼得した所得額に基づいて計算し、支払われる。個人所得税率は

年収額に応じて段階的に課せられる(2018年度適用の税率表)。

所得額(BRL) 税率

- 22,847 0%

22,847超 - 33,919 7.5%

33,919超 - 45,012 15%

45,012超 - 55,976 22.5%

55,976超 - 27.5%

非居住者は、ブラジル企業から支払われた配当(免税となる)を除き、一律 25%(労働所

得)または 15%(その他の所得)が課せられる。所得の源泉地は、支払者の所在地に従って判断される。 II. 居住性の判断 以下の個人は税務上の居住者とみなされる。

(1) 帰化外国人 (2) 一時ビザを保有し、かつブラジル国内の雇用契約を有する外国人 入国した日から居住者とみなされる (3) 一時ビザを保有するがブラジル国内の雇用契約のない外国人 12 ヵ月の期間中の滞在日数が累計で 183 日(連続している、いないに関わらず)を

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超えた後、居住者とみなされる 居住者は、全世界所得に対して課税され、源泉地国において支払われた税額については

外国税額控除を受ける(租税条約または二国間相互関係を前提とする)。非居住者は、ブラ

ジルを源泉地国とする所得について課税される。所得の源泉地は、業務遂行の場所にかか

わらず、支払者の所在地に従い判断される。 III. 課税所得および税率 課税所得の決定 居住者は、総所得に対して課税される。総所得にはブラジル国内および海外を源泉地国と

する所得が含まれ、海外で支払った税額については外国税額控除が受けられる。 総所得は通常、現金または現物での受け取りを問わず課税対象となる。 課税所得には賃金、給与、特別給与、福利厚生給付、コンサルティング報酬および手数料、

褒賞金、役員報酬、ならびに国外源泉利子および海外からの配当が含まれる。総所得には、

雇用主が支給する住宅手当および一時帰国手当をはじめとする雇用に関連するほとんどの

手当も含まれる。教育手当は間接給与とみなされ、それに従い課税される。個人の経費は、

会社側が直接支払った場合も個人に払い戻しされた場合も同様に扱われる。ただし、引越費

用の実費は通常、非課税である。 雇用主であるブラジル企業がその被雇用者に対して支払った正規の利益分配金は、INSS

(社会保障)および退職金基金の目的に限り、免税となる。源泉所得税の課税上、利益分配

金は、0%-27.5%の累進税率で課税される。源泉地国がブラジルである配当金は非課税である。

納税者は、月次の所得税額の算定に際しては特定の費用を、連邦所得税の確定申告時

にはその他の費用をそれぞれ控除することができる。月次の所得税額の算定において認め

られる控除は以下のとおりである。 被雇用者が連邦、州または地方の事業体に対して支払った社会保険税 民間のブラジル年金制度への拠出金(総収入の 12%まで)。ただし、公的な社会保険制度に対しても拠出している場合に限る

裁判所命令による離婚手当または年金の支払額(ブラジル国外に居住する受益者に対して支払われる離婚手当については特別制限が適用される)

被扶養者一人について BRL189(2018年課税年度)の月次標準控除 確定申告時には次の控除が認められる。

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超えた後、居住者とみなされる 居住者は、全世界所得に対して課税され、源泉地国において支払われた税額については

外国税額控除を受ける(租税条約または二国間相互関係を前提とする)。非居住者は、ブラ

ジルを源泉地国とする所得について課税される。所得の源泉地は、業務遂行の場所にかか

わらず、支払者の所在地に従い判断される。 III. 課税所得および税率 課税所得の決定 居住者は、総所得に対して課税される。総所得にはブラジル国内および海外を源泉地国と

する所得が含まれ、海外で支払った税額については外国税額控除が受けられる。 総所得は通常、現金または現物での受け取りを問わず課税対象となる。 課税所得には賃金、給与、特別給与、福利厚生給付、コンサルティング報酬および手数料、

褒賞金、役員報酬、ならびに国外源泉利子および海外からの配当が含まれる。総所得には、

雇用主が支給する住宅手当および一時帰国手当をはじめとする雇用に関連するほとんどの

手当も含まれる。教育手当は間接給与とみなされ、それに従い課税される。個人の経費は、

会社側が直接支払った場合も個人に払い戻しされた場合も同様に扱われる。ただし、引越費

用の実費は通常、非課税である。 雇用主であるブラジル企業がその被雇用者に対して支払った正規の利益分配金は、INSS

(社会保障)および退職金基金の目的に限り、免税となる。源泉所得税の課税上、利益分配

金は、0%-27.5%の累進税率で課税される。源泉地国がブラジルである配当金は非課税である。

納税者は、月次の所得税額の算定に際しては特定の費用を、連邦所得税の確定申告時

にはその他の費用をそれぞれ控除することができる。月次の所得税額の算定において認め

られる控除は以下のとおりである。 被雇用者が連邦、州または地方の事業体に対して支払った社会保険税 民間のブラジル年金制度への拠出金(総収入の 12%まで)。ただし、公的な社会保険制度に対しても拠出している場合に限る

裁判所命令による離婚手当または年金の支払額(ブラジル国外に居住する受益者に対して支払われる離婚手当については特別制限が適用される)

被扶養者一人について BRL189(2018年課税年度)の月次標準控除 確定申告時には次の控除が認められる。

納税者または被扶養者が支払う教育費用。年間BRL3,561(2018年課税年度)を上限とする。

当該年度に支払われたが払い戻されていない医療費もしくは歯科治療費、健康保険制度納付額、または心理療法もしくは理学療法の支払額

課税所得の 6%を上限とする、認可されたブラジルの文化、芸術および視聴覚活動への寄附およびブラジル児童・青少年協議会への寄附(文書による証明が必要)

納税者は、項目別税額控除の代わりに課税所得の 20%の年間標準控除(BRL16,754

(2018年課税年度)を上限)を選択することが可能である。 IV. 海外駐在員向け特別税制 海外駐在員に特別に適用される税制はない。

V. 資本税 資本税はなし。

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第6章 労働環境

I. 労働者の権利 ブラジルにおける労使関係は、統一労働法(CLT)および多くの補充法規によって管理され

ている。1988 年憲法には様々な労働規定が盛り込まれている。当該憲法は、公共および民間セクターにおける労働組合、労使交渉およびストライキ権等の合法性を認め、時間外勤務

手当、月間最低賃金および労働時間についても規定している。また、育児休暇、休暇、労働

者報酬、社会福祉、医療扶助および失業給付をはじめとする様々な労働給付についても定

めている。CLTは、労働者保護優先の原則、労働者の権利放棄無効の原則、実態優先の原

則を基本としている点に留意が必要である。なお、2017 年 10 月に、1943 年の CLT 制定以来、初めての大改正がなされている。 労働時間

CLTが規定する労働時間は週 48時間、月 220時間である。一日当たり最長 10時間までの労働が可能である。特別規定として一日当たり最長 12 時間まで労働が可能であるが、この場合その後連続した 36時間の休息が必要となる。 II. 賃金および給付 賃金 時間外労働に対しては基本給の 50%以上を支払わなければならず、深夜労働に対しては

基本給の 20%以上の支払が必要となる。 年次有給休暇 勤続年数が 1年を超え、かつ 6日を超える欠勤がない場合は、30日の有給休暇が付与さ

れる。労使間の合意かつ労働者の承諾を前提に、3 回に分割して有給休暇を取得することができる(最短で 5日、うち一期間は 14日以上が条件)。被雇用者は、当該休暇期間の 3分の1 を 2 倍の賃金額で会社に買取を依頼する権利を有する。休暇取得時には 1 ヵ月の基本賃金の 3分の 1に当たる特別給与が与えられる。 13 ヵ月給与

1ヵ月間の給与額に相当する特別給与支払義務があり、その 50%を毎年 11月までに支給することが義務付けられている。残額は通常、年末に支給される。

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その他の給付 その他の有給休暇には、国、州および地方の休日(年の途中で変更される場合がある)な

らびに近親者の弔事または結婚に際する数日の休暇が含まれる。 被雇用者は診断書が発行される疾病で欠勤した場合、最初の 15 日間については疾病手

当が全額支給される。女性の被雇用者には 4 ヵ月間の強制的出産休暇が、男性の被雇用者には 5 日間の育児休暇がそれぞれ与えられる(いずれも社会保険庁が負担)。雇用主は、2ヵ月の追加出産休暇を付与することができる。 すべての雇用主は、労働者に交通費手当を支給することが義務づけられている。企業は

被雇用者に対し、往復の通勤手段を提供するか、公共交通機関の利用料金(被雇用者の給

与総額の 6%を超える金額)を支払うことにより被雇用者の通勤費を補助しなければならない。

その他の自主給付は様々であるが、ブラジル企業および外国企業はいずれも通常、医療

サービスおよび社員食堂を提供している。保育サービス、運動施設ならびにガソリンおよび食

料券の提供を行っている大手企業もある。 III. 社会保険 社会保険(INSS) 雇用主は、従業員の賃金の 20%をブラジルの公的年金制度である社会保険院(INSS)に

拠出することに加えて、最大 8.8%を他の社会保険料として拠出する必要がある。なお、従業員は給与額に応じて 8%から 11%(上限あり)を拠出する。

INSS 給付には、医療および病院による救護、欠勤が 15 日を超える場合の年金掛金計算

基礎給与の 91%にあたる疾病手当、1 ヵ月間の最低賃金を限度とする出産給付金および退職金が含まれる。年金支給額は、勤続期間中の被雇用者の拠出金額に基づいており、月額

BRL5,702.78(2018年課税年度)を上限とする。給付額は物価スライド制である。 勤続年数補償基金(FGTS) 雇用主は、毎月各従業員の給与総額の 8%を勤続年数補償基金に拠出しなければならな

い。

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IV. 雇用の終了 雇用主は、特定役務に関する契約または一定期間(最長 2年間)の契約に基づく労働者を

当該契約の満了時に法的責任を負わずに解雇することができる。雇用主が正当な理由なく

契約を解除する場合、雇用主は当該契約の残余期間の報酬額の 2 分の 1 を支払わなければならない。正当な理由がある場合、雇用主は、被雇用者が週給制の場合は 8 日前までに事前通知(またはそれに相当する報酬の支払)を、1 週間を超える期間で給与が支払われている場合、もしくは 1 年を超えて雇用されている場合は 30 日前までに事前通知を行うことが義務づけられている。被雇用者が自発的な意思により退職する場合、被雇用者は同様の通

知を行わなければならない。被雇用者の退職に際しては、雇用主は未消化の有給休暇を買

い取る必要がある。 正当な理由とならない解雇の場合、被雇用者は、各々の FGTS口座残高の 40%にあたる

金額を特別上乗せ額として受け取る権利も有する。この場合、雇用主はさらに 10%の追加額を連邦政府に支払わなければならない(総額で 50%の雇用主負担)。

労使間の合意があれば、雇用主は解雇予告手当の 50%及び FGTS 口座残高の 20%を

支払うことで事前通告を伴わない労働契約の解約が可能である。この場合、被雇用者は

FGTS 口座残高の 80%までを引き出すことが可能となる。ただし、失業保険の給付を受け取る権利は喪失する。 V. 労使関係 ブラジルでは、1地域の 1産業分野について 1つの労働組合が全労働者を代表する。労

働者が支払う組合費はその各中央団体により強制徴収される。法律で定める警告期間、必

要不可欠な公共サービス(公益事業および公共輸送等)の保護およびストライキの是非を

問う投票における最低定足数の制限はあるものの、憲法はストライキの自由を十分に認め

ている。 企業側は、ストライキ回避または終結を目指し、労働者側代表者と話し合いや交渉を持つ

ことができる。両当事者が、相互に同意できる妥協点に到達することができなかった場合、労

働者はストライキの実施を選択できる。その後、労使間の団体交渉が再開され、通常、ストは

終結する。両当事者が同意に達しなかった場合、当該紛争は地域の労働裁判所に対し仲裁

に付される。労働裁判所はストライキの合法性を支持する場合がある。 賃金およびその他の問題は、産業分野別連盟の代表者(雇用側)と全セクターを網羅する

労組連合の代表者(労働者側)が交渉を行うことが多い。企業レベルでの交渉も一般的であ

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り、全社(または社内の 1グループ)を包含する和解は団体協約と呼ばれる。 VI. 外国人の雇用 雇用主は全ての被雇用者について、労働雇用省の地方事務所から労働許可書を取得しな

ければならない。3名を超える従業員を雇用する企業では、その全被雇用者の 3分の 2はブラジル国民でなければならず、これらのブラジル人被雇用者が給与総額の 3分の 2を得るものとする。ブラジル国内にいない外国人専門家および被雇用者でない取締役はこの計算に

は含まれない。

2017年 11月の新移民法施行に伴い、ビザは以下 5区分とされた。 (1) 外交ビザ (2) 公用ビザ (3) 儀礼ビザ (4) 訪問ビザ (5) 一時ビザ なお、従来存在した永住ビザは新移民法では廃止された。観光、通過および商用を目的と

したものは訪問ビザに含まれ、労働を目的としたものは一時ビザに含まれる。

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Deloitte Touche Tohm

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ブラジルの税制と投資

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