Øé 9â -...

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1 少年譚 少年譚 少年譚 少年譚 その6 <6> 揺動く心と、目に見えぬ鎖の狭間で

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1

少年淫夢譚少年淫夢譚少年淫夢譚少年淫夢譚

その6

<6> 揺れ動く心と、目に見えぬ鎖の狭間で

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2

オレとしたことが・・・・・

黒田は苛立っていた。もう完全に手中に収めたと思っていたはずのものが、

するりとその手の中からこぼれ落ちてしまったのだ。

もう完全にオレの女になった。そう思っていた。だが、あいつの心の中には

まだ正気の火が燻っていやがった。それを見抜けなかったオレが悪い。

いや、オレの手の内にあるかぎりは、こんなことにはならなかった。囲いの

中に封じ込めているかぎり、二度と正気に戻ったりはさせなかった。実際に、

あいつも完全にその気になっていたし、オレに抱かれるのを本気で喜ぶような

体になっていた。いくら正気の火が燻っていたとしても、そんなものは、ごく

自然に消えていく。酒が発酵するのを待つように、ただ樽のなかに押し込めて

おくだけでよかったんだ。

あの馬鹿野郎が余計な真似さえしなければ、何もかもうまくいったはずなん

だ。あの馬鹿野郎がこれまでの苦労をパーにしやがったんだ。

黒田が馬鹿野郎と罵っている相手は早崎だった。

こともあろうに早崎は、なんの予告も前触れもなく、いきなり黒田のマンシ

ョンに顔を出したのだ。

もう黒田の手で女にされたらしい。ママからそう聞いて、その真偽を確かめ

たくなったようだが、どこまで抜けた野郎なのか。呆れはてる。

黒田のほうにも油断はあった。その油断に不運な偶然が重なった。ずいぶん

前に家出少年をホステスとして売り渡した店から、急な電話が入ったのだ。

そのホステスがトラブルをひき起こしたらしい。家出してきたのを新宿駅で

拾い、幸彦と同様に薬と暴力で女に仕立て上げた子だ。苦情とも相談ともつか

ない電話だが、むげにはできない。

幸彦に聞かれるのはまずい。そう判断した黒田は、携帯をもって外に出てし

まった。まあ、部屋には早崎がいる。よほどの馬鹿でないかぎり、里心がつく

ような話題は持ち出さないだろう。そう思ったのだが、早崎は黒田が予想した

以上の馬鹿だった。

幸彦と二人きりになった早崎は、何も知らない風を装って、長々と仕事の話

をしただけでそそくさと帰っていったようだ。部屋の中に淀んだ淫靡な空気と

幸彦の様子から、ママの話は本当だったと納得したようだ。

しかし、それならそれで、よけいな話なんかせずにさっさと帰ってしまえば

よかったのだ。ただでさえ、男として普通に暮らしていたころの職場の上司と

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3

顔をあわせれば、いったん狂った頭の螺子が巻き戻ってしまうおそれがあると

言うのに、よりにもよって長々と仕事の話をしていく馬鹿があるか。

早崎と話したことで、幸彦はわれに返ってしまった。異常なセックスの呪縛

から解き放たれてしまった。そして、早崎が帰り、黒田がまだ外で電話してい

るあいだに、マンションから姿を消してしまったのだ。

間の悪いことに、黒田の電話は意外に長引いてしまった。もしも早々と切り

上げて部屋に戻っていたとしたら、老練な黒田のことだ、幸彦の変化に気づい

たはずなのだが。

とにかく、姿を消した幸彦をいっときも早く探し出さなければ。

長引けば長引くほど、修復は困難になる。いったん覚醒してしまった獲物を

再び引き戻すのは、最初に罠にかけるときよりも何倍もの手間がかかる。だと

しても、身柄さえ確保できればいくらでも手の打ちようはある。

ことの次第をママに報告する。まさか警察に

駆け込んだりしないだろうね。ママがまず心配

したのはそのことだった。その心配はない。そ

んなことをして恥ずかしい思いをするのは幸

彦本人だ。それでもあえて警察に駆け込めるほ

ど気の強い子じゃない。そう説明すると安心し

たようだ。

だったら急いで連れ戻して、イチから鍛え直

してよ。安心したと思ったら、今度は欲の皮を

むき出しにしてくる。苦笑するしかない。

金も携帯も取り上げてある。全裸ではないが

半裸にちかい姿で、化粧までしている。

そんな姿になった事情を知っている人間は、

早崎しかいない。そんな姿で早崎以外の人間の

もとに駆け込めるはずはない。

もともと社員寮にいたわけだし、早崎のこと

も疑っていない。足を向けるとしたら、彼のと

ころしか考えられない。そう言うと、ママはす

ぐに了解した。

分かったわ。今から連絡して、大至急打ち合

わせると言う。

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幸彦は徒歩で早崎の所に向かうしかない。だから時間的な余裕は十分にある。

それにしても女物の衣装で、しかもほとんど裸に近い格好で、どうやって早

崎のもとに駆け込むつもりなのか。

そう思って部屋の中を見渡すと、部屋の隅に掛けてあった黒田のコートがな

くなっている。あれを羽織って飛び出したのか。このくそ暑いさなかにご苦労

なことだ。

打ち合わせたわ。急いでこちらに来てくれって言ってるのよ。

ママからそういう電話が入る。

たぶん早崎は、自分一人ではどう対処していいのか判断できないのだろう。

それならそれで好都合だ。文句のひとつも言って罵倒してやりたいところだが、

それはまた後日のことにしよう。とりあえず急いで行って、幸彦が到着するの

を待ちうけなければならない。

早崎のもとへ向かうとしても、あの格好では会社へは行けまい。

向かうとしたら早崎の自宅だ。早崎が留守だったら、どこかに潜んで帰りを

待とうとするはずだ。

早崎という男は三日に一度は会社を休んで自宅で昼寝するようなやつらしい。

しかもいまだに独身で一人暮らしということだ。幸彦もそれは知っているはず

だから、必ず自宅に向かう。

車でママから聞いたボロアパートに向かう。場所は阿佐ヶ谷。徒歩で行くと

新宿から三時間はかかる場所だ。だとしたら、まだ十分に余裕がある。

到着すると、早崎はもう外に出て待ち受けていた。おい、本当にここに来る

のか。警察に駆け込んだりはしないのか。ママと同じようなことを聞いてくる。

怒鳴りつけてやりたいところだが、ひと睨みするだけで我慢する。とりあえ

ず今は、幸彦の身柄を確保することが先決だ。

ドタバタ劇はあっという間に幕をおろした。

黒田が駆けつけてから一時間もしないうちにチャイムが鳴った。素知らぬ顔

で玄関に出た早崎が、コートを羽織った幸彦を中に招き入れる。ヒールの高い

サンダルで歩き通して来たにしては、ずいぶん早い到着だった。

居間に通された幸彦は、黒田の姿を見て凍りついたように立ち竦む。

「突っ立ってないで、座れ」

黒田がそう声をかけると、ガクッと腰が砕けたように床に膝をつく。

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「黒田さんから聞いたが、ちょっと指導が厳しすぎたかなっておっしゃってる」

早崎は打ち合わせた通りの言葉を口にする。

「このままじゃオレも面子が立たないから、よく話しあってくれないか」

「オレがいたんじゃ、どちらも話しづらいだろ」

早崎はそう言い、そそくさと姿を消してしまった。

黒田と二人きりでとり残された幸彦は、ぶるぶると体を震えさせている。

「余計なことは何も言わなくていい。黙って一緒に帰るんだ。いいな」

黒田と目を合わせようとはしない。

「どうなんだ。それとも、ここで引っ叩

かれたいのか」

うなだれたまま、首を振る。

「だったら、素直についてくるんだな」

もう頷くしかなかった。

ここで敢えて抵抗して早崎の帰りを

待ってみたところで、あの様子では頼り

にならない。

早崎としては、自分の企画を実現させ

るために、ボクには黒田のもとに戻って

ほしいというのが本音だろう。

ボクの身に何が起きているのか、想像

できるわけがない。ボクだって知られた

くはない。男に犯されたなんて死んでも

知られたくない。一時の気の迷いだとし

ても、あんな異常な行為に溺れて、女に

なると言ってしまったことが、今では死

ぬほど恥ずかしい。

そんなこと口が裂けても言えない。

でも真実を語らない限り、早崎に助け

を求めることはできない。

もうどこにも行き場はない。観念する

しかない。

「オレの女になると誓ったのは、一体どこのどいつだ!」

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マンションに戻るなり、すさまじい暴力の嵐が幸彦を襲った。顔、腕、足と

いった部分に打撃をくわえられることはない。服で隠される部分でも、目立つ

ほどの跡は残さない。それでも十分に獲物を恐怖のドン底に突き落とすスベを

心得ている男だ。

髪をつかまれて、引き摺りまわされる。何度も床に叩きつけられる。転がさ

れる。蹴りあげられる。その恐ろしさは、はじめてこの部屋で受けたビンタの

比ではなかった。

こいつ、見かけは弱々しいが、意外に芯は強いかもしれない。黒田は黒田で

怯える幸彦の様子を観察している。第一印象通りの獲物だったら、これだけの

暴力を受けたら失禁してもおかしくない。それなのに、こいつは怯えながらで

も、必死に耐えてやがる。

黒田は再調教が一筋縄ではいかないことを感じとっていた。もう一挙に染め

あげるのはむつかしいかもしれない。仕方がない。

促成栽培は、しょせん促成栽培だ。手間ひまかけてこそ、本当にいいモノが

できるということだ。

見てろ。お前が取り戻したつもりの正気とやらは、オレがこの手でぶち壊し

てやる。お前の身体は、そんなもの望んじゃいない。どうあがいたところで、

お前はもう女なんだ。ケツの穴にチンポぶち込まれてヨガリ狂う、淫乱な牝豚

なんだ。それを徹底的に思い知らせてやる。

手間はかかることになるが、ものは考えようだ。かえってこちらには好都合

だったのかもしれない。これで何もかも予定を早めることができる。もう誰に

遠慮する必要もない。オレが言った通り、コイツは警察に駆け込んだりはしな

かった。ママもこれで安心したはずだ。少々強引なことをしたところで、心配

ないと分かったはずだ。

黒田は豊胸手術の予定を早めることにした。それにあわせて、その他の部位

の改造も早まる。

オレを裏切った代償は大きいぞ。元の暮らしに戻るという夢は、あっけなく消

えうせることになる。少なくとも三月か四月、うまくすれば期限いっぱいの半

年くらいまでは、のうのうと見ておられた夢だ。

その薄い胸板に脂肪の塊がくっつき、小豆ほどの大きさもなかった乳首が、

小指の先くらいに膨らんでしまったら、いくらお前でもそんな夢を見つづける

ことなんかできない。お前は自分の手で夢の終わりを早めたんだ。素直にあの

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ままでいたら、少しは長く見られたはずの夢を、自分の手で壊したんだ。

「今日からエステだ。

午後一番の予約を取ってある。これから毎日、午後一番の予約だ」

黒田は冷えた口調でそう言った、そして、押し入れの奥からなにかを取り出

してきた。

取り出してきたのは、革と樹脂で作られた奇怪な装身具のような物だ。

厳密に言えば装身具と呼んでいいのかどうか。それに似たものを、どこかで

見た記憶がある。すぐに思い出した。中世十字軍の騎士たちが考案したという

貞操帯だ。

貞操帯と言っても女が着けるものではないようだ。前宛ての部分に、男根を

納めるための膨らみがある。小用をたすのに困らない程度の穴もあいている。

それだけなら、写真で見たことがある貞操帯と大きな違いはない。

だが、それとは決定的に違う部分があった。帯の部分に巨大な男根を模した

樹脂製の突起が取りつけられているのだ。

その不気味な男根の用途は聞くまでもない。一目瞭然だ。

股間に通される帯はほとん

ど紐にちかいほど細い。その

革製の帯には金属が縫いつけ

られている。革だけなら簡単

に切断することもできるだろ

うが、金属がそれを阻む。細

い帯は肉の狭間に深く食い込

む。反り返った不気味な男根

は、帯の食い込みがきつけれ

ばきついほど、装着者の身体

のなかに深く沈みこむ。それ

は貞操を守るという用途とは

全く無縁の、おぞましい責め具だった。

こんなものを着けて外に出ろというのか。こんなものを着けてエステにいけ

というのか。幸彦は血の気が引いていくのを感じた。

貞操帯の装着は黒田が行った。逆らったりはできない。

明日からは、起きたらすぐに自分の手で装着しろ。ベッドインする時だけは

外してもいい。着けたまま寝ろとは言わない。

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黒田はそう言うが、それはそうだ。そんなものを着けたままでは、幸彦を犯

せない。あくまでも自分の都合だ。

突起にはあの潤滑剤が塗りたくられた。

それでも挿入されるときは激しい痛みを感じた。初めて肛門を犯されたとき

のような痛みだった。覚醒したのは、頭の中だけじゃなかったのかもしれない。

男たちに開かれた肛門も、元の状態に戻ってしまったのかもしれない。本来の

狭さを取り戻したのかもしれない。幸彦はそう思った。

その推測もあながち的外れではないだろう。

だが、そんなささやかな変化以上に、身体を貫く突起物の大きさもまた異常

だったと言える。

「この程度の大きさで、痛がったりするな」

あれほど優しかった黒田が、いまはその優しさの片鱗さえ見せない。巨大な

突起を、幸彦の体内にぐいぐいと押し込んでいく。

「この程度の大きさで痛がっていたら、外人の相手なんかできないぞ」

黒田のその言葉が気にかかる。ボクはあのママの店でホステスとして働くだ

けなんでしょ。外人の相手って、どういう意味なんですか・・・・・

その言葉が喉元まで出かかったが、口に出すことはできなかった。今は何を

言っても暴力の口実にされそうな気がする。

「はあい、クロちゃん、元気だったあ?」

女は黒田にタメ口をききながら、赤絨毯の上を歩いて来た。

「挨拶しろ。今日からお前を担当してくれるトレーナーだ」

そのエステサロンは東新宿の一角にある雑居ビルの最上階にあった。

ワンフロアをまるごと借りきった広さを誇り、まるでホテルのように豪華な

内装と、一見客を完全に閉め出す徹底した会員制で知られる有名サロンだ。

「このサロンのオーナーは、うちの店の上得意なんだ。よく憶えておけ」

最上階に向かうエレベーターの中で、幸彦は黒田からそう聞かされていた。

「オーナーと言っても陰のオーナー、つまりは真のオーナーというやつだ」

入り口に掲げられた写真と挨拶文を指差して、こいつじゃないと言った。

そういう関わりがなければ、黒田のような男が出入りできる場所ではない。

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「あたし、マリよ。ユキちゃんね? よろしく~」

挨拶しろと命じたのに相手に先を越されてどうする。黒田の目が怒りに満ち

ている。

「まあまあ、そんなに怖い顔しないで。ほんとクロちゃんて気が短いんだから」

マリと名乗った女はそう言って、幸彦の腕に手を伸ばす。

「口惜しいくらい綺麗なお肌ね。色も白いし、肌理もこまやかだし」

遠慮会釈なく、幸彦の身体をいじりまくる。

「今のままでも十分に美人、いえいえ、十分に美少女なんだけどねえ」

驚いたことに、いきなり唇を重ねられた。

「いくらオナベだからって、勝手に商品に手を出されては困る」

オナベいうのは、オカマの尻を追いかける女という意味の隠語である。

「さあ、ユキちゃんの美しさに磨き

をかけてくれる特別コースへ、い

ざ」

と言ってマリが向かったのは、フロ

アーの奥ではなく、今黒田と幸彦が

乗ってきたばかりのエレベーター

だった。

そのサロンで特別コースとか秘

密コースとか呼ばれる施設は、実は

最上階にではなく地下にあった。そ

の施設は認証を持ったトレーナー

と同伴でなければ絶対に入れない

仕組みになっている。だから、いっ

たん最上階に赴き、マリと落ち合っ

てからそこに向かわざるをえない。

幸彦はサロンのそうしたしきた

りを懇々と教わる。ひどく奇妙な仕

組みだと感じた。特別という形容はいいとして、こういうサロンに秘密コース

というのはどういうことだろう。

地下には薄暗い待合室がもうけられていた。薄暗いと言っても安っぽい空間

ではない。もう少し広さがあればナイトクラブだと言われても納得してしまう

ほどの豪華な空間だ。実際に一角にはバーカウンターまである。

「さあ、オレはどこかで時間つぶしだ。後は任せたからな」

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「その前に、この子の服を脱がせるところまでは見届けてちょうだい」

そんなやり取りの最中に幸彦は見た。黒田は小さな鍵をマリという女に手渡

したのだ。間違いない。それは今の今も自分を苦しめ続けている貞操帯の鍵に

ちがいない。

「さあ、ユキちゃんのための特別寝台よ」

もう蛇に睨まれたカエルも同然だった。マリが言ったように、幸彦が全裸に

なるまで黒田は同席した。

その日幸彦が与えられた衣装は、いかにも涼しげなワンピースだった。それ

だけだ。あとは貞操帯だけという恰好だ。

「はやく脱げ!」

黒田に一喝されて、慌ててワンピースを脱ぎ捨てる。

「そのまま、この寝台の上に上がって」

どうやらまだ貞操帯は外してもらえないらしい。幸彦は無表情にマリが指示

した寝台の上に乗る。言われるままに大の字に寝そべる。

カチッと音がして、気がついた時にはもう左右の手首が拘束されていた、

同じように両脚も、開いたままの状態で寝台に固定された。

「うくく。これで可愛いユキちゃんは私の思いのままね」

「馬鹿なこと言ってないで、さっさと仕事を始めろ」

黒田は吐き捨てるようにそう言って、部屋から出て行った。

マリは、まず脱毛からよと言った。

剃るのではないようだ。剃れば剃った分だけ毛は濃くなると言う。幸彦にも

そのくらいの知識はある。脱毛クリームというものなのか。ポイント部分に、

それが丹念に塗りつけられていく。手や足の指にまでクリームを塗り終えた後、

マリはようやくあの鍵を取り出した。

「さあ、いちばん肝心な場所の無駄毛の処理だからね」

巨大な異物が苦痛であることは確かだが、幸彦を苦しませているのは異物感

や痛みだけではなかった。おそらくあの潤滑剤に配合されているはずの何かが、

幸彦の官能を刺激しているのだ。幸彦は身体の疼きにも苦しめられていた。

「あらあ、ユキちゃんて、可愛い顔してるくせに、ずいぶんエッチなのねえ」

貞操帯の前宛てを外したマリは、そんなことを言う。男根を模した突起は、

まだ幸彦の体内に埋め込まれたままだ。

「クリトリスがびちょびちょだよ。淫乱な美少女ねえ」

マリもまた幸彦の男性器をペニスとかチンポとか呼んだりはしない。黒田と

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同じようにクリトリスと呼ぶ。

マリが言う通りだった。樹脂の被いに包まれた幸彦の男根は、伸びやかには

勃起できないにもかかわらず、大量の淫液を吐きだしていた。だが、吐き出す

のは先走りの液ばかりで、射精に達するほどの刺激は得られていない。

埋め込まれた突起がたとえ僅かでも動いてくれたなら、幸彦は瞬時に昇りつ

めてしまっただろう。だが、黒田やあの男たちのそれと違って、この無機質な

男根は動かない。

「さあ、ユキちゃんを興奮させているもの、邪魔だから抜いちゃいましょうね」

マリはようやく巨大突起に手をかける。それをズルズルと引き抜いていく。

「あふ・・・・・・うぅ」

濡れそぼった男根をマリは一気に抜こうとはしない。ときおり、わざと押し

戻したりして幸彦の反応を楽しんでいる。幸彦が無意識に喘ぎ声をあげてしま

うと、面白がって動きを止める。遊んでいるようでもあり、ただいたぶってい

るだけのようでもあるが、これも調教の一部なのだ。

「もう、堪忍して・・・ ください・・・」

「何を? 何を堪忍してほしいの?」

幸彦は答えられない。

「動かさないでほしいの? それとも動か

してほしいの?」

それは幸彦にも分からない。いっそのこ

と激しく動かして、イカセテほしいのか。

それとも動きを止めて、淫らな刺激から解

放してほしいのか。

「はっきりしない子ね。じゃあ、はっきり

するまで、これを入れといてあげる」

そう言って傍らのワゴンの抽斗から奇妙

な道具を取り出す。

黒い三角錘が、底辺で細くくびれて、小

さな円盤と繋がっている。大きさは模造の

男根に匹敵する。

「これもユキちゃんのオマンコを、ちゃん

と楽しませてくれるお道具よ」

アヌスプラグと呼ばれる代物だ。

「これだと、入れたままでも、オマンコ周

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りの脱毛の邪魔にはならないわ」

マリは幸彦の体内から一気に男根を引き抜いた。その代わりに、今度はアヌ

スプラグを埋め込んでいく。すでに潤滑剤が充満している直腸は簡単にそれを

飲み込んでいく。

形状はいたってシンプルだ。今まで身体を貫いていた男根のような淫らなも

のではない。だが、男根が容易く出し入れできるのにたいして、こちらは入れ

易く出しにくい形をしている。大きく張り出した三角錘のエラの部分が、抜き

取りを妨げる。

しかも、このプラグは電池を内蔵し振動する機能を持っている。その点では、

おぞましい形をした男根よりも、更に邪悪な悪魔の道具だった。それが装填さ

れた瞬間から、幸彦はすぐにその機能の恐ろしさを実感させられる。

身体の中に埋め込まれると同時に、それは不気味な蠕動を開始した。

「こ、これって!」

「そうよ、バイブ機能もついたすぐれものよ」

「やです。こんなの嫌だ。止めてください!」

「なに言ってんの。あなたに選ぶ権利なんかないのよ」

口調は優しいが、口にする言葉は冷酷だ。

「貴方はここに何しにきたか分かってるの? 調教を受けに来たのよ

あたしは貴方の調教師なの。貴方を鍛えるトレーナーなの。貴方の身体を、

もっともっと可愛く、もっともっと淫らに造り変えていくのが、あたしの仕事

なの。ここではあたしが絶対なのよ。誰にも口出しなんかさせない。なのに、

調教を受ける立場のペットが文句なんか言えると思うの?」

幸彦はここがどういう場所か、そのとき初めて理解できた。ここはエステな

んかじゃない。奴隷を奴隷らしく鍛え、改造するための調教施設なんだ。

「はじめての体験だから、少しくらいのお漏らしは許してあげる」

マリはニタニタ笑いながら言い放つ。

「まあ、興奮してくれているほうが、乳首のケアにはいいんだしね」

そう言いながら、寝台の横に立つ配電盤のような設備から、二本のチューブ

を伸ばしてくる。チューブの先には小さなバキュームのような物が取り付けら

れている。

「その胡麻ツブみたいな乳首じゃ、殿方は満足できないの。貴方だって、せっ

かく殿方にいじってもらっても、何も感じないんじゃつまらないでしょ。

これを使ったら、そのみすぼらしい乳首もすぐに大きくなるし、感度だって

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びっくりするくらい良くなるのよ。

これわね、元々は乳首が陥没していて赤ちゃんにオッパイあげることができ

ないお母さんのために医大の偉い先生が開発した治療器具なの。それをうちの

先生が貴方みたいな子のために改良した素晴らしい器械なのよ」

先端のバキュームを幸彦の左右の乳首に取り付けながら、マリは解説する。

「でも、貴方みたいに、自力で女性ホルモンを分泌する能力を持たない子は、

定期的に吸引しないとすぐに縮んで、元の乳首に戻ってしまうわけね。

だからせっせとここに通って、せっかく大きくなった乳首が、元に戻ってし

まわないように頑張らないといけないのよ。分かるわね」

それは乳首の改造を始めるにあたって、

マリが必ず口にする決まり文句だった。

実際には、その器具で吸引され肥大化した

乳首は、もう元に戻ったりはしない。

それは生贄を安心させるための方便に

すぎない。物理的な吸引と女性ホルモンの

投与。それに加えて、ある種の増強剤まで

併用した乳首の改造。改造された乳首は、

勃起すれば小指の先ほどの太さになる。

その太さにふさわしい長さにもなる。

そうなるまでに要する時間は、どんなに

長くても一ヶ月だ。

「痛い!」

吸引がはじまって暫くの間は、なんとか

耐えていた。だが、いくら幸彦が耐えてい

ても、マリは顔色一つ見ようとはしない。

見るのは壁時計の秒針の動きだけだ。

「停めてください」

「なに、馬鹿なこと言ってんの」 マリは真顔で怒った。

「貴方、この器械いくらするか、知ってんの。四千万円よ」

それは全く見当違いな言葉に思える。幸彦には言葉の意味が理解できない。

「いきなり点けたり停めたりして、壊れたらどうするの!」

こんな器械が、なんで四千万もするんだ。いいかげんにしてくれ・・・・・

もちろん幸彦にこの装置の価値など分かるはずもない。ただ吸引するだけの

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単純な器械じゃないか。そう思うだけだ。

しかし、それほど単純な器械ではなかった。ただ吸引しているだけのように

見えるが、乳首を吸うバキュームの部分には幸彦の想像をはるかに超えた精密

な仕組みが隠されていた。

まずそこには、最先端の技術で開発された『全く痛みを感じない注射針』が

仕込まれている。それも数本。その針を通して、投与量をコンピュータで制御

された様々な薬剤が注入されていく。また、最適の状態で乳頭を成長させるた

めの細胞のサンプルや血液などが採取されていく。そのデータに基づいて投与

される薬剤の種類や量が刻々と変化しているのだ。しかも、投与される薬剤に

は媚薬まで含まれている。

「もう少しの辛抱よ。痛みなんかすぐに麻痺するわ」

マリはすぐに機嫌を直し、また意味もなくケタケタと笑う。怒るよりはその

ほうが似合う女だ。少なくとも正常な神経の持ち主ではない。

「痛いどころか、気持ちよくなってくるはずよ」

マリは乳首の作業を器械まかせにして遣り残した脱毛作業に手を移す。残る

のは肛門とペニスの周辺だけだ。まずは貞操帯を外されて、窮屈な檻から解放

されて伸び伸びと勃起するペニスだ。黒田やマリがクリトリスと称する器官の

周辺にクリームを塗りたくる。陰毛にまで塗り込むところをみると、パイパン

にしてしまうつもりのようだ。

「どうしたの? もう痛みなんかないはずよ」

耳元でマリは囁く。たしかにもう痛みは感じなくなっていた。だが、今度は

痛みとは別の感覚が幸彦を苦しませていた。

身体の中で不気味に蠕動するプラグが、幸彦の官能を容赦なく責め立てるのだ。

もともと貞操帯の突起で十分に耕されていた下地に、発情の炎が一気に燃えひ

ろがっていく。それにくわえて、今まで痛みしか感じなかった胸元までが妖し

く疼きはじめる。

「あらあら、クリちゃんがどろどろになっちゃってるわね」

そう言いながら、マリはバイブレーターの目盛りをいきなり二段階上げて

『強』に切り替えた。

いやあああ・・・・・

甲高い絶叫と同時に反り返ったペニスの先端から夥しい精液が噴きこぼれ始

める。バイブの刺激が電撃のようにペニスと繋がったのだ。さらにその刺激は、

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吸引される乳首にも繋がっていく。

今はまだ、幸彦の乳首は下腹から押し寄せる快感の受け皿にすぎない。

だが、こうした快感の連動を何度も何度も体験していくうちに、やがてそれ

自体もまた、発情の波を全身に送り出す発火点と化していく。

胸元だけではない。この秘密室での

調教によって、幸彦の肉体は全身が性

器と化すほどの過酷な改造を施されて

いく。唇はもとより、耳や、首筋や、

背中まで、さらには脚や手足の指まで

もが、男に愛撫にされることで燃え上

がってしまうような、発情の発火点に

造り変えられていく。

夕刻になって、黒田が戻ってきた。

幸彦はもう自力では立ちあがれない

ほど疲労困憊していた。

黒田に抱きかかえられてサロンをあ

とにする。

駐車場までの道すがら、薄手のワンピースを通して、黒田の体温が伝わって

くるのを感じる。

疲れきっているはずの身体が、その体温に反応している。その反応に幸彦は

驚く。それは、覚醒したことで棄て去ったはずの身体の疼きだった。

妖しく疼きはじめた自分の身体に、幸彦は驚き、戸惑う。

そして悟る。

昼すぎにサロンに入ったときの自分と、今の自分とでは、全くちがう身体に

なってしまったのだ。

昨日の逃亡を境にして、自分は変わった。幸彦はそう思っていた。

連れ戻してから激しい暴行をくわえた後で、黒田は泣きじゃくる幸彦を容赦

なく犯した。最初の夜と同じパターンで幸彦は犯された。最初の夜よりも激し

い暴行だったが、男たちの手で淫らに開発された肉体はこれまで通りの反応を

示すはずだった。

だが、幸彦はそれに溺れきってしまわないでいる自分を感じた。

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何も感じなくなったわけではない。それなりの快感はあった。黒田やあの男

たちの手で開発されたものは、身体の中にちゃんと残されていた。けれども、

そんな快楽に我を忘れるほど溺れ込むようなことは、もうなくなっていた。

心のどこかで、黒田に犯されている自分を見つめるもう一人の自分がいるの

を感じた。そんな行為にそれなりの快感を得たとしても、もうそれに溺れ込ん

でしまう自分ではなくなっていた。自分は覚醒した。幸彦はそう思った。もう

我を忘れて自分から黒田を求めるようなことなどありえない、と思った。

それなのに、たった一日でその自信がぐらつきはじめている。

黒田に抱きかかえられているだけで、彼の体温を感じただけで、なぜか安ら

ぎを感じてしまっている自分がいる。

安らぎだけではない。黒田の肌の感触と温もりに、身体が疼きはじめている

自分がいる。今すぐにでも犯してほしいと思っている自分がいる。

ボクはいったい、どうなってしまうんだろう・・・・・

その6 終わり

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1

少年淫夢譚少年淫夢譚少年淫夢譚少年淫夢譚

その7

<7> 牝犬の絶望と愉悦

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2

捕えた少年の身体を改造していくうえで、黒田は特に乳房の造形にこだわる。

それには黒田なりの理由がある。

媚薬や技巧を駆使してどれほど狂わせてみても、今度の幸彦のような事件は

しばしば起きてしまう。

生贄の心のどこかには、かならず元の暮らしへの未練が根強く残っているか

らだ。そんな未練を断ち切るうえで乳房の付与は大きな意味をもつ。

あまりにも順調だった為に、そんな基本的なことを失念していた自分がうか

つだったと黒田は思う。早崎ばかりは責められない。

与えられる乳房が大きければ大きいほど、決定的な改造をほどこされた少年

の絶望は深いものとなる。

ほとんど例外なく数日間は泣き通す。そして、その涙が枯れ果てたとき蛹は

蝶にかえる。生贄は見事に生まれ変わる。

元の暮らしに戻る道が完全に閉ざされた生贄にとっては、もう女として生き

る道しか残されていない。与えられた乳房にふさわしい道は、もうそこにしか

ない。生贄はそう悟らざるをえない。

黒田に言わせれば、その段階ではじめて生贄は女になる。

牝に生まれ変わる。

それまで燻っていた理性のタガが外れて、快楽を貪ることだけがただひとつ

の生きる喜びになってしまう。

幸彦は真面目で知性的な少年だが、こいつもまた間違いなくそうなっていく。

いや、知性的であればあるほど、そうなってしまうものだ。

長年の経験で、黒田はそう思う。馬鹿はしょせん馬鹿だ。馬鹿は絶望しない。

それゆえにまた、芯からの改造も困難をきわめる。

その意味で、すぐれた容姿だけでなく、心の資質という面でも幸彦はまれに

みる逸材だ。手をゆるめなければ、間違いなく素晴らしいタマに育つ。

美しく、知性的で、しかも淫乱な、客の心をつかんで離さない素晴らしい牝

に育つはずだ。

エステへの行き帰り、幸彦の美肛に装填された模造の男根は、そのつとめを

十分に果たした。

それを引きぬかれても、幸彦の穴はもう完全には窄まらなくなっていた。

サーモンピンクの腸壁が露になるほど、穴は開ききっている。

マンションに戻るとすぐに着衣を剥ぎとられ、ベッドの上に這わされた。

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3

黒田に命じられて、両手を臀部にまわし、細く長い指で尻肉を左右に開く。

黒田が背後から迫ってくる。その気配を感じただけで身体が濡れ始める。

喘ぎ声を洩らしそうになってしまう。

黒田のもとから逃げ出して、いったんは正気を取り戻したはずなのに、幸彦

は自分がどんどん崩れていくのを感じる。

サロンから帰る道すがら、肌が汗ばむほどの疼きに悩まされていた。身体の

疼きは止まらない。止まらないどころかどんどんエスカレートしていく。

行き着くところまで行かないと、その疼きは止まらない。

ボクは本当に正気を取り戻したのか。男に犯されて喜ぶような、こんな異常

な快楽から本当に抜け出すことができるのか。

帰りの車の中で、黒田は意外なほど上

機嫌だった。エステに向かうときはひど

く寡黙だった男が、まるで別人のように

饒舌になっていた。

「あの施設のバックには、お前が名前を

聞いたらびっくりするような医者や科

学者が何人もついている。

そのうち人工子宮まで作り出そうと

計画しているとんでもない連中だ。

オレはまだ半信半疑だが、もし本当に

そんなものが作れるなら、オレが真っ先

に試してやる。

そのときはお前がオレの子を孕むん

だ。子作りなんて真っ平だが、お前なら

孕ませてやってもいい」

どこまで本気なのか。そんなことまで饒舌に話しだす。

ボクが、この人の子を、孕む?? とんでもない話だ。

体中の毛が逆立つ。なんでボクが、男のボクが、こんな人の子供を孕まなきゃ

ならないのか。

ありえない話だと思う。

でも、クローン羊さえ作り出してしまう時代だから、遺伝子や染色体を操作

する技術が、そんな形で使われることがないとは言いきれない。

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4

だとしたら、それは生命への冒涜だという気がする。

マッドサイエンスだよ、そんなの。

まして、男のボクが孕まされるなんて。それもこんな人の子供を・・・・

どうしてそんな恐ろしい話をするのか。黒田の真意はつかめない。ただボク

を怯えさせて楽しんでいるだけなのだろうか。

でも、そんな子供じみた脅しで無駄に遊ぶような男ではない。それもまた、

ボクの心の中に牝の感覚を刻みつけていく、暗示のひとつなのかもしれない。

それとも・・・ 本気でボクの身体の中に、子宮を埋め込むつもりなのか。

本気で自分の子を、男のボクに孕ませるつもりなのか・・・・

黒田の並み外れて太く長い男根が、幸彦の肉をえぐる。腸壁を擦りあげなが

ら侵入してくる異物の圧倒的な存在感。

身体中の肉という肉が小刻みに震えだす。白く美しい肌が薄紅色に染まって

いく。

もともと男にしては白すぎる肌だ。ほとんど体毛とは言えないほど薄かった

体毛も、マリの手で完全に処理されている。白い肌がいっそう白さを増し、艶々

とした光沢まで放つようになっている。

素晴らしいのは肌だけではない。黒田を飲み込んだ直腸の肉壁もまた、信じ

られないような動きを示す。

黒田のモノを咥え込んで妖しく蠢き、まるでソレが抜き取られるのを拒むか

のように強く締めつけてくる。その蠢きがなんとも言えないほど心地いい。

女のソコには数の子天井という言葉があるが、こいつのここはなんと言えば

いいのか。黒田はふとそんなことを考える。

神さまも罪な身体を与えたものだ。こんな真面目なやつに、しかも男の子に、

天成の淫婦みたいな身体を与えやがった。

ああ、もう・・・・・

「イってもいいぞ。何度でもイカせてやるから、心配するな」

黒田はそう言って、背後から貫いた状態のまま、幸彦の身体を抱き起こした。

そして、幸彦をかかえたままベッドの端に腰掛ける。

抱き起こされた幸彦は、後ろ向きで黒田の膝に跨ったような格好になる。

今までそんな体位で犯されたことのない幸彦は一瞬とまどう。だが、上昇し

はじめた快感の奔流に、すぐにわれを忘れてヨガリ狂いはじめる。

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その様子を確かめた黒田は、太腿の裏に手をあてがい、両脚を持ちあげて、

Mの字に開いていく。形から言えば、幼児を背後から抱き抱えて、排尿させる

スタイルと同じだが、それと決定的に違うのは幼児役の幸彦が背後から肛門を

犯されていることだ。

もし誰かが前にいたとしたら、二人の結合部分が丸見えになるような、実に

破廉恥な体位だった。

前には誰もいない。寝室と居間を隔てる引違いの板戸があるだけだ。

「さあ、もういいぞ」 黒田が誰もいないはずの隣室に向かって声をあげる。

信じられないことが起きた。

板戸がすっと開いて、隣室から三人の男が姿をあらわしたのだ。現れたのは、

幸彦をさんざん弄んだあの男たちだ。

ひぃぃ・・・・・

悲鳴をあげたはずだが、それは音にはならなかった。風が吹きぬけるような

無声音が、空しく喉元を通りす

ぎたにすぎない。

「リハーサルは必要ないっすよ。

もうさっきから隠し撮りしちゃ

ってますから」

三人の中では一番年長のテツ

という男が、笑いながら黒田に

話しかける。

隠し撮り??

男たちはそれぞれに撮影用の

機材を手にしている。幸彦が知

っているようなハンディタイプ

のビデオカメラではない。見る

からに本格的な撮影機材だ。

「ほんじゃまあ、正式の記念撮

影といきますか」

テツは幸彦の前に三脚を置き、

ビデオカメラのレンズを向けて

くる。テツは固定カメラを担当し、もう一人が肩に担ぐカメラで別の角度から

撮影しようとしている。残る一人はライトを手に幸彦の身体を照らしはじめて

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いる。

「同時録音になるんで、マネージャーはあんまりしゃべらないでくださいね」

録音??

「けどまあ、声が入っちゃっても、後からいくらでも編集できますがね」

しばらく呆然としていた幸彦にも、ようやく事態がのみこめてきた。

「やめてください。いったい何する気なんですか!」

「何するんですかって、見りゃわかるでしょ。エッチなビデオの撮影ですよ」

「バ、バカなこと言わないでください。やめてください」

「馬鹿なことって、これはあんたの旦那様からのご依頼なんですがね」

テツはあいかわらずにやけた口調でそう言い、黒田のほうに話を振る。

「マネージャー。女優さん、えらく怒っていますが、どうします?」

「かまわん。続けろ」

なおも抗議しようとする幸彦の口を黒田の分厚い掌が塞ぐ。

「ぎゃあぎゃあと喚くんじゃない。殺されたいのか」

殺す?? 黒田の言葉に幸彦の身体は凍りつく。

「昨日の脱走は完全な契約違反だ。ごめんなさいで済む話じゃない。

オレたちの世界では、命をとられても文句が言えないような裏切りだ。

それをこれくらいのペナルティで済ませてやろうと言うんだ。

ありがたいと思え。分かったな」

これは昨日の脱走のペナルティだというのか。

「そうだよ、お嬢ちゃん」

黒田に話を振ったテツが、また割り込んでくる。

「もう逃げ出そうなんて気を起こさないように、お写真を撮っておくのさ。

こんど逃げ出したりしたら、お嬢ちゃんの家族も、親戚も、ご近所さんも、

お友達も、みーんながその写真を見ることになるわけ。こんなエッチな写真を

みんなに見られたら、お嬢ちゃんはもう生きていけないよね。

マネージャーはペナルティって言うけど、オレに言わせれば一種の保険だよ。

こんな保険を掛けるだけで許してもらえるんだ。感謝してあたりまえ。怒った

りしたらバチ当たるよ」

身体の震えがとまらない。憤りと恐怖と屈辱感の入り混じった涙が、とめど

なく溢れ落ちる。

けれども、生まれてから今まで直接的な暴力にさらされたことのない少年に

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とって、初めて体験する黒田の暴力は絶対的なものだ。

そのうえ、殺すとまで言われたのだ。逆らえる道理はなかった。

黒田にしても、ただ恫喝するだけでは芸がないという思いがある。ただ震え

上がって言いなりになるだけの姿には妙味がない。どうせ撮影するなら、客が

こぞって手をあげるような絶品に仕上げたい。これほどのタマだ。撮りかたを

間違えなければ、高値で売れる作品になるはずだ。

はじめからそう目論んでいた黒田は、今朝からいつもの倍以上の媚薬を飲ま

せておいたし、エステのマリにもその旨を伝えて協力を頼んでいた。

面白いわね。仕上がったら、あたしにもそのビデオちょうだい。

それだけの報酬でマリは協力を約束した。マリはマリで、幸彦の乳首に注入

する媚薬の量を危険水位の一歩手前まで増やしたし、最後には、幸彦の肛門に

悪辣な時限装置まで仕込んだ。

アヌスプラグを引き抜く際のどさくさに紛れて、痔疾用のそれによく似た形

の座薬まで挿入しておいた。

それは、数時間後に体内で暴発するような遅効性の媚薬だった。これが暴発

すれば、どんなに意思がつよく冷静

な生贄であっても、肉欲の奔流に抗

うことはできなくなる。狂わざるを

えない。

幸彦の体内にはいつもの数倍の

量の媚薬が注入されている。

今はただ黒田の言葉に怯えてい

るだけだが、いったん発情しはじめ

たら、もう理性では制御できない炎

に全身を灼き尽くされてしまう。

そうならなければ面白くない。

そうなってこそ、客がこぞって買

い求めるようなビデオになる。こ

いつをウリにかけるときも、売値

を思いきり吊り上げていくための

絶好のプロモーションになる。

評判がよければ、第二弾、第三弾とシリーズ化してもいい。初回はそれほど

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凝ったものにはできないが、年寄り好みのセーラー服やチャイナ、お嬢さま風

からレイプ物やSM物まで、衣装や趣向を変えていけばいくらでも作りつづけ

ることができる。

それもこれも、初回のこのビデオの出来しだいだ。

黒田の狙いはママのそれをはるかに上回っている。

店の客入りを増やすという程度のものではない。ひそかに売春もさせ、こう

したビデオでも稼がせていくつもりだ。

あげくの果ては、人身売買まで視野に入れている。ただ稼がせるだけでなく、

いずれは幸彦という人間そのものまで売り飛ばしてしまう腹だ。

そうした収入は黒田が独占する。そんなことはママも知らないし、ましてや

あの馬鹿が知る由もない。

これまでもそうだった。

よほど質のいい獲物でなければ、ただホステスとして店に送り込むだけで、

それ以上の冒険はしない。

効率の悪い素材まで使ってリスクを犯すのは馬鹿げている。

不運なことに、幸彦はその質のいい獲物の一人だった。それも、黒田に言わ

せれば五年に一度というくらいの上玉だ。

ママと早崎が企てた謀みは、黒田にとっても有り難い話だった。

実は二人の企てができあがる以前から、黒田は幸彦に目をつけていた。

場合によっては、拉致監禁という荒っぽい手を使ってでも、どうしても落し

たい獲物だった。

欲の皮がつっぱったオーナーと、遊び狂うことくらいしか能のない馬鹿が絵

図面をひいてくれたおかげで、そんな危ない橋を渡る必要はなくなった。

それにしてもと黒田は思う。

オレのような人間には、ここは実に住みやすい国だ。見せかけの平和にどっ

ぷりと浸かり、上から下まで人権が保証された国だと信じきって暮らしてやが

る。とんでもない話だ。一皮剥いたら人身売買の天国になってるってことに、

全く気づいちゃいない。

年間にどれくらいの人間が行方不明になっているのか、それさえも掴んじゃ

いない。自殺する人間が年に3万人もいるって騒いでいやがるが、姿を消して

しまう人間の数はそれどころじゃないんだよ。

そのうちの2割か3割か、へたしたら半数ちかくは人身売買の生贄になって

いると思って間違いない。外国から連れて来られる奴を含めたら、とんでもな

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い数になる。何が人権だ。

拉致だの、監禁だの、人身売買だのと言ったら女しか頭に浮かばないやつも

多い。男だったらマグロ船なんて時代錯誤なイメージしかない連中には、理解

できないだろうな。性奴隷として売り買いされる商品の中で、若い男の占める

割合はぐんぐん高くなってるんだ。

思いついたようにたまに腰をあげる警察の捜索も、そっちの分野では女中心

だ。男の子の場合はすぐに単純な家出と決めつけて、調べようともしない。

女よりも男のほうが、自力では戻れない

世界に落ち込みやすいんだ。嘘だと思うん

なら、本気で中国や東南アジアを調べてみ

るがいい。売り飛ばされた男がどれくらい

いるか。アラブのスケベ貴族のハーレムや、

中央アジアの特権階級の自宅の檻に、どれ

くらいの日本人少年が飼われているか。

全く能天気な連中ばかりだぜ。なにが人

権だ。なにが民主主義国家だ。

もっとも、そのおかげでオレは稼げる。

文句を言うつもりは更々ないがね。

ひいいいい・・・・・・

相変わらずM字開脚のまま背後から貫かれている幸彦の様子が、テツに抗議

したときとは全く変わってしまっている。

固定カメラは二人の結合部分を執拗に追い続けている。移動カメラのほうは

紅みを増した幸彦の顔を追う。化粧はいつもより格段に濃い。エステでの調教

のあと、ビデオ撮影のことを知る女トレーナーの手で施された厚化粧だった。

カメラ映えするようにと厚く塗られたファンデーションも、発情しきった幸彦

の頬の火照りを隠せない。

だらしなく開かれた真紅の唇。うつろな瞳。黒田の肉棒で一突きされる度に

こぼれ出る悲鳴。喘ぎ。熱い吐息。

黒田はときどき計算づくで動きを止める。わざと焦らすのだ。

焦らされた幸彦は身体をよじって振り返ろうとする。何を求めているのかは

聞くまでもないが、黒田はわざと無視する。喘ぎがせっぱつまったものになる

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のを確認してから、おもむろに耳元で囁く。

「どうして欲しいんだ」

それでも最初のうちは、その問いに答えようとはしない。

「動いて・・・・ほしいの、もっと動いてください・・・・・」

ようやく、そう口にする。

「そうか。もっと激しく犯してほしいんだな。オマンコを突いて欲しいんだな」

「は・・・はい。ユキの、オマンコを、もっと突いてください・・・・・」

誘導されて口にする言葉は、さらに淫らのものになっていく。

「もっと激しく突いて、ユキのエッチなオマンコを目茶目茶にしてください」

「オレの濃いのが欲しいんだな。孕んでしまってもいいんだな」

「孕ませて。旦那さまの赤ちゃんを、ユキに孕ませてください・・・」

「ほんとうに孕んでもいいんだな。男のくせに、子供ができてもいいんだな」

「いや! ユキは女です。旦那さまの女です。だから、もっと激しく犯して」

卑猥なやりとりが延々と続く。

芝居がかった卑猥な台詞の応酬にテツたちは苦笑するが、彼らもそれが必要

不可欠な調教プロセスであることは心得ている。

黒田が捕獲し、奈落に堕としてきた少年の数は、彼らの間ではある種の伝説

になっている。そんな黒田に教えを乞うたところで、何の話かとせせら笑われ

るだけの話だ。彼の信用を得ることができたら、常に身近にいて彼の手伝いを

する。そして実地体験を通して、ノウハウを盗んでいくしかない。

ぎゃ!!

焦らしに焦らした黒田が、いきなり動きを早めた。固定カメラはその様子を

じっくりと捉えていく。

ピストン運動という形容はけっして大仰ではない。濡れ光った肉棒が激しく

幸彦の肛門を出入りする。よほど体力がなければ続かないような速さで出入り

している。

さあ、一発目のトコロテンだ。こいつは撮り損じができないぞ。

いやあぁ・・・・・・・やだぁぁぁぁ・・・・・・・・・・

幸彦の唇からこぼれ落ちるのは拒絶の叫びではない。初めて同性に犯された

日からもう癖になってしまっている叫び。それは絶頂を告げる叫びだった。

ゴボっという感じで、白く濃い精液がおさないペニスの先端から溢れ出る。

もう射精という言葉は通用しない放出だ。並みの男の射精がシャンパンの噴出

だとしたら、こちらは瓶の口から噴き零れるビールの泡か。

ゴボっ、ゴボっと、淫らな放出は際限なく続く。

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「おい。顔ばっか撮ってるんじゃないよ。絵が単調になっちゃうだろ」

テツもまた幸彦の燃えあがりように圧倒されて興奮している。移動カメラで

撮影している弟分を叱りつける。

「指の動きとか、乳首の尖がり具合とか、もっと気をきかせて追いかけろよ」

そんなテツの様子を黒田はしっかりと観察している。この三人の中で、使い

ものになるのはコイツだけだ。

オレももう若くはない。いつまでも自分一人でやれるわけでもない。オレが

開拓した手蔓や人脈はオレしか動かせないが、現場をしきるのはオレでなくて

もいいはずだ。そんな思いで目をつけたのがテツだった。テツはもともとAV

業界で飯を食ってきた男だ。機転もきくし、技術も持っている。

黒田はテツにあることを約束して

いた。

今度の仕事はただの手伝いにすぎ

ない。だが、この仕事をうまくこな

せたら、次からはオレの片腕と認め

てやる。お前が見つけてきた獲物は、

お前と一緒に調教したうえで、オレ

が責任をもって処分する。儲けは折

半だ。悪い条件じゃないはずだ。

悪い条件じゃないどころか、願っ

たり叶ったりの話だ。黒田の懐に飛

び込めたということだ。黒田のノウ

ハウを盗める位置につけるんだ。

それだけじゃない。いくら獲物を

ゲットしたところで、処分できなけ

れば金にはならない。換金に結びつ

かないような狩りは遊びにすぎない。黒田の強みは獲物を落すノウハウだけじ

ゃない。複数の処分ルートを握っているということだ。ノウハウにくわえて、

処分ルートまで引き継げたらもう言うことなしだ。平穏に引き継ぐ必要なんか

ない。盗めばいいだけの話だ。

移動カメラをもったマサという名の弟分は、幸彦の肢体を舐めまわすように

撮っていく。その道の経験者であるテツの指示は的確だった。興奮し、上気し

きった顔も色っぽいが、肢体の各部も負けず劣らずに妖しく美しい。

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もう忘我の境地を彷徨う幸彦は、虚空に浮かぶ何かを掴み取ろうとするかの

ように手を伸ばし、指を蠢かせている。その指は細く白く、その動きはひどく

艶かしい。指の動きだけでも十分エロチックだ。テツの兄貴はさすがだと思う。

続いて胸元にレンズを向ける。激しい息遣いで上下する胸元には、ピンク色に

染まった乳首が尖りたっている。おや、こいつの乳首はこんなふうだったかな。

マサがそういぶかるほど、幸彦の乳首はたった一日の調教で信じられないほど

膨脹していた。ただ膨脹しただけではなく、硬く勃起するようになっている。

マサにすれば初めて見る幸彦の乳首の勃起だった。乳首まで、えらく色っぽく

なってやがる。魅入られたように、レンズは胸元の突起を撮り続けていく。

開かれた脚も、指先も、爪までもが、驚くほどエロチックに照り輝いている。

はじめて犯したときとは、まるで様変わりした幸彦の肢体に、マサはレンズを

向けながら股間が熱くなっていくのを感じた。

固定カメラは一度セットしておけば、後は自動で撮り続けてくれる。

「犯りたくなったんだろ。犯ってもいいぜ」

おそらくはじめからそういう予定だったのだろう。カメラを受け取ってやる

と、マサは嬉々とした表情でジャージを脱ぎはじめる。照明を受け持つ男が、

羨望の眼差しを向ける。

「お前も犯らせてやるから、ガッつくんじゃねえ」

その男はいちばん年下で、クマと呼ばれている。実名に由来するものなのか、

風貌に由来するものなのかは分からないが、三人のなかではいちばん粗暴で、

しかも頭が悪い。よくしたもので、この男にも取り柄はある。精力絶倫なのだ。

持ち物だけを見たら、黒田もテツもかなわない。はじめて幸彦を犯したとき、

黒田につづいて幸彦の身体を汚したのはこのクマという男だ。道具の巨大さと

衰えをしらぬタフな精力、とりわけ一回の射精で放出する精液の量の多さで、

幸彦をうちのめす尖兵に選ばれた男だ。

犯ってもいいと言われても、肝心な部分は黒田が占領している。クマなら、

どうすればいいのかとテツに目で問いかけるところだが、マサは心得ている。

固定カメラと被写体の間には身体を入れない位置に立ち、幸彦の顎をつかむ。

口を犯す構えだ。これで果ててしまったら、黒田から肝心な部分をバトンタッ

チするのはクマになってしまうが、それはそれで仕方がない。幸彦の尻の穴は

知り尽くしている。それよりも、少し見ない間に驚くほど変貌した他の部位に

興味がある。とりわけ唇だ。稚拙だった舌技が、今はどう進化しているか。

まだ命じもしないのに、顎をつかまれた幸彦は突きつけられたモノをじっと

見つめ、唾液に濡れた紅い唇をゆっくりと開いていく。本当にそれを見ている

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のかどうか、焦点は合っていないような気もする。だが、焦点の狂ったような

その目は、それはそれでゾッとするほど色っぽい。こいつ大化けしたな。マサ

はそう思う。信じられないくらいに、いい女になりやがった。

ユキを抱かせてやるから、チンポはしばらく洗うな。それにどんな意味があ

るのかは知らないが、マサはそう指示されていた。はじめてユキを犯すときも

そうだったが、黒田やテツは男根の匂いにこだわる。まあ、それも分からない

ではない。マーキングのようなものだと思う。男の匂いを徹底的に叩き込んで、

その匂いだけで発情するような身体にしたいんだろう。

案の定、幸彦は眉間に皺を寄せる。俺自身が臭いと思うんだから無理もない。

けれど、鼻をつく悪臭に顔をしかめたものの、拒む様子はない。それどころか、

舌を伸ばしてマサの男根を舐めはじめる。口の端から唾液を垂れ流しながら、

舳先の割れ目を舌でなぞっていく。いきなり咥えるのではなく、竿の部分にま

で舌を這わせ、垂れ下がった玉袋まで舐めていく。オレたちに輪姦された頃に

比べると、えらい様変わりだ。

「口のなかに、思いきり出してやれ」

背後から犯し続けている黒田が、マサにそう命じる。可哀相だが、もう元の暮

らしには戻れない身体になっちまったな。テツやクマにくらべれば、マサはま

だ心根に優しさを残している。も

っとも、テツに言わせれば、それ

がマサの弱点であり、限界でもあ

る。

いよいよ口に含もうというの

か。幸彦が口を大きく開いてマサ

を仰ぎ見る。その顔に笑みが浮か

ぶ。まるで媚びるような妖しい笑

みだ。ただ本能のままに男を求め

る、淫婦の笑みだ。それでいてそ

の笑みには、一切の思考を停止し

た者だけが到達する、無心の美し

さが感じられる。こいつ、綺麗に

なったな・・

マサは自分がその美しさに吸い

込まれそうになっているのを感

じて、あわてて幸彦の髪をつかむ。

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大きく開かれた唇に男根を突きたてる。

マサは幸彦の美しさに魅了されていた。そんな気持ちを黒田やテツに知られ

たら間違いなく馬鹿にされる。馬鹿にされるだけならいいが、テツのことだか

ら、きっと罵倒されてしまうだろう。

そんな気持ちをさとられないように、マサはことさらに荒々しく幸彦の口に

生臭いイチモツをこじ入れていく。幸彦はもう、男根の悪臭さえも発情の糧に

変えてしまったかのように、うっとりとマサを見つめている。

そんなに美味しそうにしゃぶるんじゃないよ・・・・

見上げてくる幸彦の目と視線が合ってしまった。マサは動揺する。

大将はコイツを孕ませるなんて言ってたな。

マサは黒田のことを大将と呼ぶ。バッタ商に小僧としてこき使われた時代の

名残だった。当然ながらマサもまた、底辺の泥沼から這いあがってきた男だ。

コイツなら、オレだって孕ませたくもなる。

マサはその育ちゆえか、お嬢様という言葉に弱い。ろくに通うこともできな

かった小学校や中学校では、いつもお嬢様然とした同級生に憧れ、彼女が苛め

られていたりすると真っ先に駆けつけて助け出そうとした。

助けられた少女は、もちろんマサには有難うと言う。しかし、そんな少女が

実はマサのことを気味悪がっていると後で聞かされる。マサは何度もそういう

体験を重ねて、結局自分は白馬の王子さまにはなれないのだと悟っていく。

マサの心の中には、そういう体験をへて累積した美少女への憧れと、同時に

自分とはけっして交わることのない彼女たちへの、全く別の思いが同居するよ

うになる。それは彼女たちを徹底的に辱め、穢してやりたいという、嗜虐的な

欲望だった。

不思議なことに、マサは陶然とした表情を浮かべて自分を見つめている幸彦

に、その頃の少女たちと同じ可憐さや美しさを感じてしまった。

コイツは男なんだ・・・・・

頭ではそう思っても、目の前にいる幸彦は、どこからみてもその頃に憧れた

美少女のようにしか見えない。忘れかけていた少女たちの面影と幸彦の笑顔が

重なってしまう。

飲め! 実にあっけなくマサは果ててしまった。

移動カメラを構えるテツの顔に、驚きの表情が浮かぶのが見えた。

その7 終わり