日本音響学会研究発表会講演論文集, 平成7年3月: 637-...
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KANAGAWA University Repository
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Title 1-7-3 ヘルムホルツ共鳴器音響抵抗の境界要素法解析
Author(s)寺尾, 道仁; TERAO, Michihito; 関根, 秀久; SEKINE,
Hidehisa
Citation日本音響学会研究発表会講演論文集, 平成7年3月: 637-
638
Date 1995-03
Type Conference Paper
Rights publisher
1-7-3 ヘルムホルツ共鳴器音響抵抗の境界要素法解析*
○寺尾道仁,関根秀久 (神奈川大)
1.はじめに ヘルムホルツ共鳴器
の特性 とくに抵抗の数値予測法 とし
て,壁面の空気粘性および熱伝導境界
層における散逸を考慮 した境界要素法
の適用を試み,その有効性をFig.1に示
すようなスリット開口の共鳴器の場合
について実験【1】と比較 して検討 した.
2.ヘルムホルツ共鳴器の特性
ある角周波数Oについて共鳴器の単位
面積音響インピーダンスzm はpFをその
前面音圧,u。を開口断面内速度 として
zHR≡pF/uo=R+jX (1)ここでRおよびXはそれぞれ共鳴器の抵
抗およびリアクタンスである.吸音率α
は正…R/(PCG),丈≡ x/(PCG)として
α=4R/((1+i)2+i2) (2)
こd
ただし,ド:空気の密度,C:空気の音
逮,O=Ao/AD,A.:開口断面積,AD
:ダクト断面積である.
3.音響境界層達成数値解法
数値解析は音響 (疎密波)モー ド場
のHelmholtz-Kirchhoff積分定理に基づ く
2次元部分領域型境界要素法 【2】によ
り,開口部およびその近傍壁面では寸
法1mmの一定要素で離散化 している.
その境界条件,すなわち,壁面におけ
る疎密波モー ドの音圧pとその外向きノ
ーマル勾配qとの関係は疎密波,粘性お
よび熱伝導モー ドの合成速度 と壁面速
度の整合条件から与えられ【3],
q ,1.,.." Rh RvVL2an
志 -【去・(1・j)偉 一一J(叩Hp
ここで,zw:壁面のインピーダンス,ま
た,粘性および熱伝導境界層厚をそれ
ぞれdv-何 六両 ,dh-寸言可両石 として
Rh/PC≡O(†-1)dh/2C=0.966xl0-5I
Rv/pc≡oxlv/2C買2・OGxl0-5 (4)
ただし,Pおよびに:それぞれ空気の粘
性係数および熱伝導率,Cp:定圧比熱,
†:比熱比,f:周波数である.
∇fanは壁面の接線方向成分に関するラプラシアンで,固体境界面を各々滑ら
かな境界面に分割し,その面素の∇fanpはこれと隣接する面素間の差分表現に
変換 し,その端部面素にたいしては音
圧がこれに一致 し面積 0の仮想面素を
境界面周辺に付加 して処理 している.
4.吸音率の観測法
吸音率αは(2)により求める.そのRお
よびXは以下のように与える.
4.1 測定および音響境界層達成解法
R,Xは(1)によりpF/uoの実虚部として求める.前面音圧 pFおよび粒子速度
u。の観測はダクト音源側 plとp2の2点
音圧観測法により求める【4].なお,こ
の段階では音源側ダクトでの散逸αDは
無視 し共鳴器の散逸に含めている.
4.2 疎密波モー ド場解法
Xは疎密波モード場解析により,ま
た,Rは次式(5)により求める.
R-WdisJ(luoN212Ao) (5)
pl p2
lDepthH=0.1] P・cnSthinm]
一一一11=0.4叫 lo卜三 -lB=0・1--・耳
Fig.1Slitresonatortested.
*BoundaryelementapproachtodetermineacoustiCalresistanceofaHelmholtzresonator・ByM.TeraoandH.Sekine(KanagawaUniversity)
日本音響学会講演論文集 -637-平成 7年 3月
ただし,W dissは共鳴器における散逸パ
ワで,次式(6)による壁面方向-の散逸
インテンシティInの共鳴器内壁面につい
ての総和 として求める【5】.
In=RvlutaJJfI2+RhJpNfpcl2 (6)
4.3 略算法
Xは次式(7)により与える.
X≡oM-KB/0 (7)
ここでMは開口部単位面積等価質量で
M =p(lo+AlM) (8)
また,KBは共鳴器のスティフネスで,
KB=PCOOCOt(OIB/C) (9)
ただし, r. :開口断面半径 (スリット
のときはその幅),lo:開口長 (板
厚),lB:背後空間の奥行き, MAt
口部両端補正長で,Fig.1のスリツ
閑
の
.
.ー
場合の解析解 としてAIM/ro苗0・95-1・0が
ある 【6】.抵抗Rは(6)から近似的に
R=2Rv(lo+AIR)/ro (10)
AIR:付加抵抗補正長で,Ingardl7]によ
る経験式AlR/ro芸2がある.
5.測定および解析結果 開口部両
端補正長AIMの結果を'Fig.2に示す.uoの誤差が比較的少ない共鳴周波数付近で
評価すれば,AIMの各手法による違いは
僅かで抵抗のAIM-の影響は少ない.
各手法による吸音率をFig.3に,ま
た,音響境界層達成解法による吸音率
-の共鳴器各壁面別寄与をFig.4に示
す.開口部以外の壁面による損失は無
視できない.αDを含 まないIngardの実験式 と音響境界層達成解法 とはほほ一
致する.吸音率 も共鳴周波数付近で評
価すれば両数値解析は実験値に比べや
や小 さい.実験における(3)での剛壁条
件(PC/zw<<Rh/(PC)-2×10-5)の達成の困
難およびFig.1のダクト上下壁面のほか
2次元数値解析では含まれない左右の
壁面による損失を考慮すれば,両数値
解析結果,とくに近似が少ない音響境
界層達成解法は妥当とみられる.
日本音響学会講演論文集
.1JMIV
uO!)30ヒ03puaSSt!M
I))ua!3TjJ902
u
OtldJOSqV
●
1.5
0 400 600 800
Frequency,Hz
Fig.2Differenceinmassendcorrectionby血emethods.
Io
o5
0.
0.
0400 600 800
Frequency,Hz
●Fig.3DifferenceinabsorptlOnCOefficient
by血emethods.
I))ua!3!JJ203uOIJdJOS
qV
●
to
o5
0.
0.
0 600 800Frequency,Hz
●Fig・4EachwallcondbutiontotheabsorptlOn・
6.まとめ ヘルムホルツ共鳴器の
特性の壁面による空気粘性および熱伝
導散逸を含む数値解析手法を明らかに
し,その基本的な有効性,また,共鳴
器各部の吸音率への寄与を示した.
参【1】尊意臥 音響学会講演論文集,I,,,.1。.【2】寺尾ほか,境界要素法研究会論文集,1987.[3]MorseardlngaFd,Tbeoredcalacousdcs,
eq.(6-4.36),McGrawHill.1968.[4]ASTMstarkkdE1050,1985.【5】R.Lambert,JASA,1951.[6日.Smitsad C.Kosten,Acusdca,γol.1,1951.[7]U.Ingard.JASA,(25),Nov..1953.
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