県立図書館の再整備に向けた基本的な考え方...
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2016 年 7 月 19 日
「県立図書館の再整備に向けた基本的な考え方(素案)」
に関する意見
神奈川の県立図書館を考える会
「県立図書館の再整備に向けた基本的な考え方(素案)」を受け、神奈川の県立図書館を考える会(以
下、本会)としての意見を表明・提出いたします。
大前提としての前文-2 館一体の議論の必要性
図書館法、図書館の設置及び運営上の望ましい基準、「神奈川県立の図書館」がこれまで掲げてきた理
念やそれに基づいて実施されてきた図書館政策を尊重する観点から、今回の素案は本会としては首肯し
がたいものがあります。
そもそも、「神奈川の県立図書館」は、
神奈川県立図書館:社会・人文系リサーチライブラリー
神奈川県立川崎図書館:科学と産業の情報ライブラリー
という 2 館が「それぞれの特徴を活かし、機能を分担しながら運営」(神奈川県立の図書館サイト「県立
2 館について」より)されてきた経緯を大前提として、神奈川県立図書館、神奈川県立川崎図書館を一体
的に議論すべきです。
神奈川県立川崎図書館の将来像が具体的に説明されない状況において、神奈川県立図書館についての
み議論することには大きな戸惑いを感じます。そして、このような形での検討そのものが不要な行政コ
ストであり、県民としては神奈川県政に対する不信感を覚えます。
ついては、本会がこれまでの提言でも挙げている図書館法に基づく図書館協議会を迅速に再設置し、
一連の議論に広く県民参画の途を明確に開き、県民との協働においてこの先の議論がなされることを期
待します。
以上を最大の前提としたうえで、しかし、このままこの素案に基づく施策が推進されることを懸念し、
あえて素案に対して最低限の意思表明を行います。この意をお汲みいただき、拙速になることなく丁寧
な議論を県民との対話を踏まえながら実行されることを強く望みます。
なお、「I 都道府県立図書館の役割」については確認的な内容につき、過誤の指摘以外のコメントをい
たしません。
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I 都道府県立図書館の役割
この項目については、確認的な内容なのでコメントはしないが、不正確な引用があったので、その点を
指摘しておく。
素案では、都道府県立図書館の役割について、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に求めて、そ
の抜粋を示しているが、 「三 運営の基本」について、市町村立図書館と共通する部分が略され、都道
府県立図書館に追加的な部分だけの抜粋になっている。
II 県立図書館の現状と課題
1 県立図書館の沿革
前文に記載したが、沿革についても県立二館全体を踏まえて示す必要がある。少なくとも設置根拠とな
る条例については、神奈川県立図書館条例(1958 年(昭和 33 年)11 月 1 日)だが、旧条例の廃止の理
由(県立川崎図書館の設置)を含めて記載するべきである。
2 県立図書館の再整備までの経緯
緊急財政対策のロードマップには、検討項目として、記載のほかに「相互貸借システムの拡充など広域
サービスについて検討」などがあった。再整備にあたっては、それらの検討結果を踏まえる必要がある
が、少なくとも経緯の中でどのような項目があったのか、記載しておくべきである。
3 県立図書館の取組状況
記載の取組みや特色、所蔵状況について、事業や冊数などが記載されているが、他の都道府県立図書館
や県内の市町村図書館との比較等により、それらの特徴を認識できるようにするべきである。
4 施設・収蔵・利用等の現状と課題
素案では、入館者数や貸出冊数の減少について、その原因を分析しないままに、対応策としての賑わい
を論じているが、県立図書館の役割像を明確にしたうえで、それに即した指標を用いて利用の現状を分
析し、課題を明確にすべきである。この分析がないまま「賑わい」の議論を展開することは論理的に破
綻しているのではないか。
III 県立図書館の再整備に向けた基本的な考え方
1 目指すべき県立図書館像
「専門的図書館」「広域的図書館」「魅せる図書館」「価値創造の場としての図書館」といった議論の大前
提として、図書館法、望ましい基準等が求める「基本的な図書館サービスの機能等」(12p)の実像を明
確にし、その充実を明記すべきである。
2 目指すべき県立図書館像を踏まえた機能
「専門的図書館」を名乗るにふさわしい専門的人材を採用し、相応の処遇を図るべきである。同時に公
共専門図書館である以上、研究者を含む利用者が極力自由に資料を閲覧・利用できる体制を整えるべき
である。
「広域的図書館」:たとえば、協力車に正規職の図書館司書が同乗し、市町村図書館の相談対応にあたる
等、広域支援のさらなる充実を図るべきである。
「魅せる図書館」:資料展示を効果的なものとするためには、外部の専門家と対等に渡り合える職員の存
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在と展示する資料についての研究(大学や市井・在野の研究者との共同研究を含む)が欠かせない。そ
のような体制を構築すべきである。また、誇るべき資料の存在をより活発に情報発信していくべきであ
る。
「価値創造の場としての図書館」:「価値創造」を謳う以上は、その「価値」の内実を明確にすべきであ
る。さらにそのうえで、「価値創造」と「賑わい」が論理的にどうように接続するのかを明確にすべきで
ある。
「基本的な図書館サービスの機能等」:上述の通り、図書館法第 2 条が求める「図書、記録その他必要な
資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等
に資する」施設としての充実を図るべきである。そして、そのための適切な人的配置と予算措置を行う
べきである。
IV 県立図書館の再整備の方向性
1 再整備の方向性
前文で述べた通り、神奈川県立川崎図書館を含めた「神奈川県立の図書館」としての一体的議論を行う
べきである。
2 再整備を行う場所
上述の一体的議論を前提としたうえではあるが、「紅葉ヶ丘地区」ありきでの議論ではなく、全県的な観
点からの検討をすべきである。
3 全体構想
紅葉ヶ丘地区での現行の再整備案を是認するものではない前提ではあるが、本案のみを評価するのであ
れば、部局の壁を越えて音楽堂、青少年センターも含めたエリア全体の再整備を構想すべきである。
4 新棟の整備プラン
前文等に示した通り、本会の立場からは評価そのものを行わない。
5 現新館・現本館の活用プラン
竣工当時の姿に復す、あるいは博物館等に転用するといった方向性も検討すべきであるが、いずれにせ
よ広く県民からの声を求めるべきである。
V 今後さらに議論を深めるべき事項
1 整備スケジュール
すでに繰り返し述べているように、神奈川県立川崎図書館を含む「神奈川県立の図書館」としての一体
的議論を行うべきである。
2 紅葉ヶ丘地区の「賑わい」に資する図書館事業
上述の通り、まず「価値創造」の内実を明確にし、そのうえで「賑わい」との論理的関係性を明らかに
すべきである。
3 整備手法等
「PFI 方式を導入する意義は十分にあるものと考えられる」との見解だが、その前提となる「神奈川県立
図書館新棟整備予備調査委託」調査結果報告書を全面的に公開し、県民の判断を仰ぐべきである。
以上
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本会のあらまし
神奈川の県立図書館を考える会は、2012 年 11 月 8 日(木)に、主宰者である岡本真(企業経営者)の呼び掛けに寄り
発足しました。
呼びかけは、主にインターネットのソーシャルネットワーキングサービス Facebook 上で行われ、当初段階で約 150 名が、
現段階では約 300 名が参加しています。
これまで 38 回の定例会を開催するほか、4 度にわたる政策提言の公表(後掲)や政策提言シンポジウムなどを多数開催
し、神奈川県立の図書館の将来像について県民としての声をあげてきています。
<これまでの政策提言>
第 1 次政策提言「民間からの政策提言-これからの県立図書館像」(2013 年 6 月)
http://www.slideshare.net/arg_editor/ss-64142645
第 2 次政策提言「神奈川の県立図書館再整備における用地選定」(2014 年 6 月)
http://www.slideshare.net/arg_editor/2-64142676
第 3 次政策提言「神奈川県立川崎図書館の抜本的再整備」(2015 年 6 月)
http://www.slideshare.net/arg_editor/3-49668287
第 4 次政策提言「いっそうの産業の活性化につながる県立川崎図書館を目指して-KSP への移転を前提にした『地
域専門図書館機能連携型』の整備計画の提案」(2016 年 2 月)
http://www.slideshare.net/arg_editor/4-58373061
Facebook ページ(広報用)https://www.facebook.com/KanagawaLib
Facebook グループ(議論用)https://www.facebook.com/groups/130704170413865/
〒231-0012 神奈川県横浜市中区相生町 3-61 泰生ビル さくら WORKS<関内>408
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 内
神奈川の県立図書館を考える会/主宰者・岡本真
電話:070-5467-7043/メール:[email protected]