科学的な思考力や表現力の育成 -観察・実験の結果のまとめ方, ...
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科学的な思考力や表現力の育成 -観察・実験の結果のまとめ方, 表やグラフの読み取り方 の指導の在り方-. 大阪教育大学理科教育講座 教授 畦 浩二. 【 科学的な思考力とは 】. ○科学的とは. 文部科学省 (2008). H17 教育課程実施状況調査 (物理 Ⅰ ). (通過率 35.9% ; 設定通過率 50% ; 前回の通過率-). H17 教育課程実施状況調査(生物 Ⅰ ). (通過率 43.0% ;設定通過率 70% ;前回の通過率-). 『 授業がどの程度わかりますか 』. - PowerPoint PPT PresentationTRANSCRIPT
科学的な思考力や表現力の育成 -観察・実験の結果のまとめ方, 表やグラフの読み取り方 の指導の在り方-
大阪教育大学理科教育講座教授 畦 浩二
【科学的な思考力とは】
科学的な根拠に基づく論理的思考力
a.実証性:仮説や考え方の真偽を観察,実験な どによって検討できるという条件b.再現性:同じ条件下では必ず同じ結果が得ら れるという条件c.客観性:多くの人々によって承認され公認さ れるという条件
○ 科学的とは
文部科学省 (2008)
(通過率35.9% ; 設定通過率50% ; 前回の通過率-)
H17 教育課程実施状況調査(物理Ⅰ)
(通過率 43.0% ;設定通過率 70% ;前回の通過率-)
H17 教育課程実施状況調査(生物Ⅰ)
『授業がどの程度わかりますか』
学年の進行とともに,「よく分かる」が減少し,「分からない」が増加。小学校→中学校→高等学校にかけて,「よく分かる」が半減。( H17 教育課程実施状況調
査)
『あなたの担当する授業が好きだと感じてい る生徒の割合は,およそどの程度ですか』
(H20 理科教員実態調査 )
『生徒による観察や実験を概ねどの程度 行っていますか』
(H20 理科教員実態調査 )
『観察や実験を行うにあたって,障害と なっているのは何ですか』
(H20 理科教員実態調査 )
『生徒による探究的な活動は, 年間概ね何時間ですか』
年に3時間以下:6~8割理数科と SSHの地学Ⅱでは多い
【高等学校物理の実験別実施状況】
○ 実施対象: 2006 年大学入学者で物理履修者 2547 名○ 在学大学:京都地区4大学(京都大学,京都教育大 学,京都工芸繊維大学,同志社大学) 関東地区6大学(首都大学東京,東京電 気通信大学,東京学芸大学,中央大学, 東邦大学医学部,埼玉医科大学)○ 目的 :○大規模な実験データを得ること ○大学入学者は全国から集まり,日本全体 の状況や地域による違いなどをとらえら れること
(力学分野)
(波動・原子核分野)
(電磁気分野)
分野別実験回数 実験回数と満足度 の関係
実験回数の多い 生徒の実験に 上位10の実験 対する満足度
(黄色:生徒実験で 30 %以上)
生徒は物理実験に満足していない
○ 「授業がよくわかる」は,小学校→中学校→高 等学校と学年が進行するにつれて,低下する。○ 「理科好きな生徒が半数より多い」と感じる高 校(普通科)の理科教師は1割にも満たない。 小学校担任で 65% ,中学校の理科教師では41% 。 高校理科教師では極端に低い。○ 「実験や観察の障害」として,高校では,「授 業時間の不足」と「大学入試の」の対応をあげる 教員の割合が高い。○ 生徒による探究的な活動は,少ない。○ 生徒は,高等学校の物理実験に満足していない。
【まとめ】
【理科の実験・観察で育てたい力】
◎ 科学的な思考力・判断力・表現力
① 目的意識をもった実験② 結果の考察③ 図や表などのデータを正しく読みとり, グラフ化,文章化④ 実生活や実社会との関連性
【諸外国の理科カリキュラム】
小倉 康・松原 静郎( 2009)
【日本の理科授業の特徴は?】
( 中学2年生)
小倉 康・松原 静郎(2009)
日本の理科授業の特徴は?
(中学2年生)
岡本英治他 (2009)
【定量実験でみられた生徒 の特徴や傾向と問題点】
【実験】 物体の高さと位置 エネルギーの関係 (中学 3 年 :121名)
実験結果
岡本英治他 (2009)
岡本英治他 (2009)
①実験の測定のとき に,値を正確に読 み取らない②集めるデータの個 数は,ばらつきが ある③目的に沿ったデー タの収集をおこな えないものがいる
【定量実験での生徒のデータ収集】
◎ 生徒に実験への意欲や 姿勢・態度を持たせる◎ 生徒に実験目的を把握 させて,目的に沿った 方法を考えさせる◎ 生徒にデータの意味を 認識させ,科学的分析 や科学的解釈の手法を 身につけさせる
問題点 学習指導
岡本英治他 (2009)
○ 生徒は実験デ ータをどのよう に解釈している のか?
その1:3点のみ与える
その2:関数の値から誤差の範囲でずらした点を与える
岡本英治他(2009)
【調査結果】
【生徒のグラフの作成と 読み取りの傾向と対策】Ⅰ .すべてのデータが直線や曲線上にそろわないと 判断がゆらぐ傾向がある 誤差の指導Ⅱ .原点に点があると考えて,原点を通るようにグ ラフをかいたり,読み取る傾向がある 原点 を通るかどうかを指導Ⅲ.どのようなグラフであるか判断するとき,学習 者がもつ既知のグラフの「形」が影響を与える 傾向がある
生徒自身の考察場面を設定数学の教員とも連携を図る
観察・実験結果をグラフ化し 解釈する内容(中学校)
【グラフ作成指導】(1)ねらい
・ データをグラフにする意義がわかる。 ・ グラフに必要な項目,目盛りなどを方眼紙に書き込 むことができる ・ 方眼紙に測定点を打ち,測定点の並び方から直線 か,なめらかな曲線か判断して,線をひくことができ る。
(2)問題例
注意点:整数ではなく小数点以下の数字をもって, 多少のばらつきがあるようにしておく
江崎士郎( 2007)
【グラフチェックポイント】
江崎士郎( 2007)
□グラフのタイトルが書いてあるか。□横軸に変化させた量が書いてあるか。 □単位が書いてあるか。 □目盛りが書いてあるか。□縦軸に変化した量が書いてあるか。 □単位が書いてあるか。 □目盛りが書いてあるか。□測定値を正しく,点で打っているか。□測定点を折れ線ではなく直線か曲線で引いているか。 □直線,曲線の見きわめは正しいか。 □測定点に合わせた線をひいているか。 □1本の線で引いているか。
【学生の結果】○ グラフのタイトルを書き忘れる学生が多 い。○ 単位を書き忘れる学生もいる。○ 考えもなく,簡単に直線を引いている。 「 何故,折れ線ではなくて直線で結ぶ ことができるのか?」の問いに十分に答 えることができない学生も多い。
【実験レポートの書き方】 ~日本人の苦手な表現~
花子さんの前にも,たろうさんの前にも,おなじようなカップに入れたスープがあります。どちらのスープも同じ温度でした。花子さんは,さらにふたをしました。
(1) どちらのスープの方が長い時間さめないと思いますか。
(2) また,そのように答えたわけを書きなさい。
(小学校4年生)
松原静郎 (2005)
【結果】(1) の正答率: 97 %(2) の正答率: 55 %(世界 43 %) 多い間違い:「ふたがしてあるから」 (日本 36 %,世界 28 %)
◎ 理由(わけ)には,二つの答え方がある(1) 結論を導く元となる事実(2) その事実と自分の導いた意見を結びつける説明
日本では,事実を示すことで説明しなくても“自明の理” とすることがよくある。
↓
松原静郎 (2005)
◎ 実験レポートで必要な項目
○ 目的:考察する内容○操作:実際に行った手順○ 結果:観察した事実○ 考察:自分で考えた意見(結論)と その説明(根拠) → 目的に対応した考察
松原静郎 (2005)
【定型文の書き方】○ 結果の定型文「a(操作)をしたら,b(結果)に なった。」← 見たままを書く○ 考察の定型文「c ( 結果)から,d ( 結論)と考えた。 その理由は,e ( 根拠)だからである。」← 考えないと 書けない
〈結果の記述〉 〈考察の記述〉実験の操作a ↓実験や観察の結果b = 実験観察や計算の結果(事実 ) c ↓←結果と結論を結びつける説明 ( 根拠 ) e 自分で考えた結論 (意見 ) d
松原静郎(2005)
【実験レポートの指導】
-児童-書き方・考え方の習得メタ認知能力の発達
科学的思考力や表現力の伸長
・結果と考察が混同・短文や単語の羅列
・筋の通ってない文章
観察や実験の過程を意識的・随意
的に整理
○ 目的・操作・結果・考察○ 考察では事実(結果)か
ら導いた自分の意見(結論)を示し,その説明
(根拠)を記す。
実験レポートとは教師
継続指導
【大学生のレポート指導の実態調査】
松浦拓也(2009)
松浦拓也(2009)
【レポート指導の有無と時期】
レポート項目 科学的思考力① 目的・・・・・・問題を認識する能力② 仮説(予想)・・仮説をたてる能力③ 実験方法・・・・解決方法を立案する能力④ 結果・・・・・・結論をだす能力⑤ 考察・・・・・・結論をだす能力
◎ 実践事例:レポート指導を基盤とした 科学的思考力の育成◎ 対象学年:中学2年( 77 名)
松浦拓也(2009)
松浦拓也(2009)
【レポート指導作成の流れ (中学2年 :77名) 】
・実験の目的を書かない・実験の予想を書かない・実験結果がどの実験の操作をしたときの結果が 分からない・実験結果欄に考察が書かれるなど,主観が含ま れている・考察において,目的(予想)と結論が対応して いない・考察において,結論のもととなる根拠が記述さ れていない・考察において,結果から客観的に結論を出して いない
【レポート指導前の7つの課題】
松浦拓也(2009)
【レポート指導作成の流れ】
松浦拓也 (2009)
【生徒の質的変容】
【評価問題例】:結論を出す能力
松浦拓也 (2009)
【評価規準】
松浦拓也 (2009)
松浦拓也 (2009)
【科学的思考力の変容】
【問題】水中に沈んだオオカナドモに懐中電灯を照射したところ,泡が出てきた。懐中電灯とオオカナドモの距離が5cmの場合, 10 分間に泡が 60個出てきた。この距離を 10 cm, 15 cm, 20 cm, 30 cmと変えたらどうなるだろうか?グラフに示し,そう考えた根拠を文章で表現してみよう。
(森本弘一 2009 )
【引用文献】江崎士郎 (2007) グラフの指導における課題.「中
学校理科 学力向上6つの授業改善」 pp.90-103 .東洋館出版社.
岡本英治・山下雅文・小茂田聖士・蔦岡孝則・前原俊信 (2009) 実験データの科学的解釈に関する基礎的研究 - 中学校段階の実験処理を通して - .広島大学学部附属学校共同研究機構研究紀要 37 :349 -354 .
小倉 康・松原静郎 (2009) 理科授業の国際比較.理科の教育 58 (679) : 8-11 .
国立教育政策研究所 (2007) 平成 17 年度教育課程実施状況調査 ( 高等学校) 381pp .
後藤顕一 (2007) 「記述の技法」を身につけさせるための学校全体の取り組み.理科の教育 56 :22-24 .
松浦拓也 (2008) 実験レポートの指導を基盤とした科学的思考力育成に関する実践的・開発的研究.平成 18 年度~平成 20 年度科学研究成果報告書.85pp .
松原静郎 (2005) 実験レポートの書き方.国立教育政 策研究所. 6pp .
森本弘一 (2009) 体験活動を通して生物好きにする 手だて.「新学習指導要領に応える理科教育」. pp.151-163 .東洋館出版社.文部科学省 (2008) 小学校学習指導要領解説 理科
編. 105pp .大日本図書.
http://rikashien.jst.go.jp/investigation/cpse_report_006B.pdf
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20090330-2/index.html
山崎敏昭・井上 賢・谷口和成・内村 浩 (2007) 高校物 理実験の実態 -2006 年大学新入生からの分析 - .物理 教育 55(1) : 33-38 .