「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要)...

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「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会. 鬼木 甫 大阪学院大学 2007 年 6 月 2-3 日 [email protected] www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/. 目次 (1/2). I.  目的と背景 A.  目的 B.  考察対象の限定--「既得権」 C.  既得権の特色 D.  既得権が社会全体にとって経済問題となる理由 II.  「保険・補償による再配分システム( RIC )」 ―― 既得権問題への経済的解決手段 A. 目的 - PowerPoint PPT Presentation

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Page 1: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

「既得権の経済学--問題解決のためのメカニズム設計」

(概要)日本経済学会 2007 年度春季大会

鬼木 甫大阪学院大学

2007 年 6 月 2-3 日 [email protected]

www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/

Page 2: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

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目次 (1/2)

I.  目的と背景  A.  目的 B.  考察対象の限定--「既得権」   C.  既得権の特色  D.  既得権が社会全体にとって経済問題となる理由

II.  「保険・補償による再配分システム( RIC )」          ――既得権問題への経済的解決手段

  A. 目的 B. システムの概要 C. システムの特色・注意点

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目次 (2/2)

III.  土地再配分、同利用計画の作成・変更への適用  A.  概要  B.  現状  C.  土地利用計画変更(収用を含む)にかかる保険・補償制度

( RIC-L )  D.   RIC-L 実施のための政府機関  E.   RIC-L の効果と問題点  F.  現状から RIC-L への移行方策:

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I. 目的と背景

A.A. 目的目的

B. 考察対象の限定--「既得権」

C. 既得権の特色

D. 既得権が社会全体にとって      経済問題となる理由

Page 5: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

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I.A. 目的

「既得権( vested interest )問題」を  経済理論の立場から分析し、  これを合理的に解決・処理するための経済システム(本論文で「保険・補償システム」と呼ぶ)を設計・提案すること。

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I. 目的と背景

A. 目的

B.B. 考察対象の限定--「既得権」考察対象の限定--「既得権」

C. 既得権の特色

D. 既得権が社会全体にとって      経済問題となる理由

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I.B.1.  定義(既得権一般):

個別主体(個人、企業など)が、自身の利益のために、その経済活動の「内容」の一部が 将来にわたり一定の状態で継続することを期待・要求し、法令・慣習などによってこれが実現されていること。

―― この意味の既得権は多数種類存在する。本論文ではこれを「広義の既得権」と呼ぶ。

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I.B.2.  本論文で対象とする既得権 (1/2)

a. 既得権が有・無の 2 個の状態のみを持つこと(両者の中間の状態を持たない、つまり量的存在でないこと)

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I.B.2.  本論文で対象とする既得権 (2/2)

b. 既得権の保有主体が多数存在し、 その結果、同保有から生ずる利益の維持について保有者が相互に競合関係にあること

―― 以下このように限定されたものを単に「既得権」あるいは「狭義の既得権」と呼ぶ。

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I.B.3.  既得権の例

電波利用権

土地所有・利用権

労働権(特定の組織・職場であらかじめ定められた報酬体系の下で働き続ける権利)

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I.B.4.  広義では既得権だが、   狭義では既得権でないものの例 (1/4)

a. 2a. を満たさない場合

大気中に CO2 を放出する権利

b. 2b. を満たさない場合

公共放送事業体( NHK )の放送用 電波利用免許

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I.B.4.  広義では既得権だが、   狭義では既得権でないものの例 (2/4)

c. 境界ケース  特定の経済活動の営業権・事業実

施権     (参入制限)

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I.B.4.  広義では既得権だが、   狭義では既得権でないものの例 (3/4)(i) 明確に規定された固定的制限が

存続する場合 (例:特定地域での営業タクシー

数の上限)―― 狭義の既得権が存在

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I.B.4.  広義では既得権だが、   狭義では既得権でないものの例 (4/4)

(ii) 不明確・流動的な制限の場合  ――既得権内容が不確定、狭義

の既得権ではなく広義の既得権に入る

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I. 目的と背景

A. 目的

B. 考察対象の限定--「既得権」

C.C. 既得権の特色既得権の特色

D. 既得権が社会全体にとって      経済問題となる理由

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I.C.1.  経済活動がおこなわれる「場所・ スペース」占拠の形をとることが多い。

 土地スペース 電波利用スペース 労働する場所、地位( positions ) 漁業権、水上権、入会権、河川通行

権 など

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I.C.2.  既得権保有者による経済活動は、同一種類の「場所、スペース」について多種類が可能であることが多い。

 土地スペース: 宅地、工場用地、道路など

 電波利用スペース: 放送、移動通信など

 労働する場所・地位: 労働目的ごとに異なる

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I.C.3. 既得権の成立には      歴史的・時間的経過がある

土地保有:  1000 年単位で成立

電波利用:  100 年単位で成立

労働権: 個人のライフサイクル単位 で成立

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I.C.4.  既得権を実現させる手段・原因

a.  法令による保証・強制  土地所有・利用権  電波利用権

b.  社会的慣行(多数による継続的支持)

労働権23/04/24H. Oniki

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I.C.5.  既得権保有者は保有既得権の 状態を変更できる。土地所有・利用権

 売却、賃貸電波利用権

 利用免許の返上、ただし譲渡はなし(法律により原則禁止)

労働権 辞職、休職

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I. 目的と背景

A. 目的

B. 考察対象の限定--「既得権」

C. 既得権の特色

D.D. 既得権が社会全体にとって既得権が社会全体にとって            経済問題となる理由経済問題となる理由

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I.D.1  概要

経済活動が環境・状態の変化に適応できない

社会経済システムの「硬直性」の原因

(現在の日本社会の弱点)23/04/24H. Oniki

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I.D.2.  経済成長・変動の結果、既得権保有者による経済活動に種別ごとの不均衡(ミスマッチ)が発生し、「既得権見直し」が必要となる:

土地利用: 公共用地(道路、空港など)の不足、 土地利用計画・都市計画の実現が困難

電波利用: 新規サービス(無線LAN など)用電波の不足

労働: 企業内過剰労働(ポジションの不足)

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I.D.3.  「見直し」に対する抵抗・摩擦と 見直し対象者の損失・不満

土地収用と同交渉の長期化・ごね得電波利用目的変更が困難

例:アマチュア無線と屋内電力線 LAN労働力リストラとリストラ対象者の生活困難解雇の是非をめぐる論争

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I.D.4.  現状維持・既得権容認方策を 選択する可能性が高くなる――

「既得権問題」 (1/2)

a.  ミクロ現象 非効率・不合理な土地利用が長期間続く電波を新規事業に振り向けることがで   きない   技術開発誘因を減殺企業内余剰労働力の温存   「非正規雇用」の増加製品コスト高と競争力の低下

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I.D.4.  現状維持・既得権容認方策を 選択する可能性が高くなる――

「既得権問題」 (2/2)

b.  マクロの結果

 社会経済全体の「硬直化」、活力の 低下

  経済成長の停滞

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I.D.5.  既得権保有者の立場・利害―― 既得権保有にいたる事情、埋没費用  ( sunk cost ) (1/2)

a.  歴史的経過土地相続と継続利用就職と勤続

b.  周辺事情の変化経済成長による土地、電波の

利用   価値の上昇23/04/24H. Oniki

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I.D.5.  既得権保有者の立場・利害―― 既得権保有にいたる事情、埋没費用  ( sunk cost ) (2/2)

c.   (広義の)投資  土地造成・改良、建造物の付加  電波利用施設の建設、要員の   トレーニング・コスト自己への教育投資、経験の集積

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I.D.6.  まとめ (1/2)

既得権保有者による現状維持への強い誘因

社会全体の利益のために既得権の一部を調整する(見直す)ことが望ましい

直接的な「既得権調整」は困難

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I.D.6.  まとめ (2/2)

調整コストが大きい

調整対象となる既得権保有者にとって不利・不公平

既得権の一部は与えられた環境の中での経済活動の結果

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31II. 「保険・補償による再配分システム( RIC )」――既得権問題への経済的解決手段

A.A. 目的目的

B. システムの概要

C. システムの特色・注意点

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II.A.  目的

下記の機能を持つ経済システムの設計

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II.A.1.  社会全体にとって

必要とされる既得権の調整を実現

  調整から生ずる利益と調整費用の差   を最大化

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II.A.2.  既得権保有者にとって

調整対象となる既得権保有者は既得権に代わる補償(金銭)を受ける

  補償後の効用水準が、調整なしの場合の効用水準を下回らない

 補償費用

  調整の受益者(政府機関等)が負担

  既得権保有者全員が広く薄く負担

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II.A.3.  既得権調整の実施主体    (政府)にとって

既得権調整を実施

 財政的中立(収支ゼロあるいはプラス)を維持

  収支プラスは再配分による効率化の結果

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36II. 「保険・補償による再配分システム( RIC )」――既得権問題への経済的解決手段

A. 目的

B.B. システムの概要システムの概要

C. システムの特色・注意点

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II.B.1.  既得権の保有主体  (1/2)

a.  保有する既得権を失うことに同意できる最低限の「補償金額(既得権の供給価格)」を表明し、同金額と別に与えられた「補償料率」(下記2.c. )の積に等しい「補償料」を毎期間政府に支払う。

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II.B.1.  既得権の保有主体  (2/2)

b.  政府によって既得権の調整対象に指定された場合は、自身の表明した補償金額を受領して既得権保有を終了する。

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II.B.2.  政府  (1/3)

a.  既得権の保有主体から補償料(上記1.a. )を徴収する。

b.  各期ごとに何らかの規準・方針にしたがって既得権を調整する。その結果既得権を失うことになる同保有主体に、あらかじめ表明された補償金額(上記 1.a. )を支払う。

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II.B.2.  政府  (2/3)

c.  収支均衡を維持しつつ、長期的方策にしたがって毎期の補償料率を設定する。

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II.B.2.  政府  (3/3)

d.  政府が実施すべき「調整の程度」(上記 2.b. )は、長期的方策にしたがって決める。

ただし「調整内容」は、毎期の補償   金支払額を最小化するように決   定する。

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42II. 「保険・補償による再配分システム( RIC )」――既得権問題への経済的解決手段

A. 目的

B. システムの概要

C.C. システムの特色・注意点システムの特色・注意点

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II.C.1.  「保険」システムとして:

a.  補償料支払と補償金受取の関係は、通常の(損害)保険に類似。

b.  ただし通常の保険においては、保険金支払が外的イベント(天災など)に基づいておこなわれるのに対し、本システムにおいては補償金支払が既得権調整という政府行動に基づいておこなわれる。

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II.C.2.  ごね得・投機の可能性について:(1/2)

a.  ごね得(高額補償金の表明)は抑制できる。

補償料支払い(毎期)の効果。

高額補償金付の既得権は調整対象   になりにくい。

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II.C.2.  ごね得・投機の可能性について:(2/2)

b.  投機

既得権対象に外部性がある場合に発生する 可能性がある。

例:リニア新幹線の予定路線上にある土 地の保有者。

投機抑制のための特別な措置が必要。

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III.  土地再配分、同利用計画の作成・変更(収用を含む)への適用A.A. 概要概要B. 現状C. 土地利用計画変更(収用を含む)に

かかる保険・補償制度( RIC-L )D. RIC-L 実施のための政府機関E. RIC-L の効果と問題点F. 現状から RIC-L への移行方策:

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III.A.  概要

政府による土地利用目的の指定変更の円滑化によって土地利用の効率化を促進

 土地収用(私有地の公共目的使用への変 更による)を含む。

 固定資産税制度の吸収・変更を含む。

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III.  土地再配分、同利用計画の作成・変更(収用を含む)への適用A. 概要B.B. 現状現状C. 土地利用計画変更(収用を含む)に

かかる保険・補償制度( RIC-L )D. RIC-L 実施のための政府機関E. RIC-L の効果と問題点F. 現状から RIC-L への移行方策:

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III.B.1.  土地の利用目的変更、   公共利用のための

収用:  (1/2)a.  方式:

政府が必要に応じて随時実施。

b.  結果:

抵抗、反対、ごね得等が発生。

目的達成のために長い時間がかかる。

実施のための transaction cost が高い。

不十分な結果に終わることも多い。

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III.B.1.  土地の利用目的変更、   公共利用のための

収用:  (2/2)

c.  極端な例:

  成田空港建設。

以後大都市空港は海面埋立等によ   り建設。

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III.B.2.  固定資産税制度:

 政府が「市価を考慮」して土地公示価格  を決定。これに基づいて固定資産税を支払う。価格決定に恣意性が入り歪みが

生ずる。   納税者にとって不満、不公平。

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III.  土地再配分、同利用計画の作成・変更(収用を含む)への適用A. 概要B. 現状C.C. 土地利用計画変更(収用を含む)に土地利用計画変更(収用を含む)に

かかる保険・補償制度(かかる保険・補償制度( RIC-LRIC-L ))D. RIC-L 実施のための政府機関E. RIC-L の効果と問題点F. 現状から RIC-L への移行方策:

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III.C.1.  土地所有者:

 a. 範囲:  私有地、公有地すべての所有者

(公   有地では同管理機関)を含める。

    例外を認めない。

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図 IIIC.1:  RIC-Lの基本関係

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土地所有者

GRIC-L

補償料

率 補償料支

払 補償金額

表明

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図 IIIC.2: RIC-Lにおける収用と補償金支払

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GRIC-L

土地所有者(収用なし)

土地収

用補償金

支払

土地所有者(収用対象)

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III.C.1.b.  補償額の表明と公表:

自身の所有するそれぞれの土地について、その利用目的の変更(収用を含む)が生じた際の補償額を、将来(たとえば 10 年先まで)の各年次について表明・登録し、これを公表する。

なお利用目的変更の一部について「マイナスの補償額」(目的変更がなされた場合に土地所有者が支払う額)を記入することも可能と する。

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III.C.1.c.  補償額表明方法の例(変更目的・実施年次に かかる条件付補償の場合):   (1/3)

所有主

所在地

大阪太郎 利用目的 第 1 種住宅専用

吹田市岸部1-2-3

実施年次

変更目的1 年後 2 年後 ・・・・・・・

・・ 10 年後

目的 1目的 2・・・

工業用

収 用 ( * )

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補償額記入欄

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III.C.1.c.  補償額表明方法の例(変更目的・実施年次にかかる条件付補償の場

合):    (2/3)(注)補償額記入は、同一列の上から下へ非減

少、同一行の左から右へ非増加になるように記入する。したがって、左下端( * )付のセルの金額、すなわち最短期間である 1 年後に土地を収用される場合の補償額が最高値となる(以下これを単に「補償額」と呼ぶ)。なお左端の変更目的の配列順序は、土地所有者がそれぞれ選択することができる。

 

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III.C.1.c.  補償額表明方法の例(変更目的・実施年次にかかる条件付補償の場

合):    (3/3)

なお、上記は、土地所有者のそれぞれについて以下を前提している:

(a)  それぞれの利用目的の変更(収用を含む、以下同じ)に関する選好は、実施年次が遅いほど順位が高くなる。

(b)  変更目的に関する選好と、変更実施年次に関する選好(上記 (a) )は互いに独立している。

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III.C.1.d.  補償料の支払:  (1/3) 土地所有者は、政府(土地利用管理セン

ター( GRIC-L )、後述)が年次ごとに定める補償料率と、所有者が表明した「補償額(上記 C.1.c の( * )の金額)」の積に等しい「補償料」を支払う。

 

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III.C.1.d.  補償料の支払:  (2/3)

(注)上記 C.1.c の表で利用目的に関する選好および同実施年次に関する選好がそれぞれ単調であることは、同表中の各ケースについて個別に補償料を計算する必要がないことを意味する。

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III.C.1.e.  土地利用目的の変更(収用 を含む)と補償金の受領: 土地利用目的の変更(収用を含む)が実施

された場合には、その内容にしたがって、土地所有者に表明した補償額が支払われる。

収用の場合には土地所有権を譲渡する。

土地利用目的変更の場合には、変更年次以内に土地利用の状態を新規目的に適合するように変更する(たとえば建造物の改築)。

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III.C.1.f.  土地共有の場合:

共同所有者それぞれが本項 C. に基づいて補償額表明・受取と補償料支払をおこなう。

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III.C.2.  土地所有者の関係者: (1/2)a.  土地賃借者、土地上の建物(の一部)の賃借者等:

 それぞれ、本項 C. と類似の「保険・補償   契約」を土地所有者と締結して補償 料を支払い、補償金を受取る。

 土地所有者は、同土地上の賃借者等と 契約した額の合計額を下回らないように補償金額を表明する義務を負う。

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図 IIIC.3: GRIC-L、土地所有者、土地賃借人間の“ RIC”

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GRIC-L

土地所有者の 1人

補償 料率 補償 料支払 補償 金額

土地賃借人

(賃貸契約廃棄の) 補償 金額

補償 料支払補償 料率

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III.C.2.  土地所有者の関係者: (2/2)

b.  土地の抵当権者等: 

土地利用目的変更(収用を含む)の場  合は、同所有者に支払われる補償金  のすべてに抵当権が及ぶものとする。

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III.C.3.  収用土地の新規使用者(政府機関

等): a.  新規使用開始年次:

C.1.c と同一の表により、新規に使  用する土地について補償金額を  表明・公表する。

b.  開始年次以降の年次:土地所有者として、 C.1 が適用される。

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III.  土地再配分、同利用計画の作成・変更(収用を含む)への適用A. 概要B. 現状C. 土地利用計画変更(収用を含む)に

かかる保険・補償制度( RIC-L )D.D. RIC-LRIC-L 実施のための政府機関実施のための政府機関E. RIC-L の効果と問題点F. 現状から RIC-L への移行方策:

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III.D.1.  土地利用管理センター( GRIC-L ): 

(1/2)a. 目的:国全体、地域全体の土地資源の合理的かつ効率的活用を実現するために土地利用計画を作成・変更(土地収用を含む)する任にあたる政府機関。 組織、運営、管理、規律、評価等について は省略。 経済的機能のみを以下に記述。

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III.D.1.  土地利用管理センター( GRIC-L ): 

(2/2)b. 土地利用計画の作成・変更(収用を含む):

政府・地方自治体各機関の要請を受け、毎年次において次年度以降の土地利用計 画を作成・変更し(収用を含む)、これを 実施する。投機防止のため、計画作成・確定以前には同内容を公表しない。計画確定後、詳細を公表する。

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III.D.2.  補償金の支払、GRIC-L の収支: 

(1/4)a.  補償金支払:

GRIC-L は、土地利用計画の作成・変 更(収用を含む)の実施年次に、実 施対象となった土地所有者に、その 表明した補償金(マイナスの場合を 含む)を支払う。

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III.D.2.  補償金の支払、GRIC-L の収支: 

(2/4)b.  土地譲渡収入:

土地収用の場合、収用土地の新規使用者(政府機関等)から、それが使用開始年次に表明した(上記 C.3 )「補償額(表 C.1.c の( * )欄の額)」を、土地譲渡の代価として受け取る。

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III.D.2.  補償金の支払、GRIC-L の収支: 

(3/4)c.  補償料収入

GRIC-L は、すべての土地所有者から、毎年次において、その表明する補償額(表 C.1.c の( * )欄の額)と、別に定める補償料率(下記 6. )の積に等しい額を、補償料として受け取る。

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III.D.2.  補償金の支払、GRIC-L の収支: 

(4/4)d.  収支均衡の維持:

GRIC-L は、その累積収支がマイナスにならない範囲で業務を実施する。またこの目的のために GRIC-L は、その毎年次の収支差の一部を「補償料率安定基金」として保有することができる。

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III.D.3.   GRIC-L による  補償料率の決定 

(1/2)a.  「収用確率」適用の原則:

GRIC-L は、毎年次の補償料率を、「収用確率」すなわち問題となっている地域の「土地面積の合計」に対する「収用対象となる土地面積の合計」の比に等しくなるように設定する。

(注)” fair insurance” の条件。

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III.D.3.   GRIC-L による       補償料率の決定

  (2/2)b.  補償料率変動の最小化:

GRIC-L は、毎年次の補償料率の上下変動 がなるべく少なくなるように、土地利用計画(収用を含む)を作成・変更する。

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III.D.4.   GRIC-L の業務方針  (1/6)

a. GRIC-L は、土地利用効率を高めるために同利用計画の作成・変更(収用を含む)をおこなうが、自ら土地を保有することはできない。土地所有権の移転については、仲介行為のみが許される。

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III.D.4.   GRIC-L の業務方針  (2/6)

b. GRIC-L は、下記の制約を満たすように他政府機関等の要請にしたがって土地を収用・譲渡する:

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III.D.4.   GRIC-L の業務方針  (3/6)

(1)それぞれのプロジェクトについて、収用価格(収用土地の所有者に支払う補償額)が譲渡価格(収用要請をおこなった政府機関からの受取額)を下回らない。

(2)譲渡価格と収用価格の差を最大化する(つまり与えられた譲渡価格について収用価格を最小化する)ように収用対象を選択・決定する。

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III.D.4.   GRIC-L の業務方針  (4/6)

c. GRIC-L が他政府機関からの要請をどの程度のスピードで実現するかは、短期的には GRIC-L 自身が定めるべき「戦略変数」とする。

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III.D.4.   GRIC-L の業務方針  (5/6)

d. GRIC-L は、長期的に、上記スピードを少しずつ増大させる。このことによって現存する「土地利用に関する巨大な非効率性」が長期的に(おそらく数十年をかけて)減少すると期待できる。

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III.D.4.   GRIC-L の業務方針  (6/6)

e. GRIC-L が入手する収支差益(補償料収入合計と収用・譲渡価格差益の合計)は土地利用計画の作成・変更(収用を含まない)の実施に必要な補償金の支払に充当する(便法)。

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III.D.5.  土地利用情報センター( HRIC-L ) 

(1/5)a. 目的:  法務局による現在の土地等の登記業務に加え、土地所有者が表明する補償額、 GRIC-L の実施する土地利用計画の作成・変更(収用を含む)結果の登録を受け付け、これを維持し、かつ同情報の公開に当たる公的機関。

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III.D.5.  土地利用情報センター( HRIC-L ) 

(2/5)b.  土地・建物の所有権:

   登記と公表(現在方式と同じ)。

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Page 85: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.D.5.  土地利用情報センター( HRIC-L ) 

(3/5)c.  表明補償額:   土地所有者より登録(変更を含む)を

受け付け、これを公表する。同データ についてプライバシー権を認めない。

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Page 86: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.D.5.  土地利用情報センター( HRIC-L ) 

(4/5)d.  土地利用計画の作成・変更(収用を

含む)の実施内容:

実施内容確定後において GRIC-Lによる 登録を受け付け、これを公表する。 プライバシー権は認めない。

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Page 87: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.D.5.  土地利用情報センター( HRIC-L ) 

(5/5)e. 情報公開と利用:

HRIC-L は、その保有するすべての記録・ データを、電子媒体により無料公開し、 その利用をはかる。

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III.  土地再配分、同利用計画の作成・変更(収用を含む)への適用A. 概要B. 現状C. 土地利用計画変更(収用を含む)に

かかる保険・補償制度( RIC-L )D. RIC-L 実施のための政府機関E.E. RIC-LRIC-L の効果と問題点の効果と問題点F. 現状から RIC-L への移行方策:

Page 89: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.E.1.  土地の効率的利用の促進:  

(1/3)a.  必要性の高い公共目的利用を加速:

   例: 交通インフラ(道路、鉄道、公港など)の建設。

   公園等都会内緑地帯の建設

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III.E.1.  土地の効率的利用の促進:  

(2/3) 必要性の低い公共目的利用を抑制。

   例: 交通量の低い農道の建設を 防止。

     低利用公共施設の民間転用を 促進。

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Page 91: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.E.1.  土地の効率的利用の促進:  

(3/3)b.  利用目的別再配分の促進:

    土地利用にかかる外部性を処理・活用。

     例:工場に隣接する住宅・学校などの移転促進。

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Page 92: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.E.2.  土地の「価値・価格」の顕示化:  (1/2)a.  合理的な土地取引を円滑化。

b.  多様な「オプション取引」を実現するための条件整備:

 例: 住宅専用地が工業用地に目的 変更された場合の土地売買予約。

c.  不確実性から生ずる投機・バブル・不況を抑制。

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Page 93: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.E.2.  土地の「価値・価格」の顕示化:  (2/2)d.  問題点

例: 土地資源を経済動機以外の動機から低効率利用状態で保有し続けるケース。

解決策: 土地利用目的の 1 つに「高度利用 義務」を加える。

 表明補償額によるオファーに対し て譲渡を義務づける。

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Page 94: 「既得権の経済学 -- 問題解決のためのメカニズム設計」 (概要) 日本経済学会 2007 年度春季大会

III.E.3.  投機・不当利得とその防止:      (1/4)a. 目的:

情報の一部偏在等から生ずる投機・ 不当利得を防止するため、土地所 有者および GRIC-L について規制を 課する。

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III.E.3.  投機・不当利得とその防止:      (2/4)b.  土地所有者による補償額の表明: 毎年次において土地所有者が表明補償額

(表 C.1.c )を増額する場合、 GRIC-L が地域ごと、使用目的ごとに定める増加率(たとえば前年次分の 5%増)を超えることを禁止する(かけこみ増額の禁止、土地に関するキャピタル・ゲインに上限を設定)。

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III.E.3.  投機・不当利得とその防止:      (3/4)c. GRIC-L の守秘義務: GRIC-L が他政府機関等から土地利

用計画の作成・変更(収用を含む)に関して受けた要請・協議内容等は、その確定・発表まで一切公表せず、担当者に厳しい守秘義務を課する。

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III.E.3.  投機・不当利得とその防止:      (4/4)d. GRIC-L の意思決定:

GRIC-L が土地利用計画の作成・変更(収用を含む)をおこなう際に、特定目的を達成するために複数の選択肢をあらかじめ用意し、これらのうちで補償金額の総計が最小であるものを選択・決定する義務を課する。

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III.  土地再配分、同利用計画の作成・変更(収用を含む)への適用A. 概要B. 現状C. 土地利用計画変更(収用を含む)に

かかる保険・補償制度( RIC-L )D. RIC-L 実施のための政府機関E. RIC-L の効果と問題点F.F. 現状から現状から RIC-LRIC-L への移行方策:への移行方策:

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III.F.1.   RIC-L の法制度面の性質:

新しい社会経済制度。  国家レベルの意思決定が必要。   例:社会保険制度(年金、福祉、健 康)の導入。

実施には法律改正が必要。  土地所有権内容の変更。

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III.F.2.  現状と RIC-L の「距離」は  大きくな

い:  (1/4)

a.  土地利用計画の作成・変更:

現状でも計画、利用区分は存在。

b.  土地収用と補償:

現状でも実施されている。

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III.F.2.  現状と RIC-L の「距離」は  大きくな

い:  (2/4)

c.  補償料の支払:現状では固定資産税がこれに該当。固定資産税は、「一般政府税」への 原資としての意味に加え、間接に (公示価格を通じて)収用時補償額 を保証する意味を持っている。

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III.F.2.  現状と RIC-L の「距離」は  大きくな

い:  (3/4)

d. RIC-L の実質的内容:

土地価格の評価の実施を政府から土地所有者に移すこと。

現状において不明確・不徹底な状態のままに実施されている土地資源の効率的利 用のための制度を、合理的に統合・整備 すること。

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III.F.2.  現状と RIC-L の「距離」は  大きくな

い:  (4/4)

e. RIC-L における固定資産税の取扱い:

GRIC-L は租税徴収当局より同徴税業務を受託する。

 補償料に固定資産税を上乗せして徴収する。

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III.F.3.  漸次的移行方策の例:  (1/2)

a.  低補償料率による RIC-L の当初一律施行と漸次拡大:

時間の経過とともに「補償料率の  引き上げ」と、「従来方式による固  定資産税率の引き下げ」を実施し、 長期的に後者を廃止する。

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III.F.3.  漸次的移行方策の例:  (2/2)

b. RIC-L を土地所有者の選択肢として施行し、漸次移行をはかる:

当初 RIC-L を、固定資産税と同程度の有 利さになるような補償料率によって導入 し、土地所有者が RIC-L に移行する選 択肢を設ける。以後時間の経過にとも なって RIC-L の有利さを増大させるよう に補償料率・固定資産税率を調整する。

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IV. 参考文献(すべて鬼木甫著)

『電波資源のエコノミクス――米国の周波数オークション』(著書)、現代図書刊、 2002 年 2 月。 (http://www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/noframe/jpn/publication/200202a.html)

 「電波資源の有効利用――連載:電子社会と市場経済:第 6回」(論文)、『 Computer Today』、 No. 111 、サイエンス社、 2002 年 9 月、 pp.46-50 。(http://www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/noframe/jpn/publication/200209.html) 

“Reallocation of Radiowave Spectrum with a Price Mechanism: Proposal of a System of Insurance and Compensation,” Paper presented at the 32nd Research Conference on Communication, Information and Internet Policy (Telecommunications Policy Research Conference 2004) held at the Tech Center, George Mason University, U.S.A, October 1-3, 2004. (http://www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/noframe/eng/publication/200408a.html) 

“Modified Lease Auction and Relocation---Proposal of a New System for Efficient Allocation of Radio-Spectrum Resources,” Chap.III, Sangin Park (ed), Strategies and Policies in Digital Convergence, Idea Group Reference, Hershey, PA, U.S.A., and London, U.K., 2007, pp.26-49. (http://www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/noframe/eng/publication/200208.html)