ブラジルでの 日本の開発援助を考える

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ブラジルでの 日本の開発援助を考える グローバル人材育成センター開設準備室主催 公開講演会「 3 11 後の国際協力人材育成とは」 ~アジア・南米・アフリカでの過去の教訓から考える~ 印鑰 智哉

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Page 1: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

ブラジルでの日本の開発援助を考える

グローバル人材育成センター開設準備室主催公開講演会「 3 ・ 11 後の国際協力人材育成とは」

~アジア・南米・アフリカでの過去の教訓から考える~

印鑰 智哉

Page 2: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

日本とブラジルの関係

移民の歴史

自然収奪型開発モデル

有機農業や産直の経験などを生かしたもう1つの関係に向けて

Page 3: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

主な開発計画

大カラジャス計画 (1981年JICAマスタープラン作成)

ユーカリ・紙パルプ開発計画(1977年~)

セラード開発計画(1977年~1999年)

Page 4: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

大カラジャス計画

世界最大鉄鉱山、大カラジャス開発計画、 大きな環境破壊を生み出した。

JICAが開発計画を作成 [1981年 ]… 露天堀の巨大鉄鉱山。広大な森林が破壊。その破壊されたところにユーカリが植林、ボーキサイト鉱山、アルミ精製工場、希少金属、東アマゾンの生態系に大きな影響を与える。日本の多数の企業が参加

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ユーカリ・紙パルプ開発計画

日本の製紙産業の原料供給のためにブラジル、ミナスジェライス州にユーカリ植林(セニブラ社所有地 25 万5,000ha 、神奈川県の面積に匹敵。日本のほとんどの製紙会社が参加。実際には欧州などにも輸出)

水資源の破壊、除草剤による環境汚染、失業(広大な地域にわずかな雇用しか生まない)、土地紛争、人口流出、村の崩壊をもたらす「緑の砂漠」として批判されている

Page 6: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

資源収奪型開発

地域発展の視点の欠如

環境に対する配慮の欠如

民主主義の根本を否定

Page 7: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

セラードとは?ブラジル中央部のサバンナ地域、全土の 24%

日本の約 5.5倍

アンデス以東の南米大陸の水源

Page 8: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

セラード農業開発モデル再考

輸出向け作物の大規模モノカルチャー(第3期では4万ヘクタールの土地を40の入植農家に。 1000ha平均=台東区の面積)

地域住民は対象にならず。外部の地域からの植民計画

生産される大豆は海外の家畜の餌やバイオ燃料に主に使われる

Page 9: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

地域から見たセラード開発

大都市の出現

貧富の格差の拡大

生態系の破壊、特に森林、水資源の破壊、農薬による汚染−2030年にセラード消失の警告も

食料主権の崩壊

外資の支配

Page 10: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

セラード開発のもう1つの問題

高いコスト(日本のODA、第1期102億円、第2期442億円、第3期140億円)

入植農家の負債問題

Page 11: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

遺伝子組み換え

1990年代後半から非合法にブラジルに持ち込まれる、2005年に強引に合法化

現在ではブラジルの9割近くが遺伝子組み換えに

農薬の使用が劇的に増加。

Page 12: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

モンサントの遺伝子組み換えトウモロコシ NK603を 2年間与え続けたラット。日本は 2001年に NK603を承認済み

(左) GMトウモロコシ、(中)除草剤+ GMトウモロコシ、(右)除草剤

Page 13: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

巨大アグリビジネスの支配

なぜ南北米大陸で急速に遺伝子組み換えが広がったか?

売り先は穀物メジャーが握る

ファクトリー・ファーミング(工場式畜産)とバイオ燃料

逆農地改革(巨大企業農家だけが残る)

Page 14: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

アグリビジネスは世界の飢餓を救うか?工場式農業(機械化農業)と工場式畜産は職を生まない(農民のいない世界)

石油と水を浪費。持続できない。

利益は少数の企業に

生産手段を失った小農民は飢餓人口に

女性の権利の剥奪→さらなる人口増大

Page 15: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

危険を増す食べ物

狭い工場のような場所で家畜が養われる→病気→抗生物質の大量使用

遺伝子組み換え作物の飼料で育つ家畜→妊婦の血液からも検出

飼料だけでなく、家畜も遺伝子組み換えに。早く大きく成長あるいは病害対策。すべては工場回転率の確保。健康な家畜を育てる観点なし

Page 16: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

企業の利益ではなく命を守る援助へ

巨大アグリビジネス型農業開発は小農民の命を奪う

危険な農作物、農薬は消費者の命を奪う

Page 17: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

アグロエコロジーへ

アグリビジネスモデルに対抗する農業モデルとして世界が注目

農村の民主化、特にジェンダーの平等化、都市との関係の変革

市民間の国際協力・連帯不可欠

小農民連帯。日本の有機農家の経験を生かす

Page 18: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

日本のあるべき政府開発援助

大企業と相手国の既得権益層と一体化してきたこれまでの援助の根本的見直し

独占企業に対する規制

地域住民との徹底対話、情報公開

Page 19: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

日本の援助は「国益」確保

田中角栄政権に対する米国政府の大豆禁輸政策→タンパク資源確保を米国以外に求めるところから始まった=1974年8月JICA設立

戦前は中国東北部(「満州」)や朝鮮半島に依存。戦後は米国、80年代以降は南米にも進出。日本の食料主権(市民の権利)を放棄し、企業の権利の確保。ブラジルに多大な投資をしたのに米企業カーギルなどに握られていることに日本側は不満(援助じゃなくてビジネスであることが露骨に)

自主路線が砕け、米国との一体化の後は南の開発独裁政権と日本の企業権益の確保(「国益」とは大企業の利益≠日本列島住民の利益)

民主党への政権交代で見直し機運。それが砕け、米系多国籍企業を頂点とする企業秩序の中で日本の企業権益確保に突き進む? 

市民の立場は? 

Page 20: ブラジルでの 日本の開発援助を考える

参考文献・資料

鷲見一夫著『ODA-援助の現実』

セラード関連 http://blog.rederio.jp/archives/tag/cerrado

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