〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

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2012/9/7 小林正弥 日経BIZCOLLEGE 「日本版白熱教室 ビジネス哲学を考える」

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BizCOLLEGE PREMIUM特別セミナー「イノベーターと学ぶ“新しい仕事術”」第一日目、千葉大学大学院人文社会科学研究科教授の小林正弥氏によるセッション「日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える」を開催した。企業にとってもビジネスパーソン個人にとっても、経済的利益と社会的貢献は重要なテーマ。小林氏より実際の活動に生じる具体的なモラルジレンマ事例を複数挙げてもらい、会場でディスカッションを行った。 http://bizpremium.nikkeibp.co.jp/percept/business-philosophy/20120918/000152

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Page 1: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

2012/9/7 小林正弥

日経BIZCOLLEGE「日本版白熱教室

 ビジネス哲学を考える」

Page 2: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� サンデル旋風� 政治哲学の開始、公共哲学の発展� 哲学(智の探求)一般の目覚め� 精神性(善、徳)と共通性の目覚め� 政治的原理:「善ある正義」の理念� 新しい政治経済:魂の術(statecraft)としての政治、コミュニティ、適価、新しい福祉

新しい「智」と「美徳」の時代

Page 3: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 哲学ブームの意味� 公共哲学の基礎� 自分の「ポリシー」という流行語� 知恵の探究は万人の課題� 宗教改革:万人司祭論� 学問改革・教育改革へ:万人哲人主義

万人哲人主義

Page 4: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 哲学の原点:哲学との出会い。ギリシャ的な叡智の探究。� ソクラテス的対話術:問答法� 実例、自ら思考させる。� 思考の深さ、独創性 ⇔受験勉強・暗記、情報・知識→智恵・叡智 

� コミュニケーション、思考と発言の訓練:ビジネスにも有意義   

� 対話型講義   創造的智恵を習得するための学び        

� 『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう』(文春新書)、『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)

サンデルの対話型講義:現代に甦る哲学の原点

Page 5: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 『サンデル教授の対話術』(NHK出版)� 対話:哲学の原点� 対話法:教育への適用、学芸術(アート)� 対話の多様性:ハーバーマス、ブーバーなど� ソクラテス型対話:ソクラテス自身の結論は不明、「無知の知」、しかし魂や美徳についての問いかけ

� 産婆術:相手が自ら思想を生み出すのを補助・手助けする。� 確定的な答えはないが、対話を通じて自らの考えを深化させる。

対話術:ソクラテス的方法

Page 6: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 正義:福利型(結果としての幸福)、自由型(権利としての自由)→美徳型(目的としての美徳、善)

� 功利主義:経済的発想=利益、快楽� 義務・権利論:法的発想=法義、権利・自由� ①リバタリアニズム(自由原理主義) 所有権・経済的自由� ②リベラリズム 福祉権・政治的自由� コミュニタリアニズム:道徳的(倫理的)発想=道義、美徳

政治哲学:正義とは?

Page 7: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 帰結主義:福利=幸福(最大化)型正義論� 1.心理的利己主義、倫理的利己主義:個人的利益の最大化 個人的利益の最大化が正義?

      � 2.功利主義:結果としての「全員の幸福」

1.福利型正義論:帰結主義

Page 8: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ①古典的(量的功利主義):ベンサム 最大多数の最大幸福、喜び(快楽)ー苦しみ(苦痛)、量的計算

 ②.質的功利主義:J・S・ミル 喜びに質的差違、高級/低級

功利主義の展開

Page 9: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 正義:個人の自由ーー義務・権利論ーー主意主義 →功利主義批判� ロック:社会契約論(ホッブス、ルソー)、自然権(生命、自由、財産property)、議会制

� カント倫理学:動機、善意思、義務� 定言命法(無条件な命令)「~すべし」� 仮言命法:「もし~なら、~すべし」� 権利ー基底的理論に展開

2.自由型正義論:義務・権利論

Page 10: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 純粋理性批判:「もの自体」に対する不可知論� 実践理性批判:理性、自律性� 普遍化可能性の原則「君の行為の格率が、君の意思によって、あたまも普遍的自然法則となるように行為せよ」

� 人間性の原則「…人格に存する人間性を、常にいかなる場合にも目的として使用し、決して単なる手段としてのみ使用してはならない」

カント倫理学

Page 11: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ロールズ『正義論』による社会契約論の再構成� ①リバタリアニズム(市場原理主義、自由原理主義) 自己所有権、自己決定、自己責任

  経済で言うネオ・リベラリズム、ミルトン・フリードマンらと連動。

� ②リベラリズム ロールズ、無知のヴェール、他者への無関心、合理的選択、正義の2原理(基本的自由・格差原理)、福祉国家

今日の権利・義務論

Page 12: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 義務論:善なき正義(正義の善に対する優先性)� 善(世界観・人生観)の多様性→正義≒権利� 道徳的主体:負荷なき自己→負荷ある自己:文脈、状況� 福祉、環境、平和、生命倫理などの様々な問題を権利だけで解決できるだろうか?

� 善ありし正義:善と正義の相関性

正義と善:ロールズの魔術を解く

Page 13: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� コミュニタリアニズム:善(倫理性、精神性)と共(共通性):共通善

� アリストテレス:目的論、美徳� テイラー、マッキンタイア、ウォルツァー� 宗教的背景� 特定の共同体の多数派主義ではない。� 特定の共同体を超えた、共通善の探求� 原理と実例(判断)との往復運動(弁証法)

3.美徳型正義論:目的論

Page 14: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� コミュニタリアニズム 美徳論:内発的・応答的行為� ギリシャ:卓越性(アレーテー)� アリストテレス:幸福=美徳に則しての魂の活動、中庸、友愛� トマス:人間の習慣づけによって得られる善き習性 4枢要徳 正義(共通善のため)・賢慮(目的実践のための手段選択)・節制・剛毅

� 儒教:仁義礼智信 � 総合的能力=実力+道徳性

美徳論

Page 15: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� サンデル:公共哲学の起点の1つ� 日本の公共哲学プロジェクト:学際性・実践性・対話性� 公共哲学とは何か:①広く人々が共有し、行動や政策の指針になる考え方、②何らかの公共性の実現を望ましいとする思想

公共哲学

Page 16: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ネオ・ナショナリズム:「公=国家」の復権、滅私奉公� ネオ・リベラリズム≒リバタリアニズム:規制緩和、民営化ー「私企業)」の絶対化

� 公共哲学プロジェクト:活私開公(金泰昌)、「公≒官≒国家」と公共の区別

� リベラル派:公私2元論→3元論、「公」と「私」を媒介する「共」と「公共」、公/公共/私

� 多様性・異質性+共通性の存在:公共(⇔共同)

公共とは?

Page 17: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 空間的:国境を超えた公共 グローカル(グローバルかつローカル)な公共

� 時間的:世代を超えた公共 過去世代・現在世代・将来世代という超世代的公共性

公共の時空間的拡大

Page 18: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 古い公共=国家的な公� 新しい公共=民(人々、NPOなど)の公共、人々が下から水平的に形成。

� 政権交代により、「公共」に立脚する「公」の再建が可能に。=「公共的公」形成の課題

� このため、「公」と「公共」が単純に対立するのではなく、「公」の内部で「公共」の要請と「官」との緊張関係が生まれ、ダイナミックな過程が生じている。

� 政権からは消滅?

新しい公共

Page 19: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 企業の社会的責任(CSR):1960-70年代� 株主に対する責任だけではなく、社会全体に対して責任がある。(⇔フリードマン)

� 日本経営倫理学会 1993年設立 � 社会的責任=公共的責任、何が公共性か?

ビジネス・エシックス

Page 20: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 功利主義:経済的利益、結果� リバタリアニズム、リベラリズム:公正、手続き、コンプライアンス

� コミュニタリアニズム:善き生、美徳、共通善それぞれの立場からビジネス倫理を考える。

ビジネス倫理学

Page 21: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� Business’s business is business.� 企業経営の本務は金儲け。� ビジネスの目的は、要するに金儲け?

問い1:ビジネスについての根本的問い

Page 22: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 経済的利益と社会的責任。どちらを優先するべきか?� ●建築会社Bに務めているあなたは、自分の会社の建て売り建設は、従来の発想に基づいて、M7くらいの耐震性しか備えていないことに気づいた。顧客が、「大震災以後、政府の震度の想定基準が改訂されたので、これからはM9を想定すべきだ」と指摘したからだ。政府は、建築物の耐震基準は変えていないから、法令上は今のままでも問題はない。M9の想定に基づく建築物を作るためには、大きな費用がかかる。さて、あなたはどうしますか?

� →今のまま売る。� →M9の耐震設計を行う。

問い2:経済的利益と社会的責任

Page 23: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� リバタリアニズム:基本的には、市場経済の中で利潤最大化でOK

リバタリアニズム

Page 24: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 費用:C円と推定� 便益:社会的な意義  T? � 便益:A社の利益にならなければ0円?�    長期的信用・長期的利益(T)は算定可能か?� TがCを下回る場合は?�     上回る場合は?

功利主義:A社の費用便益分析

Page 25: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 功利主義の問題点� 1.数量化:人の命、リスクは数量化できるか?� 2.予測可能性� 3.個人の犠牲 � 社会的意義は、算定可能・予測可能か?� A社が、社会的意義よりも利益を選ぶ危険性

功利主義と社会的責任

Page 26: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 公害事件:水俣病など� 成田空港問題など� 企業不祥事:三菱自動車工業欠陥・リコール隠し(2000)、雪印食品工業食肉偽装事件など。

� 食肉 ユッケ問題

利益追求の失敗例

Page 27: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� コストと安全性のジレンマ� 津波対策、非常時電源対策の軽視� いずれも法令上は問題なし。

原発事故

Page 28: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 外部不経済(ある経済活動が行われる際、当事者となる経済主体以外の経済主体が被る不利益:環境汚染)の解決方法は?

� 水俣病のチッソなど:自分の長期的利益にも反する。� しかし、このように明確にならない場合は存在するのではないか?� 法令による規制:義務論的解決

外部不経済

Page 29: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 規則・手続き重視 権利・義務論(リベラリズムなど)に強い考え方

� 道徳的義務論:仮に法令では規制がなくとも、道徳的にすべきではない。(汚染車の例)→規制を作るべき。

� 消費者保護などの規制立法 � コンプライアンスなどでは重要。しかし、義務論は経済的利益との両立に問題。

リベラリズム:義務論的解決

Page 30: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� コミュニタリアニズムにおいては「社会的意義=共通善」、これを実現するのが正義

� これを可能にするのが美徳:美徳倫理は、単に道徳的というだけではなく、「道徳性+能力」。だから、優れた仕事や利益の確保も可能にする。

コミュニタリアニズム:義務を超えた責任

Page 31: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� どのくらいの社会的意義、どのくらいの経済的コスト(損失)なら、改良するか?

� コストと意義の比較考量、バランス? � ジレンマ(二律背反)の認識:コスト計算と「会社の長期的便益+社会的意義=共通善の見通し」

� 会社という小さなコミュニティの短期的な便益と「その長期的な共通善(≒長期的利益)+社会全体のコミュニティの共通善(社会的意義)」との衝突

ジレンマの認識

Page 32: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� このジレンマにおける賢慮:判断⇒総合的美徳の必要性� ジレンマの認識と賢慮の存在は、不在の場合にくらべて、質の良い決定を生む。

� 条件 美徳:友愛・節制・勇気 � 価値観・世界観による判断:相対的判断  中庸など� 時間軸・空間軸による対応:時空間的な智恵�               総合的智恵� 賢慮=実践的智恵  実際の経験による智恵(⇔理論的知識)

賢慮によるジレンマ解決

Page 33: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ジレンマへの苦悩→新解決を生む場合:対理法的解決(dialectical)=止揚:創造的・生成的解決

�                  � 社会的意義=共通善に応える新商品開発 →会社の利益+共通善� プリウス、新エネルギー開発など。 � 直観的な叡智の湧出・閃き;創造的、天才的� 美徳やジレンマの認識が条件� これが人生やビジネスの最高目的

叡智への昇華

Page 34: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 1.相対的解決� 現実主義:売り続ける、理想主義:商品をすぐに変更、今のものは売らない。

� 理想主義的現実主義(中庸):空間ー特に危険な地域では売らない。時間ー売るが、なるべくすみやかに、より安全な商品を開発する。顧客に状況を明確に説明する。

� 2.止揚 創造的・生成的解決� 画期的新商品開発などによって、会社の利益をあげながら、共通善にも貢献。

解決方策

Page 35: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ジレンマの認識は、ビジネスでも、人生そのものにおいて重要。ある意味では、人生そのものがジレンマへの挑戦。

� ジレンマの克服の過程において、中庸や時空間的展開による相対的解決

� 理想としては、ジレンマの止揚=(新)対理法的統合を目指す。

示唆

Page 36: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ①あなたは国内の会社で新たな革新的な技術を開発した。うまく製品化すれば、大きな新しい市場ができるかもしれない。上司も研究をサポートしてくれている。ただ、年功序列制で、雇用は基本的には約束されているが、個人的に大きな報酬は見込めない。

� そんな時に外資系の企業からヘッドハンティングされた。成功した場合、多額の報酬が約束されている上に、新技術を使った製品開発に全社を挙げて取り組み、全世界で販売するという。ただし、高報酬や雇用が続くという保障はない。あなたはヘッドハンティングに応じるか。

� � →応じる� →応じない

問い3:個人の成功と会社の成功

Page 37: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ②また、あなたが経営者であると仮定しよう。コンサルタントから、このようなヘッドハンティングを防ぐために、賃金や雇用形態を外資系に近づけたらどうかというアドバイスを受けた。あなたはどうするか。

� � →従来の形態を守る。� →外資系の方式を導入する。

問い3(続):アメリカ型経営

Page 38: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ①個人にとっては、ヘッドハンティングに応じた方が長期的にみても自分にとって利益があるかどうか。確率計算。

�  全体にとっては、その方が経済発展につながるかどうか。元の企業が沈滞するというマイナスを含めて計算。

� ②個別企業にとっては、アメリカ型を導入する方が長期的にみて、業績があがるかどうか。

�  日本経済全体にとっては、その方が経済発展につながるかどうか。日本型経営のメリットが失われるというマイナスを含めて計算。

功利主義

Page 39: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 個人中心。個人の利益の最大化。� ①ヘッドハンティングに応じる。� ②アメリカ型経営を導入する。� ⇒市場経済の活性化につながる。

リバタリアニズム

Page 40: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 株主� 社長以下、経営陣� 従業員� 顧客、さらには経済全体� 関係する地域・国家・地球などのコミュニティー � 株主以外の関係者(ステークホルダー)は?

企業は誰のものか?:関係者

Page 41: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ストックホールダー(株主)理論:企業の目的は利潤=株主の利益の最大化、それ以外の道徳的責任・社会的責任は不必要  利己主義と連動、アメリカ型の資本家中心の資本主義(キャピタリスト・キャピタリズム)  リバタリアニズム

� ステイクホルダー(利害関係者)理論:消費者、取引先、従業員、株主など、     ⇒コミュニタリアニズムへ

二つの考え方

Page 42: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 会社というコミュニティー:会社中心の資本主義(カンパニー・キャピタリズム)

� 企業:さまざまなコミュニティーの中の一つ� チーム・ワーク:コミュニタリアン・リーダー � 株主:所有者� 経営陣(ガバナンス)+従業員:構成員� 地域コミュニティー、国家やそれ以上のコミュニティー:消費者、取引先など

会社内外の多層的コミュニティー

Page 43: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ①今までの企業(コミュニティ)の関係者に対する感謝・責任・恩義(負っているもの) 対 ヘッドハンティングに応じることによって可能になる貢献(より広いコミュニティへの寄与)のジレンマ

� ジレンマの認識と判断・選択:(短期的)利益と道義の衡量� 解決のための智恵:昇給や昇格、新しいプロジェクトの創造などによって、今までの企業にとどまる。もとの企業にとっても有意義な方法はないかどうか。

コミュニタリアニズムとヘッド・ハンティング

Page 44: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� ②企業というコミュニティの意義、チーム・ワークをいかした経営:単純なアメリカ型経営の問題点との衡量

� ジレンマ解決のための智恵:従来の経営のメリットを生かしながら、ヘッドハンティングに応じる人が少なくなるような新しい形態の模索

� ⇒部分的導入。リベラルな個人とコミュナルな経営との(新対理法的)統合?

コミュニタリアニズムの経営

Page 45: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� あなたは日本企業の経営者である。これまで主に日本で商品を生産し、高品質だとして国内外の顧客から高い評価を得てきた。ただ、国内市場は拡大がそう見込めない上、円高や高い人件費などもあり、経営が厳しくなってきた。そこで、コンサルタントから「労働コストの安い海外拠点に生産を移してはどうか」とアドバイスを受けた。

� � →生産拠点を海外に移す� →日本の拠点で改善に取り組む

問い4:グローバル企業の意義とは?

Page 46: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 企業単位:結果的に成功すればOK� 国単位:国家が衰退すれば、不正義。� 地球単位:世界経済が発展すれば、OK。現地の人びとの幸福も含めて計算=「現地の人びとの幸福ー日本の人々の不幸」がプラスならOK

功利主義

Page 47: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 市場経済の規則に反していない限り、OK。� グローバリズム=グローバル・リバタリアニズム

リバタリアニズム

Page 48: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 地球的公共体が確立していれば、海外に生産拠点を移してもOK。地球的コミュニティーやその共通善に貢献する可能性。

� しかし、現状では、ナショナル・コミュニティーおよびその共通善との関係も考える必要性。

� そこで、(地球的公共善のためではなく)企業の私的利益のためだけに拠点を移すことが、ナショナルな共通善を侵害する危険性:倫理的に正しいか、疑わしい。

多層的コミュニタリアニズム

Page 49: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 前提:モラル・ジレンマの存在とその認識� 共通善:理想。目的としての共通善への到達。グローカルな共通善� リベラルの批判:誰が決定するのか?� 返答:公共的美徳に立脚する熟考、熟議� 判断・決定:総合的美徳、ビジネスの智恵・叡智

ビジネスのアート:仕事術

Page 50: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 社内の議論の重要性:モラル・ジレンマの自覚� 意見の一致は困難:ハーバーマスらの熟議民主主義(コンセンサス)とも、他方で闘技民主主義(対立)とも相違

� 意見対立を通じてのそれぞれの意見の深化と、共通善に向かって前進したという「共通善の感覚」の存在

熟議の理想

Page 51: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 経営者:美徳に基づく識見・判断力、賢慮(実践智)・叡智(直観智)

� 善と智慧に基づく、正しい判断(正義)

モラル・ジレンマに対する判断

Page 52: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

�        共通善�   △          ◎�      � 経済的不利益         経済的利益�          ジレンマ�   ×          △�       �      共通悪(害)(参考:梅津光弘)    

ジレンマの図解

Page 53: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

�  理想主義(的理想主義)�  問い1:即時販売中止          �             理想主義的現実主義�               叡智による新商品            

�                         �                �         中庸        問い2:販売継続�            現実主義(的現実主義)

図解の意味:中庸?

Page 54: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 意見の対立→深化による、共通善への前進� 再び、対立→前進 � 永久の過程=新対理法的運動

新対理法的共通善

Page 55: 〜決断する力〜 日本版白熱教室。ビジネス哲学を考える

� 人生そのものが道徳的ジレンマとその解決のプロセス:新対理法的人生

� 善き生:美徳をいかに涵養できるか。� 静態的な人生では、意義が少ない。:官庁依存の経営� 動的人生:大変ではあっても、時代の新しい課題に挑戦して、新しい機軸を発展させることが、そのビジネスやその人生の意義。

� コミュニタリアニズム的な人生のアート:総合的美徳の涵養� 人生の智恵・叡智の習得

人生のアート:人生術