公立高校入試問題 出題傾向の 徹底分析!! · 4 enj vol.40 福井県 大問4 秋田県...

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ENJ vol.40 2 2017年度高校入試の全国的出題傾向! 教科 今年の入試の特徴 難易度(昨年と比較) その他注目したい点 国語 会話形式の出題は増加傾向。読解は今年 も“哲学”や“科学”をテーマにした文章が多 かった。 特に大きな変化なし。 作文は「煮詰まる」や「失笑」など、言葉の意味の 捉え方を題材にしたものが目立った。 数学 思考力系問題の出題は落ち着き、典型題が 多く並んだ。方程式の文章題は文章量が大 幅に増え、読解力も問うように。 前半(計算・一行問題)と、後半(関数・ 図形)の難度差がさらに開き、難度の 二極分化は顕著に。 他教科で加速している“問題文の長文化”は、 2018年度以降も進む可能性大。図形や関数では 中学入試で頻出の問題の出題が増えつつある。 英語 意見英作文の出題が大幅に増加。グラフや 資料の読み取りは定番に。文法の難易度は 安定。 英作文や語順整序の難度が上がった 県はあるが、全体的には特に大きな 変化なし。 長文のテーマや空所補充で問われる文法事項は、 一昔前の定番問題の傾向に。2018年度入試に向 け、変化を避けた感が強い。 理科 “すべてを選ぶ”解答形式の設問が増えた。 文章量は年々増加。実験の前提条件も難 化の傾向。 出題内容や出題形式によって大きく難 度が変わる県が多く、全体的に不安 定。 典型題の出題は減り、記述や作図で目新しい問題 を出す県が増えた一方で、従来通りの用語記述 も増。難易度の二極分化は加速している。 社会 グラフや資料の量は年々増加。記述は思考 力系問題が主流に。 記述は若干難化も、全体的には特に 大きな変化なし。 「円安」「働き方改革」など時事問題の出題は多 い。かなり細かい知識を問われる問題も増加して いる。 2017年度 公立高校入試問題 出題傾向の 徹底分析 !! 2017年度高校入試の特徴をヒトコトで言うと、「全体的 には、2018年度以降の入試を見据えてあえて大きな変化を 避けた入試」。今年度から大阪府、愛知県、埼玉県などで は出題のスタイルを大きく変えていますが、全国的に見れ ば、各県特有の出題傾向を踏襲している県が多く、数学・ 英語の難化は押さえられ、5教科全体としては易化した県 も多数あります。周知のように、「入試問題の変化」の背 景にあるのは、現中3生が受験の初年度に該当する「大学 入試改革」。ここ数年で、大学入試改革を見据えて「思考 力・判断力・表現力」を意識した新しい切り口の問題が目 立ち始めましたが、来年度以降は、すべての都道府県で何 らかの変化が予想されるため、警戒が必要です。 2017年度入試の変化の中で顕著だったのが、社会に多く 見られた「記述問題の質的変化」と、21県の理科で採用さ れた「選択肢の中から正しいものをすべて選ぶ」解答形式。 どちらも解答が一つではないということが共通点で、大学 入試改革に直結しています。特に、資料やグラフから情報 を読み取って論理的に表現するという記述問題は、数多く の県で出題されています。「思考力・判断力・表現力」が「変 化の核」であることを認識することが不可欠です。 「大学入試改革」の元年にあたる2020年度は、次期学習 指導要領がスタートする年でもあるため、これから数年間 は高校入試、英語教育、ICT教育など、教育環境の激変が 予想されます。次期学習指導要領では、「詰め込み」か「ゆ とり」かの2項対立ではなく、アクティブラーニングを柱 とした「学び方」の改革が示されています。 次年度以降の高校入試を考える際に、次期学習指導要領 にも明示されている「学力の3要素」は欠かせません。「知 識・技能」は、ボリュームゾーンの生徒にとって最優先課 題であることは今後も変わらないでしょう。「思考力・判 断力・表現力」は「知識・技能」の土台があってこそのも のです。入試問題は、計算、漢字の読み書きなどの基本的 知識の習得を評価する「従来型の問題」と、「思考力・判 断力・表現力」を評価する「21世紀型の問題」に二極分化 していくことでしょう。 ここ数年の高校入試問題を見る限り、二極分化した問題 間の難易度や正答率が著しく異なります。易しく得点しや すい「知識・技能」型の問題と、これまでの対策では困難 な「思考力・判断力・表現力」型の問題のいずれにも対応 していくことが、入試対策の喫緊の課題となります。 2017年度入試問題はどう変わったのか? 大学入試改革を見据えた「変化の兆し」は? ゼッタイに変化しない「知識・技能」、 変化し続ける「思考力・判断力・表現力」! 超速報版

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Page 1: 公立高校入試問題 出題傾向の 徹底分析!! · 4 ENJ vol.40 福井県 大問4 秋田県 大問2 静岡県 4大問 右の図のように,縦12cmの長方形の紙に

ENJ vol.402

2017年度高校入試の全国的出題傾向!教科 今年の入試の特徴 難易度(昨年と比較) その他注目したい点

国語会話形式の出題は増加傾向。読解は今年も“哲学”や“科学”をテーマにした文章が多かった。

特に大きな変化なし。作文は「煮詰まる」や「失笑」など、言葉の意味の捉え方を題材にしたものが目立った。

数学思考力系問題の出題は落ち着き、典型題が多く並んだ。方程式の文章題は文章量が大幅に増え、読解力も問うように。

前半(計算・一行問題)と、後半(関数・図形)の難度差がさらに開き、難度の二極分化は顕著に。

他教科で加速している“問題文の長文化”は、2018年度以降も進む可能性大。図形や関数では中学入試で頻出の問題の出題が増えつつある。

英語意見英作文の出題が大幅に増加。グラフや資料の読み取りは定番に。文法の難易度は安定。

英作文や語順整序の難度が上がった県はあるが、全体的には特に大きな変化なし。

長文のテーマや空所補充で問われる文法事項は、一昔前の定番問題の傾向に。2018年度入試に向け、変化を避けた感が強い。

理科“すべてを選ぶ”解答形式の設問が増えた。文章量は年々増加。実験の前提条件も難化の傾向。

出題内容や出題形式によって大きく難度が変わる県が多く、全体的に不安定。

典型題の出題は減り、記述や作図で目新しい問題を出す県が増えた一方で、従来通りの用語記述も増。難易度の二極分化は加速している。

社会 グラフや資料の量は年々増加。記述は思考力系問題が主流に。

記述は若干難化も、全体的には特に大きな変化なし。

「円安」「働き方改革」など時事問題の出題は多い。かなり細かい知識を問われる問題も増加している。

2017年度公立高校入試問題

出題傾向の徹底分析!!

 2017年度高校入試の特徴をヒトコトで言うと、「全体的には、2018年度以降の入試を見据えてあえて大きな変化を避けた入試」。今年度から大阪府、愛知県、埼玉県などでは出題のスタイルを大きく変えていますが、全国的に見れば、各県特有の出題傾向を踏襲している県が多く、数学・英語の難化は押さえられ、5教科全体としては易化した県も多数あります。周知のように、「入試問題の変化」の背景にあるのは、現中3生が受験の初年度に該当する「大学入試改革」。ここ数年で、大学入試改革を見据えて「思考力・判断力・表現力」を意識した新しい切り口の問題が目立ち始めましたが、来年度以降は、すべての都道府県で何らかの変化が予想されるため、警戒が必要です。 2017年度入試の変化の中で顕著だったのが、社会に多く見られた「記述問題の質的変化」と、21県の理科で採用された「選択肢の中から正しいものをすべて選ぶ」解答形式。どちらも解答が一つではないということが共通点で、大学入試改革に直結しています。特に、資料やグラフから情報を読み取って論理的に表現するという記述問題は、数多くの県で出題されています。「思考力・判断力・表現力」が「変化の核」であることを認識することが不可欠です。

 「大学入試改革」の元年にあたる2020年度は、次期学習指導要領がスタートする年でもあるため、これから数年間は高校入試、英語教育、ICT教育など、教育環境の激変が予想されます。次期学習指導要領では、「詰め込み」か「ゆとり」かの2項対立ではなく、アクティブラーニングを柱とした「学び方」の改革が示されています。 次年度以降の高校入試を考える際に、次期学習指導要領にも明示されている「学力の3要素」は欠かせません。「知識・技能」は、ボリュームゾーンの生徒にとって最優先課題であることは今後も変わらないでしょう。「思考力・判断力・表現力」は「知識・技能」の土台があってこそのものです。入試問題は、計算、漢字の読み書きなどの基本的知識の習得を評価する「従来型の問題」と、「思考力・判断力・表現力」を評価する「21世紀型の問題」に二極分化していくことでしょう。 ここ数年の高校入試問題を見る限り、二極分化した問題間の難易度や正答率が著しく異なります。易しく得点しやすい「知識・技能」型の問題と、これまでの対策では困難な「思考力・判断力・表現力」型の問題のいずれにも対応していくことが、入試対策の喫緊の課題となります。

2017年度入試問題はどう変わったのか?大学入試改革を見据えた「変化の兆し」は?

ゼッタイに変化しない「知識・技能」、変化し続ける「思考力・判断力・表現力」!

超速報版

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ENJ vol.40 3

富山県 大問8

山口県 大問9

数学編

 右の図1のように、BC=50cm,CD=20cmの長方形を底面とし,BE=50cmの直方体の形の水そうが水平に置かれている。 水そうの中には水を区切るための2枚のしきり①,②があり,底面に垂直に固定されている。 また,しきり①はPQ=20cmの正方形,しきり②はSR=20cm,RT=40cmの長方形で,BQ=AP=20cm,QR=PS=10cmである。 水の入っていないこの水そうに,固定された給水口から一定の割合で水を入れる。 水面の高さは,辺BEにある目盛りに水面がふれているところで測るものとし,水をいれはじめてからx分後の水面の高さをycmとする。 給水口から水を入れると,水は,しきり①の左側に入り始めた。右の図2は,水を入れ始めてから水面の高さが50cmになるまでのxとyの関係を表すグラフの一部である。 水そうとしきり①,②の厚さは考えないものとし,次の問いに答えなさい。

(3)� 次の文は,「xの変域が4≦x≦6のとき,yの値は一定となっている」ことを,水そうの中のようすをもとに説明したものである。

  □にあてはまる文を書き,説明を完成させなさい。  説明 給水口から一定の割合で,水そうに水を入れているが,水を入れ始めて4分後から6分後までは,

よって,水面の高さは変化しない。したがって,xの変域が4≦x≦6のとき,yの値は一定となっている。

 図3のように,円周を12等分する点にそれぞれ1から12の数学が書かれている文字盤をもち,長針と短針からなるアナログ時計がある。 この時計の長針と短針がそれぞれ一定の速さで動き,ちょうど3時28分を示すとき,長針と短針のつくる角(図3中の∠a)の大きさを求めなさい。

数年前から、公立高校入試でも中学入試で頻出の「旅人算」「植木算」「規則性」などの問題の出題が目立ってきています。富山県のサンプル問題は「1次関数」、山口県のサンプル問題は「1次方程式」と、どちらも中学の学習内容ではありますが、テーマが公立高校入試での典型題ではなかったため、戸惑った生徒も多かったことでしょう。特に、富山県のサンプル問題では、こちらもこの数年の傾向である“グラフの読み取り方の記述”を出題しています。公立高校入試に先駆けて思考力や判断力を問う問題を出題していた中学入試や公立中高一貫校の入試問題が、今後も公立高校入試の題材として用いられる可能性は十分考えられます。文章題は年々長文化し、難度も上がっているので、文章題対策のワンポイントとして、中学入試の問題を取り入れてみてもいいかもしれません。

中学入試では頻出のテーマが公立高校入試でも定番になりつつある?

 2017年度に高校に入学する生徒は、現行の大学入試を受験する最終学年となるため、今年度の公立高校入試は昨年と比べて変化が少なく、オーソドックスな問題が並びました。 一方で、2017年度までに高校入試改革を行った県では「思考力・判断力・表現力」を問う問題が引き続き出題され、今までの公立高校入試では見ることのなかったタイプの問題が目立ち始めています。 2020年度からの新しい大学入試は2017年度の中学3年生から実施されるため、来年度以降は全国的に高校入試改革の動きが活発になってくるでしょう。新しい高校入試ではどのような問題が出題され、どのような対策が必要なのか。他県での先行事例を参考にしながら、今後の入試対策を見直していくことが重要となってくるでしょう。

水はしきり①としきり②の間に流れ込んでいる

64度

注目問題

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ENJ vol.404

福井県 大問4

秋田県 大問2

静岡県 大問4

 右の図のように,縦12cmの長方形の紙に半径12cm,中心角90°のおうぎ形がかかれている。このおうぎ形を側面とする円錐の展開図を完成させるために,底面の円をかき加える。 このとき,次の問いに答えよ。

(2) 長方形の横の長さを最も短くするために,底面をかき加える位置を工夫して,展開図を完成させた。このときの横の長さを求めよ。

(3) 1から10までの整数が1つずつ書かれた玉がそれぞれ1個ずつあり,袋A,袋Bにはそれらの玉のうちいくつかが入っている。太一さんは袋Aから1個の玉を,洋子さんは袋Bから1個の玉を取り出し,取り出した玉に書かれた数が大きい方を勝ちとする。ただし,袋Aからどの玉が取り出されることも,袋Bからどの玉が取り出されることも,それぞれ同様に確からしいものとする。

② 袋Aには,1,3,5の玉のほかに,6,7,8,9の玉のうちのいくつかが入っている。また,袋Bには2,4,10の玉が入っている。太一さんが勝つ確率と洋子さんが勝つ確率が等しいとき,袋Aには全部で何個の玉が入っているか,求めなさい。

 ある中学校では,体育大会のため,実行委員の生徒74人が,倉庫から長机と椅子を運動場に運び出し,受付用,本部用,来賓用として設置することになった。1,2年生の実行委員が長机を2人で1台ずつ,3年生の実行委員が椅子を1人4脚ずつ運び出した。運び出した後,長机を,受付用として4台設置し,残った長机を,本部用と来賓用として同じ数ずつ設置した。次に,椅子を,受付用と本部用の長机1台につき3脚ずつ,来賓用の長机1台につき2脚ずつ設置したところ,運び出した長机と椅子をちょうど全部使うことができた。 このとき,運び出した長机は全部で何台であったか。また,運び出した椅子は全部で何脚であったか。方程式をつくり,計算の過程を書き,答えを求めなさい。

設問にたどり着くまでが大変?読解力は数学でも不可欠に!

知識は使いこなすもの!条件をどう使っていくか、が勝負!

2012年度の教科書改訂以降、全国的に出題数が減った「方程式」ですが、昨年から長文の文章題での出題が目立ち始めました。正答率を見てみると、“問題文が3行長くなるごとに、正答率が30%ずつ下がっていく”イメージ。正答率が10%を下回る問題も少なくありません。静岡県のサンプル問題のように長文で条件が多い問題になってしまうと、「どこから手をつけるべきか」というスタートラインに半数以上の生徒が立てていないのが現状です。2020年度からの大学入試に向けて、教科を問わず問題文の長文化が加速すると考えられるため、読解力の養成は必要不可欠です。

15cm

6個

(方程式・計算略) 長机 28台、椅子 72脚

例年、おうぎ形が絡む問題の正答率は低く、「円錐の展開図」に関する問題は、低正答率一行問題の代表格と言っても過言ではありません。福井県のサンプル問題は、定番の「円錐の展開図」をさらに発展させて、自分で作図させるという、一風変わった問題。底面の円の位置がどこにあれば、長方形の横の長さが短くなるかをある程度予測し、図形の性質なども考慮して解き進めていく問題です。このような問題が今後定番となることはありませんが、来年以降、2020年度からの大学入試改革や学習指導要領改訂の影響で、“知識を使いこなす”問題が増えていくことは必至です。

年々増加傾向にある“思考力系問題”の中でも、特に出題形式のバリエーションが豊かなのが「確率」。秋田県のサンプル問題は、一見するとよくある問題のように見えますが、玉に書かれた数ごとに場合分けして確率を求めていく、やや手間のかかる問題です。新しい大学入試では“答えが1つではない問題”の出題に力を入れていく、としていますが、まさにこの「確率」は場合分けの必要もあり“答えが1つではない問題”。「確率」の典型題を解く知識はもちろん、条件を整理し、1つずつ検証していく力が必要となります。上位校や高得点を目指す際に差がつく問題となるため、上位生にはこのような新しいタイプの問題になるべく触れさせておく必要があるでしょう。

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ENJ vol.40 5

滋賀県 大問2

 花子さんは,健康のためにウォーキングを始めたおじさんに,自分に合った運動の強さを教えてあげようと考えています。運動の強度にはいくつかの求め方があり,その中から,心拍数をもとに簡単に求めることができる方法について,次のようなメモにまとめました。

花子さんのメモ

運動強度…�行っている運動の強さを数値で表したもの。数値が大きいほど強い運動であることを示す。

<運動強度の求め方>①安静時心拍数を測る。  安静時心拍数は,安静にした状態で,1分間の脈拍数を測る。②運動時心拍数を測る。

運動時心拍数は,運動の途中または運動後に安全なところで止まって,1分間の脈拍数を測る。

③運動強度を求める。運動強度は,運動時心拍数,安静時心拍数,年齢の値をもとに,次の式から求める。

運動強度(%)=                  × 100

 ◎運動強度の目安(40~60%を目標に)

運動の種類 ウォーキングなど,やや楽と感じる運動

ランニングなど,ややきついと感じる運動

運動強度 40%程度 60%程度

【注意】実際に運動を行う場合は,その日の体調や気分に十分注意してください。

 花子さんのおじさんは年齢が50歳で,花子さんのメモの<運動強度の求め方>にしたがって,安静時心拍数を測ったところ70でした。次の(1)から(3)までの各問いに答えなさい。

(3)花子さんは,おじさんの年齢と安静時心拍数の値を用いて,運動強度xと運動時心拍数yの関係について,おじさんに説明しようと考えました。運動強度の値が大きくなると,運動時心拍数はどうなりますか。下のア,イから正しいものを1つ選んで記号で書き,それが正しい理由を,xとyの関係式を用いて説明しなさい。

  ア 運動時心拍数は増える。  イ 運動時心拍数は減る。

運動時心拍数 - 安静時心拍数�(220�-�年齢)��- 安静時心拍数

公立高校入試の制度や出題内容の変更をする県が増えつつあります。左のサンプル問題を出題した滋賀県は全国に先駆けて2015年度の入試から出題内容を一新。会話文や表の読み取りを増やし、数値記述が大半を占めた入試から記述問題中心の入試に変わりました。今年も愛知県と埼玉県が入試制度・出題内容を変更しています。過去3年間の入試制度変更、出題内容変更に共通するキーワードが“思考力・判断力・表現力を問えるような問題”。特に、身近な事例から数学的思考に結びつける問題の割合が高くなってきています。このような問題で欠かせないのが「式やグラフを言葉で説明する力」。2016年度の入試でも、「考え方を説明する」問題は多く出題され、軒並み正答率が低くなっていました。来年以降、入試制度や出題内容を一新する県はさらに増加することが予想されます。過去数年間、入試の出題傾向に変化のない県では、他県入試の変化に注視する必要があるでしょう。

生活に密接したテーマ&記述は今年も工夫を凝らして出題!

会話、数の性質、記述…新傾向をすべて反映した問題はこうなる?

埼玉県 大問3(2) 次は,先生,Aさん,Bさんの会話です。これを読んで,下の①,②に答えなさい。

先 生�「右の図のように,11から50までの自然数を並べます。この中で,11と13のように,『差が2である2つの素数』の組は全部で4組あります。残りの3組をすべて答えてください。」

Aさん「� ア �です。」先 生�「そのとおりです。では、『差が2である2つの素数』の間にある自然数は,何

の倍数ですか。」Aさん�「2の倍数だと思います。理由は,『差が2である2つの素数』はともに奇数だから,

その間の数は必ず偶数になるからです。」先 生�「そうですね。その説明は,51以上の自然数でも成り立ちますね。」Bさん「先生,私は3の倍数でもあると思います。」Aさん「どうして,3の倍数なのですか。」Bさん「11以上の自然数について,次のように説明できます。」   (説明)                    イ                 先 生�「二人ともよく考えましたね。11以上の自然数について,『差が2である2つの

素数』の間にある自然数は,2の倍数でもあり,3の倍数でもあるので,6の倍数でもあります。」

①  ア にあてはまる,『差が2である2つの素数』の組を書きなさい。② � イ にあてはまる,『差が2である2つの素数』の間にある自然数は3の倍数で

ある理由を説明しなさい。

ア【説明】xとyの関係式 y=x+70より,yはxの

1次関数であり,xの係数が正なので,xの値が大きくなると,yの値も大きくなるから。

①17と19,29と31,41と43②連続する3つの自然数の中には必ず3の倍数

が1つあり,『差が2である2つの素数』はともに3の倍数ではないので,その間の数が3の倍数である。

右のサンプル問題は、今年度から入試制度を変えた埼玉県で出題された“新傾向”問題。「会話文の読み取り」・「数の性質」に関する問題・「理由の説明」と、数学の入試の変化をすべて詰め込んだ出題内容となっています。さらに、このサンプル問題は、従来であれば文字式にして考えるタイプの問題ですが、模範解答を見てもお分かりのように、素数と倍数の考え方だけで説明する問題となっています。典型題を繰り返し解いている生徒ほど手が出なかった問題と言えるでしょう。来年以降、このような工夫を凝らした、生徒にとって“初見の”問題の出題は全国的に増えると考えられます。パターン学習だけに終始するのではなく、状況に応じていろいろな問題に数多く触れさせていくことが重要です。

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ENJ vol.406

 2017年度入試で最も特徴的だったのが“すべて選ぶ”解答形式の問題。2016年度に出題している県はほとんどありませんでしたが、今年は21県で出題されるなど、2020年度からの大学入試改革に向けた動きが高校入試でも活発化してきました。 その一方で、課題とされる「知識・技能」の定着に力を入れる傾向も強く、1県あたりの用語記述の設問数は6.1問と、昨年よりも増加しています。 出題単元では、「生命を維持するはたらき」「光合成と呼吸」「酸化と還元」など、以前からの定番単元からの出題が、昨年同様増えています。出題単元の経年変化には今後も注視が必要です。

愛知県B 大問6

埼玉県 大問3

(2)太郎さんの町では,決まった時刻にサイレンが鳴る。サイレンがどこで鳴っているのかを調べるため,5人の友人にそれぞれの自宅で,ある日にサイレンの音が聞こえ始めた時刻を正確に測ってもらった。図2は,町の地図に方眼紙を重ねた時の5人のそれぞれの自宅の位置A,B,C,D,Eを示したものであり,表は方眼紙上の5人のそれぞれの自宅の位置とサイレンの音が聞こえ始めた時刻を示している。このとき,サイレンが鳴った位置Sは方眼紙上のどこか。Sの位置を(X,Y)として,XとYにあてはまる最も適当な整数をそれぞれ書きなさい。なお,方眼紙上の位置は,方眼紙の左下端を(0,0),右上端を(25,25)とする。ただし,5人のそれぞれの自宅とサイレンは水平面上にあり,音は妨げられることなく空気中を一定の速さで伝わるものとする。

 ヒトの毛細血管の中を流れる血液と全身の細胞の間での物質のやりとりについて調べ,次の図3のようにまとめた。

図3

問2 調べてわかったことの2について,次のア~エの中から,◎が表す物質をすべて選び,その記号を書きなさい。

  ア ブドウ糖  イ 二酸化炭素  ウ 酸素  エ アミノ酸

 ヒトの血液がどのようにからだを循環しているか調べたところ,血液は図4のように,心臓を出てから肺をめぐってふたたび心臓にもどる経路と,心臓を出てから肺を除くからだの各部分をめぐってふたたび心臓にもどる経路の2つの経路を循環していることがわかった。

問4(1)� 図4のア~カの中から,動脈血が流れている場所をすべて選び,その記号を書きなさい。

愛知県Bのサンプル問題は、音の伝わり方から音の発信源を探す問題。音が聞こえ始めた時刻が同じ2点から等距離に位置する場所を探す、という、数学的な知識(2点から等距離の点の作図=垂直二等分線の作図)を使って考える問題です。サンプル問題では「光と音」の単元の問題として出題されていますが、最近では、「地震」の震源地の作図にもこの考え方を応用した問題が出題されています。2~3年ほど前から目立つようになった、教科横断型の問題。その中でも、理科において数学の知識を必要とする問題の出題が目立ち始めています。定理や原理原則の正確な理解と活用が重要視されていることもあり、今後もこのような問題は増えていくと考えられます。

理科編

出題数大幅増の“すべて答える”問題には要注意!

注目問題

ア、エ

(17,18)

エ,オ,カ

2017年度、設問数が大幅に増えた“すべて選ぶ”問題。2020年度からの大学入試改革を象徴する問題と言えるでしょう。今までは、消去法で解答することもできた記号選択問題ですが、“すべて選ぶ”問題は完答で正解となるため、今まで以上に正確な知識が必要となります。また、サンプル問題でもお分かりのように、従来得点源となっていた生物での出題が多いため、このような問題が増えると平均点が大幅に下がることが予想されます。理科は覚えなければいけない知識事項も多く、年々入試問題が難化の一途をたどっているため、早い段階から入試を見据えて学習を積み重ねていくことが重要となってきます。

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ENJ vol.40 7

物 理 化 学 生 物 地 学光と音

重さと質量の違い

力とばねののび・

水圧・浮力

「電流と磁界」

「電流」

電力量・熱量

「仕事とエネルギー」

「力のつり合い」

密度

質量パーセント濃度

酸化と還元

水溶液とイオン

はたらき

生命を維持する

刺激と反応

遺伝子

遺伝の規則性と

地震

「星座の年周運動」

「日周運動」

月の運動と見え方

太陽系と惑星

北海道 2 1 1 3 2 4 3 2 1 4 3 1 1 2 1 1 3

青森県 2 1 2 3 0 4 2 4 2 5 2 1 2 2 3 1 2岩手県 3 1 1 3 1 4 3 1 1 5 3 0 1 1 2 1 4

宮城県 2 1 1 3 0 4 1 1 2 4 3 0 3 1 3 1 3

秋田県 1 1 1 2 2 3 3 1 1 2 2 0 1 0 2 0 1山形県 2 2 1 3 0 4 1 1 1 3 3 1 1 0 2 2 2福島県 3 1 2 3 1 3 1 1 1 5 3 2 1 2 3 0 3茨城県 4 1 0 3 2 4 2 2 2 4 3 1 3 2 3 2 1

栃木県 5 1 1 5 1 5 1 1 1 3 4 1 1 1 2 2 3

群馬県 3 2 1 4 1 5 3 1 3 4 3 1 1 3 2 1 3

埼玉県 5 1 0 2 1 3 2 1 1 4 4 0 1 3 1 1 3

千葉県 3 1 2 4 2 3 0 2 1 3 2 0 1 2 2 1 2

東京都 3 1 0 5 0 5 3 2 2 3 4 1 3 2 3 3 1神奈川県 4 2 3 4 0 5 2 2 3 5 2 1 2 2 3 1 3

新潟県 1 1 1 5 2 4 1 2 1 5 2 0 2 0 2 0 3

富山県 3 2 1 5 1 4 1 3 2 3 1 0 1 1 3 2 1石川県 2 0 0 3 0 4 1 3 1 3 5 1 1 2 2 1 1福井県 3 0 1 3 2 3 1 3 2 5 0 1 1 1 2 1 1山梨県 3 1 2 3 1 3 2 2 2 2 3 0 1 1 3 1 1長野県 3 2 0 3 1 3 2 2 3 2 1 1 1 1 2 0 1岐阜県 2 1 1 3 2 1 2 2 2 3 2 0 2 1 2 0 1静岡県 2 0 2 3 1 3 1 1 0 5 2 1 1 3 3 3 0愛知県A 2 1 0 3 1 1 0 0 2 4 1 1 3 1 0 2 3愛知県B 3 1 0 2 1 3 1 1 0 4 1 0 2 1 3 0 0三重県 3 0 1 3 0 3 2 0 1 3 1 2 1 1 2 1 1滋賀県 1 0 0 2 1 3 0 1 1 4 1 0 0 0 0 1 1

京都府 2 1 1 4 1 2 0 1 3 4 1 2 0 1 3 1 0大阪府 1 1 1 2 1 3 1 2 1 3 2 1 1 1 1 2 2兵庫県 3 0 1 2 2 2 2 3 2 2 3 1 1 3 2 1 0奈良県 0 2 1 1 0 3 1 2 0 2 1 1 0 1 2 0 1和歌山県 1 1 1 2 0 3 2 2 3 2 2 1 1 1 2 1 2

鳥取県 3 1 0 3 1 4 1 1 2 4 2 1 1 2 1 0 1島根県 2 1 1 4 2 3 2 2 0 3 4 1 1 2 1 2 1岡山県 1 0 1 3 2 3 0 3 1 3 3 0 2 1 0 1 1広島県 2 1 1 3 1 1 0 1 1 1 1 0 2 0 1 1 1山口県 2 1 0 4 2 3 1 2 3 3 3 1 1 1 1 0 2徳島県 3 1 2 5 0 3 1 0 3 4 4 0 1 0 4 1 2香川県 3 2 1 5 0 5 0 2 3 4 3 1 2 1 3 1 2愛媛県 2 1 0 3 0 4 3 1 3 4 3 2 1 1 3 0 2

高知県 3 0 0 3 0 3 1 1 1 3 1 0 0 1 3 1 0福岡県 2 1 2 2 1 3 2 0 1 4 1 1 1 1 3 1 0佐賀県 0 0 2 3 0 3 1 2 1 3 1 2 3 1 1 1 1長崎県 2 0 1 3 1 3 1 2 1 3 3 0 1 1 3 0 1熊本県 0 0 0 3 0 4 2 0 1 3 2 0 0 0 1 2 2大分県 0 2 1 2 1 3 1 2 2 2 1 1 2 2 3 0 0宮崎県 2 2 1 3 1 3 3 2 1 4 3 1 2 0 2 2 2鹿児島県 4 1 3 5 0 3 3 2 1 3 3 3 2 1 3 2 3

沖縄県 1 1 2 2 1 4 1 3 2 4 2 0 2 2 3 0 2

2013合計 19県 8県 15県 26県 13県 31県 18県 16県 6県 37県 19県 9県 14県 9県 20県 17県 14県2014合計 25県 9県 8県 32県 9県 24県 12県 18県 14県 32県 25県 6県 15県 14県 25県 6県 18県2015合計 26県 11県 6県 27県 9県 33県 16県 12県 12県 34県 17県 5県 11県 12県 22県 8県 12県2016合計 20県 9県 10県 33県 9県 35県 14県 18県 19県 31県 26県 7県 12県 15県 20県 7県 17県2017合計 23県 8県 11県 33県 7県 33県 11県 15県 24県 30県 24県 10県 13県 10県 16県 10県 15県

2013~2017年度 都道府県別 頻出単元出題回数一覧

※同一年度に該当する問題が複数ある場合も1でカウントしています。※2017年度に出題があった場合は、赤い太字で表記しています。

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