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平成 27 年度 途上国森林劣化対策整備事業 平成 28 3

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平成 27 年度

途上国森林劣化対策整備事業

報 告 書

平成 28 年 3 月

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<序 文>

この報告書は、農林水産省林野庁が公募した「途上国森林減少・劣化防止推進事業のうち途上

国森林劣化対策整備事業」の補助金を受け、アジア航測株式会社が実施した平成27年度事業の活

動を取りまとめたものです。

平成27年度事業では昨年度に続きミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」)を対象として活

動を実施しました。ミャンマーの国土は、北は中国チベット自治区に境を接する最高峰カカボラ

ジ(標高5,881m)から南はアンダマン海に面するマレー半島の中ほどまで広がり、その面積は約

68万km2で我が国の1.8倍にもおよびます。FAO(国連食糧農業機関)の資料によれば、1975年時

点ではこの広大なミャンマー全土の6割以上を覆っていた森林が2010年には過半を割り込み、面積

だけでなく質の劣化も進んでいることが報告されています。現在でも年間の森林減少面積は54万

haにも上り、インドシナ諸国の中でも際立った値を示しています。二酸化炭素の排出削減だけで

なく、より広範な環境保全の観点からも森林減少・劣化防止のための支援が求められるところで

す。

ミャンマーでは2011年の民政移管後、民主化への動きが急加速し、先進各国等がこぞって支援

に乗り出しています。森林分野においてはノルウェーの資金援助でUN-REDDプログラムによる

REDD+行動計画が作成されました。また、KFS(韓国森林サービス)やITTO(国際熱帯木材機関)

の支援による複数の活動が進行中で、同国におけるREDD+への期待は大きなものがあります。

そのような中、本事業では国際的にも技術の確立がなされていない森林劣化把握に焦点を当て、

技術開発と人材育成に取り組みました。具体的には、高分解能衛星の画像解析による森林劣化の

モニタリングのための技術手法の検討、小型UAV(無線ラジコンヘリ)を用いた森林劣化に伴う

林分変化状況の詳細把握に関する技術検討、またこれらに関わる技術研修やワークショップの開

催などです。

事業の二年目にあたる平成27年度は、カウンターパート機関である環境保全林業省森林局と協

議し、より多くの森林タイプで検証を行うべくパイロット調査対象地域を追加するとともに、各

種データの収集や現地調査なども協働して進めてきたところです。全面的な協力をいただいた森

林局の関係諸氏に厚く御礼申し上げるとともに、副大臣はじめ同省他部局の方々からのご支援に

も深く感謝いたします。

本事業の実施に際しては、事業運営委員会(座長:天野正博 早稲田大学人間科学学術院教授)

の皆様から多大なご指導・ご助言を賜りました。また、在ミャンマー日本国大使館、JICAミャン

マー事務所の皆様からは現地での諸活動に関する貴重な情報をいただきました。記して深謝いた

します。

私たちアジア航測がミャンマー森林部局への支援活動を行うのは、前補助事業である「森林減

少防止のための途上国取組支援事業」から数えて4ヵ年目となりました。事業を採択いただいた林

野庁森林整備部計画課海外林業協力室に御礼申し上げるとともに、一連の活動がミャンマーにお

けるREDD+の推進ならびに持続的森林管理の一助となることを願うものです。

平成 28 年 3 月

アジア航測株式会社

事業総括責任者 佐野 滝雄

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<REDD+関連用語略語一覧>

用 語 略 語 説 明

AARS Asian Association on Remote Sensing(アジアリモートセンシング協会)

AAS Asia Air survey co., ltd.(アジア航測株式会社)

ACRS Asian Conference on Remote Sensing(アジアリモートセンシング会議)

AFOLU Agriculture, Forestry and Other Land Use(農業、林業および他の土地利用)、

農業分野とLULUCF分野を併せて、すべての土地利用形態を包括的な構

造に統合したもの。

AGB Above Ground Biomass of Dry matter(地上部バイオマス)

ALOS Advanced Land Observing Satellite(陸域観測技術衛星だいち)

ANSAB Asia Network for Sustainable Agriculture and Bioresources

(持続可能な農業および生物資源のためのアジアネットワーク)

AR Augmented Reality、現実世界の物事に対してコンピュータによる情報を

付加すること

AR-CDM Afforestation and Reforestation under CDM(CDMによる新規植林・再植

林)、吸収源CDMとも言う。

ARD Afforestation, Reforestation and Deforestation(新規植林、再植林および森

林減少)

AR4 IPCC Fourth Assessment Report: Climate Change 2007(IPCC第4次評価報告書)

ASFN ASEAN Social Forestry Network(アセアン社会林業ネットワーク)

ASTER GDEM ASTERは、NASAの地球観測衛星Terraに搭載されたセンサー。可視域、

赤外域の計14の波長帯を観測。このうち近赤外域の波長帯でステレオ観

測が可能。これにより全球のDEMを整備し、GDEMと呼称。地上分解能

は30mで、同じく全球で整備されているSRTM(Shuttle Radar Topography

Mission)の地上分解能約90mよりも優れている。

AVNIR2 Advanced Visible and Near Infrared Radiometer II(高性能可視近赤外放射計

2型)、地球観測衛星ALOS(だいち)に搭載されている光学センサー。

可視、近赤外域の計4つの波長帯を観測。直下視の地上分解能10m、観測

幅70km。

BA Basal Area(胸高断面積)

BAU Business-As-Usual(平常どおりの状態、対策を実施しなかった状態)、BAU

シナリオ、BAUケースという使い方をする。

BGB Below Ground Biomass of Dry matter(地下部バイオマス)

C/D Capacity Development(能力開発)

C/P Counter Part(カウンターパート)、国際協力の場において、現地で受け

入れを担当する機関や人物。

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CA Cellular Automata手法、GIS上で動作するシミュレーション手法の一種。

CDM Clean Development Mechanism(クリーン開発メカニズム)

CF Community Forestry(コミュニティ・フォレストリー)、地域共有林、住

民林業、住民森林の意味。Community Forest(コミュニティ・フォレス

ト)とした場合は場所を示す。

CMP The Conference of the Parties serving as the Meeting of the Parties to the

Kyoto Protocol(京都議定書締約国会合としての気候変動枠組条約締約国

会議)、COP/MOPと同義。

CO2 Carbon Dioxide(二酸化炭素)

COP The Conference of the Parties to the UNFCCC(気候変動枠組条約締約国会

議)COP3と標記した場合は、第3回気候変動枠組条約締約国会議

CS Carbon Stock(炭素蓄積量)

DBH Diameter at Breast Height(胸高直径)

DDG Deputy Director General(副局長)

DG Director General(局長)

District 県、ミャンマーの行政区分

Division 管区、ミャンマーの行政区分

DNA Designated National Authorities(指定国家機関)

DR Deputy Ranger(ミャンマー森林局の職名)

DSM Digital Surface Model(数値表層モデル、建物や樹木の高さも含む)

DTM Digital Train Model (数値地形モデル、地盤高、標高)

DZGD Dry Zone Greening Department(乾燥地緑化局)、ミャンマー環境保全林業

省の組織の一つ。

ERDAS/Imagine リモートセンシングソフトウエア(Intergraph社)

EVI Enhanced Vegetation Index(強化型植生指数)

EU European Union(欧州連合)

F/S Feasibility Study(フィージビリティ調査)

FA Forestry Agency(林野庁、日本)

FAO Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)

FCPF Forest Carbon Partnership Facility(森林炭素パートナーシップ基金)

FD Forest Department(ミャンマー森林局)、ミャンマー環境保全林業省の組

織の一つ。

FR Forest Ranger(ミャンマー森林局の職名)

FRA Global Forest Resources Assessment(世界森林資源評価)、FRA2005と標記

した場合は、2005年世界森林資源評価を指す。

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FRI Forest Research Institute, ミャンマー環境保全林業省森林局に属する森林

研究機関

GCP Ground Control Point(地上基準点)

GDP Gross Domestic Product(国内総生産)

GEOSS Global Earth Observation System of Systems(全球地球観測システム)、2003

年エビアンG8サミットにおいて小泉元首相の提唱により開始された地

球観測システム

GHG Greenhouse Gas(温室効果ガス)

GIS Geographical Information System(地理情報システム)

GPS Global Positioning System(全地球測位システム)

IPCC Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)

IRS Indian Remote sensing Satellite(インドリモートセンシング衛星)

インドの国家機関であるインド宇宙研究機関(Indian Space Research

Organisation)により運用されている。1988年に1A号機が打ち上げられ、

現在はIRS-P6が空間分解能23.5mの可視・近赤外データを観測している。

ITTO International Tropical Timber Organization(国際熱帯木材機関)

JAXA Japan Aerospace Exploration Agency(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)

JBIC Japan Bank for International Cooperation(国際協力銀行)、日本政策金融公

庫の国際部門を担当。

JBON Japanese Biodiversity Observation Network(日本生物多様性観測ネットワーク)

JCM/BOCM Joint Crediting Mechanism/Bilateral Offset Credit Mechanism(2国間オフセ

ット・クレジット制度)

JI Joint Implementation(共同実施)

JICA Japan International Cooperation Agency(独立行政法人 国際協力機構)

K Kyat(ミャンマーの通貨単位)

KFS Korea Forest Service(韓国森林サービス、日本の林野庁に準ずる機関)

KML (KMZ) Google Earth、Google マップ、モバイル Google マップなどの Earth ブ

ラウザで、地理データの表示に使用するファイル形式

LAI Leaf Area Index(葉面積指数)植物群落の葉面積を,その群落が占める地

表面積で割った値。密生した植物群落では3~7の値をとる場合が多い。

Landsat 1972年、米国NASA(米国航空宇宙局)が打ち上げた地球観測衛星。現

在まで8機が打ち上げられた。搭載センサーはMSS、TM、ETM、ETM+、

OLS、TIRSと地上分解能、スペクトル分解能などが改良されていった。

回帰日数は3号までが18日、以降は16日。

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LiDAR Light Detection and Ranging、レーザー光線を使用して、地表を高密度で

サンプリングし、極めて精度の高いX、Y、Z計測値を生成する光学リモ

ートセンシング手法。

LULUCF Land Use, Land-Use Change and Forestry

(土地利用、土地利用変化および林業)、IPCCやUNFCCCの議論で用い

られるGHGの排出や吸収源に関するセクター(分野)のひとつ。

M/M Meeting Minutes(協議書)

MMR ミャンマーのISO国コード

M/P Master Plan(マスター・プラン)

MAFF Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries(農林水産省、日本)

MODIS Moderate resolution Imaging Spectroradiometer、アメリカ航空宇宙局

(NASA)によって開発された可視・赤外域の放射計。地球観測衛星

(Earth-Observing-System:EOS)「Terra」(EOS AM)および「Aqua」(EOS

PM)に搭載されている。

MOECAF Ministry of Environmental Conservation and Forestry(ミャンマー環境保全

林業省)

MOP The Meeting of the Parties to the Kyoto Protocol(京都議定書締約国会合)、

ただし、MOP単独では使用せずCOP/MOP(もしくはCMP)と標記する。

COP/MOP1と標記した場合は、第1回京都議定書締約国会合を指す。

MPC Myanmar Peace Center(ミャンマー平和センター)

MRV Measurement, Reporting and Verification(計測、報告、検証)

MTE Myanmar Timber Enterprise(ミャンマー木材公社)、ミャンマー環境保全

林業省の組織の一つ。

N2O Nitrous Oxide(亜酸化窒素)、一酸化二窒素、笑気ガスとも呼ばれる。

NayPyiTaw ミャンマーの首都ネピドー、2006年に旧都ヤンゴンから遷都した。

NDVI Normalized Difference Vegetation Index(正規化差植生指数)

NGO Non-Governmental Organizations(非政府組織)

NFI National Forest Inventory(国家森林資源調査)

NORAD Norwegian Agency for Development Cooperation(ノルウェー開発協力庁)

NTFP Non Timber Forest Product(非木材林産物)

NDVI Normalized Difference Vegetation Index(正規化差植生指数)、植物の活性

度を示す指標。

ODA Official Development Assistance(政府開発援助)

OJT On-the-Job Training(実施訓練)

OH Overstory Height(林分高または、群落高)

PCM Project Cycle Management(プロジェクト・サイクル・マネジメント)

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PES Payment for Ecosystem(生態系サービスへの支払い)

PDM Project Design Matrix(プロジェクト・デザイン・マトリックス)

PRISM Panchromatic Remote-sensing Instrument for Stereo Mapping

(パンクロマチック立体視センサー)、地球観測衛星ALOS(だいち)に

搭載されているステレオ観測が可能な可視域光学センサー。衛星の進行

方向に対して前方視,直下視,後方視の3方向の画像を同時取得。直下視

の地上分解能2.5m、直下視の観測幅70km、3方向視モードの観測幅35km。

PSP Permanent Sample Plot(固定調査プロット)

RapidEye ドイツ航空宇宙センター(German Aerospace Agency)が設計し、RapidEye

社が運用を開始した観測衛星。高頻度観測、高分解能(空間分解能5m)

などの特徴がある。

RECOFTC タイに本拠地を置くコミュニティ・フォレストリーの活動を支援するNGO

Red Edge レッドエッジ。赤色波長端。葉のクロロフィル含有量に敏感な波長帯。

REDD Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing

Countries(発展途上国における森林減少・劣化に由来する温室効果ガス

の排出削減)

REDD+ Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation and the role

of conservation, sustainable management of forests and enhancement of forest

carbon stocks in Developing countries、気候変動枠組条約締結国会合(COP)

で議論されている気候変動の緩和活動のひとつ。森林減少・劣化による

排出削減、森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強の略称

として呼ばれ、REDD+あるいはREDD-plusと表記される。「+」は森林

保全以降の吸収の維持・増加の活動に当たる。

REL Reference Emission Level(排出参照レベル)

RF Reserved Forest、ミャンマーの森林法(Forest Law,1992)により指定され

ている国有林地

RL Reference Level(参照レベル)

RGN Yangon International Airport(ヤンゴン国際空港)、IATAコード表記による

空港コード。

RS Remote Sensing(リモートセンシング、遠隔探査)

SFM Sustainable Forest Management(持続可能な森林管理)

SfM Structure from Motion(3次元形状復元技術)

Shan ミャンマーの東部に位置する行政区画。州都はタウンジー(Taunggyi)

SPOT Satellite Pour l’Observation de la Terre、フランス、ベルギー、スウェーデ

ンにより共同開発された一連の地球観測用人工衛星。

SPOT VEGETATION SPOT衛星(4号、5号)に搭載されている植生観測を目的としたセンサ

ー、地上分解能は1km。

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SRTM Shuttle Radar Topography Mission、スペースシャトル(NASA)に搭載し

た合成開口レーダーにより地球の詳細な数値標高モデルを作製するこ

とを目的とし2000年に実施されたミッション。作成されたモデルそのも

のを指す場合もある。3秒角(約90m)メッシュのSRTM3、30秒角(約

900m)メッシュのSRTM30、およびアメリカ国内を対象とした1秒角(約

30m)メッシュのSRTM1がある。

State 州、ミャンマーの行政区分

TA Training Area(リモートセンシング解析での真値または教師)

Taunggyi ミャンマー・Shan州の州都、タウンジー。

TBA Total Basal Area(胸高断面積合計)

TM,ETM,ETM+ LANDSAT4号以降に搭載された光学センサー。それぞれ略称と英名は

TM:Thematic Mapper、ETM:Enhanced Thematic Mapper、ETM+:Enhanced

Thematic Mapper Plus。可視域および赤外域の計7~8つの波長帯を観測。

地上分解能は、パンクロマチック15m、可視・近赤外・中間赤外30m、

熱赤外120m)、観測幅185km。

TNTmips リモートセンシング・GISソフトウエア(Miroimages社)

Township/TS 郡、ミャンマーの行政区分

UAV Unmanned Aerial Vehicle(無人航空機)

UAS Unmanned Aerial System(無人航空システム)、UAVと同義

UN United Nations(国際連合)

UN-REDD The United Nations Collaborative Programme on REDD(国連REDD計画)、

UNEP、UNDP、FAOによる国連共同計画

UNEP United Nations Environment Programme(国連環境計画)

UNDP United Nations Development Programme(国連開発計画)

UNFCCC United Nations Framework Convention on Climate Change(気候変動枠組条

約、気候変動に関する国際連合枠組条約)

UNESCO United Nations Educational, Scientific, and Cultural Organization(国連教育

科学文化機関)

VCS Verified Carbon Standard

VER Verified Emission Reduction(取引可能なクレジット)

VR Virtual Reality(仮想現実感)、コンピュータにより画像・音声などが人

工的な環境を作り出し、あたかも現実であるかのように感じさせること

Yangon ミャンマーの旧首都で、ヤンゴン管区の州都。旧名称はラングーン(Rangoon)。

WB World Bank(世界銀行)

WDRVI Wide Dynamic Range Vegetation Index(広ダイナミックレンジ植生指数)

WFP World Food Programme(世界食糧計画)

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<調査対象地位置図>

* 赤丸:パイロット調査地域(北から Mandalay 管区 Mogok 、Shan 州 Taunggyi 県 Bago 管区 Yedashe 郡)

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<目 次>

序文 .................................................................................................................................................................. i

REDD+関連用語略語一覧 ......................................................................................................................... ii

調査対象地位置図......................................................................................................................................... viii

写真集.............................................................................................................................................................. ix

目次 .................................................................................................................................................................. xii

1. 事業概要 ................................................................................................................................................ 1-1

1.1. 背景 ............................................................................................................................................. 1-1

1.2. 目的 ............................................................................................................................................. 1-1

1.3. 対象国の選定............................................................................................................................. 1-1

1.4. ミャンマーの概要と森林の現状 ........................................................................................... 1-4

1.5. 実施方針 ..................................................................................................................................... 1-9

1.6. 実施内容 ..................................................................................................................................... 1-10

1.7. パイロット調査対象地域の選定 ........................................................................................... 1-12

2. 衛星データによる森林劣化モニタリングに関する検討 ............................................................ 2-1

2.1. 目的と概要 ................................................................................................................................. 2-1

2.2. 森林劣化の定義 ........................................................................................................................ 2-2

2.3. 森林劣化監視重点地域の抽出 ............................................................................................... 2-2

2.4. 衛星データの整備 .................................................................................................................... 2-7

2.5. 植生指数と林分物理量の関係解析 ....................................................................................... 2-9

2.6. テクスチャーと樹冠径の関係解析 ....................................................................................... 2-15

2.7. まとめと課題............................................................................................................................. 2-19

3. UAVによる森林劣化把握に関する検討.......................................................................................... 3-1

3.1. 目的と概要 ................................................................................................................................. 3-1

3.2. 実施方法と結果 ........................................................................................................................ 3-3

3.3. まとめと課題............................................................................................................................. 3-15

4. 技術移転・人材育成活動 ................................................................................................................... 4-1

4.1. 目的と概要 ................................................................................................................................. 4-1

4.2. 活動内容 ..................................................................................................................................... 4-2

5. 事業のまとめと課題 ........................................................................................................................... 5-1

5.1. 平成27年度の成果のまとめと課題 ....................................................................................... 5-1

5.2. 平成28年度に向けて ................................................................................................................ 5-3

巻末資料

1. 森林調査野帳................................................................................................................................. 1

2. UAV3次元復元成果 .................................................................................................................... 10

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3. 主なミャンマー関係者(面会者)リスト ............................................................................ 21

4. 参考・収集資料 .......................................................................................................................... 22

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1.事業概要

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1-1

1.事業概要

1.1.背景

【REDD+を巡る国際情勢】

REDD は、2007 年気候変動枠組条約 COP13 において途上国における森林減少・劣化の抑制によ

る温室効果ガス排出を削減する仕組みとして、バリ行動計画に位置づけられた。2010 年 COP16

カンクン合意では、REDD+が対象とする 5 つの活動や、3 つのフェーズによる段階的アプローチ、

セーフガード項目等の基本的事項について合意された。その後もさまざまな議論を経て REDD+

は実施フェーズに移行しつつあり、気候変動枠組条約の下で REDD+に取り組むための法的基盤が

構築されてきた。

直近の COP21 では、2020 年以降の枠組みを定めるパリ協定が採択され、REDD+を実施、支援

していくことが明確に位置付けられた。これらの結果を得て、途上国・先進国の双方の取組みを

2020 年以降も長期的な視野で安定的に進める基盤が確立された。

1.2.目的

本事業の目的は「途上国で導入可能な簡素で効率的な森林劣化の把握技術を開発するとともに炭素

蓄積量変化を把握する手法の検討や、研修等を通じた人材育成と技術移転を行い、開発途上国の森林

劣化対策に必要な技術力の向上を支援する」ことである。

林野庁補助事業「森林減少防止のために途上国取組支援事業」(平成21年~平成25年。以下、前補

助事業という)において、衛星画像解析を用いた森林減少の把握については実証的な技術の蓄積

がなされてきたところであり、「森林」・「非森林」の区分等に関する知見の蓄積および普及は

一定の成果を挙げている。

一方、「森林劣化」に関しては、その定義も含めて未整理な部分が多く、ノウハウの確立には

至っていない。しかし、前述したように、REDD+に関する途上国の対応フェーズが進むにつれ、

森林炭素蓄積のMRVについてもより高い精度が求められることになるため、「森林劣化」の把握

技術は次のステップを見据えた支援として重視されるべきものである。

本事業の目指すところは、REDD+に関する途上国の取り組みを「森林劣化対策」に焦点を当

て技術面・人材面から支援することを通じ、相手国の持続的な発展に寄与するとともに、我が国

の気候変動対策に貢献していくことである。

1.3.対象国の選定

本事業の実施対象国は過年度と同様にミャンマー連邦共和国(以下、ミャンマーという)とし、

カウンターパート機関は環境保全林業省の森林局(Forest Department,FD)とする。対象国の選定

理由は次のとおりである。

【選定理由1】事業内容の継続性の観点から

1) 昨年度実施した技術検討から、さらに発展させるべき課題がある。そのためには昨年度

整備した衛星データ、UAVの空中写真撮影によって得られたデータ、森林調査により得

られた情報を活かすことが有効である。対象国を継続してミャンマーとすることにより、

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1-2

すでに得られているデータや情報を活用した技術開発が可能となるため、効率的な事業

の推進が可能になる。

【選定理由2】森林減少・劣化の観点から

1) 2015年9月7日、FAOによりFRA20151が公表された。ミャンマー国内においても、一般紙

(Myanmar Times, 9/11)で取り上げられるなど注目を集めており、ブラジル・インドネ

シアについで、世界ワースト3位の森林減少の激しい国であると問題提起されている。

Myanmar Times紙は原因として、気候変動の影響・自然災害に対する脆弱性もあると指摘

するが、“FAOの見解“として都市化・農地化・資源採掘・社会基盤整備などの森林外

からの圧力が引き起こしているとも述べている。FRA2015では2010~2015年の間に毎年平

均546,000haの森林が失われているとまとめられている。

図1-1 2010-2015 森林減少の大きな国(出典:FRA2015)

【選定理由3】各国ドナーの動き

1) ミャンマーでは2011年の民政移管後、民主化への動きが急加速し、人口規模や豊富な天

然資源などへの期待から「アジア最後のフロンティア」と呼ばれ、我が国を含む先進各

国がこぞって支援に乗り出している。

2) 各国ドナーによる REDD+を支援するプロジェクトを表 1-1 に示した。森林局の REDD+

への期待は大きく、ノルウェーの資金を受けた UN-REDD の支援プログラムにより、2013

年に「Myanmar REDD+ Readiness Roadmap」をとりまとめた。その中には REDD+に関

する主要なプロジェクトとして、ITTO(国際熱帯木材機関)、KFS(韓国)等との協働

と並び、日本からの支援としては唯一、前補助事業に引き続き本事業が挙げられている。

なお、かつて JICAが先鞭を付けた中央乾燥地の植林を現在は韓国の KOICAが支援して

いる。

また現在、表 1-1,No.4 の活動の一環として、FAO からの専門家が森林研究所(Forest

Research Institute)に常駐している。REDD+ロードマップの実施を目指して以下の内容の

実現のための情報収集・分析を行っている。

・国家森林モニタリングシステム

1 Forest Resource Assessment 世界森林資源調査 2015,http://www.fao.org/3/a-i4808e.pdf

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1-3

・森林による参照レベルの確立

・関連した既存データの比較と参照レベル作成への利用可能性の調査

表1-1 ミャンマーにおける主なREDD+支援プロジェクト

No. Projects Partner

1 Climate change mitigating and capacity building for REDD+ activities KFS

2 Capacity building for developing REDD-plus activities in the context of sustainable forest management (3 years project)

ITTO

3 Study on Forest Degradation Monitoring for REDD+ (Technical cooperation, 3 years project)

AAS

4 Targeted support for implementation of REDD+ Roadmap UN-REDD

5 Grassroots Capacity Building for REDD+ Project Activities in Myanmar RECOFTC

6 Improvement of the quality of life ethnic minorities in the Naga area in Myanmar youth participation in REDD+

UNDP

3) ミャンマー政府による One Map Myanmar プロジェクトと呼ばれる新地図作成事業が実

施されている。環境保全林業省・農業省・エネルギー省・電力省などが共同で携わって

いる。国土の 6 割ほどをカバーする RapidEye 衛星データを用い、森林局主導のもと土地

利用ベースの地図作成を行っており、国全体の規模で土地管理計画、土地管理のゾーニ

ングの確立を目的としている。それに対して Centre for Development and Environment(CDE、

スイス)、Swiss Agency for Development and Cooperation(SDC、スイス)が支援を行って

いる。また欧州委員会(European Commission, EC)やベルン大学(スイス)所属の専門

家が衛星画像処理や UAV による空中写真撮影など、技術的な支援を行っている。

以上のようにミャンマーの森林減少・劣化は国内外で問題とされ、各国ドナーの支援活動が活発

化している。本事業を通して実効性の高い支援が継続されることは我が国の国益、国際協力の観

点から重要である。

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1-4

1.4.ミャンマーの概要と森林の現状

1.4.1.ミャンマーの概要

ミャンマーは、北東に中華人民共和国、東にラオス、南東にタイ、西にバングラデシュ、北西

にインドと、5カ国と国境を接している。国の面積は日本の約1.8倍(672,560km2)でインドシナ諸

国最大である。気候的には、沿海部は熱帯モンスーン気候の多雨地域に属するが、内陸部は熱帯

サバンナ気候であり、年間降水量が1,000mmを下回る地域がある。また、シャン州、カチン州や

チン州の山岳地帯では最寒月の平均気温が18度を下回る地域があり、温暖冬期少雨気候に分類さ

れる。国内にはこのように多様な気候が存在している。

図1-2 ミャンマーの位置図と管区・州

人口は約5,900万人で毎年1%程度の割合で増加している。ただし、ミャンマー移民・人口省が2014

年8月に発表した国勢調査の暫定結果によると、総人口は約5141万人で国際機関などの従来推計よ

り約800万人少ない水準だった。また、識字率は91.7%と高い。多民族国家であり人口の6割を占め

るビルマ族の他、カレン族、カチン族、シャン族など多数の少数民族がいる。行政区分は7つの州

と7つの管区に分かれている。管区は主にビルマ族が多く居住する地域の行政区分であり、州はビ

ルマ族以外の少数民族が多く居住する地域となっている。

地図引用:開発途上国の森林林業(ミャンマー)JOFCA

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1-5

国際連合によるとミャンマーは後発開発途上国に分類され、一人当たりの所得水準はインドシ

ナ諸国で最低と見られているが、近年の実質経済成長率は10%前後の高い伸び率を示している。

主要な輸出物はチーク材、天然ガスで、亜鉛、銅、鉛、スズ、ニッケルのほか、レアメタルのタ

ングステンなども産出している。

一方、政治面では1962年から軍事政権が続いていたが、2011年軍政から民政への転換を果たし、

テイン・セイン大統領が就任した。2012年4月に行われた議会補欠選挙では、アウンサン・スー・

チー氏率いる国民民主連盟(National League for Democracy, NLD)が大勝した。さらに2015年11

月、総選挙が行われ、NLDは上下両院(定数計664議席)のうち364議席を確保し、単独政権樹立

が可能となった。2016年3月にはNLDから立候補したティン・チョー氏が大統領として選出され、

1962年のクーデター以来初の文民大統領となった。こうした社会状況の変化に呼応して、ミャン

マー政府は外国の支援を積極的に活用し森林保全やREDD+に関する取り組みを強化していく方

向にある。

なお、2006年ミャンマーの首都はヤンゴン(旧名ラングーン)からネピドーに移された。現在、

ほとんどの省庁・政府機関はネピドーに集まり行政機構が機能している。一方、ヤンゴンは首都

移転以降もミャンマー経済の中心地として栄えている。

1.4.2.ミャンマーの森林政策

ミャンマーでは2001年に今後30年の森林マスタープランを策定している。同プランでは、森林

局が主導して、2030年までに、現在国土面積の0.06%であるコミュニティ・フォレストリーによる

森林管理面積を1%まで増加させ、森林減少率を低減する計画となっている。

なお、ミャンマーの森林政策は、1902年に発令し1992年刷新された森林法が基本である(表1-2)。

表1-2 ミャンマーの森林関連法等一覧

2011年9月に林業省は環境保全林業省に名称を改め、省内に環境保全局を設立した。同省の組織

は、2014年時点で図1-3のとおりである。2013年1月、土地調査部(Land Survey Department)が農

業灌漑省から異動して、環境保全林業省傘下になった。10年ほど前まで土地調査部は林業省に所

属しており、元の省傘下に戻った形である。

1) Forest law (1992)

2) Protection of wildlife and wild plants and conservation of natural areas law (1994)

3) Myanmar Forest Policy (1995)

4) Rules of Forest Law (1995)

5) Community forestry instructions (1995)

6) National forestry action plan (1995)

7) Format and guidelines for district forest management plans (1996)

8) Myanmar Agenda 21 (1997)

9) National code of forest harvesting practices in Myanmar (2000)

10) Forestry Master Plan for 2001-2031(2001)

11) National Sustainable Development Strategy (2009)

12) National Biodiversity Strategy and Action Plan (2011)

13) Environmental Law (2012)

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1-6

図1-3 環境保全林業省の組織および職員数(2014年時点)

図 1-4 森林局の組織図(2014 年時点)

1.4.3.ミャンマーの森林と減少・劣化の現状

ミャンマーの森林タイプは高地常緑林、常緑林、混交落葉林、乾燥林、落葉フタバガキ科林、

海岸・湿地林の6つに大分類される(図1-5参照)。なかでも混交落葉林が全森林の約39%を占めて

いる。主要材であるチークは、混交落葉林で生育するが、経済的に価値の高い種は湿性高地混交

落葉林に生育する。チーク天然林は全世界で19百万ha存在する。

Planning & Statistics

Dept. (147)

Ministry of Environmental Conservation and Forestry

(MOECAF)

Forest Dept.

(15,429)

Dry Zone Greening

Dept. (3,231)

Myanmar Timber

Enterprise (46,411)

Environmental Conservation Dept.

(403)

Survey Dept.

(1,485)

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1-7

図1-5 ミャンマーの森林タイプ

出典:ミャンマー森林局

Hill and Temperate Forest

Mixed Deciduous Forest

Beach and Dune Forest

Swamp Forest

Tropical Evergreen Forest

Indaing Forest

Dry Forest

Tidal Forest

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1-8

FRA2015では、過去に森林局が調査した森林面積等の情報から推定を行い、1990年から10また

は5年おきに森林面積の推移を発表している。森林のカテゴリは一括して集計された森林面積のみ

が報告されている。森林面積の推移を表1-3に示す。減少の一途をたどっていることが分かる。

表1-3 FRA2015によるミャンマーの森林面積の推移(単位 1000ha)

1990年 2000年 2005年 2010年 2015年

森林面積 39,218 34,868 33,321 31,773 29,041

森林被覆率 58.0% 51.2% 49.2% 47.0% 43.0%

この森林面積推移の元となった面積値は、森林局が空中写真、衛星データ等を用いて調査した

数値である。表1-4にFRA2015の元データとなった森林局による森林面積を示す。

表1-4 森林局による森林面積の推移(単位 1000ha)

Year

Class 1975 1989 1997 1998 2006 2010

Closed Forest 30,322.00 31,553.80 25,293.90 25,516.60 17,468.58 15,305.71

Open Forest 10,873.60 8,131.10 10,080.80 9,970.50 15,542.56 15,166.82

Other wooded Land 8,876.00 10,178.00 11,919.30 10,547.00 19,949.16 14,524.48

Other Land 17,586.80 17,792.90 20,363.80 21,623.80 14,697.61 22,662.37

Total Forest Area 41,195.60 39,684.90 35,374.70 35,487.10 33,011.14 30,472.53

Total Area 67,658.40 67,655.80 67,567.90 67,657.90 67,657.90 67,659.38

表1-4より、森林面積の推移を森林全体と区分ごとに図1-6のグラフに示す。ここで、森林の区分

は閉鎖林(Closed Forest、樹高5m以上の樹木による樹冠被覆率40%以上の森林)、疎林(Open Forest、

樹高5m以上の樹木による樹冠被覆率10%以上40%未満の森林)の二区分となっており、森林局も

FAOも同じくこの森林区分を採用している。

図1-6より、森林全体の面積は1975年と最新の2010年の間で、ほぼ減少を続けており、3/4ほどの

面積に変化していることが分かる。

また、森林内の区分については、炭素蓄積量の多い閉鎖林が減少し、蓄積量の少ない疎林が増

加している。以上より森林減少(森林全体の面積が減少)、森林劣化(炭素蓄積量の多い閉鎖林

が減少し、蓄積量の少ない疎林が増加)ともに進行している状況である。

図1-6 ミャンマーの森林面積の推移

0.00

10,000.00

20,000.00

30,000.00

40,000.00

50,000.00

1975 1985 1995 2005 2015

ミャンマーの森林面積の推移

Total ForestArea

ClosedForest

Open Forest

面積(1000ha)

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1-9

表1-5にミャンマーにおける森林減少・劣化の主要原因を示す2。特定プロジェクト(ダウェイ経

済特区開発、中国へのパイプライン建設ほか)による開発、軍の基地等利用のための接収、地下

資源採掘、チーク・ゴム・オイルパームなどのプランテーション、農地化や宅地化、ダム建設な

どが森林減少・劣化の主なドライバーとして挙げられている。

表 1-5 ミャンマーにおける森林減少劣化の直接原因

1.5.実施方針

当社は平成 26 年度「途上国森林劣化対策整備事業」をミャンマーで実施しており、この事業に

おいて蓄積したミャンマーの情報および事業成果、また周辺国で実施してきた森林・REDD+に関

する他事業でのノウハウを活用しつつ、本事業を進めた。

また、カウンターパート機関である森林局のREDD+に対する取り組み状況への考慮も重要で

ある。森林局は、UN-REDDなどの支援を受けて、2014年にMyanmar REDD+ Readiness Roadmapを

作成した。このRoadmapは、ミャンマーにおけるREDD+の実施に向けて現況と将来の計画を示し

たもので、表1-6に示す6つのコンポーネントから構成されている。

コンポーネント5、6については、当社の活動も「国家森林REL/RLの開発」の章の中で国家計画

の一部として期待されている旨の記述がある。技術的内容としては「国家森林REL/RLの確立」、

「国家規模の歴史的土地利用変化解析」、「パイロット調査地での国家森林REL/RLの試行」の三

項目が対象とされている。

こうした森林局の要望も考慮しながら、本事業の内容を策定した。

2 http://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/cdm/pdf/report_myanmar.pdf

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1-10

表1-6 Myanmar REDD+ Readiness Roadmapのコンポーネント

Roadmap のコンポーネント 概要

1 REDD+レディネスの推進 関連行政機関、利害関係組織、TWG(Technical Working Group)の整理と課題について

2 利害関係者との協議と参加 政府機関、地域住民、共同体、企業、NGO などの広範な連携の実現について

3 REDD+戦略の選択と推進 森林減少・劣化・森林管理の現況と REDD+戦略のオプションについて

4 実施フレームワークとセーフガード 国家レベルのセーフガードシステムの開発について

5 国家森林参照排出レベル(REL) 排出レベル(RL)の開発

REL/RL 開発に向けての過去、将来の取組について

6 国家森林モニタリングシステムの開発 衛星土地モニタリングシステム、国家森林資源調査、温室効果ガス調査について

1.6.実施内容

1.6.1.事業全体内容と計画

3ヶ年の事業実施を通して、ミャンマー全土のスケールで森林劣化を把握する手法の技術指針を

開発し、国家森林モニタリングシステムの構築およびMyanmar REDD+ Readiness Roadmapの推進に

貢献することを目指す。

平成27年度の実施内容を以下に示す。

<平成27年度の事業内容>

年次テーマ:森林劣化把握のための技術開発

1) 調査対象地の追加

二時点の森林分布図から森林変化を解析し、その情報をもとに森林調査地点を追加し

た。

2) 高分解能衛星データによる森林劣化把握のための技術検討

RapidEye データによる植生指数と林分物理量との関係解析を行い、課題を整理した。

また植生指数を補うデータとしてテクスチャーによる手法を検討した。

3) UAVによる森林劣化状況把握のための技術検討

UAVによる空中写真撮影を行い、林分物理量など森林の現況把握のための技術検討を

行った。

4) 技術移転と人材育成

技術移転・人材育成活動として技術研修、OJT、本邦研修、ワークショップを行った。

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1.6.2. 事業運営委員会の設置

本事業の実施内容、事業で取り組む課題、新しい開発技術等について検討し、方向性を決定す

るために「森林劣化整備対策事業運営委員会」(以下運営委員会という)を設置した。運営委員

会の構成は、地球温暖化対策やREDD+制度設計、森林リモートセンシングなど当該分野で活躍し

ている専門家をメンバーとした(表1-8)。

表1-7 検討委員会の委員(敬称略、50音順)

分野 氏 名 所 属 等

REDD+制度設計 天野 正博 早稲田大学 人間科学学術院 教授

地球温暖化対策 安藤 和哉 (一社)海外林業コンサルタンツ協会 総務部長

熱帯林保全活動 金澤 弘行 (公財)国際緑化推進センター 専務理事

熱帯林植生・資源 佐藤 保 (独)森林総合研究所 森林植生研究領域 植生管理研究室長

森林リモートセンシング 露木 聡 東京大学 農学国際専攻 准教授

社会経済・地域研究 百村 帝彦 九州大学 熱帯農学研究センター大学院 准教授

森林モニタリング技術 平田 泰雅 (独)森林総合研究所 温暖化対応推進拠点 温暖化対応推進室長

1.6.3. 平成27年度の活動内容

平成27年度は、森林局と協議のうえ、対象地の選定を行うとともに森林劣化観測に向け把握す

るためのデータを収集し、解析した。また、技術移転・人材育成のための研修、ワークショップ

等を実施した(表1-8)。

表1-8 平成27年度の実施内容

No 実施項目 方法 時期

1 調査対象地の検討・設定 森林変化図作成、森林局との協議 2015 年 5-7 月

2 高分解能衛星データの収集解析 RapidEye データの取得および解析 2015 年 7-12 月

3 現地調査 対象地の森林計測、炭素量推定、 UAV空中写真撮影

2015 年 11-12 月

4 森林劣化把握技術の検討 RapidEye、UAV、森林調査結果との相関解析

2015 年 11 - 2016 年 2 月

5 技術移転・人材育成 技術研修(2015 年 9 月)、本邦研修(2015 年 10 月) ワークショップ(2016 年 1 月)

6 委員会の開催 2015 年 7 月、2016 年 1 月、3 月

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1-12

1.7. パイロット調査対象地域の選定

本事業のパイロット調査対象地域は、シャン州タウンジー県インレー湖流域、バゴー管区イェ

ダシー地区、マンダレー管区モゴー地区の3か所とした。

シャン州タウンジー県は、前補助事業で蓄積した森林調査データなどの既存資料が豊富であり、

森林のモニタリングおよび高分解能衛星などの解析結果の精度検証にこれらの既存資料を活用す

ることができる。また、森林が比較的残っている地域の中では相対的に治安が良く、空路・陸路

によるアクセスも良好である。

バゴー管区イェダシー地区は、チークの植林地域であり、間伐等の森林施業が定期的におこな

われている。間伐などの森林施業の前後を比較することで林分状況の変化を追うことが出来る。

この地域は首都ネピドーからのアクセスも良く、治安状況も良好である。

マンダレー管区モゴー地区は、森林変化図によれば、周辺地域に比べて森林劣化が多く発生し

ている地域であるため、追加調査対象地域として設定した。調査対象地の位置図を図1-7に示す。

図1-7 調査対象地の位置図

シャン州南タウンジー県

バゴー管区イェダシー地区

マンダレー管区モゴー地区

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2.衛星データによる森林劣化モニタリングに

関する検討

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2-1

2. 衛星データによる森林劣化モニタリングに関する検討

2.1.目的と概要

本事業は、衛星データ、UAVによる空中写真撮影データにより得られた情報から、効率的かつ

簡便な森林劣化把握を行うための技術開発を行うことを目的とする。そのためリモートセンシン

グ技術を基本として森林劣化による炭素蓄積量変化を把握する技術の開発を行う。またその目的

ための現実的な手法を組み合わせた運用シナリオを確立するため、手法の試行と検討、改善を実

施する。森林劣化モニタリングに関するシナリオを図2-1に示す。

図2-1森林劣化モニタリングシナリオ

森林劣化にともなう炭素蓄積の変化を把握するためには、まず森林劣化地点を抽出し、対象地

域を絞り込む必要がある。次に炭素蓄積量を把握する手法を確立して、多時点のデータに適用す

ることにより炭素蓄積量の変化を求める必要がある。本年度の活動は、炭素蓄積量を把握する手

法の確立のための技術的検討と課題の整理である。本項の衛星データ解析は以下の二項目にあた

る。

① 森林劣化監視重点地域の抽出

② 森林劣化箇所の炭素蓄積量推定のための技術開発

上記①は、ミャンマー森林局の作成した2時点の森林分布図(Landsatによる2006年森林分布図、

IRSによる2010年森林分布図)を用いた。

炭素蓄積量推定モデルを作成するための基礎情報を整理するため、②は植生指数およびテクスチ

ャー値と林分物理量との関係解析を進めた。

① 森林劣化監視重点地域の抽出

使用データ:森林分布図

2 時点の森林分布図より、森林区分の変化地を抽出する

③劣化箇所の確認と林分現況把握

使用データ:UAV、現地調査

UAV 空撮と森林調査により、森林劣化箇所の確認と詳細な

現況把握(林分物理量)を把握する。

②劣化箇所の炭素蓄積量推定

使用データ:RapidEye

RapidEye データによる植生指数とテクスチャー値を用い

た炭素蓄積量推定モデルにより、推定を行う

衛星データ解析

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2-2

2.2.森林劣化の定義

事業を進めるにあたり、森林劣化の定義を整理した。森林減少は、森林が他の土地被覆に変化

することであり、衛星データによって把握しやすいが、森林劣化は、森林としての区分や質・量

が変わる事象であり、把握することは森林減少より困難である。

森林減少については、マラケシュ合意(COP7)において「森林から非森林への直接の人為的転

換」と定義され、国際的に合意されている(2001)。一方、森林劣化については、FAO、ITTOな

どによりいくつかの定義が示されているが、国際的合意には至っていない。

FAO FRA2000によると、森林劣化とは「森林の生産物や生態系サービスを提供する能力を低下

させる、森林の構造もしくは機能に悪影響を及ぼす変化」と定義されている。ITTOは「森林劣化

とは樹冠被覆の減少などに特徴づけられる、人為により直接引き起こされる森林の価値(特に炭

素)の喪失」と定義している(2005)。IPCCでは「人為活動により直接引き起こされる、長期に

わたる森林の炭素蓄積量の減少」と定義している(2003)1。また「森林劣化とは統計上の森林面

積は減らず森林の質が劣化すること」とする定義もある2。

こうした複数の定義から、森林劣化には以下の二つの側面が含まれていることが分かる。

・ 質的森林劣化 : 森林の構造や機能の劣化

・ 量的森林劣化 : 樹冠被覆・炭素蓄積量・バイオマスなど量的な因子の減少

本事業では、森林劣化とは「森林における炭素蓄積量の低下(ストックチェンジ)」と定義す

る。この定義に基づいて、衛星データや空中写真により観測可能な量的森林劣化をモニタリング

する技術を開発する。なお質的森林劣化は定性的であり、衛星データ等による計測は困難である

ため、本事業では対象としない。

2.3.森林劣化監視重点地域の抽出

森林劣化を把握する手法として、森林カテゴリの変化による手法がある。ミャンマーの例では、

樹冠疎密度が減少し閉鎖林から疎林になった場合が森林劣化に該当する。前補助事業では、SPOT

VEGETATIONデータを用いて、森林カテゴリ変化(閉鎖林 → 疎林)による森林劣化把握を行っ

た。しかし、空間分解能が1kmと粗いデータであるため、国全体としての大まかな傾向を示すも

のでしかない。森林局も、多時点森林分布図を用いて、カテゴリの変化による森林変化解析を行

っている。しかし森林減少における検討はなされているが、森林劣化についての検討は行われて

いない。そのため本事業では、森林局が作成したLandsatによる森林分布図(2006)とIRSによる

森林分布図(2010)の詳細な重ね合わせを行い、森林劣化を含めた森林変化情報を作成した。こ

れをもとに森林劣化監視重点地域を設定した。

2.3.1. 森林変化図の作成

森林局はミャンマー全土の森林分布図をLandsatデータ等より作成している。しかし、組織改編

その他国内事情により、デジタルデータとして利用可能な状態にあるのはLandsatによる森林分布

図(2006年)と、IRSによる森林分布図(2010年)となっている(図2-2)。本事業ではこの2時点

の森林分布図を使用した。

2006 年、2010 年の 2 時点の森林分布図はいくつかの相違点がある。ソースとなる衛星データが

異なっているため、2006 年版は 30m の空間分解能であり、2010 年版は 20m となっている。また

1http://www.fao.org/docrep/009/j9345e/j9345e08.htm 2http://www.foejapan.org/forest/sink/redd_01.html

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2-3

座標系については 2006 年版が UTM 座標系 47 ゾーンであるのに対して、2010 年版は緯度経度座

標系(WGS84)である。そのため 2時点間の位置のずれが大きい。北部のカチン州では 1.2km ほ

どの位置のずれがあり、国土中央に近いヤンゴンでは 2km程度、南部のタニンダーリ管区では 4km

ほどの位置ずれが確認された。空間分解能や投影法の異なるソースから作成されたデータを重ね

合わせると、このような位置のずれの補正は大きな課題となる。本事業では、より分解能の粗い

2006 年版(Landsat ベース、30m 分解能)に重ね合わせる形で、2010 年版(IRSベース、20m 分

解能)の空間分解能と投影法を修正するためリサンプル処理を行った。

各時点の森林分布図を閉鎖林、疎林、非森林の 3 区分に再区分し、2 時点での組み合わせから、

画素ごとの森林変化の判定を行った。森林変化パターンを表 2-1、変化図を図 2-2 に示す。この情

報を基に、Landsat データやGoogle earth などの画像情報を参照して森林劣化内容を検討した。

表 2-1 森林変化パターン

図 2-2 森林変化図(2006-2010)

変化パターン 凡例 森林の変化状況(2006 年→2010 年)

森林:変化なし 2 時点とも閉鎖林または疎林

森林:成長 疎林→閉鎖林

森林劣化 閉鎖林→疎林

森林減少(1) 閉鎖林→非森林

森林減少(2) 疎林→非森林

その他 上記以外

森林分布図2006

Landsat ベース

空間分解能 30m

森林分布図2010

IRS ベース

空間分解能 20m

森林変化図

(2006→2010)

変化解析

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2-4

2.3.2.森林変化内容の検討

森林変化図と Landsat 画像(2000、2013~2014 年)、Google earth を用い、森林変化の内容の検

討を行った。

(1)北部

北部のザガイン管区、カチン州では、地下資源開発による森林減少と、その周辺で森林劣化が

起きている状況が確認された。また移動耕作による疎林の農地化が確認された(図 2-3)。

図 2-3 北部の変化内容

(2)中部西側

中部西側のチン州・ザガイン管区南部・マンダレー管区・マグウェ管区では、移動耕作の影響

で森林減少、森林劣化が起きていることが確認された。しかし森林分布図の元になっている衛星

データについて、2 時点間で落葉状態が異なっている結果、森林劣化が起きたという誤った結果

になっている可能性がある(図 2-4)。

図 2-4 南部西側の変化内容

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2-5

(3)中部東側

中部東側のシャン州では、中央部の森林減少(疎林から非森林)と劣化、西部の森林減少(閉

鎖林から非森林)は大規模な農地化であることが確認された(図2-5)。

図 2-5 北部東側の変化内容

(4)中部南側

中部南側のラカイン州、エーヤワディ管区の森林劣化は移動耕作の影響と考えられる。ラカイ

ン州の森林減少は農地化またはプランテーション造成によるものと考えられる(図2-6)。

図 2-6 中部南側の変化内容

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2-6

(5)南部

南部のタニンダーリ管区・北東部の森林減少は落葉に起因する誤抽出の影響と考えられる。南

部の森林減少はプランテーション造成または落葉に起因するものと考えられる。

図 2-7 南部の変化内容

2.3.3.森林劣化監視重点地域の抽出

森林変化図を元に、森林劣化監視重点地区を抽出した(図2-8)。閉鎖林が残っているが、その

周辺で森林減少・劣化が進んでいると考えられる地域であり、原因等未確定の地域も含んでいる。

図 2-8 森林劣化監視重点地域

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2-7

2.3.3.パイロット調査対象地の追加

本年度のパイロット調査対象地は、昨年度の対象地域であるシャン州タウンジー郡、バゴー管

区イェダシー地区に加え、マンダレー管区モゴー地区とした。モゴー地区は森林劣化監視重点地

域でもある。図2-9にモゴー近郊の森林変化図を示す。

モゴー地区は周囲をシャン州と接している。隣接するシャン州では広く森林減少が進んでいる

のに対し、モゴー地区は森林劣化と変化のない森林が主である。森林劣化が進んでいるが閉鎖林

も現存している地域なので、本事業のパイロット調査地点にも適した地域である。

図 2-9 モゴー地区の森林変化

2.4.衛星データの整備

2.4.1.衛星データの収集

RapidEyeデータの収集・整備を行った。RapidEyeデータは本年度のパイロット調査対象地域で

あるシャン州タウンジー郡・カロー地区、バゴー管区イェダシー地区、マンダレー管区モゴー地

区を中心に、前補助事業、前年度の森林調査地点を含むシーンを選択し、昨年度整備したデータ

セットに加えた。

衛星データを用いて森林解析をする際、目的に応じた適切な季節の画像を選択することが重要

である。森林分布を正確に把握するには、落葉前の乾季初旬のデータが適している。また落葉林・

常緑林を区分するためには、落葉前の時期(乾季初旬)と落葉している時期の比較が必要となる。

そのため高頻度観測されたRapidEyeデータは有効である。

整備したRapidEyeデータの一覧を表2-2に、データの位置を図2-10に示す。

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2-8

表 2-2 整備した RapidEye データ(昨年度整備分含む)

<Area> <Tile ID> <Observed Data>

Shan:Taunggyi

4748506 2012/11/7 4748506 2012/2/29 4748606 2014/12/9 4748706 2014/10/8

Shan:Heho 4748605 2013/10/16 4748605 2015/11/25

Shan:Kalaw

4748804 2014/12/11 4748404 2014/11/12 4748504 2014/11/12 4748604 2014/11/12

NayPyiTaw 4748203 2014/10/28

Bago:Yedashe

4747902, 4748002 2009/12/26 4747902, 4748002 2011/3/5 4747902, 4748002 2011/11/25 4747902, 4748002 2012/10/25 4747902, 4748002 2014/2/4 4747902, 4748002 2014/10/28

4748002 2015/1/10

Mandalay:Mogok

4749602 2012/11/12 4749602 2014/12/29 4749603 2012/11/12 4749603 2014/10/25 4749604 2011/02/06 4749604 2014/10/25 4749704 2012/12/31 4749704 2014/12/29

図2-10収集したRapidEye画像の位置(14シーン)

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2-9

2.4.2.前処理

RapidEyeデータは、レベル3A(ラジオメトリック補正3、センサー補正、幾何補正後のオルソ画

像)を購入した。全データに対して、放射輝度値への変換を行った後、全バンドのパスラジアン

ス補正4を行った。

放射輝度への変換は次式による。

RAD( i)= DN(i) * Radiometric Scale Factor(i)

i : バンドの番号

RAD(i) : 当該画素のセンサー放射輝度値

DN(i) : 当該画素のデジタル値

Radiometric Scale Factor(i): ラジオメトリック係数(0.01固定)

2.5.植生指数と林分物理量の関係解析

昨年度は、もっとも植生に関係した数値が得られる植生指数に着目し、森林調査から得られた

林分物理量との相関解析を行った。その結果、NDVI、WDRVIと胸高断面積合計、炭素蓄積量、

樹高、胸高直径との間に0.7~0.6程度の高い決定係数が示された。しかし地点数が12点と多くはな

いため、本年度はさらに調査地点を増やし、林分物理量と植生指数との関係分析、問題点の再検

討を行った。

2.5.1. 植生指数の検討

地表の被覆物は太陽光を反射し、衛星はその反射光を観測する。各々の被覆物は反射光の波長

帯(バンド)において特徴的な反射を示す。植生は近赤外域と可視光域で大きな反射率の差を示

し、一方で土壌のような地表面ではそれらの波長帯での反射率の差が比較的小さい。NDVI

(Normalized Difference Vegetation Index,正規化差植生指数)などの植生指数は、この事象を利用し

て、植生の分布や活性度などの分析に利用されている。NDVIは、人工衛星による地表観測が開始

された当初から、提案・利用されてきた植生指数であり、これまで最も一般的な植生指数であっ

た。しかし近年、NDVIの短所が指摘されるとともに、改良型の植生指数が提案されてきた。

NDVIの欠点のひとつは、観測地点の植生量が多くなるとNDVI値が飽和してしまうことである。

一般に、LAI(Leaf Area Index,葉面積指数)5が2を超えるとNDVIは飽和してしまい、それ以上の

植生の変化は検知できないと言われている。近赤外バンドの反射値はLAIが2を超えても増加し続

けるが、赤バンドの反射値は増加が止まってしまうことが原因である。この問題点を改善するた

めに開発された植生指数にEVI(Enhanced Vegetation Index, 強化型植生指数)、WDRVI(Wide

Dynamic Rage Vegetation Index, 広ダイナミックレンジ植生指数)などがあり、ともにNDVIでは飽

和してしまう高いLAIの土地被覆に対しても感度が高いと報告されている6。

WDRVIは、NDVIの式に類似しているが、近赤外バンドの値に0.1~0.2の係数を掛けることによ

り算出され、LAIに対する近赤外バンドと赤バンドの反射率の関係を補正するため、広いダイナミ

ックレンジを持つことが特徴である。

3 CCD 感度補正、方向性反射補正、その他初期補正 4 画素値から霞による散乱成分の値を減算する 5 植物群落の葉面積をその群落が占める地表面積で割った値 6 巻末参考・収集資料[60][76]参照

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2-10

以下に各植生指数の計算式を示す。

※ NIR:近赤外線バンド Red:赤バンド Red Edge:レッドエッジバンド7

2.5.2. 植生指数と林分物理量の相関解析

林分物理量と植生指数の関係を把握するため、過年度および本年度行った森林調査の結果と植

生指数との相関解析を行った。林分物理量は、森林調査から得られた林分のhaあたり本数、上層

木平均樹高、平均胸高直径、胸高断面積合計、炭素蓄積量(tC/ha)、樹冠疎密度の6種類を用いた。

炭素蓄積量の算定には、IPCCの「Good Practice Guidance for Land Use and Land Use Change

Forestry」に記載されている熱帯林全般に適用可能なアロメトリー式を使用した(表2-3)。表2-4

に植生指数との相関解析に用いた林分物理量を示す。

表2-3バイオマス量および炭素蓄積量算出アロメトリー式

7赤と近赤外の間に位置する観測波長帯。植物の状態に敏感に反応する。

NDVI = (NIR - Red) / (NIR + Red) WDRVI = (αNIR - Red) / (αNIR + Red) ※0.1<=α<=0.2

Red Edge NDVI = (NIR - Red edge) / (NIR + Red edge)

[Forest type: Tropical moist hardwoods] ・ Ya = exp[–2.289 + 2.649 • ln (DBH) - 0.021 • (ln(DBH))2] ...................(1) Table 4.A.1

Ya: Above ground Biomass (kg dry matter / tree)

・ BBD = exp[–1.0587 + 0.8836 • ln(ABD)]...................................... (2) Table 4.A.4

BBD: Below ground Biomass (t dry matter / ha) ABD: Above ground Biomass (t dry matter / ha)

・ C = B × 0.47

B: ABD+BBD Living Biomass (t dry matter / ha) C: Living Biomass Carbon (t C / ha) 0.47: Carbon Fraction (kg C / kg d.m.)

Source: IPCC Good Practice Guidance for LULUCF p.4.114-116

Brown & Schroeder et al., 1999, Caims et al., 1997

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2-11

表 2-4 植生指数との相関解析に用いた森林調査結果

解析に使用した植生指数はNDVI、RE-NDVI、WDRVI(α=0.1)、WDRVI(α=0.2)の4パター

ンである。これらの植生指数について植生指数統計値(林分の一定範囲の複数画素における最大

値・平均値・標準偏差)と林分物理量の決定係数を求め、相関関係を解析した。昨年度は最小値

も検討対象としたが、相関関係が認められなかったため本年度は除外した。

調査地点のうち、衛星画像で雲の影がとなっている地点や極端な急傾斜により影となっている

地点、林床が沼地になっている地点は相関解析の対象から除いた。また疎林のサンプルとして調

査した地点は、現地で確認するとアグロフォレストリ(コーヒー、紅茶の栽培)が行われていた

ため除外した。マツ、人工林も除外し、混交落葉林・落葉フタバガキ林・常緑林の15地点を用い

て相関解析を行った。

4つの植生指数の統計値(林分内の複数画素における最大値・平均値・標準偏差)と6つの林分

物理量の決定係数を表2-5(NDVI、RE-NDVI)、表2-6(WDRVI、α=0.1と0.2)にまとめた。植生

指数の統計値を求める空間範囲(フィルターサイズ)については、対象となる位置の画素を中心

に、5x5画素(25m四方)、11x11画素(55m四方)、21x21画素(105m四方)の3パターンの条件

で統計値を求め、比較した。

表2-5、2-6より、NDVI、WDRVI(α=0.1および0.2)の最大値と胸高断面積合計がすべての空間

範囲において、0.7を超える高い決定係数を示した。特にWDRVI(α=0.1)11x11画素の最大値およ

びWDRVI(α=0.2)11x11画素の最大値と胸高断面積合計の関係では、0.8以上と非常に高い決定係

数を示した。また、表2-6より、WDRVI(α=0.1)の最大値は、すべての空間範囲(5x5、11x11、

21x21画素)のパターンにおいて、樹高、胸高直径、胸高断面積合計、炭素蓄積量と高い決定係数

(0.699~0.817)を示した。RE-NDVIと林分物理量との間には、高い決定係数は見られなかった。

Point No.

Inventory Date

Division /State

District/ /Township

/City

Forest type

Plot ID No. of trees

(No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm)

Total Basal Area

(㎡/ha)

Carbon (tC/ha)

Canopy Density

(%)

P01 2014-02 Shan Nyaung Shwe

Closed forest

FSP8a 3,039 5.7 6.2 9.5 22.5 45.0

P02 2014-02 Shan Taunggy i Closed forest SH02 276 33.2 40.1 62.1 587.5 80.0

P03 2014-02 Shan Taunggy i Closed forest FSP15 905 18.2 17.7 29.1 146.5 50.0

P04 2014-02 Shan Taunggy i Closed forest FSP17 703 22.9 29.0 54.1 303.9 90.0

P05 2014-02 Shan Taunggy i Closed forest OP9 1,675 10.6 14.9 30.7 120.1 70.0

P06 2014-12 NayPy iTaw Pinmana Closed forest

PM01 349 27.5 36.5 56.4 427.0 70.0

P07 2014-02 Shan Tigit Closed forest

FSP01 748 18.4 22.6 39.4 214.7 70.0

P08 2014-02 Shan Pin laung Closed forest

FSP03 616 17.6 17.3 23.5 131.8 50.0

P09 2014-02 Shan Pin laung Closed forest

FSP03a 418 18.2 25.8 27.9 155.9 50.0

P10 2013-01 Shan Kalaw Closed forest

CL1 1,900 5.7 9.5 15.0 48.9 60.0

P11 2013-02 Shan Nyan Shwe Closed forest

CL8 2,325 6.7 7.9 13.8 44.6 70.0

P12 2014-02 Shan Taunggy i Closed forest FSP12 1,853 13.2 11.4 24.7 103.8 70.0

P13 2015-11 Mandalay Mogok Closed forest PT-10 2,095 9.9 8.6 13.1 38.3 70.0

P14 2015-11 Mandalay Mogok Closed forest RE-05 1,571 12.6 13.0 23.4 87.3 60.0

P15 2015-11 Mandalay Mogok Closed forest PT18-01 1,521 10.4 9.3 11.2 33.8 60.0

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2-12

表 2-5 林分物理量と NDVI、 RE-NDVI の決定係数

■決定係数0.7以上 ■決定係数0.6以上

林分物理量

NDVI 5x5

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm)

TBA (m2/ha) Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(5x5) 0.555 0.698 0.645 0.714 0.624 0.197

平均値(5x5) 0.395 0.583 0.530 0.634 0.565 0.229

標準偏差(5x5) 0.118 0.019 0.016 0.000 0.000 0.138

NDVI 11x11

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm) TBA (m2/ha)

Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(11x11) 0.543 0.668 0.644 0.765 0.633 0.251

平均値(11x11) 0.413 0.579 0.527 0.618 0.549 0.202

標準偏差(11x11) 0.000 0.013 0.019 0.062 0.029 0.129

NDVI 21x21

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm) TBA (m2/ha)

Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(21x21) 0.601 0.715 0.660 0.724 0.630 0.227

平均値(21x21) 0.424 0.575 0.526 0.620 0.544 0.199

標準偏差(21x21) 0.000 0.008 0.020 0.055 0.018 0.062

RE-NDVI

5x5 No. of trees

(No./ha) Tree Height

(m) DBH (cm) TBA (m2/ha)

Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(5x5) 0.644 0.713 0.604 0.599 0.571 0.033

平均値(5x5) 0.422 0.582 0.545 0.631 0.631 0.092

標準偏差(5x5) 0.111 0.031 0.009 0.001 0.001 0.117

RE-NDVI

11x11 No. of trees

(No./ha) Tree Height

(m) DBH (cm) TBA (m2/ha)

Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(11x11) 0.556 0.564 0.485 0.532 0.445 0.025

平均値(11x11) 0.383 0.535 0.504 0.602 0.515 0.110

標準偏差(11x11) 0.052 0.000 0.007 0.051 0.032 0.130

RE-NDVI 21x21

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm)

TBA (m2/ha) Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(21x21) 0.633 0.623 0.574 0.554 0.489 0.060

平均値(21x21) 0.379 0.509 0.493 0.596 0.496 0.129

標準偏差(21x21) 0.163 0.080 0.043 0.002 0.027 0.006

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2-13

表 2-6 林分物理量と WDRVI の決定係数

■決定係数0.7以上 ■決定係数0.6以上

林分物理量

WDRVI0.1 5x5

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm) TBA (m2/ha)

Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(5x5) 0.509 0.737 0.706 0.773 0.725 0.227

平均(5x5) 0.400 0.654 0.616 0.704 0.685 0.238

標準偏差(5x5) 0.727 0.751 0.713 0.618 0.033 0.033

WDRVI0.1

11x11 No. of trees

(No./ha) Tree Height

(m) DBH (cm)

TBA (m2/ha) Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(11x11) 0.488 0.701 0.699 0.817 0.733 0.273

平均値(11x11) 0.408 0.645 0.605 0.687 0.664 0.220

標準偏差(11x11) 0.514 0.631 0.556 0.495 0.575 0.038

WDRVI0.1 21x21

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm)

TBA (m2/ha) Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(21x21) 0.541 0.750 0.715 0.780 0.738 0.273

平均値(21x21) 0.416 0.642 0.604 0.696 0.663 0.230

標準偏差(21x21) 0.356 0.515 0.455 0.398 0.544 0.080

WDRVI0.2 5x5

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm) TBA (m2/ha)

Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(5x5) 0.529 0.724 0.685 0.755 0.688 0.218

平均(5x5) 0.400 0.630 0.586 0.683 0.641 0.237

標準偏差(5x5) 0.579 0.439 0.408 0.292 0.280 0.002

WDRVI0.2 11x11

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm)

TBA (m2/ha) Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(11x11) 0.511 0.690 0.679 0.802 0.694 0.267

平均値(11x11) 0.408 0.622 0.577 0.665 0.622 0.216

標準偏差(11x11) 0.299 0.254 0.199 0.130 0.173 0.006

WDRVI0.2 21x21

No. of trees (No./ha)

Tree Height (m)

DBH (cm)

TBA (m2/ha) Carbon (tC/ha)

Canopy Density (%)

最大値(21x21) 0.569 0.739 0.696 0.762 0.695 0.255

平均値(21x21) 0.421 0.618 0.576 0.672 0.619 0.221

標準偏差(21x21) 0.188 0.219 0.172 0.115 0.205 0.006

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2-14

高い決定係数を示した林分物理量と植生指数の関係を図2-11に示す。

図 2-11 高い相関を示す林分物理量と植生指数の例

(左:WDRVI(α=0.1)と胸高断面積合計、中:WDRVI(α=0.1)と炭素蓄積量、右:WDRVI(α=0.2)と胸高断面積合計)

2.5.3. 植生指数を用いた林分物理量推定のための検討

炭素蓄積量推定モデルを作成するための基礎情報として、林分物理用と植生指数の相関解析を

行った。

植生指数の中でも、WDRVI(α=0.1)の最大値は、多数の林分物理量(樹高、胸高直径、胸高

断面積合計、炭素蓄積量)との関係において、試行した3パターンの空間範囲(フィルターサイズ、

5x5画素、11x11画素、21x21画素)で、高い決定指数を示した。現時点では、炭素蓄積量の推定に

最も適した植生指数であると言える。

一方で、植生指数には、林分物理用推定に用いる際に問題点がある。植生指数は植物全般のク

ロロフィルの量に反応する指標であるため下層植生である草本、低灌木の影響も受ける。

図2-12にWDRVI(α=0.1)と胸高断面積合計の関係と代表的な調査地点の画像(RapidEye赤外

合成画像、UAVによるオルソ画像、現地写真)を示す。林分の胸高断面積が増えるにしたがって、

WDRVI(α=0.1)も高くなっている。しかし赤破線で囲まれた2点は、下層植生が繁茂している

影響で、想定される植生指数値よりも高めの値を示している。この植生指数の欠点を補うために

は、衛星データから得られる異なる次元の情報を加えて、林分物理量、ひいては炭素蓄積量の推

定の精度と確度を高める必要がある。

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2-15

図 2-12 WDRVI/胸高断面積合計と調査地点の画像

2.6.テクスチャーと樹冠径の関係解析

2.6.1.テクスチャーの検討

林分物理量推定を衛星データから行うためには、植生指数とは異なる次元の情報を加えた手法

を開発する必要がある。

植生指数は画素毎の赤色光と近赤外光の反射特性から植物の分布、活性度などの情報を得る手

法である。これに対して、近接した画素同士の関係から、画像としての特徴を抽出するテクスチ

ャー解析という手法がある。

テクスチャーとは画像のきめの「粗さ」または「細かさ」を表す指標である。森林の劣化・衰

退をモニターするためにテクスチャー情報を使った先行研究がある。神奈川県自然環境保全セン

ターは、丹沢山地において 1980年代から進行しているブナ林の衰退実態調査を行った。それによ

ると、うっ閉していたブナ林の林冠が、樹勢の衰えと共に単木樹冠が小さくなってギャップが見

られるようになり、ブナの枯死と共にさらに林冠ギャップが拡大して林床の草地が露見する過程

を経る。その過程をデジタル化した空中写真データで追いかけると、テクスチャー値(ここでは

標準偏差/平均値で得られる変動係数)はしだいに低下していくことが報告されている。8

8http://www.agri-kanagawa.jp/sinrinken/info_buna/bunahoukokusyo/buna_houkokusho/buha_houkoku_20.pdf

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2-16

テクスチャー値から林分物理量推定への利用可能性を検討するため、以下の処理を行った(図

2-13)。具体的な方法は次節で述べる。

① テクスチャー値の算出

② UAV によるオルソ写真等を用いた樹冠径計測

③ テクスチャー値と樹冠径との相関解析

図 2-13 テクスチャー値利用可能性の検討の流れ

2.6.2.テクスチャー値の算出

RapidEye の可視バンドデータ(バンド 1,2,3)を用い、森林域を対象として、空間フィルターを

応用したテクスチャー値(標準偏差)の算出を行った。手順を図 2-14 に示す。

RapidEye データに前処理を行い、森林域マスクを用いて森林域のみを計算対象の画素とした。

可視 3 バンドの平均値ラスターを求め、ノイズを軽減するためそれ自身の空間平均値と差を求め

た。そのデータに対して空間フィルター処理で標準偏差を求め、テクスチャー値とした。作成さ

れたテクスチャー画像の例を図 2-15 に示す。空間フィルターの範囲により結果が変わるため、フ

ィルターの適正範囲についても検討が必要である。

図 2-14 テクスチャー値算出の流れ

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2-17

図 2-15 空間フィルターサイズによるテクスチャー画像の違い

2.6.3.樹冠径の計測

UAV の空中写真より生成したオルソフォトを用いて樹冠径を計測し、林分の樹冠平均値を求め

た。図 2-16 に樹冠径計測の例を示す。

図 2-16 UAV オルソ写真による樹冠径計測の例

2.6.4.テクスチャー値と樹冠径の相関解析

テクスチャー値と林分樹冠径の相関解析を行った。テクスチャー値の空間フィルターサイズは、

5x5、11x11、21x21 の 3 パターンを試行した。結果を図 2-17 に示す。樹冠径との関係において、

最も決定係数が高かったのは 11x11 画素の空間フィルターで求めたテクスチャー値であった。

図 2-17 テクスチャー値と林分樹冠径(平均)の関係

左:空間フィルター 5x5 中: 11x11 右:21x21

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2-18

2.6.5.テクスチャー情報の利用に関する検討

テクスチャー値と樹冠径について、相関関係が見られた。図2-18にテクスチャー値と樹冠径の

関係、また代表的な調査地点の画像(RapidEyeデータによるテクスチャー画像、UAVによるオル

ソ画像、現地写真)を示す。樹冠径が大きくなるにしたがって、テクスチャー値も高くなってい

る。赤破線で囲まれた2点は、植生指数値において、下層植生の影響により高めの値を示し、回帰

直線から離れた値であった(図2-12)。テクスチャー値と樹冠径の関係(図2-18)においては、回

帰直線に近い値を示している。図2-19に、植生指数と胸高断面積合計、またテクスチャー値との

グラフにおける下層植生の多い調査地点の比較、また現地写真を示す。これらの結果から下層植

生の影響を受ける植生指数の欠点を補うために、テクスチャー値は有効であると考えられる。植

生指数とテクスチャー値を併用することによって、より精度の高い林分物理量(炭素蓄積量)の

推定が可能になる。

図 2-18 テクスチャー値/樹冠径と調査地点の画像

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2-19

図 2-19 植生指数・テクスチャー値プロットにおける下層植生の多い調査地点の比較

2.7.まとめと課題

今年度の解析結果をまとめ、課題を整理したので以下に述べる。

(1)森林変化図の作成と森林劣化重点監視地域の抽出

森林局が作成した2006年、2010年の森林分布図を用い、森林変化図を作成し、森林減少・劣化

情報をもとに森林劣化監視重点地域を設定した。またこの情報をもとにパイロット調査対象地と

してマンダレー管区モゴー地区を追加した。

(2)植生指数と林分物理量の関係解析

4種類の植生指数(NDVI,RE-NDVI,WDRVI α=0.1,WDRVIα=0.2)と林分物理量との相関解析

を行った。植生指数は空間範囲(フィルターサイズ)として5x5画素、11x11画素、21x21画素の3

パターンの条件で統計値(最大値、平均値、標準偏差)を求めた。林分物理量は森林調査結果か

ら、haあたり本数、上層木平均樹高、平均胸高直径、胸高断面積合計、炭素蓄積量を用いた。WDRVI

(α=0.1)の最大値は、多数の林分物理量(樹高、胸高直径、胸高断面積合計、炭素蓄積量)と

の関係において、試行した3パターンの空間範囲(フィルターサイズ、5x5画素、11x11画素、21x21

画素)で、平均的に高い決定指数を示した。現時点では、炭素蓄積量の推定に最も適した植生指

数であると言える。

一方、植生指数は下層植生である草本、低灌木の被覆にも影響を受ける。この欠点を補うため

には、衛星データから得られる異なる次元の情報を加えて、林分物理量の推定の精度と確度を高

める必要がある。

(3)テクスチャー値と樹冠径の関係解析

植生指数の欠点を補う目的でRapidEyeデータから得られるテクスチャー値と林分の樹冠径平均

値の相関解析を行った。テクスチャー値は空間範囲(フィルターサイズ)として5x5画素、11x11

画素、21x21画素の3パターンの条件で標準偏差を求めた。樹冠径はUAVによるオルソフォトから

樹冠径を計測し、林分の平均値を求めた。11x11画素のパターンで最も高い決定係数が得られ、ま

た植生指数の欠点を補う傾向が確認された。

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2-20

今後の課題として、以下があげられる。

(1)RapidEyeデータを用いた炭素蓄積量推定モデル

炭素蓄積量推定モデル式を作成するため、植生指数とテクスチャー値の併用した手法開発が必

要である。

(2)全国展開のためのLandsatデータの検討

RapidEyeデータで確立された炭素蓄積量推定手法を全国展開するためにLandsatデータと手法の

関係を検討する必要がある。

(3)全国展開における衛星データの位置づけの検討

全国を対象とした森林劣化モニタリングにおける衛星データ利用の位置づけについて、検討が

必要である。

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3.UAVによる森林劣化状況把握に関する検討

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3-1

3.UAVによる森林劣化状況把握に関する検討

3.1.目的と内容

衛星データによって抽出された森林劣化地の状況を把握することを目的とし、UAV1による簡素

で効率的な林分状況の把握方法について検討を行った。

3.1.1.平成26年度事業の実施内容

平成26年度事業においては、UAV全般の特徴と利用可能性、3次元復元技術2を用いたUAVデー

タから生成物の種類と特徴、UAVの運用に係る経費などについて整理した。また、調査対象地に

おいて試験的に空中写真撮影を行い、UAVの飛行性能、操作性および3次元復元技術によるオルソ

フォト、点群データ、DSMなどの生成物の確認などを行った。

3.1.2.平成26年度事業での課題

平成26年度事業の実施結果によって、UAV搭載カメラのレンズ性能に起因すると思われる撮影

データの歪が確認され、林分物理量などの計測精度に影響を与えていることが分かった。以下に

その詳細を述べる。

(1)機体性能に関する課題

平成26年度に使用したUAVは、価格と性能からホビーユースのみならず各種研究・調査の分野

で非常に評価の高い機体である。しかし、元来は動画や静止画を撮影し、個人で楽しむことを目

的とした機体であるために自律飛行の性能・操作性は高くない。現地で数回自律飛行を試したが、

操作性の問題から、最終的にはマニュアル操縦による空中写真撮影を行った。しかし地上からの

マニュアル操縦で、一定のオーバーラップ・サイドラップ3を保持しての飛行は技術的難易度が高

く、熟練を要する。

また、マニュアル操縦の場合、常に機体位置をパイロットが視認する必要があるために撮影場

所と撮影範囲が限定される。そのため今後自律飛行性能の高い機体の検討を行う必要がある。

(2)カメラ性能に関する課題

使用機体に搭載されている小型のアクションカメラ4は近年高性能化が進み非常に鮮明な画像

が得られる。しかし、広角レンズを使用しており、レンズ歪が大きい。そのため、3次元復元ソフ

トウエアから生成されるオルソフォト5や点群データ6の精度にも影響が生じている。オルソフォト

ではデータの一部が欠落し、絶対的な位置的精度が不十分であるなどのケースが見られた。点群

データでは、地表面が湾曲し、Z値(高さ情報)の精度が明らかに不足しているケースが見られた

(図3-1)。そのため、より高性能で歪の少ないレンズを持つカメラとそれを搭載可能な機体と合

わせて検討する必要がある。

1 Unmanned Aerial Vehicle 無人飛行機 2 SfM 理論を用いた写真から物体を復元する技術、各写真の 3 次元位置情報から復元する、 3 連続する写真間の重複度をオーバーラップ、撮影写真コース間の重複度をサイドラップと呼ぶ 4 身体等に装着しハンズフリーで撮影する事を目的とした小型カメラの総称、ウェアラブルカメラとも呼ばれる 5 中心投影である写真の歪を補正し、正射投影としたもの 6 Point Cloud、 3 次元の位置情報を持つ点の集合、レーザなどで作成が可能で物体表面の位置・形状を表す

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3-2

図3-1 カメラ(レンズ)に起因するひずみの例

(3)精度検証に関する課題

平成26年度事業は、UAVの特徴整理と3次元復元ソフトウエアによる生成物の評価を主目的とし

て実施した。そのためUAV生成物と林分物理量との関係分析のためにサンプルデータ数は不足し

ているためさらに追加する必要がある。この結果にもとづき林分状況把握のためのUAV利用法を

整理する必要がある。

3.1.3.平成27年度の実施内容

平成26年度の課題をふまえ、平成27年度は使用するUAVのカメラ・機体の再検討を行うととも

に、サンプルデータを追加し、UAVの有効性について精度面を含めてさらに検討を行った。主な

実施内容を以下に示す。

(1)UAV機体とカメラの検討

(2)UAV空中写真撮影および森林調査の実施

(3)UAV成果と森林調査結果との関係分析

広角レンズのため湾曲(斜め撮影) 点群データの歪み(湾曲)

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3-3

3.2.実施方法と結果

3.2.1.UAV機体とカメラの検討

UAV機体の安定性とカメラのレンズ歪による3次元復元技術による生成物の精度は、直接林分物

理量の推定精度に影響を与える。

近年、UAVのなかで複数の回転翼を持つマルチコプター(ドローンとも呼ばれている)の進歩

は著しく、各社から新製品が発表されている。わずか1年で平成26年度に使用した機体はすでに2

世代前の製品となり生産を終了している。

平成26年度に使用した機体は、安価で市場での販売実績、評価も高く、当時としては最新で最

適のものであった。しかし、動画撮影などもメインとする一般ユーザ向けの製品であるため、広

角カメラレンズを搭載しており撮影データに歪が生じ、そのため3次元復元処理の際に生成される

オルソフォトや点群データに影響を与え、結果的に樹高計測などの林分物理量推定結果に誤差を

生じていたことが分かった。また、機体に搭載されているGPSの精度も現在から比べると劣るた

め、オルソフォトなどの位置精度が若干低いことが分かった。

UAV機体とカメラレンズを検討するにあたっては、次の条件のもとに行った。①~④の性能に

関する条件とともに、⑤~⑦は途上国で実際にUAVを運用していくためには不可欠な条件である。

①カメラの歪が少ないこと

②写真・動画の解像度、画質が良い

③位置精度が高いこと

④操作が簡単であること

⑤メンテナンス性が高いこと

⑥比較的安価であること

⑦途上国でも調達が可能であること

UAVはその構造から大きく2つに分類される。翼が固定され推進力を得るためのプロペラが1つ

の固定翼タイプと複数のローター7を持つ回転翼タイプである。後者はマルチコプターまたは、ド

ローンと称されている(図3-2)。

固定翼タイプは軽量であり、飛行時間・距離が長い。また、秀逸な自律飛行システムを搭載し

ているものが多く、多くの訓練時間を要しない。反面、搭載カメラは軽量のものに限られ、離着

陸のために障害物のないフラットな20m四方程度の場所を要するなどのデメリットがある。また、

価格は500万円前後と高額であるため、途上国での実利用は向かない。

一方、回転翼タイプは、操作性も高く、搭載カメラを選択できるなどのメリットがあるが、反

面、飛行時間・距離は固定翼タイプに劣る。なお、ローター数、搭載可能カメラなどにより価格

が異なる。

一眼レフクラスのカメラはレンズ歪も小さく、写真画質も良いが、重量があるために6ローター

以上モデル、100万~200万円程度の機体が必要となる。また、機体の組立て・調整など全て自身

で行う必要があるため、高度なスキルが要求される。

現在10万~20万円クラスの組立て済み回転翼タイプがもっとも普及しており、途上国での機

体・パーツの調達面からもこのクラスが適切であると思われる。平成26年度もこのクラスを選定

使用したが、現行モデルは1年間という短い期間内で大きな進歩を遂げている。

7 rotor、回転体、ヘリコプターなどの回転翼

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3-4

図3-2 固定翼タイプと回転翼タイプ

最終的に決定したモデルは平成26年度使用モデルPhantom2V+の最新バージョンPhantom38(DJI

製)である(図3-3)。本機は、前モデルの課題の多くを改善している。カメラレンズ径・枚数が

改良され、FOV(視野角)も140°から94°に変更されたことにより歪の少ない画像を取得するこ

とが可能となった(図3-4)。また、GLONASS9対応となりGPS精度が飛躍的に向上している。そ

の他、モーター、フライトコントロールシステム(FCユニット)の改良によってより安定した飛

行が可能となっている。

図3-3 Phantom3スペック

8 2016 年 3 月 9 日現在、最新モデル Phantom4 がリリースされた 9 ロシアの衛星測位システム

固定翼タイプ(SensFly HPより) 回転翼タイプ(DJI HPより)

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3-5

図3-4 Phantom3とPhantom2V+の写真画質の違い

3.2.2.UAV空中写真撮影および森林調査の実施

UAV利用可能性を検討するためのサンプルデータとして、空中写真撮影と森林調査を追加実施

した。空中写真撮影にあたっては、3次元復元ソフトによるオルソフォト作成のため写真間のオー

バーラップを80%、コース間のサイドラップを60%になるように実施した。撮影高度は、撮影範囲

の状況に合わせて50m~100mとし、すべてマニュアル操作で行った。

森林調査は、林分樹高に合わせて20m~50mの方形プロットを基本とし、毎木調査法により実施

した。胸高直径、樹種、上層木平均樹高、樹冠疎密度、下層植生密度、傾斜、方位を計測した。

なお、炭素蓄積量の算定には、バイオマス量の計はBrown & Schroeder式10を、炭素量フラクショ

ン係数11は0.47を用いた。

平成26年度の実施結果も含め調査結果一覧を表3-1に示す。表3-2に本年度実施分の森林調査結果

を取りまとめた。なお、各プロットの調査結果の詳細は巻末資料を参照されたい。

表3-1 空中写真撮影と森林調査箇所数

調査地域 空中写真撮影 森林調査

H27実施 H26実施 H27実施 H26実施 シャン州タウンジー郡 12点 3点 3点 マンダレー管区モゴー地区 7点 - 7点 - バゴー管区イェダシー地区 2点 2点 2点 2点

合 計 21点 5点 9点 5点

10 IPCC Good Practice Guidance for LULUCFに記載されている熱帯林地域に適応されるバイオマス算定のためのア

ロメトリー式 11 バイオマスを炭素蓄積量に換算するための係数

視野角の比較(左:Phantom3は地平線が自然、右:Phantom2V+はかなり湾曲)

倒れこみの比較(左:Phantom3は写真周辺の倒れこみ小、右:Phantom2V+は倒れこみ大)

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3-6

図3-5 空中写真撮影、森林調査の様子

表3-2 森林調査結果取りまとめ表

調査地区 林相タイプ 本数/ha

上層樹高(m)

DBH (cm)

TBA (㎡ /ha)

炭素蓄積量 (tC/ha) 優占樹種

バゴー管区 イェダシー

Teak plantation 663 15.7 17.6 16.6 67.1 Teak 8 ys

Teak plantation 615 15.6 16.2 13.3 52.5 Teak 8 ys

マンダレー管

区モゴー地区

Closed forest 2,095 9.9 8.6 13.1 38.3 Saytalone

Closed forest 1,571 12.6 13.0 23.4 87.3 Tha pyay

Closed forest 175 16.3 35.8 17.9 102.2 Ohn ton

Pine forest 349 16.5 26.7 22.8 81.1 Pine

Pine forest 723 13.5 20.3 27.0 80.1 Pine

Closed forest 1,521 10.4 9.3 11.2 33.8 Thital

Open forest 324 6.4 10.2 3.1 10.6 Kyat yoe

UAV より撮影した 21 地点について、3 次元復元ソフト Photoscan1.2.3(Agisoft)を用いて次の

4 つを生成した(図 3-6)。なお、各プロットの 3次元復元成果は巻末資料を参照されたい。

①オルソフォト(正射投影写真) Geotiff形式12、KMZ形式13

②DSM14(デジタル表層高モデル)Geotiff形式

③3次元モデル PDF形式

④点群データ(Point cloud) LAS形式15

12 位置情報の付与された画像ファイル形式 13 Google Earth のファイル形式 14 地上の被覆物(建物、樹木等)も含めた高さ、これらを取除いた地上面の高さを DTM と呼ぶ 15 xyz の 3 次元位置情報を持つ点群データのファイル形式

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3-7

図3-6 3次元復元処理による生成物の例

3.2.3.UAV成果と森林調査結果との関係分析

UAV撮影写真を用いて3次元復元ソフトにより生成されたオルソフォト、DSM、点群データな

どと森林調査結果との関係を分析し、林分物理量推定手法について検討を行った。各林分物理量

と関係分析を行ったUAV成果、関係分析の流れを図3-7に示す。

図3-7 UAV成果と森林調査結果との関係分析

120m

0m

相対高度

オルソフォト DSM

3Dモデル 点群データ

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3-8

(1)林分状況の把握

オルソフォト、DSM、点群データ等を用いて林分状況の把握について検討を行った。

① 林分状況の変化

図3-8は、バゴー管区イェダシー地区チーク植林地オルソフォトと点群データによる林分断面図

である。図の上段は間伐前2014年10月撮影、下段は間伐後2015年11月撮影のデータである。2時点

のオルソフォトを比較すると、紅葉状態(虫害による変色)、裸地部分の農地への転用など目視

により2時点の林分状況の変化を確認することが出来る。また、林分断面構造を比較すると、間伐

により立木が消失している状態や、立木密度の変化、落葉による樹冠開空度が上がったことによ

り地表面まで点群が生成されているなどの詳細な林分状態を確認できる。

図3-8 チーク植林地における間伐前後の林分状況の変化

② 林相判読

図3-9は、UAVによるオルソフォト、Google earth、RapidEyeの画像である。それぞれ空間分解能

がことなるため、画像から得られる情報量が異なる。もっとも空間分解能が高いUAVオルソフォ

トは、樹冠、葉色の違いなど単木レベルでその違いを確認できるため、詳細な林相区分に利用が

可能である。

図3-9 画像別空間分解能の違い

UAV オルソフォト(4.6cm) Google earth(不明) RapidEye(5m) *()内は空間分解能

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3-9

③ 林間ギャップ

その他の利用方法としては、DSM、DSMから発生させた等高線、点群データによる林分断面図

などを用いることでオルソフォトより容易に林間ギャップを確認することが出来る。図3-10のオ

ルソフォトの黄色丸は林内のギャップ部分である。オルソフォトではわかりにくいが、DSMや等

高線図、断面図などから、より明瞭にギャップを確認することができる。

図3-10 林間ギャップ

(2)樹高計測

森林調査による樹高計測は、従来Vertex16などの音波測定器によって行われている。しかし、う

っ閉した林内では立木頂点の視認が困難な場合が多く正確な樹高測定ができない。また、測定者

の経験・スキルから生じる誤差も大きいなどの欠点がある。

UAVから生成した点群データを用いて樹高計測を行い、計測精度の評価を行った。森林調査の

樹高計測は上層木5~6本から求めた上層木平均樹高である。森林調査と同一エリアの点群データか

ら林分断面図を作成した後、森林調査と同様に上層木の樹木5~6点を計測しその平均値を求め、実

測値との相関解析を行った。図3-11に点群データによる樹高計測方法を示す。

図3-11 点群データによる樹高計測方法

16 音波と角度によって樹高を求める森林調査に使用される計測器具

赤枠内が森林調査範囲 地盤と樹木の頂点の差から樹高計測

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3-10

点群データによる樹高計測は3次元モデル復元が不完全であった2点(プロット11、12)を除く

19点のプロットに対して行った。図3-12に樹高計測の例を示す。

表3-3に調査結果を取りまとめた。調査地の林相タイプは、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、マツ

林、チーク人工林など、疎密度は20%~90%、傾斜度は0~35度であった。点群データによる樹高

計測精度は、決定係数17(R2)0.9884、最小二乗誤差18(RMSE)は0.889と高い精度を示した。プ

ロットごとの計測結果をみると、最も実測値との差が小さかったのが、プロット10と18であり、

その差は10㎝であった。この2プロットの林相タイプはそれぞれマツ林とチーク林で、本数密度が

低いうえにフラットな地形であった。そのため地表面の点群も明瞭に生成されており計測が容易

で誤差が小さかったと思われる。

一方計測誤差が大きかったのは、プロット12であり誤差は1.7mであった。林相タイプは常緑混

交林、本数密度も高く、傾斜度27度と急傾斜であり、地面の点群が上手く生成されず、計測が難

しく誤差につながったと思われる。

図3-12 点群データによる林分断面図と樹高計測の例

17 回帰分析の精度、値が大きいほど独立変数と従属変数の間の相関が高い 18 予測値が正解からどの程度乖離しているかを示す精度評価指標の一つ、値が小さいほど優れている

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3-11

表3-3 点群データによる樹高計測結果

No 樹高 (m)

森林タイプ 本数 ( /ha)

DBH (cm)

樹冠疎密度 (%)

傾斜度 森林調査 点群データ 誤差

1 33.2 32.1 -1.1 Closed forest 276 40.1 90 4 2 22.9 21.9 -1.0 Closed forest 703 29.0 90 35 3 33.2 32.6 -0.6 Closed forest 232 44.2 90 0 4 13.2 14.1 0.9 Closed forest 1,853 11.4 90 3 5 24.7 23.4 -1.3 Closed forest 337 32.2 90 8 6 6.7 7.7 1.0 Closed forest 2,325 7.9 70 13 7 12.8 13.2 0.4 P ine forest 275 26.3 20 0 8 22.9 23.5 0.6 Closed forest 352 32.1 70 3 9 17.1 18.2 1.1 P ine forest 479 27.1 50 7 10 17.5 17.6 0.1 P ine forest 775 21.8 60 4 13 9.9 10.7 0.8 Closed forest 2,095 8.6 70 29 14 12.6 14.3 1.7 Closed forest 2,369 10.7 60 27 15 16.3 16.9 0.6 Closed forest 175 35.8 50 12 16 16.5 17.1 0.6 P ine forest 349 26.7 40 24 17 13.5 12.1 -1.4 P ine forest 723 20.3 55 29 18 10.4 9.9 -0.5 Closed forest 1,920 8.5 60 9 19 6.4 7.0 0.6 Open forest 324 10.2 30 18 20 15.7 15.6 -0.1 Teak plantation 663 17.6 55 0 21 15.6 15.0 -0.6 Teak plantation 615 16.2 55 0 R2 0.9884 RMSE 0.889

(注)プロットNo.11、12は3次元モデル復元が不完全であったため除外

図3-13 点群データと森林調査のプロット別分布

(3)体積推定

森林の炭素蓄積量は林分のバイオマス量から計算される。また、バイオマスは幹・枝葉・根茎

等の乾重量から計算されるため林分材積とは高い相関関係にあると想定される。よって、林分材

積を計測することで、森林炭素蓄積量を推定できる可能性がある。

UAVから生成されるDSMは樹木などを含む表層面の高さデータである。よって、これよりDTM

(地上部の高さ、標高)を差し引くことで林内空間体積(容積)を求めることが出来る。この空

間体積と実測により得られた材積との関係を求めることでUAVによるDSMから材積推定する方

法を検討した。

しかし、精度の高いDTMをどのようにして求めるかが課題となる。航空レーザ測量19や航空写

真測量20から高精度なDTMを取得することが出来るが、費用面での課題から本事業ではより安価

で効率的な手法を検討する必要がある。林分体積推定のイメージ図を図3-14に示す。

19 航空機に搭載したレーザスキャナの反射時間から得られる距離と航空機の位置情報より標高等を調べる方法

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3-12

図3-14 林分体積推定のイメージ図

20 航空写真と地上の位置関係を求め、写真上での像の違いを立体的にかつ精密に測定し正確な地形情報を調べる方法

DSM と DTM の差分から林内体積を求め、森林調査によるバイオマス量との関係から炭素蓄積量を推定

森林炭素蓄積量

森林調査

林内空間体積

植生を含めた表面の高さ 植生を含めない地表面の高さ 差 分

図引用:北日本朝日航洋

DSM と DTM の違い

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3-13

(4)本数、直径の計測

毎木調査は、全木の胸高直径を計測する。しかし、多大な労力を必要とするため、省力化のた

めの研究がおこなわれている。現在もっとも盛んに研究なされているのは地上レーザによる方法

であるが、機材等が高額であるために、現段階では途上国での実用化には不向きである。

そこで、本年度は新たな取組みとして林内写真による3次元モデル化による本数と直径計測を試

行した。森林調査プロット周囲の連続写真を撮影し、3次元復元ソフトにより点群データを生成し

これより本数計測と直径計測を試みた。図3-15上は、作成したチーク林の林内点群モデル、青い

四角が撮影写真である。図3-15下は同一視点による点群モデルと地上写真である。点群モデルは

点の集合であるが、あたかも写真のように樹皮の文様まで再現されていることが分かる。点群モ

デルが写真と決定的に違うのは、3次元の位置情報を持つことである。よってこの位置情報を利用

して直径を計測することが可能である。

図3-15 林内点群モデル

林内点群データを胸高直径階(1.2~1.3m)で水平面に輪切りし、直径・本数計測を行った。計

測方法を図3-16に計測結果を表3-4に示す。本数計測結果は実測値と同じ値となった。直径計測結

果は0.9㎝の差があった。この結果だけから判断すると非常に高精度であるといえる。

しかし、本数密度が低い、下層植生が少ない、平坦な場所であるなどの条件を満たさない場合

は、1本1本が識別できるほどの林内点群モデルが生成されない。そのため、本数・直径が計測で

きず、実利用には課題が多い。

林内点群モデル(青い四角が撮影写真)

林内点群モデルと同一視点の地上写真

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3-14

図3-16 林内点群データによる直径および本数計測方法

表3-4 林内点群データによる本数と直径の計測結果

点群データより計測 実測値 本数 20 20

平均直径(㎝) 16.7 17.6

黄色枠内の点群データの縦断面図

1.2~1.3mで輪切りした点群データ

(赤点の固まりを 1本として本数計測)

黄色枠が森林調査プロット

幹径を計測(胸高直径)

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3-15

3.3.まとめと課題

UAVによる空中写真撮影データから3次元復元ソフトウエアにより、オルソフォト、DSM、点

群データ等を作成し、これより林分物理量の把握方法の検討、林分状況把握のための利用法の検

討を行った。以下にその結果をまとめる。

(1)林分状況把握

オルソフォト、点群データ、DSMを利用した林分状況の把握は、現況把握、林相判読、変化モ

ニタリングなど一般の空中写真と同様な利用方法が可能である。UAVによる撮影は、航空機搭載

カメラによる空中写真のように広範囲を撮影することは出来ないが、UAVは可搬性に優れている

ため森林調査時に持運び、短時間で写真撮影を行うことが出来る。このUAVの機動力の高さは林

分状況把握に対して大きなメリットであるといえる。

(2)樹高計測

点群データを用いた樹高計測は実測値との相関も極めて高く、実利用が可能である。森林調査

者が樹高計測機器を用いて測定する場合、測定者のスキルによって精度差が生じる。一方、点群

データによる樹高測定は、机上で行うことが出来る。そのため複数人で測定し、結果の検証を行

うことで信頼性を高めることが可能である。

(3)材積推定

DSMとDTMの差分を用いた林分材積推定は、方法論としての可能性は高い。しかし、いかに精

度の高いDTMを取得できるかが課題である。今後はDSMの地面部分から全体のDTMを簡便に推定

する方法などの技術開発と実測値との精度検証を行う必要がある。

(4)DBH、本数(林内点群データ)

林内点群データによるDBH、本数計測の結果は良好であった。しかし、本数密度が低い、下層

植生が少ない、平坦な場所であるなどの一定の条件を満たさない場合は、1本1本が識別できるほ

どの林内点群モデルが生成されない。そのため、本数・直径が計測できず、実利用には課題が多

い。

(5)REDD+のMRVにおける貢献度

UAVによる空中写真撮影および3次元復元解析は、林分状況を位置情報とともにデジタルデータ

としてアーカイブ出来る。そのため、現地で調査を行う森林調査とは異なり結果の再現性があり、

MRVにおける透明性と堅牢性への貢献が期待できる。

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4.技術移転・人材育成活動

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4-1

4.技術移転・人材育成活動

4.1.目的と概要

国際協力プロジェクトでは、事業効果の持続性が重要視され、事業実施中の技術移転や人材育

成が強化されている。また、REDD体制の構築には、森林資源のモニタリングや将来予測のため

の手法に係る技術移転・能力向上が重要である。

そこで、対象国の政府関係者、研究者等を対象とする森林炭素蓄積量の変化を把握する技術に

関する専門的な研修等を実施し、事業を通じて得た知見や開発した技術を移転することを目的と

し、技術移転・人材育成活動を実施した。

ミャンマー森林局職員の専門的知識・能力は全般的に高いが、具体的技術の利活用面でのトレ

ーニングに関しては、森林局側も研修の必要性を強く感じている。

カウンターパート(C/P)機関である環境保全林業省 森林局 計画統計部にはRS/GIS課があり、リ

モートセンシング・GISの技術を用いた森林資源把握を実施している。同課は、Landsat衛星およびIRS

(Indian Remote sensing Satellite)衛星を用いて2005年と2010年の2時点のミャンマー全土森林分布

図を作成している。こうした先進的な取り組みにも積極的ではあるが、データや解析設備調達の

ための予算不足、若年職員の技術研修の機会が限られているなどの問題点も森林局側は認識して

おり、本事業に対しても人材育成活動面での協力が求められている。

そこで、森林局の要望も考慮しつつ技術研修、本邦研修、ワークショップの3つの活動を実施し

た。

4.2.活動内容

(1)技術研修

現在、環境保全林業省では、国家レベルの地図作成「One Map Myanmar Project」や、5年に一度

FAOに森林現況を報告する目的もかねた衛星リモートセンシングを利用した森林分布図作成など

の政策活動を実施している。また、森林の分布状態、土地利用の状況把握を目的とし、UAVの導

入計画も同時に進めている。

このような相手国の実情も踏まえたうえで森林劣化の把握や森林調査に主眼を置いたUAV撮影

によるデジタル写真の利用法など新技術に関する技術研修を実施した。UAVによる森林劣化把握

および森林調査・モニタリングのための利用方法について、UAVの基礎知識、操縦方法、UAVデータ

の解析方法などについて座学と実技による研修を行った。環境保全林業省傘下のすべての局(森林局、

環境保全局、企画統計局、乾燥地緑化局、測量局)、林業大学、森林研究所の職員が研修に参加した。

・ 実 施 日 : 2015年9月14日~9月18日

・ 受 講 生 : 15名

・ 講 師 : アジア航測株式会社 2名

パイロット、パイロット補助者、データ解析者の3名を1組とする班編成を行い、座学と実技に

よるUAVフライト訓練と3次元復元技術によるデータ解析に関する研修を行った。研修の成果を確

認するために実際にフライト計画からデータ解析までの一連の作業を班ごとに行い、成果発表と

意見交換を行った。研修メニューを次に示す。

1. 飛行技術 ・ シミュレータとトイヘリによる練習、習得度試験 ・ 実機による訓練(準備、計画、フライト) 2. データ解析

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4-2

・ 3次元復元処理(オルソ、DSM、点群、3Dモデル作成) ・ 点群データ処理(断面解析、樹高計測) 3. 総合実習 ・ 班ごとに飛行計画を立案し、フライトからデータ処理までの一連作業を実施 ・ VERTEXによる樹高計測を行い、UAVによる推定値との比較検討 4.成果発表、意見交換

現在、ミャンマーでは省をあげてUAV利用の取組みを強化しようとしていることもあり、研修

生のUAV利用に対する学習意欲も高く、本研修に対する評価も高かった。また、研修期間の延長

と機材支援についての要望もあげられた。研修プログラムを表4-1に、研修風景を図4-2に示す。

表4-1 技術研修プログラム

Date Program

9:30 - 12:00 13:30 - 15:45

14-Sep 1. Orientation 2. UAV flight training step 1

3. UAV flight training step 2

15-Sep 4. UAV flight training step 3 5. Demonstration flight 6. Flight practice by trainee

16-Sep 7. UAV data analysis 1 Making of Orthophoto, 3D model, Point data and DSM

8. UAV data analysis 2 DSM and Point data handling

17-Sep 9. Total practice From flight to data analysis by trainee

same as the left

18-Sep 10. Presentation (wrap up) 11. Closing

図 4-1 研修使用機材

フライトシミュレータ(練習用) トイヘリ(練習用)

Phantom3と周辺機器(実機訓練用)

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4-3

図4-2 技術研修風景

表4-2に研修に対する理解度アンケートの結果をまとめる。理解度はおおむね良好で、研修自体

に対する評価も良好であった。なお、さらに高度なトレーニングや長期研修の実施、機材の供与

などの要望があった。アンケートの回答例を図4-3に示す。

表4-2 技術研修に対する理解度アンケート結果

Question Assessment

too Hard Hard Average Easy too Easy

1st day 1.UAV flight Training step 1 8 5 2 2.UAV flight Training step 2 2 10 3

2nd day 3.UAV flight Planning 1 7 7 4. Flight practice by trainee 1 6 6 2

3rd day 5.UAV data analysis 1 1 9 5 6. UAV data analysis 2 11 4

4th day 7. Total training 1 10 4

Total Assessment Excellent Good Average Fair Poor

8 7

開校式 座学風景

実機による実技風景 実機による実技風景

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4-4

図 4-3 アンケート回答例

(2)本邦研修

本邦研修では、ミャンマー森林局より政策担当の若手職員とRS/GISセクションの技術者計3名の

職員を招聘し、日本におけるREDD+への取り組みや日本の森林林業、持続可能な森林管理などに

ついての研修を行うとともに、ワークショップを開催し、意見交換を行った。

ワークショップでは、日本側からは日本の森林と林業、レーザ技術を使った最新技術について

発表し、研修生は持続可能な森林管理、リモセン活用事例、山火事監視、コミュニティフォレス

トに関する発表がなされた。

リモート・センシング技術センターでは、衛星リモートセンシングによる森林劣化のモニタリ

ング方法やアマゾンでの森林減少解析事例の紹介、京都大学では、東南アジアのREDD+の取組み

についてワークショップと意見交換、 京都府立大では、GISを活用した森林管理・里山について

講義、岡山県西粟倉村では、百年の森構想の見学と真庭市のバイオマスエネルギーの実例につい

ての研修を受けた。

研修内容の概要を以下に示す。また、研修スケジュールを表4-3に、ワークショップのプログラ

ムを表4-4に、研修の様子を図4-4に示す。

・ 研修者氏名 : Mr. Phone Htut (Staff officer, FD)

Mr. Ye Lwin Aung (Range officer, FD)

Mr. Kyaw Zar Linn (Range Officer, FD) ・ 実 施 行 程 : 2015年10月19日~10月28日

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4-5

・ 訪 問 先 : 林野庁(海外林業協力室表敬)

調布飛行場(航空レーザ機器、航空カメラ、航空機機体の見学および説明)

リモート・センシング技術センター(リモートセンシング講義)

京都大学(東南アジアのREDD+に関するワークショップ)

京都府立大学(施設見学および森林GISに関する講義)

西粟倉村百年の森(日本の森林施業に関する施設見学と講義)

岡山県真庭市バイオマス施設(バイオマス施設見学)

表4-3 本邦研修スケジュール

年月日 研修内容 2015 年 10 月 18 日(月) 出国 10 月 19 日(火) 林野庁表敬、オリエンテーション 10 月 20 日(水) ワークショップ:REDD+と持続可能な森林管理(アジア航測) 10 月 21 日(木) 調布飛行場(航空機材見学)、RESTEC(リモセン講義) 10 月 22 日(金) 京都大学(ワークショップ)、京都府立大学(GIS 講義) 10 月 23 日(土) 移動 10 月 24 日(日) 休日 10 月 25 日(月) 西粟倉百年の森(日本の森林施業) 10 月 26 日(火) 真庭市バイオマス施設(施設見学)

10 月 27 日(水) 帰国

表4-4 ワークショッププログラム(本邦研修)

Time Program Presenter

13:00 Registration

13:10 - 13:20 Opening remarks / About us Mr. Takio Sano

13:20 - 13:35 1. Forest in Japan Mr. Yukio Wada

13:35 - 13:55 2. Forest degradation monitoring by RS and UAV Mr. Naoki Mitsuzuka

13:55 - 14:15 3. Forest recover from the radioactive contamination Dr. Hideyuki Noguchi

14:15 - 14:35 4. Sustainable forest management utilizing Lidar Ms. Asuka Wachi

14:35 - 14:55 Tea break

14:55 - 15:15 5.1 Utilization of RS & GIS to Concern with The Sustainable Forest Management in Myanmar 5.2 Forest Fire Assessment in Forest Department

Mr. Phone Htut

15:15 - 15:35 6. Establishment of Community Forestry in Myanmar Mr. Kyaw Zar Linn

15:35 - 15:55 7. Legal Process of Permanent Forest Estate

Constitution in Myanmar

Mr. Ye Lwin Aung

16:00 Closing

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4-6

図4-4 本邦研修の様子

林野庁(表敬) アジア航測

RESTEC 調布駐機場

京都大学 京都府立大学

西粟倉百年の森 真庭市バイオマス施設

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4-7

本邦研修に対する研修生によるアンケート結果を表4-5に示す。総合評価平均は5段階中5と高評

価であった。

表4-5 本邦研修に対する研修生のアンケート(回答者:研修生代表Staff Officer)

1 (not good), 2 (need improvement), 3 (good ), 4 (very good),5 (excellent)

(3)ワークショップ

本事業の活動報告および成果について報告するとともに、情報共有と意見交換を行った。ミャ

ンマー側からは炭素排出、エコシステムサービス、衛星データと地上データを統合したバイオマ

ス推定、RSとGISによる土地利用変化把握などの研究例が発表され、森林減少・劣化、REDD+に

関連する関心の高さがうかがえた。

また、本事業に対しても技術的・具体的な質問も多く、さらなる支援を期待された。なお、本

事業の委員である森林総合研究所 佐藤保委員、同研究所 道中哲也主任研究員がオブザーバーと

して参加され、また同研究所 森林管理研究領域 鷹尾元チーム長には森林総合研究所とミャンマ

ー森林局との協働プロジェクトの紹介がなされた。

・ 実施月日 : 2015年1月28日

・ 出 席 者 : 環境保全林業省 森林研究所所長 以下50名

・ 開催場所 : ミャンマー森林研究所 大講堂

ワークショッププログラムを表4-6に、ワークショップの様子を図4-5に示す。

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4-8

表4-6 ワークショッププログラム

Time Program Presenter

09:00 09:30

Registration

09:30 10:30

Opening ceremony

Opening speech Director, FD Mr. Takio Sano Senior General Manager, Fellow, AAS

Photo session, Tea Break 10:30 10:50

SoFDM Project summary and Forest Degradation Analysis by RapidEye

Mr. Naoki Mitsuzuka Forest Engineer, AAS

10:50 11:10

Forest Factor Measurement utilizing UAV - for Forest degradation monitoring -

Mr. Yukio Wada Senior Forest Engineer, AAS

11:10 11:30

Application of LiDAR Surveying in Seasonal Tropical Forest- Sharing the practical knowledge in Cambodia -

Mr. Takio Sano Senior General Manager, Fellow, AAS

11:30 11:50

Introduction to an FFPRI-FD project; "Nesting a REDD+ project carbon accounting and monitoring system under the (sub-) national system – a case study"

Dr. GenTakao, Chief, Resources Analysis Laboratory, Forestry and Forest Products Research Institute

12:00 13:10

Lunch

13:10 13:30

Carbon Estimation from Deforestation in Dry Depterocarp Forest, Central Myanmar

Dr. Yu Ya Aye, Staff Officer, FRI

13:30 13:50

Integration of Ground Inventory Data with Landsat Imagery to Estimate Aboveground Biomass of Tropical Deciduous Forest in BagoYoma, Myanmar

Mr. Khine Zaw Wynn, FD

13:50 14:10

Spatial Assessment of Ecosystem Services in Nay Pyi Taw, Myanmar

Mrs. Kay Khine Lwin, FD

14:10 14:30

Monitoring of Land use and Land cover changes in Tanintharyi Nature Reserve using RS & GIS

Mr. Nay Lin Tun, FD

14:30 14:50 Q&A and Discussion

14:50 15:00

Closing remarks Dr. Thaung Naing Oo, Director, FRI

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4-9

図4-5 ワークショップ実施風景

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5.事業のまとめと課題

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5-1

5.事業のまとめと課題

5.1.平成 27 年度の成果のまとめと課題

平成27年度事業のまとめを表5-1に示す。また、「衛星データによる森林劣化モニタリングに関

する技術開発」および「小型UAVによる森林劣化状態把握に関する検討」について以下に述べる。

表5-1 平成27年度の事業成果のまとめ

活動区分 事業成果

衛星データによる森林劣化モ

ニタリングに関する技術開発

(1) 森林変化図の作成

(2) 森林劣化監視重点地域の抽出

(3) パイロット調査対象地の追加

(4) RapidEyeデータの収集・整備(追加10シーン、計26シーン)

(5) RapidEye植生指数算出(NDVI,RE-NEVI,WDRVI0.1,同0.2)

(6) 植生指数と林分物理量の相関解析

(7) RapidEyeテクスチャー値算出

(8) テクスチャー値と樹冠径の相関解析

(9) まとめと課題の整理

小型 UAV による森林劣化状態

把握に関する検討

(1) UAV機体の検討・選定

(2) パイロット調査地域における森林調査(7プロット)

(3) パイロット調査地域における空中写真撮影(21プロット)

(4) オルソフォト、3次元モデル、DSMの作成(21プロット)

(5) UAV成果による森林情報把握に関する試行

(6) まとめと課題の整理

技術移転と人材育成 (1) ワークショップ開催(1回50名)

(2) 技術研修(研修マニュアルの作成、1回15名)

(3) 現地調査によるOJT研修(1回約7名、森林調査、UAV撮影)

(4) 本邦研修(1回3名)

(5) 事業報告書の作成(和文、英文)

5.1.1.「衛星データによる森林劣化モニタリングに関する技術開発」まとめと課題

「衛星データによる森林劣化モニタリングに関する検討」についてのまとめと課題を以下に述

べる。

(1)まとめ

・ 2時点の森林分布図を用いて、森林変化図を作成した。

・ 森林変化図をもとに森林劣化監視重点地域の抽出を行った。

・ パイロット調査対象地域は、過年度の対象地に加え、森林劣化監視重点地域でもあるマン

ダレー管区モゴー地区とした。

・ RapidEyeデータを新規に10シーン購入・整備した。過年度の整備分と合わせて26シーンを

そろえた。

・ RapidEyeデータを用いて植生指数を算出(NDVI,RE-NEVI,WDRVI0.1,同0.2)した。

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5-2

・ 森林調査による林分物理量と比較したところ、NDVI、WDRVI(α=0.1および0.2)の最大

値と胸高断面積合計が高い決定係数を示した。またWDRVI(α=0.1)の最大値は、樹高、

胸高直径、胸高断面積合計、炭素蓄積量と高い決定係数を示した。

・ 植生指数は下層植生である草本、低灌木の被覆にも影響を受ける。この欠点を補うために

は、衛星データから得られる異なる次元の情報を加えて、林分物理量の推定の精度と確度

を高める必要があることがわかった。

・ 植生指数の欠点を補う目的でRapidEyeデータから得られるテクスチャー値と林分の樹冠

径平均値の相関解析を行った。テクスチャー値(11x11画素の標準偏差)と樹冠径が最も

高い決定係数を示し、植生指数の欠点を補う傾向が確認された。

(2)課題

・ 炭素蓄積量推定モデル式を作成するため、植生指数とテクスチャー値を併用した手法開発

が必要である。

・ RapidEyeデータで確立された炭素蓄積量推定手法を全国展開するためにLandsatデータと

の関係を検討する必要がある。

・ 全国を対象とした森林劣化モニタリングにおける衛星データ利用の位置づけについて、検

討が必要である。

5.1.2.「小型UAVによる森林劣化状態把握に関する検討」まとめと課題

(1)まとめ

・ 高分解能衛星から抽出した森林劣化HotSpotに対して林分詳細情報(林分物理量推定など)

の把握を目的とし、アクションカメラを搭載した安価なマルチコプターによる空中写真撮

影を行い、森林劣化の現況把握への適用方法について検討した。

・ 調査対象地においてUAVによる空中写真撮影と森林調査を実施、両者の関係を解析し

UAVの利用可能性について検討を行った。

・ 小型UAVは機動性が高く、よほどの悪天候でない限り容易に空中写真撮影が行うことが出

来、また、近年の3次元復元技術の進歩によって簡便に安価にオルソフォトなどを作成で

きる。

・ 3次元モデル復元ソフトウエアより作成されるオルソフォト、点群データ、DSMを用いた

林分状況の把握、樹高測定は実利用が可能であることが実証された。

・ 林内点群モデルによる直径および本数計測は、一定の条件を満たす場合にのみ有効であ

る。

(2)課題

・ UAVより求めたDSM(表層面の高さ)を利用し、材積(バイオマス)を推定の可能性が

あるが、そのためには簡易かつ精度の高いDTM(地表面の高さ)を求める手法開発が課

題である。

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5-3

・ 今後は、これまでに開発したUAVを利用した林分物理量測定手法をとりまとめ、実利用に

向けた運用方法を技術指針として取りまとめる必要がある。

5.2.平成 28 年度に向けて

本事業の目的は、「森林劣化による森林炭素蓄積量変化を把握する簡素で効率的な手法の開発

や、研修等を通じた人材育成と技術移転を行い、開発途上国の森林劣化対策に必要な技術力の向

上を支援すること」である。

そのため、「衛星リモートセンシング技術による林分物理量推定手法を適用した全国展開可能

な森林の炭素蓄積量変化の把握手法に関する技術指針を作成する」ことを目標としている。

5.2.1.森林劣化による炭素蓄積量把握のための技術開発

第2章でも述べたが、森林劣化にともなう炭素蓄積量の変化を把握するためには、まず森林劣化

地点を抽出し、現況の炭素蓄積量を把握しなければならない。平成26、27年度事業ではこれらの

課題を解決するために衛星データの解析、UAV撮影および森林調査から個々の相関分析を行い、

林分物理量および炭素蓄積量推定手法について検討を行った。森林劣化箇所の抽出から、炭素蓄

積量推定、現況把握までの流れを下記に示す(図5-1)。

①森林劣化地点を抽出 ミャンマー森林局作成の2時点の森林区分図に

より、密閉林(Closed Forest)から疎林(Open Forest)に変化した箇所を森林劣化監視地域とし

て抽出する。

②森林劣化地点の炭素蓄積量推定 次に森林劣化地点を含むRapidEye衛星から求

められる植生指数とテクスチャー指数によって

森林炭素蓄積量を推定する。なお、この結果は①

の森林分布図の精度検証データとしてフィード

バックすることが可能である。

③森林劣化地点の現況確認 森林劣化地点の林分状況と推定された炭素蓄

積量とを把握するために、森林調査およびUAV空中写真撮影の現地調査を実施し、撮影データか

ら得られる3次元データ等を用いて現況の林分物

理量を計測する。

図5-1 森林劣化箇所の把握と炭素蓄積量

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平成28年度は前節5.2.1で述べた衛星データ等を用いた森林劣化による炭素蓄積量把握技術を

ブラッシュアップするとともに、全国レベルで森林劣化にともなう炭素蓄積量変化把握のための

技術指針を作成する。平成26、27年度の過去2ヵ年の事業成果と課題を踏まえ、事業最終年である

平成28年度の活動内容(案)を整理し図5-2に示す。

技術開発 目

平成 26 年度

「林分物理量把

握のための検討

と課題整理」

平成 27 年度

「林分物理量把握手法

の方向性の決定」

技術開発 目

平成 28 年度

「炭素蓄積量把握のた

めの技術指針の作成」

衛星データ

による

技術開発

衛星データによ

る林分物理量推

定と課題整理

(ステップ 1)

衛星データによる林分

物理量推定と課題整理

(ステップ 2)

衛星データ・

UAV・

現地調査を

統合した

技術開発

①衛星データによる炭

素蓄積量推定手法のま

とめ

植生指数による

試行と検討

テクスチャー値と樹冠

径の関係検討

②UAV による炭素蓄積量

推定手法のまとめ

植生指数と林分

物理量の関係性

が確認された

テクスチャー値が植生

指数の補完情報となり

得ることが確認された

③全国レベルでの炭素

蓄積量変化把握手法の

開発

植生指数の弱点

を補完する情報

が必要

植生指数とテクスチャ

ー値を統合した林分物

理量推定方法が必要

①植生指数とテクスチ

ャー値とによる炭素蓄

積量推定精度の評価

UAV

による

技術開発

UAV の特徴整理

と利用可能性の

検討と課題整理

UAV による林分物理量

推定と課題の整理

②表層高データを用い

た材積推定手法の開発

と精度検証

試験飛行による

利用法の検討整

理と 3次元復元

解析の試行

UAV 空中写真撮影の実

施と林分物理量の相関

分析

③衛星データ、UAV、現

地調査等を融合した手

法案の確立

林分現況把握に

対して利用可能

性があることが

確認された

林分概況把握、樹高計

測への有効性が確認さ

れた

データ歪の改善

と林分物理量推

定の精度検証が

必要

材積(バイオマス)推

定手法の検討が必要

図5-2 平成26、27年度の実施内容・方法・課題と平成28年度の実施内容(案)

5.2.2.森林劣化による全国レベル炭素蓄積量変化把握のための技術開発

現段階で想定している全国展開を想定した森林劣化による炭素蓄積量変化把握の技術指針案、

①LANDSAT単独モデルと②NFI連携モデルを次に示す。

①Landsat単独モデル Landsat衛星を用いたCS推定モデル式によって全国の森林炭素蓄積量を推定する。これを5年

ごとなど定期的に実施し森林炭素蓄積の変化量を推定する。Landsat衛星は無償で提供されてい

るためにコスト面でのメリットは大きいが、RapidEye衛星で開発予定の炭素蓄積量推定技術の適

用可能性を精度評価も含めて検討する必要がある。

②NFI連携モデル 全国にグリッド交点などの定点調査地(PSP)を設け、森林調査・UAV撮影などによって炭素

蓄積量を測定し、定期的にモニタリングすることで森林劣化の炭素蓄積量の変化を把握する(図

5-3)。具体的な手順を以下に示す。 ・全国にグリッド交点などの調査地点(PSP)を設置する。 ・調査地点への到達可否を判定する。

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5-5

<到達可の場合> ・初回は森林調査とUAV空撮の両方を実施する。 ・炭素蓄積量を推定するためのCS推定モデル式(1)を作成する。 ・次回以降は、UAV空撮のみを実施し、この式をもって森林炭素蓄積量を推定する。 <到達不可の場合> ・RapidEyeデータ解析をもとにCS推定モデル式(2)より炭素蓄積量を推定する。 *この場合、別途地域別に森林調査との関係よりCS推定モデル式(2)を作成しておく必要がある。

図5-3 森林炭素蓄積量変化把握モデル-NFI連携モデル-(案)