日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

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我が国の認知症高齢者数の推計 156 189 280 345 410 470 6.0 7.3 9.5 10.2 11.3 12.8 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 0 100 200 300 400 500 2000200520102015202020252010年推計 65歳以上人口に対する比率 認知症高齢者の日常生活自立度以上の高齢者数推計 万人 1

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第15回在宅医学会 in 愛媛にて発表した資料です。認知症の国家戦略の国際比較と、日本の国家戦略であるオレンジプランのこと。そして新しい取り組みである「初期集中支援」について、この半年間実施してみた経験からの課題抽出を行いました。

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Page 1: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

我が国の認知症高齢者数の推計

156 189

280

345

410

470

6.0

7.3

9.5 10.2

11.3

12.8

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

0

100

200

300

400

500

2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 2025年

2010年推計 65歳以上人口に対する比率

認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の高齢者数推計

万人 %

1

Page 2: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

海外の認知症への国家戦略

国名 高齢化率 認知症数 国家戦略名 開始時期

オランダ 15% 30万人 認知症統合ケア プログラム(第2期)

2004

フランス 17% 80万人 プラン・アルツハイマー2008-2012(第3期)

2001

イギリス 17% 82万人 国家認知症戦略 2009

日本 23% 305万人 なし

フランス 国立病院老年科病棟 2

オランダ アルツハイマーカフェ オランダ ケアファーム

Page 3: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

オランダ・フランス・イギリスの 認知症施策に共通していたこと

• 認知症者と介護者のQOLを維持しながら、 できる限り住み慣れた家での暮らしをサポート

• そのためにも早期診断して、 早めに治療やケアにつないでいく

• 医療費介護費はすでにパンク状態につき、 低コストで良質なケアを考える

• それを実現するのが、多職種チームによる キュアとケアの包括的な提供

• 認知症への理解のある社会、地域作り 3

Page 4: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

認知症施策推進5か年計画 (2013年-2017年 オレンジプラン)

1.標準的な認知症ケアパスの作成・普及

2.早期診断・早期対応 「認知症初期集中支援チーム」の設置

早期診断等を担う医療機関を500カ所整備 など

3.地域での生活を支える医療サービスの構築 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定

精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援 など

4.地域での生活を支える介護サービスの構築

5.地域での日常生活・家族の支援の強化

6.若年性認知症施策の強化

7.医療・介護サービスを担う人材の育成

1.標準的な認知症ケアパスの作成・普及

2.早期診断・早期対応

認知症初期集中支援チームの設置 早期診断等を担う医療機関を500カ所整備 など

3.地域での生活を支える医療サービスの構築 「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定

精神科病院からの円滑な退院・在宅復帰の支援 など

4.地域での生活を支える介護サービスの構築

5.地域での日常生活・家族の支援の強化

6.若年性認知症施策の強化

7.医療・介護サービスを担う人材の育成

4

Page 5: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

認知症ケアの流れを変える

認知症の進行 認知症の初期

危機的状況

精神科入院や 施設入所へ

早期診断・介入

自宅での生活を出来るだけ長く

これまで これから

さらに悪化 予後の改善 5

Page 6: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

初期集中支援について

初期集中支援 多職種チーム

認知症早期

自宅での

生活が継続 • 医師による早期診断につなげる

• 在宅での具体的ケアの提供と指導

地域ケアマネ

に引き継ぐ

6か月後 調査項目: 生活歴・病歴 身体・認知能力 ADL、生活環境 普段の生活 性格・価値観

自宅での支援

• 看護師、心理士、作業療法士、PSWなど

で構成された専門チームがご自宅に訪問

• 認知症初期から関わり、記憶が失われる前に、

本人の情報や意思、どんな生活を送りたいかを聞き取る

• その方の人生や譲れない価値を調査、記録して

行動心理症状への対応方法をアドバイス

• 地域での生活が続けられるように包括的支援プランを立て

6ヶ月をめどに地域のケアマネや介護者らに引き継ぐ

6

Page 7: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

当院での実施内容

7

• 訪問看護師 4名 (医)プラタナス ナースケア・ステーション所属、訪看業務との兼務) • 精神科医 1名 (桜新町アーバンクリニック非常勤医) • 在宅医 2名 (桜新町アーバンクリニック常勤医) ※平成25年度より作業療法士 1名が参加予定

初期集中支援

チーム員の構成

対象者抽出

情報収集 アセスメント

多職種診断会議 アクションプラン

の作成 支援の実施

目的: 認知症診断および介護支援

ご本人の意思決定支援

対応職種: 看護師、作業療法士、臨床心理士

必要時間:初回 1時間(診断) 2時間 X2回(アセスメント) 使用ツール: 英国Croydonのアセスメントシート

行動観察方式(AOS) KOMIチャート など

調査項目: 現況(症状)、既往歴および来歴

現在の身体状態、薬物・飲酒歴

社会的状況、生活習慣

学歴、職業歴、趣味や好み

家族構成・関係性、家族歴

• 地域包括支援センターからの抽出

• 地域ケアマネージャーからの抽出

• 訪問診療対象者もしくはその家族からの抽出

• 認知症もしくは認知症と疑われる人の家族からの抽出

認知症の人の状態把握や

不足しているケアの抽出を

介護・福祉職もアセスメント

しやすいようにKOMI理論

を採用

1.情報共有の徹底

(クラウド型地域連携システムEIR) 2.生活上の支障の抽出

(KOMI理論) 3.問題点の分析(行動分析) 4.提供されるケアの統一

5.認知症状進行度や

生活過程の評価

(KOMI理論、Zarit、

生活支援アンケート)

・教育的支援

1.その人の認知症に関する理解

(認知症の経過の概要、認知機能障害と行動心理症状) 2.認知症に関する薬物療法

3.非薬物療法によるアプローチ

4.介護にあたる際の基本

(認知症の人の気持ちの理解、その他) 5.現状抽出された問題への対応方法

6.食事・排泄・入浴などの日常生活活動に支障が

でてきた際の行動分析チェックシート

7.住居等の環境整備プランの提示

8.各種介護・福祉サービスの活用について

・本人の権利擁護と意思決定支援

Page 8: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

現在までの実施状況 2012.10-2013.02

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紹介元

認知症診断

かかりつけ医

専門医受診歴

介護保険導入

認知症テスト

診断名 認知症 重症度 CDR

具体的支援内容

Case 1 86,M 独居

地域包括

あり ○ ○ ○ MMSE

28

レビー小体型 1 軽度

住宅改修、本人への教育、意思決定支援

Case 2 79,F 独居

診療所

あり ○ ○ ○ MMSE

20

アルツハイマー型

1 軽度

身体疾患の悪化に対して、在宅医療の導入

Case 3 61,M 独居

地域包括

なし × × × HDS-R

18

アルツハイマー型

3 重度 介護保険導入、家族教育にて家族が同居することに

Case 4 82,M 地域

包括 なし ○ × ○

MMSE

27

アルツハイマー型

1 軽度 介護保険区分変更、介護サービスの導入、家族教育

Case 5 69,F 地域

包括 なし ○ ○ ○

MMSE

26

双極性障害 非認

知症

精神科担当医への助言、 認知症ではなかった

Case 6 87,F 施設

在宅医

あり ○ ○ ○

MMSE

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アルツハイマー型

1 軽度 家族、老人ホームスタッフへの教育、在宅医への助言

初期集中支援

Page 9: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

初期集中支援の課題と問題点

患者の拾い出し

• 初期認知症の定義が不明

• 地域でどうやって初期認知症を見つけるか

専門チームの人材確保、ツールや教材の統一化

• 認知症ケアに詳しい看護師、作業療法士や精神科ソーシャルワーカーの不在

• 診断会議に欠かせない認知症専門医、精神科医の確保

• アセスメントツールやケアプラン作成、家族指導のための

標準的マニュアルの不在

地域包括ケアに関わるスタッフへの研修・教育

• 在宅医、かかりつけ医、看護師、地域包括支援員の

認知症ケアに対する知識不足、教育研修体制の不備

• 地域のケアマネや介護士、家族への効率的な認知症教育

継続的支援、地域リソースの充実

• 初期集中支援以降の継続的な支援体制

• 認知症の方のペースに合わせたデイサービスや

グループホームの不足 9

初期集中支援

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オランダの認知症の統合ケア Geriant

• 初期集中支援に始まり、最期まで切れ目無いサービスを提供

• 中心的役割を果たすのが「ケースマネージャー」。全員が看護師として認知症ケアの経験を持ち、医療、介護だけで無く、生活支援も含めた専門的な研修を受けている

• ケースマネージャー1人で70人程度を担当。よって普段ケアする人たちへの教育が欠かせない。統一した教育マニュアルがある

10

認知症のケースマネジメントを中心に「コーディネートされたケア」を提供

Page 11: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

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1. 仕組みの開発・多様化

2. ケアラーの教育システム

3. ケアラーの健康管理

4. 国内全域のMAIA(ワンストップ相談窓口)の設置

5. ケースマネージャーの配置

6. 在宅ケアの強化

(在宅看護以外の新たな多職種チーム) 7. Domotique(ホームオートメーション)の開発

8. 告知から最期までのケアの仕組みの作成と適用

9. 専門職への新しい支払い体系の開発

10. 認知症情報カードの作成

11. 国内全域のメモリーセンターの設置

12. 国内27地方にメモリー資源研究センターを設置

13. メモリーセンターの強化

14 .医原性事故(薬害)の監視

15. 薬物療法の適正使用

16. 行動障害に特化したケアユニットを設置

17. 認知症専門認知行動ユニットを設置

18. 若年性認知症の居住施設

19. 若年性アルツハイマーのセンター

20. 専門職の開発

21. 研究ネットワークの創出

22. 臨床研究と非薬物療法の評価法改善

フランス認知症国家戦略 44の施策

23. 博士・ポスドクの採用

24. ケア・教育・研究の3つを両立できる人材の登用

25. 神経心理学研究と社会学研究

26. 革新的研究の支援

27. 研究の方法論の開発支援

28. 画像研究(人体用11.7テスラMRI) 29. コホート研究

30. 遺伝子研究

31. ネズミキツネザルのゲノム解析

32. 臨床医に対する臨床疫学教育

33. 官民連携

34. 疫学研究

35. 電話相談窓口の設置 Allo France Alzheimer

36. 国内27地方ごとの計画実施の進捗会議の開催

37. 国民への啓発活動

38. 倫理を考える場

39. 施設処遇に対する法整備

40. 自己決定をテーマとした公開討論

41. 研究の情報公開

42. EUの優先課題へ

43. EUでの研究促進

44. 欧州会議の開催(2008年秋)

Page 12: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

イギリスの認知症国家戦略 < 5つの重点課題 >

1. メモリーサービスによる初期集中支援

2. 介護施設でのケアの充実

3. 急性期病院での対応改善

4. 抗精神病薬を減らす

5. 家族・介護支援者へのケア

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Page 13: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

精神科病床の問題

⇒精神異常者は病院に閉じ込めておく

という体質が未だに続いている

人口1000人あたりの精神科病床数

35万床!

日本を除く平均在院日数18日

*OECD HealthData 2008「2005年診断分類別精神及び行動の障害」

298日!

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認知症の入院患者数の推移

160,000

170,000

180,000

190,000

200,000

210,000

220,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

1996 1999 2002 2005 2008 2011

認知症 統合失調症

認知症の入院が

増えている

Page 14: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

厚労省から国の認知症施策の基本方針が発表

「今後の認知症施策の方向性について」 平成24年6月18日

「かつて私たちは認知症を何も分からなくなる病気と考え、徘徊や大声を出すなどの症状だけに目を向け、認知症の人の訴えを理解しようとするどころか、多くの場合、認知症の人を疎んじたり、拘束するなど不当な扱いをしてきた。」

このプロジェクトは「認知症の人は、精神科病院や施設を利用せざるを得ない」という考え方を改め、認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会の実現を目指している

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Page 15: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

認知症ケアのポイント

住み慣れた自宅や地域での生活を続ける

ことが、症状緩和や予後の改善につながる

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Page 16: 日本在宅医学会 認知症初期集中支援 20130330

東京都世田谷区における 認知症初期集中支援サービス の構築に向けた取組み

遠矢純一郎1)、片山智栄1)、芝原由美1)、小澤晶子1)、尾山直子1)、

大須賀悠子1)、村上典由1)、北山摂1)、西田美幸1)、上野秀樹2)

医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック1)

社会福祉法人ロザリオの聖母会 海上寮療養所2)

第15回日本在宅医学会

2013.03.30

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