ほ 187187 [ほっかいどう 愛護]発行/2020年1月...

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187 [ほっかいどう 愛護]発行/2020年1月 発行所/札幌市中央区北2条西7丁目かでる2・7 4F TEL. (011)271-0228 発行者/北海道知的障がい福祉協会 会長 荒 洋一 Contents 3 …………………………………………… 北歩~塾 4 2019年度日中活動支援部会全国大会北海道大会 6 社会福祉法人における地域貢献の取り組み 7 …………… 手しごと探検隊 拡大版 8 …………………………………………………… 本の紹介 表紙の写真 8 ……………………………………………… 2 …………………………………………… 年頭所感 第3回空知フレンドカレッジ

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ほっかいどう

187

[ほっかいどう 愛護]発行/2020年1月 発行所/札幌市中央区北2条西7丁目かでる2・7 4F TEL.(011)271-0228 発行者/北海道知的障がい福祉協会 会長 荒 洋一

Contents3……………………………………………北歩~塾4…2019年度日中活動支援部会全国大会北海道大会6…社会福祉法人における地域貢献の取り組み7……………手しごと探検隊 拡大版8……………………………………………………本の紹介

表紙の写真 8………………………………………………

2……………………………………………年頭所感

第3回空知フレンドカレッジ

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北海道知的障がい福祉協会 会長 荒   洋 一

年 頭 所 感

新たな時代を迎えて

 新年明けましておめでとうございます。令和となって初めてのお正月を会員の皆様には、つつがなく新年を迎えられたこと

とお慶び申し上げます。旧年中は、本会の事業推進につきまして、格別の御支援、御協力をいただいきましたことに改めてお

礼申し上げます。

 昨年を振り返りますと、平成から令和へと年号が改まり、新たな歴史の1ページともいうべき新天皇のご即位の祝賀にふれ

ることができ感激いたしました。

 一方、10月には消費税が8%から10%になりましたことは、私共の施設運営にも大きな影響を感じており、人手不足と相

まって一層厳しさが増したものと感じております。

 また、台風15号、17号等により、関東地区、東北地区等で浸水や停電などによる大きな被害が発生したことから、会員の

皆様に募金をお願いしたところ、多額の義捐金が寄せられたことに感謝申し上げます。

 本年は、東京を中心に2020オリンピック・パラリンピックが開催されます。障がいの有無を問わず、多くのアスリートが

競技に参加することは、大きな意義があり、北海道ではマラソンと競歩が行われることになりました。

  利用者の皆様と一緒に、この北の大地で繰り広げられるアスリートの活躍を見ることができることは大変幸せと感じてい

ます。

 障がいのある方々をめぐっては、障がいの有無に関わらず、一人ひとりが権利の主体者であり、すべての人々がその人らし

く地域社会の中で暮らす、地域共生社会の実現が求められています。そのためには、権利擁護・意思決定支援の推進が重要で

あり、ソーシャルワークの視点で一人ひとりの利用者の権利を擁護し、自らの人生は自身で決める、そのような支援の実践を

推進することが私たちの大きな使命であります。

 さらには、第五期障がい福祉計画に示されている、利用者の重度高齢化に対応した地域の受け皿となる地域生活拠点事業の

整備と基幹相談支援センターの設置の促進については、私たちも積極的に取り組みを進めていかなければならないものと考え

ています。会員施設・事業所は日頃の運営を通して、それぞれの市町村・生活圏域の障がい者福祉の現状を知り尽くしている

と思います。地域の課題を確実に捉え、課題解決を積極的に発信する活動を推進していくことは私共の市町村・生活圏域に対

する地域貢献となるものと思います。

 次に、私共の使命は、利用者の安心、安全を前提として権利擁護を支援することですが、障がい者虐待が全国各地で報告さ

れている現状にあります。2018年度は、全国で2,745件の虐待が報告されており、道内においても施設従事者による虐待が、

毎年10件以上発生していることは誠に残念の極みです。私共は、この問題を真摯に受け止め、虐待行為のない北海道を目指

していきたいと切に願うところであります。当協会の権利擁護委員会において更に研究、研鑽を行ってまいる所存です。

 近年、自然災害が全国規模で風水害、地震等の被害が多発しております。北海道でも大きな災害があった場合を想定し、8

地方会と連携した実務的な災害対策を構築すべきと考えております。

 そのひとつとして、平成30年12月に不慮の事故にて急逝されました、本会前常務理事の加藤勲氏のご遺族から協会に対し、

多額の寄付が寄せられました。このご寄付を原資として、加藤氏の御遺徳を偲びそのご功績とご遺志に応えるために、加藤勲

記念災害対策基金を創設し、災害活動に活用させていただく運びになりましたことを、ご報告申し上げます。

 私共の協会も470会員を超す大きな組織となりましたが、それに伴い協会の果たす役割も大きくなってきたものと感じて

おり、社会的にも認められる組織でなくてはならないものと決意を新たにするところです。北海道知的障がい福祉協会が更な

る発展を続けるためには、会員皆様の御支援、御協力なくしては達成されませんので、より一層のお力添えをお願いしまして、

新年の御挨拶とさせていただきます。

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3「ほっかいどうAIGO」はインターネットでもご覧いただけます。http://www.h-aid.or.jp

北歩~塾「“生きがいの郷”富良野あさひ郷 創設者 荒川廣秋 氏について」

特別養護老人ホーム北の峯ハイツ施設長 福 永 吉 克 荒川廣秋氏は1937年利尻町で出生、中学生の時に札幌市に移り住み高校を卒業後、東京都で就職、その後1960年に稚内市にある緑が丘学園、旭川市の希望学園施設長を経て1974年36歳の若さで北の峯学園の施設長に就任しました。 北の峯学園は、のちの理事となられた石津富雄さんが知的障がいのある弟の安住できる場所を作りたいということで、富良野市中御料に17haの土地を購入したことから始まります。親の会などの市民運動もあり、どうにか資金のめどが立ち、建設に向けて見学に行った希望学園にて初めて会った荒川氏に、北の峯学園の園長になってほしいと誘ったということです。 1974年、荒川氏を開設準備室事務局長に、西出氏、細野氏、石津氏、南雲氏、七里氏、

高野氏の7人の侍が富良野に集結し、開設に向けて準備を進め、その年の12月に認可が下りました。定員32名で開始、翌年の4月に定員を40名に変更、6月には第2期の工事が始まり、10月には定員を60名に、12月には70名に変更しています。翌年の12月には特別養護老人ホーム設置についての協議を始め、わずか5年後の1979年特別養護老人ホーム北の峯ハイツを定員50名で開設しました。この年に「北の峯学園」から「富良野あさひ郷」に法人名を改名しています。 ではなぜ荒川氏が特別養護老人ホームを作りたかったのかというと、当時北の峯学園に入所している園生たちの中には60歳くらいの方たちもいたようで、親亡き後も困らないようにとの思いがあったようです。障がいのある人たちが高齢になっても困らないような生きがいの郷づくりを考えていました。翌1980年には同じ敷地内に北の峯病院が開院し、園生の受診や夜間の緊急時対応など非常に助かりました。 また1981年に道北地区の会長であった荒川氏は施設で作られた野菜や作品などを販売する、第1回道北愛護展を旭川市の丸井デパートや買物公園などで開催しました。当時は大変な売れ行きで日に30万~40万円も売れたとの事です。北の峯学園の園長をされながら、11年間地方会長を務めておりましたので、道北愛護展の事務局も北の峯学園が担っていました。その間も入所している園生たちを北の峯ハイツのお年寄りの介護や調理、洗濯などの実習に出したり、職員夫婦と就労している利用者と一緒に生活するタウンホーム(今のグループホーム)や、またのちに市民との憩いの場となるコミュニティセンター北の峯山荘の開設など先進的な取り組みを始めています。地域に向けては運動会、学園祭などを通し交流を深めるなど、開設当初から地域に向けて行ってきたさまざまな取り組みが徐々に浸透し現在に至っていると感じています。 富良野あさひ郷だけではなく、開設にかかわった南雲氏を北の峯ハイツから剣渕西原学園の施設長へ、また音別町の依頼もあり、七里氏が開設準備室から関わりおんべつ学園初代施設長になりました。自分の右腕でもある職員を、新しくできる施設の立ち上げのために送り出した荒川氏の懐の深さがまたすごいところかと思います。 物のない時代でしたが、地域や人とのつながりを大事にしながら、強烈なリーダーシップで次々と施設を開設し、新しい取り組みを進めていった荒川氏の行動力は、全道の施設にも多くの影響を与えたのではないかと思います。おんべつ学園を作った後ももっと先のことを考えていたと思うのですが、1993年12月に持病と諸事情で富良野あさひ郷での19年間の職務にピリオドを打つことになりました。 荒川氏の、施設を作るだけではなくそこに人が集まるような仕掛けを作り、地域とのふれあいや開放的な施設づくりへの思いがその後の富良野あさひ郷の運営にもつながっていると思います。荒川氏が常々言っていた「施設は活きもの」という言葉を改めて考えながら、もう一度原点に戻り、利用者さん目線でこれからも歩み続けていきたいと思います。

(令和元年度幹部職員研修会での講演を抜粋して編集しました。)荒川廣秋氏

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2019年度日中活動支援部会全国大会北海道大会報告北海道知的障がい福祉協会 副会長        

日中活動支援部会長 大 垣 勲 男 去る12月10・11日の両日、札幌市の京王プラザホテルに於いて日中活動支援部会全国大会北海道大会が開催されました。『生活介護事業の目的を総括し、新たに‘支援の質の向上’への一歩を踏み出そう』という大会テーマのもと全国から573名が参加されました。1日目の全体会で生活介護事業の目的を共有化し、2日目の分科会では自閉・重度重複・高齢障害の3分野における社会参加の実践報告がなされた正に総括的な研修会でした。開会式に続く森下部会長の基調報告では、国連における障害者の権利宣言(1975)を起点とし「完全参加と平等」をスローガンとした国際障害者年(1981)及び国連・障害者の10年(1983~1992)、そして障害者権利条約の締結(2014)まで脈々と続く「障害者の社会参加」という理念に基づいた支援こそが私たちの仕事の本分であることを確認し、共生社会を目指す上で私たち支援者の姿勢は「~ために」から「~ともに」で有るべきことを強調した基調報告でした。続いて国立のぞみの園の岡田裕樹研究員からは、平成29・30年度厚生労働科学研究事業「調査研究の報告並びに生活介護・就労B型のガイドライン案作成の経緯」の研究報告がありました。生活介護事業のガイドライン案においては、その利用者像として「自立した日常生活及び社会生活を営む為により多くの専門的支援を要する障害者」と総則の冒頭に整理され、事業の基本的役割としては①利用者の心身の健康・維持のための支援、②利用者の主体的な生活と自己実現を目指した支援、③利用者の社会参加の機会の保障、④利用者の権利と意思決定の保障の4点に整理し報告されました。また、生活介護事業の自己点検チェックリスト案にもしっかりと社会参加が項目としてあげられていました。全体会の締めとしては埼玉県立大学の朝日雅也教授から「改めて日中活動を問う、支援の質とは何か」という演題で講演を頂きました。障害福祉というのは、仕事(就労系)か介護かではなく、社会的役割をいかに保障していくのかということであり、WHOの健康の定義では、肉体的にも、精神的にも、社会的にも全てがみたされた状態にあることであり、「社会的健康」とは「今自分が生きている社会と前向きで良好な関係を築けること」と整理しており、良好な関係とは①他者から必要とされること、②社会の中で何らかの役割を持つこと、③周囲の人々との関わり合いがあること、④社会の中で自分の存在意義を示せることだと報告されました。社会参加というのは、社会的役割を持つだけではなく、社会を変えていくという自己有用感に結びつくことが大事と講演を結ばれました。

第1分科会報告北海道知的障がい福祉協会日中活動支援部会 副部会長        

ワークセンターほくと 施設長 小 黒 康 廣 第1分科会は、多くの方(約220名)に参加いただき、テーマへの興味関心の高さが伺えました。 前半は、(NPO)自閉症eサービス代表の中山清司氏から「豊かな生活を目指して~ライフスキルとロングライフサポート~」と題してご講演をいただき、トライアングルエフェクト(幼少期から児童期にかけては幅広い学習、青年期には培った強みや力を生かし、必要な地域生活全般スキルの幅を拡げる)という考え方を切り口に、適切な自閉症支援のプロセスを提供していくことが、その方にとっての自立を育み、自ずと社会参加の機会を拡げるとされました。中山氏の多くの実践の中から動画による解説があり、アセスメントと特性理解をベースに、実用的な地域生活を目指した支援の様子や、青年期での農福連携等の具体的な社会参加の例もご紹介いただきました。社会参加への支援は、場面の提供という「形」だけでなく、「何を支援するか」また、そのための準備は幼少期・児童期からの系統的な支援の積み重ねが重要だということが理解できました。 後半は、横浜やまびこの里ポルト能見台主任 佐藤仕展氏。北摂杉の子会ジョブサイトよど主任 倉窪明子氏より、受注作業やコロッケ販売の支援を通して、知的な障がいが重い自閉症の方、あるいは行動障がいのある方であっても、成人期にとって「働く」という重要な側面を、適切な支援によって保障することができた事例を紹介いただきました。そして更に事業所内の作業に留まらず、地域での販売や交流の場でご本人達が参画できるステージを目指す支援や、支援方略そのものを家庭生活や移動支援等のガイドヘルパーに繋ぎ、社会生活全般の幅を拡げていく展望も示されました。お二方のリアルな報告に対しフ

2019年度日中活動支援部会

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5「ほっかいどうAIGO」はインターネットでもご覧いただけます。http://www.h-aid.or.jp

ロアからは共感と、明日からの支援の励みになったとの声もいただきました。 最後に中山氏より「支援者の皆さんは、自閉症支援の適切な評価方策と支援方略を持ち、勇気をもって失敗を恐れず、ないものは創るというチャレンジ精神を大切にしてほしい。そして、自閉症の方々が社会との相互作用の中で、豊かな生活が実現できるよう一緒に頑張りましょう」と、エールをいただきました。

第2分科会報告札北荘通所 管理者 岡 本 篤 志

 第2分科会では、「重度重複障がいのある人の社会生活支援とは」をテーマに、札幌緑花会松泉グループ支援部長 髙谷直秀氏の講演から始まり、法人の歴史、重度障がいのある方への支援の積み重ねの中で得られた実践が語られました。医療従事者と現場支援者の二つの視点から、利用者の方の支援にはスタッフ間の共通理解や他職種連携が何よりも大切であること、重い障がいがあってもご本人の意思を確認する努力をし、意思表示・決定に繋げること、社会参加とその評価尺度について等々が報告されました。 講演の後は仙台つどいの家管理者 山口収氏、伊達コスモス21ふみだす主任 川上里美氏からそれぞれ実践報告があり、山口氏からは重い障がいのある利用者が街中の飲食店で食事がとれるようになるまでを記録した映像を中心に、事業所・支援者の“想い”が地域の様々な人に伝わって協力を得る中で、ご本人の願いや想いを具現化していく様子を見ることができました。「地域で生きるとは?」「事業所・支援者の役割とは?」といった部分でたくさんのヒントをいただける内容でした。 川上氏からは、伊達市という町の中で重い障がいのある方の地域生活を支える大切なポイントとして、ご本人の「居場所」「活動」「役割づくり」といった環境整備と、支援の工夫、如何に地域の方々と接点をつくり繋いでいくか(市民への働きかけも含め)といった部分を実際の映像等を使いながらご紹介いただきました。地域との関係がつくられていく中で、お互いに好ましい変化(お互いを知ることの大切さ)が生じ、その後の関係も好循環に繋がっていることも語られました。日々の利用者の方との丁寧な向き合い方(実践)がリアルに伝わってくるお二人からの実践報告でした。 研修も二日目を迎え、中にはお疲れの方もいらっしゃったと思われますが、非常に中身の濃い講演や実践報告がされたことで、皆さんの関心も高く熱を感じられた会場内の雰囲気でした。いずれもキーワードは「(重い障がいがあっても)地域で生きる」であり、社会参加を支えていくための視点は今後更に重要なものになると再認識できた第2分科会でした。

第3分科会報告ふみだす 所長 廣 澤 佐起子

 第3分科会では「高齢障がい者の社会参加とは」をテーマとし、独立行政法人国立重度知的障がい者総合施設のぞみの園総務企画局事業企画部部長 古川慎治氏より「高齢知的障がい者支援の実際」と題しまして講演をいただきました。古川氏の経験豊富な実体験をもとに、高齢化の現状、支援の実際、高齢化を支える制度と仕組みなどを幅広くお話をしていただきました。高齢障がい者を支援するうえで理解しておかなければならない基本を再確認し、更に「私たち支援者は何をすべきか」という事を考えさせられる機会となりました。実践報告では社会福祉法人大府福祉会ひだまり施設長 杉原健一郎氏から、「高齢障がい者の社会参加と社会生活支援の実践報告」と題して発表していただきました。大府福祉会では高齢化する利用者への対応プロジェクトを立ち上げ、高齢利用者の事例の振り返りや、必要な支援や課題について整理し高齢化に対する法人の課題を洗い出すなど、法人挙げての取り組みや実践についての発表がありました。高齢障がい者の社会参加や社会生活支援において、まずはベースラインをおさえる事を基本とし、ストレングスシートを作成し、職員、家族などが共有し支援していく事が必要であることを報告して頂きました。最後に社会福祉法人侑愛会星が丘寮施設長 中野伊知郎氏には、高齢となった自閉症者の社会参加や、終末期を迎えた自閉症の方のサポートについて、実践をとおしての取り組みや課題などについて発表頂きました。高齢障がい者の中でも「自閉症」に特化した取り組みや発表が今まであまりなかったことから、参加者の期待と納得が大きく感じられました。特に自閉症の方の終末期支援については、ケアチームを立ち上げ、支援者のみならず病院スタッフにも協力を得て構造化していくなどの取り組みは、参加者の事業所でも今後起こりうることであり大変参考になったことと思います。高齢化していく利用者の日中活動において、医療や余暇ではなく、利用者の現状を把握し、それぞれの高齢期において社会との接点を無くすことなく、社会参加や社会生活支援を実践していく事が必要であることを確認する事ができた第三分科会になりました。

全国大会北海道大会 令和元年12月10〜11日会場 京王プラザホテル札幌

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社会福祉法人における地域貢献の取り組み岩内あけぼの学園 支援部長 斉 藤 麻優子

岩宇地区相談支援センター 管 理 者 伊 藤 真 基

「あけぼの福祉会における社会貢献」

<岩内あけぼの学園> あけぼの福祉会が経営する岩内あけぼの学園は、後志地方に所在する人口約12,000人の岩内町にあり、施設入所支援、生活介護、短期入所サービスを展開しています。 「障がいがあってもこの町で生活できるようにしたい」という父母の強い思いと実行力によってあけぼの福祉会が設立され、昭和58年に開設されました。開設から36年になりますが、その間に「障がい」をテーマにした地域の小学校との交流事業を平成15年から毎年行っています。 この事業は、小学生に「障がい福祉について理解してほしい、施設を身近に感じてほしい」という思いから学校を訪問し、当時の先生方に共感して頂いた事で実現しました。そして、この思いは現在も風化する事なく、職員や各学校及び先生方に引き継がれています。 交流事業は、小学校の総合学習の時間に職員が講師となり「車いすを使用した体験型の授業」や「障がいの特性、あけぼの福祉会の取り組み」について事前に授業を行うことで、障がい福祉のイメージを膨らませ施設体験へ繋げていきます。後日、授業を受けた小学生が岩内あけぼの学園に来園し、普段利用者の方々が行っている活動を一緒に体験します。 この事業を始めた当初は、廃油を使用した石鹸の製造体験やティーボールなどの活動をメインに取り組んでいました。しかし、利用者の方々が高齢になってきた事から状況に合わせて年々活動内容も変化し、現在は椎茸栽培体験、創作活動、スロットボールなどを中心に取り組んでいます。 施設体験終了後に小学生から「楽しかった、障がい福祉やあけぼの学園を知る事ができた」などの感想を聞くことができ、保護者からもこの事業について大変好評を頂いています。 地域の小学校が施設の取り組みや障がい福祉に対して理解をいただいているからこそ、16年間と長きに渡りこの事業を続ける事ができています。今後も、小学生に障がい福祉に興味を持って頂けるよう、この事業を永続的に取り組んでいきます。

<岩宇地区相談支援センター> 岩宇地区相談支援センターは岩内郡、古宇郡に所存する4町村(岩内町、共和町、泊村、神恵内村)から、社会福祉法人あけぼの福祉会が委託を受け基本相談を行っており、それにあわせて、特定相談、障がい児相談支援事業を行っています。 4町村は地方にあり、社会資源や福祉資源が少ない町村です。相談支援事業所も広域でありながら岩宇地区相談支援センターのみであり、すぐに福祉サービスが利用できる地域ではありません。そのため、大々的に地域貢献事業を行っている訳ではありませんが、居宅介護サービスなどを利用できるまで、相談支援専門員がボランティアとして掃除や除雪、引っ越しのお手伝い、安否確認の訪問を行っています。また、こういった取り組みを行うことで、相談しやすい環境作りに努めています。 当センターは不登校児やひきこもり支援にも携わっており、地元の小中学校の先生へ障がい福祉サービス制度や発達障がい等の勉強会を開催しています。また、本人と関わりを持つツールとして相談室に勉強や簡単な調理、漫画やDVD鑑賞、テレビゲームができる環境を用意しています。ひきこもりや不登校児の方は長年自宅で生活し、人との関わりへの不安や社会に生き辛さを感じている方が多いため、興味がある事を職員が一緒に行い信頼関係を築いています。 企業からも障がいがある方の雇用について相談を受ける事もあります。その際は会社へ訪問し、障がい特性や接し方等のアドバイスを行っています。 本来の相談業務の傍らでの取り組みとなるため、時には限界を感じることもありますが、福祉サービス制度だけでは解決できない地域で暮らしている方の心配や不安を支えていく事も地域貢献に繋がっていくと考えています。

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岩見沢には『きじ』がいる就労継続支援B型事業所 ワークつかさ

 当所はJR岩見沢駅の北東約6㎞にある、定員40名の就労継続支援B型事業所です。 支援職員は11名。利用者の方々の平均年齢は60歳を超えていますが、皆さんとてもお元気です。事業所の生産活動は、受託作業として隣接する入所施設の清掃や洗濯にも取り組んでいますが、特徴的な作業は岩見沢市の特産品である『きじ肉』の生産と、そのお肉を主食材とした食堂『きじまるくん』の運営です。 岩見沢市における雉との関わりは、昭和初期の農業害獣の駆除を目的とした放鳥が起源となり、平成前期に市の特産品として農家で食用雉の生産が始まりました。しかし、販路が伸び悩み、更には飼育設備の整備も厳しくなってきたことから、生産が途絶えかけていました。その時、市から当法人に生産引き継ぎの打診がありましたので、利用者の作業として取り組むこととなりました。雉の生産と販売 当所で生産している食用雉は原産地が朝鮮半島とされる「高麗雉」系で寒さに強い品種です。繁殖期が4月~7月に限られ、成鳥までは孵化後約7ヶ月もかかり、1羽の肉量は600g前後と少量のため、生産効率が低くそのため㎏/単価が約4,000円と非常に高価ですが、ジビエの入門編と言われます。当所では、利用者10名と職員3名で、年間約6000羽を生産しています。その内5000羽を食用にして、残りの1000羽は翌年の繁殖用親鳥とします。利用者の仕事は給餌給水・雉舎の清掃・卵の採集・移動と多岐に渡ります。雉の成長を楽しみにしている利用者が多く、大変熱心に取り組んでいます。 当所産のきじ肉には「大切な食材」という想いを込めて、昨年「宝きじ」と命名して商標登録をしました。脂身の甘さと歯ごたえが良く締まった食感が特徴で、更に臭みが少ないため、札幌や東京のフレンチや和食のレストランにも納品しています。勿論、一般販売もしています。焼き物にしても鍋物にしても、とても美味しいお肉です。

 また、近郊の有名加工会社に製造依頼して、スモークや粗挽きソーセージを販売しています。いずれの商品もワイン等お酒のお供にはマストアイテムです。食堂「きじまるくん」の運営 利用者8名と職員3名で営業しています。就労継続支援の現場であると共に、当市特産品としてのきじ肉のPRと普及も目的です。 高級ジビエと言われるきじ肉を麺類や丼物・定食に応用して、産直ならではの低価格で提供しています。料理の基本となるお米も、ラーメンの麺の原材料である小麦も当市産を使用して、他の野菜も道産を使用しています。 珍しい市の特産品なので、時々、テレビや新聞の取材を受けることがあり、その反響で身の丈を過ぎる程多数のお客様にご来店いただくことがあり、とてもありがたいことです。

終わりに ワークつかさが開設して14年が経過しました。この間「食用雉の飼育?いつまでもつの?商売になるの?」と言うご意見を多々いただきました。多分、スタッフも心のどこかに不安を抱きながらの取り組みだったと思います。現在ではそこそこのご需要に至っていますが、まだまだ周知の範囲が狭く、特産品と言いながらも「名物」に至っていません。でも、本当に旨いんです。 今後も販路を拡大すると共に、付加価値をつけて「日本一旨いきじ肉」を利用者さんと共に目指していきたいと思っています。 ご会食やご宴会にも応需しておりますので、お近くにお越しの節には、是非お立ち寄りください。『岩見沢には旨いきじがいる』

きじ料理専門店 きじまるくん岩見沢市日の出町604−1 TEL0126−22−1441営業時間11:00~16:00 定休日:毎週水曜日

 手しごと探検隊! 手しごと探検隊!拡大版

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編集会議  文章を書くのって難しいなあ…と原稿を書く度に思っています。広報編集委員に加わり数年が経ちますが、いつも原稿締め切りギリギリになりご迷惑をおかけしています(この原稿も結局ギリギリに…すみません…)。 そんな私が委員会に加わった当初からお世話になっている保坂前委員長が今回の編集会議の日に偶然札幌にいらしていたようで、この号の編集会議の際に立ち寄ってくださいました。以前と変わらずにこやかで穏やかにお話ししてくださり、久しぶりにお会いできて嬉しかったです。 さて、今年の干支は「子」どんな年になるだろうか…と意味を調べてみたら、干支は「干」と「支」が組み合わさった言葉で、正しくは「十干十二支(じっかんじゅうにし)」といい、古代中国の思想である陰陽五行説から発生した概念だとのこと。そして2020年の十干は「庚(かのえ)」十二支は「子」で、「庚子(かのえ・ね)」の年になります。「庚:変化の予兆」「子:命の始まり」という意味を持ち、このふたつが合わさる「庚子」は変化を求めて新しいことにチャレンジするのに良い年となるそうです。さあ、何に挑戦してみましょうか…新しいことをはじめるのって不安もありますが、考えているだけで、なんだかわくわくしますよね。今年は、東京オリンピック・パラリンピックもありますし、スポーツ観戦でもわくわくする年ですね。今年も利用者の皆さんのにこやかな笑顔が溢れるわくわく楽しい1年であって欲しいなと願っています。

(広報編集委員 大浦彩華)

 先日、ある個別支援計画を目にする。支援したい方向性は伝わってくるのだが、語順が悪かったり、体裁が整っていなかったりと、読みづらいものだった。他者の文章を読んでみて、自分の文は正しく読み易く書いているのか心配になり、以前に買っていたこの本や言葉の有り様についての本を読んでみた。 この本には、冒頭から「悪文」という表現が出てくる。いくら頑張って書いても伝わらなくては、意味がない。悪文満載の支援計画を書き続けるのは、ムダな業務となる。初めは書くことが苦しくても、自分の思いが淀みなく伝わ

れば、多少の苦労も惜しむことはしない。そうなるとムダな業務から必要かつ重要な業務となる。 こんな言い方をすると年寄り感が出てしまうが、『最近の若者』は文章を書くのは、苦手ではないはず。SNSなどで、誰かに何かを伝える事を日々している。ただ、公私の使い分けがよくわからないのでは?と考える。厳密に言えば、私から公の切り替えがうまくできない、話し言葉と書き言葉の区別が明確でない、といったところだろう。 この本を読み進めると、書く事の「当たり前」が書かれている。きっと誰もが学生のころに一度は、習っただろうし、聞いた事のある事だけが書いてある。でも自分を含めて忘れている。いや忘れていないはずだが、自身で書き方を勝手にカスタマイズして、「悪文」スパイラルに陥って、ムダな業務を垂れ流し、働き方改革なんて、夢のまた夢になっていませんか?書中には、悪文と良文が例示してあり、自身の書き方と比較できるところも好感が持てる。 私の文章が、自信をもって悪文ではないと言えないのが心苦しいが、日々、心掛けているのは、『書いて、確認』を繰り返す。この文章も、〆切りの1週間前に一旦書き上げて、少し寝かせて、確認、自己校正を繰り返す。 最後にネットで見かけたこんな言葉を思い出す。「30秒の確認と3時間の手直し、どっちがいい?」    (K)

モノの書き方青春出版社 ISBN:978-4-413-11195-9

 令和元年11月4日、空知知的しょうがい福祉協会と北海道教育大学岩見沢校との合同で、『第3回空知フレンドカレッジ』を開催しました。事前の案内には詳細は伏せ、プログラムについては当日会場で発表することとしました。そして、参加者の期待がふくらむ中、いよいよ当日をむかえ、開会式にて内容を発表!! 午前競技は風船バレー、色取りゲーム、様々なボールを使った運動を行い、午後からは、運命競争、じゃんけん列車、ボッチャ、フライングディスク、吹き矢、車いすスポーツ体験と、盛り沢山のプログラムでした。なかでもじゃんけん列車は、参加者たちが繋がってじゃんけんをすることで普段は話さない方と交流もできました。ボッチャ、フライングディスク等のスポーツ体験も大人気!たくさんの人が並び、何度も挑戦している方も。とっても盛り上がり、楽しい時間を過ごすことができました。 昼食は、空知管内の事業所の食材を利用した米粉ザンギチーズバーガー、ポテト、ガトーショコラを用意しました。味はもちろん、ボリュームもあり、参加されたみなさんは大満足な様子でした。 そして、午後には特別ゲストの岩見沢市のゆるキャラ・いわみちゃんが参戦!運命競争の参加者と一緒に走ったり、写真撮影をしたり、大人気のいわみちゃんでした。 最後は参加者全員で写真撮影をしました(表紙写真)。参加者からは「楽しかったよ~」と声を掛けてもらいました。また来年もたくさんの方に楽しんでいただける内容を企画します!(空知知的しょうがい福祉協会 支援研究委員 小山内匡志)

表紙の写真表紙の写真

本 の 紹 介