vol.001

Bee Style:May 2009:Bee Technologies

株式会社ビー・テクノロジー

創刊に寄せて 　創業から現在までを振り返る

太陽電池のデバイスモデルと回路解析シミュレーション　PSpice　LTspice

道具箱　書籍紹介　初級編と中級編

bee-tech.com

Bee Style:創刊に寄せて 株式会社ビー・テクノロジー 代表取締役 堀米　毅 horigome@bee-tech.com

　2009年5月、Bee Style:創刊が実現しました。このニュース的小冊子の発行目的は回路設計に携わるエンジニア向けにビー・テクノロジーが事業活動及び研究開発活動にて得られた情報提供を主とするものであります。提供媒体は紙ベースとし、保存したくなるような内容にしていきます。現時点にて考えられる構成は トピック記事とノウハウ及びテクニック、そして、役立つアイテムの紹介です。アイテムは、「道具箱」にて掲載していきます。発行のタイミングは月刊の予定です。

　現在は、欧米中心に回路解析シミュレータがEDAツールベンダーから様々な種類・特徴ある製品が提供されています。創業(2002年)当時は、取り扱う回路解析シミュレータは限られていましたが、時間とともに当社が実務上で経験した回路解析シミュレータの種類も増えてきました。現時点における各プロジェクトでの使用実績があるプラットフォーム(ここでは回路解析シミュレータ)は下記の通りです。

　PSpice　HSPICE　Smart Spice　MicroCap　ICAP　LTspice　AIM-SPICE　B2SPICE

　現在、進行中の新規プラットフォームは、

AWRのシミュレータツール、そして、AnsoftのSIMPLORERです。最後に記載した SIMPLORERはIGBTのFWDを標準で電流減少率モデルを採用している点で画期的であり、いくつかのデモファイルを見ましたが、回路解析の収束性に優れています。SPICE系シミュレータではなかなか実現が難しい世界が比較的簡単にできることが魅力です。しかし、モデルは独自モデルであり、モデルに関する参考文献も少ない為、理論の把握と場数的な経験が必要です。

　記載した回路解析シミュレータではツールも含め、デバイスモデリングから回路解析シミュレーションまで一環したサポートが可能です。色々な場で回路解析シミュレーション及びデバイスモデリングについてセミナーをする機会があり、説明していますが、回路シミュレーションの業務プロセスを考えますと、90%がデバイスモデリングのプロセスです。デバイスモデリングが如何に重要であるかは、体験者は理解出来ると思います。回路解析シミュレータは、有償(高額製品)からフリー・ソフトまであります。採用するデバイスモデルの精度が悪ければ、シミュレートされた回路解析結果も悪くなります。 有償(高額製品)を導入すれば良い解析結果が得られるのでは無く、より良いデバイスモデルを採用することで、より良い解析結果が得られます。ビー・テクノロジーはこの「デバイスモデル」の提供で貢献し、回路解析シミュレーションも含め、一環した統合的なサポートをしていきます。

EDA:Electric Design Automation FWD:Free Wheeling Diode Page 1

　この機会に少し振り返りたいと思います。私は創業前は、新電元工業株式会社にて、半導体と回路設計に携わっていた技術者でした。　回路解析シミュレーションに接したのも新入社員の時(1996年)です。その当時は、GUIではなく、ネットリスト・ベースのシミュレータでした。まず、解析したい回路図を紙に描き、各ノードに番号を付与し、ネットリストを記述していきます。ネットリストには、回路情報だけではなく、解析の種類、解析の設定、波形の表示等の情報を記載していきます。CRTに表示された波形をみたときのシーンは今でも覚えているほど強烈な印象でした。その当時は参考文献も皆無であり、職場の大先輩に技術を教えてもらいました。今、私の技術者としてのベースはその恩師との出会いが欠かせません。　今のツール(回路解析シミュレータ)は回路図CADがありますので、ネットリストは殆ど使用する事はありません。また、ブラックボックスになっています。便利になった面、ネットリストの記述、文法を理解しているエンジニアは 少なくなりました。このネットリストもデバイスモデリング時、特にサブサーキット記述時には現在でもネットリスト記述を取り扱います。

　新電元工業株式会社にて6年間を過ごし、スピンアウトし、2002年9月に研究開発型・市場開発型ベンチャー企業、「ビー・テクノロジー」を設立しました。

　設立当時の製品のラインナップと今日現在のものを比較すると製品の種類が相当増えています(17種類から62種類へ)。また、当初は想定しなかった分野までも広範囲にわたり、テリトリーを広げてきました。　設立当初は、パワー半導体の単体デバイスがメインでした。対象市場も自動車業界とパワーエレクトロニクス業界が大部分でした。今でもこの分野は当社における重要な分野です。　特に自動車業界の要求事項に対応している間に、1つのデバイスモデルがいくつかのモデルの種類に分岐していきました。

創業から現在までを振り返る

　 事例をダイオードで説明します。ダイオードは、通常、パラメータだけで表現されたモデルを採用します。しかし、逆回復特性をパラメータのTTのみで表現するため、実際の波形と大きく異なります。実際の波形に近づけて解析したい要望から、逆回復特性をtrjとtrbで構成される等価回路モデルの提供をはじめ、今では、プロフェッショナル・モデルとして定着しつつあります。ここまでは、逆回復特性はIFIR法で得られる波形でした。しかし、ご存じの通り、パワー・エレクトロニクスの世界では、逆回復特性は電流減少率法です。それに対応した電流減少率モデルも開発し、スペシャルモデルとして位置づけられています。これは、複雑な等価回路モデルであり、SPICEの収束問題に突き当たります。上述のプロフェッショナル・モデルも回路方式によっては、収束問題が発生しますが、.OPTIONで大抵は回避する事ができますが、スペシャルモデルはそれだけでは回避できず、回路技術、シミュレーション技術を駆使しなければなりません。つまり、お客様の要求事項に対応する事で、同じデバイスですが、モデルに種類がでてきました。デバイスの種類によっては、モデルにいくつかの種類がありますので、お問い合わせ下さい。ダイオードモデルにつきましては、vol.002で掲載予定です。

　しばらくして、オペアンプ、コンパレータ、レギュレータなどの汎用ICのデバイスモデルの提供が開始し、ここから精密機器、弱電分野へと市場対象が広がりました。これをきっかけに、多種多様な等価回路技術が生まれていきました。

　そして、光半導体へと進んでいき、汎用IC、デジタルIC、DCDCコンバータ、PWM ICへと複雑な等価回路モデルへと進んでいきました。そして、バッテリーのモデルも放電特性のみですが、付加抵抗可変モデルを提供しています。また、創業時より、受動部品についても周波数モデルも提供しており、お客様の支持を得られている分野です。

GUI: Graphical User Interface TT: トランジット時間

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　ICのデバイスモデリングは、ブロック図から1つ1つの機能を等価回路で表現していきます。当社のコア技術である「等価回路技術」の蓄積も多種多様なICのデバイスモデリングの実績にて実現できました。また、シリコンデバイスだけではなく、SiCのSBD,JFET,MOSFETの等価回路モデルにも成功し、市場に提供しております。　 　　これまではデバイスモデリングの話題ですが、設立4年目(2005年)からデザインキットと言う分野を創出しました。きっかけはお客様からの要望です。「ゼロから回路解析シミュレーションを始めるのは大変だ。回路方式ごとに、既に動作確認済みのシミュレーションデータ一式が欲しい。テンプレートみたいなもの。」　先ずは電源回路の回路方式から提供し、現在は、インバータ回路の回路方式を開発中です。

　そして2007年あたりから、今度は「今回のプロジェクトはこれです。回路解析シミュレートでのアプローチ全般で提供して欲しい。」つまり、お客様の要求仕様にあったデザインキットという事です。また、この年には「スパイス・パーク」と言うスパイス・モデルのライブラリーの販売も開始し、大企業中心に導入しております。アップデートが随時される発展型製品です。このスパイスモデルのライブラリー整備を通じて、環境構築に役立てればと思います。

　これまでが今までの経緯です。Bee Style:はマーケティング活動の戦略的なブランドとして生まれました。この情報媒体とセミナー(基礎学習+体験学習)です。そして、お客様が回路解析シミュレーションにて、多くの成功体験を積めるように、デバイスモデリング事業にて、貢献していきます。

　リアルタイム的な情報はメールマガジン(無償)を購読して下さい。登録先は下記のURLです。http://www.mag2.com/m/0000149041.html

デバイスモデルからデザインキットへ 　ソリューションでサービスを提供する

出版社: アリーフ一葉舎 ISBN-10: 4899920059 ISBN-13: 978-4899920052

出版社: 本の泉社 ISBN-10: 4880239208 IISBN-13: 978-4880239200

出版社: 本の泉社 ISBN-10: 4780703492 IISBN-13: 978-4780703498

ビー・テクノロジーの創業からの軌跡 　　下記3冊に物語が掲載されています

SiC: Silicon carbide, 炭素（C）とケイ素（Si）が1対1で結合した共有結合性の化合物スパイス・パーク:日本国内のデバイスを中心にスパイスモデル約3,000品種で構成されるライブラリー

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ビー・テクノロジーの創業からの軌跡 　　下記3冊に物語が掲載されています

太陽電池 デバイスモデルと回路解析シミュレーション PSpice LTspice

AAO=PSpice Advanced Analysis

　昨年からの世界的な経済危機の中、供給と需要のバランスが崩れ、雇用不安も加速し、先進国の消費が減速しています。そのような状況の中において、営業活動の実地的な感触より、バッテリー分野、太陽電池、電気自動車、新世代デバイス分野には積極的な投資がされている事を身をもって感じます(但し各企業により温度差があります。将来有望分野に対し積極的投資をしている企業と徹底的なコスト削減をしている企業がありますので一般論です)。2004年から着手していた研究テーマである太陽電池のモデル及び回路解析シミュレーションの導入実績がある程度積むことが出来ました。　デバイスモデルの種類は等価回路モデルです。ビヘイビアモデル、サブサーキットモデル、マクロモデルとも呼ばれますが、意味は一緒です。非常にシンプルな等価回路です。よって、解析時の収束性に優れています。シンプルな面、解析精度を強く要求されるとデバイスモデリングの難易度は非常に難しくなります。抽出ツールはありませんので、モデリング用の回路図を作成し、回路解析シミュレーションで最適解を抽出します。　ビー・テクノロジーでのモデリング環境は、PSpice+AAO(PSpice Advanced Analysis)です。社内では回路デザイン以外にデバイスモデリングにも AAOをかなりの頻度で活用しています。特に受動部品のコンデンサのラダーモデルの定数最適化に威力を発揮します。ここでいうコンデンサーのモデルとは周波数モデルのことです。

　周波数モデルとは周波数とインピーダンス|Z|の関係をあらわした特性を再現したものです。

　少し脱線しますが、コンデンサモデルについて若干説明します。コンデンサを回路図通りに定数を入力するのではなく、正確な回路解析シミュレーションをしたい場合、回路図には書かれていない見えない素子を考慮する必要があります。それが抵抗成分であったり、インダクタンス成分であったりします。　電源回路の場合、3素子モデルが主流ですが、動作周波数が早い回路の場合、5素子モデルの方が無難です。　CPU周辺のコンデンサには5素子モデル以上、つまり、ラダーモデルが主流になります。ラダーモデルの等価回路の定数の最適化にはAAOの担う役割が大きくなります。

　太陽電池のデバイスモデリングの場合も当初の計画ではAAO主流でしたが、得られた最適解を採用し、回路解析シミュレーションを実施しましたが、設定する解析精度が得られませんでした。AAOには、 LSQ（最小二乗法）、 Modified LSQ（改良型最小二乗法）、 Random（ランダム法）、 Discrete（ディスクリート最適化法）がありますが、全てのアルゴリズムを試しましたが、要求仕様は満たしませんでした。よって、AAOで不具合なパラメータは、人間の感覚(経験に裏づけされたセンス)に負うところがあります。　

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　太陽電池モデルの構成は、電流源、抵抗成分、ダイオードで構成される等価回路モデルです。ダイオードのモデルパラメータは、順方向特性のパラメータのみを取り扱います。具体的にはIS,N,RSです。IKF(PSpiceでは使用可能、幾つかのSPICEでは使用不可能)はIKF=0で固定し、3つのモデルパラメータで最適化出来ます。ビー・テクノロジーでデバイスモデリングを行う場合、太陽電池のモデルに必要な情報はいずれかの2通りになります。

(1)定格表　必要な情報は下記の5つのスペック情報です。

　[1] Pmax: Maximum power　[2] Vmp: Voltage at Pmax　[3] Imp: Current at Pmax　[4] Isc: Short-circuit current　[5] Voc: Open-circuit voltage

Pmax=Ipm X Vpm

(2)特性図　特性図の場合、Fig.1の上段の電圧-電流特性図があれば、デバイスモデリングできます。その場合、EXCEL形式かCSV形式の電子データがあるとモデリングの精度が向上します。

　事例を示します。bp solarの製品名:BP3135です。データシート記載のスペック情報は次の通りです。

　Maximum power (Pmax),110W　Voltage at Pmax (Vmp),16.9V　Current at Pmax (Imp),6.5A　Short-circuit current (Isc),7.4A　Open-circuit voltage (Voc),21.6V

　次ページにPSpice及びLTspiceの回路解析シミュレーションの結果を掲載します。レンジは異なりますが、太陽電池モデルのシミュレーション結果の解析精度は同一です。

V_V1I(Isence)* V(V1:+)

SEL>>

I(Isence) Vpm Voc

Pmax

IpmIsc

Fig.1 上段:電圧-電流特性　下段:電圧-出力特性

セミナー開催の情報太陽電池のデバイスモデルと回路解析シミュレーション

[PSpice編]日時:2009年6月26日(金曜日) 14:00-16:00場所:株式会社ビー・テクノロジー　本社定員:4名参加費用:3,150円(消費税込み)ノートPCにPSpiceの評価版をセットアップし持参下さい。

[LTspice編]日時:2009年7月2日(木曜日) 14:00-16:00場所:株式会社ビー・テクノロジー　本社定員:4名参加費用:3,150円(消費税込み)ノートPCにLTspiceをセットアップし持参下さい。

セミナーのプログラム

理解をより深めてもらうために少人数で実施致します。構成は、「基礎学習」+「体験学習」です。

基礎学習太陽電池の等価回路モデルの考え方

体験学習太陽電池の回路解析シミュレーション⇒出力特性のシミュレーション⇒パネルを直列、並列で組み合わせてみる⇒あるパネルの出力を低下させたい場合⇒あるパネルの内部に漏れ電流が発生した場合　

セミナーに関するお問い合わせは、info@bee-tech.comまで Page 5

0 V 5 V 1 0 V 1 5 V 2 0 V 2 5 V 3 0 V0 W

2 0 W

4 0 W

6 0 W

8 0 W

1 0 0 W

1 2 0 W0 A

2 A

4 A

6 A

8 A

I(V s e n ce )*V 1

I(V s e n ce )

V_ V1

0 V 5 V 1 0 V 1 5 V 2 0 V 2 5 V 3 0 VI ( I s en c e) * V( V1 : +)

0W

5 0W

1 0 0W

1 5 0W

2 0 0W

( 1 6 . 9 0 0 , 1 0 9 . 8 4 8 )

I ( I s en c e)0A

2A

4A

6A

8A

1 0A

SE L > >

( 1 6 . 9 0 0 , 6 . 4 9 9 9 )

( 2 1 . 5 9 6 , 0 . 0 0 0 )

0 . 0 0 0 , 7 . 3 1 9 6 )

Fig.2 PSpice 回路解析シミュレーション結果

Fig.3 LTspice 回路解析シミュレーション結果

太陽電池の出力特性のシミュレーション

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道具箱書籍紹介　デバイスモデリング

初級編

Spice: Practical Device Modeling/Book and Disk

Ron M. Kielkowski (著)Mcgraw-Hill (Tx); Har/Dis版 (1995/8/1) ISBN-10: 0079115241 ISBN-13: 978-0079115249 　

　この技術書籍は研究開発センターの新入社員(デバイス屋よりも電子回路出身が多い)のOJT教育時のイントロダクションで使用しています。基本素子と受動部品のデバイスモデリングの基礎が学習出来ます。

中級編

Semiconductor Device Modeling With Spice

Giuseppe Massobrio, Paolo Antognetti (著)Mcgraw-Hill (Tx); 2版 (1998/12/1)ISBN-10: 0071349553ISBN-13: 978-0071349550

　この技術書籍は研究開発センターの新入社員OJT教育6ヶ月目で使用しています。ある程度の実務経験を積み重ね、全体像(デバイスモデリングプロセス)が把握出来た時点で理論武装していきます。数学力も必要になります。

Bee Style: Volume 0012009年5月15日　発行編　者:株式会社ビー・テクノロジー発行人:堀米　毅郵便番号105-0012 東京都港区芝大門1-5-3　大門梅澤ビル3階Tel (03)5401-3851 (代表)Fax (03)5401-3852電子メール info@bee-tech.com

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デバイスモデリングの理解を深める参考技術文献です

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