Title Male Uroflow Diagnostic Interpretation による正常成人男子の尿流量分析

Author(s) 水永, 光博; 宮田, 昌伸; 山内, 薫; 佐々木, 正人; 中田, 康信;徳中, 荘平; 八竹, 直

Citation 泌尿器科紀要 (1986), 32(3): 361-367

Issue Date 1986-03

URL http://hdl.handle.net/2433/118774

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

361

泌尿紀要32巻3号1986年3月

Male　 Uroflow　 Diagnostic　 Interpretation　 に よ る

正常成人男子の尿流量分析

旭川医科大学泌尿器科学教室(主 任 ：八竹 直教授)

水 永 光 博 ・ 宮 田 昌 伸

山 内 薫 ・ 佐々木 正 人

中 田 康 信 ・ 徳 中 荘 平

八 竹 直

UROFLOWMETRICAL ANALYSIS OF NORMAL ADULTS

BY MALE UROFLOW DIAGNOSTIC INTERPRETATION

Mitsuhiro MIZUNAGA, Masanobu MIYATA, Kaoru YAMAUCHI,

Masato SASAKI, Yasunobu NAKATA,

Sohei TOKUNAKA and Sunao YACHIKU

From the Department of Urology, Asahikawa Medical College

(Director: Prof. S. Yachiku)

Uroflowmeter has been well documented as an indispensible tool in lower urinary tract

diagnosis. In this study 145 normal urinary flow curves in 36 healthy adult males were

analysed using the Male Uroflow Diagnostic Interpretation (MUDI) of the DISA urological

investigation system.

In MUDI, the flow rate pattern is analysed and quantified by previously defined para-

meters. Then the computed values of these parameters are compared with the values observed

in healthy subjects. Finally, the results are conveniently presented on an output sheet.

One of the newly defined parameters, (dL/dT) 40, i.e., the bladder contraction velocity

at 40 ml before the end of micturition, was situated within the range of 12. 5 to 28. 3 mm/sec

(20.4±3.9 mm/sec) in healthy males. The variable (dL/dT) 40 did not depend on voided vo-lume and provided excellent discrimination between the control group of healthy males and

the group of patients with dysuria.

MUDI improves the faults of previous uroflowmetry systems and provides (dL/dT) 40

by which micturition patterns can be discriminated to be good and bad ones. So MUDI

seems to be quite versatile in daily urological clinics.

Key words: Uroflowmetry, Male uroflow diagnostic interpretation, (dL/dT) 40

緒 言

尿流 量 率 測 定(uroflowmetry)は,排 尿 状 態 を 客 観

的 に 把握 す る のに 欠 か せ な い 検 査法 のひ とつ であ る.

従 来 の 尿 流 量 率 測 定 で は,尿 流 暴:曲線,maximum

f正owrate(MFR),averageflowrate(AFR),

voidingtime(VT)な どか ら排 尿 状 態 を 判 断 して い

る。 しか しわ れ わ れ が強 調 して い る よ うに1・2MFR,

AFRは 排 尿 量 に 大 き く影 響 され,そ の 数値 だ け では

正 常 と異 常 の 鑑 別 が 困 難 で あ る.ま た排 尿 終末 時 の尿

の滴 下 状 態 も排 尿 時 間 と して機 械 が 認 識 す る関 係 上,

AFRの 数値 は 低 い値 と な る こ とが 多 か った.こ れ ら

の点 を 改良 し た と さ れ るDISA製malcuroflow

diagnosticinterpretation(以 下MUDIと 略 す)

362泌 尿 紀 要32巻

を 使 用す る機 会 を得 た.こ れ はmicrocomputerが

内 蔵 され て お り,「従 来 に は な いparameterが 利 用 で

きる と い う.今 回 は 正 常成 人 男 子 の 測 定結 果 を中 心 に

検 討 を加 えた の で報告 す る.

Systemの 概様

MUDIは,type21CI2mictiometerにmicro-

computcrの くみ こ ま れ たelectronicunitと,me一

3号1986年

FしOURESUしTS一一一一一一ロー騨一響響

Tdesc6.Os

QM9025.Omlis

T909.6s

QMflX

T100

29.Omlis

14.5s

MOLE

H(1.7)

H(1.5)

H(1.6)

HC1.3)

H(1.8)

TQMFX5.Os

dQidTrnax28.Omlis2

Fig.2c.Recordinganddiagnosticclassifi-

cationofcharacteristicparameters

500

400

300

200

100

0

…VOしU岡E(n1)'・'7'" .,,幽 岬F.

0

r;g.2a.

4

Graphic

curve

8121620TIME(s)

displayofvolume/time

VOLU囲E只ESULTS

》co叩.266』1

Vresid.｠1

Fig.2e.Totalvoidedvolumeand

maskforresidualurine

Fig.1.SystemofMUDI

hlllDI

Patient

Pa量ient

number

name

Birthdate

Date

SO

40

30

Zo

10

0

MaleUroflouDiagnostic

Interpretation

...,..,.Sex岡ale

........Time.....

Fig.2a.Personaldatamask

・・fLOUR∩TE(薦1!5ン

墜,昌,國,・

048121620TIME<s)

2h.Graphicdisplayofflow/timecurve

40

32

24

16

s

4000

一'dレdT(隔 繭!5>・ ・…

Fig.

Tig,2£

320Bし繹RV品E、 詔 ・

Displayofcalculatedbladdercontractionvelocity(dL/dT)/bladdervolume

§9製工RRC1工ONRE§U」 工§ __MR」E

dL!dTL,025mm!SH(1 .7)

Fig.2g.Recordinganddiagnosticclas-

sificationof(dL/dT)40

水永 ・ほか:尿 流量分析 ・MUDI

chanicalunitで あ るtype21KO2uroflowtrans-

ducerか らな りた って い る(Fig.1).uroflowtra-

nsducerに 排 尿 が 行 わ れ る と,尿 流 量 曲線 が分 析 さ

れ,Fig.2に 示 すdata用 紙 がoutputさ れ る.

MUDIで 表示 され る排 尿parameterを 以下 に 示 す

従来 か ら使 わ れ て い る排 尿parameterと して,

1)Maximumflowrate

2)Totalvoidingtime(T100)

3)Timetomaximumflowrate

4)Voidedvolume

新 しい 排 尿parameterと しては,

1)T90… …総 排 尿 量 か ら排 尿 し は じめ と排 尿終 末

時 の合 計10%の 尿量 を排 除 した中 央 の90%の 尿 量 が 排

尿 され る のに 要 す る時 間.

2)QM90… …尿 流 量 曲線 の中 央 の90%の 排 尿 量 に

お け るaverageflowrate,す な わ ち 中央 の90%の 排

尿量 をT90で 除 した 値.

3)Tdcsc… …maximumflowrateに 達 した 瞬 間

か ら,総 排 尿 量 の95%が 排 尿 さ れ る ま で に 要 す る時

間.

以上1)～3)の 排 尿parameterは,排 尿 終 末 時 の

dataを 無 視 す る こ とに よ り,terminaldribblingに

よる影 響 を 最 小 限 に し よ うと して い る。

4)(dQ/dT)max… … 尿 流 量 曲 線 の 立 ち上 が りの

傾 きの最 大 値.

5)(dL/dT)40… …膀 胱 を壁 の うす い球 と仮 定 し

363

た うえでの,膀 胱 容量が 残 り40mlと な った ときの

膀胱壁の収縮速 度

対 象

排尿に異常を訴えない23歳 か ら39歳 の男子36名 で,

延べ145回 の排尿を記録 した.そ の際,各 人は できる

だけ1回 の排 尿量が異 なるように し,排 尿量 と各種排

尿parameterの 関係を検索す るよ うに した.

結 果

DMaximumflowrate… … 排 尿 量200ml以 下

では,排 尿量 と正 の相 関 で 増 加 し,200皿1以 上 では

平 均28.7ml/sec,標 準 偏 差5.Oml/secと,ほ ぼ 一 定

値 を 示 した.

2)Totalvoidingtimc(T100)お よびT90・ 一 ・

T100は 平 均15.4sec,標 準偏 差5.2sec,T90は 平 均

9.7sec標 準 偏差3.8secで あ った.平 均 値 で比i咬す る

とT90はTIOOの63.4%と な った.

3)Timetomaximumflowrate… …平 均 値4.9

sec,標 準偏 差2.6sec.

4)qMgo… …QM90と 排 尿 量 の関 係 をFig.3に

示 す 排 尿 量200ml付 近 まで はQM90は 排 尿 量 に

依存 し て 増 加 し(r=0.6736,pく0.01),200ml以 上

で は ほ ぼ一 定 とな り,排 尿量200ml以 上に お け る平

均値 は22.4ml/secで あ る.±2sDを と る とそ の範

囲 は14.4～30.4ml/secと な る.

QMgOmt/sec

30

20

io

0

■

　

● ● t

.8「齢 一 一=一 一 一●

●● ●

● ●.、 ●

　

● ● ●

● ●●○

・%騨i轟

3●,● ・

・ ・ ●

●

乞 畠●●●

●._

● ■

●

　

● ●

・ ● ・

VoidedVolume<200m1

VoidedVolumei200m1

y=0.072x+5.02r含0.6736(Pく0.01)

22.414.Om1/sec

(MeantSA.)

.. 200300

VoidedVolume

400ml

500

1'ig.3.RelationshipUetweenQM90andvoidedvolumeinnormalmalesubjects.QM90increasedproportionallywithvolumehelow200ml.Withvolumeover200ml,

QM90wasalmostconstant.

364 泌尿紀要32巻3号1986年

Taescsec

30

20

io

0

●●

y=0.019x+2.17

r雷O.5112(Pく ◎。01》

● ・ ●● 響 ●

・ ・.%・5・

●

N●

●

鱒●

●

●

● ● ●

● ● ●

●●,8● ● ●

●

●

● ●● ●●

●

●

Fig.4.

ioo 200300

VoidedVolume

400 500ml

RelationshipbetweenTdescandvoidedvolumeinnormalmalesubjects.Tdescincreasedproportionallywithvolume.

(dL/dT)40

mm/sec

30

+2S.D.

●3HeoけhyMaしes(n=145)

Mean20.40

S.D.13,94

2S.D.17.88

●

●

O:Pa†Tents(n=29)

Mean5.71

S.D.13.01

20

}o

0

●

●N・ ・N

● ●●・M

≪...

●N

●●● ●

・N

●N

.≪M

・N1・

● ■

●● ○●●● ●

●

■

●

●

Mean●

・ ・M・M●■●●● ●●

N・M・●● ● ●

.≪.

-2S.D.●

●● ■● ●

● ●● ●●

●● ●

●

・o 0 ○

00000

O

Mean

OOOOOOOO

OOOOO

.. 200 aooVoidedVoしu凧e

400ml

500

rig.5.Relationshipbetween(dL/dT)40andvoidedvolume.

(dL/dT)40didontdependonvoidedvolumeandprovidedexcellentdiscriminationbetweenthehealthymalesandthepatientswithdysuria.

5)Tdesc-・ ・Tdcscと 排 尿 量 の 関 係 をFig、4に

示 す.Tdescは 排 尿 量 と正 の 相 関 で 増 加 し て い る

(r=0.5112,p〈0.01),

6)(dQ/dT)max… …平 均 値28.3ml/sec,標 準

偏 差10.2ml/sec排 尿 障 害 の あ る29名 の(dQ/dT)

maxの 平 均 値 は16.9ml/sec,標 準 偏 差2.2ml/sec

であ った,

7)(dl・/dT)40… …Fig.5の 黒 丸 で正 常 成 人 男 子

の(dL/dT)40と 排 尿量 の 関係 を示 す.排 尿 量 と の関

係 は ほ とん どな く,平 均 値20.4mm/secで,±2SD

を とる と12.5～28.3mm/secと か な り狭 い 範 囲 に お

さ ま った.排 尿 障 害 の あ る29名 の(dL!dT)40と 排

尿 量 の関 係 を 白丸 で示 す が,こ ち ら も排 尿 量 と の関 係

は な く,平 均 値5,7mm/sec,標 準 偏 差3.ommlsec

で,正 常者 と比べ明 らかに区別され た,

考 察

水永 ・ほか:尿 流量分析 ・MUDI

尿 流 量 率 測 定 は,簡 便 で無 侵 襲 で,し か も排 尿 動 態

の把 握 に きわ め て有 用 な検 査 法 で あ り,そ の測 定 機 器

の最 近 の進 歩に は め ざ ま しい も のが あ る.今 回 わ れ わ

れ が使 用 したMUDIに は,従 来 のDISAuroflow-

meterにmicrocomputerが 内 蔵 され て お り,電 源

を入 れ てuroflowtransducerに 排 尿 す る だ け で,

尿流 量 曲線 の分 析,各 種 排 尿parameter,正 常 値 と の

比 較 が,outputsheetに 表 示 され る.

MUDIで 表 示 され る 各 種 排 尿parameterに つ い

て検 討 し た 結果,T100,MFR,timetomaximum

f正owrateな ど従来 か ら使 わ れ て い るparameterに

関 して は,こ れ ま で の諸 家 の報 告 と同 様 のdataが 得

られ た.新 しい排 尿parameterで あ るQM90は,

AFR,MFRと 同様1～3)に200mlま での排 尿 量 で は,

排 尿 量 と正 の 相 関 で増 加 し,200ml以 上 で は 一 定値

を と り,そ の 平 均値 は22.4ml/sec,標 準 偏 差4.Oml/

secと な った.QM90は,排 尿 し は じめ と排 尿終 末

時 の合 計10%の 排 尿 量 の影 響 を 除 いて い るた め,同 一

集団 に おけ る 計 算 上 のAFR(平 均 値15.7ml/sec,

標準 偏 差2,5ml/sec)に 比 し,高 値 とな って い る.こ

の排 尿parameterは,terminaldribblingの 影 響

でAFRが 不 当に 低 くで る よ うな場 合 に は,AFR以

上に 有 用 な排 尿parameterと 考 え られ る.

Tdcscは,MFRに 達 した 瞬 間 か ら,排 尿 量 の95

%が 排 尿 され る ま で の時 間 であ り,今 回 の 正 常成 人 男

子 の検 討 で は,排 尿 量 と正 の相 関 で増 加 を 示 した.し

か し,尿 流 量 曲 線 のpattcrnに よ って は,排 尿 の後

半 でMFRに 達 す る場 合 もあ り,そ の よ うな 場 合 は

排 尿 障 害 が あ るに もか か わ らずTdescが 短 くな る可

能性 が あ る の で,必 ず し も正 常 と異 常 の 鑑 別に 有 用 な

排 尿parameterと は い え な いか もし れ な い.

(dQ/dT)maxは,尿 流 量 率 を 時 間 で 微 分 した値 の

最 大 値 であ り,大 部 分 の場 合 は 排 尿 しは じめ の瞬 間 の

値 が(dQ/dT)maxと な る.今 回 の検 討 で は,排 尿

量 と の関 係 は な い もの の,ば らつ ぎが 大 き く,正 常 と

異 常 の区 別 も明確 で は なか った.ま た排 尿 障 害 の あ る

人29名 の うち24名 が 同一 の値(16.Oml/sec)を 示 して

お り,そ れ 以 下 の値 は 認 め な か った.こ の こ とは,

startdctectionlevelが0。3m1/secと 設 定 され て い

るた め と考 え られ,こ の値 を 正 確 に 測 定 す るに は,測

定 方 法 お よび機 械 の特 性 に 問 題 が あ るの で は な い か と

思わ れ た.

(dL/dT)40は,膀 胱 壁 の収 縮 速 度(mm/sec)を

365

あ らわす新 しい排尿parameterで ある.膀 胱を壁 の

うす い球 と仮定 した ときの円周 の長 さをL,膀 胱の体

績 をV,尿 流量率をQと す ると

v=4/3.πr3(1)

L=2πr (z)

Q=dV/dT=dV/dL・dL/dT・ ・・・・・…(3)

(1),(2)よ りV=]L'/6π2

dV/dL=L2/2π2(4)

(3),(4)よ り膀 胱 壁 の 収 縮 速 度 で あ るdL/dTは,

dL/dT=2r2/Lz・Q

=k×Q/V2/3(k:定 数)

で あ ら わ さ れ る5).

40

30

zo

10

flowrate(ml/sec)

700600500 4003002001000

bladderVOlu冊e(ml)

Fig.6a.45superimposedcurvesofflowrateversusinstantaneousbladdervolumeforahealthymale.(fromRollema,xJ)

dL/dT(mm/sec)

30

20

10

ア・・6・ ・500400blad、。.3991、mez?Oml)1000

Fig.6b.Thecurvesofcalculatedcontracti-onvelocityofdetrusormuscle(dL/dT)instantaneousUladdervolumeforsamehealthymale.(fromRo-llema,HJ)

366

40

30

zo

10

flowrate(ml/sec)

泌尿紀要32巻3号1986年

700600500 4003002001000bladdervolwne(mi)

Fig.7a.17superimposedcurvesofflowrateversusinstantaneousbladdervolumeforamalewithclinicallyprovenurethralobstruction.(fromRollema,xJ)

dL/dT(mm/sec)

so

20

io

7・・6・ ・5・ ・400聖?addeOO,。1、 謹 圃0

Pig.7b.ThecurvesofdL/dTversusinsta-ntaneousbladdervolumeforsame

patient.(fromRollema,HJ)

F三9.6aは,Rollemaらn)に よ って 報 告 さ れ た,

1人 の正 常成 人 男子 の,横 軸 に膀 胱 容量 を とった と き

の,各 排 尿 量 に お け る 尿流 量 曲 線 で あ る 。 この と きの

dL/dTと 排 尿 量 の 関 係 が,Fig.6bに 示 さ れ て い

る.膀 胱 容 量 が 残 り40ml付 近 でdL/dTは 最 大 と

な り,そ れ 以 下 の膀 胱 容量 で は,terminaldribbling

の影 響 でdL/dTは 大 き く 変 動 す る,ま た 排 尿 量 が

500ml以 上 では,dL/dTの 排 尿終 末 時 付 近 で の 立 ち

上 が りは ほ とん ど見 られ な い.同 じ よ うにRollema

らは,排 尿 障害 の あ る1人 の 愚者 の い ろ い ろ な排 尿 量

に お け る尿流 蚤 曲線 とdL/dTの グ ラ フを示 し て い る

(Fig.7a.b).正 常 人 と 同様 にdL/dTは 残 りの膀

胱 容量40ml付 近 で最 大 と な り,そ れ 以 下 の膀 胱 容

量 で は,正 常 人 以上 にterminaldribblingに よ る影

響を うけ,大 きく変動す る.膀 胱壁 の最大収縮速度,

すなわ ちdL/dTの 最大値は下部尿路閉塞性疾患 を有

する患者 では有意に低下す る.し か しこの値 は,排 尿

終末時付近に おいてはterminaldribblingの 影響 で

測定が難 しい,そ こでRollemaら4)は,膀 胱容量が

40mlと なった と き の膀胱壁 の収縮速度,す なわ ち

(dL/dT)40を,膀 胱壁 の最大 収縮速度 に 近似 す る

新 しい排尿parameterと して報告 した.残 尿 のあ る

症例に おいて も,残 尿 な く排尿 された と仮定 した うえ

で,残 り40mlの ときの膀胱壁の収縮速度 を あ らわ

す.Rollemaら は,正 常成 人男子 と前立腺肥大症の

患者 の(dl・/dT)40を 比較 した と ころ,sensitivity

95%,specificity90%と 極 め『て 良 く区別 され 得た と

述べ ている.ま た 排尿量が100～450mlの 間 では,

(dL/dT)40は 排尿量に依存せず,そ の正常下限は13

・nm/secで あ るとい う.今 回のわれわれ の検討で も,

(dL/dT)40は 排尿量 に 依存 せ ず,(平 均値一2SD)

の値が12.5mm/secで,こ の値 を境 に 正常者 と異常

者がか な り明確に区別 された.以 上 よ り,MUDIの

新 しい排尿parameterで あ る(dL/dT)40は,膀 胱

壁 の収縮速度 とい う概念的に もとらえやすい排尿pa-

rameterで,し か も排尿量 に依存 せず,正 常 と異常

の鑑別に有用 な排尿parameterと 考え られた.

以上 このMUDIは,尿 流量率測定上 の 今 までの

欠点を 改良 してい る うえに,(dL/dT)40と い う排尿

量 を考 慮しな くて も排尿の良否を判定 で き るpara-

meterを 提供 し て くれ る とい う点 で,利 用価値 の高

い ものである と考え られた.

結 語

新 しい尿流量率測定 の 解析器 で あ るMUDIを 使

用 し,健 常成 人男子 の 測定結果 に基 づ いて 各種排尿

parameterの 検討 を行 った.

1)QM90は,AFR,MFRと 同様に,200ml以

下の排 尿量 では,排 尿量 と正 の相関で増加 し,200ml

以上は一定値 を とる.

2)Tdescは,排 尿量 と正 の相関 で増加 した.

3)(dqldT)maxは,ば らつ きが大 きく,正 常群

と異常 群を明確に区別 し得 なか った.

4)(dL/dT)40は,排 尿量に依存せず,そ の正常

下限は12.5mm/secで,異 常群 と明確 に区別され,

利用価値 の高 い ものであ ることがわか った.

本論文の要旨は第276回 日本泌尿器科学会北海道地方会に

おいて発表した.

文 献

水永 ・ほか 尿流量分析 ・MUDI

1)八 竹 直 ・秋 山 隆弘 ・門脇 照 雄 ・南 光 二 ・井 口

正典 ・金 子 茂 男 ・郡 健二 郎 ・栗 田 学:排 尿 機 構

に か んす る検 討,第1報 正常 成 人 男 子 の尿 流 量

測 定に つ い て.日 泌 尿 会 誌68:737～744,1977

2)八 竹 直:尿 流 量 測 定 の 臨床 的意 義 に つ い て.泌

尿 紀要27!1019～1024,1981

3)RyallRLandMarshallVR:Normalpeak

urinaryflowratesobtainedfromsmall

voidedvolumescanprovideareliableassess-

mentofbladderfunction.JUrol127:484

-488 ,1982

367

4)RollemaHJ,GriffithsDJ,vanDuylWA,

vandenBergJWandDeHaanR:Flow

rateversusbladdervolume,analternative

wayofpresentingsomefeaturesofthemic-

turitionofhealthymales.UrolInt32;401

412,1977

5)GriffithsDJandRollemaHJ:Urineflow

curvesofhealthymales:amathematical

modelorfbladderandurethralfunction

duringmicturition.MedBiolEngComput

17:291--300,1979

(1985年11月1日 迅 速 掲 載 受 付)