徳洲会病院群における診療情報ネットワークの現況と今後の展開

札幌東徳洲会病院 臨床研究センター

蘆田 知史

1.理念：「生命だけは平等だ」 「いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会」を目指して、医療の原点

である救命救急医療はもちろん、予防医療・慢性医療から先進医療に至るまで、地域のみなさまの要望に応える医療を実践

2.組織の規模(2012年4月現在) 国内66、海外1病院を運営

病院を含む430余の医療福祉施設を展開

運営病床数18,560

◆病院 67病院 ◆診療所・クリニック 45施設 ◆老人保健施設 29施設 ◆特別養護老人ホーム 18施設 ◆グループホーム 34施設 ◆訪問看護ステーション 23施設 ◆介護事業所 59施設 ◆その他の福祉施設 8施設 ◆有料老人ホーム・ケアハウス 25施設 、他

TIS:TIS:徳洲会インフォメーション徳洲会インフォメーション システム株式会社システム株式会社

◆◆ 電子カルテ導入サポート電子カルテ導入サポート ◆◆ 医療情報（各種コード）の統一化医療情報（各種コード）の統一化 ◆◆ グループ病院システムネットワーク構築グループ病院システムネットワーク構築

◆◆ 治験システムの導入と標準化治験システムの導入と標準化 ◆◆ 実務状況の開発へのフィードバック実務状況の開発へのフィードバック ◆◆ システムの応用と開発システムの応用と開発

治験実施施設治験実施施設

未来医療研究センター株式会社未来医療研究センター株式会社

◆◆ 医療情報活用の提言医療情報活用の提言 ◆◆ 治験、臨床研究への活用・応用法の治験、臨床研究への活用・応用法の リードリード ◆◆ 新たな治験システム開発の支援新たな治験システム開発の支援

札幌東徳洲会病院札幌東徳洲会病院 臨床研究センター臨床研究センター

◆◆ 科研費などの研究費の申請・受け入れ科研費などの研究費の申請・受け入れ ◆◆ 検体の保存・分析など基礎的研究設備検体の保存・分析など基礎的研究設備 ◆◆ 再生医療設備再生医療設備 CPCCPC

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（１） グループ６６病院をネットワークで接続し情報の一元管理を実現

（サーバ約150ラック、PC 約17,000台）

（２） グループ共通電子カルテを導入し、コードの統一化を実現し、検索可能な医療情報データベースを構築

（患者情報 約800万人/47病院 ）、癌登録年間9700件

（3） BI（病院運営管理）ツール

（電子カルテ、各種経営データを集約）

（４） 資材発注管理システム

全グループ病院の医療資源利用状況をモニタリング可能

（5） オンコロジープロジェクト

癌の化学療法治療プロトコール標準化と治療成績・AEの分析

（6） リモートSDVシステム/治験患者スクリーニングシステムの稼働

徳洲会

グループ

G-VPN

TIS社

徳洲会グループ病院66施設

４７施設 電子カルテ・オーダ

ベンダー 電カル保守

BI データ

●各種経営データ

●臨床データ

オンコロジー等

●治験スクリーニング

参考：クリニック４

（１）グループネットワークの構築

徳洲会本部

人事・給与・経理

●特徴

・インターネットとは完全に分離したセキュリティを確保したネットワークを構築

クローズドVPN (NTT COMMUNICATIONS ) ・電子カル等の保守の他、業務系にも一部利用

・電子カルテ・オーダ導入病院のデータを本部で集約。

（２）共通電子カルテシステムの導入

2009年6月 今後の情報システムの構築方式について検討 ●当時の現状： 複数のベンダーによる電子カルテシステムが稼働 2009年8月 「今後の情報システム構築グループ方針」をアナウンス ・徳洲会グループ全体の運営管理ツールの構築を行う。 ・電子カルテの統一化を行う（ベンダーはＳＳＩ社）。 ・コードの統一化を行う。 2009年10月 グループ内情報システム会社「徳洲会ｲﾝﾌｫﾒｰｼｮﾝｼｽﾃﾑ（株）：TIS」設立 ・新電子カルテの構築（鎌倉、千葉西、千葉、羽生、中部、南部、榛原） ・オンコロジーシステム・治験スクリーニングシステムの構築 ・ＢＩツールの構築 ・ＳＳＩ社との連携（開発会議、本部課題解決、部会課題解決） ・各部会の情報システム担当者の整備（看護、薬剤、放射線、検査、栄養・・・）

7

電子カルテ画面 WINDOWS XP版 カルテ画面

8

電子カルテ画面 WINDOWS 7版 カルテ画面

（２）共通電子カルテシステムの導入

１）グループ共通電子カルテの導入 ●４７病院へ導入 ●未導入の小規模施設に順次導入準備中 ２）標準コードを付与しグループ内のベンチマーク、治験等 のスクリーニング、症例分析で利用 ３）標準治療などを実現 ●グループ内共通レジメンをシステム上に装備 ●治療計画の他、副作用、バリアンス分析を実施 ４）新規機能の開発を実施 ●本部報告、ゲノム、MEWS他 ５）グループ内における保守の一括管理を実施 ●課題・システム改善の集約化 ●コスト削減 ●遠隔地でのデータバックアップ・災害対応

（２）共通電子カルテシステムの導入-コードの統一

コードの統一方式は、グループ内の各コメディカル部会から選定された委員による作業部会とTIS社とで協議を行なって取り決め及び設定 2008年9月より作業開始

●標準コードの付与ルールの決定 各部会（看護部会、薬剤部会、検査部会・・・） ●標準コードの付与 各部会（TIS社がフォロー） ●設定変更、仕様変更等の後フォロー 各部会・TIS社

現在各病院で使用されているコードの99％が統一コードとなっている

徳洲会標準コード決定状況

登録数 桁数 内容

病名 － - ICD10 、レセ電コード、DPCコード*

薬剤 22,183 12 薬剤：厚労省ｺｰﾄﾞ ＨＯＴ9 * 用法：部会定義 *

検査

1,392 28,810 192 67 522 147

14 21 8 8 8 8

検体：保守ｺｰﾄﾞ(8桁)+材料(2桁)+複数(4桁) JLAC10（検査依頼は標準化しない）

検歴：JLAC１０ *

生理：手技(C)保守ｺｰﾄﾞ(8桁)、コメント(4桁)

細菌：手技(C)保守ｺｰﾄﾞ(8桁)、コメント(4桁) ＊

病理：手技(Ｃ)13個、コメント（部位）509個

輸血：製剤種(147)、廃棄理由(7)

放射線 4,855 8 撮影、手技 一般(1,069),ポ(344),ＣＴ(964),ＭＲ(874),ＵＳ(35),ＸＡ(464),ＲＩ(749),ＲＴ(91),検診(265)

栄養 320 6 食種他 主食(301),副食(13),指示(38),調乳(41),指導(126)

看護 － － 看護計画 NANDA、 MEDIS 共同問題（672）、看護診断（903）行為編（1435）、観察編（1831）

手術 － － ICD9CM, レセ電算コード

本部関連・・・ ●施設コード ●病床区分コード ●診療科コード ●職員コード

臨床データ・・●レジメンコード ●副作用コード（CTCAE） ●バリアンス

●インシデント・アクシデント

主な統一コード

（２）共通電子カルテシステムの導入+コードの統一

ネットワークシステム構築による

各種医療情報の共有

グループ病院の診療実績・得意分野

様々な可能性

巨大医療施設データベース

徳洲会病院ネットワークを使用した病院運営管理（BI）ツール

院内滞在時間ベンチマーク

徳洲会病院ネットワークを使用した病院運営管理（BI）ツール

患者来院マップ

徳洲会病院ネットワークを使用した病院運営管理（BI）ツール

医薬品 発注管理システム 購入量表示画面

徳洲会病院ネットワークを使用した資材管理システム

オンコロジープロジェクト 標準治療・共通レジメンの展開

●徳洲会グループ ２１病院

●共通レジメン １４１ （最新180）

●年間患者数 約 ２，０００人

●年間クール数 約１２，０００件

●がん登録、ステージ分類登録を実施

年間約１万件

●全国どこでも化学療法における標準治療の実施が可能

●実施した結果は、本部データ分析部門での解析が可能

●現在、副作用情報、各プロトコール毎のバリアンスデータの解析を開始

プロトコール数

1 乳癌 (C50) 312 食道癌 (C15) 63 胃癌 (C16) 124 大腸・直腸癌 225 胆道癌　(C22,23,24) 26 膵臓癌 (C25) 47 GIST 28 非小細胞肺癌 (C34) 169 小細胞肺癌 (C34) 610 悪性胸膜中皮腫（C45) 111 子宮頚癌 (C53) 412 子宮体癌 (C54) 513 卵巣癌 (C56) 1214 腎細胞癌 (C64) 415 膀胱癌 (C67) 216 前立腺癌 (C61) 817 精巣腫瘍 (C62) 4

合計 141

18

共通カルテシステムを用いた�オンコロジープロジェクト

副作用 集計画面 各プロトコール毎、副作用項目毎での集計が可能

病院内において、各プロトコール毎の

副作用集計が可能

集計プログラム

東京・大阪の２拠点より治験実施施設

へ リモートアクセスにてモニタリングを

実施。

・コスト・コスト

・効率・効率

未来医療研究センター

（大阪）

未来医療研究センター

（東京）

１．モニタリング用アプリケーション１．モニタリング用アプリケーション

２．スクリーニング用アプリケーション２．スクリーニング用アプリケーション

１．モニタリング用アプリケーション１．モニタリング用アプリケーション

【特徴】：モニターが該当治験の被験者カルテのみを閲覧することができる。

誤って別の患者カルテを見ることを防止できる。

① モニター毎に付与したID、パスワード を入力。

⇒⇒ 電子カルテにアクセスログが保存。電子カルテにアクセスログが保存。

１．モニタリング用アプリケーション１．モニタリング用アプリケーション

② 該当治験の被験者一覧が表示されるため、閲覧したい被験者を選択。

⇒⇒ 誤って別の患者カルテにアクセスすることを防止。誤って別の患者カルテにアクセスすることを防止。

該当プロトコールの被検者一覧より選択

１．モニタリング用アプリケーション１．モニタリング用アプリケーション

③③ 選択した被験者のカルテが閲覧できる（閲覧権限のみ）。選択した被験者のカルテが閲覧できる（閲覧権限のみ）。

１．モニタリング用アプリケーション１．モニタリング用アプリケーション

③③ 選択した被験者のカルテが閲覧できる（閲覧権限のみ）。選択した被験者のカルテが閲覧できる（閲覧権限のみ）。

・検査結果･････ 院内採血／採尿結果が確認できます。 ・所見歴X ･････ CT、エコー、胃カメラ 等 各種結果が確認できます。 ・処方録･･･････ 薬剤の処方履歴が確認できます。 ・患者情報･････ 生年月日、既往歴、禁忌情報 などが閲覧できます。 ・病名 ･････････ 病名（保険病名）が閲覧できます。 ・患者予約･････ 外来受診状況、予約状況が確認できます。 ・受診歴･･･････ 受診履歴が確認できます。 ・手術歴･･･････ 手術歴が確認できます。 ・取込画像参照･･取り込んだ画像(紹介状 等)が閲覧できます。 ・病理歴･･･････ 病理履歴と結果が確認できます。 ・依頼歴･･･････ 各種指導依頼などが確認できます。 ・細菌結果･････ 細菌検査履歴と結果が確認できます。 ・病棟検温表･･･ 入院中の検温結果が確認できます。 ・輸血履歴･････ 輸血履歴が確認できます。 ・退院サマリー履歴･･退院サマリーが閲覧できます。 ・オーダー照会･･ 各種オーダー(投薬､検査 等) 歴が確認できます。 ・移動・食事･･･ 入院中の部屋移動や食事が確認できます。 ・SSIBW ･･････ 心電図結果などが確認できます。

２．スクリーニング用アプリケーション２．スクリーニング用アプリケーション

各種複合条件設定にて電子カルテ内の医療情報データベースを検索可能。

検索結果の絞込みや、CSV出力、データベースとしての保存が可能。

東京：(株)未来医療研究センター４階 R-SDV実施室

【セキュリティーキー取付】 各R-SDV室

（写真：未来医療本社 ）

■ セキュリティー

■ セキュリティー

【カメラ設置】 R-SDV実施室 室内

（写真：未来医療本社 ）

■治験依頼者側のニーズ

業務効率化・開発コスト削減が可能

⇒徳洲会グループへの治験依頼数が増加

⇒日本での治験活性化

■徳洲会グループとしての参加

施設立地条件による受託数格差の減少

⇒東京・大阪から離島・僻地の電子カルテにアクセス可能

スケールメリットの向上

⇒グループとして１施設の超巨大病院 と同等

＝国際競争力の向上

リモートスクリーニングの導入リモートスクリーニングの導入

中央より各施設（病院）の医療情報データベースにアクセス。

検索ソフトを用いて、リモート操作によりスクリーニングが可能。

各種条件※による対象者抽出が可能。

※ 採血結果や薬剤オーダー歴など客観的データ項目での検索。

≪活用例≫

・治験対象者スクリーニング

・治験Ｆｅａｓｉｂｉｌｉｔｙ調査※２

・製造販売後調査

・疫学調査

・その他 各種臨床研究

など

Remote Chart Reference

指導医が離島の研修医のカルテを参照する運用を想定

宇治 喜界

指導医が離島側の電子カルテを操作して、閲覧する。

Remote Chart Conference

離島側の画面

を見せる

離島側の

画面が

見える

研修医 指導医

専門領域別センターネットワークの構築

札幌東徳洲会IBDセンター

岸和田徳洲会IBDセンター

福岡徳洲会IBDセンター

沖縄中部徳洲会

大学病院その他の研究医療機関における研究資金調達

大学

講座など

研究費会計

附属病院 診療科

病院会計

現物給付

競争的研究資金等

科研費（文科省）

厚生科研費（厚労省）

NEDO

ＪＳＴ

民間研究資金

主に医薬品・医療機器メーカー

個別の研究テーマによる共同研究

（受託研究経費）

テーマを限定しない寄附（奨学寄付金）

治験研究費

臨床試験

臨床研究

基礎研究

この部分が徳洲会病院にはない

・・

札幌東徳洲会病院付属臨床研究センター 設置の経緯

■2011年9月1日：院内組織として発足

■2012年1月24日定款認可・30日登記 ✔法人定款第５条第１項「医学又は歯学に関する研究所の設置」追加

✔法人定款別表「別表第23 医療法第４２条第１項第２号に定める医学又は歯学に

関する研究所の設置」

（1）医療法人 徳洲会 札幌東徳洲会病院付属臨床研究センター

北海道札幌市東区北三十三条東十四丁目3番1号

■2012年2月7日：文部科学省へ研究機関指定申請のための書類提出

■2012年6月：文部科学省の研究機関として正式に承認

研究機関番号 ９０１０１

徳洲会病院

研究組織

大学 研究所 他業種企業

競争的研究資金 共同研究資金 寄付金

研究資金 共同研究

研究組織の整備が可能とすること

北海道地区IBD病診連携ネットワーク実験

IBD専門施設候補；

北海道大学病院 札幌医科大学病院 旭川医科大学病院

札幌厚生病院 札幌東徳洲会病院

一般診療所・病院候補；

北海道大学病院 札幌医科大学病院 旭川医科大学病院各関連施設 参加は登録制・自由 無料

一定の症状基準にあったクローン病の確定診断例および疑診例を登録

紹介施設選択 紹介状の自動発行

内視鏡など検査結果の登録

寛解導入治療の実践

維持治療法の決定

クラウド型サービスのセキュリティ対策

インターネット

仮想トンネル

VPNルータ

• 利用端末には証明書をインストールして、センタの証明書と照合

医療クラウドデータセンタ

データセンタはガイドライン*に則り運用 •災害対策がされた建物、監視カメラ等で入退出を管理、施錠によるサーバ管理 •外部及び内部からの不正アクセスを防止する措置 •24時間・365日・10分毎のシステム監視と異常報告 •運用されているサービスの監視、アクセスログの取得 •技術的ぜい弱性に関する情報収集と24時間以内のパッチ等の対応 •責任者の設置、従業員への教育、等

• 仮想トンネルを内で暗号化された情報をやりとり（盗聴対策）

プログラム

•他とは仮想空間領域を分離 •利用者毎のIDとパスワードによる認証 •患者毎の開示先設定による情報アクセス管理

• 端末に情報を保存せず

•厚生労働省 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

•総務省 ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン

•経済産業省 医療情報を受託管理する情報処理事業者向けガイドライン

・サービスを提供するメディカルアイの導入・運用管理責任者は、一般社団法人医療情報安全管理監査人協会の公認医療情報システム監査人補の資格を取得

• データセンタを運営しているケイ・オプティコムは、安心・安全マークおよびISO 27001 を取得

バックアップ

• 別サーバに５世代のバックアップを保持

炎症性腸疾患専門施設

研究協力医療機関

北海道大学附属病院

旭川医科大学附属病院

札幌医科大学附属病院

札幌厚生病院IBDセンター

札幌東徳洲会病院IBDセンター

北海道地区IBD病診連携ネットワーク実験

徳洲会病院群における診療情報ネットワークの現況と今後の展開

医療機関インフラ・診療実績

共通病院情報システム 共通病院情報システム

統一コード化統一コード化

診療DBの

構築

•共通システム作成に向けた職員の•共通システム作成に向けた職員のmotivation

•強いリーダーシップ

グループ内システムマ

（未来医療）

グループ内システムマネージメント（TIS)

GCPマネージメント

（未来医療）

臨床研究・治験の促進

臨床研究・治験の促進

多施設連携の強化

診療レベル向上

高度医療の機会均等

などの共同プロジェクトOncology, IBD center などの共同プロジェクト

データ解析、コラボレーションソフトウエアの開発