1451

Micro Particle Enzyme Immunoassay

(MEIA)-IMxに よ るHBc抗 体 の検 出

九州大学医学部附属病院総合診療部

柏木 征 三郎 林 純 梶 山 渉

野 口 晶教 中 島 孝 哉 平 田 美樹

(平成3年7月4日 受付)

(平成3年7月12日 受理)

Key words: anti-HBc, micro particle enzyme immunoassay, radioimmunoassay,

passive haemagglutination

要 旨

最近,開 発 され たHBc抗 体 の測 定 方法 で あ るIMxHBc・ ダイ ナパ ック(Abbott社)と 従来 のRIA

(HBc抗 体 ・リアキ ッ ト,Abbott社)お よびPHA(セ ロク リッ ト― 抗HBc・ 目黒研)と を実際 の 臨床

材料 を用 い て比較 検討 した.

合 計813例 の検 出率 はIMx-HBcお よびRIAと もに陽性 が427例(52.5%),RIA陽 性でIMx-HBc陰

性 が2例(0.2%),共 に陰 性が384例(47.3%)で あ り,IMx-HBcの み陽 性例 は なか った.そ の一 致 率

は99.8%で あ った.

IMx-HBcお よびRIAの 相 関 係数 は0.969と 良好 な相 関関 係 がみ とめ られた.

希釈 試験 の成績 よ り,HBc抗 体価 はHBsAgキ ャ リア ーで は高 抗体価 を示 し,HBsAg陰 性例 で は低

抗体価 を示 した.従 来 のRIAと 同様 に,200倍 希釈 でinhibition%が90%以 上 の高HBc抗 体 価 を示 す例

は血 中 にHBsAgが 検 出 され な くて もHBsAgキ ャ リアーを疑 う必 要 があ る と思われ た.

本法 は全 自動 測定 装置 を装 備 して い るた め操 作 も非常 に簡 単で,測 定時 間 も45分 と従 来 のRIAに くら

べ,短 時間 で あ った.

以上 の結 果 よ り,IMx-HBcはRIAと ほ ぼ同等 の感 度 を有 し,RIAよ りも操 作 も簡単 で,か つ 測定 時

間 も短 縮 され有 用 な検 査方 法 と考 え られ る.

は じめ に

HBc抗 体(Antibody to hepatitis B core

antigen)の 検 出 方 法 と して は,Immune Adher-

ence Haemagglutination(IAHA),Radio-

immunoassay(RIA),Enzyme Immunoassay

(EIA)等 が 開 発,評 価 され て きた が,現 在 はRIA

お よびEIAが 一 般 に 広 く使 用 され て い る.HBc

抗 体 は,B型 肝 炎 ウ イ ル ス(Hepatitis B virus,

HBV)の3種 の 抗 原 ・抗 体 系 の 一 つ の 系 で あ る が,

HBV感 染 の 既 往 お よ び感 染 状 態 の 指 標 とな る と

さ れ て い る1)2)。

従 来,輸 血 後B型 肝 炎 予 防 の た め の 輸 血 用 血 液

の 事 前 検 査 は,HBsAg(Hepatitis B surface

antigen)の み の ス ク リー ニ ン グが 一 般 的 で あ っ

た.し か し,最 近,HBc抗 体 の 高 抗 体 価 の血 液 の

排 除 に よ り,B型 の 輸 血 後 肝 炎 の 発 症 が予 防 出来

た との報 告 も あ り3),HBc抗 体 の迅 速 で 簡 便 な 測

定 の 確 立 が重 要 と な っ て きて い る.

先 に我 々 は,新 し く開 発 され た 全 自動 測 定 装 置

(IMxア ナ ラ イ ザ ー)を 用 い たMicro Particle

Enzyme Immunoassay(MEIA)-IMxに よ る

HBs抗 原 の 検 出 に つ い て 報 告 した が4),今 回,同 測

定 装 置 を 用 い たHBc抗 体 の 測 定 に つ い て,実 際

別刷請求先:(〒812)福 岡市東区馬出3-1-1

九州大学附属病院総合診療部

柏木征三郎

平成3年11月20日

1452 柏木征三郎 他

の 臨 床 材 料 を 用 い て,RIAお よびPHAと の比 較

検 討 を し,良 好 な成 績 を 得 た の で報 告 す る.

対 象 お よ び検 査 方 法

I. 対 象

1) 九 大 病 院 総 合 診 療 部 に て 経 過 観 察 中 の 肝 疾

患 々者43例(う ちHBsAg陽 性 は18例),HBsAg

陽 性 のAsymptomatic carrier(ASC)69例

2) 福 岡 市 の 某 病 院 の 腎 透 析 患 者 の 血 漿201例

(う ちHBsAg陽 性 は5例)

3) 精 薄 施 設 収 容 者291例(う ちHBsAg陽 性 は

26例)

4) 宮 崎 県 の某 病 院 の 医 療 従 事 者209例

5) 急 性B型 肝 炎12例,の べ40検 体

以 上 の 総 計825例,の べ853検 体 を 対 象 と した.

II. 検 査 方 法

MEIA-IMxはIMxHBc・ ダ イ ナ パ ッ ク(Ab-

bott社 製,以 下IMx-HBcと 略),RIAはHBc抗

体 ・ リア キ ッ ト(Abbott社 製),PHAは セ ロ ク

リ ッ ト― 抗HBc(化 血 研 製)を 用 い た .HBc抗 体

に はIgM型 お よ びIgGの2種 類 の 抗 体 系 が あ る

が,今 回 使 用 した3方 法 と も にIgM型 お よ びIgG

型 の どち ら も検 出す るTotal HBc抗 体 の 測 定 方

法 で あ る.IgM型HBc抗 体 に つ い て は,本 法 を 利

用 し て 現 在 検 討 中 で あ る.HBsAgの 測 定 に は

RIA(オ ー ス ト リアII,Abbott社 製)を 用 いた.

検 査 に あ た っ て の 判 定 は 各 々の キ ッ トに 添 付 さ

れ て い る指 示 書 に従 った.RIAに つ い て は 本 邦 で

はinhibition%が70%以 上 を 陽 性,30%未 満 を 陰

性,30%～70%の 検 体 は判 定 保 留 と して い る が2),

今 回 の検 査 で は50%以 上 を 陽 性,50%未 満 を 陰 性

と判 定 した.た だ し,従 来 判 定 保 留 と され て い る

領 域 の 検 体 に つ い て は 再 試 験 を 行 い 決 定 し た.

IMx-HBcで のinhibiton%が,40.0%～60.0%を

示 す 検 体 に つ い て も数 度 の 検 査 を行 った 。

IMx)HBcお よ びRIAの 両 方 法 でHBc抗 体 が

陽 性 と判 定 さ れ たHBsAgキ ャ リア ー12例 お よ び

HBsAg陰 性 例26例,ま た 急 性B型 肝 炎12例(の べ

39検 体)に つ い て200倍 希釈 に よ るHBc抗 体 の検

討 を した が,い ず れ も検 出感 度 の 比 較 の 際 の 集 計

に は加 え な か っ た.

希 釈 に は,IMx-HBcキ ッ ト添 付 のNegative

Controlを 使 用 した.

血 清 お よび 血 漿 は採 血 後-20℃ で 保 存 した .

今 回 使 用 し た 全 自動 測 定 装 置(IMx-ア ナ ラ イ

ザ ー)を 用 い たMicro Particle Enzyme Im-

munoassay(MEIA)-IMxの 測 定 原 理 に つ い て

は,先 にIMx-HBsAgの 使 用 経 験 の報 告 で 詳 し く

述 べ た の で 省 略 す る4)5).

結 果

1. 検 体 感 度 の 比 較

Table 1に 示 す よ うに,HBc抗 体 はHBsAg陽

性 例118例 で は 全 て,IMx-HBcお よ びRIAと も

に 陽 性 で あ った .IMx-HBcが 陰 性,RIAが 陽 性 の

例 は 腎 透 析 患 者1例 と施 設 収 容 者1例 の 計2例 で

あ った.両 例 は とも にHBsAgは 陰 性 で あ った .

IMx-HBcが 陽 性 でRIAが 陰 性 例 は1例 も み と

め られ なか っ た.

両 方 法 の 不 一 致 例 は 腎 透 析 患 者 お よび 施 設 収 容

者 の2例 の み で あ った が,腎 透 析 患 者 は42歳,男

性 でIMx-HBcのinhibition%は45.3%,RIAで

は54.8%で あ った.又,施 設 収 容 者 の1例 は ,35

歳,女 性 で ダ ウ ン症 の基 礎 疾 患 が あ り,IMx-HBc

は45.1%,RIAは79.3%で あ った .

合 計813例 のHBc抗 体 の 検 出 率 は,2方 法 と も

Table 1 Detection of the presence of anti-HBc by IMx and RIA

+:positive, -:negative

感染症学雑誌 第65巻 第11号

MEIA-IMxに よ るHBc抗 体 の検 出 1453

に 陽 性 が427例(52.5%),RIAが 陽 性 でIMx-HBc

陰 性 が2例(0.2%),共 に陰 性 が384例(47.3%)

で あ り,IMx-HBcの み 陽 性 例 は な か った.一 致 率

は99.8%で あ っ た.

2. 本 法 とRIAと の 相 関 性

813例 に つ い て 本 法 とRIAと の 比 較 を 行 っ た

が,相 関 係 数0.969,回 帰 直 線y=1.142x-13.877

と良 好 な相 関 関 係 が み とめ られ た(Fig.1).

3. 同 時 再 現 性

HBc抗 体 陽 性 例 を 段 階 的 に希 釈 し,同 一 ロ ッ ト

の キ ッ トで5回 ず つ 測 定 した.Fig.2に そ の 成 績

を 示 した.い ず れ も変 動 係 数(CV)は10%以 下 で

あ り,値 の変 動 は 少 な く,良 好 な成 績 で あ った.

4. PHAと の 比 較

IMx)HBcで 陽 性 と判 定 さ れ た146例(HBsAg

陽 性61例 お よ び陰 性85例)に つ い て,PHAに よ る

Fig. 1 Correlation of anti-HBc levels between

IMx and RIA

Fig. 2 Detection of the presence of anti-HBc by IMx using serum diluted serially

and assayed 5 times

抗 体 価 とIMxのinhibition%と の 関 連 を 検 討 し

た(Fig.3).Fig.3の ご と く,PHAに よ るHBc

抗 体 価 はHBsAg陽 性 例 で は 高 抗 体 価 を,陰 性 例

で は 低 抗 体 価 を 示 し た が,HBsAg陽 性 例 で も

PHAで47以 下 の 例 が2例 み とめ られ,HBsAg陰

性 で も48以 上 の例 が6例 み とめ られ た.PHAの 抗

体 価 に 関 係 な く,IMx-HBcで セさ146例 中133例

(96.6%)は90%以 上 のinhibition%を 示 した.

従 って,未 希 釈 で は,IMx-HBcに よ る 定 量 は 困難

で あ る と考 え られ る.

一 方,IMx-HBcで 陽 性 で あ っ た146例 中6例

(4.1%)はPHAは 陰 性 で あ った.

5. 希 釈 試 験

1) 希 釈 時 に お け るIMxとRIAの 比 較

平成3年11月20日

1454 柏木征三郎 他

Fig. 3 Correlation of anti-HBc levels between

IMx and PHA

HBsAgキ ャ リア ー1例(低HBc抗 体 価)お よ

びHBsAg陰 性例3例 の 血 清 をIMx-HBcキ ッ ト

添 付 の 陰 性 コ ン ト ロー ル で21～213ま で 段 階 的 に

希 釈 して,両 方 法 に よ るHBc抗 体 の 測 定 結 果 を

Table 2に 示 し た.HBsAg陽 性 例 は29ま で90%

以 上 のinhibition%を 示 し,そ の後 の 希 釈 で低 下

した.ま た,HBsAg陰 性 例 の うち低HBc抗 体 価

例 はCase4の よ う に 希 釈 と 共 に ほ ぼ 直 線 的 に

inhibition%の 低 下 を示 した が,高 抗 体 価 の2例

(Case2,3)で は低 希 釈 領 域 の 場 合,24ま で は90%

以 上 で あ り,そ の 後 の希 釈 か ら ほ ぼ直 線 的 に低 下

した.

ま た,inhibition%が50%に 近 い 陽 性 を 示 す 希

釈 点 はHBsAgキ ャ リア ー の 場 合,IMx-HBcで

は211,RIAで は29と2管 の 差 が あ り,IMxの 方 が

高 希 釈 で も陽 性 で あ った.ま た,HBsAg陰 性 例3

例 の うち1例(Case3)で はIMxで は26,RIAで

は24と2管 の差 が み られ た が,他 の2例(Case2 ,

4)は 両 方 法 と もに そ れ ぞ れ21,27と 差 は み られ な

か った.こ の よ うに,4例 中2例 は 希 釈 した場 合

に は,IMxの 方 がRIAよ り感 度 が 良 か った .

2) 希 釈 時 に お け るHBsAgキ ャ リア ーお よ び

HBsAg陰 性 例 のHBc抗 体 価 の 検 討

HBsAgキ ャ リア ー10例 お よ びHBsAg陰 性 例

23例 の 希 釈 時 に お け るIMx-HBcで の測 定 結 果 を

Fig.4に 示 した.HBsAgキ ャ リア ー例 で はHBc

抗 体 のinhibition%は5,000倍(211)ま で は 全 例 が

90%以 上 で あ った.そ の 後 の希 釈 か ら直 線 的 に低

下 した.こ の場 合,希 釈 時 の 測 定 で もinhibition%

が50%以 上 を 陽 性 と した.従 っ て,希 釈 検 体 で 抗

体 価 を み る場 合,抗 体 価 はinhibition%が50%に

最 も近 く,50%以 上 を示 す 検 体 の希 釈 倍 率 で表 わ

した.

Table 2 Detection of presence of anti-HBc by IMx and RIA on sera diluted

serially

+:positive, -: negativeInh.%:Inhibition%

感染症学雑誌 第65巻 第11号

MEIA-IMxに よ るHBc抗 体 の検 出 1455

Fig. 4 Distribution of the inhibition % by IMx

using diluted sera of subjects with and withoutHBsAg

抗 体 価 の 分 布 は,5,000倍(211)は1例,10,000

倍(212)は3例,20,000倍(213)は4例,50,000

倍(214)で2例 で あ っ た.こ の よ うにHBsAgキ ャ

リア ー は全 て 高 抗 体 価 を 示 した.一 方,HBsAg陰

性23例 で は 原 血 清 で は全 例 が90%以 上 のinhibi-

tion%を 示 した が,HBsAgキ ャ リア ー と同 様 に

み る と,抗 体 価 は10倍 以 下(>23)は4例,10倍 以

上,100倍 以 下(23～25)は13例,100倍(26)は2

例,200倍(27)は3例,500倍(28)は1例 で あ っ

た.200倍 希 釈 で も なおHBc抗 体 陽 性 で あ った の

は4例 で あ った.こ れ らの うち3例 は500倍(28)

希 釈 で は 陰 性 と な った.200倍(27)お よ び500倍

(28)で もHBc抗 体 が 陽 性 で あ った4例 は,い ず れ

もHBsAg陰 性 で肝 疾 患 な どの 基 礎 疾 患 も な か っ

た.

以 上 の様 に,HBsAgキ ャ リア ー お よ びHBsAg

陰 性 例 の 間 に はHBc抗 体 価 に 著 明 な 差 が み とめ

られ た.

3)200倍 希 釈 時 の 急 性B型 肝 炎 に お け る

HBsAg陽 性 時 と陰 性 時 のHBc抗 体 価 の 検 討

Fig. 5 Distribution of the inhibition % by IMxusing 200 times diluted sera of acute hepatitis B

with and without HBsAg

Fig. 6 Correlation of anti-HBc levels between

IMx and RIA when all sera were diluted 200

times

Fig.5に 急 性B型 肝 炎 の さい の200倍 希 釈 時 の

HBc抗 体 のinhibition%の 分 布 を 示 し た.

HBsAg陽 性 時 の 検 体19例 中90%以 上 のinhibi-

tion%を 示 す 例 は2例 の み で あ り,HBsAg陰 性

時 に は90%以 上 は1例 もみ とめ られ な か った.

4) 200倍 希 釈 検 体 に よ る相 関 性

HBc抗 体 陽 性 例(HBsAgキ ャ リ ア ー22例,

平成3年11月20日

1456 柏木征三郎 他

HBsAg陰 性27例)49例 の200倍 希釈検体 のIMx.

HBcお よびRIAに よる測定結果の相関をFig .6

に示 した.回 帰直線y=0.982x+2.447,相 関係数

0.979と 良好な結果であった.

考 案

近年,高 感度のHBsAg測 定法によるスク リー

ニングにより輸血後のB型 肝炎の発症 も減少 し

てきたが,必 ず しも完全ではなかった.す なわち,

HBsAg陰 性血液の輸血によってもB型 肝炎の発

症が時にみ られた.こ れに対 して,HBsAg陰 性例

で もHBc抗 体の高抗体価の血液の排除 によ り輸

血後のB型 肝炎の発症がほぼ100%予 防で きた と

の報告 もあ り3),高感度かつ迅速なHBc抗 体の測

定が重要 となってきている.

先に,我 々は全 自動測定装置を利用 したIMx-

HBsAgの 測定手技について迅速で簡便,ま た感

度 もRIAと 同程度で,有 用な検査方法であると報

告 したが4),今回同装置を利用 したHBc抗 体測定

方法であるIMx-HBcの 検出感度および定量性に

ついて,従 来のRIAお よびPHAと の比較検討を

行 った.

血液中のHBc抗 体の存在 には2種 の状態があ

り,HBsAgと ともに血液中に存在すれば現在の

感染状態(HBsAgキ ャリアーお よびHBVの 一

過性感染)を,HBs抗 体(Antibody to HBsAg)

とともに存在すれば感染の既往をあ らわす とされ

てい る1)2).すなわ ち,HBsAg陽 性例 ではほぼ

100%にHBc抗 体が共存す る.今 回の検査で も

HBsAg陽 性例では肝疾患 々者お よびASCの い

ずれ も全例がIMx-HBcお よびRIAと もに陽性

であった.

HBsAg陰 性例でも一般健康人および肝疾患 々

者ではともに不一致例はみられなかった.し かし,

腎透析患者の1例 および施設収容者1例 の計2例

がRIAの み陽 性で あった.こ の2例 は ともに

HBsAgは 陰性であった.腎 疾患の1例 はHBc抗

体価は低 く,頻 回な輸血を受けていた.ま た,施

設収容者 もダウン症の基礎疾患があ り,検 出方法

に影響す ることも考 えられた.し かし,他 の腎透

析患者290例(99.7%),施 設収容者203例(99.5%)

では両方法 ともに検出率は一致 してお り,充 分に

信頼できる成績 と考えられたが,こ れ らの特殊な

症例 には頻回な検査を行い慎重に判定すべ きであ

ると考えられる.

また,本 法は従来のRIAと の相関もきわめて良

好で再現性について も特に問題点はみとめ られな

かった.本 法の測定 によるHBc抗 体 のinhibi-

tion%の 分布 はHBsAg陽 性例 では全例が90%

以上に位置 し,再 検査領域 とされる40%～60%を

示 したのはHBsAg陰 性例の13例(1.6%)で あっ

た.こ れらの例については数回の測定を行った.一方,定 量性に関しては,厳 密な意味での定量

性はないが,従 来,RIAで はinhibition%が50%

になる最終希釈倍率であ らわ している.IMx-HBc

でも同様に考え得るかどうかを希釈試験を行い評

価 した.こ の結果,IMx-HBcで もRIAと 同様に

希釈をす ることによって定量す ることが可能で

あった.し かし,こ のように希釈 した場合には,

RIAよ りもIMxの 方が2管 ほ ど高い値を示す例

もあ り,(Table 2,case 1,case 3)両 者では解

離がみとめ られた.原 液ではむ しろRIAの 方が検

出感度が良いにもかかわ らず,希 釈 した場合に逆

の現象がみ とめられた.この原因は不明であるが,

今後 さらに検討す る必要がある.ま た,未 希釈で

定量可能かどうかは,PHAと 検討 したが,PHA

で低抗体価でも90%以 上のinhibition%を 示す検

体 も多 くあ り,未 希釈での定量は不可能であると

考 えられる.こ のよ うに未希釈でのHBc抗 体 の

測定のみでは,HBsAg陽 性例 と陰性例の区別 は

不可能である.しかし,HBc抗 体価はHBs抗 原陽

性例の方が陰性例に比べて著明に高いことが知 ら

れている2).従来は簡便なHBc抗 体価の測定方法

として,RIAに よる200倍 希釈検体の測定が行わ

れて いる.す なわち,200倍 希釈でHBc抗 体 の

inhibition%が90%以 上を示す例は,高HBc抗 体

価であ り,この場合には,血 中にHBsAgが 存在 し

な くて もHBsAgキ ャリアーを疑 うとされて い

る2).こ のため,IMx-HBcで も同様の ことが言え

るかどうかを検討 した.今 回の検討でもHBsAg

キャ リアーとHBsAg陰 性例のHBc抗 体価 には

著明な差があ り,陰性例では200倍 希釈で90%以 上

のinhibition%を 示す例は1例 のみであった.し

感染症学雑誌 第65巻 第11号

MEIA-IMxに よ るHBc抗 体 の検 出 1457

かし,本 症例についての詳細 な検討はなされてい

ない.ま た,HBsAgキ ャリアーからの増悪か急性

B型 肝炎 の発症か ど うかをIgM型HBc抗 体の

みで判定することは困難なことがある.このため,

200倍 希 釈 した際 の本 法 で のinhibition%を

HBsAgキ ャリアーと急性B型 肝炎のHBsAg陽

性時 と陰性時の血清について検討 した.急 性B型

肝 炎の さい には,HBsAg陽 性 時の2例 にのみ

90%以 上 のinhibition%を 示 し,他 はHBsAg

キャリアーに比べて明 らかに低かった.急 性発症

か どうかは経過を観察する必要があるが,以 上の

点から断定は出来 ないが推定することが可能であ

ろう.

一 方,200倍 希 釈 検体 で のIMx-HBcお よび

RIAの 相 関係数 も0.979と 良好 な成績 が得 られ

た.ま た,希 釈系列による同時再現性も変動係数

10%以 下 と良好な成績であった.以 上の点から,

IMx-HBcで もRIAと 同様 に200倍 希釈で90%以

上のinhibition%を 示す例はHBc抗 体が高抗体

価例,す なわち,血 中にHBsAgが 検出されなくて

もHBsAgキ ャリアーを疑 う必要があると思われ

た.

測定手技については,RIAと の大きな違いは全

自動測定装置を使用することである.こ の方法に

ついては,先 のIMx-HBsAgの 使用経験で詳しく

報告 した4).今 回のIMx-HBcも 測定時間はRIA

の一昼夜放置法に比べて,45分 とはるかに短 く,

迅速性に優れている.ま た,自 動測定装置の利用

により検体の分注後,機 械にかければ試薬の添加,

洗浄,イ ンキ ュベーシ ョソおよび読み取 りの一連

の操作を自動的に行い,手 がるに,特 に熟練者で

なくても測定ができる.し かし,一 度の検査で最

高24検 体の測定のため,大 量の検査には不向きで

ある.

以上,IMx-HBcの 使用経験について述べたが,

RIAと ほぼ同等の検出感度を有 し,簡 便で迅速性

に優れ良好な検査方法 と考えられた.

結 語

新 し く開発 されたHBc抗 体検出用のMEIA-

IMx(IMxHBc・ ダイナパ ヅク)に ついて実際の

臨床材料を用いて,従 来のRIA(HBc抗 体・リア

キ ッ ト)お よ びPHA(セ ロ ク リ ッ トーHBc)と の

比 較 検 討 を 行 っ た.

1. 総 計813例 の 検 出 率 は2方 法 と も に 陽 性 が

427例(52.5%),RIAの み 陽 性 でIMx-HBc陰 性

が2例(0.2%)で あ り,IMx-HBcの み 陽 性 例 は

な か った.そ の 一 致 率 は99.8%で あ った.

不 一 致 例 は 腎 透 析 患 者 お よび 施 設 収 容 者 の2例

の み で あ った が,腎 透 析 患 者 のHBc抗 体 価 は低

か った.

2. IMx-HBcお よ びRIAの 相 関 係 数 は0.969

と 良 好 な 相 関 関 係 が み とめ ら れ た.ま た,IMx-

HBcの 日内 同 時 再 現 性 に つ い て も,変 動 係 数

(CV)は10%以 下 で あ り,良 好 な 成 績 で あ った.

3. PHAの 定 量 試 験 に よ るHBc抗 体 価 と

IMx。HBcの 原 液 血 清 に よ るinhibition%の 比 較

の 結 果,未 希 釈 で は定 量 は 不 可 能 で あ る と考 え ら

れ た.

4. HBsAgキ ャ リ ア ー とHBsAg陰 性 例 の

HBc抗 体 価 に は 著 明 な差 が あ った.ま た,200倍 希

釈 検 体 のIMx-HBcお よ びRIAの 相 関 係 数 も

0.979と 良 好 な 成 績 が 得 られ た こ と か ら,従 来 の

RIAと 同 様 に,IMx-HBcで も200倍 希 釈 検 体 で

inhibition%が90%以 上 を示 す 例 は,HBsAgキ ャ

リア ー を疑 う必 要 が あ る と思 わ れ た.

5.操 作 も簡 単 で,測 定 時 間 も約45分 と従 来 の

RIAに 比 べ,短 時 間 で あ った.

以 上 の 成 績 か ら,本 法 はRIAと ほ ぼ 同等 の 感 度

を有 し,操 作 法 もRIAよ りは るか に簡 便 で,測 定

時 間 も短 く,有 用 な検 査 方 法 と考 え られ た.

文 献

1) Hoofnagel, J. H., Seeff, L. B., Bales, Z. B., Gerety,R. J. & Tabor, E.: In serologic responses inHB. In Viral Hepatitis. (Vyas, G.N., Cohen, S.N., Schmid, R., ed.), p. 219-244, Franklin Insti-

tute Press, Philadelphia, 1978.2)鈴 木 宏, 他 二RIA法(CORAB)に よ る血 中HBc

抗体 測 定 の検 討. 医学 と薬 学, 3: 105-110, 1980.

3) Nishioka, K.: Effects of HCVAB (c100-3) andHBcAb screening on incidence of post transfu-sion hepatitis in Japan. In Proceeding of JointMeeting of the 13th US-Japan Hepatitis Panel.

New York, May, 15-17, 1991.4) 柏 木 征 三 郎, 林 純, 野 口 晶 教, 他: Micro

Particle Enzyme Immunoassay(MEIA)に よ る

平成3年11月20日

1458 柏木征三郎 他

HBsAgの 検 出-RIAお よ びRPHAと の 比 較

一 . 感 染 症誌, 65: 185-192, 1991.

5) 高井 優, 倉 田邦 夫, 他: 全 自動 マイ ク ロパ ーテ ィ

クル酵 素 免 疫測 定 法. ホ ル モ ン と臨床, 36: 829

-832 , 1988.

6) Kojima, M., Udo, K., Takahashi, Y., et al.:Correlation between titer of antibody to hepati-tis B core antigen and presence of viral antigenin the liver. Gastroenterology, 73: 664-667,

1977.

Evaluation of Micro Particle Enzyme Immunoassay Technique (MEIA)-IMx for theDetection of Antibody to Hepatitis B Core Antigen

Seizaburo KASHIWAGI, Jun HAYASHI, Wataru KAJIYAMA, Akinori NOGUCHI,Koya NAKASHIMA & Miki HIRATA

The Department of General Medicine, Kyushu University Hospital

The new Micro Particle Enzyme Immunoassy technique (MEIA, IMx HBc, Abbott) has beenrecently introduced for the detection of the antibody to hepatitis B core antigen (anti-HBc).

To evaluate the feasibility of using the IMx-HBc, we carried out comparison tests with thismethod and RIA using various sera.

Results obtained were as follows:In the test of 813 sera, 427 (52.3%) were positive by both IMx and RIA, two (0.2%) were positive by

RIA only, and the remaining 384 (47.3%) were negative by both methods. A good correlation betweenIMx and RIA was observed with a concidence rate of 99.8% and a correlation coefficient of 0.969.

Examination of diluted sera using IMx revealed that IMx can be used as efficientlywas RIA: highanti-HBc titer was found among HBsAg carriers, but not among non HBsAg carriers.

Anti-HBc was assayed within 45 minutes by IMx, and the procedure was simple because of theauto analyser used in this method.

These results indicate that the sensitivity of IMx is equivalent to that of RIA, and that it is easierto use than RIA.

感染症学雑誌 第65巻 第11号