モビタリティPJ 高齢者・障がい者にやさしい患者サービスを目指した

「病院内移動支援システム」の開発とその未来

2017年1月27日 東京都市大学都市生活学部准教授 慶應義塾大学SFC研究所上席所員

西山 敏樹

モビタリティ社会の創造

モビリティ＝移動や運搬を円滑に行える権利 ホスピタリティ＝おもてなし

慶應の造語・コンセプト 移動や運搬を円滑に行えるようにして人々の負担を軽くし，おもてなしの水準を上げる．それを通じ，快適な社会環境創造に繋げる．

1

ＥＶ技術展開の可能性

トラック

バス

一般乗用車

小型電動車

2

一人当たりの移動回数 ： 平均６.０回

移動距離 ： 平均２８６ｍ

自力で歩行

651（82.5％）

杖で歩行

74（9.4％）

車椅子

28（3.5％）

付添い有

22（2.8％）

外来患者

789人

（1時間当り）

（参考）慶応大学病院の一日あたりの外来患者数 ： 約３０００人

内、７０歳以上の高齢者が約３５％

病院内の基礎的な課題の調査

・患者の移動（人の搬送）

外来患者の観察調査を実施

病院の車椅子を使用

14（1.8％）

外来風景

ベッドにて搬送

病院の車椅子にて移動

車椅子で搬送

杖を突いて移動 杖を突いて移動

②病院内での移動手段

約17.5％

①病院内での移動頻度

（例）：外来受付 → Ｘ線受付 → Ｘ線検査室① → Ｘ線検査室② →

外来計算 → 支払い → 玄関

計６回 移動距離３１５ｍ

病院内の移動による負担を軽減する手段が必要 3

病院内電動車輌走行のイメージ案(作りたい病院像)

移動

移動

移動

移動 →病院内電動車(無人配送

車のイメージ)

病室 投薬窓口

移動

第一診察室

レントゲン室

第二診察室 内視鏡室

受付

シーン②：電動の患者送迎車で車

いすに乗った患者を院内まで乗り

入れ送迎．降車後は，車いすごと

病院内電動車両に乗車する(院外・

院内のコネクティビティ拡充)．

シーン①：病院内電動車輛に

乗車した患者毎に院内移動の

計画を立て，診察室等を巡り，

移動抵抗を軽減させる．

病室のベットからの移乗の

し易さも検討する．

衝突安全性能については，

細心の注意を払って設計．

患者の診療データ，移動データ全て

を管理するシステムを構築する．

中央制御

センター

通信

通信

通信

通信

通信 通信

通信

シーン③：別ラインにて院内

物流抵抗軽減に関しても別途

検討する．

上位キーワードは

「院内ITアシスト」．

当初は，医療現場の

ニーズが高いシーン

①からアプローチを

始める？

4

慶應義塾大学病院 質問紙調査結果報告

ースタッフは何を欲しているのかー

5

属性情報

看護系 275 医師系 106 事務系 45 技師系 79 回答無し 40 計 545

51%

19%

8%

15%

7%

職種構成

看護系

医師系

事務系

技師系

回答無し

最年少 19歳 最年長 68歳 平均年齢 37.48歳

女性 356 男性 140 回答無し 49 計 545

年齢

男女別

職種構成

0

5

10

15

20

25

30

19 25 31 37 43 49 55 61 67

人数

年齢

年齢分布

6

患者搬送時の問題点(件数) 患者を搬送するときの問題点 医師系 看護系 技師系 事務系 全体計エレベータの待ち時間が長い 23 62 5 1 91動線が搬送用に分かれてない 17 53 7 0 77エレベータが狭く搬送が大変 2 20 3 1 26患者の搬送で人手が足りない 4 19 3 0 26車いすの操作時に体力を使う 1 20 2 2 25部屋が狭く移乗や移動が大変 3 20 0 0 23特に不便に思う様な事はない 3 9 2 0 14ベッドでの搬送に体力と神経 3 9 0 0 12トイレが狭いので移動が大変 0 11 0 0 11患者さんを搬送する時の重量 0 9 1 0 10点滴やドレーンの対応に困る 2 4 4 0 10ストレッチャーが大きく困る 3 4 0 0 7スロープが搬送の妨げである 1 5 0 0 6トイレが遠いので移動が大変 0 4 0 0 4病室から検査室の距離が長い 1 3 0 0 4腰痛などの持病に悩まされる 0 1 1 0 2移動の負担で診療が停滞する 1 0 0 0 1患者が転倒しない様気を遣う 0 0 1 0 1身障者トイレの数が少ない事 0 1 0 0 1部屋の扉が狭かったり重たい 1 0 0 0 1落ち着かない人の対応が大変 0 1 0 0 1合計件数 65 255 29 4 353 7

患者搬送時のニーズ(件数) 患者を搬送するときのニーズ 医師系 看護系 技師系 事務系 全体計動線分離とその安全性を確保 13 58 10 2 83ベッドや車いすのアシスト化 21 33 5 0 59広いエレベータの数を増やす 32 20 2 0 54ストレッチャーのアシスト化 4 15 3 2 24ベッドや車いすのリモコン化 8 7 1 0 16一人で複数の車いすを運搬可 1 10 4 1 16車いすにアシスト機能を付与 3 9 3 1 16人手を増やすことで対応する 3 6 2 2 13点滴の移動等考慮の支援機器 1 6 4 0 11特に今改善にすることはない 3 7 0 0 10ベッド移乗の支援器具の用意 2 6 0 0 8部屋を広くして移動しやすく 2 1 1 0 4患者の力を活かせる移動器具 0 1 2 0 3段差部を減らしてスロープ化 0 2 0 1 3自動運転可能な次世代ベッド 0 2 0 0 2ベッドがラジコンの様に動く 0 1 0 0 1ベッドの移動アシストの装置 0 1 0 0 1床や壁等が地図化するとよい 0 1 0 0 1色々な機器がのれる新ベッド 0 1 0 0 1搬送を自動で行える様にする 1 0 0 0 1トイレの広さを広げてほしい 0 1 0 0 1全体的にバリアフリー化する 0 1 0 0 1予定を一括管理可のシステム 1 0 0 0 1合計件数 95 189 37 9 330 8

インクルーシブデザイン ワークショップ調査も実施

9

インクルーシブデザイン ワークショップ調査の実施

赤丸が班として推したい

意見とポイント

10

病院内調査の小括

• 総体的に「患者搬送」での改善ニーズが高く，特にベッドや車いす，ストレッチャー等の搬送機器のアシスト・リモコン操縦支援，自動運転導入あたりのニーズが高い状況である．

• 「物品搬送」の分野でも，ワゴンや輸送台車のアシスト又はリモコン操縦支援，自動運転化あたりのニーズが高い状況である．「患者の搬送」との共通技術化も可能と考えられる．

• 以上を基に，詳細に試作のテーマを決めて行くことにした．

11

試作すべき製品の検討経過

12

試作のグランドルール

目的

看護師をはじめとするスタッフの負担軽減

基本要件

安全・安心は必須！

患者に威圧感を与えない

清潔が保たれること 13

乗員定員 １名

乗員重量 １００kg以下

身長制限 １４０cm～２００cm

患者搬送システム ユニット本体(案)

運転方式 全自動運転

誘導方式 レーザ誘導

台車長 １１００mm

台車幅 ７００mm

台車高 ９５０mm

走行速度 １．２km/h

駆動系 電動モータ駆動

バッテリー充電方式

充電１回当たり

動作時間 ８時間（５０％稼動）

通信方式 無線LAN

乗員

性能・詳細スペック

14

設計図

15

検討の状況

16

検討の状況

17

検討の状況

概ね，モックアップの

乗り心地はよく，ディ

スプレイの設置方法や

足のおき位置と身長の

関係等の寸法面等議論 18

運搬車

アイディア

スケッチ

(案)

19

試作車輛外観

搬送ユニット本体

20

試作車輛外観

搬送ユニット本体

21

試作車輛外観

搬送ユニット本体

22

実証実験の概要

場所

慶應義塾大学病院 旧病棟 中央棟～２号館

中央棟・２号館１F ２号館３F

玄関

福澤諭吉像

医療事務室

外来計算

外来会計

自動再来受付機 情報交換

ひろば

エレベータ 初診申込

カウンター

エスカレータ サテライト

ステーション

受付

精神科・歯科

受付

サテライト

ステーション

エレベータ

40m

12m

20m 4m

外来受付（１F） ⇔ 精神科・歯科受付（３F） 片道約75m（所要時間約５分）

外来受付

23

日程

実証実験の概要

調整・性能評価 （工場内）

連続稼動実験

（慶應病院内） プロト機製作

実証実験

まとめ

☆倫理審査

委員会

☆実証実験

終了 ☆車両検討会

倫理審査委員会 準備

２０１４年

１ ２ ３ ４ ５ ６ ７ ８ ９ １０ １１ １２

STEP１（夜間）

①インタビュー（経営）

出荷☆

③ユーザー評価（患者） ④性能評価

②外部評価

⑤改善点洗い出し

現地調整

STEP２（昼間午後）

STEP３（昼間午前・午後）

STEP４（昼間午前・午後、２台）

現在

実証事項

☆実機説明会（外部者）

☆ワークショップ（医療従事者）

☆実機説明会（慶應関係者）

24

④搬送ユニット管理PC

①搬送ﾕﾆｯﾄ本体

ｴﾚﾍﾞｰﾀ （２号館

中央の1基を使用）

⑤無線LAN ｱｸｾｽﾎﾟｲﾝﾄ

③ｻﾃﾗｲﾄ ｽﾃｰｼｮﾝ

ｴﾚﾍﾞｰﾀ 制御盤

EV指示

②車載端末

①搬送ﾕﾆｯﾄ本体

②車載端末

・台車位置情報

・行先指示

③ｻﾃﾗｲﾄ

ｽﾃｰｼｮﾝ

システム仕様

システム構成図

構成品 個数

①搬送ユニット本体 2

②車載端末 2

③ｻﾃﾗｲﾄｽﾃｰｼｮﾝ 2

④搬送ユニット管理PC 1

⑤無線LANｱｸｾｽﾎﾟｲﾝﾄ 3

⑥反射板 48

改造

・台車呼出

・台車位置情報

⑥反射板

25

運用

システム仕様

同意書

質問表

患者の

・同意書を取得（初回のみ）

・同意を確認（２回目以降）

予約 乗車

自動昇降

乗車予約 搬送

（立会人が安全確認しながら併走）

監視人

搬送

乗車

降車 質問表に基づき

ヒアリング

降車

搬送

搬送

自動で乗込み

自動で降りる

エレベータ

（エレベータの

詳細運用は

別頁）

降車

途中下車も可能

ｻﾃﾗｲﾄｽﾃｰｼｮﾝ

搬送

（立会人が安全確認しながら併走）

搬送ユニット管理PCにて

常時、状態管理可能

26

搬送ユニット本体

主要寸法

27

搭乗者条件

人数 １名

年齢 ２０歳以上

体重 １００kg以下（手荷物含む）

身長 １４０ｃm以上２００ｃm以下

その他

ご使用は下記の方に限ります

・自分で乗降りできる

・自分で着座姿勢を維持できる

・自分で車載端末の操作ができる

・ AGV最外側からはみ出さないで搭乗できる

・病状が急変するおそれがない

・搬送ユニット搭乗の同意を得ている

搬送ユニット本体

28

主な画面表示イメージ

初期画面 注意事項 移動先選択１

移動先選択２ 移動先選択３ 移動中

到着 途中下車 メンテナンス時（管理者のみ）

車載端末

※詳細は変更の可能性もあります

29

サテライトステーション

概要

1800mm

350mm

1200mm 品名 Surface Pro2 128GB

メーカ MicroSoft

30

動画再生エリア

主な画面表示イメージ

初期画面１ 予約画面１

乗車開始

メンテナンス時（管理者のみ）

予約画面２ 予約画面３

初期画面２

サテライトステーション

※詳細は変更の可能性もあります

31

主な画面表示イメージ

状態表示

および遠隔操作

搬送履歴

遠隔操作ボタン

状態表示

搬送ユニット管理PC

32

オペレータコール時の会話画面 異常表示

主な画面表示イメージ

搬送ユニット管理PC

※詳細は変更の可能性もあります

33

○遮光シート

○無線LANアクセスポイント

○リフレクタ

品名 高性能デュアル無線802.11nアクセスポイント

メーカ MOTOROLA製

サイズ 長さ24.1cm×幅18.9cm×高さ4.4cm

取付方法 ビス止め

600mm

床から

1600mm

遮光シート

通光性

設置機器

地上機器配置

床から

1750mm

300mm

品名 ファサラ ガラスシェード ＯＳＬＯ

メーカ 3M

取付方法 接着

取付方法 石膏ボード等 ： ビス止め

金属面等 ： 接着

病院内無線調査を実施、他設備に影響なし

34

運用

エレベータ運用の概要

通常モード

使用可能

①搬送ﾕﾆｯﾄが到着

自動モード※２

・新たな乗込み不可

・すでに乗っている人は希望の階で降りていただく

②乗込み 通常

使用不可 一般の人

EV運転モード

自動で扉開

×

切替モード

２号館エレベータを搬送ユニットの移動に使用（５基のうち、真ん中１基）

有効

有効

各階の ↑ ↓ ボタン 無効※１

無効

↑ ↓ ボタン等の

操作は不要

※１ 当該エレベータ以外の４基のエレベータは有効です

※２ 当該エレベータは１、３階のみ停止します

当該EV内の階指定ボタン

35

実証実験の経過 (ビデオもご覧下さい)

36

１．実証実験の概要

病院内での患者の自動移動の手段として、

病院内移動支援システムを実用化するために

必要な知見を得る

（１）病院内のヒトと共存する安全技術の目処付け

（２）製品化に向けた課題の洗い出し

１）目的

２）評価期間

2014年 7月28日 ～ 2014年10月10日

STEP1 7/28～8/1 14:30～18:30 （1台、医療従事者のみ）

STEP2 8/4 ～8/29 14:30～18:30 （1台、患者・医療従事者）

STEP3 9/1 ～9/19 12:00～18:30 （1台、患者・医療従事者）

STEP4 9/22～10/10 12:00～18:30 （2台、患者・医療従事者）

３）評価項目

（１）搭乗者アンケート （患者、医療従事者）

（２）外部評価 （他病院、異業種の経営者層）

搭乗者アンケート（全23項目） 37

２．アンケート結果

１）搭乗者内訳

（１）総数 ３３６名 （患者２８８名、医療従事者４８名）

目標２３０名を、１０６名（４６％）上回る

（２）推移

期間前半は、周知不足から搭乗者数が伸び悩んだが

認知度の高まりに伴い搭乗者数が増加し目標を上回る

38

２．アンケート結果

39

２．アンケート結果

２）アンケート結果

「乗車性」「安心感」 「普及・利用意思」などが好評

「速度感」「周囲の目」「端末配置」については相対的に評価が低かった

⇒ 実証実験中に効果が確認できる「速度感」を中心に改善を実施

（１）患者全体 （２８８名）

： とても良い

： 良い

良い 悪い 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100

： 悪い

： とても悪い

％ ％

乗車性

座り心地

速度感

加減速度

乗り心地全般

周囲の目

外観デザイン

安心感

周囲の速度感

端末配置

応答性

応答性

全体見易さ

文字サイズ

降車性

内装デザイン

周囲の恐怖感

音量

案内表示

ボタンサイズ

普及・利用意思

外観

文字ｻｲｽﾞ

0

乗り心地

外観・印象

車載端末

ステーション

サテライト

普及

87

51

63

94

57

87

89

80

86

84

94

86

53

83

87

86

84

77

88

79

76

85

73

好評

24

15

14

21

47

16

12

14

13

23

11

14

37

13

43

49

16

13

6

20

17

27

不評

不評

不評

6

好評

好評

好評

40

４）外観機能に関する改善要望

実際に搭乗して触れられた人の生の意見（指摘・要望）を部位ごとに層別

２．アンケート結果

マスト

大仰な印象

ステップ

乗降しづらい（H150mm）

乗降時にぐらつく

乗降用手すり

手すりと気付かない

持った時にぐらつく

座席

座面が硬い

リクライニング機能が欲しい

車載端末

取付け位置が低い

文字サイズが小さい

搭乗スペース

荷物の置き場が欲しい

進行方向が分かりにくい

前方に寄り掛かりバーが欲しい

杖，傘立てが欲しい

（１）指摘・要望事項

41

42

実現させたいイメージ

・通院時の病院を想定して，

電動車輌(リース又は試作)を

走らせヒューマンインタ

フェース等を評価していく．