光を紡ぐ ホログラフィーアートの世界

石井勢津子 蔵前技術士会 講演 2012/6/11

はじめに

• ホログラフィーの歴史 原理と応用 • ディスプレイホログラフィー 特徴と魅力 アート表現メディアとしてのホログラフィー • アートホログラフィーの応用 建築空間へ 自然環境空間へ

ホログラフィーの歴史

1948年 ハンガリー出身の物理学者デニス・ガボールにより発明された、光の波面を記録・再現できる光学技術である。

ガボールはギリシャ語のすべてを意味する “holos” とメッセージを意味する “gram” を組み合わせて”hologram、ホログラム”という言葉を作った。 後に技術の総称として”Holography ホログラフィー”という言葉が使われるようになる。

1971年 ノーベル物理学賞を受賞する。

ホログラフィーの応用

● 干渉計測 ● ホログラフィック光学素子 ● 光情報処理 ● セキュリティ ● ホログラフィックディスプレイ

• 文化財の記録保存 • 宣伝・広告・装飾 • アート • 印刷

ホログラフィーの原理

ホログラムの撮影

被写体

ホログラム

物体光の振幅と位相(強さと方向）を記録し、それらを再生する。 ホログラムの撮影は レーザーによる干渉縞の記録である。

透過型ホログラム 記録と再生

ホログラムの記録と再生

レーザー

被写体 再生像 L

HM M

L

L M

ホログラムの記録 ホログラムの再生

参照光 再生光

観察者

（ホログラム） 記録用感光材料 ホログラム

再生光源

撮影光学系

記録材料

ホログラムの種類

レーザ再生型ホログラム

白色再生型ホログラム

撮影光源

透過型ホログラム

反射型ホログラム

レインボウホログラム リップマンホログラム

レーザ再生型ホログラム レインボウホログラム

リップマンホログラム

銀塩ホログラム、重クロム酸ゼラチン（ＤＣＧ）、フォトポリマー

ホログラフィックステレオグラム

パルスホログラム

宝物の記録 旧ソ連 （旧ソ連）

三次元像

銀塩感光材料 デニシュークタイプホログラム

反射型ホログラム・シャドウグラム

石井勢津子 草原のある日

デニス ガボール

レーザー再生型ホログラム

久保田敏弘

久保田敏弘

フルカラー反射型ホログラム

三次元像

Ｃｒｙｓｔａｌ ｂｅｇｉｎｎｉｎｇ レインボウホログラム

Ｓｔｅｖｅ Ｂｅｎｔｏｎ （アメリカ）

レインボウホログラムは ベントンによって発明された

ホログラフィックステレオグラム

凸版印刷株式会社

凸版印刷

三次元像

Crystal White ﾚｲﾝﾎﾞｳﾎﾛｸﾞﾗﾑ1979 New Space ﾌﾗﾝｸﾘﾝ科学館

パルスレーザーによる被写体の撮影

石井勢津子

アート表現メディアとして

3次元像 ＊リアリティ ＊時間の凍結 視域の制約 光による表現 ＊光の色を紡ぐ ＊水との対話

＊太陽の光を紡ぐ

インスタレーション

建築空間へ 自然環境空間 地下岩盤空間へ

特徴 展開

立体の虚像 リアリティ 虚像と実像

リック・シルバーマン（アメリカ）

ダン・シュバイツアー（アメリカ）

インスタレーション

ﾘﾊﾞｰｻｲﾄﾞ 1985 ﾊﾟﾗｯﾂｵﾛｯｿ､ｼﾞｪﾉﾊﾞ､ｲﾀﾘｱ 石井勢津子

反射型ホログラム

重クロム酸ゼラチンリップマンホログラム

マルチカラーレインボウホログラム

ＣＴスキャン画像からのホログラフィックステレオグラム

東京工業大学 富士写真後期 凸版印刷

制約ある視域

ＣＧとの合成画像によるアニメーションホログラム

Floating2 1998 multicolor transmission hologram 110cm x 130cm

ホログラフィックステレオグラム

石井勢津子

制約ある視域

石井勢津子 す・ら・めーる マルチカラーレインボーホログラム

光の色彩 光による表現

オプチィカルエフェクト

フレッド・ウンタージーア（アメリカ）

重クロム酸ゼラチン反射型ホログラム

光の色彩

反射タイプホログラム 重クロム酸ゼラチン

構造色 モルフォ蝶

Papillon bleu 1985 石井勢津子

窓の向こう側 東京工学院 セミナー室 1992 素材：銀塩反射型ホログラム 160cmｘ160ｃｍ

地下フロアの太陽光演出

石井勢津子

建築空間へ

公共建築空間の演出

彩戯 諫早市健康福祉センター1997 素材：反射ﾀｲﾌﾟﾎﾛｸﾞﾗﾑ、ﾀﾞｲｸﾛｲｯｸﾐﾗｰ

光を紡ぐ

石井勢津子

石井勢津子

光と水の演出

東工大・百年記念館１Fホール、

アクエウスのつぶやき 1995

建築空間へ

キャンパスイノベーションセンター田町 未来の贈り物

空間演出

石井勢津子 倉敷市美術館、虹のおしゃべり 2002 ホログラムグレーティング

虹の演出

池の中のインスタレーション

石井勢津子

メビウスの卵展 パルテノン多摩 1997

自然環境へ 太陽光を紡ぐ 野外空間

石井勢津子

古代ローマ遺跡 Villa dei Quintil ローマ 旧アッピア街道 2007

太陽の贈り物シリーズ

太陽の贈り物シリーズ

水上のインスタレーション

Requiem 釜石鉱山マーブルホール 1992

石井勢津子

白色大理石採掘鉱山 インスタレーション

実験的空間 -大深度地下岩盤空間-

地下岩盤空間の美術館 展覧会インスタレーション ホログラムと水の演出

「ポイントオブビュー」展 レトレッティ・アートセンター（フィンランド） 1994

地下空間

まとめ

アートとしての展開を中心に、ディスプレイホログラフィーの応用と可能性について述べてきた。 既に実用化されている分野のみならず、建築空間、インテリア演出 においても、他のメディアあるいは素材では決して実現できない魅 力的な空間演出を可能にし、高いポテンシャルを持っていることが 理解できる。 建材として広く実用化されるに際しては、耐久性に関して周辺技術 のさらなる研究と開発が待たれるが、そのためには今後より多くの 研究者が、この分野に参入されることが望まれる。