カラマツ人工林 長伐期施業導入の手引き - hokkaido8000 10000 12000 14000 16000 18000...

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カラマツ人工林 長伐期施業導入の手引き 平成23年3月 北海道水産林務部林務局林業木材課

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カラマツ人工林

長伐期施業導入の手引き

平成23年3月

北海道水産林務部林務局林業木材課

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〈表紙の写真〉

左上:浦幌町「石井山林」

右下:農業用トラクターを林業用に改良したドイツ製林業機械:Wario(ワリオ)

(鶴居村森林組合)

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目次

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1 カラマツ人工林を取り巻く状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

(1)北海道のカラマツ資源 3

ア)面積 3

イ)蓄積 6

(2)用途 7

2 カラマツの生育特性と地位指数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

(1)生育特性 8

(2)地位指数 9

3 間伐と肥大成長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

4 間伐と材の性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

(1)材の強度 15

(2)林齢とパルプ量、根株腐朽 19

5 長伐期施業に向けた森林管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

(1)長伐期施業と地位指数 22

(2)施業体系 22

(3)間伐する立木の選木方法 31

(4)長伐期施業を導入する上での留意点 32

ア)過密な状態で生育してきた林分では、長伐期施業の導入を避ける 33

イ)病獣害の危険性が少ない林分を選ぶ 36

ウ)間伐時における損傷木の発生を少なくする 37

エ)適切な生育立地を選ぶ 39

オ)虫害に対する対応 42

6 複層林施業(カラマツーカラマツ) ・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

(1)定性間伐による複層林施業 44

(2)帯状伐採による複層林施業 46

引用・参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

《付録》

付録1 長伐期施業試験林の紹介 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

付録2 カラマツ長伐期施業に関するアンケート結果 ・・・・・・・・・ 55

付録3 「将来の木」施業について ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

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はじめに(手引き作成の目的)

カラマツは、戦後急速に広く全道で植栽され、その用途は、当初の電柱、

足場、坑木といった丸太利用から、小中径木を製材加工した梱包材やパレッ

トなどの輸送用資材、集成材のラミナや合板、さらには、林地未利用材の森

林バイオマスとしてのエネルギー利用など、時代とともに変化し広がってき

ている。

しかしながら、本道におけるカラマツの造林面積は、昭和 28年 4万 1千

ha をピークとして、その後の材価の低迷等により昭和 40 年代後半から急

激に減少し、昭和 57年には 2千 ha台にまで落ち込み、最近では 3千 ha

程度とピーク時の 1割にも満たない状況で推移している。このため、現在、

本道におけるカラマツ人工は、平成 22年現在、林Ⅷ・Ⅸ齢級が極端に多く、

若齢級が少ないといった歪んだ資源構成となっている。

また、近年、輸入材の減少を背景とした道産材需要の高まりにより、カラ

マツの皆伐面積が増加し、地域によっては再造林が追いつかない状況となっ

ている。

こうした中で、森林の公益的機能を維持しながら将来にわたってカラマツ

材を安定的に供給し、資源の循環を進めていくためには、カラマツの伐期を

分散させ、資源の平準化を進めていくことが必要である。

カラマツ資源の循環利用を進めるためには、長期的視点に立って計画的か

つ適切な施業を行うことが必要であり、道では、これまで「カラマツ人工林

施業の手引き」(平成 9年)や「カラマツ人工林長伐期施業の手引き」(平成

19年)などを作成し、その普及を図ってきた。

しかし、これらの手引書は、作成当時高齢級林分のデータが不足していた

ことなどから施業体系が 40~50年までのものしか整理されておらず、森林

1

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所有者に普及していくには長伐期に向けた施業体系の作成が急務の課題と

なっていた。

こうしたことから、道では、平成 21年度・22年度の 2年間にわたり、独

立行政法人林業試験場との共同により、道有林において高齢級間伐のモデル

林を設置して、高齢級林分の調査によるデータの収集・分析を行い、この度、

林業普及指導員が森林所有者に対して、伐期延長のメリットや施業方法をわ

かりやすく普及啓発するためのマニュアルとして「カラマツ人工林長伐期施

業導入の手引き」を作成した。

今後は、本手引書を活用し、森林所有者のカラマツの長伐期に対する理解

を深め、森林の多面的機能が高度に発揮され、カラマツ人工林資源の循環利

用の一層の促進を図ることとする。

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1 カラマツ人工林を取り巻く状況

(1)北海道のカラマツ資源

ア)面積

北海道のカラマツ面積は(表―1)のとおり、全道の人工林の30%を占

め、その7割以上が一般民有林に存在する。

民有林カラマツの齢級別面積を施業経歴の有無別、地域別にしめすと(図

―1)のとおりで、全道的にみると成熟期を迎えているⅨ齢級以上が53%

と過半数を占めており、Ⅶ齢級以下が急に少なくなっている。これを地域別

にみると、十勝、オホーツク、上川は全道と同様の齢級配置になっているが、

道南や石狩のように極端に高齢級に偏っている地方や、釧路、根室のように

ピークが2つある地方、宗谷のようにピークが3つある地方など、地域によ

っても違いがあることがわかる。また、整備不足の林分は枯れ上がりが進み、

樹冠長が短くなることから成長が遅く、長伐期には不向きと考えられるが、

高齢級が多い地方が施業経歴の比率がより低い傾向があることから、資源循

環を考えた長伐期施業を進めるにあたっては、その地域の現状を踏まえて進

める必要がある。

表―1 H21北海道のカラマツ林面積 (ha)

計 国有林 道有林 一般民有

森林面積 5,538,757 3,056,188 608,564 1,874,005

人工林面積 1,502,002 665,870 132,411 703,721

カラマツ 446,258 110,756 177,320 318,183

平成 21年度北海道林業統計より作成

3

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図―1 民有林カラマツ齢級別面積(地域別・施業経歴有無別)

0

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20000

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40000

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60000

70000

1 3 5 7 9 11

00合計 経歴無

00合計 経歴有

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01渡島 経歴無

01渡島 経歴有

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02檜山 経歴無

02檜山 経歴有

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4500

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03後志 経歴無

03後志 経歴有

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04胆振 経歴無

04胆振 経歴有

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3000

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05日高 経歴無

05日高 経歴有

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2500

1 3 5 7 9 11

06石狩 経歴無

06石狩 経歴有

○全道

①渡島総合振興局管内 ②檜山振興局管内

③後志総合振興局管内 ④胆振総合振興局管内

⑤日高振興局管内 ⑥石狩振興局管内

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※カラマツにはグイマツ、スーパーF、グイマツ雑種F1を含む

※12齢級以上は 12齢級に加算

※北海道森林計画課 H21末データによる

0

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3000

4000

5000

6000

1 3 5 7 9 11

07空知 経歴無

07空知 経歴有

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7000

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08上川 経歴無

08上川 経歴有

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09留萌 経歴無

09留萌 経歴有

0

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200

300

400

500

600

700

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10宗谷 経歴無

10宗谷 経歴有

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11オホーツク 経歴無

11オホーツク 経歴有

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12根室 経歴無

12根室 経歴有

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13釧路 経歴無

13釧路 経歴有

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1 3 5 7 9 11

14十勝 経歴無

14十勝 経歴有

⑦空知総合振興局管内) ⑧上川総合振興局管内

⑨留萌振興局管内 ⑩宗谷総合振興局管内

⑪オホーツク総合振興局管内 ⑫根室振興局管内

⑬釧路総合振興局管内 ⑭十勝総合振興局管内

5

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イ)蓄積

北海道のカラマツの蓄積は(表―2)のとおりで、83%が一般民有林に存

在する。また、これまで増加し続けていたカラマツ蓄積は、H18~20 には

需要の急増に伴い減少している。

表―2 H21北海道のカラマツ蓄積 (千m3)

区分 計 国有林 道有林 一般民有

林 森林蓄積 722,860 383,369 85,028 254,462 人工林蓄積 232,030 69,697 24,990 137,343

カラマツ 92,854 13,249 2,873 76,731

平成 21年度北海道林業統計より作成

表―3 年度別北海道のカラマツ蓄積 (千m3)

度 計 国有林 道有林 一般民有林

実数 前年差 実数 前年差 実数 前年差 実数 前年差

H16 93,453 - 13,382 - 2,484 - 77,587 - H17 93,826 +373 13,560 +178 2,558 +74 77,707 +120 H18 93,740 ▲86 13,403 ▲157 2,621 +63 77,716 +9 H19 93,380 ▲360 13,305 ▲98 2,654 +33 77,421 ▲295 H20 92,891 ▲489 13,393 +88 2,793 +139 76,705 ▲716 H21 92,854 ▲37 13,249 ▲56 2,873 +80 76,731 +26

各年度版北海道林業統計より作成

表―4 カラマツ供給量 (千m3)

年度 合計 製材等用 パルプ用 H16 1,736 1,373 363 H17 1,692 1,412 280 H18 1,882 1,498 384 H19 2,063 1,635 428 H20 2,038 1,611 427 H21 1,669 1,310 359

H21北海道木材需給実績

6

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(2)用途

カラマツは、主に製材、パルプ、合板に利用されており、約半数が製材用

である。製材用の内訳を見ると、依然梱包用が大半を占めており、近年ラミ

ナ(集成材原板)が増加しているものの、依然梱包材の占める割合が高い。

表-5 カラマツ需要量 (千m3)

総需要 製材用 パルプ用 合板用 その他用 1,669(100%) 826(49.5%) 359(21.5%) 254(15.2%) 230(13.8%)

H21北海道木材需給実績より作成

表-6 カラマツ製材出荷量 (千m3)

H21 合計 建築材 ラミナ 梱包 パレット その他 390.0 9.1 56.4 267.0 47.8 9.7 100% 2.3% 14.5% 68.5% 12.3% 2.5%

H7 合計 建築材 ダンネージ 梱包 パレット その他 442.6 9.8 21.5 255.7 110.8 44.8 100% 2.2% 4.9% 57.8% 25.0% 10.1%

製材工場動態調査(H21.4月~H22.3月)、「カラマツ人工林長伐期施業の手引

き」より作成

表-7 カラマツ製材の道内・外出荷量 (千m3)

年度 合計 道内 道外 H21 390.0(100%) 118.9(30.5%) 271.1(69.5%) H7 442.6(100%) 100.9(22.8%) 341.7(77.2%)

製材工場動態調査(H21.4月~H22.3月)、「カラマツ人工林長伐期施業の手引

き」より作成

7

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2.カラマツの生育特性と地位指数

(1)生育特性

・北海道におけるカラマツの生育適地としては、年平均気温が5~8℃、海

抜高にすると道南地方では 600m、天北地方では 300m までが範囲で

ある。

・また、カラマツは風の影響を受けやすく、海岸の近くや山地の尾根部の

風衝地では良好な樹高成長が期待できない。常風の平均風速が3m/秒(5

~8月)を超える日数が多い地域では、生育障害が発生しやすい。

・土壌に対する適応性の幅は比較的広く、とくに、孔隙に富み通気性に優

れた団粒構造の発達した土壌(火山灰性の黒色土や適潤性褐色森林土)で

良好な成長が期待できる。

・一方、乾燥土壌や排水不良な土壌(堅密な土層をもつ重粘土壌など)では、

成長が著しく劣る。

Box1各地の気象条件や森林土壌の性質を知るためには?

○各地の気象情報

・各地の気象に関する情報は国土交通省気象庁のホームページから入手可能

であり、気温などの平年値や月平均値などの情報を知ることができる。

(2011年 1月現在)

気象庁のホームページ(http://www.jma.go.jp/jma/menu/obsmenu.html)

○森林土壌情報データベース(北海道・民有林)

【名称:イダフォス北海道(IDaFoS-Hokkaido)】

・北海道立総合研究機構 林業試験場では、北海道の森林(一般民有林・道有

林)における土壌調査の成果(土壌図、土壌断面情報、断面写真、分析値)

を検索・表示するシステムを整備しており、ホームページから土壌図や調

査報告書をダウンロードすることができる。

(2011年 1月現在)

北海道立総合研究機構 林業試験場のホームページ:

(http://www.fri.hro.or.jp/)

8

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(2)地位指数

・カラマツは幼若齢時に旺盛な樹高成長を示すものの、林齢とともに成長

が鈍くなり、やがて頭打ちとなる(図 2-1)。ただし、林齢が同じでも

カラマツの樹高は地域によって大きく異なる(図2-1)。

・一般に、樹木の樹高成長は林分密度の影響をあまり受けず、気象・土壌

条件などの環境条件によって大きく左右される。そのため、樹高は土地

の生産力(地位)を評価するための指標として用いられている。

・カラマツ人工林では、地位指数(基準林齢を40年とした時の上層木の平

均樹高)を土地の生産力の指標とし、地域区分がなされている(図2-2)

【Box2参照】。

・網走東部や十勝地方の内陸部、上川地方などでは地位指数 22 以上のⅠ

等地が広く分布している一方、宗谷地方や根室地方、釧路地方の東部、

胆振地方など、海岸に近い地域では地位指数が 18 未満であり、Ⅲ等地

が多い。

・ただし、地位指数は局地的な立地条件(風当たりの強さや地形、土壌型)

の影響を受けることから、同じ地域の中でもかなりの成長差があり、図

道立林業試験場 (2007) 図2-1 地位指数による林齢と上層高との関係

林齢 (年)

上層高 ( )

m

9

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2-2はあくまでも平均的な値である。

Box 2地位指数と地位指数の求め方(Box6も参照)

○カラマツ人工林の収穫予測や施業体系を検討する上で、対象とする林分の地

位を把握することは不可欠である。そのため、長伐期施業の導入を検討する

にあたり、林分ごとに地位指数を把握する必要がある。

○地位指数:基準林齢を40年としたときの上層木の平均樹高(上層高)

(上層高は1ヘクタールに換算し、樹高の高い上位100個体の平均樹高)

例)0.1haの標準地であれば、樹高の高い上位10個体の平均樹高

○マイクロソフト社の表計算ソフト(エクセル)を使った地位指数の求め方

・必要な情報:調査した林分の林齢(年)と上層高(m)

・エクセルにおける関数式:以下の関数式により対象とする林分の地位指数

を算出できる。 =22.142*上層高/(26.7630*(1-0.9752 * EXP(-0.0468*林齢))^1.1664)

・調査林分の上層高(m)と林齢(年)の値を入力(単位は入力しない)

○また、地位指数はBox6に紹介する「北海道版カラマツ人工林収穫予測ソフト

ver2.0」でも算出できる。

図2-2 カラマツの地位別地域区分

道立林業試験場 (2007)

10

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3.間伐と肥大成長

・長伐期施業では主伐までに長い期間を要するため、林齢と肥大成長や

幹材積成長との関係を把握することは、大径材を生産するうえで重

要である。

・一例として、石狩森林管理署管内(野幌)における 90年生カラマツ

(2本、樹木1、樹木2)の胸高直径(DBH)と幹材積の経年変化を

図3-1a、bに示す。90年生時におけるDBHは、樹木1で29.7cm、

樹木 2で 38.2cmであり、樹木 1では、野ネズミによる樹皮食害と

根本部の芯腐れが認められた。このカラマツ(樹木1、2)が存在す

る林分の 89 年生時の平均 DBH は、37.5cm(植栽木の立木密度と

材積:190本/ha、256m3/ha)であることから、樹木 2はこの林

分の平均的な径級の立木である。

・野ネズミ被害と芯腐れが認められた樹木1では、60年生以降の直径

と幹材積の成長量がわずかに鈍っている。一方、樹木 2では、60年

生以降も直径・幹材積成長量が直線的に増加し続けており、成長の停

滞は認められない。このように、諸被害を回避できれば、高齢のカラ

マツであっても継続した肥大成長と幹材積成長が期待でき、カラマツ

図 3-1 90 年生カラマツ(樹幹解析木)の直径成長(a)と幹材積成長(b)

胸高直径は皮なしの状態のものである。 石橋・鷹尾(2000)を改変

樹齢 (年)

胸高直径

( )cm

樹齢 (年)

幹材積

( )m3

樹木 1

樹木 2

樹木 1

樹木 2

(a) (b)

11

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人工林の長伐期化は成長の観点から十分可能であると考えられる。

・長伐期施業を育成途上の人工林に導入した場合、比較的高齢な林分に

対して間伐を行う機会が増加するものと推察される。そのため、高

齢林分に対する間伐の有効性について理解する必要がある。

・その一例として、69 年生カラマツ人工林(新得町)における間伐林

分、無間伐林分の年輪幅の推移を図 3-2 に示す。間伐林分では、林

齢32年、41年、58年に間伐を実施している。58年生時の間伐前

の立木密度と林分材積は、間伐林分で308本/ha、309m3/ha、無

間伐林分で 733本/ha、459m3/ha であった。

・間伐林分、無間伐林分に共通して、幼齢時(樹齢 5年程度)の年輪幅

が最も大きく、その後、年輪幅は低下している。

・年輪幅の低下の程度は間伐の履歴によって異なり、無間伐林分(細線)

では、林齢とともに徐々に年輪幅が小さくなっているのに対し、間

伐林分の立木(太線)では、間伐が行われて以降、無間伐林分の立木

に比べて、年輪幅が大きい値で推移している。

図 3-2 69 年生カラマツ(樹幹解析木)の年輪幅の年次推移 矢印は間伐時の林齢を示す。測定部位は高さ 2mの位置の円板であり、

この高さの年輪数を樹齢としている。

樹齢 (年)

年輪幅

( )mm

0

2

4

6

8

0 10 20 30 40 50 60 70

間伐林分

無間伐林分

12

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・次に胸高直径成長に対する間伐の効果を間伐が行われた林齢ごとに

見ていく。図 3-3 は、立木の期首(間伐時)の胸高直径(DBH)と

胸高直径成長量との関係を間伐林分、無間伐林分ごとに示したもの

である。図中の線は、期首の DBH と直径成長量との関係を示す回帰

直線であり、太線は間伐林分、細線は無間伐林分を示している。

・すべての林齢に共通して、間伐林分の直径成長量を示す回帰直線(太

線)は無間伐林分の回帰直線(細線)の上側に位置している。このこ

とは、期首の DBH が同じであれば、間伐林分の立木の直径成長は無

間伐林分に比べて大きく、比較的高齢な林分に対しても間伐による

肥大成長の促進(確保)効果が認められたことを示している。

図 3-4 68 年生カラマツ人工林の胸高直径(DBH)階別の本数分布

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 480

20

40

60

80

100

0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 480

10

20

30

40

50

無間伐林分

DBH(cm) DBH(cm)

間伐林分 本

数 ( )

ha ⁄

0

0.2

0.4

0.6

0.8

0 10 20 300

0.2

0.4

0.6

0 10 20 30 400

0.2

0.4

0.6

0.8

0 10 20 30 40 50

直径成長量

( )

cm ⁄ 年

間伐林分 無間伐林分

林齢 林齢 林齢 58-68 年 41-58 年32-41 年

図 3-3 期首の胸高直径(DBH)と胸高直径成長量との関係

58 年生時の DBH(cm)41 年生時の DBH(cm) 32 年生時の DBH(cm)

太線、細線は、それぞれ間伐林分、無間伐林分における期首 DBH と

直径成長量との関係を示す回帰直線である。

13

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・この人工林における 68 年生時の胸高直径階別の本数分布を図 3-4

に示す。間伐林分、無間伐林分では、それぞれDBH36~42cm(平

均38.2cm)、DBH24~28cm(平均 29.4cm)に最頻値が認めら

れた。また、間伐林分では、DBH36cm 以上の大径木が 150 本生

産されたのに対し、無間伐の林分では75本であった。

・このように、伐期の延長における間伐の実施は大径木を生産する上

で有効な方法となる。ただし、育成途上の人工林(例えば、Ⅷ、Ⅸ齢

級の林分)に長伐期施業を導入する場合、林分の密度や施業履歴、生

育立地などを考慮する必要がある【第5章(4)参照】

14

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4.間伐と材の性質

(1) 材の強度

・一本の樹木でも木部の性質(材質)は内側と外側の部位によって大き

く変わる。一般に若齢時に形成された内側の部位(樹心に近い部位)

は“未成熟材“と呼ばれ(図 4-4 参照)、細胞の長さ、年輪構造は

年々変化し、安定していない。一方、加年に伴い細胞が長くなり安定

し、年輪構造が安定している外側の部位は“成熟材”と呼ばれる。

・未成熟材では、細胞が短く、細胞壁が薄く、強度に寄与する二次壁

のミクロフィブリルの傾きも大きい。また、樹木の軸方向に対する細

胞の傾き(繊維傾角)も大きい。そのため、材の物理的性質は、軽い、

ヤング係数が低い(Box3 参照)、ねじれや狂いが大きいなど、利用

上の欠点を多く含んでいる。一方、成熟材ではこれらの欠点が減少

する。

・図 4-1 は 69 年生のカラマツ(新得町)の年輪の密度変動を示した

ものである。樹齢20年までに形成された部位では、密度が増加傾

向にある。それ以降に形成された材では、ばらつきは認められるもの

の、密度が頭打ちとなり、高い値で推移している。

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0 10 20 30 40 50 60 70

径 級

ヤング係数

( )

GPa

間伐林分

無間伐林分

30cm 上 20-28cm 5

7

9

6

12

11

10

8

図 4-2 丸太の径級区分ごとの ヤング係数

安久津ら(2010)をもとに改作

図 4-1 69 年生カラマツにおける 年輪の密度変動

樹齢(年)

随 外側 年輪密度

( )

g ⁄ cm3

15

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・以上のことから、この手引きでは、樹心から20年輪までに形成され

た部位を未成熟材、それ以降に形成された材を成熟材として扱う。

・長伐期施業では、伐期の延長により成熟材の割合が増加するため(図

4-4参照)、大径木の生産だけでなく強度の高い材の生産にも貢献す

る。

・一方、同じ場所に生育する同齢のカラマツ人工林でも、施業履歴に

よって材(丸太)の強度は大きく異なる。図 4-2 は前述のカラマツ

人工林から伐り出された丸太のヤング係数を間伐林分と無間伐林分

との間で比較したものである。

・間伐林分の丸太のヤング係数は無間伐林分に比べて高い。つまり、

丸太の強度は無間伐林分に比べて間伐林分で大きく、間伐によって

強度の高い丸太が生産されたことを示している。

・この理由は、間伐によって木部の成熟材の比率に差が生じたためで

ある。間伐林分の立木では、樹齢30年以降の直径成長量が無間伐林

分に比べて大きく(図 4-3)、その結果、成熟材率の増加の程度が無

間伐林分に比べて大きくなった(図 4-4)。

・樹齢 60年での間伐林分の成熟材率は、無間伐林分に比べて 6%大き

Box3: 材の強度の指標:密度、ヤング係数

材の密度やヤング係数は、材の強度と高い相関があることから、材

の強度を評価するための指標として用いられている。

密 度 :生材容積中の木材実質量の数値で g/cm3 あるいは kg/m3

の単位を用い、密度とし、比重と区別する。

ヤング係数:材料に外から力が加わったときの変形のしにくさを示

す特性値。記号は E(Elasticity)を用い、ヤング率、

弾性係数とも言う。

16

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く(間伐林分71%、無間伐林分 65%)、成熟材率の大きい間伐林分

では、丸太の強度が無間伐林分に比べて増加した(図 4-2)。60年

生時の成熟材の面積についても、間伐林分は無間伐林分の2倍以上と

なり(間伐林分590cm2、無間伐林分270cm2、図 4-4)、強度の

高い木部が間伐林分で顕著に増加していた。

樹齢 (年)

径 ( )

cm

図 4-3 直径の推移

測定部位は高さ 2m の円板であり、この高さの

年輪数を樹齢としている。

0

10

20

30

0 10 20 30 40 50 60 70

間伐林分

無間伐林分

図 4-4 丸太断面における成熟材の面積と成熟材比率の

経年変化

数値は丸太断面における成熟材(樹齢 20 年以降に形成された材)

の面積(cm2)であり、括弧内の数値は成熟材の面積比率(%)を示して

いる。測定部位は高さ 2m の円板であり、この高さの年輪数を樹齢

としている。

樹齢 20 年 30 年 60 年

成熟材

未成熟材 無間伐林分

間伐林分

0cm2(0%) 73cm2(17%) 270cm2(65%)

0cm2(0%) 89cm2(12%) 590cm2(71%)

15cm

17

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・このように、長伐期における間伐の実施は木部の成熟材率と成熟材

の面積の増加に貢献し、強度の高い丸太の生産に対して有効であ

る。

・間伐による直径成長(成熟材率)の増加は丸太の強度だけでなく、丸

太から生産されるラミナ(集成材を構成する挽き板)の強度にも反映

する。図4-5 は、41年生のカラマツ人工林(平取町)の丸太から生

産されたラミナの強度別(ヤング係数階別)の構成割合を、間伐林分

と無間伐林分別に示したものである。間伐林分では、16年、20年、

24年生時に間伐を実施している。

・間伐が行われた林分では、ヤング係数 12GPa(ギガパスカル)以上

のラミナが約 30%を占めているのに対し、無間伐林分では約 10%

であった。このように、間伐の実施はヤング係数の高いラミナを効率

的に生産するための有効な方法である。現状のカラマツ集成材の標準

等級は E95-F270であるが、強度の高いラミナが効率的に生産され

れば、より高い等級の集成材の生産が可能となり、付加価値の向上が

期待できる(Box4参照)。

無間伐林分

間伐林分

0 20 40 60 80 100

~8 8~10 10~12 12~14 14~

図 4-5 41 年生のカラマツ人工林から生産されたラミナの

ヤング係数区間ごとの出現割合 松本(2010)をもとに改作

割合 (%)

ラミナのヤング係数区間(GPa)

18

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(2) 林齢とパルプ量、根株腐朽

・人工林から生産されるすべての丸太が一般材として利用できるわけ

ではない。末口径が小さい丸太や腐れ・曲がりなどの欠点があるも

のは、通常、パルプ材として扱われる(写真4-1)。

表 4-1 カラマツの素材価格

木材市況調査月報(平成 22 年 12 月、

オホーツク、工場着)をもとに作表

丸太径級 金額(円/m3)

30cm 上 10,200

20~28cm 10,100

14~18cm 9,100

9~13cm 6,800

チップ 4,600

Box4: ラミナのヤング係数と集成材

「集成材の日本農林規格」に構造用集成材の強度等級ごとのラミナの構成

が規定されている(図)。E95-F270 は標準等級の集成材であり、E105-F300

はより高い等級の集成材である。L110 や L100 などがラミナの等級である

(数値が大きいほどヤング係数が大きい)。断面内でのラミナの配置はラ

ミナの強度性能によって決まり、強度の低い(ヤング係数の小さい)ラミ

ナは内層に使われるのに対し、強度の高い(ヤング係数の高い)ラミナは

外層に使用される(表)。 L125

L110

L100

L80

L80

L80

L80

L100

L110

L125

L110

L100

L70

L70

L70

L70

L70

L90

L100

L110

E95-F270 E105-F300

図 強度等級ごとのラミナ

の構成の模式図

機械区分に

よる等級

曲げヤング係数(GPa

又は 103N/mm2)

L125 12.5

L110 11.0

L100 10.0

L90 9.0 L80 8.0

L70 7.0

L60 6.0

集成材の日本農林規格より抜粋

表 ラミナの強度性能の基準

19

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・パルプ(チップ)材は一般材に比べて 1m3 あたりの価格が低く(表

4-1)、チップ材は一般材の約半分の価格である。また、一般材でも

末口径によって価格が異なり、末口径の大きな素材ほど高価格で取引

されている。そのため、パルプ材の量と林齢との関係を把握すること

は、長伐期施業を行っていくうえで重要である。

・図 4-6 は十勝地方のカラマツ人工林(668林分)における林齢とパ

ルプの占める総積割合との関係を示したものである。林齢とともに

パルプの割合は急激に低下している。林齢とともに立木の径級は太

くなるため、パルプ材として扱われる末口径の小さな丸太の割合が

低下したものと考えられる。

・一方、根元から進行する材の腐朽は地際からの高さ2m未満に多いた

め、径級の大きな一番丸太に相当する部位が被害を受けやすい。根

株腐朽が認められる立木では、追上げ採材が行われることが多いた

め、腐朽被害は歩留まりに大きく影響する。

・一般に、腐朽菌害は壮齢期から始まり、林齢が高くなるにしたがっ

て急速に増えていくといわれている。しかし、道内の 16 年生から

写真 4-1 土場に積まれたパルプ丸太 0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80

林齢 (年)

パルプ総積の占める割合(

)

%

図 4-6 林齢と出材積に占めるパルプ

総積の割合との関係

20

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71年生(平均35年生)までの203林分を対象に行われた調査では、

根株腐朽の本数被害率と林齢との間にはっきりとした関係はみられ

ない(図4-7)。つまり、伐期の延長が必ずしも根株腐朽被害の増加

を引き起こすわけではない。

・ただし、30 年生程度の林分であっても腐朽木の本数被害率は最低

0%、最大 70%と大きくばらついており(図 4-7)、本道のカラマ

ツ人工林では、比較的若齢であっても根株腐朽の本数被害率が高い

場合がある。

・この要因として、生育立地の環境条件や林内作業により発生した損

傷、野ネズミによる剥皮被害などの影響が挙げられる【第5章 4(イ

~エ)参照】

Box5 カラマツの根株腐朽を引き起こす菌類

カラマツの根株腐朽はカイメンタケ(Phaeolus schweinitzii)やハナビ

ラタケ(Sparassis crispa) などの菌類が樹体内に侵入・定着し、材組織

を分解することによって起こる。また、オニナラタケ(別名ツバナラタ

ケ:Armillaria ostoyae)などナラタケ属菌によって引き起こされるならた

け病によっても、林木が枯死したり、根や地際近くの樹幹が被害を受ける。

林齢(年)

図 4-7 林齢と根株腐朽本数被害率の関係

率(

)%

21

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5.長伐期施業に向けた森林管理

(1)長伐期施業と地位指数

・図 2-2 に示したように、カラマツの地位指数は地域によって大きく

異なる。網走東部や十勝地方の内陸部などの地域では地位が高く、

良好な成長が期待できる。そのため、これらの地域では長伐期施業

の目的として大径材生産が適している。

・一方、風の影響を受けやすい海岸沿いなど、生育環境が厳しく、地

位の低い地域(Ⅲ等地)では、大径材生産を目的とした長伐期施業の

導入に不向きな場所が多い。ただし、地位の低い地域でも、形質が

良好で、疎仕立てで管理されてきた林分では、長伐期施業の取り組み

は可能である。また、図 2-2 に示したⅢ等地の地域でも、地位指数

は林分ごとに大きく異なることから、地位指数が高い林分(Ⅱ等地以

上)では、大径木の生産が期待できる。

(2)施業体系

・長伐期を施業目標とする場合には、植栽時から長伐期を想定した施

業体系をとることが望ましい。現在のカラマツ人工林の植栽密度は、

2000本/ha 程度で行われているものが多い。この植栽密度における

施業体系は、「カラマツ人工林施業の手引き(道立林業試験場 2007)」

に記載されているため、ご覧頂きたい。

・一方、カラマツ資源の齢級構成はⅧ、Ⅸ齢級が極端に多いため、これ

らの林分が長伐期施業の対象として扱われる機会が増加するものと

考えられる。これらのカラマツ人工林では、2500~3000 本/ha

の密度で植栽されたものが多いものの、現在の立木密度は林分によ

22

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って大きく異なり、疎(収量比数 Ry=0.6~0.7)な林分や中庸(Ry

=0.7~0.8)、密(Ry=0.8~)な林分が存在する。

・そのため、長伐期施業の導入を図る上で、これらの林分に対して画

一的な施業体系(間伐時期や強度)を適用することは難しい。例えば、

極めて強度な間伐を行うことは、林分成長量の低下を招いたり、風

倒などの気象害の危険性を増加させたりする。

・したがって、現在の立木密度を考慮し、これまでに行われてきた仕

立て方法から大きく逸脱しない施業体系を基本として、長伐期施業

の導入を検討すべきであろう。

・そこで、長伐期の施業体系の目安として、植栽密度を 2500 本/ha

に設定し、Ⅰ~Ⅲ等地を対象に疎仕立て、中庸仕立ての施業体系(計

6パターン)を作成した(図 5-1~6、Box6 参照)。これまでに調

査されたほとんどの林分は、80 年生以下であり、予測可能な林齢の

範囲が80年生までであることから(Box6 参照)、作成した施業体

系では、主伐林齢を 80年とした。

・施業体系の作成にあたっては、一般的に行われている間伐強度の範

囲(材積間伐率20~30%)とし、林分成長量が低下しない間伐強度

とした(材積間伐率が 40%を超えると林分成長量が低下しやすい)。

・疎仕立てでは、Ryを0.7以下で管理することとし、Ryが約0.7に達

した時点で前述の強度で間伐を行うこととした。中庸仕立ての施業

体系では、Ryを0.8以下で管理することとし、Ryが約0.8に達した

時点で間伐を行うこととした。

・ここでは、Ⅰ等地疎仕立ての施業体系(図5-1)を例にⅩ齢級以上(林

齢51年以上)の間伐時期と収穫予測について説明する。この施業体

23

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系では、64 年生時に一度、間伐を行い、主伐を迎えることになる。

64 年生時の立木密度と林分材積は、それぞれ 370 本/ha、

367m3/haに達し、立木の平均胸高直径は33.5cmと予測される。

そのため、間伐木は利用径級に十分に達している。その後、主伐時

(80年生)までに林分材積は406m3/ha に達し、280本/ha の立

木(平均胸高直径39.0cm)が収穫可能と予測される。

Box6 カラマツ人工林の収穫予測を行うための支援ツール

●「北海道版カラマツ人工林収穫予測ソフト ver2.0」

・本ソフトは道総研林業試験場が構築したソフトであり、北海道のカラ

マツ人工林において、様々な間伐を実施したときの収穫予測が可能で

ある。

・本ソフトと使用手引き(PDF ファイル)は道総研林業試験場のホームペ

ージからダウンロードできる(2011 年 1 月現在)。

北海道立総合研究機構 林業試験場のホームページ:

(http://www.fri.hro.or.jp/)

○基本的な機能

1.対象林分の林齢と上層高を入力すると、地位指数(40 年生時の上層

高の平均値)を計算。

2.標準地の林齢、地位指数、面積、植栽本数、間伐率を入力すると,

林齢 10~80 年までの上層高、平均胸高直径、径級分布、林分材積、

立木密度、収量比数などが予測可能。

3.間伐スケジュールを反映した施業体系図が自動的に作成。

4.末口径別丸太本数、育林コスト、二酸化炭素固定量も予測可能。

○動作環境

・本ソフトは Microsoft 社の表計算ソフト Excel のデータファイルとし

て動作。

・以下の環境で動作確認済 OS:Microsoft Windows XP,Vista, 7

Excel: Microsoft Excel 2003, 2007, 2010

推奨環境:CPU1GHz,メモリ 256MB 以上

24

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図 5-1 Ⅰ等地(地位指数 24)疎仕立施業体系図

林齢 10 14 18 24 32 44 64 80

間伐前

上層高(m)

平均直径(cm)

立木本数(/ha)

材積(m3/ha)

9.8 12.9 15.6 18.7 21.8 24.8 27.1 27.9

9.0 11.7 14.2 17.5 21.5 26.6 33.5 39.0

228 1600 1190 900 660 490 370 280

80 111 136 176 216 272 367 406

間伐

回数

本数

本数率(%)

材積(m3)

1 2 3 4 5 6 7

680 410 290 240 170 120 90

30 26 24 27 26 25 24

24 28 33 46 55 66 86

高(

m/

数(本

ha

25

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図 5-2 Ⅰ等地(地位指数 24)中層仕立て施業体系図

林齢 (年)

高(

m

林齢 12 18 24 34 48 66 80

間伐前

上層高(m)

平均直径(cm)

立木本数(/ha)

材積(m3/ha)

11.4 15.6 18.7 22.4 25.4 27.3 27.9

10.2 13.7 16.6 20.5 24.9 29.6 33.3

2280 1600 1200 920 690 530 410

113 168 206 271 330 390 404

間伐

回数

本数

本数率(%)

材積(m3)

1 2 3 4 5 6 680 400 280 230 160 120 30 25 23 25 23 23 34 42 48 66 74 85

/

数(本

ha

26

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図 5-3 Ⅱ等地(地位指数 21)疎仕立て施業体系図

高(

m

林齢 (年)

林齢 12 16 22 30 44 62 80

間伐前

上層高(m)

平均直径(cm)

立木本数(/ha)

材積(m3/ha)

10.0 12.5 15.5 18.5 21.7 23.6 24.4

9.2 11.5 14.7 18.3 23.6 29.3 34.8

2330 1630 1180 850 620 460 340

87 109 147 187 258 326 369

間伐

回数

本数

本数率(%)

材積(m3)

1 2 3 4 5 6

700 450 330 230 160 120 30 28 28 27 26 26 26 30 40 49 66 83

/

数(本

ha

27

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図 5-4 Ⅱ等地(地位指数 21)中庸仕立施業体系図

高(

m

林齢 (年)

林齢 14 20 28 40 54 80

間伐前

上層高(m)

平均直径(cm)

立木本数(/ha)

材積(m3/ha)

11.3 14.6 17.9 21.0 22.9 24.4

10.3 13.4 16.7 20.5 24.3 30.0

2260 1580 1200 920 700 540

115 155 208 270 312 409

間伐

回数

本数

本数率(%)

材積(m3)

1 2 3 4 5 680 380 280 220 160 30 24 23 24 23 34 36 48 63 71

/

数(本

ha

28

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0

5

10

15

20

25

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

0 10 20 30 40 50 60 70 80

図 5-5 Ⅲ等地(地位指数 18)疎仕立施業体系図

高(

m

林齢 (年)

林齢 12 18 24 32 44 60 80

間伐前

上層高(m)

平均直径(cm)

立木本数(/ha)

材積(m3/ha)

8.6 11.7 14.0 16.4 18.6 20.1 21.0

8.5 11.7 14.4 17.6 21.7 26.5 32.3

2360 1650 1210 900 680 510 390

72 114 143 177 227 282 350

間伐

回数

本数

本数率(%)

材積(m3)

1 2 3 4 5 6

710 440 310 220 170 120

30 27 26 24 25 24

21 30 36 43 56 63

/

数(本

ha

29

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高(

m

図 5-6 Ⅲ等地(地位指数 18)中庸仕立施業体系図

林齢 16 24 34 50 80

間伐前

上層高(m)

平均直径(cm)

立木本数(/ha)

材積(m3/ha)

10.7 14.0 16.8 19.3 21.0

10.6 13.9 17.3 21.6 27.8

2240 1570 1130 830 610

121 170 213 276 385

間伐

回数

本数

本数率(%)

材積(m3)

1 2 3 4

670 440 300 220

30 28 27 27

36 47 55 73

/

数(本

ha

0

5

10

15

20

25

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

0 10 20 30 40 50 60 70 80

30

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(3)間伐する立木の選木方法

・前述したように、カラマツ資源の齢級構成はⅧ、Ⅸ齢級が極端に多

い。これらの齢級に達した林分では、通常、定性間伐がこれまでに

行われてきており、今後も定性間伐が長伐期施業の中心になるであ

ろう。

・長伐期施業では、大径木の育成が大きな目的と一つとなるが、径級が

大きくても、幹の曲がりなど、形質の悪いものを主伐時まで残して

は、材の利用価値は著しく低下する。そのため、形質のよい立木の

成長を確保(促進)させるように、間伐対象とする木、残す木を決め、

間伐を進める必要がある。

・図 5-7 は、定性間伐における選木の判断要素を模式化したものであ

る。定性間伐における選木では、まず、残す木が適正に配置される

ように残す木を決める。残す木とは、将来の主伐木や間伐木として

価値あるとみなされる立木のことであり、径級が大きく、樹冠がよく

発達した立木であり、かつ、曲がりや傷など、形質に欠点がないも

図 5-7 選木の判断要素の一例 藤森 (2010)

残す木(将来の主伐木や間伐木として価値を見込める木) 伐る木(残す木にマイナスを与える木、将来的に期待でき

ない木) その場でどちらを伐るかを判断する木(今回と次回の間伐

でどちらを先に伐るのが有利か)

31

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のである。

・次に間伐する木を決める。間伐する木とは、残しておいても将来的

に利用価値が低いとみなされる幹の曲がったものや二股木、キノコ

の着生したものや傷のあるもの、成長の期待できない立木である。

また、径級が大きく、形質に欠点が認められなくても、残す木の成

長を妨げる立木も間伐する木として選定する。

(4)長伐期施業を導入する上での留意点

長伐期施業では、適切な施業を行うことにより大径材や強度の高い

材を生産しやすく(第3、4章)、付加価値の向上が期待できる。一方、

伐期を延長することにより、気象害や病虫獣害などの被害に遭遇する

機会が増加する。これらの被害は、成長や材質の低下を招くだけでな

く、致命的な被害を与えることもある。そのため、長伐期施業の導入

が可能な林分であるかどうかを適切に判断しなければならない。

立木密度や施業履歴、生育立地、諸被害の受けやすさは、林分によっ

て様々であるため、以下の点を考慮し、長伐期施業の導入が可能な林

分であるかどうかを判断する必要がある:

1 間伐が行われ、密度管理が行われてきた林分か否か?

2 伐期を延長することにより、材の付加価値の向上(大径材生産、形

質)が見込めるか?または、材質の低下が生じないか?

3 諸被害に遭う危険性が著しく増加しないか?である。

これらの点はそれぞれ独立したものではなく、互いに関連したもの

である。表 5-1 に長伐期施業適否判定の目安を示し、(ア)~(オ)

にその要点を整理した。

32

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ア)過密な状態で生育してきた林分では、長伐期施業の導入を避ける

・長伐期施業では大径木を仕立てやすい。ただし、間伐を行い、密度管

理を行うことが前提である。間伐せずに、過密な状態で推移してきた

林分では、伐期を延長しても大径材の生産が難しいだけでなく、気象

害を受けやすい。

・一般に 20年生程度の林分では樹高成長が旺盛であり(図 2-1)、強

度の間伐を実施したとしても回復が早い。したがって、林齢20年程

度までであれば、過密な状態の林分であっても長伐期施業の導入に

対する制約は少ない。

・一方、林齢が高くなるほど樹高成長は衰える。とくに、無間伐や過密

な状態で長期間、生育してきた林分では、枝の枯れ上がりが進み、

樹冠の発達が抑制されている。そのため、間伐を行っても樹冠が拡

大するまでに時間を要し、肥大成長の促進効果もそれほど期待でき

◎:十分に導入が可能

○:導入が可能 △:検討を要する(地位が低い林分では導入を回避した方が良い)

▽:回避した方が良い

×:不適

表 5-1 カラマツ長伐期施業適否判定の目安

項目 20 年生以下 21~40 年生 41~60 年生 61 年生以上

密度(収量比数)

<0.7

0.7~0.8

0.8~0.9

0.9~1.0

×

形状比

・Ⅰ等地(50 年生以上で形状比

90 以上の林分は不適)

・Ⅱ等地(41 年生以上で形状比

90 以上の林分は不適)

諸被害 腐朽被害

野ネズミ害

その他の被害

(損傷被害等)

・諸被害による被害木の本数割

合が 30%以上の林分は不適

・過去に野ネズミによる激害が

ある林分は不適

・諸被害による被害木の本数割合

が 20%以上の林分は不適

・過去に野ネズミによる激害があ

る林分は不適

33

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ない。したがって、比較的高齢な林分に対して長伐期施業を導入する

か否かの判断は、林分の混み合いの程度(収量比数)を目安に検討す

る必要がある(表5-1、林分の収量比数は、「北海道版カラマツ人工

林収穫予測ソフト ver2.0」で把握可能。Box6を参照)。

・図 5-8(a)と(b)は、空知地方の 61~66 年生のカラマツ人工林(14

林分)における収量比数と樹冠投影面積、収量比数と平均胸高直径と

の関係をそれぞれ示している。収量比数が高い林分ほど、立木の樹

冠投影面積および胸高直径が小さい。つまり、収量比数の高い林分

では、立木の樹冠の拡大が抑制され、肥大成長が制限されるため、

大径木を生産することが難しい。

・さらに、過密な林分(収量比数の高い林分)は、収量比数の低い林分

に比べて立木の径級が小さく、形状比(樹高/胸高直径)が高くなり

やすいため、風害・冠雪害などの気象被害を受けやすい。

・図 5-9 はカラマツ人工林の収量比数と冠雪害の被害状況との関係を

示したものである。冠雪害による激害木の本数率は、収量比数が高

い林分で高い。図 5-10 は、22,541 個体のカラマツ(400 ケ所の

収量比数 収量比数

図5-8 60年生以上の林分における収量比数と樹冠投影面積(a)

および平均胸高直径(b)との関係

0

20

40

60

0.6 0.7 0.8 0.9 120

30

40

50

0.6 0.7 0.8 0.9 1

平均樹冠投影面積(

m2

胸高直径(

) cm

(a) (b)

34

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民有林)を対象に、先折れ・曲がりの欠点について解析された結果で

ある。欠点をもつ立木の発生確率は、立木の径級が小さくなるほど

増加する。

・同様に形状比が高い林分では風雪害等による被害を受けやすい。図

5-11は、林分の平均樹高と平均形状比との関係を被害程度別に示し

たものである。形状比が 90以下の林分では、本数被害率が 30%以

下のものが多いのに対し、形状比90を超える林分では、本数被害率

が70%を超えるものが多い。

図 5-10 先折れ・曲がりの発生確率と

胸高直径との関係

渡辺・梅木 (2006)を改作

胸高直径 (cm)

20 40 0 60

80

0

20

60

40

100

先折れ・曲りの発生確率(

%

図 5-9 収量比数と冠雪による檄害

発生率との関係

道立林業試験場 (2007)を改作

激害木の本数率(

収量比数

80

0

20

60

40

0.5 0.7 0.6 0.4 0.8 0.9

%

平均樹高 (m)

平均形状比

写真 5-1 雪氷害により梢端部が 折れたカラマツ 鳥田(2009)

本数被害率が30%以下の林分

〃 が70%以上の林分

鳥田(2009)に加筆

形状比が 90以上の林分では風雪害等による被害の程度が大きい。

図 5-11 被害程度別の平均形状比

35

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・このように、無間伐、過密な状態で長期間生育してきた林分では、

間伐を行ってもこれらの被害回避・軽減に対する効果は小さいこと

が予想される。逆に、間伐により適切に密度管理を行われた林分で

は、大径材生産を効率的に行えるだけでなく、風害・冠雪害などの被

害に対する耐性も高くなる。

・そのため、比較的高齢な林分に対して長伐期施業を導入する際には、

適切に間伐が行われてきた林分を対象とすることが望ましい。

イ)病獣害の危険性が少ない林分を選ぶ

・野ネズミによる剥皮被害はカラマツ人工林における主要な獣害であ

る(写真 5-2)。この被害では、幹を一周してぐるりと樹皮がかじら

れた場合を除き、枯死することは少なく、成長に対する影響も小さ

い。しかし、被害を受けた部位は病原菌の侵入門戸となり、いった

ん病原菌に感染すると治癒することなく進行するため腐朽の原因と

なる。

・カラマツの腐朽はトドマツに比べて広がりにくく、剥皮被害を受け

てから材の腐朽が顕著に認められるまでには、10 年程度かかること

が報告されている。伐期を延長した場合、主伐までに要する期間が

写真 5-2 野ネズミにより剥皮された

カラマツの地際部

36

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長くなるため、傷や剥皮被害をうけた立木では腐朽が進行し、材質

が低下する危険性が高くなる。

・野ネズミによる被害はⅠ、Ⅱ齢級の幼若齢林に多いが、高齢林分で

も毎年、被害が発生している。また、中高齢林では、過去に激しい

被害を受けた林分ほど、繰り返し被害を受けやすいことが近年の被

害傾向から指摘されている。そのため被害が多発する林分では長伐

期施業の導入を避ける必要がある。

ウ)間伐時における損傷木の発生を少なくする

・伐採や材の搬出の際に生じる立木への物理的な損傷も、野ネズミによ

る被害と同様に腐朽をもたらす原因となる。写真 5-3 は 20 年程前

に根際にできた傷から広がったカラマツの腐朽被害である。傷を受

けた部位は巻き込まれているものの、腐朽が進行していることがわ

かる。

・このことから、施業にあたっては幹への損傷に留意するとともに、

傷や剥皮被害の認められる立木は優先的に間伐の対象とすることが

望ましい。

写真 5-3 根際にできた傷から広がった

カラマツの腐朽被害

(51 年生、受傷後 21 年と推定)

37

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・損傷木の発生を減らすためには、伐倒するための広い空間と広い集材

路を設けることが有効である。ただし、定性間伐では、広い空間を確

保することが難しい場合が想定される。このような場合、損傷木の発

生を減らすための方法として、損傷被害が予想される立木(とくに立

て木)に小丸太などを巻き付ける方法があげられる(写真5-4 左)。

この他に、樹脂製の管を割ったものやトタン板を巻き付けている例

もある。

・間伐方法によっても損傷木の発生を減らすことは可能である。植栽列

を基準とした列状間伐(写真 5-4 右)や伐採幅を基準とした帯状間

伐は、損傷被害の回避・軽減に有効な間伐方法である。

・列状間伐では、伐倒方向に残存木が少ない(広い空間がある)ととも

に、列状間伐によって出来た空間を集材路として利用することがで

きる。そのため、損傷木の発生比率は、定性間伐に比べて一般的に低

い。

・また、列状間伐によって出来た空間をその後の機械走行路として活

用し、生産性の高い高性能林業機械による作業を容易にする効果も

写真 5-4 損傷防止のために立木に巻かれた小丸太(左)と

2伐 5 残の列状間伐が行われた人工林(右)

38

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ある。

・なお、列状間伐においても、損傷被害を完全に防ぐことはできないた

め、被害が予想される立木には、小丸太などを巻き付けることが望ま

しい。

エ)適切な生育立地を選ぶ

・生育立地はカラマツの成長に影響する主要な要因であるばかりでな

く、病気の発生とも関係する。尾根筋などの風あたりの強い場所で

は、カラマツの腐朽被害が発生しやすく、カラマツ先枯病にも遭い

やすい。また、排水不良の立地ではならたけ病にかかりやすい。

・表 5-1 は皆伐された 27 年生のカラマツ人工林(網走地方)におけ

る、調査区(斜面位置)別の根株腐朽木の本数率を示したものである。

各調査区の位置は図 5-12のとおりである。

・風のあたりやすい尾根部(調査区 A、B)と風上に面した斜面中下部

の凸部(調査区 D)では、腐朽木の本数比率が 70%以上と高いのに

対し(表 5-1)、尾根により風が遮られている調査区(F、G、H)

図 5-12 調査区の位置 山根ら(1990)をもとに改作

強風方向

A

E

D C

B

F G G

H H

100m

区 斜面位置 調査木 健全木 腐朽木

本数 本数率 本数率

(%) (%)

A 尾 根 89 14 86

B 尾 根 63 25 75

C 斜面中腹 50 44 56

D 斜面中下部凸 32 25 75

E 斜面下部凹 47 85 15

F 斜面中下部凸 23 91 9

G 小尾根下部 48 94 6

H 小尾根上部 50 90 10

表 5-1 調査区別の腐朽木発生状態

山根ら(1990)を改変し、作表

39

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では被害が軽微である。

・このように、風のあたりやすい尾根部ではカラマツの成長が遅いだ

けでなく、腐朽被害に遭いやすい。そのため、大径木や形質の良い材

の生産が期待できない。

・材質劣化をもたらす腐朽菌はいずれも腐朽がかなり進行してから子

実体(きのこ)をつくるため、初期に見つけることが難しい。そのた

め、間伐の後に伐根の観察を行い、腐朽の有無や程度を判断するこ

とが、林分の腐朽被害を早期に見つけるうえで有効である(Box7 参

照)。

40

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Box7 カラマツの根株腐朽被害の程度を間伐時の伐根で判断する方法 林分(林小班)あたり伐根 50 本をランダムに選び、伐根の断面(切り口)

を見て、根株腐朽がある伐根(写真)の本数を数える。

写真 根株腐朽が認められるカラマツの伐根

腐朽被害が著しい伐根(左側)と軽微なもの(右側) ・伐採された直後ほど、腐朽被害の状態を判断しやすい。伐根の表面が

土や落ち葉などで著しく汚れている場合には、ワイヤーブラシなどで

汚れを落としてから腐朽の観察を行う。

・調べる伐根は太さなどで選別せず、様々な太さのものを観察対象とし、

林内のある部分に偏らないように無作為に調べていく。

・立木内における腐朽の範囲は樹齢とともに広がるため、腐朽部位の大

小に関わらず、腐朽の認められた伐根は、腐朽木(被害木)として数え

る(腐朽の程度が小さい立木でも被害木として数える) 調べた結果をもとに腐朽被害の程度を以下の表により判断する。

表 50 本の伐根を調査した時の腐朽被害程度の目安

腐朽木の本数 本数被害率 被害の程度

5 本未満 10%未満 軽微

5~10 本未満 10~20%未満 中庸

10 本以上 20%以上 重度

辺材部にある小さな腐朽 心材部の大きな

腐朽

41

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オ)虫害に対する対応

・カラマツ人工林では葉食性害虫(葉を食べる害虫)が発生しやすい。

主な害虫としてマイマイガ、カラマツハラアカハバチ、カラマツツ

ツミノガ、ミスジツマキリエダシャクなどが挙げられる。

・被害を受けた林は真っ赤になったり、外見的に立ち枯れたような状

態になったりする(写真5-5)。見た目は激しいが、カラマツなど落

葉樹は食害によりすべての葉を失っても枯れることは極めてまれで

ある。被害後、2~3週間で新しい葉が生じ、回復に向かう。

・被害により一時的に成長が低下するが、材質劣化は報告がない。た

だし、被害後はカラマツヤツバキクイムシなど幹に潜る穿孔性害虫

の加害(二次被害)を受けやすい。過去には材積約 38,000㎥の枯損

被害が発生した例がある。

写真 5-6 カラマツヤツバキクイムシによる

枯損被害(左)と内樹皮での繁殖状況(右:白色のものが幼虫・蛹)

写真 5-5 カラマツハラアカハバチ被害(平取町)

原(2005)

42

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・カラマツヤツバキクイムシなど穿孔性害虫は通常、生立木を加害す

ることはなく、伐倒または枯死してから 1 年以内の丸太または立枯

木で繁殖する。生立木への加害は葉食性害虫や風雪害などで生立木

が衰弱した場合に発生する。

・穿孔性害虫による被害を防ぐには、繁殖源となる伐倒丸太、立枯木、

風雪害木をカラマツ林内または近くに長期間放置しないことが重要

である。

・その他、害虫に対する詳細な対応方法は、「カラマツ害虫被害対応マ

ニュアル【道総研林業試験場の HP(http://www.fri.hro.or.jp/)から

ダウンロード可能)】に記載されているため、是非、ご覧頂きたい。

43

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6.複層林施業(カラマツ―カラマツ)

長伐期施業では主伐までの期間が長くなるため、立木の樹高、枝下

高が高くなり、密度も低くなる。そのため、林内に空間的な余裕が生

じる。複層林施業は林内に下木を植え込むことによってこの空間を利

用し、林地を有効に利用しようとするものである。また、複層林施業

では大規模な裸地化をともなわないため、土壌の流亡など、皆伐作業

に比べて公益的機能の低下に対する懸念が少ない。しかし、一度に収

穫できる上木の生産量は皆伐作業に比べて少なく、下木があるため残

存する上木の伐出時にコストが高くなる。複層林施業では、定性間伐

を行ってから下木の植え込みを行う方法と帯状に伐採した所に植え込

みを行うものがある。

下木として複層林造成に用いられる樹種は、主にトドマツやカラマツ

であるが、カラマツを健全に生育させるためにはトドマツに比べて明る

い光環境を必要とする。そのため、カラマツを下木として複層林を造成

する場合、トドマツに比べて上木の管理方法に注意を要する。そこで、

このマニュアルではカラマツ-カラマツの複層林施業に焦点を絞り、説

明を行う。

(1) 定性間伐による複層林施業

・複層林施業では、下木の成長に必要な林内の光の量をいかに管理す

るかが重要なポイントである。カラマツ稚幼樹を健全に生育させる

ためには 60%以上の相対照度が必要とされる。そのため、下木を植

え込む際にはこの値よりも高い相対照度を確保する必要がある。

・樹冠を透して林内に射し込む光の量は、上木の葉量によって大きく

44

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左右される。林分葉量は林分を構成する立木のサイズや本数と関連

することから、立木密度を調節することにより、林内の光の量をあ

る程度、管理できる。

・図 6-1 は立木密度と相対照度との関係を平均胸高直径(DBH)別に

示したものである。密度が高い林分ほど相対照度は低下する。また、

密度が同じであれば、立木の平均 DBH が大きい林分ほど相対照度は

低くなる。

・参考として、立木密度と平均DBHに対応した相対照度を表6-1に示

した。平均DBHが 24cmの林分では、立木密度が 210本/ha のと

き相対照度が 60%となり、この密度よりも高密度になると相対照度

が60%を下回ると予測される。

・林分の平均 DBH によって異なるものの、相対照度が 60%となる立

木密度は、一般的な 40年生程度のカラマツ人工林のものに比べてか

なり低い。そのため、定性間伐によりカラマツ-カラマツの複層林

施業を行うためには、平均 DBH に応じて密度管理を行い、これらの

密度を上回らないようにしていく必要がある。

0

20

40

60

80

100

0 500 1000 1500 2000 2500

DBH=16cm

DBH=20cm

DBH=24cm

密度

(/ha)

平均胸高直径(cm)

20 22 24 26 28 30 32

140 150 160 170 180 190 200 210 220 230 240 250 260

79 76 73 70 68 65 63 77 74 71 68 66 63 60 76 72 69 66 63 61 58 74 70 67 64 61 59 56 72 69 65 62 59 56 54 71 67 64 60 57 54 52 69 65 62 59 55 52 50 67 64 60 57 54 51 48 66 62 58 55 52 49 46 64 60 57 53 50 47 44 63 59 55 52 48 45 42 62 57 54 50 47 44 41 60 56 52 49 45 42 39

表 6-1 立木密度と平均胸高直径に

対応した相対照度の予測値(%)

図 6-1 胸高直径(DBH)別の立木

密度と相対照度との関係

密度(/ha)

相対照度

( )%

45

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・適正な管理をしないまま、安易に複層林化を導入すると、下木の生

育を大きく妨げる。したがって、複層林施業の導入にあたっては、

長期的・計画的な取り組みが必要である。

・定性間伐による複層林施業では、上木の伐採時に下木に損傷を与え

ることが想定されるため、下木の損傷に配慮して上木の伐採を行う

ことが必要である。

・その他、風害などによって上木の林冠が局所的に疎開した箇所で、

カラマツ-カラマツの複層林造成が適している。

(2) 帯状伐採による複層林施業

・帯状伐採による複層林造成は定性間伐による方法に比べて、①作業

効率が高い、②明るい環境を確保しやすい、③下木の損傷被害が少

ない、といったメリットが挙げられる。

・ただし、帯状伐採地における樹高成長は植栽される場所によって異

なる。図 6-2 は幅 15m の帯状伐採地(倶知安町)に植えられた 3

年生時のカラマツの樹高を示したものである。残存した人工林に近

い所(帯状伐採地の両端)に植栽された苗木の樹高は、伐採地の中央

写真 6-1 帯状伐採されたカラマツ人工林

(倶知安町)

46

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部に比べて低くなっている。

・この理由は、帯状伐採地の中央部に比べて、伐採地の両端(残存人工

林に近い場所)では相対照度が低いためである。

・図 6-3 は残存人工林からの距離と相対照度との関係を伐採幅別に示

したものである。残存人工林から離れるにしたがって急激に相対照

度が増加している。また、残存人工林に近い所では、伐採幅が大き

いほど相対照度が高く、明るい条件を確保しやすくなる。カラマツ

-カラマツの帯状複層林を造成する上で、最低でも 20m程度の伐採

幅をもたせることが望ましい。

・複層林の造成では、上木を強度に伐採する場合が多く、その結果、風

倒被害などの気象害を受けやすくなることが予想される。そのため、

複層林施業の導入にあたっては、風の当たりやすさ等を考慮し、慎重

に造成場所を選ぶ必要がある。

残存人工林からの距離 (m)

相対照度

( )

%

図 6-3 残存人工林からの距離と相対照度との関係(参考値)相対照度の測定は晴天日に行われた。

0 2.5 5.0 02.5 5.0

残存人工林からの距離 (m)

平均樹高(

cm

図 6-2 残存人工林からの距離と

下木の平均樹高との関係

0

20

40

60

80

100

0 4 8 12 16 20

伐採幅15m

伐採幅15m

伐採幅30m

伐採幅40m

0

40

80

120

47

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引用・参考文献

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48

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編集関係者

(地独) 北海道立総合研究機構

森林研究本部 企画調整部 企画グループ 主査(研究企画) 山田健四

林業試験場 森林資源部 経営グループ 主幹 八坂通泰

主査(経営) 渡辺一郎

主査(育林) 大野泰之

保護グループ 主査(病虫) 徳田佐和子

道東支場 支場長 原 秀穂

研究主任 滝谷美香

林産試験場 利用部 マテリアルグループ 主幹 安久津久

技術部 生産技術グループ 主査(加工) 松本和茂

北海道水産林務部森林環境局森林活用課

林業普及グループ 主任普及指導員 菅崎 治宏

主任普及指導員 神田 克明

北海道水産林務部林務局林業振興課

林業木材グループ 主査(林業振興) 上野 俊弘

主任 冨成 努

主任 沓掛 徳宗

図、写真提供:鳥田宏行、雲野 明、山畔敏嗣

49

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カラマツ人工林長伐期施業導入の手引き 《付録2》カラマツの伐期延長に関するアンケート結果

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カラマツの伐期延長に関するアンケート結果 道では、カラマツの伐期延長を促進するにあたり、カラマツ林の所有者が伐期

延長に対してどのように考えているのかを把握するため、平成22年度にアンケ

ート調査を行った。 《アンケート調査の概要》 (1)対 象 者:30年生(標準伐期齢)以上のカラマツ林を1ha以上保有し

ている森林所有者(伐期を決めている所有者と決めていない所有

者別に集計) (2)調査方法:道の普及職員による所有者との面談による聞き取り調査 (3)調査人数:伐期を決めている所有者 70名

伐期を決めていない所有者 66名 計136名 (4)調査結果

【被調査者の概要】

対象者居住地域別人数

後志, 10

空知, 10

上川, 10

胆振, 10

日高, 10

十勝, 25

釧路, 15根室, 6

網走東部,

30

網走西部,

10

対象者年代別人数

60代, 33

80代, 20

不明, 130代, 1

50代, 23

40代, 5

70代, 53

対象者職業別人数

無職, 38

無回答, 2

その他, 6

自営業, 21

会社員, 6

農林水産

業, 63

所有森林規模別人数

20~30ha,

25

不明, 4200ha以

上, 8

100~

200ha, 18

0以上5ha

未満, 5

10~20ha,

26

5~10ha,

14

30~50ha,

21

50~

100ha, 15

56

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【アンケート結果】

①伐期を決めている森林所有者(70名) ※各問の割合は所有者70名に対する割合 問1:伐期は何年生ですか。(回答は( )年生程度) 伐期 人数 割合 1 ~40年生 13 19% 2 40年生~ 35 50% 3 50年生~ 17 24% 4 60年生~ 2 3% 5 70年生~ 2 3% 6 未定 1 1% 計 70

問2:1問で50年生以上(森林計画制度上の長伐期施業の下限値以上)と回答

した方におたずねします。設定理由をお答えください(複数回答可) 選択肢 人数 割合 1 優良大径材の生産を目的としているため 29 41% 2 環境保全に貢献したいため 4 6% 3 材価が安く、50年生未満で皆伐しても十分な収益が得られない

ため 22 31%

4 後継者がおらず、皆伐して再造林しても育林ができないため 0 0% 5 カラマツ林は財産として保持しているため 10 14% 6 森づくりセンター、市町村、森林組合等に勧められたため 7 10% 7 その他 7 10% 計 79

所有カラマツ林規模別人数

50~

100ha, 13

30~50ha,

11 5~10ha,

29

10~20ha,

26

0以上5ha

未満, 26

100~

200ha, 2

200ha以

上, 2不明, 5

20~30ha,

22

〔まとめ〕 ・現在、長伐期を目指している所有者は

わずか ・カラマツ面積別のデータではカラマツ

面積が大きいほど長伐期を目指さない

傾向があった。

57

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〔まとめ〕 ・伐期延長の理由は「1.優良大径材の生産を目的」「3.材価が安いため」「5.

財産として保持しているため」が多く、「2.環境保全に貢献したいため」は少なか

った。 ・地域的に見ると、「2.環境保全に貢献」は後志、空知、上川のみで、「5.

財産形成として保持しているため」は網走、十勝、後志のみであった。 ・年代別に見ると、「6.森づくりセンター等の勧誘」と答えたのは60代以上

が多く、高齢者は森づくりセンター等の職員による説明に対して理解を示し

ているものと考えられる。 ・森林所有者別に見ると、30ヘクタール未満の所有者は「2.環境保全に貢

献」と答えた者がなく小規模森林所有者は、環境保全への貢献に対する関心

が低いものと考えられる。 ・後継者の心配を心配している所有者はいなかったが、これは聞き取った所有

者が比較的林業に対する意識の高い者が多かったためと考えられる。 問3:問1で50年生と回答した方におたずねします。設定理由をお答えくださ

い(複数回答可) 理由 人数 割合 1 後継者がおらず、自分の代で収益を得たいため 2 3% 2 材価が安く、長期化するメリットがないため 10 7% 3 長期化すると腐朽する心配があるため 12 17% 4 長伐期化すると風害などの気象災害を受ける危険性が高まるた

め 4 6%

5 カラマツは50年生未満で主伐する木だと思っているため 11 16% 6 森づくりセンター、市町村、森林組合等に勧められたため 1 1% 7 その他 9 13% 計 49

〔まとめ〕 ・「2.材価が安い」「3.腐朽の心配がある」「5.50年生未満で主伐する木

だと思っている」が多かった。 ・腐朽については道東の所有者が多かった。

58

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問4:伐期を延長する可能性はありますか。(複数回答) 選択肢 人数 割合 1 伐期延長の可能性はない 17 24% 2 収入が増えるなら伐期を延長する 36 51% 3 腐朽の心配が少ない林分なら延長する 26 37% 4 気象災害の心配の少ない林分なら延長する 13 19% 5 その他 7 10% 計 99

〔まとめ〕 ・伐期延長の可能性はないと回答した者よりも、収入の増や腐朽の心配が少な

ければ延長すると答えた者のほうが多かった。 ・年代別に見ると「1。伐期延長の可能性はない」を選んだのは70代、80代

に多かった。 問5:(問4で「2」を選んだ方に)重視するのはどちらですか 選択肢 人数 割合 1 主伐時の収入 17 24% 2 間伐収入も含めたトータル収入 15 21% 計 32

〔まとめ〕 ・どちらも同じような人数で、特に傾向は出なかった。 問6:(問4で「2」を選んだ方に)1haあたりどのくらいの収入増を期待しま

すか 選択肢 人数 割合 1 少しでも増えればよい 11 16% 2 10万円程度 7 10% 3 20万円程度 7 10% 4 30万円程度 0 0% 5 40万円程度 1 1% 6 50万円以上 8 11% 計 32

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〔まとめ〕 ・大きな期待をしない傾向にあるが、50万円以上を期待する声も少なからず

ある。 ・50万円以上を期待しているのは60歳代以上であった。 ・カラマツを100ha以上持っている者は10~20万円を期待。 問7:(問4で2~5と回答した方に)伐期延長しても良い年数はどのくらいです

か 選択肢 人数 割合 1 5年以内 6 9% 2 10年以内 22 31% 3 15年以内 4 6% 4 20年以内 9 13% 5 何年でも良い 9 13% 6 その他 3 4% 計 53

〔まとめ〕 ・10年以内が全体の4割を占め、長く考えていない者が多い。 問8:(問4で2~5と回答した方に)伐期延長しても良いのは所有しているカラ

マツ林の何割程度ですか 選択肢 人数 割合 1 1割程度 3 4% 2 3割程度 11 16% 3 5割程度 18 26% 4 8割程度 6 9% 5 全て 12 17% 6 その他 3 4% 計 53

〔まとめ〕 ・5割程度が最も多かったが、あまり傾向は出なかった。

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問9:伐期を短くする可能性はありますか(複数回答可) 選択肢 人数 割合 1 伐期を短くする可能性はない 18 26% 2 材価が高くなれば、設定した伐期の前でも主伐する 39 56% 3 急な出費があった場合は、設定した伐期の前でも主伐する 19 27% 4 その他 5 7% 計 81

〔まとめ〕 ・経済的な状況に大きく左右される傾向にある。 ・短くする可能性がないと回答したのは50代以下にはいなかった。

問10:主伐後の更新方法についてどのようにお考えですか 選択肢 人数 割合 1 皆伐して、カラマツを植栽する 53 76% 2 皆伐して、トドマツなど違う樹種を植栽する 5 7% 3 皆伐して、天然更新を期待する 4 6% 4 皆伐はせず、複層林化する(下木を植栽) 4 6% 5 皆伐はせず、針広混交林化する(天然木の侵入を期待) 4 6% 6 まだ決めていない 3 4% 7 その他 7 10% 計 80

〔まとめ〕 ・8割近くはカラマツの再造林を考えている。 ・決めていないと回答した者は極めて少なく、ほとんどの者が更新を検討して

いる。 ②伐期を決めていない森林所有者(66名) ※各問の割合は所有者66名に対する割合 問1:伐期を決めていない理由をお答えください(複数回答可) 選択肢 人数 割合 1 材価が安く、皆伐しても十分な収益が得られないため 39 59% 2 後継者がおらず、皆伐して再造林しても育林ができないため 4 6% 3 カラマツ林は財産として保持しているため 20 30% 4 いつ伐採すれば良いかわからないため 9 14%

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5 関心がないため 0 0% 6 その他 17 26% 計 89

〔まとめ〕 ・半数以上の所有者が伐採しても収益が得られないと感じている。 ・普及職員との接触がある所有者であるこもあり、関心がないと回答した所有

者はいなかった。 問2:どのような場合に主伐しますか(複数回答可) 選択肢 人数 割合 1 森づくりセンター、市町村、森林組合等に皆伐・再造林を勧めら

れたとき 17 26%

2 急な出費があり、材を売る必要があるとき 9 14% 3 材価が高くなったとき 33 50% 4 今のところ主伐する予定はない 21 32% 5 その他 5 8% 計 85

〔まとめ〕 ・半数は材価が上がれば伐採する意欲がある反面、主伐する意欲が無い所有者

も3割以上いる。 問3:長伐期施業(伐期を50年生以上に設定する施業)を実施する可能性はあ

りますか。(複数回答可) 選択肢 人数 割合 1 長伐期施業を実施する可能性は無い 16 24% 2 通常の施業よりも収入が増えるなら長伐期施業を実施する 39 59% 3 腐朽の心配が少ない林分なら実施する 22 33% 4 気象災害が少ない林分なら実施する 12 19% 5 森づくりセンター、市町村、森林組合に進められれば実

施する 16 24%

6 その他 7 11% 計 112

〔まとめ〕 ・可能性が無い所有者や収入が増加するなら実施するという回答が多いが、腐

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朽や気象害を心配する所有者も少なからずおり、今後の普及活動により、長

伐期が進可能性がある。 問4:(問3で「2」と回答した方へ)重視するのはどちらですか 選択肢 人数 割合 1 主伐時の収入 16 24% 2 間伐収入も含めたトータル収入 16 24% 計 32

〔まとめ〕 ・特にどちらを重視するという傾向は無かった。 問5:(問3で「2」と回答した方へ)1haあたりどのくらいの収入増を期待し

ますか 選択肢 人数 割合 1 少しでも増えればよい 16 24% 2 10万円程度 0 0% 3 20万円程度 6 9% 4 30万円程度 5 8% 5 40万円程度 1 2% 6 50万円以上 10 15% 計 38

〔まとめ〕 ・長伐期に対しては、あまり大きな期待はされていないと思われる。 問6:(問3で「2~6」と回答した方へ)伐期はどのくらいに設定しますか 選択肢 人数 割合 1 50年生程度 15 23% 2 60年生程度 9 14% 3 70年生程度 3 5% 4 80年生以上 0 0% 5 森づくりセンター、市町村、森林組合等の指導に従う 12 18% 6 わからない 7 11% 7 その他 3 5% 計 49

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〔まとめ〕 ・長伐期といっても50~60年が多く、80年以上という回答は無かった。 問7:(問3で「2~6」と回答した方へ)長伐期施業を実施しても良いのは所有

しているカラマツ林の何割程度ですか 選択肢 人数 割合 1 1割程度 4 6% 2 3割程度 6 9% 3 5割程度 11 17% 4 8割程度 5 8% 5 全て 11 17% 6 その他 8 12% 計 45

〔まとめ〕 ・試行的に行うというよりは、やるのであれば長伐期を主体と考える所有者が

多いようである。 問8:主伐後の更新方法についてどのようにお考えですか 選択肢 人数 割合 1 皆伐して、カラマツを植栽する 36 55% 2 皆伐して、トドマツなど違う樹種を植栽する 7 11% 3 皆伐して、天然更新を期待する 1 2% 4 皆伐はせず、複層林化する(下木を植栽) 4 6% 5 皆伐はせず、針広混交林化する(天然木の侵入を期待) 1 2% 6 まだ決めていない 13 20% 7 その他 7 11% 計 69

〔まとめ〕 ・過半数がカラマツの後にカラマツの更新を考えており、今後、カラマツ人工

林の更新についての検討が重要となると思われる。

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カラマツ人工林長伐期施業導入の手引き 《付録3》「将来の木」施業について

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「将来の木」施業 「将来の木」施業とは?

これはドイツで現在行われている施業方法のひとつで、平成 22 年度に実施さ

れた国の「森林・林業再生プラン実践事業」でもドイツ人フォレスターから紹介

されている施業方法である。

「森林・林業再生プラン実践事業」は全国5地域でモデル的に実施された事業

で、ドイツ・オーストリアからフォレスターを招聘し、簡易で丈夫な路網整備と

海外の高性能林業機械を使った効率的な作業システムを実践している。北海道で

も鶴居村森林組合が選出され、林業用に改良したトラクターと高性能ウインチに

よる作業システムを実践した。

「将来の木」施業は、ある時点で主伐木を選択し、選択した木(=将来の木)

を集中的に保育する、という長伐期施業の一つの方法であり、ドイツで19世紀

後半には一部の林学者が唱えていたものであったが、20世紀に入ってから、質

のいい大径材をいかにしてたくさん生産するか、という問いかけが論壇にあがる

ようになり、戦後から現場で実践されるようになった。1990年代初めまで様々

な意見があったが、現在はいくつかの研究データによりほぼ見解が一致し、現在

のドイツ林業では一般的な言葉として使用され、現場で実践されている施業方法

である。

後段に池田憲昭氏が将来の木施業についてまとめた資料「将来の木施業」を掲

載した。池田氏はドイツ在住で日独企業コンサルティングをされており、今回の

「森林・林業再生プラン実践事業」においても、通訳・コーディネーターとして

来日している。

ドイツと北海道では、気候や樹種の違い、天然更新の難易度など、森林につい

ての諸条件が異なることから、これが全てという訳ではないが、考え方としては、

カラマツの長伐期施業を検討する上で参考になるので、興味を持たれた方は、北

海道のカラマツ林で「将来の木」施業を実践している鶴居村森林組合の取組を参

考にされたい。

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将来の木施業

参照:Rieger, H. (2004)

池田池田池田池田憲昭憲昭憲昭憲昭

www.ikeda-info.de

2010 年年年年 7 月月月月

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将来の木施業とは将来の木施業とは将来の木施業とは将来の木施業とは

個体に焦点を当て、質の高い大径木を育てるための施業。

将来、価値が高くなる優良木候補を選定(恒久的にマーキング)し、その木の

回りを定期的に間伐していきながら、集中的に育成する。

何のために将来の木施業を行うか何のために将来の木施業を行うか何のために将来の木施業を行うか何のために将来の木施業を行うか

• 優良木を出来る限り短い期間で育てる

• 丈夫で健康な木を将来木として育てることで、風害、雪害、虫の害など

のリスクを軽減する

• 選定した優良木に焦点を当て、その成長を促進することで、資産価値の

高い森をつくる

• 森の縦(樹高)と横(直径)の構造を豊かにする

• 恒続林をつくるための手段

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優良木を育てる際の森の発展段階優良木を育てる際の森の発展段階優良木を育てる際の森の発展段階優良木を育てる際の森の発展段階

参照:Rieger, H. (2004)

図 1:森の発展段階

1. 成立期

種の発芽から、下層植生との競争を克服するまでの段階

2. 質の形成期

密植した状態で木同士で競争。幹の影になっている部分の枝は自然に枯れ

る。

3. ボリューム増産期

幹の質の形成(自然の枝払い)が、予想される最終樹高の 25~50%に到達

した時から、この段階が始まる。必要であれば、最初に、選別された木の

人工枝落としを行い、その木の回りを定期的に間伐し、樹冠の成長を促し、

太らせる。

4. 成熟期

樹冠が十分に成長した段階。選別された木が目標直径に育つまで待って伐

採する。林床に光が当たると世代交代が行われる。

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将来の木を選ぶ時期将来の木を選ぶ時期将来の木を選ぶ時期将来の木を選ぶ時期

参照:Rieger, H. (2004)

図 2:将来の木の成長

将来の木は、質の形成期からボリューム増産期へ移行する時期に選択する。最

終樹高を 30~35m とすると、枝が払われた幹の長さが 8~12m くらいに達した

段階。

将来の木の選択基準将来の木の選択基準将来の木の選択基準将来の木の選択基準

1. バイタリティ(生命力)

2. クオリティ(質)

3. 分布(間隔)

上記は、選択する際の優先順位。

まず、太く、樹冠が大きくバイタリティ(生命力)のあることが最優先基準。

次に木のクオリティ(質)。これはまっすぐな幹、節が少ない、細い、病気が

ない、など。最後に将来の木と将来の木の間隔。将来の木同士での樹冠スペー

スの競合を避けるため。

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将来の木の本数将来の木の本数将来の木の本数将来の木の本数

将来の木の本数は、目指す径級に必要な樹冠スペースを基準に決めることがで

きる。樹種によって、細い樹冠、太い樹冠など違いがある。基本的に、同じ径

級を想定した場合、針葉樹より広葉樹のほうが樹冠スペースが大きい。

目標直径を 60~80cm とした場合、ドイツで推奨されている 1 ヘクタールあた

りの将来の木の本数は、

• ドイツトウヒ:200~250 本

• モミ:150~200 本

• ダグラスファー:100~150 本

• マツ:150~200 本

• カラマツ:100~150 本

• ブナ:80~100 本

• ミズナラ:60~90 本

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どのように将来の木を育てるかどのように将来の木を育てるかどのように将来の木を育てるかどのように将来の木を育てるか

参照:Rieger, H. (2004)

図 3:将来の木の樹冠スペースを広げる

選定した将来の木は、どの方向からも一目でわかるように恒久的にマーキング

する。森林官、森林所有者は、将来の木をいつでもすぐに見つけられる。作業

員は、間伐作業の際、将来の木に傷をつけないように気をつけることができる。

将来の木の樹冠を広げるために、将来の木の樹冠スペースを妨害する木を、1

回の間伐で、1 将来の木あたり 1~4 本程度、抜き取り伐採する。ドイツ語では、

この間伐の方法を、「Auslesedurchforstung(選別間伐)」という。重要なこと

は、「もっとも大きな妨害木をまず伐る」ということ。将来がない病気の木、

伐採集材作業上障害になる木も、必要に応じて伐採する。

選定の時点で、将来の木の樹冠スペースを直接妨害しない木、細く競争力がな

い木は、そのまま残して置く。将来の木の直接の妨害木が伐られることによっ

て、残して置いた将来の木の競争相手でない木にも光が当たり、成長が促され

る。それらの木は、樹冠が広がり、将来の木の直接の競争相手になった時点で

伐る。よって、将来の木施業では、基本的に「太い」間伐材が収穫される(=

作業効率がいい)。

間伐遅れで弱っている林分、風害や雪害のリスクがある場所では、最初の数回

の間伐は、3~5 年置きに、少量づつ行うことが望ましい。

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根っ根っ根っ根っ子子子子ののののスペーススペーススペーススペース

参照:Rieger, H. (2004)

図 4:根っこのスペースの競争

木は、地上の樹冠のスペースで光を求めた競争すると同時に、地中の根っ子の

スペースで水を求めた競争をする。樹冠スペースが広がるということは、同時

に、根っ子のスペースも広がり、選別間伐後の将来の木は、光と水の供給を存

分に受け、生き生きと成長する。また、根っ子のスペースが広がることで、そ

の木の安定度も増す。

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斜面での将来の木施業斜面での将来の木施業斜面での将来の木施業斜面での将来の木施業

参照:Rieger, H. (2004)

図 5:斜面での樹冠の形状とその修正

斜面においては、同じ樹高であれば、斜面の上に立っている木が、下の木より

も光に対する競争に有利。よって、木の樹冠は、山側に偏った形状になる。

価値の高い木材をつくるためには、山側谷側均等なバランスの良い樹冠に修正

する必要がある。

将来の木を選定し、最初の数回の選別間伐を行う際には、とりわけ将来の木の

上に立っている木を重点的に伐採木として選ぶことで、バランスの良い樹冠を

形成していく。

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集団集団集団集団安定性安定性安定性安定性とととと個体安定個体安定個体安定個体安定性性性性

参照:Rieger, H. (2004)

図 6:集団安定性と個体安定性

「集団安定性」とは、同じ大きさの木々が密植している状態からもたらされる

風への安定性。風が来たとき、くっついている樹冠同士がぶつかり合うことで、

風のエネルギーを分散させ弱める。ある程度の風力まで耐えることができる。

問題となるのが、集団安定性がある森で面的に定量な間伐を行った場合。数年

間、風に対して不安定な状態になる。

「個体安定性」とは、選別された丈夫な個体の安定性。大きい樹冠(樹高の 40

~70%)、樹高・直径比率が 50 以上、などが安定した個体の性質。個体安定

性が高い木は、風に対して他の木々の助けを必要としない。

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将来の木施業を行った森の安定性将来の木施業を行った森の安定性将来の木施業を行った森の安定性将来の木施業を行った森の安定性

参照:Rieger, H. (2004)

図 7:均質な林と将来の木施業林の安定性の比較

定性定量的な間伐を行ったとすると、どの木の樹高も直径も似通った均一的な

森になってしまう。この木々の樹冠が小さければ小さいほど、大風によって林

分が面的になぎ倒しになる確率が大きくなる。

これに対して、将来の木施業によって選別間伐を行った森では、集中的に育成

した丈夫な将来の木の「個体安定性」と、その間にある木々の「集団安定性」

が組み合わされて、全体的な安定性が創出される。

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将来木と将来木の間の空間に手を入れない将来木と将来木の間の空間に手を入れない将来木と将来木の間の空間に手を入れない将来木と将来木の間の空間に手を入れない

参照:Rieger, H. (2004)

図 8:均質な林と将来の木施業林の安定性の比較

定性定量的に、間の空間にも手を入れてしまうと、集団安定性が失われ、林分

は不安定になる。また、将来の木も含む残存木全てが均等に光を受け、それに

よって、将来の木だけでなく、その隣の木の樹冠の成長も同レベルで促進され、

競合が起こる。結果的に、せっかく成長ポテンシャルの高い将来の木が、十分

に促進されない。

将来の木施業を行った場合、間の空間の木々は、成長して将来の木の立ち木ス

ペースに入った木は伐られて行くが、その内部は、基本的に密な状態で、樹冠

も比較的小さく保たれる。これにより、将来の木に集中的に光が配分される。

選択した将来の木の何割くらいが優良木として最後まで残るか選択した将来の木の何割くらいが優良木として最後まで残るか選択した将来の木の何割くらいが優良木として最後まで残るか選択した将来の木の何割くらいが優良木として最後まで残るか

ドイツ BW 州では、30 年ほど前から、盛んに将来の木施業の実践が行われてい

るが、いくつかの試験地のデータによると、9 割以上の将来の木が、風害にも

虫の害にも合わず、健康な将来の木として維持されている。

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将来の木施業による森林利用と森将来の木施業による森林利用と森将来の木施業による森林利用と森将来の木施業による森林利用と森づくりづくりづくりづくり

将来の木施業においては、優等生である将来の木が集中的に成長促進されるの

で、時間が立つごとに、それ以外の木との間での径の差が大きくなる(横の構

造が豊かになる)。ということは、市場への木材の供給の幅が広がる。

最終的に将来の木を収穫する段階においては、将来の木を切ったあとは、今ま

で成長が抑えられていた木に光があたり、それを次の将来木として育てること

ができる。ただし、その樹種が、その時点でどれだけの成長余力を持っている

かが焦点。基本的に耐陰性の強い樹種ほど、高い樹齢での成長余力がある。

また、将来の木が何らかの理由で質が低下し将来性がなくなった場合、または

天災などの被害にあった場合、その代価将来木と成りえるのは、将来の木の近

くで、ある程度光を受けて育っていた木。この将来の木の変更は、時期が早け

れば早いほど行いやすい。

樹冠スペースの広い将来の木を伐ると、林床にたくさん光が当たる。これは、

天然更新を促進し、またはその前に芽吹いて育っていた稚樹の成長を促す。望

む樹種の天然更新が難しい場合は、植林を行う。これにより、森に高さ(縦)

の構造ができていく。

目標直径目標直径目標直径目標直径利用利用利用利用

目標直径を設定し、その目標値に到達した木を択伐的に、または群状に伐採す

る。伐採したあとにできた空間で、更新(天然または人工)を行う。個体に焦

点を当て、構造豊かな森を作っていく将来の木施業においては、基本的に目標

直径利用が行われる。

目標直径は、森づくりのビジョン、目標とする木材、土地の生産性(土壌、気

温、降水量)、樹種の特性(成長速度、成長曲線)によって設定される。設定

する目標直径が大きければ大きいほど、森づくりの時間が長くなり、森の構造

をより豊かにすることができる。

地形の厳しい場所(急斜面)、すなわち作業コストが高くなる場所ほど、目標

直径を大きく設定することが、賢い森林経営の原則。なぜかというと、立米あ

たりの作業コストは、基本的に、木が大きいほど安くなるから。

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ドイツでの過去のドイツでの過去のドイツでの過去のドイツでの過去の失敗例失敗例失敗例失敗例

バイタリティでなく、質を最優先して選んでしまった!

⇒ 選んだ木がバイタリティに欠けていたため、十分に成長しなかった

⇒ 途中で病気になった

⇒ 途中で風害で倒れた

将来の木の数が多すぎた!

最初に多くの将来の木を選び、段階的に減らして行く、という手法を取った!

例えば、ドイツトウヒでヘクタールあたり、最初に 400 本!

⇒ 将来の木同士で競争してまい、十分に成長しなかった

⇒ たくさんの将来の木の成長を促進するために、強度の間伐を行ってしま

い、森が不安定な状態になり、風害に遭った

⇒ 定性定量間伐に近い形になり、均一不安定な森の構造になってしまった

失敗から学んだ教訓

• とにかくバイタリティを最優先して質のいい木を選ぶ

• 森に構造を与えるため、森を安定した状態に保つため、また選んだ将来の

木の成長を十分に促すためにも、選ぶ将来の木の本数は、控え目に設定し、

十分に間隔を開ける。

• 最初に選ぶ段階で将来の木の数を限定する。多めにとって段階的に減らし

ていくことはしない。

なぜ日本の人工林なぜ日本の人工林なぜ日本の人工林なぜ日本の人工林で将来の木施業を勧めるかで将来の木施業を勧めるかで将来の木施業を勧めるかで将来の木施業を勧めるか????

日本の人工林は、戦後の一時期に集中的に植えられた 50 年生前後の林が多い。

単一樹種の単層林がほとんどで、手入れが行われていない間伐遅れの林が多い。

樹種はスギ、ヒノキ、マツ、カラマツ、トドマツなど。

多くの林は、本来ならボリューム増産期に入っているが、太らせるための間伐

が行われていない。密植した状態で、集団安定性で保たれているが、そのまま

放置しておくと、樹高だけ伸び、樹高に対する樹冠の比率は小さくなり、風や

雪に対して非常にもろい状態になってしまう可能性がある。

間伐し、個々の木のボリュームを増産することが森林経営上求められているが、

問題は、どのように間伐するかである。

列状間伐や下層間伐、上層間伐といった面的で定量的な間伐を行なったとする

と、その後数年間、森は面的に、風に対する耐性を弱める。一回の間伐の強度

が強いほど、不安定化の度合いが強くなり、期間が長くなる。そしてこの間伐

の手法では、森の構造は変わらないか、均一的な方向に進む。

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将来の木施業における選別間伐を行ったとすると、生命力と質を備えた個体が

将来木として選定され、その木の個体安定性が高められる。

将来木と将来木の間の空間は、密植させた状態で集団安定性が保たれる。この

空間は、将来の木の成長にともなって、基本的に将来の木に近い方から伐採さ

れ、小さくなる。よってこの空間に当る光の量は間伐の度に増え、その中の個

体の成長も、将来の木ほどではないが促進される。

将来の木の選定においては、バイタリティのある個体が間伐遅れの林に存在す

るのかどうか、という疑問があるが、単一樹林で均質な環境で育った木々でも、

遺伝子の違いや、風害、雪害などの自然間伐などによって、ある程度の個体差

が生じているケースが多くある。このように、自然の合理化により、構造の多

様化が起こっている森では、たとえ通常よりも選定の時期が遅いとしても、将

来の木施業は容易に行える。

最初に列状間伐や定量間伐で立ち木本数を減らし、数年待ってから、将来の木

を選定し、選別間伐をする、という考え方、意見もあるが、これには以下のデ

メリットがある。

• 将来が見込まれる優等木候補を伐ってしまうおそれがある。

• せっかく生命力がある木の成長が、将来の木を選定して間伐をするまでの

期間(5~10 年)十分促進されない。木は基本的に若い時ほど反応が速い

ので、なるべく早い段階で将来の木を促進することが望ましい。

• 個体のボリューム増産、個体安定性の強化が遅れる。森の資産増加も延滞

する。

• 間伐の強度によっては、面的に、風害や雪害のリスクが増加する。

将来の木施業の経験がほとんどない日本のスギやヒノキ、カラマツの人工林で

は、選定する将来の木の間隔を余裕をもって 10m くらいとり、少なめの数に抑

えることを勧める。その理由は、以下の通り。

• 一回の間伐量、間伐率が抑えられ、風害や雪害のリスクが少なくなる。

• 間伐量、間伐率が少ないので、日本全国にたくさんある間伐待機林を、ス

ピーディに広くカバーしていくことが可能。

• 単一樹林に構造を与えることができる。

• 将来の木が目標直径に到達する成熟期の段階においては、択伐、群状択伐、

帯状伐採、傘伐など、様々な手法での更新が可能となり、構造豊かな恒続

林への移行が可能になる。

将来の木施業においては、通常、目標直径利用が行われる。目標直径を決める

際には、樹種特性や土地の生産性を十分に考慮しなければならないが、可能と

思われる樹種と場所においては、出来る限り大きめに設定しておくことが望ま

しい。そうすることで、森に構造の多様性を与える時間が十分に取れる。

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Ebert, H-P. (1999): Die Zielbaum-Durchforstung – ein Weg zur Erziehung starken

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Waldentwicklungstypen, in Stuttgart.

口頭口頭口頭口頭資料資料資料資料

2010 年度森林林業再生プラン実践事業における、独墺 3 名の森林官(Lange 氏、

Kolb 氏、Sonnleitner 氏)の、5 つのモデル地域訪問(2010 年 3 月半ば~4 月半

ば)、並びに独墺視察旅行(2010 年 5 月末~6 月半ば)での提言内容

将来の木研究の第一人者である、BW 州立林業試験研究所の Klädtke 氏への聞き

取り調査

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平成23年(2011年)3月

北海道水産林務部林務局林業木材課(林業振興)

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