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重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群 平成22年3月 厚生労働省

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重篤副作用疾患別対応マニュアル

手足症候群

平成22年3月

厚生労働省

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本マニュアルの作成にあたっては、学術論文、各種ガイドライン、厚生

労働科学研究事業報告書、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の保健福

祉事業報告書等を参考に、厚生労働省の委託により、関係学会においてマ

ニュアル作成委員会を組織し、社団法人日本病院薬剤師会とともに議論を

重ねて作成されたマニュアル案をもとに、重篤副作用総合対策検討会で検

討され取りまとめられたものである。

○「手足症候群」マニュアル作成委員会

浅尾 高行* 群馬大学大学院病態総合外科学准教授

江藤 正俊 熊本大学大学院医学薬学研究部泌尿器病態学分野教授

江見 泰徳 九州大学大学院がん先端医療応用学講座准教授

大野 真司 国立病院機構九州がんセンター乳腺科部長

狩野 葉子 杏林大学医学部皮膚科准教授

木村 剛 日本医科大学泌尿器科准教授

斎田 俊明** 信州大学名誉教授、同医学部特任教授

進 伸幸 慶應義塾大学医学部産婦人科講師

田口 哲也 大阪大学大学院医学系研究科乳腺・内分泌外科学講師

寺内 文敏 東京医科大学産科婦人科学教室准教授

猶本 良夫 岡山大学医歯薬学総合研究科消化器・腫瘍外科准教授

増田 慎三 国立病院機構大阪医療センター外科医師

山崎 直也 国立がんセンター中央病院皮膚科医長 *:委員長

**:副委員長

(敬称略)

○社団法人日本病院薬剤師会

飯久保 尚 東邦大学医療センター大森病院薬剤部部長補佐

井尻 好雄 大阪薬科大学臨床薬剤学研究室准教授

大嶋 繁 城西大学薬学部医薬品情報学教室准教授

小川 雅史 大阪大谷大学薬学部臨床薬学教育研修センター実践医

療薬学講座教授

大濵 修 福山大学薬学部医療薬学総合研究部門教授

笠原 英城 社会福祉法人恩賜財団済生会千葉県済生会習志野病院

副薬剤部長

小池 香代 名古屋市立大学病院薬剤部主幹

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後藤 伸之 名城大学薬学部医薬品情報学研究室教授

鈴木 義彦 国立病院機構東京医療センター薬剤科長

小林 道也 北海道医療大学薬学部実務薬学教育研究講座准教授

高柳 和伸 財団法人倉敷中央病院薬剤部長

濱 敏弘 癌研究会有明病院薬剤部長

林 昌洋 国家公務員共済連合会虎の門病院薬剤部長

(敬称略)

○重篤副作用総合対策検討会

飯島 正文 昭和大学病院院長・皮膚科教授

池田 康夫 早稲田大学理工学術院先進理工学部生命医科学教授

市川 高義 日本製薬工業協会医薬品評価委員会 PMS 部会委員

犬伏 由利子 消費科学連合会副会長

岩田 誠 東京女子医科大学病院医学部長・神経内科主任教授

上田 志朗 千葉大学大学院薬学研究院医薬品情報学教授

笠原 忠 慶應義塾常任理事・薬学部教授

金澤 實 埼玉医科大学呼吸器内科教授

木下 勝之 社団法人日本医師会常任理事

戸田 剛太郎 財団法人船員保険会せんぽ東京高輪病院名誉院長

山地 正克 財団法人日本医薬情報センター理事

林 昌洋 国家公務員共済組合連合会虎の門病院薬剤部長

※ 松本 和則 獨協医科大学特任教授

森田 寛 お茶の水女子大学保健管理センター所長

※座長 (敬称略)

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従来の安全対策は、個々の医薬品に着目し、医薬品毎に発生した副作用を収集・評価し、臨床

現場に添付文書の改訂等により注意喚起する「警報発信型」、「事後対応型」が中心である。しか

しながら、

① 副作用は、原疾患とは異なる臓器で発現することがあり得ること

② 重篤な副作用は一般に発生頻度が低く、臨床現場において医療関係者が遭遇する機会が少

ないものもあること

などから、場合によっては副作用の発見が遅れ、重篤化することがある。

厚生労働省では、従来の安全対策に加え、医薬品の使用により発生する副作用疾患に着目した

対策整備を行うとともに、副作用発生機序解明研究等を推進することにより、「予測・予防型」

の安全対策への転換を図ることを目的として、平成17年度から「重篤副作用総合対策事業」を

スタートしたところである。

本マニュアルは、本事業の第一段階「早期発見・早期対応の整備」として、重篤度等から判断

して必要性の高いと考えられる副作用について、患者および臨床現場の医師、薬剤師等が活用す

る治療法、判別法等を包括的にまとめたものである。

本マニュアルの基本的な項目の記載内容は以下のとおり。ただし、対象とする副作用疾患に応

じて、マニュアルの記載項目は異なることに留意すること。

・ 患者さんや患者の家族の方に知っておいて頂きたい副作用の概要、初期症状、早期発見・

早期対応のポイントをできるだけわかりやすい言葉で記載した。

【早期発見と早期対応のポイント】

・ 医師、薬剤師等の医療関係者による副作用の早期発見・早期対応に資するため、ポイント

になる初期症状や好発時期、医療関係者の対応等について記載した。

【副作用の概要】

・ 副作用の全体像について、症状、検査所見、病理組織所見、発生機序等の項目毎に整理し

記載した。

患者の皆様へ

医療関係者の皆様へ

本マニュアルについて

記載事項の説明

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【副作用の判別基準(判別方法)】

・ 臨床現場で遭遇した症状が副作用かどうかを判別(鑑別)するための基準(方法)を記載

した。

【判別が必要な疾患と判別方法】

・ 当該副作用と類似の症状等を示す他の疾患や副作用の概要や判別(鑑別)方法について記

載した。

【治療法】

・ 副作用が発現した場合の対応として、主な治療方法を記載した。

ただし、本マニュアルの記載内容に限らず、服薬を中止すべきか継続すべきかも含め治療法

の選択については、個別事例において判断されるものである。

【典型的症例】

・ 本マニュアルで紹介する副作用は、発生頻度が低く、臨床現場において経験のある医師、

薬剤師は少ないと考えられることから、典型的な症例について、可能な限り時間経過がわか

るように記載した。

【引用文献・参考資料】

・ 当該副作用に関連する情報をさらに収集する場合の参考として、本マニュアル作成に用い

た引用文献や当該副作用に関する参考文献を列記した。

※ 医薬品の販売名、添付文書の内容等を知りたい時は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構

の医薬品医療機器情報提供ホームページの、「添付文書情報」から検索することが出来ます。

(http://www.info.pmda.go.jp/)

また、薬の副作用により被害を受けた方への救済制度については、独立行政法人医薬品医

療機器総合機構のホームページの「健康被害救済制度」に掲載されています。

(http://www.pmda.go.jp/)

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英語名:Hand-Foot Syndrome

同意語:Palmar-plantar erythrodysesthesia syndrome(手掌・足底発

赤知覚不全症候群)、Acral erythema(肢端紅斑)、Chemotherapy

-induced acral erythema(化学療法薬誘発性肢端紅斑)、Palmar-

plantar erythema(手掌・足底紅斑)、Hand-foot skin reaction

(手足皮膚反応)

A.患者の皆様へ

ここでご紹介している副作用は、必ず起こるというものではありませんが、薬物に

よっては数十%の服用者に起こると言われています。副作用とは気づかずに放置して

いると、病状に深刻な影響を及ぼすことがありますので、早めに対処することが大切

です。そこで、より安全な治療を行う上でも、本マニュアルを参考にして、患者さん

ご自身、またはご家族にこのような副作用があることを知っていただき、以下のよう

な症状に気づかれたら、早急に医師に連絡してください。

「手足て あ し

症候群しょうこうぐん

」は、抗がん剤によって手や足の皮膚の細胞が

障害されることで起こる副作用です。「手足症候群」を起こしや

すい抗がん剤は、主に乳がんや大腸がん、婦人科がん、腎臓じんぞう

がん

に用いられている一部の薬です。抗がん剤の治療を受けていて、

次のような症状に気づかれた時には、放置せずに医師・ 薬剤師

に連絡してください。

「手足症候群」にみられる症状

●手や足の「しびれ」「痛み」などの「感覚の異常」

●手や足の皮膚の

「赤み(発赤、紅斑)」「むくみ」「色素沈着」

「角化(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサする状態)」

「ひびわれ」「水ぶくれ(水ほう)」

● 爪の「変形」「色素沈着」

手足て あ し

症候群しょうこうぐん

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1.手足症候群とは?

がん細胞を殺したり、あるいは増殖をおさえたりするために抗が

ん剤による化学療法が行われます。しかし同時にこの薬が正常な細

胞にも作用するためいろいろな副作用が生じます。

副作用の中で手や足の皮膚や爪に起こるものに手足症候群があ

ります。手足症候群は、抗がん剤による治療中に手や足の皮膚にみ

られる一連の症状に付けられた名称です。普通これらの症状は身体

の左右両側に現れます。なぜ起こるかはさまざまな説が唱えられて

いますがよくわかっていません。また、薬の種類によって症状や現

れる部位が異なることがあります。

「手足症候群」を起こす可能性がある代表的な薬として

次のものが知られています

注射剤:フルオロウラシル

ドキソルビシンリポソーム注射剤

ドセタキセル

経口剤:カペシタビン

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

フルオロウラシル

テガフール・ウラシル

ソラフェニブ

スニチニブ

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2.初期症状

手や足にしびれ、ピリピリするような感覚の異常や、やけどした

時のような痛みが起こります。このような感覚の異常は、手や足に

見たところ変化がなくても起こることがあります。また、手足が全

体的に赤くはれぼったくなったり(図 1)、部分的に赤くはれたり(図

2)、水ぶくれができたりします。 特にかかとや手の指先など力の

かかるところに症状がでやすいことがわかっています。

図1 カペシタビンで治療中の患者さんの手のひら。手のひら

全体が赤くなり、少しはれています。

図2 ソラフェニブで治療中の患者さんの手のひら。 指が部

分的に赤くはれて痛みがあります。

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3.早期発見と早期対応のポイント

抗がん剤の治療が始まったら自分の手や足をよく観察してくだ

さい。手足症候群の初期症状に気づいたら、できるだけその部位に

刺激を与えず、安静を保つようにして、すぐに担当医に相談してく

ださい。手足症候群は症状が軽い初期段階のうちに対処すれば良く

なる副作用です。長時間または繰り返し同じ部位に圧力がかからな

いようにすることも予防に役立ちます。

手足症候群の予防、悪化防止のために、

以下のことに心がけてください

●長時間の歩行や立ち続けることを避けて

足に力がなるべくかからないようにします

●靴は柔らかい材質で足にあったものを履くようにします

●厚めの靴下やジェル状の靴の中敷を使用して足を保護

します

●きつい靴下をはかないようにします

●手足に保湿クリームを塗り、爪の手入れをします

●熱い風呂やシャワーを控えてください

●直射日光にあたらないようにします

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担当医は、重症度(グレード)により治療の継続、薬の減量、

休薬、中止、治療再開の時期などを決定します。手足症候群は、

適切な処置により良くなることがわかっています。また、手足

症候群によって、一時的に薬を休んでもがんの治療効果には差

がないという報告があります。

薬は勝手に中止せず、必ず主治医に相談してください。この

時には「痛みの有無や程度」「日常生活に支障を来しているか

どうか」、「いつ頃から症状があったか」などの情報を担当医に

伝えてください。症状によっては、担当医は皮膚科の医師に紹

介する場合もあります。

※ 医薬品の販売名、添付文書の内容等を知りたい時は、独立行政法人医薬品医療機器

総合機構の医薬品医療機器情報提供ホームページの、「添付文書情報」から検索するこ

とが出来ます。(http://www.info.pmda.go.jp/)

また、薬の副作用により被害を受けた方への救済制度については、独立行政法人

医薬品医療機器総合機構のホームページの「健康被害救済制度」に掲載されていま

す。(http://www.pmda.go.jp/)

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参考

手足症候群の重症度をグレードとして区分し、処置法の基準に

利用します。グレード 1は最も程度が軽いもので、グレード 3は

重いものです。

グレード 症 状

1 日常生活に支障を来していない

しびれ

物に触れた時の不快な感覚

軽い焼けるような、またはチクチク刺すような感覚

ピリピリするような感覚

痛みを伴わない腫は

痛みを伴わない赤み

爪の変形

2 痛みを伴い日常生活に制限を来す

痛みを伴う赤み

痛みを伴う腫れ

皮膚の角化か く か

(皮膚表面が硬く、厚くなってガサガサす

る状態)とひびわれ

爪の強い変形・脱落

3 強い痛みがあり日常生活ができない

水ぶくれ

高度な皮膚の角化か く か

(皮膚表面が硬く、厚くなってガサ

ガサする状態)とひびわれ

手または足の激しい痛み

皮膚の潰瘍かいよう

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B.医療関係者の皆様へ

はじめに:このマニュアルの使い方

「手足症候群」は、フッ化ピリミジン系薬剤の副作用として従来よ

り知られていたが、色素沈着など比較的軽度のものがほとんどであっ

たこともあり、重篤な有害事象となるという認識が少なかった 1)。しか

し、近年新たに承認された、カペシタビンやキナーゼ阻害薬では、手

足症候群の発現頻度が高いばかりでなく、時として日常生活に障害を

来すほどの重篤な臨床像を呈することが明らかになっている 2),3),4)。

手足症候群は休薬などの処置によりすみやかに軽快することがわか

っており、重篤化を防ぐには早期診断と適切な初期対処が重要である。

しかし、キナーゼ阻害薬による手足症候群では従来広く知られていた

フッ化ピリミジン系薬剤による手足症候群とは皮膚症状が異なるた

め、見逃さないよう注意が必要である。

本マニュアルにおいては、薬剤による皮膚所見の違いが理解しやす

いように写真を配置するとともに、休薬・減量基準も薬剤別に記載し

た。

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1.早期発見と早期対応のポイント

(1)早期に認められる症状

手足症候群の好発部位は、手や足で反復した物理的刺激が起こる場所であ

る。早期発見のポイントは、手足の感覚の異常、発赤の有無を頻繁に確認し

初期症状を見過ごさないことである。進行すると、疼痛を伴う浮腫や過角化

による皮膚の肥厚、水疱、亀裂、潰瘍、落屑などが出現し休薬を余儀なくさ

れる 5),6)。疼痛は、「熱傷のような痛み」と表現されることが多く、日常生

活に支障を来すようになる。

1)フッ化ピリミジン系薬剤による手足症候群の早期症状

発症早期には、しびれ、チクチクまたはピリピリするような感覚の異常

が認められる。この時期には視診では手足の皮膚に視覚的な変化を伴わな

い可能性がある。最初にみられる皮膚の変化は比較的びまん性の発赤(紅

斑)である。少し進行すると皮膚表面に光沢が生じ、指紋が消失する傾向

がみられるようになると次第に疼痛を訴えるようになる。

2)キナーゼ阻害薬による手足症候群の初期症状

限局性の紅斑で始まることが多く、通常、疼痛を伴う。フッ化ピリミジ

ン系薬剤による手足症候群と初期皮膚所見が異なる場合があるので注意

を要する(2.副作用の概要と診断法の項参照)。

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(2)副作用の好発時期 1)カペシタビンにおける発現時期 A法 法(3週間投与1週間休薬 1,650mg/㎡/日)における 初発時期を図3に示す。 ほとんどの症例が投与16週までに発現していた。

図3 カペシタビン投与後の初発時期(N=1051)

乳がん 使用成績調査 (中外製薬社内資料)

B法法(2週間投与1週間休薬 2,500mg/㎡/日)における

初発時期を図4に示す。

ほとんどの症例が投与9週までに発現していた。

図4 カペシタビン投与後の初発時期(N=95)

乳がん 大腸がん 国内第Ⅱ相試験 (中外製薬社内資料)

2)ドキソルビシンリポソーム注射剤に

おける発現時期 リポソーム注射剤では投与開始後8週までに

ほとんどが発現していた(図5)。

図5 ドキソルビシンリポソーム注射剤投与後の初発時期(N=74)

卵巣がん 国内第Ⅱ相試験 (ヤンセンファーマ社内資料)

3)キナーゼ阻害薬における発現時期

①ソラフェニブでは、投与開始から3週までに発現すること

が多くほとんどが9週までに発現していた。(図6)

図6 ソラフェニブ 投与後の初発時期(N=131)

腎細胞がん 国内第Ⅱ相試験 (適正使用ガイドより 一部改編)

②スニチニブにおいても、投与12週までに発現する傾向を

示したが、それ以降の発症例もみられた( 図7,、図8)。

図7 スニチニブ投与後の初発時期(N=30)

GIST 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験 (ファイザー社内資料)

図8 スニチニブ投与後の初発時期(N=51)

腎細胞がん 国内第Ⅱ相試験 (ファイザー社内資料)

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(3)患者側のリスク因子

フルオロウラシル系抗がん剤による手足症候群は女性・高齢者に多いこ

とが報告されている。カペシタビンについては、高齢者、貧血、腎機能障

害のある患者にグレード 2 以上の手足症候群が起こることが多いと報告さ

れている 7)。また、一般的に手足の中でも物理的刺激のかかるところに発

現しやすいことが知られている。

(4)原因となる医薬品と頻度

手足症候群の原因薬として報告されている主な医薬品とその出現頻度を

示す(表 1)。この他テガフール・ウラシル、ドキシフルリジン、カルモフ

ールではカペシタビンによる手足症候群と同様の皮膚症状が生じるが、や

や軽症の傾向がある。

表1

薬剤 n 全グレード グレード 3 以上 治療対象疾患

フッ化ピリミジン系

カペシタビン A法 a) 187 51.9% 11.8% 乳がん、胃がん

結腸・直腸がん

カペシタビン B法 b) 95 76.8% 13.7% 乳がん、胃がん

結腸・直腸がん

テガフール・ギメラシル

・オテラシルカリウム 8) 55 21.8% 0% 乳がん

フルオロウラシル c) 頻度など詳細不明

テガフール・ウラシル 頻度など詳細不明

キナーゼ阻害薬

ソラフェニブ 131 55.0% 9.2% 腎細胞がん

スニチニブ 81 65.4% 21.0% 腎細胞がん、GIST

その他

ドキソルビシン

リポソーム注射剤 74 78.4% 16.2% 卵巣がん

ドセタキセル 3093 0.09% 不明

a)3 週間投与 1週間休薬(1,650mg/㎡/日) b)2 週間投与 1週間休薬(2,500mg/㎡/日)

c)フルオロウラシルと併用するベバシズマブ、レボホリナートカルシウム、オキサリプラチン

などの添付文書にも手足症候群の記載がある。

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(5)医療関係者の対応のポイント

1)日常生活の指導

手足症候群は、休薬により軽快することをあらかじめ説明しておく。

また、手や足で圧力がかかる部分に起こりやすいことが知られているの

で、物理的刺激が生じやすい部位を問診などにより確かめ、長時間また

は反復して同じ部位に刺激がかからないように指導する。表 2 に発症や

増悪の予防法としての具体例を挙げる 9)、10)。

表2

①物理的刺激を避ける

締め付けの強い靴下を着用しない

足にあった柔らかい靴を履く

エアロビクス、長時間歩行、ジョギングなどの禁止

包丁の使用、ぞうきん絞りを控える

炊事、水仕事の際にはゴム手袋等を用いて、

洗剤類にじかに触れないようにする

②熱刺激を避ける 熱い風呂やシャワーを控える

③皮膚の保護

保湿剤を塗布する

木綿の厚めの靴下を履く

柔らかい靴の中敷を使用する

④2次感染予防 清潔を心がける

⑤直射日光にあたら

ないようにする

外出時には日傘、帽子、手袋を使用する

露出部分にはサンスクリーン剤を使用する

2)フットケア、スキンケア

抗がん剤による治療前の爪の手入れや角質肥厚部の処置を推奨する意

見もある。

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2.副作用の概要と診断法

(1)自覚症状

手足に起こる、しびれ、皮膚知覚過敏、ヒリヒリ・チクチクといった感

覚異常、無痛性腫脹、無痛性紅斑、色素沈着が初発症状となる。進行する

と疼痛を伴う発赤・腫脹、潰瘍やびらんが生じ、歩行困難や把握困難など

の機能障害を生じる。

(2)皮膚所見

1)概念

抗がん剤によって手と足に好発する病変で、とくに手掌、足底に紅斑、

腫脹、過角化、色素沈着などを生じることを特徴とする。しばしば同部に

知覚異常や疼痛を訴える。また、爪甲の変化を伴うこともある。抗がん剤

による表皮細胞への直接的、間接的障害に外的な機械的刺激が加わって発

症、増悪する病態と考えられる。

2)所見

以下の①~④の皮膚所見が単独あるいは混在して認められる。フッ化ピ

リミジン系の薬剤による手足症候群では、まず①、②が出現し、次いで③、

④を生じてくることが多い。しばしば爪の症状や知覚の異常を伴う。キナ

ーゼ阻害薬による手足症候群は限局性のことが多く、発赤、過角化、知覚

の異常、疼痛に始まり、水疱の形成へと進展する。重症度は症状と皮膚所

見および日常生活制限の程度により判定する(2.(3)グレード判定基

準参照)。

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グレード3

薬 剤 ソラフェニブ

疾 患 腎がん

所 見手指に限局性の紅斑が認められ

る。疼痛を伴い日常生活に支障

を来しておりグレード 3 と判定

した。

グレード1

薬 剤 ソラフェニブ

疾 患 腎細胞がん

所 見足底にびまん性の紅斑が認めら

れる。土踏まず部などの非荷重

部で病勢がやや弱い。疼痛はな

くグレード 1と判定。

① 紅斑・腫脹

手掌〜手指、足底〜足趾にびまん性の紅斑が出現し、多少とも浮腫性に

腫脹する。皮膚表面はやや光沢を帯び、指腹の指紋が消失する傾向があ

る。キナーゼ阻害薬による紅斑は限局性のことが多い。

拡大

図9 図10

図11

図11 写真提供:Dr. Caroline Robert, Head of the Dermatology Unit, Institute Gustave Roussy

グレード1

薬 剤 カペシタビン

疾 患 乳がん

所 見 両手掌にびまん性の紅斑が認め

られる。手指は多少、光沢を帯

び、指紋がやや不明瞭となって

いる。疼痛はないのでグレード 1

と判定した。

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グレード2 ず

薬 剤 カペシタビン

疾 患 大腸がん

所 見びまん性に褐色調の色素沈着が

認められ、軽度の紅斑を伴う。

色素沈着はとくに皺の部分で濃

い。疼痛がありグレード 2と判

定。

グレード2

薬 剤 カペシタビン

疾 患 乳がん

所 見足底に紅斑と過角化が目立ち、

亀裂を伴う。疼痛を訴えるが、

歩行は可能。

グレード2

薬 剤 ソラフェニブ

疾 患 腎細胞がん

所 見足底にびまん性の紅斑が認めら

れ、踵など外的刺激を受けやす

い部位に過角化ないし表皮下水

疱の初期像をうかがわす黄白色

調皮疹がみられる。土踏まず部

で病勢がやや弱い。疼痛があり

グレード 2と判定。

図12

② 色素沈着・色素斑

手掌、足底にびまん性に褐色の色素沈着を生じ、関節背面や爪周囲にも

色素沈着を伴うことが多い。また、指腹~手掌、足底に直径 1cm 程度まで

の淡褐色から灰褐色の色素斑が散在性にみられることもある。

図12

③ 過角化(角質増生)・落屑・亀裂

手掌、足底の角層が肥厚し、表面が硬く触れるようになる。角層が一部

剥離して、落屑を生じることも多い。指尖、踵などの物理的刺激を受けや

すい部位に目立つ傾向がある。指尖、踵などの過角化部や指関節屈曲部な

どの皮膚表面にしばしば亀裂を生じ、疼痛を伴う。

図13

図14

図13 図14

写真提供:Dr. Caroline Robert, Head of the Dermatology Unit, Institute Gustave Roussy

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19

グレード 1

薬 剤 ソラフェニブ

疾 患 腎細胞がん

所 見 指先部に落屑が目立つが、明ら

かな亀裂はみられない。疼痛を

伴わずグレード 1と判定。

グレード3

薬 剤 カペシタビン

疾 患 乳がん

所 見 紅斑と過角化が目立ち、顕著な

落屑を伴う。深い亀裂のために

疼痛が強く、歩行が困難であり、

グレード 3と判定。

図15 図16

グレード2

薬 剤 カペシタビン

疾 患 大腸がん

所 見 紅斑と過角化が目立ち、亀裂を

生じている。暗褐色調の色素沈

着も伴う。疼痛があるが日常生

活に支障はなくグレード2と 判

定。

図17

図17

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20

グレード3

薬 剤 スニチニブ

疾 患 腎細胞がん

所 見足底全体に鱗屑・痂皮を伴うび漫性の紅斑がみられ、土踏まず部などには表皮下水疱(ないし膿疱)を反映する黄白色皮疹が認められる。グレード 3と判定。

グレード3

薬 剤 ソラフェニブ

疾 患 腎細胞がん

所 見足底から足縁部に腫脹を伴う高度な紅斑がみられ、大きな表皮下水疱を形成している。疼痛のため歩行が困難であり、グレード 3と判定。

グレード3

薬 剤 カペシタビン

疾 患 乳がん

所 見足底(土踏まず部以外の部位)に 高度な紅斑がみられ、過角化と 落屑、(水疱が破れて乾固した) 痂皮を伴う。疼痛のため歩行が困難であり、グレード 3 と判定。

④ 水疱・びらん・潰瘍

進行すると表皮下水疱を生じさらに強い疼痛を訴えるようになる。水疱

の膜が破れると、びらん・潰瘍化し、出血や痂皮(かさぶた)を伴う。

図18

図18

図19

図19

写真提供:Dr. Caroline Robert, Head of the Dermatology Unit, Institute Gustave Roussy

図20

図20

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グレード 2

薬 剤 カペシタビン

疾 患 大腸がん

所 見 爪甲に粗造化、混濁、萎縮、変

形がみられ、爪郭部に紅斑を伴

う疼痛がありグレード 2 と判定

した。

グレード 1

薬 剤 ソラフェニブ

疾 患 腎細胞がん

所 見 爪甲下に線状の小出血斑がみら

れる。無痛性のためグレード 1

と判定した。

⑤ 爪甲の変化

爪甲に変形、粗造化、混濁、萎縮や色素沈着を生じることがある。高度に

なると爪甲の脱落も起こる。

図21

図21

⑥ 爪下線状出血斑(subungual splinter hemorrhage)

キナーゼ阻害薬を投与中、爪先に無痛性の爪下線状出血斑が現れることが

ある。手指の爪にみられることが多く、足趾の爪には稀である。

図22

図22 写真:参考資料・文献5)より(http://www.thelancet.com)

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22

(3)グレード判定基準

症状と皮膚所見をみる臨床領域と日常生活制限の程度をみる機能領域

の両者を参考に判定するBlumの分類 12)が理解しやすく一般的に用いられ

ている 11)(表 3)。はっきりした疼痛を伴う場合はグレード 2 以上と判定

するが、チクチク感など表面的な皮膚知覚異常はグレード 1 とする。日常

生活が遂行できない場合はグレード 3 と判定する。本項ではこの分類を使

用した。

表3

グレード 臨床領域 機能領域

1 しびれ、皮膚知覚過敏、ヒリヒリ・チクチク感、 無

痛性腫脹、無痛性紅斑、色素沈着、爪の変形

日常生活に制限を受ける

ことのない症状

2 腫脹を伴う有痛性紅斑、

爪甲の高度な変形・脱落 日常生活に制限を受ける症状

3 湿性痂皮・落屑、水疱、潰瘍、強い痛み 日常生活を遂行できない症状

「手足症候群 Hand-Foot Syndrome Atlas より」

参考 有害事象共通用語規準 v3.0日本語訳JCOG/JSCO版

グレード 手足皮膚反応

1 疼痛を伴わない軽微な皮膚の変化または皮膚炎

2 機能障害のない皮膚の変化または疼痛

3 潰瘍性皮膚炎または疼痛による機能障害を伴う皮膚の変化

4 ― (設定なし)

(4)発症機序

フッ化ピリミジン系薬剤による手足症候群では、皮膚基底細胞の増殖阻

害、エクリン汗腺からの薬剤分泌、フルオロウラシルの分解産物の関与が

想定されているが確定的な発症機序は不明である 7)。

キナーゼ阻害薬では、皮膚基底細胞や皮膚血管などへの直接的作用が考

えられるが、詳細な発症機序はやはり不明である。

(5)医薬品ごとの特徴

フッ化ピリミジン系抗がん剤による手足症候群は比較的びまん性に生

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じるのに対し、キナーゼ阻害薬による皮膚病変は、限局性で角化傾向が強

い特徴がある。

(6)臨床検査値

手足症候群の発生と因果関係のある臨床検査値異常は報告されていな

い。

3.判別が必要な疾患と判別方法

以下に列記するように、本症候群に類似する症状を呈する皮膚疾患が多数

存在するので、注意を要する。したがって、本症候群を生じうる抗がん剤を

使用する際には、その投与開始前に手足の状態を注意深く観察し、以下のよ

うな疾患・病態が存在していないか、確認しておくべきである。疑わしい病

変がみられたら、皮膚科医へ診察を依頼する。

(1)手湿疹(洗剤皮膚炎、進行性指掌角皮症)

炊事などで使用する洗剤類によって角層のバリア機能が障害されて生じ

るもので、主として利き手の指尖や指腹に乾燥、角化、紅斑を生じ、指紋

の消失、亀裂を伴い、徐々に手掌へ拡大する(図 23a)。利き手の母指(図

23b)、示指、中指がとくに侵されやすい。冬に悪化する傾向がある。水仕

事などの外的刺激を避けられないことが多いため、治りにくい。

手足症候群に類似するが、利き手の指腹に症状が強く、足には症状がみ

られない。色素沈着も生じない。ただし、手足症候群と合併し、その増悪

因子となることがあるので、注意を要する。

図23a 図23b

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(2)白癬

足白癬(角質増殖型):足底全体がびまん性に角化し、紅斑、落屑を伴う

(図 24a)。

爪白癬:爪甲が白く混濁、肥厚し、脆弱になる(図 24b)。

足白癬と爪白癬は直接鏡検(病巣部の角質片をスライドグラス上に置

き、20%KOH液を滴下してカバーグラスで被い、顕微鏡で観察する検査法)

にて菌要素(菌糸、分節胞子)を検出することで手足症候群と鑑別でき

る。

図24a 図24b

(3)凍瘡 寒冷刺激を受けやすい手指尖~指

背や足趾などの四肢末端部に紫紅色

斑を生じ、腫脹を伴う(図25)。晩秋

から初冬にかけて女性に発症するこ

とが多い。寒暖差などが誘因となっ

て生じる局所の循環障害による病態

である。発症の季節や寒冷への曝露

歴が鑑別点になる。角化や色素沈着

は伴わない。

図25

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25

(4)掌蹠膿疱症

手掌、足底に2~4mm大の多数の小水

疱と小膿疱が出現して痂皮化する。慢

性に経過し、角化性の紅斑に新旧の小

水疱と小膿疱が混在するようになる

(図26)。時に爪甲の変形、混濁を伴う。

小膿疱や小水疱が出没することと慢性

の経過から鑑別できる。

図2

6

(5)異汗性湿疹

局所多汗症に起因すると考えられる病態で、手掌、足底、指腹に 1~2mm

程度の小水疱が多発して、数週間で落屑することを繰り返し、しばしば紅

斑を伴う。夏季や季節の変わり目に出現しやすい。小水疱が出没を繰り返

すこと、色素沈着や爪甲の変化を伴わないことなどから鑑別する。

(6)乾癬

手掌、足底に厚い鱗屑を付す紅斑角化性の病変を生じ、慢性の経過をと

る。手掌、足底の一部に限局することも、全体に及ぶこともある。しばし

ば爪甲の変化(白濁、肥厚など)を伴う。通常、他の身体部分(とくに頭

部、膝蓋部、肘部など)に銀白色の厚い鱗屑を付す紅斑性病変が多発性に

認められるので鑑別できる。

図 26

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投与法 最高時グレード 発現件数 完全回復までの期間 中央値(range)

A法

3週間投与

1週間休薬

全グレード 125 29.0日(2-546)

グレード 3 17 57.0日(11-295)

B法

2週間投与

1週間休薬

全グレード 53 32.0日(2-189)

グレード 3 4 ―

4.対処法・治療方法

(1)休薬

手足症候群の治療法と予防法は確立していないため、確実な処置は原因薬

剤の休薬である 5)。休薬によりすみやかに改善する。化学療法の継続は手足

症候群の再発を避けるために、休薬後、回復してから薬剤を減量して投与す

る(詳細は(4)休薬・減量・再開の目安参照)。カペシタビンにおいては休

薬や、減量により有効性が損なわれないことが報告されている 13)。カペシタ

ビンにおける完全回復までの期間を表 4 に示す。その他の薬剤については現

在のところ、回復までの期間を検討した客観的データはない。

表4.カペシタビンによる手足症候群の完全回復までの期間

(2)局所療法

対症療法として疼痛や腫脹を抑え、感染の合併を防ぐことが大切である。

手足症候群は、物理的刺激がかかる部分に起こりやすいことが知られている。

刺激を避けるような処置を行い、保湿を目的とした尿素軟膏、ヘパリン類似

物質含有軟膏、ビタミン A 含有軟膏、白色ワセリンなどの外用薬を使用する。

腫脹が強い場合は四肢の挙上と手足の cooling(冷却)が有効である。びら

ん・潰瘍化した場合は、病変部を洗浄し(水道水で可)、白色ワセリンやア

ズレン含有軟膏などで保護する。二次感染を伴った場合には、抗生物質(内

服、外用)の投与も考慮する。

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(3)全身療法

1)塩酸ピリドキシン

早期の臨床試験以来、ピリドキシン(承認適応外)が手足症候群の症

状を軽快させることが報告されてきた 5)。一方、海外における消化器が

んを対象とした二重盲検試験の結果では、ピリドキシン(200mg)連日投

与によりカペシタビンによる手足症候群の重症化の予防および改善に関

しては対照群との間に有意差が確認できなかったと報告され、エビデン

スは確立していない 14)。

2)非ステロイド性抗炎症薬

COX-2 阻害薬のセレコキシブを痛みのコントロールのために使用して

いた症例で、カペシタビンによる手足症候群の頻度が少なかったという

海外での報告がある。しかし、前向きの試験ではなくこの療法を積極的

に勧められるほどのエビデンスは得られていない 15)。

3)副腎皮質ステロイド薬

ドキソルビシンリポソーム注射剤では手足症候群に対する副腎皮質ス

テロイド薬の全身投与の有効性が海外で報告されている 16),17)。

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(4)休薬・減量・再開の目安

1)カペシタビンの場合

手足症候群だけでなく他の副作用が発現した場合も含め、図 27 の規定

を参考にして休薬・減量を行う。発現回数は、有害事象の種類を考慮せ

ずに各グレードの累積回数として算定する。明らかに継続投与が困難な

場合は中止する。一旦減量した後は副作用が軽快しても増量は行わない。

図27 カペシタビンの場合の減量中止規程 *:手足症候群にはグレード4の設定はないが、この減量基準は手足症候群以外の副作用にも用いるため

グレード4の場合の対処方法が設定されている。

1,650mg/㎡/日、3週間投与1週休薬(A法)の減量時の1回投与量

A法については減量の規定が定められていないため、一般的に行われて

いる減量法の目安を以下に記載した。

表5 減量時の投与量の目安

体表面積 1回用量

初回投与量 減量段階1 減量段階2

1.31 ㎡未満 900mg(3錠) 600mg(2錠) -

1.31 ㎡以上 1.64 ㎡未満 1,200mg(4錠) 900mg(3錠) 600mg(2錠)

1.64 ㎡以上 1,500mg(5錠) 1,200mg(4錠) 900mg(3錠)

「手足症候群 Hand-Foot-Syndrome Atlas 一部改編」

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2,500mg/㎡/日、2週間投与1週間休薬(B法)の減量時の1回投与量

表6.減量時の投与量の目安

体表面積 1回用量

初回投与量 減量段階1 減量段階2

1.13㎡未満

1,500mg(5錠)

900mg(3錠) 600mg(2錠)

1.13㎡以上1.21㎡未満

1,200mg(4錠) 1.21㎡以上1.33㎡未満

900mg(3錠) 1.33㎡以上1.45㎡未満

1,800mg(6錠)1.45㎡以上1.57㎡未満

1,500mg(5錠) 1.57㎡以上1.69㎡未満

2,100mg(7錠)1.69㎡以上1.77㎡未満

1,200mg(4錠)1.77㎡以上1.81㎡未満 1,800mg(6錠)

1.81㎡以上 2,400mg(8錠)

2)ドキソルビシンリポソーム注射剤の場合

手足症候群にのみ適応し、他の副作用には用いない。また有害事象

が軽快しても減量前の投与量に戻さないこと。

表7.ドキソルビシンリポソーム注射剤投与量の目安

投与開始時のグレード 投与の開始 用量の変更

1

疼痛を伴わない

軽微な皮膚の変化または皮膚

炎(例:紅斑)

投与を継続する

当該コースにて

グレード 3の

本事象を

経験している

場合は、

用量を

25%減量する

2

機能障害のない

皮膚の変化

(例:角層剥離、水疱、出血、腫脹) ま

たは疼痛

グレード 0~1に軽快するまで

最大 4週間延期する

4週間延期してもグレード 1まで

軽快しない場合は、

本剤の投与を中止する

3

潰瘍性皮膚炎

または疼痛による

機能障害を伴う

皮膚の変化

グレード 0~1に軽快するまで

最大 4週間延期する

(投与開始予定日から 2週間延期した時点で

グレード 2へ軽快しない場合、

本剤の投与を中止する)

4週間延期してもグレード 1まで

軽快しない場合は、本剤の投与を中止する

「海外臨床第 III 相試験(30-49)」より

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3)ソラフェニブの場合の用量・用法変更

表8.ソラフェニブ投与量の目安

グレード 発現回数 ソラフェニブの投与量

1 回数を問わず 投与継続

症状緩和のための局所療法を考慮する

2

1回目

投与継続

症状緩和のための局所療法を考慮する

7日以内に改善がみられない場合は下記参照

7日以内に

改善がみられない場合また

は2回目または3回目

グレード0-1に改善するまで休薬

投与再開時:投与量を一段階減量

(400mg1日1回または400mg隔日1

回)

4回目 投与中止

3 1回目または2回目

グレード0-1に改善するまで休薬

投与再開時:投与量を一段階減量

(400mg1日1回または400mg隔日1

回)

3回目 投与中止

4)スニチニブの場合 手足症候群だけでなく他の非血液毒性が発現した場合も含め、表9の規

定を参考にして休薬・減量を行う。

表9.スニチニブ投与量の目安

グレード スニチニブの投与量

1 用量変更なく継続

2 用量変更なく継続

3

投与中止

グレード1以下またはベースラインに回復後、

主治医の判断で中止前と同一用量または12.5mg減量で再開

4*

投与中止

グレード1以下またはベースラインに回復後、

中止前の12.5mg減量で再開、もしくは主治医の判断で投与中止

*:手足症候群にはグレード4 の設定はないが、この減量基準は手足症候群以外の非血液毒性にも

用いるためグレード4 の場合の投与量の目安が設定されている。

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5.典型的症例

(1)カペシタビンによる手足症候群の例

【症例 1】60 歳代、女性

右乳がん根治術後、再発予防目的で、ドキソルビシン・シクロホスフ

ァミド併用療法(AC 療法)を実施。術後 5 年目に頸部リンパ節転移を認

め、内分泌療法でコントロールしていた。 術後 7 年目に肝転移を認め

カペシタビンによる治療を開始した。

【投与方法】

カペシタビン 1,657mg/㎡(2,400mg/body)、3 週間投与 1 週間休薬。

保湿剤によるハンドケアも指導。開始時からビタミン B6(ピリドキサー

ル)(60mg/日)連日投与を併用した。

【経過】

1 サイクル目内服終了時から手掌の発赤を認めたが疼痛などの症状は

認めなかった(グレード 1)。2 コース目の 10 日目頃から、手掌の発赤

増強と過角化、落屑を認め、激しい疼痛と関節の曲げにくさ、箸が持て

ない、字が書きづらい、水を使えないなど日常生活が障害された(図 28a

グレード 3)。

直ちに休薬し、グレード 1 に改善したのを確認後、1 レベルの減量

(1,800mg/日)で 3 コース目を再開した。3 サイクル目に再度症状の悪

化を認めた(図 28b グレード 2)が、通常サイクルの 1 週間の休薬でグ

レード 1 まで改善。1 レベル減量(1,200mg/日)で再開後、手足症候群

の症状は安定し継続投与可能であった。

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図28a 図28b

図28a 図28b

親指に巻かれているのは治療用のテープ。

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(2)ソラフェニブによる手足症候群の例

【症例 1】50 歳代、女性

右腎細胞がん肺転移に対し、右腎摘除術施行。組織学的に淡明細胞

癌であったため、肺転移巣に対しインターフェロンα療法を行うも病

勢進行。

【投与方法】

ソラフェニブ 400mg1 日 2 回投与。

【経過】

投与開始後 10 日目に、両手手指の限局性の発赤および熱傷のような

強い痛みを訴え来院(図 29a)。日常生活が困難という訴えがあり、グ

レード 3 の手足症候群と判断しソラフェニブを休薬。休薬後 3 日目に

は疼痛は消失。手指の皮膚の過角化と軽度の落屑を認めた。休薬後 10

日目の来院時、手指の落屑は著明だったが、疼痛は認めず、400mg1 日

1 回にてソラフェニブを再開した(図 29b)。再開後 7 日目の来院時、

手指の皮膚病変は回復しつつあり、ソラフェニブの再投与にもかかわ

らず悪化を認めなかった(図 29c)。再投与後 14 日目には、手指の皮

膚の軽度の過角化・落屑をみるのみとなった(図 29d)。

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図29a 図29b 図29c 図29d

図29b

図29a 図29c 図29d

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7.引用文献・参考資料

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palmar-plantar erythrodysesthesias in patients with recurrent gynecologic malignancies. Gynecol Oncol 2004;94:320-324.

参考資料・文献

手足症候群 Hand-foot Syndrome アトラス 田口哲也 監修 2005 中外製薬 手足症候群 Hand-foot Syndrome Atlas 田口哲也 監修 2007 中外製薬 癌治療と皮膚反応 治療中に皮膚に現れる副作用の識別とその対処のためのガイドラ イン Bayer薬品提供資料

1) Hoff PM, Ansari R, Batist G, et al. Comparison of oral capecitabine versus intravenous fluorouracil plus leucovorin as first-line treatment in 605 patients with metastatic colorectal cancer: results of a randomized phase III study. J Clin Oncol. 2001;19:2282-2292.

2) Van Cutsem E, Twelves C, Cassidy J, et al. Oral capecitabine compared with

intravenous fluorouracil plus leucovorin in patients with metastatic colorectal cancer: results of a large phase III study. J Clin Oncol. 2001;19:4097-4106.

3) Jonker DJ, O'Callaghan CJ, Karapetis CS, et al. Cetuximab for the treatment

of colorectal cancer. N Engl J Med. 2007;357:2040-2048.

4) Lai SE, Kuzel T, Lacouture ME. Hand-foot and stump syndrome to sorafenib. J Clin Oncol. 2007;25:341-343.

5) Robert C, Soria JC, Spatz A, et al. Cutaneous side-effects of kinase

inhibitors and blocking antibodies. Lancet Oncol. 2005;6:491-500.

6) Yang CH, Lin WC, Chuang CK, et al. Hand-foot skin reaction in patients treated with sorafenib: a clinicopathological study of cutaneous manifestations due to multitargeted kinase inhibitor therapy. Br J Dermatol. 2008;158:592-596.

7) Chu D, Lacouture ME, Fillos T, et al. Risk of hand-foot skin reaction

with sorafenib: a systematic review and meta-analysis. Acta Oncol. 2008;47:176-186.

8) Rosenbaum SE, Wu S, Newman MA, et al. Dermatological reactions to the

multitargeted tyrosine kinase inhibitor sunitinib. Support Care Cancer 2008;16:557-566.

Page 38: 重篤副作用疾患別対応マニュアル - mhlw赤知覚不全症候群)、Acral erythema(肢端紅斑)、Chemotherapy -induced acral erythema(化学療法薬誘発性肢端紅斑)、Palmar-

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参考1 薬事法第77条の4の2に基づく副作用報告件数(医薬品別)

○注意事項

1)薬事法第77条の4の2の規定に基づき報告があったもののうち、報告の多い推定原因医薬品

を列記したもの。 注)「件数」とは、報告された副作用の延べ数を集計したもの。例えば、1 症例で肝障害及び肺障害が報告された場合には、

肝障害 1 件・肺障害 1 件として集計。

2)薬事法に基づく副作用報告は、医薬品の副作用によるものと疑われる症例を報告するものであ

るが、医薬品との因果関係が認められないものや情報不足等により評価できないものも幅広く報

告されている。

3)報告件数の順位については、各医薬品の販売量が異なること、また使用法、使用頻度、併用医

薬品、原疾患、合併症等が症例により異なるため、単純に比較できないことに留意すること。

4)副作用名は、用語の統一のため、ICH 国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J)ver. 12.0 に収載

されている用語(Preferred Term:基本語)で表示している。

年度 副作用名 医薬品名 件数

平成19年度 手掌足底発赤知覚不全症候群

カペシタビン

テガフール・ウラシル

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

ドセタキセル水和物

フルオロウラシル

オキサリプラチン

トシル酸ソラフェニブ

合計 15

平成20年度 手掌足底発赤知覚不全症候群

トシル酸ソラフェニブ

カペシタビン

リンゴ酸スニチニブ

ドセタキセル水和物

テガフール・ウラシル

テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

ベバシズマブ(遺伝子組換え)

セツキシマブ(遺伝子組換え)

フルオロウラシル

153

23

11

合計 197

※ 医薬品の販売名、添付文書の内容等を知りたい時は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の医薬品医療機器情報提供

ホームページの「添付文書情報」から検索することができます。(http://www.info.pmda.go.jp/)

また、薬の副作用により被害を受けた方への救済制度については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームペ

ージの「健康被害救済制度」に掲載されています。(http://www.pmda.go.jp/)

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参考2 ICH 国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J)ver.12.1 における主な関連用語一覧

日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)において検討され、取りまとめられた「ICH 国際医薬用

語集(MedDRA)」は、医薬品規制等に使用される医学用語(副作用、効能・使用目的、医学的状態

等)についての標準化を図ることを目的としたものであり、平成16年3月25日付薬食安発第

0325001 号・薬食審査発第0325032 号厚生労働省医薬食品局安全対策課長・審査管理課長通知「「ICH

国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J)」の使用について」により、薬事法に基づく副作用等報告に

おいて、その使用を推奨しているところである。

MedDRAでは、LLT(下層語)に「手足症候群」があり、上位のPT(基本語)に「手掌・足底発

赤知覚不全症候群」があるので、下記にこのPTとそれにリンクするLLTを示す。

また、MedDRAでコーディングされたデータを検索するために開発されたMedDRA標準検索式

(SMQ)では、「手足症候群」に相当するSMQは現時点では提供されていない。

名称 英語名

○PT:基本語(Preferred Term)

手掌・足底発赤知覚不全症候群

Palmar-plantar erythrodysaesthesia

syndrome

○LLT:下層語(Lowest Level Term)

化学療法による手足症候群

Hand and foot syndrome secondary to

chemotherapy

手掌・足底紅斑 Palmar-plantar erythema

手足症候群 Hand and foot syndrome

手足皮膚反応 Hand and foot skin reaction