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考える大人になる - 教育のための TOC シンポジウム

「教育のための TOC 」を活用しての「価値と工夫」

京都大学経営管理大学院教授若林 靖永

[email protected]

2013 年 2 月 10 日

Yasunaga Wakabayashi, 2013 1

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• 51 歳 愛知県出身 妻と息子 (4) • 愛知県立千種高校、京都大学

経済学部、同大学院を修了して博士(経済学)

• 京都大学大学院経済学研究科教授、京都大学経営管理大学院( MBA )教授でマーケティング・流通・商業を教える

• 京都大学経営管理大学院 前副院長、京都大学 FD 交流委員会委員、京都大学同窓会幹事

• 商業学会理事・編集委員、流通学会理事、商品開発・管理学会副会長、 CIEC (コンピュータ利用教育学会)副会長

• 好奇心 プロモーター おっちょこちょい

自己紹介

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ここからすべてがはじまった

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なぜクリティカル・シンキングなのか• クリティカル・シンキングとは

– 批判的思考は、論理的・合理的思考であり、規準( criteria )に従う思考である

– 批判的思考とは、自分の推論プロセスを意識的に吟味する内省的( reflective )・熟慮的思考である

– 望ましい結果を得る確立を高めるように、認知的スキルを活用した思考活動(楠見・子安・道田編『批判的思考力を育む』有斐閣、2011 )

• ジェネリックスキルとしてのクリティカル・シンキング– OECD の AHELO (高等教育版 PISA )– 中央教育審議会の「学士力」– 経済産業省の「社会人基礎力」

(楠見・子安・道田編『批判的思考力を育む』有斐閣、 2011 )

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実践事例編

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実践事例1)京都大学ポケットゼミ

(初年次演習)

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京都大学ポケットゼミ(1)• ポケットゼミとは

– 京都大学全学部新入生を対象に開講されている少人数授業科目– 文理さまざまで京都大学教員により挑戦的な授業実践

• ポケットゼミ(クリティカル・シンキング演習)– 文系理系双方を含む新入生 11 名– TOC for Education 代表 Kathy Suerken 制作のテキストを翻訳– 参加型のコーチング・サイクルの授業

1. 規範を示して教える2. ガイド付きの練習3. グループ練習4. 個人練習5. ふりかえり6. フィードバック7. 評価

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京都大学ポケットゼミ(2)• 参加型授業

– TOC 思考ツールは図解を通じて自分の思考を展開・点検する– 同時に、思考の外部化を通じて他者との協働作業、円滑で協力

的なコミュニケーションを実現する

• 最終課題– ブランチ、クラウド、アンビシャス・ターゲット・ツリーを用

いてつぎの問題についてグループで検討しなさい

1. いじめ問題(例示)2. 中山間地沿岸部の震災復興問題3.原発問題

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実践事例2)京都大学経営管理大学院

クリティカルシンキング演習

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京都大学経営管理大学院(1)• 京都大学経営管理大学院とは

– 社会人、新卒学生、留学生を対象とした、マネジメントに係わる専門職人材を育成するマネジメントスクール

• 専門科目「クリティカルシンキング演習」– なぜクリティカルシンキング演習が必要か。すでに経営コンサ

ルティングのための思考ツールについての授業科目などは開設されているが、なかなか習得活用できない学生が少なくないという現状があった。そこで、よりベーシックな思考トレーニングが必要であるという問題意識もあり、「教育のための TOC 」を学ぶ授業を新設することにした。

– 経営管理大学院学生 25 名– TOC for Education 代表 Kathy Suerken 制作のテキスト– 15回 90 分の授業

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京都大学経営管理大学院(2)• 参加型授業

– 学生を指名して解答を促す。グループワークを行う。– 個人のワークの発表と共有をフェースブックのグループで。

• 最終課題– ブランチ、クラウド、アンビシャス・ターゲット・ツリーを用

いてつぎの問題についてグループで検討しなさい

1. 中学校のいじめ問題を考える2. 高齢者がインターネットで買い物をするために3. 京都大学経営管理大学院の価値を高める(例示)4. いま企業は人件費を増やすべきか5. あい6. 日本の電力を確保するために

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京都大学経営管理大学院ふりかえり(1)

【ブランチ】•図解にすることで見直す、みんなで話し合うというのに有用である。•ロジックツリーやMECE なども基礎はこれだ。•「かつ」という因果関係の十分性を明確にするのは難しいが、とても大事である。•どこまで掘り下げるべきか、の判断が難しい。•因果関係で考えるというのはとても大事で、くせをつけるようにしたい。•頭の中が整理されるので、レポートを書くときにはまずブランチをつくるようにしている。•印象的で、日常のことがらでも掘り下げると発見があった。•因果関係を明確にするというのは、理解をクリアにするという点で決定的。•4つの懸念のチェックポイントも具体的で有用性が高く、身につけたい。•【アンビシャス・ターゲット・ツリー】•・目標が「がんばる」などと抽象的で具体性がないようなことから、具体的なものにすることができるのが良い。

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京都大学経営管理大学院ふりかえり(2)

【クラウド】•より上位、根本に戻るというのはなるほどだと思う。手段ではなく目的にたちかえって考えるのはとても大事。•対立を「見える化」するという意味で、クラウドは気づきが多い。•今まで議論がうまくいかない会議とかで活用すると、会議も変わる。•妥協ではない WIN-WIN の解決を追求するというのが画期的。今まで対立解消が妥協だと思っていた。•とても使えるツールで、一見対立していてもめざすところは同じというのは大事な気づき。交渉ごとなどに係わる際に事前準備としてやると有効だと思う。•印象的で、対立を構造としてとらえるというのがよい。•もめたときに決断できる。多数のステークホルダーを満足させることが出来る。

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京都大学経営管理大学院ふりかえり(3)

【全体】•入学時に標準でみんな学ぶと良いと思う。•感覚的にやっていたことを、視覚化するのはよい。そのことで意識するようになるし、コミュニケーション共有に役立つ。•3つあってそれらをつなげて取り組むというのがよい。•社会人で「できる」と思う人はやはりこういう論理的な思考やコミュニケーションができている。•ホワイトボードを使ってやると、いろんな利害や問題関心を持つ人もいっしょに考えられてよい。•考え方が整理できてつぎのステップが見えた。単純化する。一文一意など、学びが多かった。•従業員が苦情等を言うと自分が傷ついてしまうのだが、こういう仕方で考えればあまり感情的にならないように状況を認識できるので、より楽になる。

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京都大学経営管理大学院ふりかえり(4)

【全体】•マインドマップも学んだが、こちらの方がより明確な手順があり、みんなでできるようになると良い。家で一人でやるだけで変わる。みんなでできたらもっと変わる。•よく悩むのだけれども、書き出していくことで前にすすめられるようになる。客観的にとらえることで、自分が変わる。当然だと思っていたことも、他の可能性もあるということを理解した。→これも重要で、客観性、論理的に考えることが自らのネガティブな感情等を克服し前向きな気持ちを生み出すという結果にもつながります。 •TOC 思考プロセスは、一般的なものであって、自分で自発的にやっていると思える思考。•汎用性がとても高い。•就職活動の自己分析等にも役立つ。

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京都大学経営管理大学院ふりかえり(5)

【疑問や改善点】•3つのツールの組み合わせをどう考えたらよいか?クラウドは2つの対立だが、3つ以上の対立の場合どうしたらよいか?•授業でのトレーニング、実戦の量をもっと増やした方が良い。•もっと練習したい。→今後、大学、 MBA 用の教材を開発し、練習量を確保できるようにしたいと思います。•発表者へのコメントについては、学生同士も活発に行うべき。•時間が不足している場合どうしたらよいか?→時間厳守、納期を守ることがビジネスの大前提。考えるだけで何もやらなければ変化は生まれない。したがって与えられた時間内でベストを尽くすということが基本。そして経験を通じて、これだけの時間がないとクオリティが確保できないなら、それだけの時間を確保できるように調整することも仕事の一部。•問題点がなにかをはっきりさせることを重要視するため、逆に奇抜なアイデアは生まれないのではないか。

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実践事例3)京都市中央卸売市場第一市場水産物部 ワーキング

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京都市中央卸売市場・水産(1)• 京都市中央卸売市場第一市場経営戦略研究会とは

– 京都市が開設している中央卸売市場第一市場は、青果部、水産物部の2つの卸売市場を運営している。これまで数回にわかって今後の計画について検討してきたにもかかわらず、変革がすすまず取扱高が減少するなどという中央卸売市場の弱体化がすすんでいる。そこで、変革につながるアクションを生むことに集中するために 2012 年 9月に設置された。

• 同 水産物部ワーキング– 特に水産物部は取引高が近年大きく減少しているので、「取扱

高を増やす」をテーマに、「できるところからやる」などというのではなく「取扱高を増やすことにつながる、やるべきことに集中して取り組む」ためのワーキングを3回開催した(座長 若林靖永)。

– 同時にワーキングメンバー、卸売、仲卸、一般小売、スーパーなどへのヒアリングを行った。

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京都市中央卸売市場・水産( 2 )• 水産物部ワーキングの展開

1. なぜ取扱高が減少するのか、その原因を探る2. なにを変えたら取扱高は増加に転じるか、そのポイントをあ

きらかにする3. 上記、2点についてとりまとめ、アクションアイデアを提示

する報告書(原案)について検討する

– メンバーへ問いかけて、一人ひとりの回答を元に黒板にブランチを展開して、問題状況の理解、問題打開の方向について共有した。

– 「アクションプラン 2012 最終報告書」でもそのブランチを提示しこれからの前提として提起した。

– これをもとに、アクションプランごとの実行チームを形成し、取り組みの具体化を現在すすめている。

Yasunaga Wakabayashi, 2013 19

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実践事例4)姫路医療生協

管理者マネジメント研修

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姫路医療生協(1)• 姫路医療生協とは

– 医療生協とは、医療事業を提供する、患者、地域住民が組合員となって構成された協同組合である。

– 姫路医療生協は、姫路市を中心に、病院および歯科に加えて、近年、介護保険事業、訪問介護事業、施設事業等、福祉領域の事業に取り組む。

• 姫路医療生協の管理者マネジメント研修の課題– 福祉領域に事業を多角化したなかで、これからの姫路医療生協

のあり方を学び共有することが求められる– 新事業・施設が増えたために、管理者が増加し、管理者のマネ

ジメント能力を高めることが求められる。

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姫路医療生協(2)• 管理者マネジメント研修(1)

– 姫路医療生協全体の現状と課題について、幹部が共有し、その上で将来像をつくりだす

– そのために、ドラッカーの非営利組織における自己評価手法(4つの問い)について学び、グループワークを行う

– 個人のワークの発表と共有をフェースブックのグループで。

• 管理者マネジメント研修(2)– 各部署・施設の責任者が全体の方針を理解した上で、各部署で

の課題を自ら考え取り組むための訓練を行う– そのためにブランチ、アンビシャス・ターゲット・ツリーの2つを用いてグループワークを行う

• 管理者マネジメント研修(3)– 全体の新年度方針を理解した上で、各部署での計画を具体化す

るための訓練を行う

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ドラッカーの自己評価手法

『非営利組織の成果重視マネジメント』(ダイヤモンド社)Yasunaga Wakabayashi, 2013

姫路医療生協研修 2012.10.24

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実践事例5)生協組合員理事トップセミナー

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生協組合員理事トップセミナー(1)• 生協組合員理事トップセミナーとは

– 生協の理事は、専門的経営者だけでなく、普通の組合員によって構成されており、生協の経営にどう係わるべきかという課題・責務に直面している。

– くらしと協同の研究所(京都市)が主催する「生協組合員理事トップセミナー」は、各生協の組合員理事が世話人として企画運営に参画して毎年開催されている。

• 今回( 2012.12.8 )のセミナーの企画のねらい– 何かを教わり勉強になった、ではなく実際の生協の経営に係わ

る組合員理事の課題を、組合員理事自らが自分で考え話し合って協力して取り組めるようになること、主体性を確立することが大事であるという問題意識

– そのために「教育のための TOC 」を学び、具体的な自分たちの課題についての取り組みをすすめる

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生協組合員理事トップセミナー(2)• 基調講演「ありたい私の生協、ありたい組合員理事と

は〜自分で考え、みんなで話し合って考える〜」– 当事者視点 クラウドを使う– 消費税増税の是非 ブランチを使う– 生協合併の是非 ブランチ、クラウドを使う(例示)– アンビシャス・ターゲット・ツリーについて学ぶ– グループワークの課題の提示

• グループワーク(2時間)– 「生協の理事会を良くする」をテーマとする– ファシリテーターは世話人のみなさん– なぜ生協の理事会は良くないのか、ブランチで掘り下げる– 生協の理事会を改善するためのアクションを、アンビシャス・

ターゲット・ツリーを用いて明らかにする– 全体会で発表し、講評

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「価値と工夫」編

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なぜクリティカル・シンキングなのか• クリティカル・シンキングとは

– 批判的思考は、論理的・合理的思考であり、規準( criteria )に従う思考である

– 批判的思考とは、自分の推論プロセスを意識的に吟味する内省的( reflective )・熟慮的思考である

– 望ましい結果を得る確立を高めるように、認知的スキルを活用した思考活動(楠見・子安・道田編『批判的思考力を育む』有斐閣、2011 )

• ジェネリックスキルとしてのクリティカル・シンキング– OECD の AHELO (高等教育版 PISA )– 中央教育審議会の「学士力」– 経済産業省の「社会人基礎力」

(楠見・子安・道田編『批判的思考力を育む』有斐閣、 2011 )

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ブランチ

• ブランチとは、一言で言えば「科学的思考」である

• 原因と結果の関係、システムとして理解する• 「かつ」の十分性を通じて、条件等をも明らかに

する

• 私たちの持っている知識・教養・常識を十分に活用することで理解を深めることができる

• 他人の意見を組み込むことで、さらに理解を深めることができる

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クラウド• クラウドは、一言で言えば「対立の構造モデル」• ある意見や行動には、その背後にそれを要求するも

の(ニーズ)があり、そのニーズを生み出すさらなる理由・目的があるという、3層構造でとらえる

• 対立そのものに目を向けると膠着してしまうので、その背後にある要求(ニーズ)、仮定(思い込み)に注目して打開策を考える

• 対立した意見が無視されず、そのまま尊重される• 対立するものが、いっしょに問題に取り組める• 勝敗、強制、あきらめ、妥協ではない解決策を追求

Yasunaga Wakabayashi, 2013 30

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アンビシャス・ターゲット・ツリー

• 無理だとあきらめてしまいがちな、何度やっても挫折してしまうような「挑戦的目標(アンビシャス・ターゲット)」に対して取り組む意志と計画を生み出す

• 想定される障害をすべて挙げ、障害を軽視して無視せず、逆に障害を直視して一つひとつそれを克服する中間目標、行動計画を立てていく

• 中間目標、行動計画の順序関係、段取りについて検討して、全体として戦略的計画を立案する

• とりあえず作って、実行・フィードバックを通じて修正することで、一歩一歩確実に大目標の実現をめざす

Yasunaga Wakabayashi, 2013 31

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正当な懸念のカテゴリー CLR• 「正当な懸念のカテゴリー」

– 明瞭性の懸念– 存在の懸念– 因果の懸念– 十分性の懸念

• 「正当な懸念のカテゴリー」とは「ちゃんと考える」「クリティカル・シンキング」、つまり正しいかを疑ってより理解を深めていくということの中核

• 3つのツールを使うレベルを上げていくためにもっとも大事なのが「正当な懸念のカテゴリー」

Yasunaga Wakabayashi, 2013 32

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価値1:充実した個

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価値2:充実した関係性

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価値 3 :充実した社会

Yasunaga Wakabayashi, 2013 35

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課題・工夫1

• 間違った、不十分なブランチなど             ↓• 時間をかけてフィードバックを行う• 解答・結論を与えることで、自分でブランチ等

を使って考えるということを妨げてはいけない• 「正当な懸念のカテゴリー」の問いを通じて、

1つひとつの項目や関係について見直していく• 発達段階・興味関心に応じた教材(ドリル中

心)を通じてワークを繰り返す

Yasunaga Wakabayashi, 2013 36

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課題・工夫2

• 常識にとらわれた「つまらない」ブランチなど               ↓• 面白い、新しいことに価値があるのではなく、

実際の問題解決に結びつくかどうかが評価基準• クリエイティブな問題解決を生むためには、ブランチやクラウドでの仮定(思い込み)を否定できるかどうかがカギ

• 新しい目的・目標、新しい仮定・仮説を立てることで、異なるブランチやクラウドに変わっていく

Yasunaga Wakabayashi, 2013 37

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課題・工夫3

• 理屈ばかりで実感・納得できない               ↓• 感情にとらわれることは、問題解決を妨げる• 理性・感情・行動療法(論理療法)(注)など

のように、認知(ものの見方)が変われば結果として感情も変わる

• 「攻撃的」というように受けとられない問いかけ、スタイルを大事にする

• 相手を尊重し、善人であり、問題解決に貢献できる力があることを理解する

Yasunaga Wakabayashi, 2013 38

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注)「理性 -感情 -行動療法」(論理療法)• 「理性 -感情 -行動療法」とは   Rational-Emotive-Behavior Therapy

– エリス博士が開発した実践的なセラピー手法– セラピーの多くが深層心理、過去の体験などにさかのぼり、そのため

に積極的傾聴が行われるのに対して、本手法はあくまでも現在の状況や思いに注目し、積極的介入してものの見方を変える習慣を提案する

• ABC 理論– A Activating Event いやな気分・感情を引き起こす出来事– B Belief 信念 思い込み– C Consequence 結果 いやな気分・感情クリティカル・シンキング

のための3つの思考ツール

– アルバート・エリス『性格は変えられない、それでも人生は変えられる 』

– エデルシュタイン & スティール『論理療法による3分間セラピー』Yasunaga Wakabayashi, 2013 39

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注)「理性 -感情 -行動療法」(論理療法)

Yasunaga Wakabayashi, 2013

いやな感情 Cいやな感情 C

落ち着いた感情 C’

落ち着いた感情 C’

非合理的信念 B非合理的信念 B

新しい信念 B’新しい信念 B’

出来事 A出来事 A

これまでの自分

これからの自分

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課題・工夫4• 問題が解決しない、対立が続く               ↓• 原因がまだまだわかっていない。対立の原因であ

る「相手」のことを理解できていない• 「相手の立場」にたって物事を見るということな

しに、対立を解決していく道筋は見えてこない• サーバント・リーダーシップ(注)などのように、相手の目に見える欲求だけではなく、相手がなぜそれを求めるのか(ニーズ)にこたえることが解決のカギ

• TOCfE はリーダーシップ教育であるYasunaga Wakabayashi, 2013 41

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注)「サーバント・リーダーシップ」• サーバント・リーダーシップとは

– 権力で人を強制支配することではない– 権威で、人が自ら積極的に協力的行動をとるようにする

– 人を強制支配することは短期的には効率的に見えるが、長期的には反発、対立をうみ、自主性、創造性が失われる

– リーダーが自らビジョンについてこさせるのではなく、フォロワー自身が自らのビジョン、価値観だと納得するように、よく話を聞き、働きかけ続けることで、フォロワーは能動的に自分の問題として取り組み、創造的で献身的な行動が促進される

– リーダーシップは権威あるいは影響力の上につくられ、権威や影響力は奉仕と犠牲の上につくられ、奉仕と犠牲は愛の上につくられ、そして愛は人格の問題である(ジェームズ・ハンター『サーバント・リーダー』海と月社、 2012 年)

Yasunaga Wakabayashi, 2013 42

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Yasunaga Wakabayashi, 2013 43

Page 44: TOCfEシンポジウム2013 基調講演130210(若林靖永)(公開)

「教育のための TOC 」はリーダーシップ教育である

Yasunaga Wakabayashi, 2013 44


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