知っておきたい乳腺のこと

高松赤十字病院 初期研修医 大段仁奈

監修 香川県乳腺研究会

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香川県乳癌患者数

乳房について

•女性性のシンボル

•ほ乳類のメスが持つ哺乳器官

•多産の動物ほど多くもつ

•おっぱい• 「おおうまい」が縮まった古典文学「於呂加於比」より

• 「おなかいっぱい」が転じた

乳腺とは

• 汗腺から派生

• 乳汁を分泌する小葉

乳汁を乳頭へ運ぶ乳管

• 男性にも存在するが、

未発達で機能しない

国立がん研究センターHPより引用

乳腺とは

• 汗腺から派生

• 乳汁を分泌する小葉

乳汁を乳頭へ運ぶ乳管

• 男性にも存在するが、

未発達で機能しない

国立がん研究センターHPより引用

乳房の解剖

マンモグラフィー

Cooper靱帯

脂肪

大胸筋肋骨

小葉

乳管

乳頭

乳管洞

乳房の変化• 思春期以前

• 少量の乳管と間質が塊状に

• 思春期以後

• 腺房の発達→乳腺組織が肥大

• 授乳期に乳腺組織量は最大に

• 授乳期後～閉経前

• 乳腺組織は萎縮、脂肪織へ置換

• 閉経後

• 脂肪織濃度の高い像を呈する

マンモグラフィガイドラインより引用

乳腺の疾患

•若年層• 乳腺症

• 線維腺腫

•中年層以後• 乳癌

•男性• 女性化乳房

• 乳癌

乳腺症

• 良性疾患

• 乳管や小葉の過形成が原因

• 乳腺は硬く触れ、疼痛を伴うことも

• 月経周期によって症状は変遷する

• マンモグラフィーで高濃度な乳腺を呈する

• こまめな自己検診や、定期受診でのエコー検査が重要

聖マリアンナ医科大学HPより

線維腺腫

• 女性の良性乳腺腫瘍の中で最多

• 若年女性に好発

• 硬く、可動は良好

• ほとんどの場合、癌化とは無関係。閉経後に退縮

• 葉状腫瘍（悪性の可能性あり）との鑑別が難しい腫瘍病理鑑別診断アトラスより

日本病理学会より

男性乳腺

女性化乳房

• ホルモンバランスの乱れによると考えられている

• 肥満、肝・腎障害、内分泌疾患、薬剤

• 治療＝乳腺全摘

男性乳癌

• 発症率 男女比：1:100

• 発見の遅れによる予後不良が目立つ

乳癌

• 非浸潤癌

• 浸潤癌

• Paget病

アストアラゼネカ 乳がん.jpより引用

基底膜

乳癌

• 非浸潤癌

• 浸潤癌

• Paget病

アストアラゼネカ 乳がん.jpより引用

基底膜

乳癌

• 非浸潤癌

• 浸潤癌

• Paget病

アストアラゼネカ 乳がん.jpより引用

基底膜

乳癌

• 非浸潤癌

• 浸潤癌

• Paget病

アストアラゼネカ 乳がん.jpより引用

基底膜

乳癌

• 女性における2016年のがん死亡数のうち5位

がん罹患数のうち1位

• 罹患率：9%（全がん：46%）

死亡率：2%（全がん：16%）

• 5年生存率(2006-2008年診断患者において)：91.1%• 限局している →98.9%

• リンパ節転移あり→88.4%

• 遠隔転移あり →33.7%

国立がん研究センター資料より

乳癌

•発見時ステージ別の10年生存率

日本乳癌学会「全国乳がん患者登録調査報告書29号」より

乳癌罹患数

監修 香川県乳腺研究会

乳癌の治療法

遠隔転移

手術適応

乳房温存術

乳房全摘術

センチネルリンパ節生検

腋窩郭清

薬物療法

放射線療法

手術治療

（－）（＋）

乳癌の手術治療

•術前•問診

•閉経の有無、妊娠歴など

•身体所見•病変、皮膚所見の有無（dimpling, delle）、

•乳頭異常分泌の有無

•周囲リンパ節や対側乳房の所見の有無

香川大学乳腺内分泌外科HPより

乳癌の手術治療

• 術前• 画像検査；原発巣・腋窩リンパ節の評価

• マンモグラフィー

• 乳腺超音波検査

• 乳房MRI

• 画像検査；遠隔転移の検索• 造影CT

• PET-CT

• 骨シンチグラフィ

乳癌の手術治療

•術前• 血液検査

• 血算、生化学、凝固、感染症、尿定性、血液型

• 腫瘍マーカー

• 病理学的検査；悪性か否かの確認や、画像所見との比較• 穿刺吸引細胞診

• 針生検

• マンモトーム生検

乳癌の手術治療•乳房部分切除術

• エコー下で腫瘍より2cm大きめにマーキング

• 数センチの皮膚切開

• 乳腺・脂肪を胸壁に垂直に切除

• 残る組織の乳頭側を迅速病理へ

• 腫瘍の残存なければ終了

乳癌の手術治療

•乳房全摘術• 乳頭、乳輪を含めて乳房の大きさに合わせた皮膚切開

• 可及的に薄く、大胸筋の上の乳腺と脂肪を剥離する

乳癌の手術治療•センチネルリンパ節生検

• センチネル＝“見張り“

• 乳腺に生じた癌細胞が最初に行き着く

• 腋窩郭清の省略が可能に日本乳癌学会より

合併症！・上肢のリンパ浮腫・上腕のしびれ、感覚鈍麻・肩関節の拘縮

乳癌の手術治療•センチネルリンパ節生検

• 乳輪外側上部の皮内、乳頭直下に色素（ICG）を注入

• 腋窩に皮膚切開を入れ、緑に染まったリンパ節を掘り出し、迅速病理提出

ICG蛍光法

乳癌の手術治療•腋窩郭清

• 近傍には腋窩動静脈、長胸神経、胸背神経など

• リンパ節を脂肪とともに摘除

乳癌の術後

•乳房全摘、腋窩郭清 →ドレーン留置

•食事・離床は翌日から可能

•多くの人が術後3日～5日で退院

•退院の約1週間後に受診予約

→病理診断の結果と今後の治療方針決定

乳癌の術後

乳房全摘＋腋窩郭清後

乳癌の術後

•合併症• 創部の出血、感染

• 創部の浸出液貯留

• 患側上肢のリンパ浮腫；腋窩郭清では特に

• 乳頭壊死

乳癌.jpより

乳房再建

•保険適応

•再発率に関与しないが、合併症は数％で起こる

•自己組織（腹直筋・広背筋）or人工物

皮膚へ浸潤し巨大な腫瘤を形成した一例

乳癌検診

• 香川県での取り組み

• 40歳以上の女性に対し検診案内のはがきを送付

• 料金：マンモグラフィー 4000円

超音波検査 4000円

• 視触診：実施されていない所が多い。

※自治体によって異なる

乳癌検診の受診率

Breast Cancer Screening Among Adult Women — Behavioral Risk Factor Surveillance System, United States, 2010 より

全国平均：44.9%香川県：49.3%

乳癌検診の受診率

2016年、40-69歳女性• 全国平均：44.9%• 香川県：49.3%

2015年、40歳以上女性• 全国平均：20%• 香川県：38.5%

• 米国・英国：70-80%

乳癌発見状況

第38回香川乳腺研究会

72%

8%13%

7% 0%

2001年

自己発見：腫瘤 自己発見：腫瘤以外

検診・人間ドック 集団検診

その他

乳癌発見状況

第38回香川乳腺研究会

72%

8%13%

7% 0%

2001年

自己発見：腫瘤 自己発見：腫瘤以外

検診・人間ドック 集団検診

その他

発見のきっかけは、約半数が自己発見

パートナーとのスキンシップによる発見も

乳癌の遺伝について

•乳癌のうち、5-10%が遺伝性

• HBOC；遺伝性乳癌卵巣癌症候群

• BRCA1/2遺伝子の変異

•某ハリウッド女優の予防的乳房切除

→自己負担で20-50万円（片方）

乳癌の遺伝について

• 反対側乳房における乳癌の発生・・・40-60%• HBOC患者・・・18歳からの自己検診など推奨