森林破壊と感染症リスク

2020年11月12日

WWFジャパン

岩渕 翼

© Marizilda Cruppe / WWF-UK

発表内容

• なぜ動物由来感染症は増えているのか

• 世界の森林の現状

• 森林減少を引き起こす原因

• 私たちがすべきこと

なぜ動物由来感染症は増えているのか？

Jones et al. 2008 Nature

新興感染症の発生件数

動物由来感染症

森林減少土地利用改変

薬剤耐性

違法・規制が不十分な野生生物取引

気候変動

集約型農畜産業

なぜ動物由来感染症は増えているのか？

©WWF

世界の森林は減り続けている

FAO Global Forest Resources Assessment 2020を元に作成

3800

4000

4200

1990 2000 2010 2020

森林面積

(百万

ha) -470万ha/年

なぜ森林が減少すると動物由来感染症が増えるのか？

• エッジ効果により人と野生生物の接触機会が増える

• 生物多様性による希釈効果が薄れ感染症が広がりやすくなる

• 地球温暖化により熱帯感染症の発生地域・期間が拡大する

➢ 面積周長比が大きくなる

➢ 動物が森の外に出やすくなる

➢ 動物と人の接触機会が増える

20km

20km

10km

10km10km

5km

面積：400km2周長：80km

面積周長比：0.2

面積：100km2周長：40km

面積周長比：0.4

面積が小さくなると

なぜ森林が減少すると動物由来感染症が増えるのか？

エッジ効果

©WWFジャパン

20km

20km10km

10km

面積：400km2周長：80km

面積周長比：0.2

面積：400km2周長：160km面積周長比：0.4

同じ面積でも分断化すると

➢ 面積周長比が大きくなる

➢ 動物が森の外に出やすくなる

➢ 動物と人の接触機会が増える

なぜ森林が減少すると動物由来感染症が増えるのか？

エッジ効果

©WWFジャパン

なぜ森林が減少すると動物由来感染症が増えるのか？

希釈効果

生物多様性が低下すると

➢ 感染しやすい種が多くなる

➢ 森の中で感染症が広がる

➢ 人の近くにいる個体まで到達する

病原体 病原体

感染しやすい種

感染しない種

©WWFジャパン

なぜ森林が減少すると動物由来感染症が増えるのか？

地球温暖化

森林減少が続くと

➢ 地球温暖化が進む

➢ 熱帯感染症を媒介する生物の分布や活動期間が拡大する

Ryan et al. 2019 PLoS Negl Trop Dis

デング熱などを媒介するネッタイシマカの適温月数の変化

動物由来感染症のリスクは熱帯地域で高い

Allen et al. 2017 Nature Comm

Keesing et al. 2010 Natureを元に作成

土地利用転換

農業集約化

食料産業改変

動物由来感染症の

約半分は土地利用の変化が原因

森林減少は熱帯で起きている

FAO Global Forest Resources Assessment 2020を元に作成

0

2

4

6

8

10

12

14

16

1990-2000 2000-2010 2010-2020

森林減少

(百万

ha/年

)

その他

熱帯林

87% 89%87%

プランテーション開発

小規模農園開発

林業

火災

都市開発

2001～2015年のデータ Curtis et al 2018 Scienceを元に作成

森林減少の大部分は農林業に起因

プランテーション開発

小規模農園開発

林業

火災 都市開発

世界 東南アジア

対岸の火事ではない

2.8

海外に依存した生活が動物由来感染症のリスクを高めている可能性

©WWFジャパン

生活やビジネスのあり方（歯車の形）をどう変えていくのか

日本の生活・消費ビジネス

森林破壊

自然災害激甚化

感染症拡大

生態系サービス劣化

気候変動

©WWFジャパン

森林を破壊しない農林業の推進

+天然ゴム

紙・パルプ

牛肉

パーム油

木材

乳製品

大豆 木材紙・パルプ

パーム油

認証品の普及

© Marizilda Cruppe / WWF-UK

41%削減

食を変えることの効果

温室効果ガスを

30%削減

野生生物の減少を

46%削減

農業の土地利用を

20%低減

若年死を 農業の土地利用を

©WWF

行動の10年へ

2030年までに森林再生3億5千万ha

2030年までのGHG削減目標設定

2030年までに森林破壊ゼロ2030年までの10年間で積極的な生態系回復活動

2030年目標

部分最適から全体最適へ

生物多様性気候制御

水貯留

食料

繊維本来の状態

トレードオフの大きさ

小 大

土地利用の強度

小 大

IPBES 2018を元に作成

本来の状態 広範な利用 集約的な利用 放棄

[市民] 日々の消費活動が感染症リスクと関りがあることを認識し、行動する

[企業・金融] 森林破壊ゼロのサプライチェーンを構築する

[政府] 動物由来感染症と森林破壊との関係を認識し、政策に盛り込む（One Health）

部分最適から全体最適へ（しわ寄せ無き社会）

森を守ること＝人・生き物・環境を守ること

次のパンデミックを運任せにしてはならない

WWF IN SHORT

WWF is in over

100 countries, on

5 continents

+100

WWF was founded

In 1961

1961

WWF has over

5,000 staff

worldwide

+5000

WWF has over

5 million supporters

+5M

Photo: © Michel Roggo / WWF-Canon

ありがとうございました