Bioethics第3講 死生観と遺体

• WHOによる緩和ケアの定義は以下の通りです•緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関してきちんとした評価をおこない、それが障害とならないように予防したり対処したりすることで、クオリティー・オブ・ライフを改善するためのアプローチである。（2002､WHO）

• WHOは健康の定義にも「スピリチュアル」という言葉を入れようとしたこともあり、ある時期から盛んにこれが言われ始めました

•さて、このスピリチュアルとは一体何でしょう？具体的にはどのようなもの（こと）を指すのでしょう？

ブレイクアウトセッション•「スピリチュアル」って何？ 言い換えるとどんな言葉があてはまる？ 具体的にはどんなもの？ どんなこと？ ということについて、セッションで意見交換してください

•ブレイクアウトルームへ行き、自己紹介と誕生日を言って、生まれたのが7月7日に一番近い人が仕切り役になってください

•セッション終了後、チャットでこんなものかと思うというところを仕切り役の人が送ってください。パブリックにしておきますので、みなさんにも見えるはずです

•では5分間お願いします

日本人と遺体日本のスピリチュアリティ

航空機事故から読み取る•波平恵美子『脳死・臓器移植・がん告知 死と医療の人類学』、福武文庫、1990

•日本人が遺体についてどう考えているかの手がかりを航空機事故に求める複数の人がまったく同じ原因によって死亡している死亡者の年齢、性、職業、家族的背景、出身地がそれぞれに異なる死があまりに突然で劇的であるために、人びとが死や遺体というものについて抱いている観念がより直接的に示されていると推測できる

日本航空123便墜落事故• 1985年8月12日午後6時56分、日本航空123便、東京（羽田）発大阪（伊丹）行、ボーイング747SR-46が群馬県多野郡上野村の高天原山に墜落した事故

•「同機がしりもち着陸事故を起こした後のボーイング社の修理が不適切だったことによる圧力隔壁の破損が原因」とする航空事故調査報告書が1987年6月19日に公表され終了

•乗務員15名、乗客509名、計524名•生存者は4名。26歳女性（日本航空の非番の客室乗務員）、34歳女性と8歳女性の母子、12歳女性

おすたかれくいえむ•日航ジャンボ機の墜落事故によって亡くなった五二〇人の人びとの家族のうち二八〇家族によって組織された「八・一二連絡会」が編集 （ご遺族の手記）なによりも印象的なことは、遺族がなんとしても肉親の遺体を確認しようとするその努力である。惨状のなかで、肉親の遺体のわずかな部分さえも、山上の土の中から、あるいは酷暑の、腐臭に満ちた遺体置場の体育館のなかで捜し求めた遺族の遺体への執着の強さに驚かされる。なぜそれほどまでして遺体を確認しようとするのか、ほとんどの遺族の行動をそのように動機づけたものは何であったかと改めて考えさせられる。（波平）

野中哲人さん（四二歳）の夫人、野中光子さん

1 十五日目にお父さんは見つかりました。でも顔も体も包帯だらけ、これでどこを見てお父さんだという確認ができるのでしょうか。警察の方が歯の下の方が二本重なっているのが特徴です、と言われて『奥さん見ますか』と言われた。でも一瞬勇気がでませんでした。でもがんばって見ておかないと後でまちがいではすまないと思い、一つでも主人であるということを確認しておきたい。そして一日も早く家につれて帰ってやりたいという思いでいっぱいでした。でもあの元気な主人が無惨な姿……、お父さん暑かったでしょう。どんなにか怖かったでしょうね。でも警察の方が奥さん、まだ御主人はましな方ですよ、まだまだひどい方がいらっしゃいますよ、と言われました。私よりつらい思いを皆さんもなさったことでしょう。

泉谷さん・矢田さん２ あの日から遺体を捜し回りやっと見付けた娘は、それは悲しい断片のものでした。（泉谷淳子さん（二〇歳）の父、泉谷明造さん）

３ 長い長い一週間が経ちました。一週間目の夕方、遺体が確認されたという電話が（死体確認のために現地へ行っていた母から）入り、見つかったのは良かったけれど、死を認めることになるので、複雑な気持ちでした。」（矢田俊雄さん（五〇歳）の長女、矢田敦子さん（中一）

小西義員さん（五八歳）の妻、小西三四さん4 次男と二人で、特徴のある手がみつかるかもしれないと早速出かけることにしました。柩にかけられた白布の上に、男、女、手、足、炭化など中の内容が書かれた紙が花束と並んで置かれています。それを食いいるように見ながら、手のある柩をいくつも開けていただきました。両手の薬指に特徴があったので、見逃してはならないと必死でした。……応援にかけつけてくれた甥も長男と、もう一度私達の後から探してくれました。……対面した夫は、変わりはてたと言うより、あまりにむごい身体の一部だけです。万一と思って用意してきた夫の下着を着せることもできない姿です。遺体のまま家へいっしょに返りたいと思っていたこともかなわず、わずかに残っていた毛髪と、爪と、歯を取っていただき、二十日の朝、高崎市で荼毘に付したのです。それにしても、この時計をつけていた夫の左手はどこへ行ったのか、両足とともに私のもとへまだ帰ってきてはくれないのである。

山田さん・Sさん５ やっと歯型で勇太の確認がとれたと連絡がありました。顔を見るとすぐ勇太とわかったそうです。やっぱり（死体の確認に行った）おじいちゃんの顔が見えたのでしょう。片目が開いたままだったそうです。（柏原勇太君（六歳）の祖母、山田たづ子さん）６ 『どんなに変り果てた姿であろうと、せめて一晩わが家の畳の上に寝かせてから葬ってやりたい』という妻を説いて遠い高崎の地で荼毘に付した。（S・T）

美谷島健君（九歳）の母、美谷島邦子さん７ 遺体がみつかりました。焼けた123便座席１２Ｋと書いてある『チビッ子ＶＩＰ』のワッペンと、小さなイボのある右手だけ。顔も左手も足もありませんでした。でも『やっと会えた。ママは健といつも一緒だよ。もう一人にはさせないよ』と心の中で叫んでいました。……あの迷走の三二分間、恐怖の機内で、この小さな右手は、一体どこをつかんでいたのだろうと、胸が絞めつけられ、涙が、ところかまわずこぼれてきます。……葬儀の後、部分遺体を見つけるために、何度、群馬を往復したことでしょう。あの子の一部なら、どんな形でも連れて帰りたい、と思いました。（中略）変わり果てた足と手の、わずかな部分。

『でもこれで、天国で大好きだった野球ができるね』……。四十九日忌には五十本近いジュースの一つ一つに手紙を貼って（クラス中の子供達が）届けてくれました。『健ちゃん、野球をしてのどがかわいたら、天国で飲んでね』という文面の書かれた箱いっぱいのジュースを手にしたとき、亡き子を抱きしめたようでした。

福田さん・林さん８ 軽い軽い骨つぼが、長年住みなれたわが家に帰る。少年時代から寝なれた彼のベッドに、まるで幼児を寝かせるように、静かに置いた。慎一よ、さあ自分の家だよ、自分のベッドだよ、安らかに眠ってくれ（福田慎一さん（二七歳）の父、福田清人さん）９ 八月十四日。朝食のお茶をいただいている時、娘がふいに、『お母さん、茶柱が立っているよ。きっと今日、お父さんに会えるよ』と言ってくれました。彼女の言葉が本当になったのは間もなくでした。……『あの人に会える。たとえどんな姿でも、あの人に会える』と心の中ははやりました。（林義明さん（四四歳）の妻、林治代さん）

佐田さん10 秋のお彼岸に、はじめて山に登りました。前日、あれこれと夫の好物をととのえながら、単身赴任先を訪ねるときのように心が妙に華やぎ、ときめいているのです。……あの刻からずっと逢いたい、一目でも逢いたいと思いつづけていたのです。……やっぱり居ない。がっくりしながら見渡した山々は深く静かでした。『あなた、辛かったでしょうね。もう静かにゆっくり眠って下さい。二人でよくドライブした秩父の山が見えるでしょ。』ビールやお酒を土にそそぎかけながら、ただ語りかけるだけでした。（佐田弘さん（五三歳）の妻、佐田和子さん）

山﨑さん・日永田さん１１ 人は死んでしまうと、身体は土になる等自然に帰りますが、魂は不滅です。かならずお父さんの魂が、皆の成長ぶり、生活ぶりをみています。（山崎章さん（四七歳）の弟、山崎徹さん）１２ 一度現場に行きたいと思って居りました所、……息子の現場を日航の方と調べて貰い同じ場所だという事がわかりました。……『利美、真佐子、真由美、福岡より親と兄弟皆が逢いに来たぞ、三人仲良く天国に眠ってくれ』と泣きながら叫びました。……さぞや無念の涙と悔しさで一杯であったろうと思う……山に別れを告げ、また元の参道を下り始め三人の霊が一番近い沢で『利美また来るからな、三人仲良く天国に眠ってくれ』と泣いて別れを告げ…（日永田利美さん（三四歳）、日永田真佐子さん（三一歳）の父、日永田真由美さん（七歳）の祖父、日永田仁之さん）

田中さん・竹永さん•１３ 棺のふたを閉めた。みんなで棺を撫でていた。母は手をのばして棺を抱くようにしていた。『今しか抱いてやれへんからな……』と、棺を離れなかった。愛ちゃんの身体は、ばらばらになっていなかった。それなのに確認が遅れた。……日航側も、確証がなければ見せてくれなかったのだ。それとも愛ちゃんは、家族みんながそろうのを、待っていたのかも知れない。（田中愛子さん（二六歳）の妹、（高三）田中みのりさん）

•１４ 事故現場に駆けつけた私と二男は、この世のものとは思えない地獄を約十時間もはいまわり、『お父さん、弟よ、ここだここだ』という無言の叫びに導かれ、八月十七日やっとの思いで遺体を確認した。……悲しみと無念、代わってやれるなら代わりたい！死んでやりたい死んでしまいたい！……の思いは今も消えない。（竹永修二さん（二四歳）の父竹永和民さん）

15 ……五日もすると体重が五キロも減った。棺を覗き込み、様々な遺体の特徴を調べながら、ああこのまま衰弱して四人のもとへ行きたいと思った。それほど絶望的な作業でしかなかった。しかし一方で、おまえが四人を探さない限り誰もその役は果たせないぞ、とも思った。そのことが連日夜中まで、体育館を歩きまわる私を支えていた。…神も仏も信じないと思った私でも、やはり何かにすがりたかった。境内からは折り重なった山々が見え、ヘリコプターの爆音のする、あの暁光の方向が現場だろうと、手を合わせた。……十七日、次男陽之介確認。……二十三日、長女紗也子確認。二十六日、妻君子確認。長男竜太郎の確認は九月十八日であった。……彼らのことを背に負って歩いていこう。いつか向こうで彼らと逢う時に『お父さん、よく頑張ったね』と、迎えてもらえるように。（川上君子さん（三四歳）の夫、川上竜太郎君（八歳）、川上紗也子ちゃん（五歳）、川上陽之介君（五歳）の父、川上信行さん）

川上信行さん

谷間さん・武田さん１６ 今年もまた八月が来て一周忌を迎えた。去年の夏は特別に暑さもきびしく、六百二十人の犠牲者の皆様の無念の想いで世の中が燃えていると思うくらいに暑かった。（谷間寛さん（四三歳）の母、谷間寿子さん）１７ 澄ちゃんはとてもやさしい、母親想いまた兄姉妹想いのみんなにすかれた妹でした。……次に逢ったのが、あの藤岡工業高校の体育館でした。……やっと逢う事ができました。こんな悲しい変わり果てた姿で逢うなんて、とめどもなく流れる涙、でもしっかりと見守っていた。苦しかっただろう、怖かっただろう。『こんな姿にだれがした』だれにも見てほしくなかった。……ある御遺族の方が言われた。……一日も早く家族と逢わせてほしい。人間の愛情とは喩え指先一本、耳の型を見ただけでわかる。早く逢わせろ。この言葉に私も深く感銘した。これが人間！家族愛なのだ……（武田澄子さん（四一歳）の兄武田屶さん）

舘征夫さん（四二歳）の長男舘寛敬さん• １８ 『早くこの水を飲ませてやらないと、こんなに暑いのだから……。何とかして行かして下さい』とたのみこむ母に、『とても人間の行けるような所ではないのですから』日航の人のどなりつけるような声。…僕の頭の中には、『早く見つかりますよう』『せめてあの地獄から下ろしてやりたい』と思うようになってきた。……同じようにお父さんを亡くされたＴさんが声をかけて下さった。『登りましょう。行きましょう。』僕と母はもうたまらず翌日の五時頃、長野県側から三国峠を目ざした。……僕らは紙の墓標をたてた。くつのひもをほどいて置いた。ママは、指輪をぬいていた。『おやじ、見てくれましたか？』『早く山から降りて来て！』それしか頭に浮ばなかった。……足や手だけで帰るのはいやだとずっと思っていた。……その翌日（八月十九日）、『確認して下さい』僕らにかけられた言葉であった。それまでの空虚な世界は消え去り緊張感が走った。『おやじであればいい。まちがいありませんように』と思った。おやじであればいい。……『一週間まったぞ、おやじ』抱きつきたいほどうれしかった。だけど死んだおやじに逢うのは悲しく、またくやしい。……十九日、やっと家に帰って来てくれたのに二時間もいないで火葬場へ――。ただただあわただしくおやじは旅立った。……いろいろな事があると思うけど、今度は絶対に飛行機には乗らずに、おやじらしく、堂々と頑張って下さい。

１９ 私のそばから、身内の八人が一度に天国へ行ってしまった。みんな今どうしているかしら、きれいな山々の紅葉もいつの間にかはや二度目の寒い冬、可愛いあんたたちをそんな寒い山に住まわせて、ごめんね。でもお父さんやお母さんと一緒だからにぎやかかな。おばさんやおじさん、お友だちも大勢いで仲よく遊んでいるの、それとも恥ずかしそうにしているの。きれいずきのお母さんは落葉をせっせと片付けているの、お父さんたちは大きな木をヨイショと運んでたき火をしながらみんなが安心して遊べるようにしているかしら。友ちゃん、直ちゃんはハァハーと大きな声で、朝ちゃんと真理ちゃんはホーホーと小さく優しい声で笑いながら遊んでいるの、ちょっとでいいからみんなが楽しく遊んでいるところが見たいよ。いつまでその山に居るのかしら、あなたたちの初めて乗ったジャンボ機は大阪へ帰ってくるのを嫌がったのかしらね。どこまで飛んでいっているのでしょう。大阪に着いたらすぐ電話してね、おばあちゃんとおじいちゃんが迎えに行くからね。けんちゃんも、『朝ちゃん、真理ちゃん、直君、友ちゃん、いつ帰ってくるの』と首を長くして待っているよ、ディズニーランドのお土産を待っているのでしょう。この間、おばあちゃんの誕生日にけんちゃんが『おばあちゃんにケーキを買って上げてよ』とお母さんにねだってくれてね。そのケーキをあんたたちの並んでいる仏壇に供えたよ。みんなで山も楽しいでしょうが、お部屋もきれいに掃除してあなたたちの帰りを待っていますよ。お勉強も大分遅れたのね。遊んで疲れたらすぐ帰ってね。（匿名）

栗本雄彦さん（二一歳）の父、栗本俊雄さん

•２０ 生活の中心であった息子は、どこへ行ったのかとそればかり考えています。仏壇の前に坐っては、よく息子に云います。『いつまでも、そんなせまい所に居ないで、俺と場所を代わろうや』でもいつまでたっても代わってやることが出来ません。…… 親のつとめとして、いまでも何とかして、結婚式を挙げてやりたいと思って、どうすれば息子もよろこんでくれるだろうと、そんなことばかり考えてしまいます。どなたと結婚することになっていたかはわかりませんが、せめて、まねごとでもしてやりたい。でも無理な、かなわない愛とあきらめろと自分にいいきかせています。でも、やはりなんとかとすぐ思ってしまいます。

竹下さん・高原さん21 お父さん！大好きな飛行機に乗って、あんなひどい目にあい、くやしいでしょう！こわかったでしょう！あんな山奥にほうり出されてさみしかったでしょう！苦しかったでしょう！……今はただ、お父さんが他の五百十九名の方々と仲良く、そして楽しく、やすらかに、おやすみ下さる事だけをお祈りするしか出来ません。（竹下元章さん（四七歳）の妻、竹下カユ子さん）22 九月二十一日に御巣鷹の墜落現場に行きました。…『さあ迎えに来たんやで』後は言葉になりませんでした。…主人も私もそれぞれ孫を背負って山を降りる心境でした。（大幸節子さん（三六歳）の母、その夫大幸義典さん（四三歳）の義母、大幸数弥君（一三歳）、大幸綾子ちゃん（一二歳）の祖母、高原君代さん）

おすたかれくいえむの22篇これらから明らかになってくる遺族の方の亡くなった人への思い（⇒日本人の死生観・遺体観）（１）人が死んだあとも、その人の霊魂は存在していて、「あの世」、「向こう側」、「天国」などと表現される、生きている人間が住む世界とは異なる所に存在している。（２）死者の霊魂は、しかし、たいへん具体的な現実性を帯びた状況のもとにある。霊魂は形のないものではなく、生前と同じように身体をもち、食べたり飲んだり、笑ったり怒ったりする。また暑さや寒さや快適かそうでないかといった、生きた人間が感じるような感覚をもっている。

（３）生き残った家族や肉親あるいは生前に死者と親しかった者は、死んだ者が置かれているかも知れない不快な状況や欠乏や不満足の状況を取り除いてやり、また悔しさや無念さ、怒りの感情を取り除いて、できるだけ幸福で安らかな状態に死者を置いてやる義務がある。（４）遺族や親しい者にその遺体が確認されて初めて、死者の霊魂なり死者そのものの存在が、遺族にとって現実に存在することになる。その飛行機に乗っていたことが確実であり、また死亡したことが確実であるにもかかわらず、遺族にとって遺体が確認されない限りは、死は起こったことにならないし、死者としての肉親は存在しないことになる。つまり、生きた人として家族や親しい者の所へ帰って来るわけでもなく、いわば「行方不明」のままである。このような認識があるため、遺族は、遺体が確認されると死が確実に起こったことを認めることになるのにもかかわらず、遺体がみつかると「うれしい」と感じる。

（５）死者は血縁者や家族に自分の遺体をみつけてくれることを強く望んでいる。

（６）死者は親しい者が自分が死んだその場所へ来て欲しいと強く望んでいる。また、遺族や親しい者は死の現場へ行って初めて死者の魂を慰めることができると信じている。

（７）遺体となった死者は、自分が死ぬまで住んでいた家へ帰りたいと願っているし、遺族はそのようにする義務があると考えている

（８）遺体は家に持ち帰り、それぞれの方法で死者儀礼をやってはいても、その霊魂は全部とはいわないまでも、部分的には死が起こった場所に残っていると考え、遺族や親しい者がその場所を訪れることを望んでいると信じている。

（９）遺体は「五体満足」でなければならない。もしバラバラであっても、できるだけ部分が多く、元の身体の形に近いほどよい。身体の部分が欠けていると、あの世での生活が不自由であるかもしれない。また、死者は自分の身体が元の形をしていないことを不幸に思うし、そのような傷つけたり欠けたりした部分があるような原因を作った者を恨むと信じている。

民俗学における「異常死」•屋外での死や自分の家の中でない所で起こった死は、どんな死でも異常死と考えられた

• いわゆる「畳の上で死ねない」という表現•死者の魂は死の現場に残り易いと認識された

• 現場での供養は慰霊のために重要•異常な死によって周囲の人々にもたらされる死の不浄性（ケガレ）は普通の死の場合より強く、長い間続くと考えられた

• そのような死者の霊は成仏し難い•異常死の魂を慰めるためには、肉親や家族による鎮魂、もしくは仏教儀礼が重要であると考えられていた

日本における死者とのかかわり•肉親の遺体

• 情緒的な紐帯が長く結ばれる•死体観

• 死骸自体が独自の意志や権利や希望を持つことがあるという死体観＞平安・鎌倉の昔から成立（説話集などに散見／夢幻能）

• 生者には死者の権利や希望を尊重する義務がある•現在の死者の尊厳

• 専ら死体の取扱い方にかかわる• 死骸の尊厳を犯せば、死者により処罰が• 死骸は霊魂が抜け去り生命力を失った単なる物体ではない

スピリチュアリティ•こうした遺体観や他界観、人々の間に存在する信憑こそが、日本（人）のスピリチュアリティといえると考えます

•それは特定の宗教にとどまるものではなく、たとえ無宗教だと思っている人でも、どこか影響されているもの

•そして自分もしくは家族、友人などが死を迎えるにあたって、無視できない形で自分の気持ちの中に現れてくるものなのではないでしょうか

•日本人のスピリチュアリティ（たとえば「五体満足で送りたい」など）が移植医療を増加させない原因の一つとなっているのではないかとも私は考えています

クラウドキャンパスへ•クラウドキャンパスで、バイオエシックス第3講の生命倫理クイズを解き、小レポート（アンケート）に答えてください

•授業開始時のチャットでの名前送信は遅刻していないかの確認のためのもの、授業終了時のアンケートに答えることは最後まで受講したかの確認となります

•リアルタイム授業が終了して1時間以内にアンケートに答えていなかった場合、欠席とする場合もありますのでご注意

• どうしてもすぐに書けなかった理由などありましたら別です。その場合はメール等でご連絡ください

•来週の授業はオンデマンド型の講義になります