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在宅での栄養管理について

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

総合在宅医療クリニック 管理栄養士 熊谷琴美

管理栄養士とは?

• 栄養士法が改正(平成14年4月1日施行)

管理栄養士資格「登録制」から「免許制」に変更

管理栄養士(定義)

厚生労働大臣の免許を受けて、管理栄養士の名

称を用いて、傷病者に対する療養のため必要な栄

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

養の指導、個人の身体の状況、栄養状態等に応じ

た高度の専門的知識および技術を要する健康の保

持増進のための栄養の指導並びに特定多数人に

対して継続的に食事を提供する施設における利用

者の身体の状況、栄養状態、利用の状況等に応じ

た特別の配慮を必要とする給食管理およびこれら

の施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うこ

とを業とする者

管理栄養士の病院での業務内容

(東海中央病院の場合)平成15年まで調理室での盛り付け作業 献立作成と発注書作成

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

● 献立作成・発注書作成

● 入院・外来栄養指導

● 入院・退院食事調整と食札管理

● 調理室での特別食(糖尿病や透析、腎不全、心臓病など)の調理、盛り付け作業

● 入院時食事療養Ⅰに関する書類作成

調理師と同じような作業をし、ベッドサイドへ行くことはなかった調理師と同じような作業をし、ベッドサイドへ行くことはなかった調理師と同じような作業をし、ベッドサイドへ行くことはなかった調理師と同じような作業をし、ベッドサイドへ行くことはなかった

管理栄養士の病院での業務内容

(東海中央病院の場合)平成16年以降産婦人科病棟の看護師との連携(受け持ち病棟) 多職種との連携(薬剤師)

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

● 献立作成・発注書作成

● 入院・外来栄養指導

● 入院・退院食事調整と食札管理

● 調理室での特別食(糖尿病や透析、腎

不全、心臓病など)の調理、盛り付け作業

● 入院時食事療養Ⅰに関する書類作成

さらに業務が増えるさらに業務が増えるさらに業務が増えるさらに業務が増える ● NSTでの多職種との連携

● 病棟患者の個別対応食

● PEG、PEJの栄養管理

● ドック受診者への栄養指導

特定保健指導

● 栄養管理実施加算書類作成

● 退院時栄養サマリー作成調理業務から多職種での患者個々の栄養管理へ調理業務から多職種での患者個々の栄養管理へ調理業務から多職種での患者個々の栄養管理へ調理業務から多職種での患者個々の栄養管理へ

小腸の働き小腸の働き小腸の働き小腸の働き

小腸は、人が食べたものを消化、吸収する臓器、

血管に取り込み肝臓へ栄養分を送る働きをする

小腸には絨毛という突起があり、吸収された炭水化物や

タンパク質などの栄養分を受け取ることができるようになっている

バクテリアルトランスロケーションバクテリアルトランスロケーションバクテリアルトランスロケーションバクテリアルトランスロケーション腸管内細菌が粘膜バリアを通過して、体内に移行

しかし絶食期間が長いため腸管を使用せず、静脈栄養での管理を継

続すると、絨毛が萎縮する、そうなると?

小腸の絨毛

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

する状態、多臓器不全の引き金になる

これを防ぐために早期経腸栄養が推奨されている。

「腸を使えるうちに早く使え!」「腸を使えるうちに早く使え!」「腸を使えるうちに早く使え!」「腸を使えるうちに早く使え!」

☆ 入院患者で栄養不良者は多い。栄養管理を行うことにより入院患者で栄養不良者は多い。栄養管理を行うことにより入院患者で栄養不良者は多い。栄養管理を行うことにより入院患者で栄養不良者は多い。栄養管理を行うことにより

�予後の改善、入院期間の短縮が期待される

�疾患の治療を補助し治療費を削減する

原疾患に対する治療効果の改善を得るためには、全患者を対象にした

栄養管理システムが必要→ NSTや栄養管理実施加算算定

チーム医療と管理栄養士の役割

チーム医療とは、患者の疾病治療を目的に、各

専門職が協力して医療にあたることである。

栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)

医師医師医師医師

東海中央病院 NST

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

患者

看護師看護師看護師看護師

管理栄養士管理栄養士管理栄養士管理栄養士

薬剤師薬剤師薬剤師薬剤師

言語聴覚士言語聴覚士言語聴覚士言語聴覚士

臨床検査技師臨床検査技師臨床検査技師臨床検査技師

当クリニックの方針

希望する在宅生活を安心して送れるように

支援させていただきます。

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

管理栄養士は果たして在宅生活

にどのような支援ができるのだろう

か?

在宅栄養管理でどのような問題点が考えられるか?

病名病名病名病名 栄養に関しての問題点栄養に関しての問題点栄養に関しての問題点栄養に関しての問題点

心不全

脳梗塞

総合病院からの栄養情報提供書には、栄養不足、塩分不足な

どがある場合は対処するよう書いてあるが、家人の自己流になり

日により栄養剤の投与量が異なることもあり、1日の量である

1000kcalを投与されていない日がある。今後の評価は在宅医に

委ねられているため総合病院のような継続した栄養の評価を行

えない。 ツインライン1日1000ml投与 (1000kcal)

2009年11月16日 愛医総研「ROC意見交換会」

※ 在宅では、胃ろう投与プランの見直しがなされるシステムが

ない。また在宅医の胃ろう、栄養管理に関しての意識が低い。

慢性腎不全

(透析離脱)

心不全

退院時に病院で慢性腎不全の食事指導を受けたが、退院後食

事療養を始めても、自宅では何を食べたらよいのか、献立をどう

したらよいのかわからない。相談する場所がなく不安になる。

また腎臓内科と循環器内科の主治医で1日の水分量の設定が異

なりどちらにすればよいのかわからない。

※ 病院での1回だけでの食事指導では理解できない。実践的な

食事指導を望んでいる。また相談できる管理栄養士がいない。

居宅療養者における栄養障害の背景

1. 食欲が低下している

2. 生活習慣病を抱えている

3. 嚥下障害があり経腸栄養剤を使用している

4. 嚥下訓練の実施が必要

5. 拒食や過食をする

6. 便秘、脱水、褥瘡がみられる

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

6. 便秘、脱水、褥瘡がみられる

7. 食欲不振を訴えるターミナル期

8. 介護環境、生活環境の問題

居宅療養者の代表的な問題症状

○ 低栄養

○ 嚥下障害

○ 便秘

○ 下痢

○ 脱水症

○ 褥瘡

在宅での栄養ケアのすすめかた 日本医療企画

適切な栄養療法と目的

� 個人の身体の状況

� 栄養状態の把握

� 多職種との連携

� 検査・服薬・リハビリテーションなど栄養以

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

� 検査・服薬・リハビリテーションなど栄養以

外についても把握

疾病を予防・改善するだけではなく、傷病者

の日常生活動作を回復させ、生活の質を向

上させることも重要である。

栄養ケアマネジメントの意義

• 栄養ケアマネジメントとは?

傷病者の回復を促進するために、栄養アセ

スメント、栄養ケアプランの作成、実施、栄養

療法、栄養教育、モニタリング、再評価・修正

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

療法、栄養教育、モニタリング、再評価・修正

を通して、最適栄養管理を行うための一連の

システム

多職種との連携を図りながら、効果的な治

療、効率の良い栄養ケアマネジメントを行う

訪問栄養食事指導の種類

☐ 介護保険居宅療養管理指導

算定額:530点

☐ 医療保険在宅患者訪問栄養食事指導

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

☐ 医療保険在宅患者訪問栄養食事指導

算定額

在宅療養者:530点

居住系施設入居者:450点

訪問栄養食事指導の流れ

訪問栄養指導を行うには、主治医の指示が必要

「指示書」を発行してもらう

(1)))) 医療保険の場合医療保険の場合医療保険の場合医療保険の場合

主治医が指示する主な項目は下記の通り

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

・熱量、熱量構成

・たんぱく質量

・脂質量、脂質構成(不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸)

((((2)))) 介護保険の場合介護保険の場合介護保険の場合介護保険の場合

主治医は栄養ケア計画の作成に共同し、その計画に基づいて支持等

を行うこととされている。医療保険の場合と異なり、指示する項目は特に

決められていない。

在宅栄養指導での主な実施事項

1. 栄養アセスメント

2. 必要栄養・水分量を確保するための助言

3. 市販栄養補助食品の紹介

4. 経管栄養管理

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5. 慢性疾患食事療法(糖尿病や腎不全等)

6. 調理指導

7. 食環境の調整

8. 嚥下困難な患者の食事指導

9. ターミナル期の栄養ケア

介護保険居宅療養管理指導の流れ

1.栄養スクリーニング

利用者の低栄養状態のリスクを把握する。

低栄養状態のリスクがある患者は栄養アセスメントを行う。

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

2.栄養アセスメント

医師、看護師と共同して、利用者ごとの栄養補給に関する

事項、栄養食事相談に関する事項、解決すべき事項に対し、関

連職種が共同して取り組むべき事項を記載した栄養ケア計画

を作成すること。

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

3.栄養指導

栄養ケア計画書を本人または家族に内容を確認し

てもらい、同意を得る。

食事指導が必要な方は、栄養ケア計画に基づいて

指導を行う。自宅で調理指導が必要な場合は調理を

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

指導を行う。自宅で調理指導が必要な場合は調理を

実際に行うこともある。

指導終了後、医師、ケアマネジャーに報告する。

4.患者さんへの今後についての報告

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

事例1

男性 87歳

病歴:脱水、慢性心不全、肺気腫、脳梗塞

平成16年元旦に脳梗塞発症。ここ数年、心

不全増悪などで入退院を繰り返し、ADLは徐

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

ADL

々に低下傾向である。今年の夏から体調不良

状態が続いており、8月中旬から9月中旬にか

けて脱水状態で総合病院へ入院。

入院後、対症療法のみで速やかに状態は改

善した。

スクリーニング

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

アセスメント

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アセスメント

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患者さんへの説明で使用したパンフレット

プラン提案(患者さんへの説明)

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

2回目栄養指導(10月中旬)

• 飲み物にとろみ剤を使用することで誤嚥す

ることなく、ムセなく飲むことができた。

ご本人の「炒飯が食べたい」と要望があり、

奥様に作り方を指導した。

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

しかし、その後吐いてしまい、次回の栄養指

導が一時中止となった。

3回目栄養指導(11月上旬)

• 食事摂取量は少ないが、コーラ・ソーダ―は

好んで摂取している。テレビを見て「ぎょうざを

たべたい」

• 奥様より「ぎょうざを食べさせたい」と依頼が

あった。

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

あった。

• 「久しぶりに食べた。美味しかった」

今回の事例のまとめ

1. 本事例の患者は慢性心不全末期の患者であり、一

時期は重篤な状態まで陥ったが、その中で、本人の

希望の食事を提供することができた。

2. 水分摂取をする際に、ムセることが多く、奥様にとろ

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

2. 水分摂取をする際に、ムセることが多く、奥様にとろ

み剤の使用を直接指導し、定期的に確認することで、

誤嚥することなく水分摂取が可能となった。

3. 本事例は、栄養状態の改善を目指すことより、患者

や家族のQOLを重視することが優先であり、患者の

希望に添えた栄養指導であったと考えられる。

在宅医療における管理栄養士

の今後の課題

1. 栄養管理の専門性を地域に広める

2. 利用者の生活全体を捉え、個々にあった栄養ケアを生活の

場を使って提案できる柔軟性を備えること

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

場を使って提案できる柔軟性を備えること

3. クリニックの医師やスタッフ、訪問看護師、ケアマネジャー、

ヘルパーに栄養管理における管理栄養士の役割の重要性を

示す

4. 総合病院の管理栄養士と連携し、栄養ケアプランの情報交

換することで、退院後の患者の栄養管理・QOLの向上に努め

在宅医療栄養サポートチームの役割

チーム医療とは、患者の疾病治療を目的に、各専門

職が協力して医療にあたることである。

在宅栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)

医師医師医師医師看護師看護師看護師看護師

薬剤師薬剤師薬剤師薬剤師

総合在宅医療クリニック総合在宅医療クリニック総合在宅医療クリニック総合在宅医療クリニックNST

2010年11月25日 総合在宅医療クリニック勉強会

患者患者患者患者

家族家族家族家族

管理栄養士管理栄養士管理栄養士管理栄養士

言語聴覚士言語聴覚士言語聴覚士言語聴覚士

事務員事務員事務員事務員

介護福祉士介護福祉士介護福祉士介護福祉士

訪問看護師訪問看護師訪問看護師訪問看護師

ケアマネジャーケアマネジャーケアマネジャーケアマネジャー

理学療法士理学療法士理学療法士理学療法士

ヘルパーヘルパーヘルパーヘルパー

音楽療法士音楽療法士音楽療法士音楽療法士

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