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■ 4か月児健診で実施
ブックスタート・ニュースレターNo.55 (1)
【ブックスタート開始年月】 2004年8月 【対象月齢】 4か月 【年間出生数】 約240人 【実施会場】 4か月児健診 【事務局】 福祉対策課【連携体制】 福祉対策課、図書館、ボランティア
大分県日出町
No.55Jan 2017
「また図書館で会いましょうね!」ブックスタートが終わった親子を、はつらつとした笑顔で送り出すボランティア。最初は少し緊張した様子だった保護者との距離感もいつの間にか縮まり、その場はまるで、ご近所さん同士で会話を楽しんでいるかのような、和やかな雰囲気です。県中部に位置し、大分市や別府市のベッドタウンとして、子育て世代も多く住む大分県日出町では、経験豊富なボランティアの知恵と、担当者の熱意が事業を盛り立てています。
ブックスタートの様子
行ってきました!
◎ こんな工夫も
パックに入れる封筒に赤ちゃんの名前シールを貼り、未配付者を把握します。親子へ声をかける時にも役立ちます。
年 4回発行〔1・4・6・9月〕
赤ちゃんの名前をブックスタート・パックに記載 アンケート結果の活用
6~7か月児の育児相談で、ブックスタートに関するアンケートを実施。集計結果は、年1回関係者が集まる研修会で共有します。保護者からの意見は、事業の見直しに活かしています。
身体測定が終わった親子を、ブックスタートのコーナーに誘導。診察を受けるまでの待ち時間を有効活用しています。
様々な絵本を紹介するため、手渡す以外の絵本を紹介することもあります。
■ 絵本の体験
←
ひ じ まち
(2) ブックスタート・ニュースレターNo.55
◎絵本を通した“対話”の積み重ねは 赤ちゃんの大きな糧になる
お話をうかがいました !インタビュー
図書館は、事務局である福祉対策課と密に連絡を取りながら、ボランティアの育成やブックスタート会場で親子に接する業務を担当しています。私はブックスタートの担当になって2年目、水口さんは1年目で、お互いにわからないことが出てくる時もありますが、その都度、確認します。例えば予算のことでわからない用語があると、私はあやふやなままにせず「それって何ですか?」と正直に尋ねるんです。そうすると、水口さんは
福祉対策課保健師 水口 祥子さん(事務局担当)
◎赤ちゃんの育ちを一緒に見守る健診でありたい
保護者の声で語りかけることが大切だという子育ての基本は、昔から変わりありません。言葉を話せない赤ちゃんに対して、どう話しかけたらいいのかわからないというお父さんやお母さん、そしておじいちゃんやおばあちゃんにとって、絵本は、いつでもどこでもほんの少しの時間でも、赤ちゃんに言葉をかける道具になります。また、ブックスタートでボランティアさんが読みきかせをしていると、赤ちゃんはその声をよく聞いてくれます。大好きな人の声で読んでもらえば、赤ちゃんはとても安心するし、それは保護者にとってもリラックスできる時間になるのではと思うんです。
赤ちゃんにとって、絵本は“対話”の道具。読んでくれて、自分の気持ちを受け止めてくれる相手があってこそ成立するものです。そうした対話の積み重ねは、やがてその子が大人になって社会で生きていく上での、大きな糧になるのではないかと感じています。
健診は、赤ちゃんの成長を確認する場であるためか、「何か言われないだろうか」と身構えている保護者もいます。また、子育てに不安を抱えつつも、誰にも相談できないままに日々を過ごしている方もいます。でも健診は、スタッフと保護者が一緒に、赤ちゃんの健やかな育ちを確かめる場、保護者が子育てを楽しめるようなお手伝いをする場でありたいと考えています。
ブックスタートでは、ボランティアさんが地域の先輩ママとして、おおらかに親子と接してくれます。また、自分が親になって初めて読みきかせをする保護者も多い中、目の前で絵本を読んでもらえるので、どのように読んだらいいのかということを、実体験として知ることができます。ブックスタートは、健診がよりよい場になるためにも、必要な事業だと感じています。
図書館司書 工藤 美貴代さん
◎お互いの心を開けば連携できる
ブックスタート・ニュースレターNo.55(3)
「赤ちゃんが成長して親になった時にも、絵本を介した我が子とのふれ合いを楽しんでほしい。だからこそ、ブックスタートをこれからも続けていきたいです」と話してくださった水口さん。いつの時代も変わらない赤ちゃんへの語りかけの大切さを、事業開始当初から伝え続けてきた日出町。その思いは、これからも変わらず親子の元へ届けられていくのだと感じました。 (出原)
誠実に答えてくれます。福祉対策課で検討することになった課題についての結果報告など、事業に関する情報提供も必ずしてくれるので、私もブックスタートを充実させるために、積極的に動くことができます。
実は以前、ボランティアさんとの情報共有があまりうまくいかず、会場で手伝ってもらっているだけのような状況になっていた時期がありました。でもそれでは、ボランティアをしていても、楽しくないのではと思ったんです。今は、経験豊富な皆さんの意見をこまめに聞いて、親子に手渡す絵本を決めたり、アンケートの回答を共有したりしています。絵本を一緒に選べば、気持ちを込めて保護者に紹介することができると思いますし、「嬉しかった」といった保護者からのコメントを読めば、これからも続けようと思えるのではと考えています。ボランティアさんの立場に立って考え、できることは実行するようにしています。
◎絵本を読むことが保護者の心配の種にならないように
大人には、本とは最初のページから順を追って読むものという“思い込み”がありますね。でも赤ちゃんには、そんな認識はありません。だから、どのページから始めてもいいし、好きなようにめくらせていいと思います。以前、そういう話をある保護者にしたら、「なんだ~よかったんだ~」とホッとされたことがありました。その人は「自分は最初から読もうとするのに、子どもがすぐにページをめくってしまって、全く言うことを聞かない。うちの子は一体どうなってしまうのだろう」と心配していたそうです。そんな不安やとまどいを保護者が感じることのないよう、ブックスタートでも赤ちゃんの絵本との関わり方を、うまく伝えられたらと思っています。
フォローアップの取り組み
赤ちゃんへの語りかけは、子どもの成長過程において大切なものであり続けるという思いから、ブックスタートだけでなく様々な母子保健事業に、絵本の読みきかせを取り入れています。
取材を終えて絵本を取り入れた母子保健事業を継続的に展開
3歳児健診
⇒
1歳半健診
⇒
6〜7か月児育児相談
⇒
4か月児健診
⇒
両親学級
絵本の読みきかせ※
ブックスタート
絵本の読みきかせ→
→
※両親学級では、保護者と同世代のボランティアグループにも協力してもらい、若い世代の人たちが一緒にわらべうたを楽しむ機会も設けています。
(4) ブックスタート・ニュースレターNo.55
「親子への読み方のコツは?」「絵本の楽しみ方をわかりやすく説明したい!」
集団に対して行うおはなし会とは異なり、一組一組の親子に向き合って絵本を読むブックスタート。今回の特集は、そんな“ブックスタートでの読みきかせ”に関して寄せられる質問について、経験豊富な司書の方々にアドバイスをいただきました。
赤ちゃんに読むときのコツは?
絵本は、絵をじっくり見ながら、言葉の響きも楽しむもの。だから、ページをめくったらすぐに読み始めるのではなく、まずは絵を楽しめるように一呼吸おいてから読むといいでしょう。ページのめくり方もゆったりと。そして、赤ちゃんの呼吸に合わせながらゆっくりと読んであげてください。また、「淡々と読むように」と言われたことがある人もいるかもしれませんが、それは平常心で読むという意味であって、無表情で読むということではありません。ブックスタートでの読みきかせを真似て家で読み始める保護者もいるので、ぜひ楽しく読んでほしいと思います。( 代田さん )
赤ちゃんの呼吸に合わせながら、ゆっくり、楽しく
多くの人は赤ちゃんに話しかける時、自然に声のトーンが上がります。だから、あえて声の調子などを意識する必要はありません。赤ちゃんと一緒
意識しすぎず自然に
赤ちゃんが気に入ったページがあればくりかえすなど、ブックスタートでの読みきかせは、目の前の赤ちゃんにあわせて読むことが大事です。赤ちゃんの様子次第といってもよく、必ず絵本を全部読み通す必要はありません。あえてコツをあげるとしたら、月齢の低い赤ちゃんは視力がしっかりしていない状態なので、絵本を少し近づけて開くなどの配慮が必要だと思います。(永島さん)
目の前の赤ちゃんの様子をみて
大阪府豊中市
ベテラン司書さんに聞きました!
<回答者> 氏名五十音順
A.
A.
A.
に絵本のひとときを楽しもうという気持ちで、読んでもらえればと思います。( 下司さん )
Q.
特 集特 集 1 特 集
ブックスタートでの読みきかせ Q&A
げ し下司 満里子さん
滋賀県長浜市立長浜図書館代田 知子さん
埼玉県三芳町立図書館永島 緑さん
大阪府豊中市立岡町図書館小林 恭子さん
神奈川県藤沢市総合市民図書館
ブックスタート・ニュースレターNo.55 (5)
( 次ページにつづく→)
読みきかせがなかなかうまくできません……
読み手が“うまく読もう”と意識してしまうと、保護者も“読み方”に気を取られてしまい、“親子でコミュニケーションを”というブックスタートのメッセージが届かないかもしれません。また、保護者の中には絵本に関心のない人もいます。そうした方が「自分には読みきかせは難しい」と思うことのないよう、保護者にも楽しんでもらうことも大切です。「絵本を読みながら、赤ちゃんとお父さんお母さんが楽しく過ごせたらいいんですよ」ということが伝えられればいいのではないでしょうか。(永島さん)
読み方にこだわらなくてもいい
藤沢市では、ボランティアの方に「うまく読まなければと気負う必要はありません」とお伝えしています。保護者も「テクニックが必要で難しそう」と感じてしまうと、読みきかせに対するハードルが上がってしまうかもしれません。親子のふれあいの大切さや、そのために気軽に楽しめる絵本があると知ってもらうことが事業の目的です。スタッフの赤ちゃんをいとおしく思う気持ちが伝わること、それが一番大事だと思います。(小林さん)
赤ちゃんを思う気持ちが伝われば大丈夫
Q.
「赤い色が好きだったみたいですね」「私の口元を見ながら聞いていましたね」など、絵本を読んだことによって生まれた赤ちゃんの変化を、言葉にして保護者に伝えています。それは保護者にとって嬉しい発見でもあるようで、その嬉しさや驚きが、ご家庭での絵本の時間につながるのではないでしょうか。また、ブックスタートで伝えたいのは、絵本そのものの魅力や読みきかせの効果では
絵本を読んだ時の 赤ちゃんの様子や生活の中で どんな風に絵本を楽しめるのかを伝える
赤ちゃんと絵本を楽しめることをわかりやすく説明するには?
読みきかせの時、「お父さんお母さんも一緒に聞いてくださいね」「絵本を読んでもらうって、大人でも楽しいですよ」などと伝えてから絵本を開きます。赤ちゃんの反応を見てもらうだけでなく、保護者自身にも絵本を読んでもらう心地良さを味わってもらうと、より絵本を開くきっかけになるのではないでしょうか。また、健診でブックスタートを実施している場合、気持ちがそわそわしている保護者もいます。そんな時に早い口調で説明をされては落ち着きません。イライラするほど遅いのは問題ですが、早口な人は、間を取ることを心がけるといいでしょう。(代田さん)
保護者自身に心地良さを味わってもらう
豊中市では、保護者への説明の中で、活動の趣旨(図書館を含めた市や地域全体で子育てを応援していること、絵本があると子育てが楽しくなること、図書館等に赤ちゃんと気軽に来てほしいということ)を伝えていますが、読みきかせについてあまりくわしく説明はしていません。絵本の時間の楽しさは言葉で伝えるより、実際にその場で体験してもらうことで、自然に伝わるものだと思います。(永島さん)
読みきかせの体験を通して伝える
神奈川県藤沢市
Q.
A.
A.
A.
なく、絵本とともにある生活の豊かさや、絵本は気楽に楽しめるものだということです。実際の読みきかせの体験や、「赤ちゃんをお膝にのせて、ゆらしながら読んでも楽しめますよ」といった説明を通して、生活の中で絵本をどんな風に楽しめるのかを伝えられればと思います。(下司さん)
A.
A.
埼玉県三芳町
(6) ブックスタート・ニュースレターNo.54 ブックスタート・ニュースレターNo.55 (7)
「2016年度ブックスタート研修会 in 秋田」開催報告
ブックスタート事業は2005年7月に開始しました。始めようと思ったきっかけは、当時の職員が、ある日、図書館に来ていた赤ちゃんが泣いてしまい、お母さんが他の来館者の冷ややかな視線を気にして出て行ってしまった様子を見たことでした。その職員は悲しい気持ちになり、地域の中で人と人が交流し、多くの人が赤ちゃんを見ると自然と笑顔になるという本来のあり方を取り戻したいと思ったそうです。美郷町のブックスタート事業の最終目標は、小さな頃からの気持ちのこもった言葉のやりとりを通じて、人と向き合って話ができ、相手を思いやることができる人を育てること、さらにはそうした人が増えていくことで、よりよい町をつくることです。赤ちゃん連れでも気軽に出かけられる環境を作り、色々な人が関わって、みんなが幸せになれる世の中になってほしい。そんな願いがこの事業に込められています。
7か月児健診で行うブックスタートでは、学友館 の職員が、事業の趣旨を伝えながら絵本が入ったパックを手渡します。また、待ち時間には、民生児童委員やボランティアが、親子に絵本の読みきかせをしたり、赤ちゃんをあやし
たりします。あわせて、子育て支援センターや民生児童委員など、子育てに困った時の様々な相談先が地域の中にあることも伝えます。親子が健診を欠席した場合は、保健センターから、次にいつ健診を受診するかの情報をもらっているので、確実にパックを手渡せています。このように、地域の色々な立場の人が事業に関わるのは、地域全体で子育てを応援していることを保護者に感じてもらう狙いもあるからです。今後も、赤ちゃんと対話する喜びや大切さを知ってもらい、保護者が安心して子育てを行えるよう、事業に取り組んでいきたいと思います。
10月12日、秋田県生涯学習センターにてブックスタート研修会を開催。図書館、保健センター、子育て支援課の職員やボランティアなど、県内外から56名が集いました。午前プログラムでは、NPOブックスタートからの基本情報などの紹介に続き、秋田県美郷町が事例を発表。午後プログラムでは、参加者が小グループに分かれ、お互いの思いや経験を語り合いました。
事業の目標は、人づくり、まちづくり
美郷町の事例発表より
[発表者]教育委員会生涯学習課 美郷町学友館 佐藤 紀公子さん
Q.
地域と行政が一体となって親子を応援
◀美郷町事例発表
午後プログラムの様子▶
もちろん、読みきかせを行い、説明とともにブックスタート・パックをお渡しするのが理想ですが、とても急がれている場合には、「おうちで楽しんでくださいね」「図書館に来てくださいね」とだけ伝えてお渡しすることもあります。パックには趣旨を伝える資料も入れていますし、手渡すことで次につなげることが大切だと考えています。また、中には「今日は時間がないけれど、本当は絵本を読んでもらいたかった」という保護者もいます。そうした方には、「いつでもお待ちしているので、図書館にいらしたら声をかけてくださいね」とお話ししています。(小林さん)
次につなげることを大切に
特 集 研修会報告
会場にやってくる赤ちゃんは、寝ていたり、泣いていたり、読みきかせの最中でも他のことに気を取られたりと様々なので、臨機応変に対応しています。「赤ちゃんは色々なことに興味を持つので、最初から最後まで読めることはあまりないかもしれません。全部読まなくてもいいし、途中から読み始めてもいいんですよ」「読み方に決まりはありませんよ」「今日初めて赤ちゃんと会った私でも、絵本でこんなに楽しい時間が過ごせました。それがいつもそばにいるおうちの人だったら、赤ちゃんにとって、これほどうれしいことはないですよね」などと、状況に応じて伝えています。時には、上のお子さんがいる保護者から「忙しくて絵本を読む時間がない」という話を聞くこともあります。そうした時は「そうですよね」とまずは保護者の気持ちを受け止め、寄り添って話をするようにしています。(下司さん)
臨機応変に保護者の気持ちに寄り添って
保護者が否定的な気持ちにならないような声かけを
親子に接する際、配慮した方がいいことは?Q.
読みきかせの大切さをあまり強調すると、保護者によっては「読まなくちゃ」とプレッシャーに感じてしまう場合があります。また、子どもの発達をとても気にしている保護者もいます。中には、赤ちゃんがあまり興味を示さなかったことに対し「いつもは、ちゃんと聞いているんですけど……」と残念そうに話す方も。そうした場合は、「健診で落ち着かないのかもしれませんね」などと、反応がなかったことを保護者が気にする必要はないことを伝えるようにしています。(小林さん)
保護者が急いでいて時間がない時は?Q.
A.
A.
赤ちゃんが泣いてしまった!どうすればいい?Q.
おだやかな声で読んでみて。でも、泣き止まないときは無理せずに
「泣いちゃったわね。でもすぐに読み終わるからお母さんに読むわね。あやしながら聞いてね」などと声をかけて読むうちに、ゆったりした口調に赤ちゃんが安心するのか、泣きやむことも。でも、ずっと大泣きしているような場合には無理はせず、簡単な説明をして「おうちで読んでみてね」と伝えるようにしています。また、声が大きいと、ビックリして赤ちゃんが泣いてしまうことも。顔を近づけ、大きすぎない声で明るくおだやかに話しかけてみてください。(代田さん)
A.
A.
滋賀県長浜市
ブックスタート・ハンドブック〔第 6 版〕(p46-48)でも、ブックスタートでの読みきかせや対応についてのQ&Aをご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
~ 質疑応答より ~
保健師さんに質問です。保護者と話す中で、ブックスタートに関する話題が出ることはありますか?
回答者: 福祉保健課 保健師 中野 晶子さん
赤ちゃん訪問などに携わる中で、ブックスタートをとても楽しみにしている保護者が多くなったと感じています。上の子がいる保護者の中には、「次の健診ではブックスタートがあるんですよね」と、嬉しそうに話す方もいます。開始から10年以上が経って、事業がかなり浸透してきたのではないでしょうか。
A.
※町立図書館と町立資料館の複合施設
※
埼玉県三芳町
(6) ブックスタート・ニュースレターNo.54 ブックスタート・ニュースレターNo.55 (7)
「2016年度ブックスタート研修会 in 秋田」開催報告
ブックスタート事業は2005年7月に開始しました。始めようと思ったきっかけは、当時の職員が、ある日、図書館に来ていた赤ちゃんが泣いてしまい、お母さんが他の来館者の冷ややかな視線を気にして出て行ってしまった様子を見たことでした。その職員は悲しい気持ちになり、地域の中で人と人が交流し、多くの人が赤ちゃんを見ると自然と笑顔になるという本来のあり方を取り戻したいと思ったそうです。美郷町のブックスタート事業の最終目標は、小さな頃からの気持ちのこもった言葉のやりとりを通じて、人と向き合って話ができ、相手を思いやることができる人を育てること、さらにはそうした人が増えていくことで、よりよい町をつくることです。赤ちゃん連れでも気軽に出かけられる環境を作り、色々な人が関わって、みんなが幸せになれる世の中になってほしい。そんな願いがこの事業に込められています。
7か月児健診で行うブックスタートでは、学友館 の職員が、事業の趣旨を伝えながら絵本が入ったパックを手渡します。また、待ち時間には、民生児童委員やボランティアが、親子に絵本の読みきかせをしたり、赤ちゃんをあやし
たりします。あわせて、子育て支援センターや民生児童委員など、子育てに困った時の様々な相談先が地域の中にあることも伝えます。親子が健診を欠席した場合は、保健センターから、次にいつ健診を受診するかの情報をもらっているので、確実にパックを手渡せています。このように、地域の色々な立場の人が事業に関わるのは、地域全体で子育てを応援していることを保護者に感じてもらう狙いもあるからです。今後も、赤ちゃんと対話する喜びや大切さを知ってもらい、保護者が安心して子育てを行えるよう、事業に取り組んでいきたいと思います。
10月12日、秋田県生涯学習センターにてブックスタート研修会を開催。図書館、保健センター、子育て支援課の職員やボランティアなど、県内外から56名が集いました。午前プログラムでは、NPOブックスタートからの基本情報などの紹介に続き、秋田県美郷町が事例を発表。午後プログラムでは、参加者が小グループに分かれ、お互いの思いや経験を語り合いました。
事業の目標は、人づくり、まちづくり
美郷町の事例発表より
[発表者]教育委員会生涯学習課 美郷町学友館 佐藤 紀公子さん
Q.
地域と行政が一体となって親子を応援
◀美郷町事例発表
午後プログラムの様子▶
もちろん、読みきかせを行い、説明とともにブックスタート・パックをお渡しするのが理想ですが、とても急がれている場合には、「おうちで楽しんでくださいね」「図書館に来てくださいね」とだけ伝えてお渡しすることもあります。パックには趣旨を伝える資料も入れていますし、手渡すことで次につなげることが大切だと考えています。また、中には「今日は時間がないけれど、本当は絵本を読んでもらいたかった」という保護者もいます。そうした方には、「いつでもお待ちしているので、図書館にいらしたら声をかけてくださいね」とお話ししています。(小林さん)
次につなげることを大切に
特 集 研修会報告
会場にやってくる赤ちゃんは、寝ていたり、泣いていたり、読みきかせの最中でも他のことに気を取られたりと様々なので、臨機応変に対応しています。「赤ちゃんは色々なことに興味を持つので、最初から最後まで読めることはあまりないかもしれません。全部読まなくてもいいし、途中から読み始めてもいいんですよ」「読み方に決まりはありませんよ」「今日初めて赤ちゃんと会った私でも、絵本でこんなに楽しい時間が過ごせました。それがいつもそばにいるおうちの人だったら、赤ちゃんにとって、これほどうれしいことはないですよね」などと、状況に応じて伝えています。時には、上のお子さんがいる保護者から「忙しくて絵本を読む時間がない」という話を聞くこともあります。そうした時は「そうですよね」とまずは保護者の気持ちを受け止め、寄り添って話をするようにしています。(下司さん)
臨機応変に保護者の気持ちに寄り添って
保護者が否定的な気持ちにならないような声かけを
親子に接する際、配慮した方がいいことは?Q.
読みきかせの大切さをあまり強調すると、保護者によっては「読まなくちゃ」とプレッシャーに感じてしまう場合があります。また、子どもの発達をとても気にしている保護者もいます。中には、赤ちゃんがあまり興味を示さなかったことに対し「いつもは、ちゃんと聞いているんですけど……」と残念そうに話す方も。そうした場合は、「健診で落ち着かないのかもしれませんね」などと、反応がなかったことを保護者が気にする必要はないことを伝えるようにしています。(小林さん)
保護者が急いでいて時間がない時は?Q.
A.
A.
赤ちゃんが泣いてしまった!どうすればいい?Q.
おだやかな声で読んでみて。でも、泣き止まないときは無理せずに
「泣いちゃったわね。でもすぐに読み終わるからお母さんに読むわね。あやしながら聞いてね」などと声をかけて読むうちに、ゆったりした口調に赤ちゃんが安心するのか、泣きやむことも。でも、ずっと大泣きしているような場合には無理はせず、簡単な説明をして「おうちで読んでみてね」と伝えるようにしています。また、声が大きいと、ビックリして赤ちゃんが泣いてしまうことも。顔を近づけ、大きすぎない声で明るくおだやかに話しかけてみてください。(代田さん)
A.
A.
滋賀県長浜市
ブックスタート・ハンドブック〔第 6 版〕(p46-48)でも、ブックスタートでの読みきかせや対応についてのQ&Aをご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。
~ 質疑応答より ~
保健師さんに質問です。保護者と話す中で、ブックスタートに関する話題が出ることはありますか?
回答者: 福祉保健課 保健師 中野 晶子さん
赤ちゃん訪問などに携わる中で、ブックスタートをとても楽しみにしている保護者が多くなったと感じています。上の子がいる保護者の中には、「次の健診ではブックスタートがあるんですよね」と、嬉しそうに話す方もいます。開始から10年以上が経って、事業がかなり浸透してきたのではないでしょうか。
A.
※町立図書館と町立資料館の複合施設
※
コラム
すべての子どもに楽しい雰囲気の中で自分に向き合うまなざしを!
(8) ブックスタート・ニュースレターNo.55
別冊ブックスタート・ハンドブック『障がいのある方への対応を考えるために~視覚・聴覚の障がいを中心に~』作成では、貴重な学びをさせていただきました。この冊子で私が担当したコラム では、配慮が必要な子どもたちや保護者に、どんな本が必要か、あるいは、選書の際に心がけることは何か、どちらかというと「本」について向き合って考えてみました。けれど、それだけがすべての子どもたちに本を手渡す時に大事なことなのではなく、そこにいる人たちが醸し出す雰囲気や作り出す環境も重要でしょう。
ブックスタート会場で見られる、はじけるような赤ちゃんの笑顔。それは本を手にしたスタッフたちが、楽しそうに、うれしそうに、にこにこと自分にまなざしを向けてくれる、その雰囲気が会場全体を包み込むからでしょう。そしてその赤ちゃんの笑顔が保護者も笑顔にします。その保護者の笑顔こそが、ブックスタートの真髄でしょう。どうぞこの雰囲気のなかに、本を読むことに不安や困難がある保護者や、子育てに困難さを感じている親子も、包み込んでください。本の向こうに自分に注がれる笑顔があれば、赤ちゃんにたとえどんな障害があっても、本が心地よいひとときを作り出してくれるでしょう。赤ちゃんにとっては絵本そのものと、それを読んでくれる人の笑顔や声やまなざしは、それ全体がひとつのまとまったものなのではないかと思います。
私は母子保健フィールドの心理相談員で、少し発達に心配のあるお子さんたちのグループ指導をする時があり
ます。絵本や紙芝居の時間が必ずあります。落ち着かなかったり、人にあまり関心がなかったり、一人が走り回りだすと、一緒になって走り出す子が何人も現れたり……いろいろなお子さんがいるのですが、あることを心掛けると、みな絵本に向いてくれます。それは、その場にいる大人全員で、その絵本を楽しむ環境や雰囲気を作ること。その時は他のことをしないように、スタッフ全員で力をあわせます。みんなで楽しく読みあえた時、とても幸せな気持ちになります。その絵本もそこに一緒にいた人たちも一層好きになります。
赤ちゃんの時に、障害がはっきりわかることは多くは ありません。赤ちゃん時代に大事なことは、赤ちゃんの側に何があろうと、赤ちゃんが人からの応答的なかかわりを通して、人への信頼感・安心感を持つことです。親の側の障害で、かかわりが難しい場合もあるでしょう。かかわり方が、モデルで示せる絵本の読みあいは、そういう親にも具体的なかかわり方のヒントになることもあります。 どんな場合でも、赤ちゃんと保護者が、お互いのまなざしを感じ、心を通い合わせる絵本の読みあいは、よい親子の関係への、副作用のない万能薬のようなものではないかと思います。そのことへの応援をぜひブックスタートが担っていってほしいと願います。
※
訪問記録
視覚に障がいのある方に対応するために
7日 京都府福知山市12日 ブックスタート研修会in秋田
9月
10月
15日 埼玉県川越市 28日 愛知県あま市
20日 大分県日出町
22日 長野県辰野町24日 岩手県北上市
11月 29日 女子美術大学 (東京都杉並区)
5日 東京都武蔵野市 8日 兵庫県明石市
12月 16日 群馬県大泉町22日 千葉県千葉市
※『障がいのある方への対応を考えるために~視覚・聴覚の障がいを中心に~』(2016年3月発行/編者 NPOブックスタート/ 監修 撹上久子) P.31コラム「絵本の“ユニバーサルな力”が赤ちゃんの楽しみを引き出す」
臨床発達心理士日本国際児童図書評議会(JBBY)
世界のバリアフリー絵本展実行委員長
撹上 久子かくあげ
事務局からのお知らせ
すでに購入されている絵本の「てんやく絵本」への交換や、『てんじつきさわるえほん じゃあじゃあびりびり』の購入ができます。ブックスタートで視覚に障がいのある赤ちゃんや保護者に手渡す絵本として、ご活用ください。
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