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野辺山45m電波望遠鏡による分子雲サーベイ
我々は野辺山45m電波望遠鏡およびマルチビーム受信機BEARSを用いて12CO(J=1-‐0)輝線のサーベイを行い、その観測から銀河系外縁部における分子雲のリストを作成してCO-‐to-‐H2変換係数(XCO)を求めた。XCOは銀河系半径の増加とともに大きくなるという主張 (Arimoto et al. 1996)があるが銀河系半径R=11kpc程度までしか求められておらず、それ以遠でも動径変化が見られるのかは明らかでない。そこで(l, b)=(212°.5 -‐ 214°.0, −0°.25 -‐ 0°.25)の領域をOTF観測し、これにより得られた3次元マップからCLUMPFIND (Williams et al. 1994)を使用して分子雲のリストを作成した。それにより求めたサイズと線幅からビリアル質量を計算し、それと分子雲の積分強度を用いてXCOを得た結果、Arimoto et al. (1996)の結果と連続的に銀河系半径とともに大きくなる傾向があることがわかった。また金属量との関係はlog10(XCO) = −1.0(12+log10(O/H))+28.95となった。
松尾 光洋、中西 裕之 (鹿児島大学)、NOGS観測チーム
ABSTRACT
分子雲の成分: H2 71%, He 27%, その他 2% 分子雲は温度が低く、H2は電磁波を放射しない →COの強度から水素分子の密度に換算するXCOは重要かつ基本的なパラメーター XCOとは上式のように、水素分子の柱密度を12CO(J=1-‐0)の積分強度で割ったものである。 Arimoto et al. (1996)によると、銀河系中心からの距離が 大きくなるとXCOも大きくなっているが、 11kpc以遠でも 同様の傾向が 見られるのかは 明らかではない (図1)。
1. Introduc[on
Nobeyama Outer Galaxy Survey(NOGS) 観測周波数:115GHz 12CO(J=1-‐0) 観測日:2007年1月 アンテナ:野辺山45m電波望遠鏡 受信機:BEARS,AC45 観測領域:l=212.5~214°,b=-‐0.25~0.25° 観測モード:On the Fly(OTF) 空間分解能:15” 速度分解能:1.0 km/s 速度幅: -‐20~120 km/s 感度: 0.7 K/(km/s)
2. Observa[on data
CLUMPFIND(Williams et al. 1994)を使って分子雲のリストを作成 -‐ Lowest contour level = 3.5K, Contour increment = 3.5K 距離は運動学的距離により算出 -‐ R0 = 8kpc, θ0=217km/s (Dehnen & Binney 1998) ビリアル質量はSolomon et al. (1987)より計算 -‐ (fp=2.9, G=1/232)
3. Methods
・銀河中心からの距離に対する分子雲の数 (図3) 全部で58天体検出。 銀河系中心からの距離が9.5, 11.5kpc に分子雲が多い。 →Local arm, Perseus armに付随 14.5kpc, 15kpcにも分子雲が存在。 →Outer armの存在も示唆 ・サイズ線幅関係 (図4) 我々の結果とSolomon et al. (1987)の結果→ 我々の結果は比較的小さいサイズの分子雲。 Solomon et al. (1987)の結果と連続したサイズ 線幅関係が見られる。 直線は全てでの最小二乗法フィット -‐ σ=1.3S0.28 ・XCOの計算 (図5) ビリアル質量と水素分子の個数から 得る質量が等しいとしてXCOを計算
4. Results & Discussion
銀河系外縁部におけるCO-to-H2変換係数の算出松尾 光洋、中西 裕之、田中 亜矢子、他観測チーム
鹿児島大学 理工学研究科 物理・宇宙専攻
Abstract
我々は野辺山 45m電波望遠鏡を用いた 12CO(J=1–0)観測データとASTE10m電波望遠鏡を用いた 12CO(J=3–2)の観測データを使って、CO-to-H2 変換係数 (XCO)を求めた。これまでXCOは銀河系中心距離 11kpcより内側で銀河系半
径とともに大きくなる傾向が見られるが (Arimoto et al. 1996)、銀河系中心距離 11kpc以遠でも同様の傾向が見られるかは明らかでない。そこで我々は銀河系外縁部の分子雲について複数の方法で
XCO を調べ比較した。1つ目の方法は銀河系外縁部 (l, b) = (213!, 0!)方向の分子雲
について 12CO(J=1–0)および 12CO(J=3–2)輝線の解析を行い、分子線解析用のコード RADEX (van der Tak F. F. S. etal. 2007)を用いて水素分子の体積密度、運動温度を決定して、Bonnor-Ebert球モデル (Bonnor 1956, Ebert 1955)でフィットすることにより求めた。2つ目の方法として IDLの clumpfind(Williams et al. 1993)を使ってサイズや線幅を求めてビリアル質量を計算し、XCO を求めた。これらにより銀河系外縁部におけるXCO の値とその動径変化を調べることができた。
1 導入まずはじめに CO-to-H2 変換係数 (XCO)について紹介する。
XCO[cm"2(Kkm/s)"1] =N(H2)I(CO)
(1)
XCO とは式 (1)のように、水素分子の柱密度を 12CO(J =1–0)の強度で割ったものである。分子雲では温度が低く、H2は電磁波を放射しないので、CO
の強度から水素の密度を求められるXCOはとても重要である。Arimoto et al. 1996によると、太陽近傍ではXCO = (2.8±
1.6) ! 1020[cm"2(Kkm/s)"1]であり、銀河系中心からの距離が大きくなるとXCO も大きくなっている (Figure 1)。
Figure 1: 銀河系中心からの距離に対するXCO (Arimoto et al.1996)。縦軸はXCO を 1020 で割ったもの。
2 データ紹介2.1 野辺山 45m電波望遠鏡での観測2007年 1月に 12CO(J = 1–0)(115GHz)を l = 212.5"214!, b ="0.25 " 0.25! の領域について On The Fly (OTF)観測した。受信機は BEARSを用い、分光器は AC(32MHz)を使用した。空間分解能は 15”で、速度分解能は 0.16km/sである。また速度幅は"20"120km/sである。Figure 2はこの観測によって得られたデータから作成された 12CO(J = 1–0)のマップである。
Figure 2: 観測データから作成されたチャンネルマップの一部
2.2 ASTEでの観測2010 年 9 月に 12CO(J = 3–2)(345GHz)、13CO(J = 3–2)(330GHz)をASTEで観測した。2.1節での観測結果からピックアップした 6つの分子雲の中心 1点を 12CO(J = 3–2)で観測し、そのうち 3つを同じく中心 1点を 13CO(J = 3–2)で観測した。受信機は CATS345を用い、分光器はMACを使用した。空間分解能は 22”で、速度分解能は 0.11km/sである。そしてデータ解析結果を Table 1に示す。
Table 1: データ解析結果。左から cloud名、銀経、銀緯、視線速度、それぞれの輝線強度を表記している。強度に #が付いているものは受かっておらず rmsの値である。
12CO(J=1–0) 12CO(J=3–2) 13CO(J=3–2)No. l[!] b[!] Vr[km/s] [Kkm/s] [Kkm/s] [Kkm/s]1 213.516 0.192 10 13.0273 0.664 #0.005852 213.787 0.017 25 15.4055 #0.0129 -3 213.733 -0.146 51 16.3474 0.643 #0.01254 213.570 -0.154 10 21.6488 0.492 #0.004665 213.429 0.154 9 9.0680 0.429 -6 213.883 0.017 11 11.9578 #0.0128 -
3 XCOを求める方法3.1 方法 1
観測で得た 12CO(J = 3–2)/12CO(J = 1–0)の強度比を用いてRADEX (van der Tak F. F. S. et al. 2007)を利用することに
1
Arimoto et al. 1996, PASJ, 48, 275 Dehnen & Binney 1998 MNRAS, 294, 429 Rudolph et al. 2006, ApJS, 162, 346 Solomon et al. 1987, ApJ, 319, 730 Williams et al. 1994, ApJ, 428, 693
References
図2: 積分強度図
11kpc以遠でのXCOが求まり、Arimoto et al. (1996)に連続して大きくなる傾向が見られる(図5)。 ・金属量との比較 Rudolph et al. (2006)から R0 = 8kpc, θ0=217km/s で 運動学的距離を再計算→ 得られたXCOと金属量との関係 log10(XCO) = −1.0(12+log10(O/H))+28.95 ※Arimoto et al. (1996)↓ log10(XCO) = −1.0(12+log10(O/H))+29.30
図1 となり、これがビリアル定理と呼ばれる。ここで、Pex = P (R)は分子雲の表面での圧力であり、EGは重力エネルギーである。もし、分子の温度を等温だと仮定し、また分子雲の表面での圧力が小さくて無視できる場合は、
MVT =3kBTS
aGµmH(6)
と質量を得ることが出来る。ここで、MVTをビリアル質量と呼び、kBはボルツマン定数、Tは分子雲の温度、µは平均分子量、mHは水素原子の質量である。また、aは大きさ 1程度の定数であり、分子雲の密度プロファイルによって変化する。さらに Sは分子雲のサイズであり、
S = D tan(!
!l!b) (7)
とし、Dは太陽から分子雲までの距離、!l, !bはそれぞれ銀経、銀緯方向の分子雲の標準偏差である。このように分子雲の質量は温度とサイズで決定することが出来る。そして、線幅 !vと温度には、
!v =8(ln2)kBT
µmH(8)
という関係があるため、式 (6)は、
MVT =3S(!v)2
8(ln2)aG(9)
となる。よって、分子雲の質量をサイズと線幅から求めることが可能である。Solomon et al.
(1987)によると projection factor fpを導入し、分子雲の密度が 1のべき乗の power-law density
だとすると、
fp =1
8(ln2)a= 2.9 (10)
としており、ここでもこの値を採用する。したがって、前節で紹介した CLUMPFINDの結果からビリアル質量を求めることができる。そして、これからビリアル質量を利用しXCOを決定する。そのために次の等式をたてる。
!(XCO " I(CO)"Spix)"mH2 "100
71= MVT (11)
ここで、Spixは 1pixでの面積であり、mH2は水素分子 1個の質量である。最初の合計の項は分子雲にある水素分子の個数を示しており、左辺の 100/71は水素が分子雲中に 71%存在すると考えて全体の質量を考慮した。XCOと Spixは定数なのでこれを整理すると、
XCO =MVT
!(I(CO))"Spix "mH2 " 10071
(12)
となり、XCOを求めることができる。これを用いてそれぞれの分子雲についてXCOを計算した。
4. Results
これまで紹介した観測データからCLUMPFINDを使用して分子雲のリストを作成した。ここで使用したパラメーターは Lowest contour level = 3.5K、Contour increment = 3.5Kで
5
図3
図5
?
1987ApJ...319..730S
図4
MVT: ビリアル質量 (サイズと線幅から計算) Σ(I(CO)): 12CO(J=1-‐0)の積分強度の合計
(CLUMPFINDより) Spix: 1pixの面積 mH2: 水素分子1個の質量 100/71: 全質量を考慮
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