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1
ジエン類の製造および選択的二量化反応
千葉大学大学院 工学研究科学科
共生応用化学専攻
教授 佐藤 智司
2
研究背景
当研究室では、グリーンケミストリーを志向した研究コンセプトを柱として、特に触媒を利用した廃棄物の尐ない高効率な有機物の新合成プロセスの開発、資源・環境プロセスへの応用を目的とした研究を進めている。
1)触媒の長寿命化
2)高圧力場における有機合成反応
3
1)ピナコロンの転位・脱水反応 O
-H2O
Pinacone 2,3-Dimethyl-1,3-butadiene
(DMBDE)
合成香料,合成ゴムの原料
新技術の概要
1,3-Butadiene 4-Vinyl-1-cyclohexene (VCH)
2)ジエンの環化二量化反応
プラスチック,合成樹脂,接着剤の原料
4
・合成香料,合成ゴムや合成樹脂の原料
・Diels-Alder反応などの有機合成に有用な試薬
O CHO
O
+
クロトンアルデヒド
アセトンと縮合
バイオレット臭気
用途例
Diels-Alder反応
2,3-dimethyl-1,3-butadiene(DMBDE)の用途
研究背景1
DMBDE
5
H H
O+
DMBDEの製法の報告例
O
OH
OH
-H2O
①
②
③
H2SO4
-H2O
-H2O
H2SO4 or Al2O3
Al2O3
US patent 2,350,485 (1944)
Organic Synthesis 22 39 (1942)
FR Patent 417,275 (1910)
均一反応であり分離が困難
酸により容器が腐食
原料ピナコールが高価
酸により容器が腐食
気相反応
アルミナ触媒の活性务化
従来技術とその問題点1
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新技術の基となる研究成果・技術1
キャリアガス
熱電対
触媒層
熱電対カバー
熱電対
電気炉
回収、分析へ
原料 温度コントローラー
石英管 反応装置 常圧固定床流通式
原料 ピナコロン
( 3,3-ジメチル-2-ブタノン)
原料供給速度 1.7 cm3 h-1
キャリアガス H2 30 cm3 min-1
触媒量 0.45 g
前処理 500℃, 1 h
反応温度 425℃
反応時間 5 h
O-H2O
7
アルミナ担持Co3O4の触媒活性の経時変化
1 2 3 4 5
20
40
60
80
100
0Time on stream / h
Convers
ion o
f P
CN
/ %
Al2O3
1.5
2.5
3.5
5.0
10
1 2 3 4 5
20
40
60
80
100
0Time on stream / h
Sele
ctivity t
o D
MB
DE
/ %
Al2O3
1.5 3.5 2.5
5.0
10
Co3O4 wt.% 425℃ in H2
アルミナ単独では急激な务化、Coの担持が务化を抑制
8
アルミナ担持Co3O4の触媒活性・選択性
Co3O4
Content
(wt.%)
Conv.
(%)
Selec. (%)
DMBDE
23DMB
23DB
33-1
0 65.3 96.2 0.3 2.9 0.2
1.5 75.1 97.6 0.3 1.5 0.1
2.5 87.7 96.6 0.6 2.5 0.0
3.5 88.1 93.9 1.0 2.9 0.2
5.0 96.5 88.3 3.4 8.1 0.2
10 97.4 63.3 11.8 21.1 0.4
担持量
2.5-3.5 wt%が適当
425℃ in H2
水素化反応が競争する
9
反応条件 (Co3O4/Al2O3 2.5 wt.%)
1 2 3 4 5
20
40
60
80
100
0Time on stream / h
Convers
ion o
f P
CN
/ %
H2
N2
H2→N2
還元されたCo0が活性劣化抑制に重要なファクター
H2キャリア以外では劣化
水素ガス共存と金属種が
活性維持に必須
10
反応経路の推定と触媒選択1
O
H
OH
Al O
H
OH
O Al
OH
+
+H2 -OH- -H+
-H2O +H2 +H2
目的の脱水反応のみを選択的に行うのに、コバルト以外
の金属種は副反応を選択するため、不向きである。
11
新技術の基となる研究成果・技術2
1,3-Butadiene 4-Vinyl-1-cyclohexene (VCH)
ブタジエンの環化二量化反応
実験
反応装置:オートクレーブ
20cm3のテフロン製の容器+ステンレスジャッケット
• 原料 :1,3-ブタジエン
• 反応時間:2-6 時間
• 反応温度:125-200℃
• 分析 :GC,GC-MS
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1. 高温高圧条件は1,3-ブタジエン二量化反応の進行に有利である。
2. 200℃付近の反応温度において4-ビニルシクロヘキセンを収率よく生成できる。
3. 仕込量が反応に影響をあたえ、気相より液相において反応が進行しやすい。
4. 溶媒の使用は原料の濃度を低下させ、また、触媒の使用は選択率を低下させるので望ましくない。
新技術の基となる研究成果・技術2
ブタジエンの環化二量化反応
13
1,3-Butadiene の二量化反応
1,3-butadiene (VCH) (COD) (DCB)
4-vinyl-1-cyclohexene 1,5-cyclooctadiene 1,2-divinylcyclobutane
反応条件: 1,3-butadiene仕込み量, 5.5 g; 反応時間, 2 h.
200℃でVCH選択率(90.6%)が最大
温度 転化率
温度 選択率
反応温度依存性
140 160 180 200 2200
20
40
60
80
100
Reaction temperature / ℃
Con
vers
ion
& S
ele
cti
vit
y /
%
Conversion of 1,3-butadiene
Selectivity to VCH
Selectivity to COD
14
1,3-Butadiene の二量化反応
反応温度依存性
0 50 100 150 200 250 300 3500
1
2
3
4
5
6
Reaction time / min
Pre
ssure
/ M
Pa
b
c
d
a
200 oC
175 oC
150 oC
125 oC
0 50 100 150 200 250 300 3500
0.5
1
1.5
2
2.5
3
Reaction time / min
Pre
ssure
/ M
Pa
b
a
3 g
1.5 g 1,3-Butadiene
仕込み量: 5.5 g
原料仕込量依存性
反応温度: 200 ℃
最適反応温度:150‐225℃ 仕込み量は多い方がよい?
これは何を意味するのか?
15
反応温度, 200 oC; 反応時間, 2 h.
生成物選択性に影響は小さい
仕込量が多いほど転化率が上昇
反応容器内の反応液量が多いほど
反応が進行しやすい
原料仕込量依存性
1,3-Butadiene の二量化反応
1,3-butadiene (VCH) (COD) (DCB)
4-vinyl-1-cyclohexene 1,5-cyclooctadiene 1,2-divinylcyclobutane
0 2 4 6 8 100
20
40
60
80
100
Charging amount of 1,3-butadiene / g
Co
nv
ert
ion
& S
ele
cti
vit
y /
%
Selectivity to VCH
Conversion of 1,3-butadiene
Selectivity to COD
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従来技術とその問題点
・ 2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンの生成反応は第二次大戦直後からアルミナ触媒で進行することが知られていたが、触媒が時間オーダーで急速に活性务化するため、広く利用されるまでには至っていない。
・ 4-ビニルシクロへキセン製造は、ドイツのDegussa社により既に実用化されて、工業的に製造されている。この技術では、低温(80℃)、加圧(~5気圧)、ニッケル触媒を用いて90%収率で製造されている。
触媒の分離プロセスを必要とする等の問題がある。
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新技術の特徴・従来技術との比較
• 2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン製造の従来技術の問題点であった、触媒の活性务化を改良することに成功した。従来技術は工業化にまでは至っていない。
• 4-ビニルシクロへキセン製造はドイツのDegussa社により行われている。しかしながら、従来技術では、低温(80℃)・加圧(~5気圧)下で触媒を必要とするが、本法では、密閉容器内で加熱・加圧(50気圧)することにより二量化反応の成績を改良することに成功した。
• 本技術の適用により、溶媒・触媒を用いないため分離にコストが大幅に低減でき、運転コストが1/2以下まで削減されることが期待される。
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想定される用途
• 本技術を生かして高効率で、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンおよび4-ビニルシクロへキセンを製造できるため、樹脂・プラスチック製造のための原料を安価に提供できることでスケールメリットが大きいと考えられる。
• 上記以外に、 4-ビニルシクロへキセンには、難燃剤・接着剤の用途がある。
• また、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンは香料・医薬品製造の中間原料として、化学品合成分野や用途に展開することも可能と思われる。
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想定される業界
• 利用者・対象
石油化学工業:
ポリマー製造、化成品製造、香料・医薬品製造等
• 市場規模
各製品ともに1000円/kgとして年間1千トンの需要があると想定
→20億円の市場規模
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実用化に向けた課題
• 2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン製造について、現在、触媒活性の持続検討について大学内での5時間の試験での安定性しか評価していない。実用化に向けては、触媒ライフの点が未解決であり、月単位の寿命試験が必要である。
• 4-ビニルシクロへキセン製造について、現在、実験室レベルの反応しか検討していない。今後、スケールアップのための実験データを取得する必要がある。また、連続製造のためのプロセスを検討する必要もある。
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企業への期待
• ポリブタジエン類の製造および技術開発に興味のある、企業との共同研究を希望。
• 1) 2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンの連続製造、また、それを重合させてポリマー用途として高分子分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
• 2)1,3-ブタジエンの二量化による4-ビニル-1-シクロへキセンの製造およびその脱水素によるスチレン製造に興味のある企業には、本技術の導入が有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :ブタジエン類の製造
• 出願番号 :特願2011-012574
• 出願人 :千葉大学
• 発明者 :佐藤智司、佐藤夏海
• 発明の名称 : 1,3-ブタジエン類の二量化方法 及び4-ビニルシクロヘキセンの製造方法
• 出願番号 :特願2011-197725
• 出願人 :千葉大学
• 発明者 :佐藤智司、孫 道来
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産学連携の経歴(任意)
• 2002年-2007年 トクヤマと共同研究実施
• 2004年-2011年 チッソと共同研究実施
• 2006年-2009年 三菱化学と共同研究実施
• 2006年-2008年 日本触媒と共同研究実施
• 2010年- ズードケミー触媒と共同研究実施
• 2011年- クラレと共同研究実施
• 2011年- 東レと共同研究実施
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お問い合わせ先
千葉大学 産学連携・知的財産機構
産学官連携コーディネーター 阿草 一男
TEL 043-290 - 3565
FAX 043-290 - 3519
e-mail aqusa@faculty.chiba-u.jp
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