術中モニタリング - 鳥取市立病院術中モニタリングの目的...

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術中モニタリング

臨床検査技師 本田 哲広

2017.7.13

“より安全で確実な手術“を行うため周術期における神経モニタリングが普及してきている

全国大学医学部・医科大学付属病院におけるモニタリングの実態

2007年度 日本光電による調査結果

脳神経外科 整形外科 心臓血管外科

モニタリングを実施 96.3% 81.3% 55.0%

脊椎脊髄疾患のモニタリング例

脊椎脊髄外科においてモニタリングを行っている施設は 86%

側弯症・・・・・・・・・・・全症例の85%

脊髄腫瘍・・・・・・・・・全症例の66%

脊椎靭帯骨化症・・・全症例の40%86%

脊椎脊髄手術を安全に行うための脊髄モニタリング―全国脊髄モニタリングの実態調査結果をふまえて― 松山幸弘、石黒直樹ほか 臨床脳波 50 412-419 2008より

当院における術中モニタリング件数

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年7月11日現在

件数 4 51 43 42 18

術中モニタリングの目的

神経の損傷 → 麻痺の予防

虚血による脳・脊髄障害の予防・・・脳動脈クリッピング術や頚動脈内膜剥離術における脳虚血の予防、胸腹部大動脈瘤における脊髄虚血のモニタリング

マッピング(神経の走行、局在を探す)・・・中心溝の同定、顔面神経の同定、運動野の同定 → 機能を温存する上で重要

代表的な神経モニタリング

•運動誘発電位(MEP) ⇒ 運動路

•体性感覚誘発電位(SEP) ⇒ 感覚路

•聴性脳幹反応(ABR) ⇒ 聴覚路

•視覚誘発電位(VEP) ⇒ 視覚路

体性感覚誘発電位によるモニタリング

感覚路

SEP : Somatosensory Evoked Potentials

体性感覚誘発電位(SEP)とは

•感覚路の機能を反映する

•手足の感覚神経を刺激することで上行性に感覚神経を伝導し、中枢神経系を通り、大脳感覚野へ刺激が伝わり頭皮上から記録される

•経路 末梢神経→脊髄後索→脳幹→大脳皮質(感覚野)

日本光電周術期の神経機能モニタリング SEP/MEPより

体性感覚誘発電位によるモニタリング

利点

•感覚神経を刺激するので筋弛緩薬の制限がない

•電極の装着が非侵襲で、セットアップが簡単

問題点

•頭皮上から記録される誘発電位は極めて小さく、自発脳波やノイズに隠れて検出できないため、繰り返し刺激を与えて加算平均しなければならない⇒測定に時間がかかる

•麻酔の影響を受ける

SEPの電極の装着

SEPの電極の装着

頭部 導出側 皿電極

SEPの電極の装着

下肢 刺激側 シール電極

運動誘発電位によるモニタリング

運動路

MEP : Motor Evoked Potentials

運動誘発電位(MEP)とは

•運動路の機能を反映する

•運動野を経頭蓋あるいは直接刺激し、末梢の筋電図を測定する

•経路 大脳運動野→運動路→骨格筋

日本光電周術期の神経機能モニタリング SEP/MEPより

MEPの電極装着

頭部 刺激側 コイル電極

MEPの電極装着

下肢 導出側 シール電極

MEPの電極装着

下肢のモニタリングではフットポンプが使えないため、深部静脈血栓症の対策として弾性包帯を使用

運動誘発電位によるモニタリング

利点

•加算の必要がなくほぼリアルタイム

•運動路の機能を反映するため脊髄機能のモニタリングができる

問題点

•麻酔の影響を受けやすい

•筋弛緩薬の制限がある

MEPの伝導路対側 大脳皮質運動野(刺激部)

同側 脊髄側索

同側 脊髄前根

末梢神経

骨格筋

同側 脊髄前角細胞Synapse

Synapse神経・筋接合部

麻酔薬の影響

筋弛緩薬の影響

麻酔薬がMEPの振幅に与える影響

種類 影響

吸入麻酔

イソフルラン ↓↓↓

セボフルラン ↓↓↓

亜酸化窒素 ↓↓

静脈麻酔

バルビッツレート ↓↓↓

ベンゾジアゼピン ↓↓

プロポフォール ↓↓

フェンタニール -or↓

ケタミン -

川口昌彦 「運動誘発電位(MEP)モニタリング時の麻酔」Anet Vol.9 2005より引用

経頭蓋刺激MEPによる合併症

Published Unpublished Total

舌と口唇裂傷 3 26 29

下顎骨骨折 1 0 1

発作 0 5 5

不整脈 0 5 5

頭皮の火傷 0 2 2

覚醒 0 1 1

David B.MacDonald "Safety of Infraoperative Transcranial Electric Stimulation Motor Evoked Potential Monitoring" Journal of Clinical Neurophysiology 19,416-429 2002より引用

モニタリング機器

モニタリング画面

術中モニタリングの流れ

• コントロール波形を記録する

•重要な手術操作の前後で記録を行い、振幅の変化を確認

(変形の矯正、腫瘍の剥離・摘出、除圧の前後など)

•振幅が一定以上低下していれば術者に知らせる

(コントロール波形の70%以上)

手術操作以外での波形変化

•電極が血液や水で濡れたり、外れたりしている

•麻酔深度の変化

•体温・血圧の低下

•長時間安静による前角細胞の興奮性の低下

まとめ

•術中モニタリングは手術を安全に行うための神経モニタリングである

•神経損傷や脳や脊髄の虚血による神経障害を予防する

•電極装着時に接触抵抗を徹底的に落とすなど、手術開始前のセットアップが重要

•様々な要因で波形の低下(偽陽性)が起こるため自動化できない

ご清聴ありがとうございました

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