小学校英語活動レポート⑳ 小学校から中学校英語 …18 1. はじめに 2020...

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1. はじめに2020年の教科化を控え,さまざまな動きが小学校現場で見られます。中でも一番注目を集めているのは,今後どのように「読み」「書き」指導が小学校で行われるかということです。

2014年度より「英語教育強化地域拠点事業」が開始され,指定校では読むこと・書くことが指導されています。そこに配布されているHi, friends! Plus —ICT教材ならびに文部科学省の HPサイト(http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1355637.htm)からダウンロードが可能なワークシート—を例に,これからの文字指導の方向性を考えてみましょう。

2. 文字指導のねらい今後小学校で目指すことになると思われる文字指導のねらいは何でしょうか。文科省教育課程企画特別部会の骨格となる論点整理(2015年 8月 20日)では次のように提示されています。1) 読むこと「身近で具体的な事物を表す単語の意味を理解することができるようにする」「アルファベットを見て識別し,発音できるようにする」2) 書くこと「例文を参考にしながら,慣れ親しんだ語句や文を書くことができるようにする」「アルファベットの大文字と小文字をブロック体で書くことができるようにする」*CEFR-Jの Pre-A1(小学校中学年 +高学年)

3. Hi, friends! Plus の内容上記に挙げた目標を達成するために,Hi,

friends! Plusは作成されました。しかし,ここで押さえておくべきことは,読み書きの指導は,身近なことについての基本的な表現を「聞く」「話す」ことに加え,「読む」「書く」の態度の育成を含めたコミュニケーション能力の基礎を養うことにある点です。したがって,単にワークシートだけを使って,児童が黙々と書写活動を行うといった活動は基本的には想定されていません。できるだけ ICT教材を使って映像や音声を活用しつつ,時には教師やクラスの友だちとやり取りも交えながら指導することが奨励されています。その内容は正規の授業を補助するものであり,音声による活動が十分行われていることを前提に,1単位時間の授業の中で,5~ 10分程度補助的に活用されるよう意図されています。また,モジュール指導と呼ばれる 10分ないしは 15分の短時間学習で指導することも考えられます。そこで扱っているのは,①アルファベット文字の認識,②日本語と英語の音声の違いやそれぞれの特徴への気付き,③語順の違いなど文構造への気付きを促すことが主になります。(補助教材構成表はページの最後に掲載)

小学校英語活動レポート⑳小学校から中学校英語へ(4)—Hi,friends!Plus と文字指導ー

田縁 眞弓京都教育大小学校英語指導法講師・私立小学校専科教員 

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4. 文字指導の評価文字を扱うことになると,「正確に書けるか」あるいは「読めるか」といったことが指導者は気になるものですが,小学校における文字指導では『思わず読みたくなる』活動をどのように設計するか,あるいは『文字を書く必然性をいかに生み出すか』といったことも大切な視点となります。そのため,絵本を取りいれた読みの活動が入るのも Hi, friends! Plusの大きな特徴といえるでしょう。ワークシートには,文字認識,アルファ

ベットジングルによる一字一音のつながりなどが盛り込まれるとともに,最後に CAN-DOリストを用いて児童の振り返りができるようになっています。児童はそこであげられている項目を使って自己評価をすることも可能です。(下の CAN-DOリスト参照)

5. これからの文字指導多くの小学校の先生たちが「文字指導」に抱くイメージは,国語教育の中で扱われてきた漢字の指導や「書きとり」ドリルのようなものであることが多いと思われます。実際,この Hi, friends! Plusのワークシートを使って,4線上にいかに丁寧にきれいにアルファベットや単語を書くか,といった指導のみをしている学校も少なからずあるでしょう。また,中学校でもペンマンシップや単語テストを文字の主なる指導と位置付ける現場もあります。それに対して,ジングルなどでたくさんの単語に慣れ親しませてそこから一字一音に気付かせる,あるいは初頭の文字(音)が同じ単語を集めてみる,といった音と文字を結びつける新たなアプローチを Hi, friends! Plusは教えてくれたといえます。このことが,将来的には児童の文字への興味を高め,英語を見ればその意味を求めて音声化し「読んでみようとする」姿勢につながるとすれば,小学校で文字を導入する意味は大変大きくなるでしょう。参考 :補助教材構成表

(図版は文科省ホームページより引用)

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