資料1 ”科学” コミュニケーターの役割と資質(岡山大学の取組) ·...

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“科学”コミュニケーターの役割と資質

―地域課題プログラムの現場から―

2018年7月4日

岡山大学 地域総合研究センター

実践型教育プランナー

吉川 幸

資料1科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会

科学技術社会連携委員会(第5回)

H30.7.4

国立大学法人 岡山大学

前身は岡山藩医学館、第六高等学校、岡山医科大学等

11学部、8研究科を擁する総合大学

学生数 13,136人 [学部10,167人 大学院2,969人]

留学生数 685人 [学部199人 大学院486人]

専任教職員数 2,671人[教員1,382人 職員1,289人]

学部における県内高校出身者比率 30%

2

– 岡山大学の目的 –

〜人類社会の持続的進化のための新たなパラダイム構築〜

– 岡山大学の理念 –

〜高度な知の創成と的確な知の継承〜

4

3

国立大学法人 岡山大学

• 研究大学強化促進事業選定機関

• スーパーグローバル大学創成支援事業 タイプB

• 研究・教育・臨床の拠点事業を有する9大学の1つ

• 岡山大学病院: 革新的医療技術創出拠点

• 第1回「ジャパンSDGsアワード」SDGsパートナー賞受賞

4

岡山大学 地域総合研究センター

[設立経緯]

• 大学による地域連携の進め方を調査(2010年)

- 部局や教員個人単位では多岐に渡る地域連携活動が実施されているが、岡山大学全体の地域貢献の姿は不明確

• 「学都構想」(2011年~)

- 自治体、経済界、各種社会団体との組織的な協力によって、大学と都市・地域が全体的ビジョンを持って取り組む

- 中核となるリージョナルセンターが必要

[ミッション]

• 自然や地域社会が持つ力、大学が持つ資源を結合させ、まちづくり、人材育成、イノベーション創出を推進

• センター全員が基幹教育センターとの兼担として「実践型社会連携教育」科目の開発

5

職務「実践型教育プランナー」

• 岡山大学の「実践型社会連携教育」の具現化のため2016年度新設

• 人材像「高度な専門性を持ち、大学と実社会をつなぐ人材」

➢ 大学の教育理念や指導方針を理解する見識を有する

➢ 社会人としての経験に立脚し、企業、団体、国・自治体等との協議能力を有する

• 職務内容

1. 実践型教育に関する企画・立案

2. 実践型教育の企画に関連した学内・学外との渉外

3. 実践型教育の実施

4. 実践型教育の検証・改善提案

5. その他、実践型教育の開発に関すること6

本論のテーマ

• “科学”コミュニケーターは地域課題解決に

貢献しうるか

-ニーズはどこにあるのか

-人材要件

7

本論の視点

現在の役割

期待される役割

既知の課題 対処方法

新たに認識された課題

新たな対処方法

新たな解決策の必要性

拡大

視点1視点2視点2があれば、

8

視点1 新たに認識された課題

既知の課題

新たに認識された課題

視点1

現代社会が直面している現実的な課題

SDGs/2030年に向けて世界が合意

現代社会と科学技術の相互作用

9

2016.12ユネスコ/日本ESD賞

2017.01ユネスコ学習都市賞

2007.04岡山大学がアジア初のユネスコチェア(ESD)

2015.09国連が持続可能な開発目標(SDGs)を採択

2016年は日本の国連加盟60周年

2017年は日本国連協会創立70周年

2005.6岡山市が世界初の7つの「ESDに関する地域の拠点」(RCE)」認定

2016.05日本政府が「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を発足

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

2014.10ESDに関するユネスコ世界会議開催

持続可能な開発のための教育と研究の世界拠点へ

2017年は岡山大学ユネスコチェア(ESD)10周年

SDGsに至る岡山地域の実績

10

5月 8月 9月 10月 11月 12月

国連広報センター・国連大学サステイナビリティ高等研究所を訪問、槇野学長と意見交換

岡山経済同友会講演会にて、槇野学長が本学のSDGs推進を説明

日本学術会議若手アカデミー共催SDGsシンポジウム

SDGs学内特別講演会(講師:国連開発計画中井 淳子氏)

SDGsの達成に向けたRCE第一回世界会議

<SDGs活動成果物>…これらは大学公式ウェブサイト内に掲載中(http://www.okayama-u.ac.jp/tp/profile/okayama-sdgs.html ) SDSNオーストラリア「大学におけるSDGs推進ガイド」(翻訳)SDGsの達成に向けた岡山大学の取組事例集

岡山大学は、その理念・目的の下、SDGs(持続可能な開発目標)の

達成に貢献する活動に取り組み、持続可能な社会の実現を牽引していく。

【SDGsに関する岡山大学の行動指針を示す意義】

① 人類共通の今日的課題であるSDGsへ貢献することは、岡山大学の理念である

「高度な知の創成と的確な知の継承 」のもと、岡山大学の目的である「人類社

会の持続的進化のための新たなパラダイム構築」に資するものである。

② ユネスコチェアを持ちESDを推進してきた岡山大学には、岡山地域や国際社会

と一体となってSDGsを推進していく素地と責任がある。

③ SDGsを社会との共通言語として教育研究並びに社会貢献活動を行っていく。

④ SDGsの達成に貢献することで、課題解決力に秀でた人材を育成する。

SDGsに関する岡山大学の行動指針

ユネスコ本部(仏)にて、ユネスコ/日本ESD賞授与式(林文部科学大臣と槇野学長)

第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞!! (国公立大学では唯一)

国連との連携 地元経済界との連携

地域固有の文化とSDGsの共生

基盤としての

環境科学 ESDからSDGs 世界・地域とのパートナーシップ

2017年岡山大学SDGs活動実績

11

岡山から世界へ: 実践型社会連携教育

Google Map

総社市 社会の課題と向合う「学習支援」活動で貧困の連鎖を断つ

矢掛町 留学生によるまちづくり地域の皆さんと田植えから稲刈りまでを体験

笠岡市 笠岡諸島 地域包括医療・ケア学習

新見市 環境保全型森林ボランティア林野庁・岡山県・新見市・NPOの指導で活動

聞き書き 地域の歴史・文化・風土・知恵・経験知を先人から若者が伝承する

岡山県産の材木にこだわり匠の技を伝承する岡大生がカナダ№1(UBC)学生と日本を学ぶ

行政・市民・企業・大学・高校生による水島をフィールドにした暮らしと環境学習

黒崎連島漁協による海上学習漁業体験で瀬戸内の環境を学ぶ

12

企業から温暖化を学ぶ

真のリサイクルを学ぶ

コンビナートが学習の場

クリーン環境がテーマ

最新の教育環境施設

産業と自然の調和を学ぶ

漁業体験から海を学ぶ

川海から健康を学ぶ

空き家再生を考える イノベーションの創出を学ぶ

水島を起点に瀬戸内海と高梁川流域に更なる元気を! 日本から世界から人を呼び込むまちづくり!

世界の人が水島で学ぶ

G7の実績を活かす活動

産業界・自治体・地域住民・財団・大学の協働!

瀬戸内&高梁川&歴史文化&水島コンビナート連携で進めるSDGs ~高梁川流域・倉敷水島が考えるG7倉敷宣言・SDGsの具現化

1. 高梁川流域と瀬戸内海の自然、文化、暮らしに直接触れる滞在体験型学習を通じて地域社会の持続可能性を発見2. 未来を担う若者たちの思いを込めた流域のビジョンづくりなど実践型教育で地域を愛し地域に根付く人材を育成3. イノベーション創出と暮らしや自然環境が調和する未来社会の実現に向けた英知と努力を世界の人々が学ぶ

水島コンビナートの「温故知新」学習

13

岡山シーガルズについて 内外にファン多数 マーケット 産業イノベーション創出

岡山シーガルズ地域から世界へ向けたSDGs実践展開人権スポーツふれあい教室

輝く女性の目線から講演活動

健康長寿フェア ジャカルタ

タイ国スポーツ庁やファンとの交流

JETRO理事長来岡 経済界が提言

トップアスリート派遣事業

岡山大学が顧問を派遣「協議会」発足岡山シーガルズの活躍に向けた

民間活力活用推進協議会発起人

(平成 30年 4月 3日発足)

中 島 博 岡山県バレーボール協会会長

青 山 興 司 岡山シーガルズを応援する医師・病院の会会長

石 川 紘 岡山県医師会会長

伊原木 隆 太 岡山県知事

大 森 雅 夫 岡山市長

岡 﨑 彬 岡山県商工会議所連合会会長

越 宗 孝 昌 公益財団法人岡山県体育協会会長

野 﨑 泰 彦 岡山県経営者協会会長

晝 田 眞 三 岡山県中小企業団体中央会会長

槇 野 博 史 国立大学法人岡山大学学長

松 田 久 一般社団法人岡山経済同友会代表幹事

松 田 正 己 一般社団法人岡山経済同友会代表幹事

松 畑 熙 一 学校法人中国学園中国学園大学学長

宮 長 雅 人 一般社団法人岡山県銀行協会会長

吉 澤 威 人 岡山県商工会連合会会長

SDGsを共通言語にオール岡山で世界へ

ママさんバレーなど成熟女性市場

2020年東京五輪で進めるSDGs ~地域スポーツによる地方創生と国際交流・展開を大学が核となり支援

経済自律的スポーツチームモデルの確立と産学連携の国際展開

地域スポーツ振興から産業イノベーション創出へ

14

大学開発オオムギを用いた津波被災農地の活用岡山大学独自の耐塩性品種

+被災地復興団体

+岡山醸造会社

被災地支援(金)&新産業創出

||

画像出典:たまルンプロモーションセンターEC事業部https://mall.tamarun.jp/tamarunEC/shop/Page0153/link/1/0/2/930/0/4136

日本発☆世界の塩害地でのビジネスモデルのひとつに

岡山大学広報誌「いちょう並木」 2017年10月号(Vol.87)http://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/kohoshi2017/icho_87.pdf

大学の研究力を活かしたSTI for SDGsの例

15

オオムギを用いた

津波被災農地の活用

長期気候変動のメカニズム解明等に関する教育・研究

GADに対する包括的治療・研究・教育の国内拠点構築

インド感染症共同研究センターでの世界規模下痢感染症対策

新世代放射線がん治療法の開発と国際標準化の取組み

岡山知恵とネットワーク エネルギー構想

持続可能な未来に貢献する研究事例

海洋生物学教育・研究のグローバル連携の構築

持続可能な物質群からの高機能材料の創出

16

岡山大学教育研究

社会貢献

連携企業・コンソーシ

アム

学生(小・中・高)

住民・団体自治体

里SDGsワークショップ

SDGs講演会・特別授業大学入試説明会、等

共同研究協働事業

学び直し、等

インターン就職、等

受験・入学各種イベント参加、等

社会課題のSDGsエコサイクル

~地域の課題がグローバル・イノベーションに直結~

17

岡山県北地域教育プログラム

岡大教育学部・岡山県教育委員会により、平成30年度開始

18

岡山大学教育学部

岡山県教育委員会

教員採用試験「地域枠」

平成29年度教員採用試験より導入※緑の地域が「地域枠」対象地域

岡山県北地域教育プログラム入試

地域教育,地域貢献に意欲

岡山県北地域教育プログラム

岡山県北地域の教育課題に関する授業科目

岡山県北地域における体験的授業科目

視野を広げるための活動体験(留学を含む)

岡山県教育委員会との連携

市町村教育委員会との連携

地域における教育に精通地域との連携強化

岡山県北地域教育プログラム

19

仮説を考えるThinking hypotheses

問いを立てるAsking questions

1 課題の認識Knowing issues / problems

2

3

結果を共有し、共に解決するSharing the result and solving it together

証拠を集めるProving

4

5

そもそもSDGsにおける大学の役割は何?アカデミックな実践サイクル:それを実践できる人材の育成

12

3

4

5

研究・高等教育の5ステップ

Knowing issues / problems

Asking questions

Thinking hypotheses

Proving

Sharing the result and solving it together

5ステップを、自律的に実践できる人材の育成がすなわち、STI for SDGsの実現 20

視点1 新たに認識された課題

既知の課題

新たに認識された課題

視点1

現代社会が直面している「さまざまな課題」

SDGs2030年に向けて世界が合意

現実直視、課題解決型

次世代や未来に持続させる責任みずから問いを立てる力

21

視点2 期待される役割

現在の役割

期待される役割

視点2

拡大

科学を身近な存在に

社会の関心事と「つなぐ」 大学と社会の互恵性 「知識通訳」機能 地域の客観的理解→「地域ぐるみの人づくり」

話題提供者サイドに主体がある

聴き手側に主体があるマーケットイン的な発想

22

「実践型教育プランナー」の業務

•実践型社会連携科目の開発と運営-目的実現のための授業設計

• 科目担当教員と協議 ○提案 ×指示受け

• 学外協力者候補の提案と選定

• 教員サポート(講義、指導含む)、オブザーバー参加 等

-学外協力者(団体・個人)の提案、折衝、事後ケア• 候補への打診、折衝

• 授業内容打ち合わせ、サポート

• フォローアップ

•教員や高等教育機関の専門用語や思考を、学外協力者と齟齬なく共有するための通訳

•企画実現に向けてのファシリテーター、時に実行者

23

知識通訳

知識の細分化、専門化が進んでいる今日、彼ら※のような知識を橋渡しすることによって、知識体系の異なる利害関係者間の知識共有を促進させる知のコーディネータが活躍する領域は拡大する傾向にある。本研究では、彼らの役割を知識通訳(knowledge interpretation)という新しい概念を用いて明らかにすることを試みる。

産学連携を例にあげれば、大学の研究者が用いる専門的な「科学技術用語」や企業が有する「ビジネス用語」のように、利害関係者間の知識体系が異なる場合、相互に意思疎通を行ったり、知識共有を図ることは容易ではないため、利害関係者間を通訳する役割が重要となるが、この役割を担うのが知識通訳者(knowledge interpreter)である。

本研究では、知識通訳者を「互いに異なる利害関係者Aと利害関係者Bの知識や文化を両者の間に入って通訳しあり、両者の持つ暗黙知と形式知との変換を支援することで相互の知識共有を促進させたり、両者の仲裁をする役割」と定義する。

さらに、利害関係者間の知識体系が異なる場合の通訳では、相互に共有できる形式知が限定されるため、通訳対象の文脈を通訳したり、暗黙知的な部分を形式知化して伝えるなど、内容を補足する必要性が生ずる。

つまり、知識通訳(knowledge interpretation)とは、「形式知だけではなく、暗黙知を形式知に変換することで内容を補足し、通訳すること」を意味する。

※異なる利害関係者間を橋渡しする役割

末永聡、立瀬剛志(2004)「産学連携における知のコーディネータに関する研究」 産学連携学会第2回大会講演予稿集 p.52 24

末永聡、立瀬剛志(2004)“知識通訳(knowledge interpretation)と

は、「形式知だけではなく、暗黙知を形式知に変換することで内容

を補足し、通訳すること」を意味する。” からの理解

理解

表現

コミュニケーターの役割

言語 意図 状況

意図 言語

理解

表現

25

コミュニケーターの役割と資質

知識通訳

1. 用語が共通理解されているか

2. 話し手の意図ー聴き手のレディネス 合致か

3. 聴き手に伝わっているか

大学と社会の互恵性を考える視点

地域のシーズの汲み取り力

地域のニーズへの反応力

土台には、コミュニケーターとしての能力26

教養科目「国際インターンシップ」

林業企業

での就業

実習

学生

企業

社会人研究者

大学

教養科目としての目的、教育効果

就業実習としての目的、教育効果

専門家としての思い 先輩社会人としての思い

知識通訳

混乱や揺らぎの発生→成長へのステップ(知識通訳)

27

高校魅力化

魅力化

高校

行政大学

専門家としての知見

中学生

保護者

地域住民

議会 国

高校生

保護者

知識通訳

在校生や高校全体にとっての意義

知識通訳自治体政策立案

28

• 機能=知識通訳

• 資質=社会貢献マインドとコミュニケーション力を土台として、他者を尊重する姿勢、他者への関心を持ち、そのうえで知識通訳に必要な広範な知識を持つこと

他者を尊重する姿勢他者や社会への関心

コミュニケーターの機能と資質

社会貢献のマインドする/学ぶ/楽しむ

役割ではなく機能⇒専門家が自ら備えておいてもよいのではないか。常に自身を監査(audit)する姿勢は必要。

広範な知識

29

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