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学習支援センターの新たな取り組み 学習ピア養成 … 1 特集:ピア育成研修会を実施して … 2 特集:ピア育成研修会に参加して … 3 特集:学習ピアを導入した修大基礎講座 … 5 学会報告01:教育から学習へ 学会報告02:ポートフォリオによる教育の質向上 … 6 学会報告03:学校教育のトータルプロデュース・LSC関連行事・学びのキソ講座・今後の予定 … 7 学習支援センターで学習指導 センター・オフィスアワー … 8 「プチゴール」設定のすすめ ~英語学習相談を通して~・学習支援センターの書棚から・編集後記 … 10 

Learning Support Center学習支援センター

2013 No.10LSC

LETTERNEWS

Hiroshima Shudo University

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

Contents

1

 修大の初年次教育の中核科目である修大基礎講座では、従来の大学では考えられないさまざまな試みを実施しています。学習支援センター(以下、LSC)

のコーディネートのもとに、さまざまな部局の職員が授業を行うことや、上級生が学習スキルの授業(一部学科・専攻)に学習ピアとして参画していることなどが、それです。 LSCは今年度、修大の「2013年度ユニークな教育・学習支援プログラム」に「上級生による学習支援のための学習ピアの養成および組織化」を応募し採択され、学習ピア育成事業を実施しています。 大学でのピア(ピアは「なかま」の意)活動は近年、多くの大学の幅広い領域で実施され、大学改革の一焦点となっています。修大でも、学術交流センターのピアカウンターや入学センター・キャリアセンターなどのさまざまな部局が、ボランティア活動などを通して、学生支援のピア活動を組織化しています。 大学でピア活動が活発になっている理由には、大学ユニバーサル化のなかで、学生の人間関係が希薄化し学生の組織力が低下している状況があります。その状況を逆手にとって、先進的な大学は、学生をピアとして組織化し、積極的に学生を巻き込んだ大学作りを始めているのです。その基礎には、学生に影響を与える最大の存在は友人や上級生だという認識や、学生集団に存在するダイナミズムを利用して、生活・経験・学びの点で学生を良い方向に導くという大学の戦略があります。 今回の学習ピア養成というLSCの試みは、学びに直

接係わる領域において、上級生を学習ピアとして組織化し、教員と学習ピアが協働して修大基礎講座の学びを支えること、さらに「初年次から二年次」への架橋を狙って学習ピアの裾野を広げることを目的としています。それは、学習ピアの養成によって、LSCが掲げる「初年次生の大学へのスムーズな移行」や二年次への架橋という初年次教育の目標を、一段高いレベルで達成しようとする試みです。 学習ピアに期待されている役割は、いくつかあります。⑴「良き先輩」として初年次生のロールモデルになること、すなわち、学習ピアである上級生が目的意識をもって大学生活を送り、意欲的に学んでいる学習態度を初年次生に示すこと、⑵修大基礎講座を経験し授業の意義を理解した上で、教員よりも初年次生に身近な存在である上級生として、初年次生の授業理解や参加をファシリテートすること、⑶修大基礎講座に特有なグループ学習などの参加型授業の運営をサポートすること、具体的には、グループ活動でのディスカッションのリーダー役を担ったり、初年次生に学習スキルの必要性や修得上の助言をすること、などです。 学習ピアが初年次生にとって良き先輩になるためには、研修や訓練が必要です。そのために、LSCは、学習ピアとともに、コミュニケーション力・ファシリテート能力を育成するプログラム、学習スキル向上のプログラムを開発しようとしています。 よく知られているように、ピア活動は、他の学生のためだけのもではありません。教職員とともに責任ある活動を行うことによって、ピア学生自身が成長します。学習ピアは、学生相互や教職員との関わりや研修を通して、学生生活や社会生活に必要な汎用的スキルを身につけていくことができるでしょう。学習ピアのグループ活動を通してリーダーシップを育むこともできるでしょう。 LSCは、学習ピアの研修やトレーニングのプログラムを構築し、意欲的な学生の高い潜在的な能力を顕在化させ、修大基礎講座を活性化し、修大の初年次教育を充実させたいと考えています。

学習支援センター長 亀﨑 澄夫

学習支援センターの新たな取り組み

学習ピア養成

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

2

 修大基礎講座は、 1 年生が大学生活に慣れ、大学での学びに必要なスキルを身につけることを目指した初年次教育科目です。この授業での 1 年生の学びを支援するために、いくつかの学科・専攻では上級生が学習ピアとして授業に参加しています。学習ピアが授業に参加することで、 1 年生にとっても、学習ピアにとっても、学びと成長の良い効果がうまれています。 このようなピア活動をより良いものとするためには、さまざまな要素が必要です。例えば、学習ピアが十分に能力

を発揮できるように授業を構成することや、ピア自身が自らに期待される役割を十分に自覚していることなどは、その代表的なものです。しか

し、ピア学生が自信をもって活動するためには次のような要素も重要です。まずはピア活動を行う学生があらかじめ活動に必要な力を自覚し、経験を積む機会を持つことです。もう一つは、経験者の気づきやノウハウが未経験者へと継承されることです。 これらを実現する企画として学習支援センターでは、現代経済学科、社会学専攻、国際政治学科の科目担当教員と2013年度ユニーク事業予算の支援を得て、 1 泊 2 日のピア育成研修会を開催しました。これは学習支援センターが着手した、学習ピア・育成のためのプログラム開発の一つに位置付けられます。 研修会は次のような内容でした。ファシリテーションの考え方やファシリテーターに必要な技法を解説したのち、ファシリテーターを設定したグループワークを 2 回、体験します。各ワーク後に行う振り返りを通じて参加者は、ファシリテーターの取るべき行動を具体的に抽出します。この作業を通じて参加者はファシリテーターとしての行動様式を知り、定着させていきます。最後に参加者は、2 回のワークの成果をもとにファシリテーションを実践しました。「修大基礎講座の授業改善策を考えよう」をテーマにしたグループワークを設定し、ファシリテーターが他の参加者の議論を促し、時間内に議論内容をまとめていきました。 研修会には 3 つの学科・専攻から、合計21名のピア経験

者・ピア希望者が参加しました。実践型のワークを複数回実施しましたが、回を重ねるごとにファシリテーター役の采配は上達していきました。このことは、学習ピアが経験を積むことの効果を私たちに示しています。 また、ファシリテーターを設定しての議論に慣れるに従って他の参加者の発言や態度も変化し、議論の内容が回を重ねるに従ってよいものになったことも印象的でした。このことは主体的な学びのための授業手法としてグループワークを活用する場合、ファシリテーターの果たす役割が重要であることはもちろんのこと、他の参加者についても、その技法に慣れることが、学びの効果を高めることを示しています。 このたびの研修会は初めての試みであり、その方法はさらなる改善が必要でしょう。しかしながら、研修会に参加した学生からの感想は、私たちを勇気づけてくれるものでした。たとえば、「人間力というものがファシリテーターにはすごくでるので、日ごろから意識をしていきたい。質問の出し方や時間配分など、形のない学びが必要であると感じた」、「ピアをする前にこのような研修を受けたかった。研修を受けて、あの時はこういう風に対応すればよかったのだと、具体的なピア活動でのファシリテーションのイメージがわいた」などです。 後期には研修会の成果をさらに発展させるための企画も

実施予定です。このような取り組みを通じて、多様な学びの形が本学で実践されることを期待しています。

8 月 2 日㈮13:00~13:30 ねらいとルールの共有13:30~14:00 Ice Break14:00~17:00 ファシリテーション研修:解説&体験編

19:30~21:00 ファシリテーション研修:実践編①――アイデアを出し合うって素晴らしい!

8 月 3 日㈯

9:00~11:00 ファシリテーション研修:実践編②――修大基礎講座の改善策を考えよう

11:00~12:00 成果発表と振り返り

◦ 研修会スケジュール ◦

学習支援センター次長 法学部准教授 佐渡 紀子

ピア育成研修会を実施して VOICE VOICE VOI

CE V

OICE

VOICE VOICE VOICE VOICE VOICE

実施しての声

特集  学習ピア

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

3

ピア育成研修会に参加してVOICE VOICE V

OICE

VOI

CE VOICE VOICE VOICE VOICE VOICE

参加者からの声

研修に参加して法学部国際政治学科 2 年脇本 和也

 私が修大基礎講座ピア育成研修会に参加しようと思った理由は、私はまだ修大基礎講座でのピアを 1 回しか経験しておらず、またその経験したピアでもうまくファシリテーターとして活躍できたか自信がなかったためでした。そのため研修会に参加するにあたって、他の学部の人や先輩から多くを学び次回ピアをする際に自信を持ってファシリーテートできるようになろうと、意気込んでいました。 しかし、実際に研修会に参加すると、参加者のほとんどはピア未経験の 1 年生ばかりで、私は少ない経験者のなかの一人でした。このような状況で私は、自分が学ぶだけではなく、後輩に自分の経験を伝える必要を感じました。そのため研修会では積極的に 1 年生に話しかけ、グループワークでわかりやすくアドバイスするようにしました。 もちろん自分が教えるだけではなく、他の参加者から学ぶことも多くありました。他学部の人や先輩方からは、学部独自の方法や経験を活かした的確なアドバイスをもらいました。また後輩からも、ファシリテーションを行うにあたってのスケッチブックなどの道具の使い方など参考になることが多くありました。 この研修会では、ファシリテーターとしての基礎など多くを学び、自分の経験を後輩に伝えることができました。またそれだけではなく、学部の壁を越えた多くの仲間と交流することができ、研修はとても充実したものでした。この 2 日間の研修で学んだことや感じたことを忘れずに、次回のピアとしての活動や大学生活のみならず卒業後の生活にも活かしていきたいと思います。

1年生 上級生

特集  学習ピア

ファシリテーターの難しさ人文学部人間関係学科 1 年木村 早玖

 私は 8 月 2 日、 3 日の合宿に参加しました。 2 年生になったらピアになりたいと考えているので、そのための知識を学びたいと思ったからです。 特に難しかったのは、ファシリテーションの際、ファシリテーターとなって話し合いを進めてまとめることです。私は今まで、話し合いの司会や、生徒会をやったりしてきたので、人前で話したり、話をまとめたりすることは、得意だと思っていました。でもファシリテーターは、ただ話し合いを進め、話をまとめていくだけの役割なのではないと学びました。自分がきちんと相手の声に耳を傾ける「傾聴」や、話し合いの順序を考えて進めていくことを苦手としていることがわかりました。ピアでは、まだ大学生活に慣れていない 1年生を相手に、話し合いを進めていかなければならないので、今回の失敗をバネにし、もっとファシリテーターの力を身につけていかなければと思いました。 でも、この合宿に参加して、また一つ成長できたことは確かです。次に私がやらなければいけないことは、学んだことを実践することです。ピアになるまでに、身につけられるように頑張りたいと思います。 みんなの自己紹介、アイスブレイク、晩御飯の立食、夜の大学、とても楽しかったです。参加者のみなさんは本当に明るく、話しやすい方たちばかりでした。先生方も分かりやすく、楽しく教えて下さいました。本当に 2 日間ありがとうございました。

初年次教育科目「修大基礎講座」では、学科・専攻ごとにクラス規模を選択でき、 1 クラス40名以上の場合、授業のサポートを担う上級生の学習ピアを導入している。2013年度にピアを導入したのは、心理学専攻・社会学専攻・国際政治学科・現代経済学科。このたびのピア育成研修会に参加したのは、ピア候補者の 1 年生14名とピア経験者の上級生 7 名。

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

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ピア育成研修合宿に参加して人文学部人間関係学科 3 年岡崎 羽澄

 私は、学部の先生から学習ピア育成研修合宿のお話を伺い、研修に興味を持ったので参加させていただきました。 2 年次にピアの経験をしましたが、どのように議論を進めればよいのか不安がありました。しかし、2 日間の研修でピアがどのような働きをすべきかを、実践を交えながら学ぶことができました。 研修中私が最も大事だと感じたことは、傾聴です。傾聴は普段の生活の中で何気なく行っていることではありますが、議論の場のようになかなか自分の意見を発しにくい雰囲気の場合には大きな意味を持ちます。相手の意見をしっかりと聴き、受け止めるという姿勢が必要なのだと感じました。 グループワークでは、活動を支援し、議論の舵取りをする役割であるファシリテーターを決めて課題に取り組みました。議論の記録方法は様々であり、ポストイットなどを活用することで意見をよりわかりやすくまとめることができました。そして、ワークを進めていくにつれて、ファシリテーターの進め方によって課題の成果に影響が出るのだと感じるようになり、議論が円滑に行われるためには多くの工夫が必要なのだと実感しました。 ファシリテーターは議論の方向性を決めたうえで、意見の引き出し方、記録の仕方を考え、意見を尊重しながら場を収斂させなければいけません。これらを時間配分を考えながら行うことは非常に難しかったです。今回の研修では、自分のピアの経験を伝えるだけでなく、他学部、他学年の方々と活動をすることで新たに学ぶことが多くありました。 2 日間の研修で吸収したことを、今後のピア活動や私自身の生活でも活かしていこうと思います。

発信から促進へ経済科学部現代経済学科 1 年西岡 直樹

 私は、このたびの研修に参加する前の心境として「初めて出会う人と、協調性を持って接し、活動することが出来るだろうか?」「研修についていけるだろうか?」「自分は、修大基礎講座のアシスタントにふさわしい人物へとなれるのだろうか?」などがあり、正直なところ不安に満ち溢れていました。しかし研修が始まると、次第にこの不安は、期待や喜びへと変わっていきました。 自身が感じていた、初対面の人とのコミュニケーションに対する、ネガティブな気持ちの払拭へ一役買ってくれたのは、冒頭に行われた「ice break(アイスブレイク)」です。この活動は、決められた時間で用意した質問を、参加者全員にぶつけていく自己紹介ゲームなどを通して、会場にいる学生全体の連帯感を生ませていこうというもので、このおかげでだいぶ当初の緊張をほぐすことができました。  2 つ目の懸念については、研修内容が今までに経験してないことだったため、困難に直面することになりました。意見を自ら出すのではなく、自分たちがサポートする学生の意見発信を促進させていく「ファシリテーション」は、導入部分までは個人的に理解し易かったです。しかし、自分からはアイディアを出さず、勝手に結論を急がないという点、話し合いの方向性の決定、結論を出すべき議題の提示、持っている考えを口にし易い雰囲気作りなど、トレーニングにはかなりの困難が伴っているように感じました。  3 つ目の不安要素である、アシスタントに値する人物になれるかどうかについては、テーマを変えながら、ファシリテーションを実施する人、いわゆる「ファシリテーター」とそうではない人を、研修中繰り返し練習しましたが、来年実際に 1 年生を相手にして今回のスキルを発揮できる自信は、正直なところ今の段階ではありません。でも、いつまでもこのような気持ちでは、 1 年後に修大に入ってくる新入生に対して申し訳ないので、この度学んだことを復習し、使いこなせるようにしたいです。

特集  学習ピア

上級生 1年生VOICE VOICE V

OICE

VOI

CE VOICE VOICE VOICE VOICE VOICE

参加者からの声

5

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

学び合いの要としての上級生ピア〜国際政治学科の事例〜 法学部教授 矢田部 順二 現在の修大基礎講座の前身であるファーストイヤー・セミナーⅠが、本学の初年次教育の中心科目

として設置されたのは2007年 4 月でした。そのときから、国際政治学科では上級生ピアを活用した双方向授業を展開してきました。 上級生ピアの導入にはいくつか背景がありました。ひとつは国際政治学科にはすでに導入教育を目的とした別の 1 年生ゼミが存在していて、スキルアップと同時に専門分野への意識を醸成する役割を負っていたため、多くの教員を割けなかったことです。もうひとつは、新入生は身近な存在の先輩から、学習面についても多くのことを学びうる、という点です。さらに、教員から学生への一方的な学習スキルの伝達ではなく、アクティブ・ラーニングの手法が学習スキルの学びには有効と考えられたという点も指摘できます。 こうして、いわば逆転の発想で、クラス数を 2 ないし3 クラスに絞り、40名強の新入生を 8 名程度のグループに分け、上級生ピアが教員と 1 年生をつなぐファシリテータとなるスタイルの授業が始まりました。 上級生ピアの選定は、学習面だけでなくコミュニケーション力の面などから総合的に判断しています。ただ、それだけでは不十分なので、上級生ピアが安心して授業参加できるように、事前研修をおこなってファシリテーションの基礎を伝え、教案と課題は前もって「予習」してもらうようにしています。 解答をみずから率先して言わないようにと指導してあり、授業の際、上級生ピアはグループ学習の司会になったり、発言の少ない 1 年生を促したり、あるいはみずからの経験や意見を披露したり、教室運営の要になっています。そして授業後には各グループ活動の気づきを教員に報告します。  1 年生からは、「自分も来年、ピアをやってみたい」という声が学期末に聞かれるなど、目標にすべき存在と映っているようです。また上級生ピア自身にとっても、学習スキルの復習になるだけでなく、より効果的に説明する訓練や、グループをまとめる経験、下級生とつながる機会、など、得ることは少なくないそうです。ある経験者の卒業生は、就職活動のとき上級生ピアの体験を話し、面接官から関心を寄せられたと話していました。 このように上級生ピアは、国際政治学科の初年次教育において大切な存在です。ピア候補者の裾野を広げること、これが初年次教育の質向上にとって重要と考えています。

学習ピアを導入して〜心理学専攻の事例〜 人文学部准教授 鈴木 亜由美 心理学専攻では、修大基礎講座の教員担当部分の授業を、 1 年次後期からはじまる心理学の実験実

習への導入と位置づけ、主に実験レポートの書き方を習得することを目的としています。今年度は新たに学習ピアの制度を導入し、 1 年生77名を 2 クラスに分け、教員1 名とピア学生 2 名がそれぞれのクラスを担当しました。 心理学の実験レポートは、序論、方法、結果、考察といった科学論文特有の構成からなり、入学したばかりの1 年生にとってはなじみのないものです。さらにレポートの書式は、心理学の学会誌に掲載される論文と同一のものを求めているため、文章表現や図表の作成の仕方に加えて、ページ設定やフォントなど非常に細かいところまでルールが定められています。授業では、見本レポートから書式ルールに反する記述を見つけ出したり、その誤りを修正した上で見本レポートを再現したりする作業を取り入れています。 授業は情報処理演習室で行っていますが、 1 年生の中にはパソコンの操作自体にまだ慣れていない学生もいます。昨年度までは教員が授業を進めながらこのような学生に対応していたため、たびたび授業が中断することがありましたが、今年度はピア学生に教室を巡回してもらい、質問を受けたりつまずいている学生に声をかけたりしてもらったことにより、これまでよりもスムーズに授業を進めることができました。  1 年生にとっては、教員よりも身近な存在である上級生が授業中に常に巡回している状態にあったため、小さな疑問でもその場で解消できたようです。また、 1 年次前期の段階ではレポートの細かな書式ルールを覚えることがなぜ重要なのかをイメージしにくいですが、ピア学生が「これを覚えておかないと後で困るよ」と実感をもって話してくれたことがとてもよかったです。またピア学生にとっても、 1 年生からの質問に対応するために予習をして授業にのぞむことにより、普段から取り組んでおかないとつい忘れてしまいがちなレポートの記述ルールを思い出すよい機会になったのではないでしょうか。 ピア学生の募集や事前指導に手間がかかるという課題は残されていますが、今回の学習ピアの導入は、教員、1 年生、ピア学生のいずれにも一定の効果をもたらしたのではないかと感じています。

特集  学習ピア

学習ピアを導入した修大基礎講座

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

6

 今回SPODフォーラム2013(愛媛大学)に参加して感じたことは、フォーラムの内容や設定に、教職員が「学び」に巻き込まれる「仕掛け」が組みこまれているのだなあ、ということです。ここでは、 SPODフォーラムについて簡単に説明しつつ、なぜ、そのように感じたのか、省察したいと思います。

▪ SPOD フォーラムとは何か

 SPODとは、四国地区の33大学が加盟する組織体「四国地区大学教職員能力ネットワーク」の通称です。SPODフォーラムは2009年度より開催されており、今年で 5 回目を迎えています。今年度は本学から、大津さん(キャリアセンター長)、澤津橋さん(教務課)、佐渡先生(学習支援センター次長)、西森の 4 名が参加しました。SPODフォーラム2013は 4 日間で、 42のプログラムが準備されていました。参加者は、 1 日あたり平均10のプログラムから、自分の関心や業務内容に応じて、プログラムを選択し、参加します。

▪「学び」への仕掛け・参加者の「つなげる」考え

 プログラムを自分で「選択し」参加するために、参加者はプログラム内容を事前に理解しなくてはいけません。これは同時に、内容に対する自我関与を高めます。また結果的に、内容に対する理解を深めることにもつながります。つまり、この「選択」を求める仕掛けは、プログラムに対する「動機づけ」と学びに対する「自我関与」を高めるうえで、非常に重要だなと感じました。 実際、フォーラムから 2 週間後に、本学の参加者にインタビューしたところ、SPODでの学びを「修大」「修大生」に結びつける考えが、明確に語られていました。例えば大津さんは、「他大学におけるTPやSPなど、ポートフォリオのイメージが広がるとともに、本学での導入可能性について考えた」、佐渡先生は、「TBLを体験してみて、文献購読の授業をTBLで進めることで、 3 年生に基礎知識をつけることができるのではと考えた」とお話しされました。私自身も「他大学の参加者と話すなかで、ルーブリックは授業者間連携のツールになりうることや、学生ピアの研修材料になりうることがわかった」と感じています。 …と、読まれてきて、「TP ? SP ?」、「TBL ? PBLとどう違うの?」「ルーブリック?」などなど、「?」を感じる方もおられるのではないでしょうか。耳や心や頭に、「?」が浮かんだ方には、本学・学習支援センターに資料がございますので、是非いらして下さい。そして、来年のSPODフォーラム2014(高知大学)にもご参加ください。

 今回の統一テーマは「教育から学習への転換」であった。高校までとは違う受け身ではない大学の学びを、いかに早く学生たちに身に付けさせるか、苦心しながらも様々に工夫された事例が多数報告された。 参加したラウンドテーブルは「主体的な学びを促す授業は、学生を主体的にするか ~学習者中心“な”授業」と題され、学生の「主体的学び」そのものと、それを育成する側の関わり方の難しさに焦点を当てた 4 つの報告があった。「教員主導による『主体的学びを促す授業』の課題」(日本工業大学・河住有希子氏)では、主体性の醸成を目指し

た授業がすでに教員の指示による誘導であり、学生にとって本当に主体的と言えるのか、との問いかけがあった。参加者からは、一定のレベルまでは教員が教えるのも必要なことであるとの意見が相次ぎ、私もそれに賛成である。しかし、学生を自ら考える学習者にするために教員が「教えない」という手法を実現することの難しさを再認識した。 一方、公開シンポジウムでは、複数の登壇者から「MOOC(Massive Open Online Course)」(ムーク)と呼ばれる、ウェブ上で無料受講できる講義についての報告があり、学習する環境を巡る大きな変化が紹介された。誰もがアクセスできる授業のあり方は、これまでの学習空間やカリキュラムの概念まで変えていく可能性を示していた。 多くの大学で、目の前の学生を自立した学習者へと導く地道な格闘を続けている中、世界では全く違う次元での学習システムが登場している。今大会では、振れ幅の広い事例に触れ、学習者・学習方法・教育方法がこれほどまでに多様であることを再認識することができた。そしてなによりも、教える立場の者がこれまでの教育・学習への拘りから抜け出し、本気で意識の変革を図る必要があることを痛感した。 「教育から学習へ」の道は、実に険しそうである。

ポートフォリオによる教育の質向上

SPODフォーラム2013

○ 2013年 8 月20日火〜23日金 愛媛大学城北キャンパス

学習アドバイザー 西森 章子

学会報告02

第35回大学教育学会大会

○ 2013年 6 月 1 日土・ 2 日日 東北大学川内北キャンパス

学習支援センター 安田 幸子

学会報告01

教育から学習へ1 日目

▪ラウンドテーブル▪基調講演▪公開シンポジウム「教育から学習への転換を支えるもの -カリキュラム・空間・マネジメント-」2 日目

▪自由研究発表Ⅰ  ▪自由研究発表Ⅱ

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

7

 日本リメディアル教育学会第 9 回全国大会が本学にて開催された。本大会のテーマ「学校教育のトータルプロデュース」のもと、講演、シンポジウム、課題セッション、一般発表が行われた。特別講演「学校教育における大学教育の位置づけ」(秋山卓也氏、文部科学省)では、学士力を身につけ、様々な状況で課題を解決できる人材の育成がこれからの社会において求められるということが述べられた。 課題セッション、一般発表は、英語、日本語、理数系、

ICT活用教育、学習支援などに分かれて行われた。大学における学習支援の取り組みや授業の実践例などが紹介された。私が参加した課題セッション・理数系部会の総合テーマは、「高校理数分野の改訂指導要領と大学での対応」であった。高校数学に関して言えば、新しい指導要領では、従前の「数学基礎」をより発展させた「数学活用」という科目が新しく設置された。社会生活における様々な場面で数学を活用し、考えることができる力を育成することが重視されてきている。数学活用的内容を取り入れた大学での授業の実践例などが紹介された。今後、学習支援センターで「LSC学びのキソ講座」を行う際などに参考にしたい点もあった。 招待講演「義務教育と高校・大学教育との連携」(小河勝氏、大阪府教育委員)では、基礎学力は思考力の土台であるので、しっかりとした基礎学力を身につけることが重要であると述べられた。また、基礎学力を身につけるために、百ます計算や音読などの反復学習をすることが効果的であると説明された。 今回の学会は、基礎学力から社会で必要とされる力までトータルで考えるよい機会となった。なお、来年度の日本リメディアル教育学会全国大会は、東京電機大学にて開催される予定である。

日本リメディアル教育学会      第9回全国大会

○ 2013年8月29日木・30日金 広島修道大学

学習アドバイザー 竹中 佑美

学会報告03

学校教育のトータルプロデュース

1 日目▪特別講演「学校教育における大学教育の位置づけ」▪シンポジウム 1 「学力と学ぶ力のトータルプロデュース」▪課題セッション/一般発表2 日目

▪シンポジウム 2 「言語教育のトータルプロデュース」▪課題セッション/一般発表▪招待講演「義務教育と高校・大学教育との連携」

LSC 関連行事    ▪(学期始)大学での学びと生活に関するアンケート実施 4月5日㈮~11日㈭▪LSCドキュメンタリー・アワー 4月25日㈭・5月30日㈭・ 6月27日㈭・9月26日㈭▪成績優秀者アンケート実施 5月13日㈪~6月7日㈮▪センター・オフィスアワー 7月1日㈪~30日㈫

▪修大基礎講座授業アンケート/ 1年次前期の学びに関するアンケート実施 7月8日㈪~17日㈬▪学習ピア育成研修合宿 8月2日㈮~3日㈯▪第4回教育力アップセミナー 9月9日㈪

学びのキソ講座    ❖英語Start Up! 講座(TOEIC Bridgeガイダンス編) 4月11日㈭          (TOEICガイダンス編) 4月18日㈭❖ノートテイキング講座(記憶編) 4月18日㈭          (学習編) 5月9日㈭❖パソコンdeあ〜と-Excelで描こう- 5月2日㈭・6月6日㈭❖要約トレーニング講座 5月16日㈭・17日㈮❖英語マスターズ集会 5月23日㈭~7月9日㈫

❖プレゼンテーション基礎講座 Part.1 6月13日㈭❖娯楽 de 英会話 6月20日㈭❖意見をかたちに! 講座 6月20日㈭❖TOEIC 講座 基礎編 リスニング 7月10日㈬          リーディング 7月11日㈭❖論述★マスター講座 7月1日㈪~5日㈮❖試験準備ミニ講座 7月1日㈪~10日㈬

第16回・初年次教育セミナーを開催します!◉日時:10月17日㈭ 14:50~16:20◉テーマ:「大学での一歩を再考する~学生の隠れた能力を引き出す初年次教育のあり方~」◉講師:森 朋子 氏(島根大学 教育開発センター)

今後の予定

2013年4月〜9月

2013年度前期

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

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▪ LSCで会いましょう!� 学習支援センター 加利川�友子

 学習支援センターは、前期と後期の定期試験に合わせて、教員によるオフィスアワーを実施しています。今年度前期では、 7 月 1 日㈪~30日㈫の期間で実施しました。(実施教員:11名、実施回数:20回、参加学生:86名)  6 月中旬にもなると、学生たちにとって前期試験をどう乗り切るかが関心の的となります。特に、1 年次生からは、初めて受ける大学での試験に対する不安がよく聞かれます。

そんな 1 年次生を対象に、センターでは、学習アドバイザーが、「試験準備ミニ講座」を実施し、特に論述形式の試験問題に対する取り組み方を中心に、スケジュール管理や試験勉強の仕方、受験心得などについてのアドバイスをおこなっています。 一方で、授業に直接関係する内容についての質問や不安は?といえば、多くの学生にとって、質問などのために教員研究室に直接訪れることは、やはり敷居が高いように思われます。そこで、センターでは、試験勉強をする学生の疑問や質問に応えるために、教員にセンターのスペースを利用したオフィスアワーを実施されるよう呼びかけています。このオフィスアワーを希望される教員には、教室で、直接、学生に声かけをお願いしています。センターは、期間中の実施スケジュールを掲示します。 現在、センターのフロアには、学生用コンピュータが10台、 7 つの可動式テーブルと 1 つの固定式テーブルに椅子22脚が並べられています。決して広いとはいえませんが、コンピュータを使ってレポートを書いている学生、個人やグループで学習する学生、あるいは発表の打ち合わせや準

備をしている学生で、毎日、活気に溢れています。そんな学生たちと同居する形で、オフィスアワーを実施することとなる教員のみなさんから、騒がしいと苦情があるのでは?と心配することもしばしばです。 しかし、オフィスアワーに訪れる学生の様子を見ると、どうでしょう。不思議なことですが、多くの学生たちに囲まれている方が、かえって安心して、教員に質問をしたり率直に話をすることができるようです。教室や研究室では見られない学生の顔を見てもらえることも、このオフィスアワーの良さではないでしょうか。同時に、周りの学生たちの様子を教員に知っていただけるのも利点だと思います。 センターでのオフィスアワーは、教養科目や語学、主専攻科目、ゼミや演習など、授業形態でも教員と学生の関係でも、それぞれ異なっています。もしかすると、敷居が高いと感じているのは学生だけではなく、教員にとっても同じことがいえるのかもしれません。センターで、学生と教員とがリラックスした表情で会話をする風景を見るのは、スタッフとして喜びでもあります。普段からセンターでのオフィスアワーをおこなっていただけたらと思います。 学習支援センターは、設立以来、学習アドバイザーによる個別学習相談を中心とした学習支援や教員によるセンターでのオフィスアワーをおこなってきました。そして、今、特集でも取り上げたように、上級生を中心とした学習ピアによる学習支援をサポートし、学習支援の裾野を広げていこうとしています。 学習支援センターは、学生と教員、さらに各部局の職員との橋渡しをしながら、修大生の学びをさらに充実させていきたいと考えています。

学習支援センターで学習指導 ≫

≫センター・オフィスアワー

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

9

Voice利用者の声対話を通した

学びのスペース� 人文学部教授 戸出�朋子

 前任校にはセンターオフィスアワーという制度がありませんでしたので、興味もあり今回初めて利用させていただきました。 3 年生のゼミの学生を対象に、ゼミの試験のための勉強会を行いました。試験問題は論述

式で、問題は授業中に予告していました。満足のいく論述のためには、授業でカバーした内容を消化吸収して自分のものとし、論理的に記述する必要があります。そのためには授業と試験との中間に、「足場」を提供する機会が必要だと考えたのです。 私は言語の習得を専門に研究していますが、最近注目されている理論に「社会文化理論」というものがあります。これは、言語だけでなく一般の学習にも当てはまる理論で、学習は interpersonal(個と個との間)からintrapersonal(個人内)の方向で進むと言われています。個と個の間とは、親と子、教授者と学習者、友達同士であったりするのですが、その間で行われる「対話」の中で新しいことに気づいたり、他者からの対話的援助で今までできなかったことができるようになります。それを経て、今度はそれを個人内で反芻し、ついには自力でできるようになるというのです。言葉が媒介となった思考の深まりにほかなりません。 今回行った勉強会でも、学生は自分の理解をまず言葉にすることにより、何がわからないのかをまず確認していったようです。そして、私からのヒントを得ながら、再度、言語化によって論理を練り直していきました。そして、おそらく試験の前日にはひとりで復習したでしょうから、「間」から「内」へと学習が進んでいったものと期待しています。 勉強会は研究室でもできたのですが、オープンなスペースというのは心地よい空間であったと思います。他のグループの話し声も適度に聞こえますが、かえって集中できたようにも思います。スターバックス的な適度なざわめきと明るさ、様々なグループが勉強しているという学びの「場」の一部となって意欲が醸成されていったのかもしれません。私にとっても、何よりも楽しいひと時でした。これからも、教室・研究室・センターなどの学びのスペースといったそれぞれの良さを上手に活用して、学習への動機づけをしていきたいと思っています。

センター・オフィスアワーを利用して

� 商学部准教授 三倉�康博  7 月 3 日・10日の昼休みに、学生の前期末試験の準備に役立てばと思い、初修スペイン語の授業のセンター・オフィスアワーを学習支援センターで実施しました。 この制度を利用したのは今回

が初めてです。なぜ利用しようと思い立ったのかと言えば、期末試験が近づいてくると、授業前後に学生と「近々先生の研究室に質問に行ってもいいですか?」「いいですよ。ただし不在のときもあるので、事前に日時を調整しましょう」という感じの会話をすることがよくあるのですが、その後話が立ち消えになってしまうことが多く、学生にとって教員研究室まで足を運ぶのは敷居の高いことなのだなと感じていたからです。私の研究室が第2 研究棟にあり、学生がふだん授業を受ける教室から遠いという理由もあるのかも知れません。その点、 2 号館2 階という学生が足を運びやすい場所にある学習支援センターならば、学生も気軽に質問に来ることができるだろうと思いました。 とは言え、「一人も学生が来なければ恰好が悪い」と思いましたので(今までセンター・オフィスアワーを利用しなかったのも、そういう不安があったからなのですが)、とりあえず昼休み限定で 2 回実施することにしました。結果的には、両日とも何人かの学生が来てくれましたので、恥をかかずに済みました。 2 回目は時間を延長して、午後 2 時頃まで質問に答えていました。ふだんの授業の前後とは異なり、十分時間をとって説明を尽くすことができたので、学生も満足してくれたようでした。私にとっても、学生の勉強具合がよく把握できたので、たいへん有意義でした。 初修外国語の授業は比較的小規模なクラスで行われますが、それでも 1 クラス30人をこえると、授業中・授業前後だけでは、個々の学生からの質問や相談に対する細かい対応にやはりどうしても限界が生じます。それゆえ、授業とは別に時間をかけて学生の質問に答えることのできるセンター・オフィスアワーという機会は貴重であると、あらためて実感しました。 来年度以降もぜひこの制度を利用していきたいと考えております。

2013年10月 3 日広島修道大学学習支援センター〒731-3195 広島市安佐南区大塚東1-1-1 TEL.(082)830-1426ホームページ http://www.shudo-u.ac.jpE-mail skill@js.shudo-u.ac.jp

発行日発行者

LSC NEWS LETTER 2013 No.10

Learning Support CenterLSCLETTER

NEWSHiroshima Shudo University

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    学習支援センターの書棚から⓯『暮らしのことば 擬音・擬態語辞典』 (山口仲美編、講談社) 子どもの頃、図鑑を見て楽しんだ人も多いと思います。調べるのではなく見ることが楽しい。同じように、辞典にも見て読むこと自体が楽しいものがあります。 同書は、いわゆるオノマトペを集めた辞典です。「からころ」「きりきりしゃん」「けんけんほろろ」「やっさもっさ」など、感覚的にはわかっているけれども説明するのが難しいもの、そんな言葉があったの? と驚かされるものがたくさん発見できると思います。

⓰『日本語からたどる文化』 (大橋理枝、ダニエル・ロング著、放送大学教育振興会) これは放送大学のテキストです。同大学のテキストは教養テキストとして高い評価を得るものも多いですが、極力平易に書かれていることが特徴です。そのため、学習のためのテキストとしてだけではなく、読んで面白いものも多くあり、興味ある分野については一読の価値ありです。 今回紹介する図書は、文化を日本語という観点から述べたものです。日本に多い地名、遅刻に対する国ごとの感覚の違いなど、興味深い内容が盛りだくさんです。 (八)

⓯ ⓰

編集後記 このたび初めて担当してみて、端からはとても難しそうに見えた「編集」は、想像していた以上の難しさであった。また一つ自分自身の新たな分野が開拓されるのだと言い聞かせながらの作業だったが、1 つわかったのは、パズルのように誌面を組んでいくのは少し楽しいということだ。 (y)

◎LSC NEWS LETTERはホームページでもご覧になれます。

「プチゴール」設定のすすめ 〜英語学習相談を通して〜 学習アドバイザー 馬場﨑 賢太

 「語学学習に終わりなし」と言われます。どんな英語学習者でも、それぞれの立場で課題を抱えているものです。 学習支援センターでは、毎日たくさんの大学生が学習相談に訪れます。英語の分野は特に相談が多く、2013年 4 月から 8月の 5 か月間で計325件の英語の学習相談に対応しました。 相談の内容はTOEICやTOEFL、英検などの資格に関するもの、授業や日常での英語の質問、文法、英会話など、さまざまですが、相談に訪れる学生たちには、ある程度共通した特徴があるように思います。英語が好きな学生であれ、英語に苦手意識を持っている学生であれ、彼ら彼女らと話をしていると、それぞれの心に「大志」を抱いていることがわかります。「大学生の間に英語をマスターする」、「将来はこういう職業に就きたい」、「英語は苦手だけど日常会話くらいはできるようになっておきたい」などなど、学生は自分の目標を語ってくれます。大きな目標をもつことは英語学習に限らずとても大切なことです。しかし、その目標に向かって段階的に計画を立て、実行することを疎かにしてしまう人がとても多いのです。 そこで、私は英語の学習アドバイスの中で「プチゴール」の設定を勧めています。終わりのない英語の学習だからこそ、自分で小さなゴールを決めていくことが大切です。自分の目標から逆算して、「今日が終わるまでに達成すべきこと」を確認します。プチゴールは、欲張りすぎないようにすることがポイントです。使えるようになりたいフレーズをひたすら繰り返す、生活の中で見つけた知らない単語を覚えるなど、それぞれの学生に応じて達成可能な内容にします。そして、寝る前に、その日に身につけた内容を頭の中で確認し、プチゴール達成を自分で褒めてあげるのです。 英語学習を成功させるのに必要なことは〈反復〉と〈継続〉です。しかし、学習を続けていてもなかなか進歩が感じられなかったり、学習がマンネリ化してしまったりして、やる気が持続しないこともあります。そんなときは、小さな達成感を毎日積み重ねていくことがやる気を取り戻すきっかけになるはずです。私はよく英語の学習をスポーツや楽器の練習に例えます。反復練習なしに、ある日突然英語の達人になっているということは絶対にありません。大学生のみなさんが一日一日の小さな進歩を実感しながら前に進めるよう、応援していきたいと思っています。

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