投球障害予防システムのための 投球フォーム変化検...
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2012.1.30
投球障害予防システムのための投球フォーム変化検出アルゴリズムの提案CPSF tetujin
2012年1月30日月曜日
概要
✤ 装着型センサを用いた投球フォーム変化検出アルゴリズムの提案
2012年1月30日月曜日
背景
✤ 肩や肘の投球障害の高い発症率
✤ 76.2%の選手が痛みをかけた状態でプレー(大倉 俊之, 2003)
✤ 主な原因は過度の投球と不適切な投球フォームでの投球(中村 康雄, 2003)
✤ 個人に任されたコンディション管理
✤ 主観による疲労判断
✤ チーム内での選手数に対して少ない指導者数
✤ 生理学的な投球疲労計測
✤ 血中乳酸値,肩関節可動域,最大発揮筋力,球速の低下
✤ センサによるスポーツ支援
2012年1月30日月曜日
投球障害の現状-慶應義塾高校・大学野球部員181名へのアンケート調査-
✤ 全体の57%の選手が投球障害の経験あり[Fig1]
✤ 63%が痛みを抱えた状態で練習[Fig2]
✤ 原因の83%が「過度の投球」や「不適切な投球フォーム」[Fig3]
43%57%
Fig1. 投球障害発症率
13%17%
33%
37%
Fig3. 投球障害の原因
過度の投球不適切な投球フォームどちらもその他
20%
38%43%
Fig2. 練習中の痛み
よく有る時々ある全くない
ありなし
2012年1月30日月曜日
1. 投球数増加による三角筋・棘上筋の疲労
✤ ECKからLCKでの肩関節外転動作の低下(肘下がり)
✤ LCKからACLでの最大外旋角度の低下
2. ACLでの肩関節への肩関節前方への剪断力の増加
3. 関節唇,靭帯への疲労・負荷蓄積
4. 投球障害に繋がる
投球障害の発症メカニズム-慶應義塾大学スポーツ医学研究センター 石橋秀幸より-
肩関節外転角度
肩関節外転角度
WUP ECK LCK ACL FWT2012年1月30日月曜日
1. 投球数増加による三角筋・棘上筋の疲労
✤ ECKからLCKでの肩関節外転動作の低下(肘下がり)
✤ LCKからACLでの最大外旋角度の低下
2. ACLでの肩関節への肩関節前方への剪断力の増加
3. 関節唇,靭帯への疲労・負荷蓄積
4. 投球障害に繋がる
投球障害の発症メカニズム-慶應義塾大学スポーツ医学研究センター 石橋秀幸より-
肩関節外転角度
肩関節外転角度
WUP ECK LCK ACL FWT2012年1月30日月曜日
1. 投球数増加による三角筋・棘上筋の疲労
✤ ECKからLCKでの肩関節外転動作の低下(肘下がり)
✤ LCKからACLでの最大外旋角度の低下
2. ACLでの肩関節への肩関節前方への剪断力の増加
3. 関節唇,靭帯への疲労・負荷蓄積
4. 投球障害に繋がる
投球障害の発症メカニズム-慶應義塾大学スポーツ医学研究センター 石橋秀幸より-
肩関節外転角度
肩関節外転角度
WUP ECK LCK ACL FWT2012年1月30日月曜日
動作変化計測による投球疲労計測
✤ 三次元解析手法
✤ ハイスピードカメラ(DLT法)
✤ 光学式モーションキャプチャシステム
✤ 装着型3Dセンサを用いた動作解析
✤ 投球フォーム変化箇所:肘下がり
✤ ECKでの肩関節外転角度の低下
✤ ACLでの肩関節最大外旋回の低下
✤ 運動連鎖の破綻
Fig6. 光学式モーションキャプチャによる撮影風景
Fig7. DLT法時のキャリブレーション風景
Fig8. 3Dセンサの装着例
2012年1月30日月曜日
問題意識
✤ 個人でのコンディション管理では客観的な投球疲労取得は困難
✤ 実際の練習での既存システムの使用は困難
2012年1月30日月曜日
アプローチ-装着型センサを用いた投球フィーム変化の検知-
✤ 投球数の増加に伴う投球フォーム変化計測
✤ 単一の装着型センサデバイスの使用
2012年1月30日月曜日
投球時の角速度データReleasMaxoutTopCockTakeback
-400-300-200-1000
100200300400500
ZYX
2012年1月30日月曜日
基準投球データ管理部の設計
✤ 基準投球データの作成と保存
1.健常な投球フォーム(Good Form)での投球×10球,疲れた投球フォーム(Bad Form)での投球×10球
2.投球動作判定モジュール(後述)よりリリースポイントの取得
3. リリースポイントから400フレームの角速度データを取得
4. 各フォーム10球分の角速度データの平均値を保存
2012年1月30日月曜日
投球フォーム変化検出アルゴリズムの流れ
1. 投球動作判定
2. 投球フェーズ分解
3. 投球フォーム変化算出
2012年1月30日月曜日
投球動作判定の設計
1. 一時投球データ保存✤ 400個フレーム分の角速度データを一時保存
2. 肩関節外内動作(Release)取得✤ 閾値による判定
3. 相関レベル判定✤ 一時投球データ保存部から一時投球データ配列を取得
✤ 基準投球データ配列の取得
✤ 各軸の相関係数の割合から投球動作を判定
投球動作判定 投球フェーズ分解 投球フォーム変化算出2012年1月30日月曜日
肩関節内外旋運動(Release)の取得
✤ Release付近でY軸値が0
✤ 『野球投球における上肢・体幹運動の慣性センサ計測』2011,斎藤健治 他
✤ 急激な肩関節内外旋運動(=Y軸値の急激な増減)
✤ 閾値:
✤ -350deg/sec✤ 1000球
投球時角速度グラフ
Y軸角速度
Release
投球動作判定 投球フェーズ分解 投球フォーム変化算出2012年1月30日月曜日
相関レベル判定
✤ 比較データの取得
✤ 一時保存モジュールより一時保存角速度データ(400フレーム分)を取得
✤ 基準投球データ管理モジュールより,基準投球角速度データ(GoodForm)を取得
✤ X, Y, Z軸それぞれの相関係数を取得
✤ それぞれの相関係数がY軸 > 0.8・X,Z軸 > 0.5の時,投球動作と判定
投球動作判定 投球フェーズ分解 投球フォーム変化算出2012年1月30日月曜日
3. 投球フェーズ分解
✤ 運動連鎖モデルによる投球フェーズ分解
✤ Releaseからの逆算
✤ Release, Maxout, Top, Cock, Takebackの順で特徴動作を取得
特徴動作
Release 分析開始位置
Maxout Y<0
Top Z>0
Cock Y>0
Takeback X>0
投球動作判定 投球フェーズ分解 投球フォーム変化算出2012年1月30日月曜日
4. 投球フォーム変化率算出
✤ 変化率計算区間(Top~Maxout)の角速度データ取得
✤ 計測投球データ(Now Form)
✤ 基準投球データ(GoodForm)
✤ NowFormとGood Fromの相関係数(NowR)を求める
✤ Good From とBad Formの相関係数(BaseR)を求める
✤ 投球フォーム変化率 = NowR / BaseR × 100
MaxoutTop
投球動作判定 投球フェーズ分解 投球フォーム変化算出
deg/sec
Time(1/200sec)
2012年1月30日月曜日
ハードウェア構成
✤ 実装言語:java
✤ データ解析用PC:MacBookPro 15inch (8GB, s28GHz Intel Core 2 Duo)
✤ 仕様センサデバイス : 9軸ワイヤレスセンサ
仕様
角速度センサ ±1500dps
サンプリング周波数 1~1000Hz(9段階)
寸法 55mm×40mm×22mm
重要 35g(電池を含む)
2012年1月30日月曜日
ソフトウェア構成図
角速度データ
投球フォーム変化率
基準投球データ保管
投球モーション分解モジュール
投球フォーム変化率算出モジュール
相関レベル判定モジュール
内外旋動作取得モジュール
角速度データ一時保存モジュール
投球動作判定
投球フォーム変化算出層
投球動作判定層 一時保存角速度データ 基準角速度データ
基準角速度データ
基準角速度データ 角速度データ
角速度データ二次投球判定結果
一次投球判定結果 角速度データ
角速度データ
2012年1月30日月曜日
評価実験
✤ 実験の目的✤ 連続投球における投球フォーム変化計測と提案アルゴリズムの評価
✤ 実験手法:連続塁間(27.431m)100球投球時の3項目の計測
✤ ボールコントロール能力
✤ 投球フォーム変化検出アルゴリズム
✤ 三次元動作解析
✤ 被験者:慶應義塾体育会野球部員 5名✤ 場所:慶應義塾大学下田グランド
2012年1月30日月曜日
評価手順
1. 100球連続投球の3項目の評価
✤ コントロール能力の測定
✤ 投球フォーム変化検出アルゴリズム
✤ ハイスピードカメラ
2. 1~10(Group1), 46~55(Group2), 91~100(Group3)の3群にグループ別け
3. 分散分析
✤ 三群間の分散分析:有意差あり(試技全体に投球フォームの変化有り)
✤ 多重比較:有意差あり(Group間で投球フォームの変化有り)
✤ Tukey-KramerのHSD検定 : 全ての2群同士を比較2012年1月30日月曜日
ボールコントロール能力の分析結果
✤ 集球ネットに投球
✤ 中心から50cm間隔に5, 4, 3, 2, 1, 0点
✤ 投球数の増加に伴う変化無し
✤ 分散分析結果:有意差なし被験者
平均値(±標準偏差)平均値(±標準偏差)平均値(±標準偏差)p被験者
Group1 Group2 Group3p
A 3.4(±1.17) 3.6 (±1.35) 3.4 (±1.17) 0.92
B 3.5 (±1.08) 4.1 (±0.74) 3.4 (±1.35) 0.31
C 3.4 (±1.17) 3.2 (±1.69) 3.2 (±1.48) 0.94
D 4.1 (±0.88) 3.4 (±1.17) 3.3 (±1.25) 0.23
E 3.5 (±1.08) 4.1 (±0.74) 3.4 (±1.35) 0.31
ALL 3.44(±1.24) 3.46(±1.36) 3.3(±1.28) 0.8
肩関節外転角度の分散結果
集球ネットの的
2012年1月30日月曜日
投球フォーム変化検出アルゴリズムの分析結果
✤ 投球数の増加に伴う変化有り
✤ 分散分析結果:有意差あり
✤ 多重比較結果:Group1とGroup2&3 に有意差あり
被験者平均値平均値平均値
p被験者Group1 Group2 Group3
p
A 52.23 80.91 80.91 0.0001
B 24.19 30.78 30.78 0.3707
C 22.48 99.73 99.73 0.0001
D 36.62 46.96 46.96 0.0151
E 68.03 94.84 94.84 0.0001
ALL 40.71 70.64 73.04 0.0001
Group1 Group2 Group3
Group1
Group2
Group3
-13.44 -10.69 19.24
-10.69 -13.45 16.49
19.24 16.49 -13.45
センサ固定例
投球フォーム変化率の分散結果
Tukey-KramerのHSD検定結果
2012年1月30日月曜日
三次元動作解析全身マーカー設置位置
肩関節外転角度
ハイスピードカメラ設置位置と仮想三次元空間
✤ 目的
✤ 三次元動作解析による肩関節外転角度計測
✤ 計測期間
✤ 1~10球,56~55球,91~100球
✤ マーカー設置位置
✤ 右肩,右肘,胸骨最上部
✤ 計測手法:DLT法
✤ ハイスピードカメラ(CAHIO EXILIM PRO EX-F1)×2台
✤ 300fps2012年1月30日月曜日
三次元投球動作解析結果-肩関節外転角度-
✤ 投球数の増加に伴う変化あり
✤ 分散分析結果:有意差あり
✤ 多重比較結果:Group1とGroup2&3に有意差
肩関節外転角度
被験者平均値平均値平均値
p被験者Group1 Group2 Group3
p
A 11.77 11.43 21.94 0.001
B 9 12.67 11.57 0.0014
ALL 11.77 22.43 21.94 0.0001
肩関節外転角度の分散結果
Group1 Group2 Group3
Group1
Group2
Group3
-4.66 -4.31 5.51
-4.31 -4.66 5.86
5.51 5.86 -4.66
Tukey-KramerのHSD検定結果
2012年1月30日月曜日
結果
✤ ボールコントロール能力は投球数の増加により変化しない
✤ ECKにおける肩外転角度は投球数の増加に伴い低下
✤ 投球フォーム変化検出アルゴリズムは投球数の増加に伴い増加
2012年1月30日月曜日
考察
✤ 投球強度の異なる投球動作への対応
✤ 投球フェーズ分解の精度向上の必要性
✤ ECKにおける上腕動作に個人差が大きいためCockやTakebackの取得が困難
✤ 実際の練習を想定した実験の必要性
✤ 部活動の練習前・練習の間・練習後に計測
✤ 三次元動作解析の解析時間の負荷
2012年1月30日月曜日
まとめ・今後の展望
✤ まとめ
✤ 装着型角速度センサを用いて,投球数の増加に伴う投球フォーム疲労を検知できた
✤ 今後の展望
✤ 複数の強度強度への対応
✤ 光学式モーションキャプチャとの同時計測
✤ 装着型センサデバイス(Ripken)の実装
✤ 学習システムの導入
2012年1月30日月曜日
ご清聴どうもありがとうございました
2012年1月30日月曜日
補足資料
2012年1月30日月曜日
肩関節の投球障害
✤ ベネット骨棘
✤ 上腕二頭筋長頭腱炎
✤ 関節唇損傷
✤ 腱板炎・腱板断裂(インピンジ症候群)
✤ 亜脱臼障害(デッドアーム症候群)
✤ SLAP損傷(Superior Lablum lesion Anterior and Posterior)
2012年1月30日月曜日
SLAP損傷とは
✤ 肩関節唇損傷
✤ 長頭腱・ 関節唇複合体損傷
✤ 用語説明
✤ 関節唇…上腕骨の受け皿になっている、肩関節の円上の軟部組織
✤ 上腕二頭長筋…関節唇につながる関節唇に繋がる筋肉
✤ 棘下筋…投球時にブレーキとなる筋肉(インナーマッスル)
✤ 三角筋…肘を上に上げる筋肉
SLAP損傷を発症した関節唇肩関節における関節唇位置
2012年1月30日月曜日
野球における投動作
✤ 投球フェーズの定義✤ 【WUP】ワンドアップ期 : 予備動作 ~ 踏込み足着地✤ 【ECK】前期コッキング期 : 踏込み脚着地 ~ トップ位置✤ 【LCK】後期コッキング期 : トップ位置 ~ 肩関節最大外旋✤ 【ACL】アクセレーション期 :肩関節最大外旋 ~ ボールリリース✤ 【FWT】フォロースルー期 : ボールリリース ~ 腕の巻込み動作
WUP ECK LCK ACL FWTFig.4 投球フェーズの分類図 ( 中村真理,『投球動作解析システムによるTOPポジションの運動学的解析,2002』より引用)
2012年1月30日月曜日
投球数の増加にともなう投球フォーム変化箇所 『投球数の増加にともなう投球動作の変容』2009, 平山大作 他
1. ECKにおける肩関節外転角度
2. ECKにおける肩関節水平外転角度
3. LCKにおける肩関節最大外旋角度
2012年1月30日月曜日
投球フェーズ分解における誤分解
✤ Good Case ✤ Bad Case
2012年1月30日月曜日
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