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1

科学技術イノベーションと人材育成

平成28年8月24日

神戸市立青少年科学館館長

和田 智明

2

私の略歴

1951年 神戸で生まれる。 小学校・中学校・高校を神戸で過ごす

1987年 東京大学工学系大学院(修士)卒、科学技術庁に入庁

2008年から2010年 文部科学省科学技術政策研究所所長

2010年から2014年 東京理科大学教授 2014年から 神戸市立青少年科学館館長

他に・アジア原子力フォーラム(FNCA)コーディネーター・JST(科学技術振興機構)研究開発センター特任フェ

ロー・若狭湾エネルギ研究センターアドバイザー

Discussion between PM Hatoyama and

Nobel Prize Winners ( Nov. 2009)

Nobel Prize Laureates;

“What matters in science is generating new ideas by making maximum effort to be the best in a certain field.”

“If we are satisfied with second place, we could end up 30th place. If we only copy, it means we do nothing.”

第4期科学技術基本計画

4

5

エビデンスベースの科学技術政策

過去のデータや内外の調査結果を基にした戦略で,日本全体の科学技術レベルを向上させる。

プロ野球で言えば、野村監督が始めたID野球に似ている。

第5期科学技術基本計画(平成28-32年度)の概要(1)

• 未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取り組み

– 非連続的なイノベーションを生み出す研究開発を行い、新しい価値やサービスが創出される「超スマート社会」を世界に先駆けて実現する。

– プラットフォーム技術(IoTシステム構築、AIデバイス、サイバーセキュリティ)

– コア技術(ロボット、センサ、バイオテクノロジー、素材・ナノテク、光・量子)

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第5期科学技術基本計画(平成28-32年度)の概要(2)

• エネルギー、資源、最先端医療技術、モノづくりの競争力向上、地球規模の気候変動への対応、自然災害への対応、宇宙・海洋開発など経済・社会的課題への対応

• 若手研究者の環境整備、女性研究者の活躍促進など人材力の強化

• オープンイノベーションの促進、新規事業に挑戦する中小・ベンチャー企業の創出強化

• 政府研究開発投資の総額:5年間で約26兆円➡対GDP比1%

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インダストリ4.0 (ドイツ)

• 2011 年にハイテク戦略2020 のアクションプランとして、次世代の製造業高度化、デジタル化に資する研究開発政策「インダストリ4.0」が連邦政府から発表された。

• インダストリ4.0 とは第四次産業革命を意味し、モノのインターネット(Internet of Things: IoT)や生産の自動化(Factory Automation)技術を駆使し、工場内外のモノやサービスと連携することで、今までにない価値や、新しいビジネスモデルの創出を狙った次世代製造業のコンセプトである。

• 18 世紀の蒸気機関による生産技術(第一次産業革命)、19 世紀に興った電気エネルギーによる大量生産(第二次産業革命)、70 年代のコンピューター制御による生産技術(第三次産業革命)を経て、情報通信技術とドイツの強みであるものづくり技術を統合することで生産をデジタル化し、2025 年ごろまでにスマートファクトリを実現しようという試みである。

8

インダストリ4.0のイメージ図

9インダストリ4.0のデモ機(Ostwestfahlen-Lippe University)

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日本の研究開発費(2013年度)

(×10億円)2013年度性格別研究開発費

869

9,439

1,300 884217

321669492

2,354

主要国の論文数シェアと引用度数TOP10%論文数シェア

11全分野での論文シェアの3 年移動平均(2012 年であれば、PY2011、PY2012、PY2013 年の平均値)。整数カウント法である。被引用数は、2014 年末の値を用いている。資料:トムソン・ロイター Web of Scienceを基に、集計

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メッシュ内のシェア

サイエンスマップ2006上に示した日本論文比率

素粒子・宇宙論

物性研究

ナノサイエンス

化学合成

環境

心臓・血管疾患

脳研究

植物科学研究

ポストゲノム研究

感染症・

免疫研究 がん研究

肥満研究

反ド・ジッター空間と共形場の理論の双対性から見たブレイン宇宙論(ID65, 35%)

アンテナ系と電荷分離系をまねた人工光合成モデルの構築(ID80, 80%)

高温超伝導スペクロトスコピー/新奇電子相(ID58, 44%)

二硼化マグネシウムの超伝導特性と応用(ID53, 27%)

自然免疫(ID108, 38%)

グレリン/機能と病態生理的意義(ID15, 34%)

(注) 論文シェアが5%を水色で表示し、30%以上を赤色で表示した。論文シェアの計算には整数カウントを用いた。データ: Thomson Scientific社 “Essential Science Indicators”に基づき科学技術政策研究所が集計

研究することの目的

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ボーア型研究

(自然や生物の原理と原則を解明する研究)

パスツール型研究

(原理の解明により、社会で使用されることが期待される研究)

ペーターソン型研究

(データをしっかりそろえていく研究)

エジソン型研究

(実用に供されることがすぐに期待される研究)

No Yes

Yes

No

真理の探究が目的ですか?

社会に役立つことを目的にしていますか?

1414

Research Dynamic Model (D. E. Stokes)

(パスツール型研究の重要性)

ボーア型研究(Pure basic

Research)

パスツール型研究

(Use-inspired

Basic research)

エジソン型研究(Purely applied

research and

development)

Improved

technology

Improved

understanding

Existing

understanding

Existing

technology

1515

Motivation for the projects

which produced top 1% highly cited papers

15%25%

15%45%

Solving specific issues in real life

Other Very important

Purs

uit o

f fu

nda

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l

princip

les/u

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11%9%

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JAPAN US

( Nagaoka, Hitotsubashi Univ.)

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重視すべき科学技術の方向性

基礎研究

国際的課題への貢献国際競争力のある

先端技術開発

○実現される社会

低炭素社会・新エネルギーシステム社会

高度健康医療システム

高度教育・人材育成システム

男女共同参画社会

地球環境、感染症等国際的課題への貢献

景気低迷下での研究開発力維持

アジアにおける科学技術協力体制

○重視すべき方向性

理数教育の充実・強化(平成20年学習指導要領の改正)

ゆとり教育からの転換

学術研究や科学技術の世界的な競争が激化する中で国際的な通用性や内容の系統性などを踏まえた理数教育の質・量両面での充実

小学校の理科授業時数は16%増、中学校の理科授業時数は33%増(英語教育は小学校5年生から、中学校の英語授業時数は33%増)

• 知識・技能の定着のための繰り返し学習、思考力や表現力育成等のための観察・実験の充実

• 科学技術が日常生活や社会を豊かにしていることや安全性の向上に役立っていることへの配慮を新たに追加(中学校)

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18

原子核、陽子、中性子、クォーク

19

陽子と中性子

• 陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個でできている。

• 中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個でできている。

• アップクォークはプラス3分の2、ダウンクォークはマイナス3分の1の電荷をもっている。

• 陽子と中性子の電荷は?

(答)

■陽子の電荷 2/3 x 2 + (-1/3) x 1 = 1

■中性子の電荷 2/3 x 1 + (-1/3) x 2 = 0

クォークとレプトン(素粒子)

世代 電気量

第1世代 第2世代 第3世代

クォーク

アップ(μ) チャーム(c) トップ(t) 2/3e

ダウン(d) ストレンジ(s)

ボトム(b) -1/3e

レプトン

電子(e⁻) ミュー粒子(μ⁻)

タウ粒子(τ⁻) -e

電子ニュートリノ(νe)

ミューニュートリノ(νμ)

タウニュートリノ(ντ)

高校「総合物理」(数研出版)

20

宇宙は何でできているのか?

21

22

海外インタビュー調査 インタビュー先

計地域 キャリア 性別 日本との関わり

米 欧 トップ 若手 男性 女性 少 多少 多

ライフサイエンス 19 11 8 15 4 13 6 9 5 5

情報通信 10 5 5 7 3 8 2 6 3 1

環境 10 2 8 7 3 7 3 7 2 1

ナノテク・材料 16 3 13 13 3 15 1 7 3 6

注1:若手研究者は、若手(概ね40歳以下)対象の著名な賞を獲得している研究者など。注2:日本との関わり

少 :日本にほとんど来たことがない多少 :学科・会議等の短期滞在のみ多 :何度も来ている。長期間共同研究をしたことがある など

北米、ヨーロッパ

アジア

計地域 性別 日本との関わり

国内 海外 男性 女性 少 多少 多

ライフサイエンス 6 3 3 4 2 0 0 6

情報通信 3 1 2 2 1 0 1 2

環境 3 1 2 3 0 0 1 2

ナノテク・材料 6 2 4 4 2 1 2 3

その他 5 1 4 4 1 0 0 5

国内: 物質材料研究機構、沖縄科学技術研究基盤整備機構、理化学研究所、産業技術総合研究所海外: 中国、香港、韓国、台湾、シンガポール、タイその他:数学、物理、社会基盤

22

2323

日本の教育システムは、学生が独力でものを考えるようになっていない。社会的に頑強なヒエラルキーができており、従来思考や権威に挑戦する精神を持っていない。

研究室のリーダー(教授など)の力が大きく、若い人の創造力、課題設定能力が育っていない。

日本人研究者・学生は、英語の習熟度が低く、国際社会でのコミュニケーション不足が目立つ。

日本の研究者は国際性が弱く、あまり海外に出ようとしない。

国際舞台での立ち話などに日本人研究者はあまり参加しない。

海外からみた日本に関する意見(米欧) その2

米国は世界各国からの人間やあらゆる種類のアイディアに開放的であるため、教育制度が世界で最善のものである。独立的な思考、チームプレイという科学者がキャリアを積むに当たって、必要不可欠な能力も適切に教育できている。

アイルランド、ポルトガル、ドイツ、イギリスなどは、米国の制度を参考に、有能な学生や教員を採用し、グローバル市場で競争力を持った人材を育てられるようにした。

日本の研究者・技術者の特徴

人材育成、世界で優れているあるいは注目される教育機関、教育プログラム

科学や数学の試験のランキングで上位でも「良い科学者」は生み出せるが「新たな分野を拓くような傑出した科学者」は輩出されない。

日本では、「なぜ」を追求するような考える力を育てる教育をしていない。

米欧各国は、外国からの優秀な人材を大学や研究所に積極的に受け入れている。

現代の重要なコミュニケーションツールであるブログに日本人研究者は登場しない。

技術開発力、アイディアを製品化する能力はすばらしい。

2424

英語を使用した論文のライティングスキル、学会でのプレゼンテーションスキルが不十分。全体的にアピール力が弱い。

日本は博士号取得後も日本でも働けるから外に行かない。日本人は外国に1年でもいいから出るべきである。

海外からみた日本に関する意見(アジア) その2

シンガポールでは博士号取得に必要な単位を認定する授業には、世界中からトップクラス研究者を講師として招いている。

日本は文化的には憧れの国だが、英語の研究環境がないため、科学技術の研究先には選ばない。

日本の研究者・技術者の特徴

人材育成、世界で優れているあるいは注目される教育機関、教育プログラム

米国では理工系の研究者でも経済・経営をしっかり勉強している。日本は教育していないからイノベーションにつながるような成果を出しても論文投稿しか考えず、ビジネスを考えない。米国のノーベル賞受賞者の半数以上はベンチャーを作っている。

韓国には若者の海外経験向けのBrain Korea 21プロジェクトがある(3ヶ月~1年海外経験できる)。 学問的に高レベルを目指す日本の学生が減少してい

るようにみえる。

日本の大学の現状でみると、博士まで行かずに修士で卒業してしまう人が多い。良い学生ほどその傾向がある。

日本の研究者の優れている点は、特に基礎研究分野において、偶発性的に新たな発見を生み出せるファジーな土壌が未だ残っていること。

最近の若手研究者は内向的になっていると聞く。日本全体または日本の研究環境が安定しすぎているのではないか。

韓国、台湾などアジアの新興国と比較すると、研究自体のレベルがずば抜けているので英語力が良くなればもっとアピールできる。

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英語の学習

英語を話す人口 約20億人

英語を母国語とする人 3億8千万人 (米、英、オーストラリア等)

英語を母国語としない人 16億人

世界では、「シンプルで論理的かつ効果的に伝える英語」が主流になりつつある。 →中学英語が重要

子供が母国語を覚えるには1万時間以上必要。

日本の中学、高校での英語授業時間は6年間で1,000時間

日本語と英語は母音、子音の割合等構造が違い、習得に時間がかる。

英語は学問ではなく、言葉

• 間違えるのをおそれずに話すこと、

• 毎日2-3時間以上の練習を3年間連続して続けると、誰でも普通にゆっくり話せるレベルまで到達できる。

26

国際的に通用する研究者になるためには

心身の健康→不撓不屈(ふとうふくつ)の精神を支える体力

学問的能力(特に基礎学力)

視野の広さ

コミュニケーション能力(国語と英語)

正義感と品格

神戸市立青少年科学館の沿革

• 1984年4月 開館 ポートアイランド博覧会に出展 された「神

戸館」と「神戸プラネタリウムシアター」を増改築

• 1989年 新館開館 延床面積 12,000㎡

• 1995年 阪神・淡路大震災、半年間休業

• 2006年 指定管理者制度の導入

• 2014年4月 SFG神戸が運営主体に、バンドー化学がネーミ

ングライツを取得、愛称が「バンドー神戸青少年

科学館」に

• 2015年3月 第2展示室改装 「宇宙と地球」フロア

• 2016年3月 第5・6展示室改装 「神戸の科学技術」、「スー

パーコンピュータ展示」、「IPS医療展示」を導入

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年間入場者数(平成27年度)(神戸市立青少年科学館)

展示館 プラネタリウム 合計

入場者数 247,000 114,000 361,000

1日平均 793 366 1,159

28

(人)

29

科学技術が高度化し、理解しにくくなる中、その原理や技術の仕組みを伝えること、科学に対する正しい知識をもつこと、正確な情報を誰もが理解できるように提供することが今後更に重要となってくる。

大人(特に親)の科学リテラシーを高めることが今後の科学

教育の振興にとって不可欠であり、大人も気軽に科学に親しめる場が必要である。

平成20 年改定の新学習指導要領では学校と博物館や科学学習センターとの連携・協力が謳われており、理科教育における科学館への期待が高まっている。

児童生徒の理科離れ対策として、小学校における効果的な授業づくりのための支援や、子どもたちが安心して科学に親しめる遊び場の提供などが科学館に期待されている。

- 科学館に求められるもの -神戸市教育委員会・「科学館の魅力向上に関する構想」(平成25年3月)

時空ホッパー (平成27年3月)

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幅15m×高さ7.8mの大画面映像を活用した日本初の浮遊体験型アトラクション。3つのミッション(銀河系調査、地球内部調査、地球の歴史調査)に挑戦します。

スーパーコンピューターを核に、まち・ひと・いのちをつなぐ~神戸科学技術クエスト~

・神戸発の科学と技術、生命の科学(IPS研究等)を展示 (平成28年3月完成)

「ロボットと創る未来」特別展(7月23日ー8月31日)

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国際平均と比較して数学と理科好きな生徒の割合は明らかに低い。78%67%国際平均(中学生)

58%39%日本(中学生)

理科数学

高学年になるほど、数学と理科が好きな生徒の割合は低くなる。

30

40

50

60

70

小5 小6 中1 中3

数学 理科

数学と理科が好きですか?

TIMSS 2007%

80

20 (年)小4 中2

科学館の設置されている市の生徒への効果-理科の勉強は大切だと思う-

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男女別割合(カッコ内は全国平均)(S市)

(科学技術政策研究所調査資料No.107)

ご清聴ありがとうございました。

35

http://wadatomoaki.web.fc2.com/

をご覧ください

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