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私の乳癌の診断と治療

まさい乳腺クリニック 正井良和

2011. 9. 8 中央市民病院Open Conf.

乳癌の疫学

乳癌の病理

診断技術の進歩と意識の高まりにより早い段階の乳癌が増えている。

ステージ0は15%、1は40%、2は20%、3は10%、4は5%程度の印象。

過去の乳癌の治療成績

約85%

約75%

約70%

約40%

約10%

(10年生存率) 20年以上前

10年以上前

治療法の進歩により治る人がどんどん増えている。

私個人はステージ4でも治癒をめざして良い時代が来たと考えている。

乳癌治療の特色

• 有効な抗癌剤が多い

• ホルモン療法が有効

• 分子標的治療剤ハーセプチンやタイケルブが使える

• 骨転移に対しゾメタなどが有効(ゾメタは再発予防効果もある)

• 温存手術の割合が増加し、9割以上に施行されている

• センチネルリンパ節生検が広く行われるようになり、QOL(quality of

life:生活の質)を損ねる後遺症である上肢浮腫が減尐してきた

手術

薬物療法

概ね進行が遅く、治療によく反応するため比較的治りやすい癌です

• I.診断

– 診断の流れ – 病理学的検査

• III.薬物療法 – ガイドライン – ホルモン療法 – 化学療法 術後補助化学療法 術前化学療法 転移性乳癌の治療

• II.手術 – 整容性向上のために – センチネルリンパ節生検

I. 診断 診断の流れ

病理学的検査

診断の流れ 問診・視触診

マンモグラフィ(MMG)

乳腺超音波(US)

良性 乳癌

CNB・FNA・US下MMT マンモトーム(MMT)生検

異常なし

CT・MRI etc. 治療へ

3-12か月後の再診または切除(生検)

1-2年毎の検診

若年者で省略の場合あり

USで腫瘤なく異常石灰化のみ* USで腫瘤あり*

*血性乳頭分泌のみの場合は細胞診と共にMRIを行う

ここまでがマンモグラフィー検診

マンモグラフィ(MMG)

腫瘤

石灰化

腫瘤のカテゴリー分類 形態

境界

濃度

円形 多角形 分葉形 不整形

明瞭平滑 微細鋸歯状 不明瞭 スピキュラ

評価困難 脂肪濃度 高濃度 等濃度

1 異常なし

2 良性

3 高確率で良性

4 悪性の疑い

5 悪性

2 3 4 5

石灰化のカテゴリー分類 良性石灰化(1,2)

鑑別が必要な石灰化

血管 線維腺腫 円形 中心透亮性

瀰漫性 領域性 集簇性 線状 区域性

微小円形 淡く不明瞭 多形性・不均一 微細線状

2 2 3 5

3 3 4 5

3,4 4 5 5

1 異常なし

2 良性

3 高確率で良性

4 悪性の疑い

5 悪性

マンモグラフィーの問題点

• 若い方は乳腺が多く、腫瘤が見分けにくい →だからMMG検診は40歳以上。

• 「はずかしい」 →当院では女性技師が月水土に来ます。 • 「痛い」 →おなかの脂肪をつまんでも痛くないように、痛むのは 乳腺である。正確な診断のためにも生理のある方の検 診は乳腺が柔らかくなる生理後(開始後5-12日)が良い。

乳腺超音波

乳腺超音波カテゴリー分類

内部エコー

私の病理検査法 超音波で異常あり

5mm以上

USガイド下針生検 CNB:coreless needle biopsy

穿刺吸引細胞診 FNA:fine needle aspiration

ABC:aspiration biopsy cytology

マンモトーム生検 経過観察

yes

yes no yes

no

no

US下マンモトーム生検・切除生検

MMGでcat.3以上の石灰化

USガイド下FNA

判定困難

判定困難

• 吸引細胞診(FNA, ABC) 多くの場合良性・悪性の鑑別のみ 乳管内乳頭腫と非浸潤癌の鑑別が困難な場合あり • 針生検(CNB) 組織診で免疫染色が可能。治療決定に必要ER/PgR, HER2, MIB-1等を検査できる • マンモトーム(MMT) 多量に採取できるため病理診断はさらに確実だと思う がそれほどのメリットはないと思う。 小さな良性腫瘍を全部切除することができる

マンモトーム生検 神戸中央市民病院では2006年5月よりステレオガイド下マンモトーム(日立製)を導入した。現在も神戸市には1台しかない。(エコーガイド下のマンモトーム生検を行っているところはある)

II. 手術 整容性向上のために

センチネルリンパ節生検

整容性向上のために

(A) 組織欠損部の充填

(B) 皮膚切開の工夫

センチネルリンパ節生検

これまでの乳癌手術では腋窩リンパ節はすべて郭清され、その結果20-30%の確率で上肢浮腫が発症していた。

転移の無いリンパ節の切除は有害無益である。そこで術前転移が無いと診断した症例に対し、最初に転移するはずのリンパ節(センチネルリンパ節)の生検を行い、転移がなければ以下の郭清を省略する方法が導入された。

同定には色素法・RI法があるが、我々はさらにICG蛍光法(PDE法)を開発した。

III. 薬物療法 ガイドライン

ホルモン療法

化学療法(抗癌剤)

ガイドライン 大規模臨床試験の結果に基づいた、個々の症例に最適な治療を行うための目安

治療全般 ー 日本乳癌学会・NCCN(米)・・・

術後補助療法 - St. Gallen・Adjuvant Online!・・・

生存

1.00

術後の年数 1 12

0.75

0.50

0.25

ガイドラインに基づいた治療

0 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

P<0.00005

ガイドラインから外れている治療

カナダでの1,541 人の調査(1988~1992) JCO 22: 3685, 2004

ガイドラインに基づく治療

St. Gallen 2009 (St. Gallen 2011はほとんど同じ)

増殖能=Ki67 : 高い:>30% 低い:<15%

ER(+) ER(-)

HER2(+) C+Tr+H C+Tr

HER2(-) H±C C

2011年St.Gallenではこれらのgroupはホルモン反応性の強度・Ki-67値・ HER2によってLuminal A(低悪性度)とLuminal B(高悪性度)に再編された

Adjuvant! Online

例) 60歳 ER(+) grade2 2.1-3.0cm リンパ節転移1-3個 の10年生存率

術後療法 : アロマターゼ阻害剤 + 化学療法(AとA→TAXANの比較)

・術後補助化学療法の効果がわかるインターネットの無料サイト

・米国San Antonio data baseなどを基に作成

・現在乳癌のほか結腸癌版と肺癌版がある

ホルモン療法 女性ホルモン(エストロゲン)が増殖に必要な乳癌(ホルモン反応性乳癌)に対し、女性ホルモンを減らしたり働きを弱めることで抗癌作用を発揮する

乳癌のホルモン療法

ER陽性細胞が1%以上のホルモン反応性乳癌患者(約2/3)に行う。

術後補助療法では5年間投与が目安である。ただし10年行ったほうが良いという臨床試験結果も出始めている。

抗癌剤感受性の低い高齢者には副作用の点からも良い適応になる。

最近ER陽性・HER2陰性乳癌に乳房温存率向上を目的とした術前ホルモン療法がおこなわれるようになった(針生検でMIB-1を再検することにより早期に効果判定ができる)。

ホルモン療法の作用点

MPA(ヒスロンH/プロベラ)の作用機序は多岐にわたっている

リュープリン ゾラデックス

ノルバデックス フェアストン

アリミデックス フェマーラ アロマシン

化学療法 DNA合成などを阻害し、増殖能の高い細胞を無差別に攻撃する

→ 毛母細胞や腸管など増殖能の高い正常細胞 にも作用し脱毛や下痢などの副作用をきたす

術後化学療法

(adjuvant)

治癒率の向上

無再発生存期間の延長

術前化学療法

(Neo-Adjuvant C)

(Prim.Systemic T)

乳房温存率の向上

抗癌剤感受性の確認

(他adjuvantと同じ)

転移性乳癌

延命

症状緩和

QOL向上 (治癒?)

乳癌の状態によって以下の3つに分けられ、それぞれ治療の目的が異なる

術後化学療法

私の術後化学療法

• 化学療法が必要な症例は術前化学療法を行っているため適用例はほとんどない

• 適否はSt.GallenとNCCNに基づいている

• 再発して後悔しないように私はややover気味にしている

• 術前化学療法の後の高再発危険群に対しTS-1/Xelodaを投与することもある(特にtriple negativeのnon-pCR症例)

最近ER(+)乳癌でCの重要性が低下したような潮流があるが(St. Gallenなど)、C+H≒Hが示されるまで私のなかでCの重要性は変わらないだろう

化学療法の適否が判断困難な症例は多数存在する

免疫組織染色でKi67(MIB-1)の発現割合を測定する。

Oncotype DXなどキット製品による測定。

保険適応無く実費で約50万円の患者負担。

↓ Prospectiveな検証は現在進行中である (結果は出ていない)

↓ 2011年St.Gallenでは30%以上を高値、 15%以下を低値とする

どれかひとつでもあれば化学療法?

症例2

32歳 女性 左乳癌 T2(2.5cm) N1(1/4) M0 IDC(Papillo-tubular ca.) Grade3 ER(+)>10% PgR(+)>10% HER2(1+) 2006.5 Bt+Ax 施行 Adjuvant : 5’-DFUR 1年間 ・ Zol+TAM 2年間投与中 2008.5 胸壁再発(切除)から肝転移・左PSLN再発発見 5.30 神戸中央市民病院紹介

6.2 DOC75 ① 6.23 DOC75 ②

6月2日 7月7日

CT:08年5月→11月 PET:08年4月→09年3月

DOCx7→ECx6→TS-1+TAMにて現在CR継続中

私のER(+)HER2(-)化療方針

• ER(+)HER2(-)は他のtypeに比べて著効率が低いことは承知しているが、再発して後悔しないためにも適応を広くしている(するだけしたら再発しても仕方がない)。

• 閉経前患者には効果が高く、積極的に使用したい(年齢が評価項目から落ちたのは納得できない。 40歳で再発するのと80歳で再発するのは社会的意味合い、quality of total lifeが違う)。

ただし、ホルモン療法が適当と考えられる症例には術前からホルモン治療だけを行う

投与後2週目以降に針生検を再施行しMIB-1値の変動をみて治療をそのまま続行するか追加・変更するかを決めている

術前化学療法

乳癌術前化学療法の意義

1. 本来なら乳房切除術が必要な3cm以上の乳癌に対しても腫瘍を縮小させることにより乳房温存術の可能性をもたらすこと

2. 温存可能症例に対してもさらに腫瘍を縮小させることにより、切除範囲を縮小させて乳房変形の尐ない手術の可能性をもたらすこと

3. 原発巣消失例は予後が改善すること

4. 抗癌剤の有効性がin vivoの状態で検証でき、無効な抗癌剤の無駄な投与をしなくてすむこと・再発時の薬剤選択の参考になること

• St. Gallenなどのガイドラインで化学療法が必要とされた症例に積極的に行っている。

• 乳房温存を希望されないなど、乳房切除術が前提であっても抗癌剤の反応性をみるために行うことを勧めている。

• ER(+)PgR(-)乳癌でも縮小率は悪くなく、より美しい温存術を行うため積極的に行っている。

私の術前化学療法の適応

化学療法を行うべき症例

タイプ別の腫瘍縮小効果 (腫瘍径の積の推移)

開始前 3コース目前 5コース目前 7コース目前 手術前

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

投与前 3コース前 5コース前 7コース前 OPE前

Luminal A Luminal B HER2 Triple Negative

私の術前化学療法の基本regimen • ER(+)HER2(-) ABIx4→(EC+Xel)x4→手術→ホルモン療法(5年) • HER2 (ABI+Tr)x4 → (EC+Xel)x4 →手術→ Tr x14(±ホルモン療法) • Triple negative ABIx6→ (EC+Xel)x6 →手術{→ TS-1/Xeloda(1-2年)}

• 高危険群と判断すればそれぞれ6コース行う

• 心疾患合併例でTC(DOC+CPA)を行うことあり

• TAXANは血管新生阻害作用があるため術後療法ではEC+Xelを先行している

• EC<EC+Xelである

• Infusion reactionが稀なためABIとしているが低悪性度癌にはDOCの方がいいかも

• Anthracycline containing regimen単独よりTAXANEを加えたほうが術前化学療法の成績がよいが、投与順の根拠はない。

• Preliminary study(FEC→DOC)でFECよりDOCのほうが腫瘍縮小率・有害事象とも勝っていたためDOCを先行させた。

DOC 75 x 4 followed by FEC 75 x 4

根拠

(~2006年11月)

効果予測のための短期術前療法

増殖因子としての癌遺伝子Ki67(免染抗体:MIB-1)がERやHER2と比肩する予後因子・治療決定のための因子として認識されるようになった。

ER(+)HER2(-)で化学療法適用の重要な指標である(cut off lineは14%が有力)。

一方、術前にホルモン剤・抗癌剤を2週間投与しても腫瘍径はほとんど変わらないがMIB-1は大きく変動し、 MIB1低下が有効性の指標と認識されつつある。

症例 56歳 女性 T2(23mm) N0 M0

浸潤性乳管癌(metaplasric carcinoma) Grade 3

ER(-)0% PgR(-)0% HER2(0) MIB1 80%

09.2.20 3.10

TS-1:100mg/日 7日間 5日間

2休 3休

Bp+SLNB Metaplastic carcinoma

pT2 pN0 f ly- v- Grade 3

広範なDCISあり

MIB1 : 80% → 6%

Adjuvantは DOC→TS-1を行った。

転移性乳癌の治療

再発乳癌

• 再発後の平均生存期間は約5年

• 遠隔再発症例はほとんどが癌死

• 局所再発(乳腺・所属リンパ節)は4人に1人が癌死 局所再発は小さな段階で見つかることが多く、局所再発が

遠隔転移をもたらすというより偶々局所再発と遠隔再発が同時期に起こったと考えるべきか

進行・再発癌に対する治療 治癒させることは困難

縮小は必ずしも延命につながらない(TTPが重要)

継続投与による長期不変も期待する効果のひとつ

過大な副作用は逆効果

悪液質の増悪

治療はHortobagyi(1997)の治療アルゴリズムに基づいて行うことが一般的である

Modified Hortobagyiのひとつ (北川ら 2007 日本臨床65巻 増刊号6)

進行・再発癌に対する治療 治癒させることは困難? 縮小は必ずしも延命につながらない(TTPが重要) 継続投与による長期不変も期待する効果のひとつ 過大な副作用は逆効果

悪液質の増悪

治療はHortobagyi(1997)の治療アルゴリズムに基づいて行うことが一般的である

悪液質の増悪

悪液質の増悪

術前化学療法でpCRに普通感がある現在、無治療例に対しては?

比較的効きにくい肝や肺に対して手術・放射線・RFAは?

症例によっては治癒を目指すべきではないか(特に初診Stage IV)?

いつまでもHortobagyiでいいのか?

• 病勢進行や年齢的なことからいずれは施行するはずの化学療法の導入のタイミングを逸してしまわないか

• 再発乳癌の初回治療で全生存期間がDOC+Xeloda >DOCとの報告がある。初回治療は強力にしたほうが良いのでは?

• 初診時遠隔転移のあるStage IV乳癌、ろくな治療を受けていない再発乳癌は分けて考えるべきだと思っている(特にHER2陽性乳癌。化学療法でpCRが得られると驚きをもって報告されたのはほんの10数年前。治癒を目指してもいいのでは?)

症例 (症例)44歳 閉経前女性 (家族歴・既往歴)特記点なし (主訴)全身痛・左乳房腫瘤 (現症) 2008年7月 転倒、以後腰痛持続。左乳房腫瘤自覚。 10月 腰痛増悪し近医受診。乳房腫瘤急速増大。 11月 紹介先の整形外科にてCT・US・骨シンチを受け、乳 癌による多発骨転移の可能性が高いと診断された。

11月27日 当院整形外科紹介受診。 28日 進行乳癌の疑いとして本科紹介。

(初診時所見) 疼痛のため体動困難。しびれは無い。 左乳房全体が硬く腫大しAxLN触知。 胸壁固定無し。皮膚変化無し。

骨シンチ(11/20・他院)

第1斜位

背面

血液検査(11/28) CBC 生化学 腫瘍マーカー

WBC 7900 TP 6.3 BUN 22 CEA 28.4

RBC 276 Alb 3.3 CRTN 1.67 CA153 1948

Hb 8.0 GOT 81 UA 6.9 BCA225 1230

Ht 24.7 GPT 79 Na 139 NCCST439 5.6

PLT 23.2 LDH 555 K 3.5 1CTP 44.0

Myelo 3 CPK 109 Cl 103

MetaMye 4 T-Bil 0.6 Ca 12.7

Band 2 ALP 860

Seg 50 CHE 550

Eos 2 TG 226

Lym 30 CHOL 204

Mono 9

胸部US(11/28)

左AC領域を中心に径8cm以上の腫瘤あり

皮膚に特変なし

AxLN swelling

PSLN swelling

SCLN swelling無し

CT(11/28) AxLN swelling 左乳房腫瘤 両側胸水(+無気肺)

肺・肝に明らかな腫瘤像なし

治療方針

左進行乳癌{T3/N3b/M1(骨&胸膜?)}が疑われるが病理診断は行われていない。病理結果が出てから治療を行っても大勢には影響しないと思われる

多発骨転移は明らかであり、告知後約2週間無治療であったPtの心情を考慮してまず即座にゾメタ(+NSAID)を開始した(骨へのRTは将来の手術可能性を考え、薬物の効果が不十分な場合に考慮する)。

針生検の結果を待って本格的な治療を開始するのもひとつの見識だが、同じ理由で翌日から治療を開始した。

が、

化学療法 or ホルモン療法

• 44歳という年齢からして、必ずいつかは化学療法を行う • ER(+)ならさらに化学閉経による効果も期待できる • Ptの重篤感が強く、治療に即効性を求めたい

進行・再発乳癌の治療方針はModify版も含めてHortobagyiのアルゴリズムによるのが現在も一般的である。本症例のホルモン感受性は未だ明らかでないが、life threateningな状態かどうかは議論の余地のあるところと考えられるのでホルモン療法の選択肢もありうる。

しかし

という理由で化学療法を選択した。

Anthracycline or TAXAN

• TC>AC、また経験上TAXAN(DOC)単剤でも治療効果はFECに劣らない

• HER2陽性の場合ハーセプチンの併用が容易 • TAXANも卵巣機能抑制効果は強力で、ER(+)ならばホルモン療法

の効果も期待できる • TAXANは胸膜移行性が良く現時点でのlife threatening factorであ

る癌性胸膜炎(?)に効果が期待できる

Anthracyclineから入るのが一般的であろう

しかし

の理由でDOCを選択した。

・用量はDOC75を目安に100mg/bodyとした

・TC>Tと思われるが ①いつかFEC/ECに変更する予定で、CPA大量投与後の副作用が心配 ②肝機能・腎機能の低下があり安全に行いたいのでDOC単独とした

経過(1)

11/28 1W 2W 3W 12/21

初診

緊急入院

ゾメタ(+NSAID) DOC

退院

Tr DOC+Tr+ゾメタ

IDC solid-tubular ca.

HG1

ER 70% PgR 0%

HER2 (3+:40%)

CEA 28.4 CA153 1948 BCA225 1230 1CTP 44.0 GOT 81 GPT 79 LDH 555 BUN 22 CRTN 1.67 Ca 12.7

疼痛スケール

安静時3

体動時7

鎮痛剤不要

自力歩行可能

食餌摂取良好

14.9 1065 762 27.7 22 18 355 11 0.62 8.0

US

11/28

2/4 (DOCx4後)

(PSLN 消失)

原発巣 (縮尺不同) AxLN (同縮尺)

3 x 1 cm

> 8 x 3 cm

その後の治療方針

• PDまたは重篤な副作用がでるまで同じ治療(DOC+Tr+Zometa)を継続する

• 次は EC+Zometaを行う

→縮小傾向のまま9コース施行

足の爪がはがれたため中止

FECではなくECを行った理由:

Fは経口剤として次に使うことにして、副作用の軽減を図る

→EC75から90に増量し計8コース(E:約700mg/m2)施行

経過(2)

11 2009.1 3 5 7 9 11 2010.1

CEA

30

20

10

0

ICTP

50

40

30

20

10

DOC+Tr+Zometa(1/3W) x 9 Tykerb+Capecitabin+Zometa

EC+Zometa(1/3W) x 8

11/28 12/18 2/4 4/3 6/5 CA153 1948 1065 191 33 WNL→ BCA225 1230 762 WNL→

次の治療は?

• 分子標的治療剤を使用したい • 脳転移を予防したい • ホルモン療法も併用したい

Long Time To Progressionを目指す

Tykerb + Xeloda + Zometa + TAM

乳癌の分子標的治療薬

癌細胞の増殖促進シグナルは癌細胞膜上のHER2蛋白から細胞内のチロシンキナーゼ系へと伝わる。

ハーセプチン(トラスツズマブ)は抗原であるHER2蛋白に対する抗体である。

タイケルブ(ラパチニブ)はチロシンキナーゼ阻害薬である。

脳転移

Bendell et al. Cancer 2003 34%

Heinrich et al. ASCO 2003 43%

Brufsky et al. ASCO 2003 50%

Clayton et al. Br J Cancer 2004 25%

Altaha et al. ASCO 2004 33%

Stemmler et al. ASCO 2005 31%

Yau et al. Acta Oncol 2006 30% (at 1 y)

Gori et al. The Oncologist 2007 35%

Brufsky et al. ASCO BCS 2008 33.4%

Incidence is higher than that reported in historical (10%–15%) and some autopsy (29.6%) series

ハーセプチンで治療を受けているHER2陽性

MBC患者の脳転移発症率は25-50%である

ハーセプチンは血液脳関門を通過できない

Yardley et al SABC 2007

Time to first CNS progression in patients with ErbB2 positive MBC, median of 12.1 months from diagnosis of metastatic disease

N =184

0 10 20 30 40 0

10

20

30

40

50

60

Time to CNS Event (months)

Freq

uenc

y HER2陽性MBC患者の脳転移は比較的

早期に起こる

(2年目以降は尐ない)

Incidence of CNS relapse states

0

1

2

3

4

5

6

7

(n=198) (n=201)

% o

f pat

ient

s

p = 0.045

治療開始後の中枢神経系での増悪 Tykerb® + capecitabine

Capecitabine alone

Cameron, D., et al.: Breast Cancer Res Treat., 112, 533-543 (2008)

タイケルブは脳転移を抑える タイケルブは低分子なので血液脳関門を通過する

経過(3)

11 2009.1 3 5 7 9 11 2010.1

CEA

30

20

10

0

ICTP

50

40

30

20

10

DOC+Tr+Zometa(1/3W) x 9 Tykerb+Xeloda+Zometa+TAM

(2010.4月よりリュープリン併用)

EC+Zometa(1/3W) x 8

11/28 12/18 2/4 4/3 6/5 CA153 1948 1065 191 33 WNL→ BCA225 1230 762 WNL→

FDG-PET(2010.1.29)

第1斜位

背面

骨にFDGの集積を認めるが、乳腺・リンパ節には認めない

(CT:08.11.28)

(骨シンチ:08.11.20)

• 2010年8月 元気に富士山登頂

• 2011年年2月 PET 骨にわずかに集積を認めるもさらに縮小 • 2011年5月 腫瘍マーカー 治療開始後初めてすべてWNLとなった

→ 予定通りTykerbは2年間とし、今秋から ハーセプチン+ホルモン療法+ゾメタ

その後の経過

Fin

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