Ⅱ.si-oh, si-h, si-cl, si-f などの末端構造 si-h, si-cl...Ⅱ.si-oh, si-h, si-cl, si-f...

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Ⅱ.Si-OH, Si-H, Si-Cl, SI-Fなどの末端構造 1. SiOHについて シリカガラス中のOH不純物は、作成方法によって、あるいはその後の使用環境によって、濃度、存在形態が大きく変化する。OH 不純物という表現を、とりあえずここで用いたのは、後述するとおり形態が多種多様であるためである。まず、バルクシリカガラスの場合、前述の通り、直接法(Type III)、溶融法(Type II)で作成したものには、多くの OH不純物が含まれている。光ファイバーも脱水工程が無ければ、OH不純物の存在する物になるし、アルカリ不純物が含まれていれば、自然にファイバー中のOH不純物量は増えていく現象も報告されている。薄膜では、シリコンウエット酸化膜、水蒸気酸化膜、陽極酸化膜はそのままで

OH不純物を多く含んでおり、他にもゾルゲル法、CVD法等で作成した膜も、脱水やOH不純物の生成を防ぐ工夫をしなければ、無水化はできない。OH 不純物を検出する、最も代表的かつ簡便な方法は、赤外吸収分光法であるが、他にも電子エネルギー損失スペクトル(EELS)、真空紫外分光などでも検出可能である。また、湿式分析法として、カール-フィッシャー法があり、ppm オーダーの OH 量の直接定量が可能である。測定法に関しての詳細は、キャラクタリゼーションの項に述べる。 シリカガラスは、赤外領域の大部分に関して不透明である。それは、1100cm-1付近に見られる Si-Oフォノンの散乱、並びにその倍音である 2200cm-1の吸収が強い為である。1100cm-1付近、というあいまいな表

現を用いているのは、ピーク値を特定出来ないからである。すなわち、製造方法や膜中の応力によってこの

ピーク値がシフトするからである。逆にその値のシフトから、物性や構造について議論することもなされて

いる。1100cm-1付近のピークは、1 ミクロン以上の膜厚になると透過率が 1%以下となり不透明となるが、OH 不純物の現れる近赤外域から赤外にかけての領域(約 2500cm-1より高波数側を意味するが、その領域は厚さによる)では、バルクでも赤外吸収測定可能である。 図1は Cabosilと呼ばれる、ゲル体の赤外領域の OH不純物による典型的な吸収の例である。加熱により吸収線形が変わることから、OH 不純物の形態は複数であり、極めて複雑であることがわかる。これは OH基が OH基どおし、あるいは Si-O-Siというシリカガラスネットワーク中の架橋酸素と、水素結合しているためである。最も高波数側(低波長、高エネルギー)の鋭いピーク(3747cm-1)は、孤立した SiOH 基に帰属されている。3660cm-1のやや広めのピークは、水素結合した SiOHに、3450cm-1の幅の広い吸収は、水分子に帰属されている。この他 970cm-1にも、SiOHの伸縮振動に帰属される吸収が現れるが、前述の理由により、1ミクロン以下の膜でないと、隣の 1100cm-1付近に位置する強い吸収に隠れてしまうので、厚膜、バル

クでは、この吸収は見られない。

図1

Cabosilの赤外吸収スペクトル、(a)オリジナル

のスペクトル、(b)室温で脱気したもの、

(c)500℃で脱気、(d)800℃で脱気。文献[1]より

引用。

次に定量的なデータを紹介する。Abeらは、10報以上の論文を参考に、広範囲の組成のガラス中のOH基のピーク位置とモル吸光係数の関係についてまとめて、図 2に示している。データはかなりばらついている

が、参考になる。この結果によると、3676cm-1付近の水素結合OHピークのモル吸光係数は、50-80L/mol・cm程度と見積もれるが、Shelbyの最近の研究(J.E.Shelby et al., J.Am.Ceram.Soc., 65, C59-60 (1982).)では、181L/mol・cm(σ=3.0×10-19cm2)という、Abe の図中では突出してしまう値が報告されている。友沢らは、Shelbyの 181L/mol・cmと Stephensonの 77.5L/mol・cm(G.Stephenson and K.H.Jack, written contribution to Ref.1, Trans. Br. Ceram. Soc., 59, 397 (1960)) の両者でそれぞれ濃度を見積もって、議論しており、これが最も丁寧であろうと思われる。

図2

各種ガラス中の水の、赤外吸収スペクトルにおけ

るO-H伸縮振動ピークの位置とモル吸光係数の関

係。

●;シリケートガラス、a; 氷、b; 3℃の水、c;

60℃の水、d; CCl4中の水、1; 35B2O3:45SiO2ガラ

ス、2; 15Na2O:9.5CaO:75.5SiO2(重量比)、3; シ

リカガラス、

4; 10.8Na2O:3.0K2O:7.8ZnO:1.3Al2O3:76.9SiO2ガ

ラス、5; 15Na2O:9.5CaO:75.5SiO2 ガラス、6;

10Na2O:16CaO:74SiO2 ガ ラ ス ( 重 量比 ) 、 7;

Na2O:P2O5ガラス、8; B2O3ガラス、9; 多量の不純

物を含む シリカガラス(SiO2 ~ 60-80wt%)。文

献[2]より引用。

近赤外域 1.3-2.5μmにも、OH関連の吸収は多く現れる。これは赤外域の吸収の倍音であるがため、モル吸光係数は極めて小さい。よって、高濃度のOH基が存在しないと検出できない。しかしながら、波数領域で 2倍に拡大されているため、赤外域では重なってしまっていた各種 OH基が分離されて観測されるので、近赤外の情報は有用である。図3は、シリカゲルの近赤外吸収スペクトルである。それぞれの帰属は、図4

のⅠからⅤのようになされている。

図3

ドライゲルを各 1 時間加熱処理した後の近赤

外吸収スペクトル、1200℃から焼結が始まって

いる。図中のI, II, III, IV, Vは、図4に示

した構造の与える吸収に相当する。文献[3]よ

り引用。

シリカガラス中の水の拡散関する研究は、低温と高温では

いる。図 5は、Suprasil W2(Type IV、無水シリカガラス)への水80℃の水槽に 55.0±3.0ml/min.の空気を通すことによって発生炉心管内に送り込み、(A) 80, 150, 250, 350, 650℃の各温度で150℃, 250℃での飽和水蒸気圧下、それぞれ 144時間、260時高温(950-650℃)では 3672cm-1の Si-OHに帰属されるピークののより強く水素結合したOH、3230cm-1の Free H2Oが現れて シリカガラス中のOH基は、放射線照射によって、その存在らは、OH基を含むシリカガラスにγ線を 1Grad照射する前に報告している。このガラス中には、溶存している水素分子

側へシフトしている。300℃以上という低温でアニールをす間に水素結合が誘起されていると考えられる。またアニール

へと遷移していくという結果は、図 1や図 3で紹介した結果 今井らは、シンクロトロン放射光の一つで、準単色光(発生アンジュレータを用いて、シリカのドライゲルに照射を行い

図5

Suprasil W2(Type IV、無水シリカガラス)

へ水を拡散した後の赤外吸収スペクトル。

80℃の水槽に 55.0±3.0ml/min.の空気を通

すことによって発生する飽和水蒸気

(0.467±0.020atm (355±15mmHg))を炉心管

内に送り込み、(A) 80, 150, 250, 350, 650℃

の各温度で 400 時間、処理したもの、(B)圧

力容器を用いて、150℃, 250℃での飽和水蒸

気圧下、それぞれ144時間、260時間処理し

た試料である。文献[4]より引用。

図4

ゲルシリカ中H2Oの存在形態のモデ

ル図。点線は水素結合を示す。文献[3]

より引用。

拡散する OHの形態が異なることが、知られて拡散後の赤外吸収スペクトルである。実験は、

する飽和水蒸気(0.467±0.020atm (355±15mmHg))を400時間、処理したもの、(B)圧力容器を用いて、間処理した試料の結果である。(A)の結果から、み見られるが、350℃以下では 3608cm-1, 3400cm-1

くる。 形態を変化させることが、知られている。Shelby後の赤外吸収スペクトルを図 6に紹介するようはないにも関わらず、照射後、ピークが低波数

ると再びもとへ戻る。放射線誘起により OH 基によって、水素結合型の OHから孤立型の OHとも矛盾しない。 波長の 7-10%の半値幅を有する)を発生できる、OH基の挙動を赤外吸収法で観察している(図

7)。(a)は、試料の光吸収スペクトルで、7.5eV 付近から急峻な光吸収が始まっていることがわかるが、この傾向は通常のシリカガラスとは、大きくは異ならない。(b)は、940cm-1の赤外吸収ピーク強度で、OH に帰属されている。(a)でわかるとおり、吸収が小さい領域のアンジュレータ光(6.4eV)を照射しても、940cm-1のシグナルには変化は見られない。ところが、強い吸収の始まる領域(~9eV)から、940cm-1ピーク強度の減少が始まり、例えば 10.8eV光を 2.9×1019/cm2照射すると(■)、940cm-1のピークは完全に消失してしまう。よ

り高エネルギーの光、例えば 17eV光を照射すればその効果はさらに増大することがわかった。すなわち、光刺激脱水がおきているのである。(c)は、エリプソメータによって見積もられた、屈折率であるが、これも6.4eV光では、変化が起こらないのに対し、10.8eV光以上のエネルギーの光照射によって、0.03以上の大きな屈折率増大が確認された。Shelbyの見いだした、放射線誘起の 3670cm-1帯の低波数シフト(放射線刺激による OH基の水素結合形成)と、今井らの見いだした 940cm-1帯の消失(真空紫外光刺激による脱水)の相関については、不明である。

収 2. SiH SiHSiH3

図 6

γ線を 1Grad 照射する前後の赤外線吸

スペクトル。文献[5]より引用。

関連欠陥 型の不純物の存在も、数多く報告されているので

の 3種類報告されている。それぞれ SiH以外の結

図7

ゾルゲル法で得たシリカのドライゲルに、アンジ

ュレータ光を照射したときの変化。(a)アンジュレ

ータを照射する前の、ドライゲルの光吸収スペク

トル。(b)赤外吸収スペクトルから求めた 940cm-1

の吸収ピーク強度。OHに帰属されている。●、■、

▲は、照射光子数、1.4×1019cm-2, 2.9×1019cm-2,

4.3×1019cm-2 を表す。(c)エリプソメータによっ

て見積もられた屈折率。照射中の試料の温度上昇

は、ほとんどない。文献[6]より引用。

紹介したい。シリカガラス中の SiHは、SiH, SiH2, 合は、シリカガラス中であるので Si-Oである。これ

らのピーク位置に関しては、Lucovskyが簡単な計算で予測できることを報告している。図 8のプロットは、例えば SiHを見ると、それ以外の 3元素についての情報が、図中に書き込んである。そのときの Poulingの電気陰性度の合計値、ΣSR(Rj)が横軸である。例えば、SiH以外の 3つの結合元素が(C2H5)と2つのClであれば、電気陰性度は、それぞれ 3.62, 4.93であるから、ΣSR(Rj)=13.48となる。SiH, SiH2, SiH3ともそれぞれ一つの直線上に持っており、シリカガラス中の各値は、それぞれ 2280cm-1, 2220cm-1, 2200cm-1と予測さ

れる。

図8

Poulingの電気陰性度の合計値、ΣSR(Rj)と Si-H

の波数の関係。各プロットは、各種アルコキシシ

ランの実測値である。文献[7]より引用。

さて実際にシリカガラス中に見られる、SiHの赤外吸収スペクトルについて見てみよう。図 9は、シリカガラス(Suprasil W)に 6.5×1020/cm3の水素分子を熱拡散させた後で、ガンマ線を照射して、赤外吸収を透過法で測定したものである。図中の数値が、照射量で単位は radである。3660cm-1と 2280cm-1にピークが見られるが、これまでに紹介した通り、それぞれ水素結合したOHと SiHに帰属される。そして、放射線下での反応として Si-O-Si + H2 → Si-OH + H-Si ・・・・・・・・・・・・・・・・① が提案され、εH = (0.45±0.06)εOHの関係式が求められた。Shelbyは、原著論文中で、SiOHのモル吸光係数εSiOHの値として、HetheringtonのεSiOH= 77.5L/mol・cm(Phys.Chem.Glasses, 3, 129 (1962).)を用いて、SiHのモル吸光係数εSiHをεSiH = 35L/mol・cmと報告しているが、前述の通り、Shelbyは独自にεSiOHの最新の

値として 181L/mol・cmを報告している。この値を用いれば、SiHはεSiH = 81L/mol・cmと修正される。 Beckmannらは、図 10のようにシリコンの陰極酸化膜と水蒸気酸化膜のATRスペクトルの測定を行なっている。ピークの位置はνSiH---O = 2222cm-1, νSiH = 2353cm-1,νOH---O = 3375cm-1, νOH = 3600cm-1であり、半値幅は図中にHで示されている通りである。SiH---O, OH---Oの吸収断面積σSiH---O, σOH---Oをそれぞれσ

SiH---O ~ 8.7×10-20cm2 (εSiH---O ~ 52L/mol・cm), σOH---O ~ 5.75×10-19cm2(εSiH---O ~ 52L/mol・cm)と見積もっている。またOH, SiHの吸収断面積σOH, σSiHはそれぞれσOH ~ 3.9×10-19cm2 (εOH ~ 52L/mol・cm), σSiH ~ 7×10-20cm2(εSiH ~ 42L/mol・cm)と見積もっている。このεOHやεSiHの値は、Shelbyの最新データよりも、Hetheringtonの値に近い。なお、前述の通り、Si-Oの非対称伸縮振動の強強度のピーク(~1100cm-1)の倍音が、SiHx(x=1, 2, 3)のピーク位置と重なることは、十分注意すべきである。図 9は、差スペクトルであり、Si-Oの非対称伸縮振動の倍音のシグナルは、除かれている。 なお、GeH 系の場合は、SiH 系と帰属が逆になること、また重複を避けるために光ファイバーの章で、Ge関連の赤外吸収についての記述が割愛されているので、本章で紹介しておきたい。図 11は GeH, GeH2系に関して、Lucovskyが SiHに対して行ったのと同様、電気陰性度の合計と赤外吸収の実測値の関係を示した図である。プロット全ての物質については、表にまとめた。この図よりGeH2の方が、GeHよりも高波数側にあることがわかり、SiH, SiH2, SiH3の順で高波数であった SiH系とは、順番が逆になっている。予測されるシリカガラス中でのGeH, GeH2ピークの位置はそれぞれ、2150cm-1, 2180cm-1となる。実際に、二つ

のピークが赤外吸収で観察された。図 12は、Geドープシリカガラス(1GeO2:9SiO2)を 200気圧の水素中に2週間おいて水素分子を室温にて拡散させた後、600℃のヘリウム中で加熱したもの、図 13は、同様に水素を室温で拡散させた後、He/Hgランプ光(紫外域の 5eV付近に発光ピークを持ち、その他可視、赤外域にも発光は続いている)を照射したものである。それぞれ、2つづつ吸収帯が見られるが、(a)(b)のそのピーク位置、半値幅は明らかに異なっている。(a)の 3675cm-1, 2185cm-1はそれぞれ SiOH(GeOH), GeH2であり、(b)のブロードな 3550cm-1はGeOH~水素結合したGeOH, H2O、2140cm-1はGeHである。この値は、図 11を用いた予想値とかなりよく一致しているといえる。

図9

シ リ カ ガ ラ ス (Suprasil W) に

6.5×1020/cm3 の水素分子を熱拡散させ

た後で、ガンマ線を照射した試料の赤外

吸収スペクトル。放射線照射前の試料と

の差スペクトルである。照射量は図中の

単位 rad で表記してある。文献[8]より

引用。

図 10

シリコンの陰極酸化膜と水蒸気酸化膜の ATR スペクトルの測定。

文献[9]より引用。

図11

Poulingの電気陰性度の合計値、

ΣSR(Rj)と Ge-H の波数の関係。

各プロットは、各種アルコキゲル

マンの実測値である。文献[10]

より引用。

図12

Geドープシリカガラス(1GeO2:9SiO2)を 200 気圧の

水素中に2週間おいて水素分子を室温にて拡散さ

せた後、600℃のヘリウム中で加熱した時の赤外吸

収スペクトル。a; 水素を拡散させた直後で加熱な

し、b; 30秒、c; 2分、d; 5分、e; 30分、f; 100

分、それぞれ加熱。文献[10]より引用。

3. ガラス中の水素分子と重水素分子 水素分子は、その対称性から赤外不活性であるが、シリ

に対称性が崩れており、赤外活性であるというおもしろい

(多孔質シリカガラス)に吸着した、水素、重水素分子の

aは、ポーラスバイコールガラスに、18Kで 2.9mmol/cm3

で 2.8mmol/cm3吸着させたもの、cはH2とD2を混合して

ペクトルである。この研究報告は、光ファイバー開発初期

ー敷設後数か月で、ファーバーの伝送損失が大きくなり、

ーのジャケット管から発生する水素が、ファイバー中に浸

あるいはGeOHを形成したためであった。

図13

Geドープシリカガラス(1GeO2:9SiO2)を 200 気圧

の水素中に2週間おいて水素を室温で拡散させ

た後、Xe/Hgランプ光(紫外域の 5eV付近に発光

ピークを持ち、その他可視、赤外域にも発光は続

いている)を照射したものである。a; 光未照射、

b; 5 分、c; 35 分、d; 95 分、e; 200 分、f; 7

時間、光照射。光子数は、4×1019cm-2・hr-1。文

献[10]より引用。

カガラスの水素は、酸素と水素結合しているため

例がある。図.14 は、ポーラスバイコールガラス倍音領域の赤外吸収スペクトルである。である。

の水素分子を吸着させたもの、bはD2分子を 18K吸着させたもの、dは液体水素分子、18Kでのスに、大いに役立っている。すなわち、光ファイバ

失透してしまう現象がおきた。原因は、ファイバ

入してシリカガラス中の酸素と水素結合し、SiOH

図14

ポーラスバイコールガラス(多孔質シリカ

ガラス)に吸着した、水素、重水素分子の

倍音領域の赤外吸収スペクトル。aは、ポ

ーラスバイコールガラスに、18K で

2.9mmol/cm3 の水素分子を吸着させたも

の、bはD2分子を18Kで 2.8mmol/cm3吸着

させたもの、cはH2と D2を混合して吸着

させたもの、dは液体水素分子、18K での

スペクトルである。文献[11]より引用。

シリカガラス中の重水素の赤外領域の吸収スペクトルを図 15 に示した。(a)はアエロゲルの通常の赤外透過スペクトル、(b)は重水素置換したアエロゲルの赤外透過スペクトルである。SiOD, 残留 D2O のピーク位置を見ることができる。 4. S

Sない

200での

グナ

SVAD法で

のピ

る。

が極

り、

i-F, Si-Cl

図15

シリカガラス中の重水素の赤外領域の吸

収スペクトル。(a)はアエロゲルの通常の

赤外透過スペクトル、(b)は重水素置換し

たアエロゲルの赤外透過スペクトルであ

る。文献[12]より引用。

i-Clのピークは、1100cm-1付近であるため、シリカガラスの Si-O伸縮振動と重なってしまい、検出でき。一方、Si-Fの伸縮振動ピークは 945cm-1であり、赤外吸収でもラマン分光でも見られる。図 16は、

-650m2/gの表面積を有する SiO2微粒子を含むゾルに Si(OC2H5)3Fの形でフッ素をドープした後、110℃乾燥を行ったドライゲルの赤外透過スペクトルである。960cm-1に位置する Si-OHに隠れて、Si-Fのシルは見づらいが、フッ素濃度の高い試料(F/Si=0.247)では、はっきりとピークが確認されている。

i-Fのピークをよりはっきり確認できるのは、赤外吸収法よりもラマン分光法である。フッ素のドープは、プロセス中、SF6の形態で行い、ラマンスペクトルを図 17(a)に示した。FS, FLのフッ素濃度はEPMA見積もり、それぞれ 2.9×1020cm-3, 6.2×1020cm-3である。945cm-1のピークが、Si-Fに帰属され、800cm-1

ーク強度で規格化すると、この 945cm-1のピーク強度は、ドープされている、フッ素濃度に比例していフッ素ドープシリカガラスのラマンスペクトルのもう一つの特徴は、ディフェクトライン(D1, D2)の強度めて小さいことである。これらはそれぞれ、平面 4, 3員環に帰属されているが、図 17(b)に示したとおフッ素のドーピング量の増大に伴いにより、強度が減少していくことがわかる。

図16

200~650m2/gの表面積を有するSiO2微粒子を含

むゾルに、Si(OC2H5)3Fの形でフッ素をドープした

後、110℃での乾燥を行ったドライゲルの赤外透

過スペクトル。文献[13]より引用。

図17

フッ素ドープシリカガラスのラマンスペクトル。(a)は、600-1500cm-1の領域、

(b)は 100-900cm-1の領域で測定している。FS, FLは、フッ素ドープシリカガ

ラスで、フッ素濃度は EPMA 法で見積もり、それぞれ 2.9×1020cm-3,

6.2×1020cm-3である。VADWETは、ノンドープである。文献[14][15]より引用。

(b)

5. SiOH, SiHの光吸収 赤外や近赤外吸収は振動に基づく吸収であるが、これらは電子遷移に基づく吸収も持っている。ただ、SiHのそれは、シリカガラスのバンドギャップより高エネルギーであるため、光学的には全く吸収帯を形成しな

い。一方、SiOH は真空紫外域に吸収を表す。従って、火炎加水分解法(直接法;Type III)で作成したシリカガラスは、真空紫外線域の吸収端位置が、無水シリカガラスに比べて低エネルギーに位置する。OH 濃度の異なる何種類かのシリカガラスの真空紫外光吸収より見積もった、シリカガラス中のOHの吸収断面積を図 18に示した。この図にはその他、Cl2, F2, O3, POL(パーオキシリンケージ), O2の各吸収断面積も載せてある。また、図 19はH2Oガス分子の光吸収スペクトルである。170nm(7.3eV)付近で吸収最大をとり、その値は約 100atm-1・cm-1 at 0℃で、吸収断面積に直すと 4×10-18cm2となる。シリカガラス中のOHによる吸収は、7.3eVで、~1×10-20cm2であり、H2Oガス分子で報告されている値の 400分の一で、かつ吸収線形も全くことなることがわかる。

図1

シリ

F2,

ケー

献[

8

カガラス中のOH, Cl2,

O3, POL(パーオキシリン

ジ), O2の吸収断面積。文

16]より引用。

6. Si-O伸縮振動(1100cm-1)から得られる情報

図19

H2Oガス分子の光吸収スペクトル.。

底はe、縦軸の単位はatm-1・cm-1 at

0℃。4.06×10-20をかければ吸収断面

積に換算できる。文献[17]より引用。

1100cm-1付近は、Si-Oの非対称伸縮振動に帰属されるピークが現れるが、これはシリカガラス中の赤外吸収スペクトル中、最大強度のもので、1 ミクロン以下の膜厚でないと、透過法で測定する場合、正確な線形は得られない。それ以上の膜厚、あるいはバルク体の測定を行う場合は、反射法を用いるが、この場合はピ

ーク位置は変わってくる。例えば、吸収ピークが 1100cm-1ならば、反射ピークは~1122cm-1である。クラマ

ース、クローニッヒ変換(K-K 変換)を使えば、反射スペクトルは吸収スペクトルに変換できる。しかし、正確なK-K変換は無限波長域での積分が必要なため、通常、何らかの近似を用いて計算を行うため、K-K変換によって反射スペクトルから得られた吸収スペクトルは、直接測定した吸収スペクトルとは、線形、ピーク

位置などが異なってくる。 Si-Oの非対称伸縮振動に帰属されるピーク位置や半値幅は、シリカガラスの構造を反映しているといえる。図20は、シリコン酸化膜の酸化温度を700, 800, 1000℃と変化させたときの赤外吸収スペクトルである。Si-O伸縮振動のピーク位置が、1066cm-1から 1077cm-1と変化し、また半値幅も狭くなっていくことがわかる。この他、Bending, Rockingによる吸収ピークも同図上に見られている。 図 21は、低温でシリコンを酸化した膜の Si-O伸縮振動のピーク位置と屈折率の関係を示している。すなわち、屈折率の高い膜は低波数の伸縮振動ピークをもつことがわかる。図 22 は、ピーク位置とその半値幅の関係だが、各種手法により多少ばらつきはあるものの、直線上に乗っている。図 23 は、酸化膜厚とピーク位置の関係である。700, 1000℃は酸化温度を示している。友沢らは、バルクのシリカガラスについても、Si-O伸縮振動のピーク位置の変化が報告している。彼らが用いたガラスはVAD法で作成されたもので、[OH] < 0.1ppm, [Cl] ~ 1000ppm, [Na] ~ 0.04ppmといった不純物を含んでいる。図 24(a)は、赤外反射スペクトル中の Si-O伸縮振動のピークの位置と仮想温度の関係、(b)はシリカ粉を静水圧で圧縮した時の、圧力と Si-O伸縮振動の吸収ピーク位置を示している。

図20

シリコン酸化膜の酸化温度を 700, 800,

1000℃と変化させたときの赤外吸収スペクト

ル。文献[18]より引用。

図21

低温でシリコンを酸化した膜の Si-O 非対称 縮

振動のピーク位置と屈折率の関係。文献[18]より

引用。

図 22 Si-O 非対称伸縮振動のピーク

位置とその半値幅の関係。文献[19]よ

り引用。

]

図23

酸化膜厚とSi-O非対称伸縮振動のピ

ーク位置の関係である。700, 1000℃

は酸化温度を示している。文献[19

より引用。

図24

(a)赤外反射スペクトル中の Si-O 非

対称伸縮振動のピークの位置と仮想

温度の関係、(b)シリカ粉を静水圧で

圧縮した時の、圧力と Si-O 非対称伸

縮振動の吸収ピーク位置の関係。文献

[19]より引用。

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