アナログ電子回路講座2 how to design analog circuit with bipolar junction transistors 2
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バイポーラアナログ電子回路講座
2
感性アナログ研究室山本健司
今回の内容
(すでに学んだ半導体についての復習も含めて)
●物質の抵抗
●真性半導体
●不純物半導体
●多数キャリアと少数キャリア
●以降の回のための予備知識
物質の抵抗
導体、絶縁体、半導体
導体、半導体、絶縁体というのは、人間の生活上の便宜的な区別であって、絶縁体でも電気は通る。導体でも、抵抗はある。半導体は単にそれらの中間的な抵抗率を持っている。そして、結晶中の不純物や、温度で抵抗値が大きく変わるのが特徴。抵抗率については後述。
物質 元素記号 抵抗率 𝛀𝛀𝒎𝒎金 Au ~10−8
ゲルマニウム Ge ~1シリコン Si ~102
ガラス ~1010
抵抗率とは抵抗値はその物質の形状にもよる。だから、抵抗値自体をくらべてもその物質の電気の通りやすさ(あるいは通りにくさ)を比べたことにはならない。A物体とB物体の抵抗を比べるためにはそれでいいが、A物質とB物質をくらべる場合にはそれではだめ。
抵抗率は形状によらずに、その物質の抵抗の大小を比べることができる。
V
A 物体AR = V/A (1)
R:抵抗値V:電圧A:電流
抵抗率とは
抵抗率の定義を考える前に、抵抗率でどのように物体の抵抗値Rが計算され
るかを考える。抵抗は、長さに比例し、断面積に反比例するから、(2)式がなりたつだろう。
V
A
断面積S[mm^2]
長さ L[m]
物質A
R =L
Sx ρ (2)
●ここでρは、係数で、単位は[Ω・m]。
こうやってρを定義すれば、物質固有の電気の通りにくさを評価する数値として使える。
●抵抗値の逆数は導電率σ。これもよく使われる。単位は[Ω-1・m-1]。(2)の両辺の逆数をとって、1/ρをσに置き換えればよい。このとき左辺はアドミタンスになる。
σ=1/ρ
電気の通りやすさをあらわす。
練習問題
1.ある物体が長方形の断面を持ち、その断面の幅が2cm、
高さが5cm、そして長さが100cmのとき、抵抗値が100kΩであった。この物質の抵抗率をΩcmおよびΩmで求めよ。
回答例:
R=(L/S)*ρより、
ρ[Ωcm]=(R*S)/L=(100k*2cm*5cm)/100cm=10kΩcm (a)ρ[Ωm]=(R*S)/L=(100k*0.02m*0.05)/1m=100Ωm (b)
1[Ωm]=100[Ωcm] である。
原子の構造
• シリコン原子のモデル
• 原子番号 14(原子核中の陽子の数は14電子数も14)
• 原子価 4 (最大4つの原子と結合する)
• 価電子数 4 (最外殻の電子数は4)
価電子は、他の原子と結びついて結晶を作る時に活躍する。
また、常温でも原子核の束縛を逃れて物質内を移動する。これが電気をある程度流す性質(半導体)の原因。なぜそうなのかはこれから説明する。
原子核
価電子
エネルギー準位図
許容帯:電子が存在できるエネルギー準位が束になっている。
許容帯、禁制帯が「XX帯(タイ)」になっているのは、上図
では縦方向の幅がひろがって「帯(オビ)」のようになっているから。図の右側の図では、横方向の幅は意味がないので、注意すること。
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
真性半導体のエネルギー準位図
エネルギー準位図は、電子自体が持つエネルギーの総和(=位置エネルギー + 運動エネルギー)の図で
ある。原子核からの距離と関係があるが、縦軸は距離ではないので注意。
覚える用語
●価電子帯
価電子が存在する許容帯
●伝導帯
価電子帯の持つエネルギー
準位の上のエネルギー
準位群
●エネルギーギャップ
価電子帯の一番大きな
エネルギーと、伝導帯の一番
小さいエネルギーの差
意味を追えば覚えられるような用語だけです
●許容帯
電子が持つことのできる
エネルギー量の一定の範囲
●禁制帯
電子が持つことができない
エネルギー量の一定の範囲
●充満帯
電子がすでに満杯になって
いて、空席がない許容帯
●価電子
原子中でもっとも高い
エネルギーを持っている電子
エネルギーギャップ
電子が熱や光などのエネルギーを得て、そのエネルギーがエネルギーギャップより大きいと、伝導帯にジャンプして、自由電子になれる
伝導帯
価電子帯
許容帯
エネルギーギャップ
電子
エネルギー
真性半導体
真性半導体とは、
SiならSiだけの純粋な半導体のことIntrinsic Semiconductor
なぜシリコン(Si,ケイ素)を使うのか
●半導体である
●工業的な処理がしやすい
●自然界に豊富に存在する
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ
H水素Hydrogen
HeヘリウムHelium
LiリチウムLithium
BeベリリウムBeryllium
Bホウ素Boron
C炭素Carbon
N窒素Nitrogen
O酸素Oxygen
Fフッ素Fluorine
NeネオンNeon
NaナトリウムSodium
MgマグネシウムMagnesium
AlアルミニウムAluminum
Siケイ素Silicon
PリンPhosphorus
S硫黄Sulfur
Cl塩素Chlorine
ArアルゴンArgon
KカリウムPotassium
CaカルシウムCalcium
GaガリウムGallium
GeゲルマニウムGermanium
Asヒ素Arsenic
SeセレンSelenium
Br臭素Bromine
KrクリプトンKrypton
●同じ第Ⅳ族のゲルマニウムもよくつかわれる
●第Ⅲ族Gaと第Ⅴ族Asの化合物半導体もよく使われる
(ⅢⅤ族半導体)
Ⅷ族(希ガス)が安定な元素だということを覚えておく
族の復習
価電子の数で族が決まる。
●Siは第Ⅳ族なので、4個の価電子
●ホウ素は第Ⅲ族なので、3個の価電子
●リンは第5族なので、5個の価電子
原子核
シリコンの電子配置概念図
2個
8個4個
2+8+4=14原子番号14
ダイヤモンド構造の結晶
シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の結晶構造
図は単位格子を表している。球形が原子。球形から棒がでているように見えるのが、共有結合の腕。一番外側の立方体を形作っている線は共有結合ではなく、単位格子の範囲を示している。また,赤と緑の線はそれと交差する原子が面上に配置されていることを示すための補助線である.それぞれの原子から結合の腕が最大4本出ているのを確認しよう。図に
表れていない共有結合の腕は隣の単位格子にある原子と共有下都合している.http://commons.wikimedia.org/wiki/Fil
e:Diamond_crystal_lattice.svg?uselang=ja
シリコン結晶内の原子結合8個の価電子が持てるように(希ガスのように安定するために)、周囲のシリコン原子と電子を共有して結合する。熱エネルギーを得て、自由に動き回る電子(自由電子)が存在する。自由電子が抜けた空席は正孔と呼ばれ、近くの電子が自分の席を抜け出して正孔に飛び込むと、正孔が移動するように見える。つまり、プラスの電荷が移動するように見える。自由電子は負の電荷を運び、正孔は正の電荷を運ぶ。
ChemWiki: The Dynamic Chemistry E-textbookhttp://solarwiki.ucdavis.edu/The_Science_of_Solar/Solar_Basics/A._Introductory_Physics_for_Solar_Application/I._Atoms_and_Materials/4._Covalent_Bonds
伝導電子
正孔
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
伝導電子と正孔のエネルギー
正孔
伝導電子
自由電子(つまり伝導帯に存在する電子)と、正孔(ホール)は電気を運ぶために、キャリア(担体)と呼ばれる。真性半導体(Intrinsic Semiconductor)では、自由電子と正孔の数は等しい。
不純物半導体
不純物半導体とは、少量の不純物を混ぜた半導体
n形半導体第Ⅳ族であるシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)に、第Ⅴ族のヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)などを少量混ぜて結晶を作る。この混ぜ物が自由電子を持ち込むので、ドナーと呼ばれる。
第5族の不純物は5個の価電子をもっているので、シリコン原子と共有結合するのに電子がひとつ余る。電気的中性を保つために、不純物原子原子核の近くにうろうろしているのが適正な位置だが、その電子の存在するエネルギー準位(ドナー準位)が伝導帯の近くにあるので、少しのエネルギーで伝導帯に跳躍でき、自由電子となって移動し始める。
ChemWiki: The Dynamic Chemistry E-textbookhttp://solarwiki.ucdavis.edu/The_Science_of_Solar/Solar_Basics/A._Introductory_Physics_for_Solar_Application/I._Atoms_and_Materials/4._Covalent_Bonds
As
伝導電子
空席のドナー準位
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
ドナーレベル
ドナー準位
空席のドナー準位
伝導電子
ドナー準位に出来た正孔は電気伝導に寄与するか?
一般に,ドナー準位の空席は正孔とは呼ばない.これは「イオン化したドナー」と呼ぶ.ドナー原子周辺の電気的平衡が電子一個分アンバランスになった状態だからである.
空席となったドナー準位に飛び込む伝導電子はあるだろうが,ドナー準位と伝導帯のエネルギー差は小さいので,室温でもすぐに伝導帯に上ってしまう.結果として,ドナー準位はほぼ定常的に空席であり,電気伝導には寄与しない.反対に,伝導体にいる電子をドナー準位にとどめるには,かなり低温にしないとならない.
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
ドナーレベル
ドナー準位
空席のドナー準位
伝導電子
p形半導体4価の真性半導体に3価の元素(アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),ホウ素(B),インジウム(In)など)を不純物として微量入れて結晶をつくる。この不純物はまわりのシリコン原子から電子を奪うので、アクセプタと呼ばれる。
3価の不純物は、シリコン原子と共有結合するため、周りのシリコン原子から電子をひとつ奪う。アクセプタの持つアクセプタ準位は価電子帯のすぐ近くにあり、少しの余剰エネルギーがあれば、周りのシリコン原子の価電子帯から引っ越せるから。電子が抜けた後の正孔のエネルギー準位は価電子帯の中にあるので、近くの原子の価電子帯にある電子が容易に引っ越してこられる。これを次々に繰り返すことによってあたかも正孔が動き回るように見える。
ChemWiki: The Dynamic Chemistry E-textbookhttp://solarwiki.ucdavis.edu/The_Science_of_Solar/Solar_Basics/A._Introductory_Physics_for_Solar_Application/I._Atoms_and_Materials/4._Covalent_Bonds
𝐴𝐴𝐴𝐴
電子で満たされたアクセプタ準位 価電子帯から少しのエネルギーで飛び込める
価電子帯からアクセプタに奪われた電子の空席(正孔)
空席の正孔に他の原子から電子が飛び込むと,そこが次の正孔になる
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
アクセプタレベル
アクセプタ準位
空席の価電子帯準位
アクセプタの共有結合に使われる電子
アクセプタ準位にある電子は電気伝導に寄与するか?
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
アクセプタレベル
アクセプタ準位
空席の価電子帯準位
アクセプタの共有結合に使われる電子
少数
アクセプタ準位は,価電子帯とのエネルギー差が小さいので,常温でもほぼ定常的に電子が価電子帯から供給されて充満している.また,アクセプタ準位に捉えられた電子は、伝導帯までのエネルギー差が大きいので、自由電子に簡単にはなれない。中には十分なエネルギーを得て,伝導体に遷移する電子があるかもしれないが,それに必要なエネルギーは比較的大きい.よって,十分大きな部分を見れば,アクセプタ準位に存在する電子は電気伝導に寄与しない.
多数キャリアと少数キャリア
以降の回のための予備知識
フェルミレベル補遺
フェルミ準位とは
●フェルミレベルとは、絶対零度つまり0
度K(マイナス273.15度Cにおいて、電子が詰まっているエネルギー準位の最大値である。●電気伝導にはフェルミレベルのすぐそば
のエネルギー準位の電子や正孔が寄与する(自由に動き回る)。●温度が上がると、そのエネルギーを使っ
て、自由電子や正孔がフェルミレベルの上下に発生するようになる。●このとき、フェルミレベルにおいて、自由電子の存在確率が2分の1になる。●半導体のフェルミ準位は価電子帯と伝導帯の間の禁制帯にある。
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
真性半導体のフェルミ準位
Ec
EvEg=0.1~3eV
金属のフェルミ準位
金属のフェルミレベルは許容帯の中にあり、その上下には許容エネルギーレベルがすぐ近くに連続してあるので、フェルミレベルの上下には多くの自由電子と正孔が存在し、電気伝導に寄与する。
要するに,金属には自由電子が多く含まれている.
伝導帯
許容帯(充満帯)
エネルギー
充満帯
充満帯
フェルミ準位
金属のフェルミ準位
絶縁体のフェルミレベルも禁止帯にある。半導体に比べて、エネルギーギャップが大きいのが絶縁体の特徴
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
絶縁体のフェルミ準位
Ec
EvEg>3eV
絶縁体のフェルミ準位
真性半導体のフェルミ準位
真性半導体のフェルミレベル
Ef=(Ec+Ev)/2(等号は実際は≒なのだが、これで実用上差し支えない)
このとき、Ec:伝導帯の一番低いレベルのエネルギーEv:価電子帯の一番高いエネルギー
エネルギー
伝導帯
価電子帯
充満帯
充満帯
フェルミ準位
真性半導体のフェルミ準位
Ec
EvEg=0.1~3eV
不純物半導体のキャリア密度と、フェルミ準位
p形半導体でも、n形半導体でも、不純物原子はほとんどがイオン化している
→p形半導体では、正孔濃度≒NP(アクセプタ濃度)
正孔がたくさんあるので、電子の存在確率半分を示すフェルミ準位は下がる
→n形半導体では、電子濃度≒ND(ドナー濃度)
電子がたくさんあるので、フェルミ準位は上がる
真性半導体n=p=Ni
伝導電子密度n
正孔密度p
Ef=Ei
n形半導体n>>p
伝導電子(多数キャリア)
密度n
正孔(少数キャリア)
密度p
Ef>Ei
p形半導体n<<p
伝導電子(少数キャリア)
密度n
正孔(多数キャリア)
密度p
Ef<Ei
左から、真性半導体、n形半導体、p形半導体のエネルギー準位図
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