2017jpa sympo asano
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幸福感の都市–地方格差:日米代表サンプルによる検討
2017/9/21 (木) 第81回日心大会@久留米シティプラザソーシャル・キャピタルと健康、幸福感に関する研究の新展開
浅野良輔 (久留米大学文学部心理学科)
❖伊藤健一 (Kenichi ITO)
Psychology Programm, Nanyang Technological University, Singapore
❖一言英文 (Hidefumi HITOKOTO)
福岡大学人文学部
共同研究者
❖幸福感の都市–地方格差
アメリカ
– 都市居住者は地方居住者よりも幸福感が低い(Fischer, 1984; Okulicz-Kozaryn, 2017)
– 他の西洋諸国でも同じ (Dolan et al., 2008)
アジア諸国
– 都市居住者は地方居住者よりも幸福感が高い(Berry & Okulicz-Kozaryn, 2009)
都市は幸せをもたらすのか?
❖幸福感の都市–地方格差
社会学、経済学、政治学では、これまで一貫した知見が得られていない
心理学におけるさらなる検討が求められている(Park & Peterson, 2014; Rentfrow et al., 2008)
❖本研究
都市居住はいかにして幸福感に影響するのか?
アメリカ vs. 日本
都市は幸せをもたらすのか?
❖都市居住は幸福感を下げる
都市の人の多さが過重負荷を招き、人付き合いを避けるようになる (Milgram, 1970)
実証的知見
– 都市居住者は社会関係満足度が低い (Fitz et al., 2016; Toth et al., 2002)
– 都市居住者は幸福感が低い (Fischer, 1984; Okulicz-Kozaryn, 2017)
都市居住と幸福感:アメリカ
❖都市居住は幸福感を高める
地方:他者から特定されて厳しい監視下に置かれ、社会的しがらみが強い (Yamagishi et al., 2012)
– 住民間の協力が不可欠な稲作が盛んだった(Talhelm et al., 2014)
都市:社会的しがらみから解放されて、自由を享受することができる (Yamagishi et al., 2012)
– より幅広い社会的ネットワークに所属している(Hanibuchi et al., 2012)
都市居住と幸福感:日本
❖都市居住→社会関係満足度→幸福感
アメリカ
– 都市居住は社会関係満足度を低下させる結果、幸福感を低くするだろう
– General Social Survey (GSS)
日本
– 都市居住は社会関係満足度を向上させる結果、幸福感を高くするだろう
– Japanese General Social Survey (JGSS)
本研究の概要
❖GSS/JGSSのメリット
1. サンプルは母集団を反映し、項目は両国で類似した概念を測定している
2. 複数年にわたって調査を実施している
– 知見の一般可能性が高い
3. 居住市町村の都市度を客観的に測定している
– 自己報告によるバイアスを排除できる
– 州・国単位よりも行動傾向への予測力が高い(Park & Peterson, 2014)
本研究の概要
❖アメリカ
1988~1994年のGSSに参加した18歳以上の男女
n = 5,474
❖日本
2006~2010年のJGSSに参加した20~89歳の男女
n = 6,634日本版General Social Surveys (JGSS) は、大阪商業大学JGSS研究センター (文部科学大臣認定日本版総合的社会調査共同研究拠点) が、東京大学社会科学研究所の協力を受けて実施している研究プロジェクトである。
参加者
❖アメリカ
Taken all together, how would you say things are these days—would you say that you are very happy, pretty happy, or not too happy? (3件法)
幸せ/不幸せの2値変数を作成した
❖日本
あなたは、現在幸せですか? (5件法)
幸せ/不幸せの2値変数を作成した
測定内容:幸福感
❖アメリカ
For each area of life I am going to name, tell me the number that shows how much satisfaction you get from that area—Your family life, your friendships, and the city or place you live in (7件法)
❖日本
生活面に関する以下の項目について、あなたはどのくらい満足していますか?—家庭生活、友人関係、住んでいる地域 (5件法)
測定内容:社会関係満足度
❖構造方程式モデリングによる媒介分析
プロビット回帰:結果変数が2値変数のため
間接効果:バイアス修正ブートストラップ信頼区間(リサンプリング数5,000回)
p < .01:サンプルサイズが大きいため
– Mplus 8 (Muthén & Muthén, 1998-2017)
分析方法
記述統計
アメリカ人 日本人
不幸せ(n = 526)
幸せ(n = 4,910)
不幸せ(n = 2,267)
幸せ(n = 4,367)
M or n M or n M or n M or n
家庭4.72
(SD = 1.92)6.02
(SD = 1.26)2.97
(SD = 0.84)4.16
(SD = 0.85)
友人4.94
(SD = 1.67)5.86
(SD = 1.17)3.19
(SD = 0.86)4.01
(SD = 0.89)
地域4.31
(SD = 1.67)5.16
(SD = 1.43)3.30
(SD = 1.00)4.03
(SD = 0.96)
居住地
地方居住406
(9.1%)4,062
(90.9%)1,273
(36.4%)2,229
(63.6%)
都市居住120
(12.4%)848
(87.6%)994
(31.7%)2,138
(68.3%)
アメリカの分析結果
都市居住 幸福感
社会関係満足度
友人 地域家族
−0.256*** 0.574***
−0.030
間接効果: b = −0.147, 99% CI [−0.220, −0.087]
非標準化係数。CI = 信頼区間。*** p < .001
日本の分析結果
都市居住 幸福感
社会関係満足度
友人 地域家族
0.094*** 0.982***
−0.019
間接効果: b = 0.092, 99% CI [0.031, 0.154]
非標準化係数。CI = 信頼区間。*** p < .001
追加:アメリカの分析結果
都市居住 健康感
社会関係満足度
友人 地域家族
−0.245*** 0.285***
0.057
間接効果: b = −0.070, 99% CI [−0.121, −0.035]
非標準化係数。CI = 信頼区間。*** p < .001
追加:日本の分析結果
非標準化係数。CI = 信頼区間。*** p < .001
都市居住 健康感
社会関係満足度
友人 地域家族
0.088*** 0.580***
0.000
間接効果: b = 0.051, 99% CI [0.018, 0.086]
❖都市–地方格差は国によって逆転する
❖アメリカ
都市居住が社会関係満足度を低下させることで、幸福感 (+健康感) を低くする
❖日本
都市居住が社会関係満足度を向上させることで、幸福感 (+健康感) を高くする
結果のまとめ
仮説支持
❖これまでの知見に一石を投じるFischer, 1984; Milgram, 1970; see also Lederbogen et al., 2011
日本における社会的しがらみからの解放?(Kashima et al. 2004; Yamagishi et al., 2012)
本研究では考慮しきれていない要因
– 先進国–途上国 (Easterlin et al., 2011; Requena, 2016)
– 社会規範の非寛容–寛容 (Gelfand et al., 2011)
都市は幸せをもたらすのか?
❖社会生態学的アプローチ (Oishi, 2014)
社会生態環境が行動傾向に影響するメカニズム
– 社会生態環境 = 都市居住
– 行動傾向 = 幸福感 (健康感)
– メカニズム = 社会関係満足度
他の社会生態学的要因をふくめてより多角的に
– 住居流動性 (Oishi, 2010)
– 関係流動性 (Yuki & Schug, 2012)
Implications
❖社会疫学 (近藤, 2017)
社会経済的因子が生み出す健康格差
マイクロレベル (個人) +メゾ・マクロレベル (環境)
– 安全・安心な街づくり
– 歩きやすい道路設計 (walkability)
– 社会関係資本の醸成
Implications
社会心理学との親和性
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