家庭の co2...
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(H29 年度 地域における地球温暖化防止活動促進事業)
家庭の CO2 排出量実態調査
~自家用車利用の実態と今後の可能性について~
調査報告書
イラスト提供:福井工業大学工学部 建築土木工学科 交通計画研究室
2018 年 2 月
福井県地球温暖化防止活動推進センター
(NPO 法人 エコプランふくい)
1
第1章 はじめに 2
第2章 近年の気候変動をめぐる動向と福井県の自動車保有台数 3
第3章 調査概要 4
第4章 調査結果 5
(1)回答者の個人属性 5
(2)鉄道駅・バス停までの距離と利用頻度 7
(3)自家用車の所有率と使用頻度・1日の平均走行距離 7
(4)各種交通手段の利用目的 8
(5)脱クルマ社会の可能性 8
(6)高齢者の運転免許自主返納の可能性 16
第5章 考察 17
第6章 おわりに 20
謝辞 21
付録 アンケート調査票 22
目 次
2
第1章 はじめに
日本の総人口は、総務省および国立社会保障・人口問題研究所によると、2008 年の 1 億 2,808 万人をピ
ークに減少しており、本格的な人口減少・少子高齢化社会が到来していることがわかる(図 1.1)。
福井県内の市町の 2010年と 2040 年の人口増減数においても、増田の報告(表 1.1)の通り、大幅な人口
減少が見込まれており、高齢化の進行、人口密度の減少、交通弱者の増大等に備えた新たな交通政策、都市
政策が急務であることがわかる。
表 1.1 福井県内の市町における人口増減数(2010年→2040 年)
図 1.1 日本の将来推計人口の動向(出生率回復の場合)
3
第 2 章 近年の気候変動をめぐる動向と福井県の自動車保有台数
国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、以下 IPCCという)
によって、第 5次評価報告書統合報告書(IPCC 2014)が公表され、各国の地球温暖化対策の取り組みがよ
り一層求められている。また、2015年 12月には、気候変動枠組条約締約国パリ会議(COP21)で世界の 195
か国と EU が「パリ協定」を採択し、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて 2℃未満に抑えるとと
もに、1.5℃に抑える努力を追求することを世界共通の目標として合意した。
国立環境研究所によると、家庭部門の二酸化炭素排出量は 1990年度に 11.2%であったが、2015年度には
14.6%、2016年度の速報値では 14.7%と約 3.5%増加している(図 2.1)。一方、運輸部門(自動車・船舶
等)については、17.4%から 18.3%とほとんど変化がみられず、2016年度の速報値でも 17.6%となってい
る。これに対し、2015 年度の家庭(一世帯当たり)における CO2 排出量の割合をみると、自家乗用車から
排出される割合が 28.6%となっており(図 2.2)、家庭の CO2 排出要因のうち自動車の占める割合が高いこ
とがわかる。
(国立環境研究所のデータをもとに作成)
図 2.1 日本の二酸化炭素排出量(部門別)の変遷
図 2.2 2015年度の家庭からの CO2排出量(用途別)
4
自動車検査登録情報協会の資料によると、福井県は 1 世帯当たりの乗用車保有台数が 1.749 台であり全
国 1 位(表 2.1)、県民 1 人当たりの乗用車保有台数は 7 位である。さらに、福井県地球温暖化防止活動推
進センターが平成 25 年度から平成 28 年度に実施した家庭の CO2 排出実態調査では、ガソリン使用による
CO2 排出の割合が高いことがわかっている。
第3章 調査概要
(1)目的
本調査は、福井県民の自家用車利用実態とそれにともなう課題の抽出、および今後の可能性について明ら
かにすることを目的として実施する。アンケートを用い以下の 3 点を中心に調査し、自動車による CO2 の
削減方策、自動車からの転換方策、社会的気運の醸成の必要性等について検討する。
①どのような状況において、どの程度利用しているか。
②公共交通や自転車等への転換を促すためには、何が決め手となるか。
③将来の世代と地球温暖化を見据えた上で、交通対策についてどのような考えを持っているか。
(2)協力機関
本調査の実施においては、調査用紙の設計、調査の実施、集計・分析等の一連の作業について、以下の研
究機関に業務委託し、内容や実施について協議しながら連携して行った。
委託先:福井工業大学工学部 建築土木工学科 交通計画研究室 代表 吉村朋矩氏
(3)実施方法
①調査期間:2017年 8月 30日~11月 16日
②実施場所:県内の公民館、研修会場、カーフリーデー等の環境イベント、計 10ヶ所(図 3.1)
③調査対象:県民 18歳以上 65 歳未満(非高齢者)200人、65歳以上(高齢者)50人
④有効回収数:非高齢者 221票(有効回収率 96.9%)、高齢者 63票(有効回収率 67.7%)
⑤調査内容:巻末アンケート調査票
表 2.1 一世帯当たりの自家乗用車台数(2016年)
(自動車検査登録情報協会統計資料をもとに作成)
図 3.1 調査の様子(左から COOL CHOICE落語会、勝山環境フェア、カーフリーデー福井)
5
第4章 調査結果
(1)回答者の個人属性
① 年代・職業・送迎が必要な家族の有無
回答者の年代、職業、送迎が必要な家族の有無について図 4.1に示す。
年代では、40代が 26.4%と最も高く、30代が 22.2%と続いている。非高齢者と高齢者の割合は、非高齢
者(18歳-64歳)が 77.8%であり、高齢者(65歳以上)が 22.2%であった。このうち、前期高齢者(65歳
-74 歳)の割合は 13.4%、後期高齢者(75歳以上)が 8.8%を占めた。
職業は、自営業が 7.9%、被雇用が 56.8%であり、これらの 98.9%は非高齢者であった。また、学生は
4.0%占めた。無職は 21.2%であり、そのうち 84.7%が高齢者であった。
送迎の必要な家族がいる割合は 38.9%であり、父親や母親の通院や買い物の送迎、子どもの幼稚園、保
育園、習い事などの送迎が多く見受けられた。また、配偶者のための送迎や孫の学校までの送迎といった記
述もあった。これらの代替手段としては、少数の記述であったが、バスや自転車、タクシー、子どもの友人
の保護者の送迎があげられていた。
② 自宅から鉄道駅・バス停までの距離
自宅から鉄道駅までの距離を表 4.1に、バス停までの距離を表 4.2に示す。また、参考として、バスサー
ビスハンドブック(土木学会編)による「抵抗を感じない距離帯」について表 4.3に示す。あわせて、自宅
から最寄の鉄道駅・バス停までの距離別の割合について図 4.2 に示す。抵抗を感じない距離帯の割合や鉄
道・バスの利用圏の割合に着目されたい。
自宅から鉄道駅までの距離について、90%の人が抵抗なしであるとしている距離の割合に着目すると、非
高齢者における 300m以内の割合は 20.3%であり、高齢者における 100m以内の割合は 7.8%であった。バス
停までの距離については、非高齢者が 71.5%、高齢者は 28.3%であった。一方、国土交通省が利用圏とし
て示している距離帯は、一般的、鉄道駅から 500m圏域、バス停から 300m圏域である。この距離に着目する
と、鉄道駅まで 500m以内の距離の割合は全体で 35.1%であり、バス停まで 300m以内の割合は全体で 73.0%
であることが明らかとなった。
図 4.1 回答者の個人属性(年代・職業・家族の送迎の有無)
6
度数 割合 n値 度数 割合 n値 度数 割合 n値
~100m 13 6.0% 4 7.8% 17 6.3%
100m~150m 5 2.3% 2 3.9% 7 2.6%
150m~200m 8 3.7% 3 5.9% 11 4.1%
200m~300m 18 8.3% 5 9.8% 23 8.6%
300m~500m 29 13.4% 7 13.7% 36 13.4%
500m~ 144 66.4% 30 58.8% 174 64.9%
非高齢者 高齢者 全体
217 51 268
鉄道駅まで
度数 割合 n値 度数 割合 n値 度数 割合 n値
~100m 51 24.6% 17 28.3% 68 25.5%
100m~150m 24 11.6% 9 15.0% 33 12.4%
150m~200m 32 15.5% 13 21.7% 45 16.9%
200m~300m 41 19.8% 8 13.3% 49 18.4%
300m~500m 40 19.3% 5 8.3% 45 16.9%
500m~ 19 9.2% 8 13.3% 27 10.1%
207 60 267
非高齢者 高齢者 全体バス停まで
条件一般的な人
歩行速度80m/分
高齢者など
歩行速度40m/分
90%の人が抵抗なし(約3.5分) 300m 100m
大きな荷物がある(約2分) 150m 80m
雨(約2分) 150m 80m
表 4.1 自宅から鉄道駅までの距離
表 4.2 自宅からバス停までの距離
表 4.3 抵抗を感じない距離
バスサービスハンドブック(土木学会編)より作成
図 4.2 自宅から鉄道駅・バス停までの距離
7
(2)鉄道駅・バス停までの距離と利用頻度
鉄道駅までの距離と鉄道の利用頻度について図 4.3 に示す。利用しない割合に着目すると、500m 以上の
距離帯で 80.8%、150m~200mの距離帯で 72.7%である。一方、100m以下の距離帯では週 1回以上利用して
いる割合が 29.4%と他の距離帯に比べて高い。次に、自宅からバス停までの距離とバスの利用頻度につい
て図 4.4 に示す。利用しない割合に着目すると、150m~200mの距離帯では 95.5%、300m~500mの距離帯で
88.9%であった。
以上のことから、鉄道の場合は、100m 以内において週 1 以上の利用率がやや高いが、それ以外について
は、利用圏(鉄道:500m圏内、バス:300m圏内)であっても利用率が低いことが明らかとなった。したが
って、利用のインセンティブとして、距離のメリットはあまり働かないと考えられる。
(3)自家用車の所有率と使用頻度・1日の平均走行距離
主に利用する自家用車の種類について図 4.5 に示す。非高齢者、高齢者ともに同様の傾向を示しており、
ガソリン車の所有率は非高齢者が 83.6%、高齢者が 84.6%と最も高いことがわかった。ついで、ハイブリ
ッド車が非高齢者 11.3%、高齢者 11.5%であり、ディーゼル車や電気自動車、水素自動車等の燃料電池車
については非常に低い、または 0%であった。
自家用車の使用頻度と 1 日の平均走行距離について図 4.6 に示す。毎日利用している割合が全体として
高いことがわかる。5㎞未満では 66.7%に留まっているものの、その他の距離では 79.5%から 86.7%とな
っており、自動車が日常生活で不可欠な存在であることが明らかとなった。
図 4.3 鉄道駅までの距離と利用頻度 図 4.4 バス停までの距離と利用頻度
図 4.5 種類別にみた自家用車の所有率 図 4.6 自家用車の使用頻度と 1日の平均走行距離
8
(4)各種交通手段の利用目的
各種交通手段(自動車・鉄道・バス・鉄道)の利用目的について図 4.7に示す。人の活動には通勤や通学
といった日常的に固定化された活動と買い物や娯楽など自由度の高い活動がある。これらの目的別に、各種
交通手段で差異がみられるかどうかに着目すると、自動車の利用目的は通勤が 64.8%、買い物が 63.2%と高
い割合であった。一方、送迎は 26.8%、郵便局等は 21.8%であった。これに対し、娯楽については自動車
に比べて、鉄道が 56.8%、バスが 51.9%と高い割合を示した。また、買い物目的で利用する交通手段とし
て、自動車についで自転車が 51.9%であることがわかった。
(5)脱クルマ社会の可能性
① 福井県における乗用車台数の全国順位の認知度
福井県の世帯当たり乗用車保有台数が全国 1 位、県民 1 人当たりの乗用車保有台数が 7 位であることに
関する認知度を図 4.8 に示す。全体で 36.6%であり、60 歳以上は 46.2%から 47.8%と他の年代に比べて
高い。しかし、半数には満たず、認知度が高いとはいえない。
全国順位に関する自由記述を見ると、「CO2の排出量が多く環境によくない」「公共交通を充実させて車の
使用頻度を減らすべき」等の意見は少数派で、「公共交通が不便であるため仕方がない」「車がないと暮らし
ていけない」「地域的に仕方がない」「年寄りにとっては車がないと不便である」など現状を「やむを得ない」
と考える意見が圧倒的多数を占めた。一方、「賛成」「いいと思う」「当然のことだと思う」「妥当だと思う」
「ルールを守って運転すれば良いと思う」「仕事をする人が多いので必要」といった賛同意見や「自宅に駐
車スペースが十分確保できる」「女性の社会進出の表れだと思う」等の意見も複数みられた。
図 4.7 交通手段別の利用目的
9
● よくない
● CO2の排出量が多く環境によくない
● ちょっと多いと思う
● いいとは思わない
● ちょっといきすぎてると思います
● 公共交通機関を充実させて、車の使用頻度を減らすべき
● 車ばかりを使って、他の交通手段を使うことに気がつかないのは残念
● 金がかかると思う
● 公共交通が不便である為、仕方なく車で移動する手段しかない
● 公共交通機関が十分でない為、いたしかたない
● バス等が少ない為交通の便が悪い
● それだけ公共交通の便が悪いということ、バス代も高い
● バスの時間があまりないから仕方ない
● 車が無くては暮らしていけない
● 福井は働き者が多いのですが交通の便が悪い
● 仕方がない(都会化が進まないと難しい)
● 町の作りの問題なので仕方ない
● 公共の交通機関が発達していないので必然的だと思う
● 公共交通機関がもっと充実していればいいのにと思う
● 電車が少ないので仕方ない、職場が遠いので車にたよってしまう
● 田舎だからしょうがない
● 車社会からの脱却は困難、インフラ整備が困難
● 地方都市の実状で仕方がない、最も実状に合った乗り物と思う
● 家と勤務地の間に公共交通がなく、天気(冬)がすぐれず継続的に徒歩や自転車が使いずらい事を考えると仕方ない
● 郊外にショッピングセンター等があるので仕方がない事だと思う
● 交通体系が整備されていない地域が多く、車社会であるのは必然だと思う
● 人口が少なく公共交通の維持が困難な地域なので仕方ない
● 高齢者が多く公共交通機関が発達していないのでやむを得ない
● 電車バスなどがもっと便利になったらそちらを利用できる
● 車がないと年寄りにとっては不便になる
● 車に乗れない人は行動範囲が限られるので不便
● 賛成
● 良いと思う
● 交通インフラとして重要である
● 交通手段として必要なもの
● 良いと思います。例えばルールを守るような教育の必要性が大事
● 仕事をする人が多い社会においては必要ではないのでしょうか
● 居住地の環境、家族環境を踏まえると妥当だと思う
● 家から街まで距離があるので当然の事と考えている
● バスなど利用することもできるが、楽なので車を使ってしまう
● 女性の社会進出率が高いことの表れだと思います
● 自宅に駐車場スペースが十分に確保できている
● 排気ガスを心配していましたが最近車が開発されていっているので自然環境に対しては改善しつつあるのではと、、
● ドライバーがルールを守って運転すれば良いと思います
表 4.4 自動車保有台数の全国順位に関する主な意見(抜粋)
図 4.8 福井県の自動車保有ランキングの認知度
10
② 自動車抑制の意識
「環境問題や交通渋滞の解決、公共交通の維持等から自動車を抑制する必要があると考えるか」について
は、表 4.5、図 4.9 の通りであった。「抑制する必要がある・実行したい・社会としても努力すべき」と回
答した割合は、高齢者で 46.4%、非高齢者で 30.1%、全体平均で 33.5%であり、3割強の人がこの考え方
を支持していることがわかった。特に高齢者は 5割近い人が指示している。
一方、「社会として努力すべきだが自分は難しい」「必要はあるが自分も社会も難しい」と回答した割合は、
非高齢者・高齢者いずれも 3割程度となっているが、非高齢者の割合がやや高く、社会としては努力すべき
でも自分の実行が難しいことを示している。さらに、「必要ない」との回答は、非高齢者で 1割近くに上っ
ており、高齢者の 1.8%に対して多い。以上のことから、必要性には賛同するが、自分の実行や社会の努力
は困難であるとする割合は、非高齢者に高い傾向にあり、必要ないとの回答も含めると、非高齢者の方が、
自動車の抑制に対して消極的であることがわかる。
③自動車の CO2排出量減少に向けた行動意識
CO2 排出量減少に向けた個人の行動意識を図 4.10に示す。「徒歩・自転車圏内であれば自動車利用を控え
る」という割合は全体の 51.4%であり、約 5 割にとどまっていることがわかる。これは非高齢者・高齢者
ともに同様の傾向を示している。一方、「公共交通の利用」は全体で 32.7%であり、高齢者の約 4割に対し
て非高齢者は約 3 割にとどまっている。「エコドライブの実践」はどちらも約 3 割を示している。「低燃費
車・ハイブリッド車」は非高齢者の割合が高く、「電気自動車・燃料電池車」は高齢者の割合が高い。
以上のことから、徒歩や自転車が可能な範囲であっても自動車を抑制したいと考える割合は 5 割にとど
まっており、車の利便性に慣れたライフスタイルや行動習慣を垣間見ることができる。一方、公共交通の利
用は、高齢者の方が積極的である。その要因を特定することはできないが、時間的余裕や高齢者ドライバー
の事故の多発などいくつかの背景を推察することができる。
度数 割合 度数 割合 度数 割合
1. 必要あり・実行したい・努力すべき 65 30.1% 26 46.4% 91 33.5%
2. 努力すべきだが、実行は難しい 63 29.2% 15 26.8% 78 28.7%
3. 自分も社会全体としても難しい 68 31.5% 14 25.0% 82 30.1%
4. 必要ない 20 9.3% 1 1.8% 21 7.7%
非高齢者(n=216) 高齢者(n=56) 全体(n=272)項目
0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0
全体
高齢者
非高齢者
必要あり・自分は実行したい・社会としても努力すべき社会として努力すべきだが、自分は実行は難しい必要はあるが、自分も社会全体としても難しい必要ない
表 4.5 自動車抑制の意識
図 4.9 自動車抑制に関する意識
11
次に、自動車の 1日平均走行距離別にみた CO2排出量減少に向けた個人の行動意識を図 4.11に示す。「徒
歩・自転車圏内であれば自動車利用を控える」という割合は、自動車の 1日平均走行距離が 5㎞未満の距離
帯で 62.7%と最も高い。「公共交通の利用」は、5km-10㎞未満が 42.6%と他の距離帯に比べ高いが、50㎞
以上が 38.5%、5㎞未満が 33.9%と大差はなく、公共交通の利用は、自動車利用の距離とあまり関係がない
ことがわかった。
世界的には、500m から 5 ㎞以下の都市内移動において、自転車が他の交通手段に比べて時間的にも有利
とされていることから、徒歩や自転車で移動する環境が向上することによって、5㎞未満の移動を徒歩や自
転車に変更しやすい可能性があり、脱クルマ社会に向けた効果が期待できる。一方、公共交通の利便性向上
やニーズに合った運営方法、公共交通と他交通手段との連携強化、スーパーサイクルハイウェイのような自
転車専用道路が整備されることによって、クルマに頼らず徒歩や自転車、公共交通で移動できる都市の創
造、生活の質の向上が期待できる。
その他、「エコドライブの実践」は、28.8%(5㎞未満)から 46.2%(50㎞以上)であり、長距離の方が、
実践意欲が高いことがわかった。「低燃費車やハイブリッド車」についても、25.4%(5㎞未満)から 44.4%
(20㎞~50㎞未満)であり、距離が長い方が、意欲が高いことがわかる。
0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0%
全体
高齢者
非高齢者
自動車利用を控える(徒歩・自転車圏内)公共交通を利用エコドライブの実践低燃費車・ハイブリッド車に乗り換える電気自動車・燃料電池車に乗り換えるその他
図 4.10 CO2排出量減少に向けた行動意識(%)
12
④環境問題・交通問題に関する意識
環境問題・交通問題への意識について図 4.12に示す。①~⑩は表 4.6の設問項目の番号に対応している。
「とても思う」「ある程度思う」の割合に着目すると、「④交通問題は個人の選択だけではなく、社会全体で
取り組むべき問題である。」が 94.8%と最も高く、「①自動車利用による CO2 排出は、地球温暖化問題にと
って重大である。」が 93.7%と続いている。これに対し、「⑥バス優先ルート・専用車線が有効に利用され
るなら、車通勤者は我慢すべき。」(55.3%)、「⑧CO2 排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視し
た交通手段を選びたい。」(62.2%)など他に比べるとやや低い割合の項目もみられた。
ここで、問題意識が高いことがうかがえる①および④を目的変数、その他の項目を説明変数として、それ
ぞれ重回帰分析を行い要因解析し、①と④に対する重要な変数(項目)を導いた。④を目的変数とした重回
帰分析による問題意識モデル集計結果を表 4.7 に示し、①を目的変数としたモデル集計結果を表 4.8 に示
す。まず、④についてみると、「③全国有数の車社会である福井県の特性をふまえ、積極的な対策を講じる
べき。」と「⑤公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。」が 1%有
意で重要な説明変数として抽出された。次に①では、「②将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な
対策が必要である。」と「⑧CO2 排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びた
い。」が 1%有意で重要な説明変数として抽出された。
図 4.11 自動車の 1日平均走行距離別にみた CO2排出量減少に向けた行動意識
13
55.2%
44.2%
39.8%
63.0%
42.4%
19.3%
40.0%
21.5%
42.2%
38.7%
38.5%
43.9%
42.4%
31.9%
45.0%
35.9%
44.8%
40.7%
46.3%
37.9%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
とても思う ある程度思う
93.7%
88.1%
82.2%
94.8%
87.4%
55.2%
84.8%
62.2%
88.5%
76.6%
(設問内容)
交通問題に関する自身の考えを下記の 4段階のうち1つそれぞれの項目で選択してください。
1 とても思う 2 まあまあ思う 3 あまり思わない 4 全く思わない
① 自動車利用による CO2排出は、地球温暖化問題にとって重大である。
② 将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対策が必要である。
③ 全国有数の車社会である福井県の特性をふまえ、積極的な対策を講じるべき。
④ 交通問題は個人の選択だけではなく、社会全体で取り組むべき問題である。
⑤ 公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。
⑥ バス優先ルート・専用車線が有効に利用されるなら、車通勤者は我慢すべき。
⑦ 健康向上と医療費削減のためにも、自転車や徒歩へ転換することはよいことだ。
⑧ CO2排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びたい。
⑨ 公共交通の利便性が向上すれば、積極的に公共交通を利用したい。
⑩ 自転車利用の環境が改善されれば、積極的に自転車を利用したい。
表 4.7 重回帰分析による 問題意識モデル集計結果(④)
表 4.8 重回帰分析による 問題意識モデル集計結果(①)
表 4.6 環境・交通問題に関する意識(アンケート調査票・設問)
係数 標準誤差 t P-値
(定数) 0.2188 0.0966 2.2644 0.0243
① 0.0554 0.0629 0.8803 0.3795
② 0.0575 0.0582 0.9871 0.3245
③ 0.2346 0.0552 4.2522 0.0000
⑤ 0.1883 0.0470 4.0033 0.0001
⑥ 0.0715 0.0424 1.6862 0.0929
⑦ 0.0614 0.0512 1.1999 0.2312
⑧ -0.0055 0.0490 -0.1122 0.9107
⑨ 0.1003 0.0583 1.7197 0.0866
⑩ -0.0840 0.0499 -1.6831 0.0935
R
(重相関係数)有意確率
n
(回答者数)
0.6367 1.42×10-26 283
R2
(決定係数)
0.4053
係数 標準誤差 t 値 P-値
(定数) 0.1426 0.0931 1.5319 0.1267
② 0.3984 0.0505 7.8949 0.0000
③ 0.0662 0.0545 1.2145 0.2256
④ 0.0509 0.0578 0.8803 0.3795
⑤ 0.0537 0.0463 1.1597 0.2472
⑥ -0.0407 0.0408 -0.9987 0.3188
⑦ 0.0488 0.0491 0.9948 0.3207
⑧ 0.1588 0.0460 3.4505 0.0006
⑨ -0.0247 0.0562 -0.4398 0.6604
⑩ 0.0622 0.0480 1.2963 0.1959
R
(重相関係数)有意確率
n
(回答者数)
0.7217 4.87×10-39 284
R2
(決定係数)
0.5208
図 4.12 環境問題・交通問題への意識
14
⑤ 公共交通や自転車への転換の決め手となるもの
自動車から公共交通に転換するために有効な条件を図 4.13 に示す。最も期待される項目は「ダイヤ・運
行ルート」で全体の 6割が支持している。この割合は、高齢者よりも非高齢者に高く、通勤等で時間的な効
率や利便性が重視される現役世代にこの傾向が強い可能性があることが推察される。ついで「運賃」「最寄
駅やバス停までの距離」があげられているが、非高齢者にこの傾向が強く、通勤等の利便性や毎日利用する
上での費用なども影響している可能性が考えられる。
次に、前途した環境・交通問題に関する意識の⑨および⑩において、「とても思う」「まあまあ思う」と回
答した人が自動車から公共交通や自転車に転換するための有効な条件として挙げた項目を図 4.14 および図
4.15 に示す。まず、公共交通への利用・転換に有効な条件として、ダイヤや運行ルートが 61.9%と最も高
く、運賃が 40.6%、最寄駅・バス停までの距離が 34.7%と他の項目に比べ高いことが明らかとなった。こ
れらの傾向は、図 4.13 の分析と同様の結果を示しており、⑨、⑩に限定されるものではないことがわかっ
た。
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0
全体
高齢者
非高齢者
運賃金銭援助ダイヤ・運行ルート最寄駅・バス停までの距離車両の安全性・快適性駅・停留所の環境パークアンドライド駐車場バス優先ルート・専用車線その他
図 4.13自動車から公共交通に転換するために有効な条件(%)
15
次に、自転車への利用・転換に有効な条件として、通行空間の整備と連続性(自転車通行空間のネットワ
ーク化)が 51.5%と最も高く、駐輪場の安全性が 26.2%と他の項目に比べ高いことが明らかとなった。ま
た、公共交通への容易な積載が 20.9%であるとともに、鉄道駅やバス停における駐輪場整備が 16.5%から
18.4%であり、コミュニティサイクルの普及の 10.7%より高いことがわかった。これらのことから、コミュ
ニティサイクルでの移動よりもマイチャリでの移動かつ公共交通との連携を望む傾向にあることが推察さ
れる。
図 4.14 公共交通の利用者増が期待できる条件
図 4.15 自転車の利用者増が期待できる条件
16
(6)高齢者の運転免許自主返納の可能性
①自主返納の予定
運転免許の自主返納に関する高齢者の意識について図 4.16 に示す。「当分の間、返納しない」という割合
は 70.0%であった。一方、現在悩んでいる割合が 6.0%、具体的に検討している割合が 24.0%であった。
約 4 人に 1人が具体的に返納を検討しているが、7割は当分の間、返納予定がない結果となった。
②自主返納の理由
運転免許の自主返納理由について図 4.17に示す。最も高い割合を占めたのは、「高齢者事故の多発」であ
った。ついで、「視力や判断力など身体の衰えを感じ始めた」といった身体的衰えが 40.0%、「運転に自信
がなくなった」が 26.7%であった。「公共交通等の優遇が受けられる」は 13.3%、「家族からの勧め」と「実
際にブレーキとアクセルを間違う、車をぶつけるなど問題が発生した」は 6.7%であり、自動車の車検が切
れるタイミングでの自主返納は 0%であった。
図 4.16 高齢者の免許返納の意向
図 4.17 運転免許の自主返納理由
17
③希望する自主返納後のサービス
運転免許の自主返納後に高齢者が望む支援・サービスを表 4.9 に示す。乗合タクシーやコミュニティバ
ス、タクシーの割引などの移動支援が 53.3%と最も高く、鉄道や路線バス等の公共交通機関の発達が 44.4%、
移動販売や宅配サービス等の買い物支援が 42.2%を占めた。割引制度などの情報提供については 6.7%で
あった。
第5章 考察
1)本県における車の必要性(送迎の観点から)について
車の必要性について送迎の観点からみると、送迎の必要な家族がいる割合が 38.9%、自動車利用の目的
として送迎をあげた人が 26.8%であった。具体的には、父親や母親の通院、買い物の送迎、子どもの幼稚
園、保育園、習い事の送迎が多く見受けられ、配偶者のための送迎、孫の学校の送迎といった記述もあった。
世帯あたり自動車保有台数の全国順位に関する意見では、「車がないと生活できない」「車がないと年寄り
にとっては不便」「高齢者が多く公共交通が発達していないのでやむを得ない」等の考えが示され、送迎の
必要性が車利用につながっていることがわかる。
しかしながら、送迎の代替手段としてバスや自転車、タクシー、子どもの友人の保護者の送迎等があげら
れており、工夫の余地があると考えられる。
2)自動車保有台数の全国順位に関する考え方について
自動車保有台数の全国順位が高いことに関する認知度は、全体平均で 36.6%、60 歳以上では 46.2%から
47.8%と他の年代に比べて高いこと明らかとなった。しかし、半数には及ばず、県民の認識として高いとは
いえないことがわかった。
全国順位に関する自由記述をさらに分析すると、「土地柄仕方がない」「公共交通が十分でない為、いたし
かたない」「車社会からの脱却は困難、インフラ整備が困難」「郊外にショッピングセンター等があるので仕
方がない事だと思う」「人口が少なく公共交通の維持が困難な地域なので仕方ない」「町の作りの問題なので
仕方ない」など「やむを得ない」とする考え方が圧倒的に多く、「賛成」「良いと思う」「居住地の環境、家
族環境をふまえると妥当だと思う」「家から街まで距離があるので当然の事と考えている」等も含めると多
数の回答者が「仕方がない」「妥当である」「良いことである」と考えていることがわかった。
しかしながら、「ちょっと多いと思う」「CO2 の排出量が多く環境によくない」「車ばかりを使って、他の
交通手段を使うことに気がつかないのは残念」「公共交通機関を充実させて、車の使用頻度を減らすべき」
等の意見も見られ、車社会に対する問題意識の存在も明らかとなり、今後、CO2排出抑制に向けた県民意識
をどのように喚起していくかが課題と考えられる。
(n=45) 度数 割合
公共交通の発達 20 44.4%
移動支援 24 53.3%
買物支援 19 42.2%
情報提供 3 6.7%
その他 3 6.7%
表 4.9自主返納後に望む支援・サービス
18
3)鉄道駅・バス停までの距離と利用頻度の関係性について
国土交通省が利用圏として用いる距離帯は、鉄道駅から 500m、バス停から 300m であるが、本調査では、
鉄道駅まで 500m以内に居住する割合は全体で 35.1%、バス停まで 300m以内は全体で 73.0%であった。
これを利用頻度との関係で分析すると、鉄道では 100m以内の居住者において週 1以上の利用率がやや高
いが、それ以外については、利用圏(鉄道:500m圏内、バス:300m圏内)であっても利用率が低いことが
明らかとなった。従って、利用のインセンティブとして、距離のメリットはあまり働かないと考えられる。
以上のことから、公共交通への転換の決め手として、駅や停留所までの距離は、有利な条件となりにくい
と推察され、インセンティブをあげていくには、他の条件を充実していくことが重要であると考えられる。
4)自動車利用抑制に関する意識について
「環境問題や交通渋滞の解決、公共交通の維持等から自動車を抑制する必要があると考えるか」との問い
に対して、「抑制する必要がある・実行したい・社会としても努力すべき」と回答した割合は、高齢者で 46.4%、
非高齢者で 30.1%、全体平均で 33.5%であり、3割強の人が支持していることがわかった。
一方、「社会として努力すべきだが自分は難しい」「必要はあるが自分も社会も難しい」と回答した割合は、
高齢者・非高齢者いずれも 3割程度であり、非高齢者の割合がやや高いことがわかった。さらに、「必要な
い」との回答は、非高齢者で 1割近くに上っており、高齢者の 1.8%に対して多い。
以上のことから、「必要性には賛同するが、自分の実行や社会の努力は困難である」「必要ない」とする割
合は、非高齢者に高い傾向にあり、非高齢者の方が、自動車の抑制に対して消極的であることがわかる。し
かしながら、「抑制する必要があり、自分も実行したい、社会としても努力すべき」と考えている人が 3割
強存在することに注目すべきであり、社会的気運を醸成するとともに、具体的な実行策の提示や支援のため
の社会環境を整備することが重要であると考えられる。これらにより、「自分では難しい」「社会的にも難し
い」と考える層をも巻き込んでいく可能性が存在すると考えられる。
5)自動車の CO2排出量減少に向けた行動意識について
「徒歩・自転車圏内であれば自動車利用を控える」割合は全体の 51.4%であり、約 5 割にとどまってい
る。これは非高齢者・高齢者ともに同様の傾向を示している。一方、「公共交通の利用」は全体で 32.7%で
あり、高齢者の約 4割に対して非高齢者は約 3割にとどまっている。
以上のことから、徒歩や自転車が可能な範囲であっても自動車を抑制したいと考える割合は 5 割にとど
まり、車の利便性に慣れたライフスタイルや行動習慣をどのように変えていけるかが課題であることがわ
かる。公共交通の利用意識は、高齢者の方が積極的である。その要因を特定することはできないが、時間的
余裕や高齢者ドライバーの事故の多発などいくつかの背景を推察することができる。非高齢者・高齢者とも
に、公共交通の利用促進を図っていくためには、これらの要素をふまえた啓発や環境整備が重要であると考
えられる。
一方、行動意識を自動車の 1日平均走行距離別にみると、「徒歩・自転車圏内であれば自動車利用を控え
る」という割合は、自動車の 1 日平均走行距離が 5 ㎞未満の距離帯で 62.7%と最も高いことがわかった。
世界的には、500m から 5 ㎞以下の都市内移動において、自転車が他の交通手段に比べて時間的にも有利と
されていることから、徒歩や自転車で移動する環境が向上することによって、5㎞未満の移動を徒歩や自転
車に変更しやすい可能性があり、脱クルマ社会に向けた効果が期待できることから、利用距離の短い層を対
象とした重点的な働きかけが重要であると考えらえる。
一方、公共交通については、利便性向上やニーズに合った運営方法、公共交通と他交通手段との連携強化、
19
スーパーサイクルハイウェイのような自転車専用道路が整備されることによって、クルマに頼らず徒歩や
自転車、公共交通で移動できる都市の創造、生活の質の向上が期待できる。
以上の他、「エコドライブの実践」は、28.8%(5 ㎞未満)から 46.2%(50 ㎞以上)であり、長距離の方
が、実践意欲が高いことがわかった。「低燃費車やハイブリッド車」についても、25.4%(5 ㎞未満)から
44.4%(20㎞~50㎞未満)であり、距離が長い方が、意欲が高い。したがって、長距離利用者層に対して、
エコドライブの講習を行うなどターゲットを明確にした重点的な対策が重要であると考えられる。
6)公共交通、自転車への転換に有効となる条件について
自動車から公共交通に転換するための条件として最も期待される項目は「ダイヤ・運行ルート」で、全体
の 6 割であった。この割合は、高齢者よりも非高齢者に高く、通勤等で時間的な効率や利便性が重視される
現役世代にこの傾向が強い可能性があることが推察される。
自転車の利用・転換に有効な条件としては、「通行空間の整備と連続性(自転車通行空間のネットワーク
化)」が 51.5%と最も高いことがわかった。「駐輪場の安全性」が 26.2%、「公共交通への容易な積載」が
20.9%、「鉄道駅やバス停への駐輪場整備」が 16.5%から 18.4%であり、移動の安全性、利便性、および公
共交通との連携を望む傾向があることがわかった。
以上のことから、公共交通や自転車への転換を促していくためには、効率よく利用できる環境(ダイヤ・
運行ルート)、安全性と利便性(自転車通行空間のネットワーク)、公共交通と自転車との連携体制(駐輪場
の整備、電車への積載等)が重要であると考えられる。
7)環境問題・交通問題に関する意識について
環境問題・交通問題について①~⑩それぞれの傾向を見ると、支持率に差はあるが、多くが 8~9 割に達
しており、全項目において 5 割を超えていることは大きく評価できる。特に、「④交通問題は個人の選択だ
けではなく、社会全体で取り組むべき問題である」が 94.8%、「①自動車利用による CO2 排出は、地球温暖
化問題にとって重大である」が 93.7%と極めて高く、ついで、「⑨ 公共交通の利便性が向上すれば、積極
的に公共交通を利用したい。」「② 将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対策が必要である。」「⑤
公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。」など、いずれも 9割に
近い支持率を示している。
そして、①および④について、重回帰分析を行い要因解析した結果、①と④に対する重要な変数(項目)
が導かれた。④を目的変数とした重回帰分析では、「③全国有数の車社会である福井県の特性をふまえ、積
極的な対策を講じるべき。」「⑤公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策で
ある。」が重要な説明変数として抽出され、①では、「②将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対
策が必要である。」「⑧CO2 排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びたい。」
が重要な説明変数として抽出された。
このことは、交通問題は社会全体で取り組むべきであり、そのために全国有数の車社会である本県の特徴
をふまえた積極的な対策をとる必要があること、公共交通への財政的な援助を行うことも社会的に妥当で
あること、一方、自動車による CO2 排出は地球温暖化にとって重大であり、将来の世代や地球環境のために
緊急な対策が必要であること、CO2 排出を抑制するためなら利便性よりも環境を重視した交通手段を選ぶ意
志があることを意味している。
以上のことから、県民は、自動車利用による CO2排出と地球温暖化問題、将来の世代への影響などを認識
するとともに、これらの解決のために、個人および社会全体として取り組むべきであること、また、全国有
20
数の車社会である本県の特徴をふまえた積極的な対策をとるべきであり、そのためには、公共交通への財政
的な援助を含めた支援、利用のための環境整備が重要であること、そして、これらの充実が図られれば、積
極的に利用したいと考えているといえる。
したがって、こうした県民意識を捉え、具体的な施策に結びつけるとともに、県全体の社会問題として、
より多くの県民がこれらの問題に触れ、認知し、行動変革や公的な財政負担への賛同などへとつなげていく
ことのできる方策を講じていくことが重要であると考えられる。
8)高齢者の運転免許自主返納の可能性について
運転免許の自主返納については、4 人に 1 人が具体的に返納を検討していることがわかった。その理由
は、「高齢者事故の多発」が最も多く、「視力や判断力など身体の衰えを感じ始めた」といった身体的衰えや
「運転に自信がなくなった」が続く。「実際にブレーキとアクセルを間違う、車をぶつけるなど問題が発生
した」人は 6.7%みられ、返納の重要性、必要性が迫っていることがうかがえる。返納を促進する方法とし
て、乗合タクシーやコミュニティバス、タクシーの割引などの移動支援を望む声が最も高く、鉄道や路線バ
スなど公共交通機関の発達、移動販売や宅配サービス等の買い物支援が続いた。
以上のことから、自主返納を検討している高齢者が少なくないことから、返納後の移動を支援する具体的
な制度やサービスをさらに充実していくとともに、これらの情報を広く高齢者に周知し、返納にあたっての
アドバイスや家族も含めた相談体制等の支援が重要であると考えられる。特に、本県が全国有数の車社会で
あることについて、高齢者の生活不便や家族の送迎の問題などが指摘されていたことから、こうした問題の
解決を地域ごとの特徴をふまえて推進していくことが重要であると考えられる。さらに、7割は当分の間返
納する予定がないと答えているが、実際に事故が発生したり、家族が返納を勧めたりしている状況を鑑みる
と、返納後のサービスや相談体制を充実させることで、安心して返納できる環境を提供することが重要であ
る。
第6章 おわりに
本県が全国有数の車社会であることから、CO2 排出による地球温暖化への影響が懸念される中、県民は、
人口密度の低さにより公共交通が発達しづらいことや高齢化等による送迎の必要性など様々な要因から「や
むを得ない」と考える傾向が大変強く、さらに、自動車交通の発達は「良いことである」「妥当である」と
する意見もみられた。実際に、通勤や通学、通院、その他の様々な場面で車が不可欠であることは事実であ
(設問内容)
交通問題に関する自身の考えを下記の 4段階のうち1つそれぞれの項目で選択してください。
1 とても思う 2 まあまあ思う 3 あまり思わない 4 全く思わない
① 自動車利用による CO2排出は、地球温暖化問題にとって重大である。
② 将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対策が必要である。
③ 全国有数の車社会である福井県の特性をふまえ、積極的な対策を講じるべき。
④ 交通問題は個人の選択だけではなく、社会全体で取り組むべき問題である。
⑤ 公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。
⑥ バス優先ルート・専用車線が有効に利用されるなら、車通勤者は我慢すべき。
⑦ 健康向上と医療費削減のためにも、自転車や徒歩へ転換することはよいことだ。
⑧ CO2排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びたい。
⑨ 公共交通の利便性が向上すれば、積極的に公共交通を利用したい。
⑩ 自転車利用の環境が改善されれば、積極的に自転車を利用したい。
表 4.10 環境・交通問題に関する意識(アンケート調査票・設問)再掲
21
る。特に、非高齢者層は、通勤等の利便性から車の利用が重要視されている。
しかしながら、一方で、自動車利用による地球温暖化への影響や将来の世代にもたらす影響について回答
者の 9割以上が支持を表明しており、①本県の特性をふまえた積極的な対策が重要であること、②個人の選
択だけでなく社会全体の問題として扱うべきであることなど、9割近い支持が示されている。そして、公共
交通への財政支援等の重要性、公共交通や自転車が使いやすい環境になれば積極的に利用したいことなど
が示されている。
したがって、上述した通り、こうした県民意識を捉え、具体的な施策に結びつけるとともに、県全体の社
会問題として、より多くの県民がこれらの話題に触れ、認知し、例えば近距離は徒歩や自転車を選ぶ、エコ
ドライブを実践する等の行動変革や公共交通への公的な財政負担への賛同などへとつなげていくことが重
要である。
また、今後ますます進む人口減少と人口密度の低下は、都市インフラの整備・維持負担を増していくこと
は必至であり、コンパクトシティ化など都市計画と一体となった政策も重要である。さらに、一層高齢化が
進む中で、交通弱者や高齢者ドライバーの事故が増えることを回避する必要があり、公共交通の充実ととも
に、運転免許自主返納を促進するための制度やサービスの充実、周知・相談等も含めた諸施策が急務といえ
る。
県民は、全国有数の車社会であることを「仕方がない」としつつも、地球レベルの環境問題やローカルレ
ベルの交通問題について、解決をめざすための問題意識を強く持っていることがわかった。より多くの県民
にこうした事柄を周知し、自動車利用抑制の意識を醸成していくことが重要である。そして、①県民ができ
ること、②行政が行うべきこと、③民間事業者が努力することについて対話を重ね、具体的な前進をめざす
ことが期待される。
謝辞
本調査は、平成 29年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(地域における地球温暖化防止活動促進
事業、根拠法:地球温暖化対策の推進に関する法律(平成 10年法律第 117号))をもとに実施しました。調
査を実施するにあたり、福井工業大学工学部建築土木工学科交通計画研究室(代表 吉村朋矩氏)に委託し、
調査用紙の設計、調査の実施、集計・分析等の一連の作業において、協議しながらともに作業を進めてきま
した。ここに、記して謝意を表します。また、アンケート調査の実施にあたり、実施場所として各公民館、
福井街角放送、環境フェア等のイベント会場、商工会議所、研修会や出前講座の主催者など多くの関係機関、
関係者の方々にお世話になりました。そして、アンケートの回答にご協力いただいた県民の方々にも大変お
世話になりました。あわせてここに記し、厚くお礼申し上げます。
22
付録 アンケート調査票
家庭の CO₂排出量実態調査~自家用車利用の実態と今後の可能性について
事業名
平成 29年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(地域における地球温暖化防止活動促進事業)
根拠法:地球温暖化対策の推進に関する法律(平成 10 年法律第 117号)
目的
福井県は、1世帯あたりの乗用車台数が全国 1位、県民 1人あたり乗用車台数は 7位と上位にあり(「都道府県
別自動車保有台数」(2014 年自動車検査登録情報協会))、福井県温暖化防止活動推進センターが H25~28年度に
実施した CO2排出量実態調査では、ガソリン使用による CO2排出量の割合が高いことがわかっています。
このような背景のもと、日常生活において自動車を利用している県民が、①どのような状況においてどの程度利
用しているのか、②公共交通や自転車等への転換を促すには何が決め手となるのか、③地球温暖化と将来の世代を
見据えた上での交通対策としてどのような考えを持っているか等を調査分析することで、本県における自動車利用
の軽減、自動車以外の交通手段への転換の可能性を探るとともに、それらを促すための方策、社会的気運の醸成等
について検討するための材料を整理します。
調査実施機関
福井県地球温暖化防止活動推進センター(NPO 法人エコプランふくい)
福井県福井市宝永 4-13-4 TEL 0776-30-0092 / FAX 0776-21-1261 npo@ecoplanf.com
調査協力機関
福井工業大学工学部建築土木工学科 吉村朋矩研究室(FUT 交通計画研究室)
調査対象者・対象数
21 歳~65歳 200名、65歳以上 50名、計 250 名
お答えの方法
・アンケート調査票でお答えいただけれる場合は、項目ごとに○印または語句を直接調査票にご記入ください。
・ウェブアンケートでお答えいただけれる場合は、下記の URL 若しくは QRコードでアクセスしてください。
https://goo.gl/forms/U53O1bzoWSFX2dhb2
・全ての項目に答えられない場合でも参考になりますので、ご記入ください。
・内容に関しまして不明な場合は、調査スタッフまでお尋ねください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
家庭の CO₂排出量実態調査~自家用車利用の実態と今後の可能性について
1. 福井県が、1世帯あたり乗用車数日本 1位、一人あたり 7位であることを知っていましたか?
1 知っていた 2 知らなかった
(福井が車社会であることについてどう思われますか?)
2. 個人属性について(単数回答)
1)年代 1 10代 2 20 代 3 30 代 4 40 代 5 50 代 6 60~64歳 7 65~74 歳 8 75 歳以上
2)職業 1 自営業 2 被雇用(業種問わず) 3 学生 4 無職 5 その他( )
3)家族 1 送迎の必要な家族がいる 2 送迎の必要な家族はいない
(誰をどのような理由で送迎されますか?代替手段はありますか?)
4)最寄りの鉄道駅やバス停までどのくらいの距離ですか。
① 鉄道駅まで 1 ~100m 2 100m~150m 3 150m~200m 4 200m~300m 5 300m~500m 6 500m~( m)
② バス停まで 1 ~100m 2 100m~150m 3 150m~200m 4 200m~300m 5 300m~500m 6 500m~( m)
3. 主に利用する自家用車について教えて下さい(単数回答)※所有している人のみ
1)車の種類 1ガソリン車 2 ディーゼル車 3 低燃費車 4 ハイブリッド車 5 電気自動車 6 燃料電池車
2)使用頻度 1 毎日 2 週 4-6回 3 週 1-3回 4 月 1-3回 5 利用しない
3)1日あたりの平均走行距離
1 5km 未満 2 5㎞~10㎞未満 3 10㎞~20㎞未満 4 20㎞~50㎞未満 5 50km 以上
4. 自転車・バス・電車の利用頻度(単数回答)
自転車 1 毎日 2 週 4-6回 3 週 1-3回 4 月 1-3回 5 利用しない
バス(路線バス、コミュニティバス等) 1 毎日 2 週 4-6回 3 週 1-3回 4 月 1-3回 5 利用しない
電車・鉄道(JR、えち鉄、福鉄) 1 毎日 2 週 4-6回 3 週 1-3回 4 月 1-3回 5 利用しない
5. 自動車・自転車・バス・電車を利用する時の主な目的(利用する交通手段のみ、複数回答)
自動車
※所有している人のみ
1 通勤 2 通学 3 業務上の移動 4 買い物 5 娯楽 6 通院
7 役所・郵便局・銀行等 8 家族の送迎 9 その他( )
バス(路線バス、コミュニティバス等) 1 通勤 2 通学 3 業務上の移動 4 買い物 5 娯楽 6 通院
7 役所・郵便局・銀行等 8 家族の送迎 9 その他( )
鉄道(JR、えち鉄、福鉄) 1 通勤 2 通学 3 業務上の移動 4 買い物 5 娯楽 6 通院
7 役所・郵便局・銀行等 8 家族の送迎 9 その他( )
自転車 1 通勤 2 通学 3 業務上の移動 4 買い物 5 娯楽 6 通院
7 役所・郵便局・銀行等 8 家族の送迎 9 その他( )
2
6.自動車から公共交通に転換するために有効な条件は何ですか?(複数回答)
1 運賃 2 金銭的援助(例:介助者支援)3 ノーマイカーデー協力者サービス(例:保険料割引)
4 ダイヤ・運行ルート 5 最寄駅・バス停までの距離 6 車両の安全性・快適性
7 駅・停留所の環境 8 パーク&ライド駐車場 9 バス優先ルート・専用車線 10 その他
7.自動車から自転車に転換するために有効な条件は何ですか?(複数回答)
1 自転車の通行空間と連続性 2 駐輪環境の安全性 3 鉄道駅の駐輪場整備
4 バス停留所の駐輪場整備 5 公共交通の自転車の容易な積載
6 コミュニティサイクルの普及(例:ふくチャリ) 7 その他
8.環境問題や交通渋滞、公共交通の維持から自動車を抑制する必要があると思いますか?(単数回答)
1 あると思う。自分ができることは実行したい。また、社会全体として努力すべきと思う。
(理由⇒ )
2 社会全体として努力すべきだと思うが、自分が実行するのは難しい。
(理由⇒ )
3 必要はあると思うが、自分も社会全体としても難しいと思う。
(理由⇒ )
4 必要はないと思う(理由⇒ )
9.自動車の CO2排出量を減らすために、あなたがやってみたいことはどんなことですか?(複数回答)
1 徒歩・自転車で移動できる範囲の移動は、自動車の利用を控える。
2 公共交通を利用できる場合は、利用する。
3 ふんわりアクセルスタートやアイドリングストップなどエコドライブの実践。
4 低燃費車、ハイブリッド車などに買い替える。
5 電気自動車、燃料電池車などに買い替える。 6 その他( )
10.交通問題に関するあなたの考えをお聞かせ下さい。
1 とても思う 2 まあまあ思う 3 あまり思わない 4 全く思わない
① 自動車利用による CO2 排出は、地球温暖化問題にとって重大である。 ( )
② 将来の世代や地球環境を重視するならば、緊急な対策が必要である。 ( )
③ 全国有数の車社会である福井県の特性をふまえ、積極的な対策を講じるべき。 ( )
④ 交通問題は個人の選択だけではなく、社会全体で取り組むべき問題である。 ( )
⑤ 公共交通への補助金や建設・維持管理費への援助は、社会的に妥当な施策である。 ( )
⑥ バス優先ルート・専用車線が有効に利用されるなら、車通勤者は我慢すべき。 ( )
⑦ 健康向上と医療費削減のためにも、自転車や徒歩へ転換することはよいことだ。 ( )
⑧ CO2 排出を抑制するためなら、利便性よりも環境を重視した交通手段を選びたい。 ( )
⑨ 公共交通の利便性が向上すれば、積極的に公共交通を利用したい。 ( )
⑩ 自転車利用の環境が改善されれば、積極的に自転車を利用したい。 ( )
3
以降は、65歳以上の方におたずねします。
11.運転免許を自主返納しようと思いますか。(単数回答)
1 具体的に返納を検討している
(いつ頃?・理由⇒ )
2 当分の間、返納するつもりはない
(理由⇒ )
3 生涯、返納するつもりはない
(理由⇒ )
4 悩んでいる
(理由⇒ )
12.免許を返納しようと考える理由について、お答えください。(複数回答)
※検討している若しくは悩んでいる方のみお答えください。
1 運転に自信がなくなった 2 視力や判断力など身体の衰えを感じ始めた 3 家族からの勧め
4 高齢者の事故が多発している 5 実際にブレーキとアクセルを間違う、車をぶつけるなど問題が発生した
6 車検が切れるタイミング 7 公共交通等の優遇が受けられる 8 その他( )
13.自主返納者へのサポートとして、どのようなサービスを望まれますか?(複数回答)
1 公共交通機関の発達 2 移動に関する支援 3 買物支援 4 情報の提供 5 その他( )
以上で質問は終わりです。
調査にご協力いただき、大変ありがとうございました。
~COOL CHOICE(賢い選択)賛同のお願い~
環境省では、CO2削減のために身近にできる行動を選択する COOL CHOICE
(賢い選択)運動を進めています。賛同していただける方は、ニックネームをご記入
の上、下記の□にチェックマーク☑を入れていただけたら幸いです。
ニックネーム . 私は、COOL CHOICE に賛同します。 ➡
写真提供:福井工業大学 工学部 建築土木工学科 交通計画研究室
2018 年 2 月
福井県地球温暖化防止活動推進センター(NPO 法人エコプランふくい)
〒910-0004 福井県福井市宝永 4-13-4
TEL 0776-30-0092 / FAX 0776-21-1261
Email:npo@ecoplanf.com, HP:http://stopondanka-fukui.jp/
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