コンクリート工学研究室 岩城 一郎
Post on 02-Jan-2016
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凍害
コンクリート工学研究室岩城 一郎
凍害とは• 劣化要因:凍結融解作用• 劣化現象:コンクリート中の水分が凍結と
融解を繰り返すことによって,コンクリート表面からスケーリング,微細ひび割れおよびポップアウトなどの形で劣化する現象.
• 劣化指標:相対動弾性係数(コンクリート標準示方書〔施工編〕),凍害深さ(同〔維持管理編〕)
凍害による劣化機構三浦尚著,土木材料学,コロナ社より抜粋
• コンクリート中のペーストおよび骨材に含まれている水分が凍結す
ると,体積が増大し,それによって発生した圧力は,近くに空げきがあって緩和されない限り,まわりのペーストを破壊し,コンクリートにすき間(細かいひび割れ)をつくる.その後,水が供給されてそのすき間が水で満たされた後,再び凍結すると,膨張によってそのすき間がさらに広がる.そして,このようなことが繰り返されることによって劣化は進行する.
• コンクリートの間げき中の水はアルカリ溶液であるため,コンクリートの温度が下がると,大きな間げきの水の一部が氷になる.すると,同じ間げき中の未凍結部分ではアルカリ濃度が高くなり,浸透圧の関係で周辺の凍結していない水を引きよせる(その結果,一部の間げきの脱水により,コンクリートは凍結初期には収縮する).そのため,氷の体積はますます増大し,その膨張圧によってコンクリートが破壊される.ただし,多くの気泡がある場合には,水の移動が妨げられ,このようなことは起こらない.
• コンクリート中にある過冷却の液体と氷との蒸気圧の違いによって,大きな間げき,あるいはコンクリート表面などのような凍結可能な所への水分の移動が起こる.その結果,ペースト中に部分的な脱水が起こり(この結果,コンクリートは凍結の初期には収縮する),また,裂け目やひび割れ中への氷の蓄積が起こる.
凍害による劣化機構の概念図
図:日本コンクリート工学協会,「凍結防止剤によるコンクリート構造物の劣化研究委員会報告書」より抜粋
凍害による劣化形態
(1) ひび割れ
D-cracking Map-cracking
写真:土木学会,コンクリートライブラリー 109 , 「コンクリートの耐久性に関する研究の現状とデータベース構築のためのフォーマットの提案」より抜粋
(2) スケーリング( scaling )
(3) ポップアウト( pop out )
縁石のスケーリング(凍結防止剤の影響)
スケーリング
鋼材の露出
腐食の促進
写真:土木学会,コンクリートライブラリー 109 , 「コンクリートの耐久性に関する研究の現状とデータベース構築のためのフォーマットの提案」より抜粋
低品質粗骨材の使用
凍害に影響を及ぼす要因内的要因• 水セメント比:細孔組織が緻密で凍結可能な自由水が少ない.• 空気量: AE コンクリート(微小な気泡を人工的に連行させた
コンクリート)とすることにより耐凍害性が飛躍的に改善• 飽水度(コンクリート中の空隙にどれ位水分が満たされてい
るか?):ある値以下であれば,優れた耐凍害性を示す.一般に Non-AE で 80%程度, AE で 90%程度(理論上は飽水度 91.7%以下であれば氷の形成に伴う膨張圧は作用しない.)
• 気泡間隔係数 ASTM C 457 : 200-250μm以下とすることにより優れた耐凍害性を示す.
外的要因• 気象条件(最低気温,日射量,凍結融解回数),水の供給条件• 最低気温:冷却最低温度が低いほどより小さな細孔径まで凍結
可能.• 日射量:凍害は凍結作用だけでなく融解作用が不可欠.• 水の供給条件:乾燥していれば凍害は発生しない.
凍害に影響に影響を及ぼす要因
Referring to Properties of Concrete, 4th Edition by A. M. Neville
凍害に対する劣化対策• 水セメント比を下げ,組織を緻密化する• AE コンクリートとすることによりコンク
リート中に所定の空気量を連行する.• 良質な骨材を使用する.• 水分の供給を遮断することにより,コンク
リート内部の飽水度の上昇を防ぐ.
凍害による劣化の考え方耐久性(機能性)- 構造物本体の耐荷性能に影響を及ぼすことは稀.- コンクリート塊の落下等第三者被害は重要な問題.- 塩分環境下においては鋼材腐食を促進させる恐れあり.
美観スケーリング,ひび割れ等が卓越すれば,市民に不安感,不快感を与える.→資産価値の低下
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転載不可
凍害に関する研究 ・北海道内陸ほどではないが,凍害
危険度 高 ・ JCI東北支部「東北地方におけるコ
ンクリート構造物の凍害に関する調査研究委員会( 2001年)」(委員長:庄谷先生):凍害の実態調査
庄谷,月永:コンクリート工学, Vol.42 , No.12 , pp.3-8, 2004 .
長谷川・藤原著:コンクリート構造物の耐久性シリーズ 凍害 より抜粋
凍結防止剤の散布による劣化の促進
• 1991年スパイクタイヤの規制:凍結防止剤(主に NaCl )の散布量急増(規制前の約 10倍)
• JCI 「凍結防止剤によるコンクリート構造物の劣化研究委員会( 1999年)」 (三浦尚委員長)
• 劣化の特徴- コンクリート表面の激しいス
ケーリングとして現れる凍害 - アルカリシリカ反応の促進- コンクリート中の鋼材の急速な
腐食(塩害)- およびこれらの複合劣化
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三浦尚:コンクリート工学, Vol.38 , No.6 , pp.3-8 ,2000 .
凍結防止剤による劣化事例凍結防止剤による劣化事例
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凍結防止剤による凍結防止剤による RCRC床版の劣化機床版の劣化機構構
40mm
35mm
アスファルト舗装
アスファルト舗装
防水工(塗膜系、シート系)
40mm
35mm
アスファルト舗装
アスファルト舗装
高性能防水工(ウレタン等)
土砂化水平クラック 塩分浸透深さ
融雪剤の影響を受けて劣化したRC床版のイメージ図
融雪剤の影響を受けて劣化した実RC床版
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凍害に関する今後の検討課題
凍害の発生
スケーリング及び 微細ひび割れの進展
中性化及び塩分浸透の促進
CO2及び Cl -のコンクリート内部への浸透
鉄筋腐食の促進
耐久性の低下
設計時のかぶり
スケーリング深さ
劣化深さ
鉄筋元のコンクリート表面
健全部
凍害による劣化形態の概念図
微細ひび割れ
設計時のかぶり
スケーリング深さ
劣化深さ
鉄筋元のコンクリート表面
健全部
微細ひび割れ
・凍害による劣化を他の劣化要因 (例えば中性化や塩害)との複合劣化 問題として捉える.
・凍害を受けたコンクリート内部の 物質移動性の把握→モデル化
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