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5G総論について～5Gによって変わる生活・ビジネス～

5Gが変える私たちの生活

2020年12月15日

株式会社野村総合研究所ICTメディア・サービス産業コンサルティング部主任コンサルタント

澤田和志

1Copyright（C） Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved.

5Gとは？1

5G普及までの道のり2

5Gが一般消費者に与える影響3

5Gが産業に与える影響4

まとめ5


移動通信システムは、1980年代から約10年ごとに進化してきた5Gとは？

移動通信システムの進化

1980 1990 2000 2010 2020

10K

10G

1G

100M

10M

1M

100K

(bps)

(年)

最大通信速度

第1世代第2世代

第3世代

第4世代

第5世代

アナログ方式

デジタル方式

世界共通のデジタル方式

LTE

LTE-Advanced

10年毎に進化

出所）総務省「情報通信審議会情報通信技術分科会」（2016年11月）よりNRI作成


5Gの特長は、「超高速・大容量」、「超低遅延」、「多数同時接続」である5Gとは？

”ネットワークスライシング”により、アプリ・サービスごとに、ネットワークの機能やリソースを動的に管理し、柔軟に改変することが可能になる

出所）NRIメディアフォーラム「5G（第五世代移動通信システム）について」（2019年3月5日）

5Gの3大特長

（enhanced Mobile Broadband）

（Ultra Reliable Low Latency Communications）（massive Machine Type Communications）低遅延多接続

高速・大容量

20Gbps

100万デバイス/km2 1ms

5G

4G

1Gbps

10万 10ms

eMBB

URLLCmMTC

自動運転

遠隔医療農業×ICT

スマートシティ

スポーツ

4K・8K映像配信

AR・VR


高い周波数帯を利用する5Gは、面的なエリア整備に時間とコストを要する5Gとは？

データ通信の速度は、周波数の幅に比例する電波の到達距離は、周波数の２乗に反比例する

周波数の高さ

【ミリ波】28GHz帯 400MHz幅×4

【サブ6】4.5GHz帯 100MHz幅×13.7GHz帯 100MHz幅×5

3.5GHz帯2.5GHz帯2.0GHz帯1.7GHz帯1.5GHz帯

【プラチナバンド】700-900MHz帯

4Gまでの割当（計800MHz）

5Gの割当（計2.2GHz）電波の到達距離

長い

短い

データ通信速度

速い

遅い

電波の直進性

弱い（回り込む）

強い（回り込まない）

より光に近づく

周波数の高さによる電波特性の違い

出所）各種公開情報よりNRI作成


5Gとは？1




まとめ5


5Gのポテンシャルがフルに発揮されるのは、2023年以降と考えられる5G普及までの道のり

それまでの間は、工場、倉庫、工事現場、農場、商業施設、スタジアムといった閉空間における活用が先行するローカル5Gの制度化による、通信キャリアとICTベンダーの競争で、閉空間への5Gインフラの整備が活性化することが期待される

5Gの国内展開スケジュール2017 2018 2019 2020 202Ｘ

▲ラグビーW杯

▲東京オリンピック・パラリンピック（？）

プレ商用サービス

商用サービス（NSA）

フル商用サービス（SA）

Release15 Release16

▲周波数割当

・・・

5Gの標準化

超高速、超低遅延が対象すべての仕様を策定

5Gエリア拡大

出所）NRIメディアフォーラム「ITナビゲーター2020年版」（2019年12月4日）に加筆・修正

2021


総務省は、5G基地局の開設計画を引き上げる方針を示した5G普及までの道のり

出所）総務省「ICTインフラ地域展開マスタープラン」プログレスレポート（2020年6月16日）


総務省の方針を受け、一部のキャリアは開設計画を前倒しすることを発表5G普及までの道のり

KDDI：2021年度末までに約5万局と前倒し当初は2023年度末に約5万局⇒2021年度末までに前倒し

SoftBank：2021年度末までに約5万局と前倒し当初は2022年度末までに約1万局⇒2021年度末に約5万局と前倒し

NTTドコモ：総務省方針を受けての前倒しはせず 2020年4月時点より方針は変わらず、4G周波数帯の転用には慎重

楽天モバイル：明確な数は公表していないが、前倒しをアピール開設計画提出時よりも前倒しで進んでいることをアピール

ドコモの吉沢氏は「当社も既存周波数帯の活用を進めるが、21年度末までに5G基地局を2万局とするドコモの方針は、あくまで5G向けの新たな周波数帯で実現する。（中略）」と力を込める。

日経クロステック「堀越功の次世代通信羅針盤」（2020年7月22日）より



5Gは現在、「過度な期待」のピーク期に位置しており、本格化は5～10年後5G普及までの道のり

出所）ガートナー・ジャパン「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル2020年」（2020年9月10日）

新たな技術は、黎明期を経て徐々に期待が高まってピークを迎え、幻滅期に入っていく。その後、具体的なユースケースが増える啓発期を経て、主流採用が始まる安定期を迎える。

日本における2020年のハイプ・サイクル


5Gとは？1




まとめ5


MNO3社の5G料金プランはLTEと比べて高いが、各社割引キャンペーンを実施5Gが一般消費者に与える影響

開始時期 2020年3月25日※ 29都道府県の一部地域

2021年3月（予定） 2020年3月26日※ 15都道府県の一部地域

2020年3月27日※ 7都府県の一部地域

2020年9月30日

料金体系

7,650円※ LTEプランより500円高い※最大6か月間1,000円割引

※ dカード支払いの場合170円割引

2,980円 8,650円※ LTEプランより1,000円高い※キャンペーン中は12カ月間1,000円割引

※最大6カ月間1,000円割引

8,480円※ LTEプランより1,000円高い※キャンペーン中は1年間

1,000円割引※最大6カ月間1,000円割引

2,980円※契約者が300万人に達するまでは、開通後1年間は0円で利用可能

データ上限 100GB※キャンペーン中は無制限

20GB 無制限 50GB 無制限※パートナーエリアは5GB

＋α要素• Amazon Prime会員が

1年間無料• 国際ローミングは30GBまで

• 海外82の国々・地域での国際ローミングが追加料金なしで利用可能

• テザリング、国際ローミング、データシェアは30GBまで

• 主要SNS/動画サービスがデータ無制限で利用可能 • なし

5GギガホデータMAX 5G メリハリプラン Rakuten UN-LIMIT V



5Gサービスの利用者は、利用可能エリアの拡大に応じて、着実に普及していく5Gが一般消費者に与える影響

2020年に商用化が始まった5Gサービスは、ただちに普及するとは考えにくいが、2026年度には5G端末の年間販売台数は3200万台程度（タブレットは含まず）まで拡大し、回線ベースでは6割強を占める。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026

5G 5G以外

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026

5G 5G以外

（年度）（年度）

（万台）（万回線）

日本における携帯電話端末の販売台数予測日本における携帯電話回線数予測

出所）NRI「ITナビゲーター2021年版」


もう一つの普及の鍵は端末であり、5G対応iPhoneや中華製端末が牽引していく5Gが一般消費者に与える影響

出所）StatCounter他各種公開情報よりNRI作成

5G対応iPhone 中華製5G端末スマートフォンOSのシェア（2019年）

30.4%

69.3%

0.3%

日本

75.5%

22.7%

1.8%

世界

Android iOS その他

日本市場は、世界と比較してiOSのシェアが高く、今までと同じ使い勝手を望む消費者意向を踏まえると、5G対応iPhoneの普及が5G端末全体の普及に与える影響は非常に大きい

2020年10月には、5G対応iPhoneとして、「iPhone 12」「iPhone 12 mini」「iPhone

12 Pro」「iPhone 12 Pro Max」の4モデルが発表された

【Xiaomi Mi MIX 3 5G】【OPPO Reno 5G】

【OnePlus 7 Pro 5G】【HUAWEI Mate X】

5Gサービス商用化直後からラインナップを拡充させてきた中華製端末は、2020年上半期の世界における5G端末出荷台数の7割以上を占める

手頃な価格帯での5Gへの対応が魅力であり、MNO各社も採用に踏み切った


直近で5Gが消費者にもたらす変化は、動画視聴のあり方（高精細ライブ配信等）5Gが一般消費者に与える影響

日本より1年早く5Gサービスの商用化を開始した韓国では、MNO各社が、韓国プロ野球中継を4Kカメラで撮影した映像を、移動端末向けに5G回線経由で配信するサービスを展開している

視聴者は、高画質の映像視聴をリアルタイムかつマルチアングルで楽しむことができる

出所）MK NEWS

LG U+の「U+プロ野球」サービス画面 SK TelecomのVR生中継サービス画面

５G時代には、外出時にモバイル通信でも4K映像が楽しめる時代になる


新型コロナウイルスの影響で、インターネットコンテンツの利用時間が大きく増加5Gが一般消費者に与える影響

10%

8%

11%

9%

4%

6%

6%

6%

4%

38%

31%

24%

21%

20%

17%

15%

15%

11%

9%

45%

52%

52%

42%

58%

51%

52%

41%

37%

39%

3%

3%

1%

1%

1%

1%

1%

1%

1%

1%

1%

1%

5%

6%

11%

25%

15%

23%

24%

34%

45%

47%

2%

検索/ポータルサイト・アプリ

動画サイト・アプリ

2%

電子書籍/コミック/雑誌サイト・アプリ

2%ニュース・天気のサイト・アプリ

2%

3%ソーシャルメディア

（Twitter、Facebook、Instagram等）

ショッピング/オークション/フリマサイト・アプリ

ゲームサイト・アプリ

3%チャット・メッセンジャー

（LINE、Facebook Messenger、Skype等）

音楽サイト・アプリ

2%

2%勉強/学習/知育サイト・アプリ

3%

大幅に増えた増えた大幅に減った変わらない減ったそもそも利用(視聴)していない

在宅時のインターネットコンテンツの利用時間の変化

出所）NRI「新型コロナウイルス感染拡大による生活変化アンケート」（2020年4月18・19日）


特に、非固定回線ユーザを中心に5Gへの興味関心が高まっている5Gが一般消費者に与える影響

出所）NRI「新型コロナウイルス感染拡大による生活変化アンケート」（2020年4月18・19日）

4%

4%

5%

5%

5%

28%

27%

38%

63%

64%

54%

非固定回線ユーザ

2,368

回答者全体 3,037

固定回線ユーザ

3% 500

すでに5Gプランを利用している現在の利用プランから5G料金プランへの変更意向が高まった

現在の利用プランから5G料金プランへの変更意向、興味・関心の度合いともに高まらなかった現在の利用プランから5G料金プランへの変更意向は高まっていないが、興味・関心は高まった

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけとした5Gプランへの意向の変化


5Gとは？1




まとめ5


5G時代には、ビジネスモデルの転換（B2B2Xモデル）が大きな意味を持つ5Gが産業に与える影響

従来 B2C or B2B 将来 B2B2X

ビジネスモデル

特徴通信を行うための回線を提供してきた利用者は、1回線あたりXX円といった固定課金や使った分だけの従量課金を行ってきた

通信事業者

法人

個人

回線

対価

回線

対価

B B

C

通信事業者

法人or個人or

自治体or???

法人自動車・保険会社･･･etc

回線+

サービス（分析PF等）

対価

XBB

サービス

対価

通信だけでなく、センターBがXに対して提供するサービス・ソリューションの一部を提供する（分析プラットフォームや“X”へのリーチ、等）

5Gによって、センターBが柔軟性の高い通信を提供可能になるため、これまでは実現が不可能であったサービスの提供が可能となる

出所）NRI


B2B2Xモデルの実現に向けて、通信事業者間での「センターB」獲得競争が激化5Gが産業に与える影響

「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」のパートナー数はは3,500社を超え、2021年には5,000社を目指しているこのパートナーシップには排他性がなく、共通ポイントで起きているようなエコシステム競争が法人でも激化する

出所）NTTドコモ「三ヶ尻ソリューションサービス部長講演資料」他各種公開情報よりNRI作成

センターBの社数の拡大を急ぐドコモテーマごとに提携相手を替え、「全張り」するトヨタ


民間企業との連携だけでなく、自治体との包括連携にも積極的に取り組む5Gが産業に与える影響



5Gに対しては、多くの企業が足踏みをしている5Gが産業に与える影響

5Gのエリア展開にはまだ時間がかかる現場への5Gの適用が見込めないため、そもそも新たなビジネスの検討ができない

事業部門において、5Gを活用したビジネスを実行できる人材がいない ”デジタル人材”が不足しており、事業部門が新たなビジネスをデジタル技術で創造するという意識レベルに到達していない

“ファースト・ムーバー・アドバンテージ”（先行者利益）が見えない “5Gならでは”の活用事例が見い出せておらず、収益化が見えないため、社内で説明・説得できない

出所）週刊ダイヤモンド「5G対戦」（2019年11月9日号）よりNRI作成

0 10 20 30 40 50 60

5Gの取り組みで競合が先行している

5Gへの社内の関心が低い

5Gに関連する機器・サービスの価格が高い

5Gならではの特徴を生かしたビジネスのアイデアが浮かばない

収益につながるビジネスモデルが描けない

5Gが自社ビジネスにどうか変わるか分からない

5Gを活用した成功事例などの実績がない

社内の専門人材が不足している

国内で5Gの普及がまだ進んでいない

5Gの活用を考える際の悩み

（%）


5Gとは？1




まとめ5


消費者向けから立ち上がるが、本丸は法人。都市・地方の需要が喚起されるまとめ

5Gのサービス提供エリアは着実に進んでいき、2023年度末までには、エリア展開はひと通り達成するが、基地局の密度は濃淡が大きくなると想定される

サービス開始時期の普及加速には、新サービスや新デバイスによる、一般消費者への需要の喚起が極めて重要である

エリア展開は産業需要次第である。大都市から同心円状に広がるのではなく、同時多発的に広がっていく

Overview

5Gによるビジネスは、高精細動画などの大容量コンテンツにより、一般消費者への需要の喚起とマネタイズから始まる

アーリーアダプタ層の5Gへの取り込みがひと段落した後は、エコシステムでマジョリティ層を囲う戦いとなる

一般消費者向けも法人向けも、単純な回線販売では訴求できず、B2B2Xモデルが主流となり、サービス・ビジネスモデル設計の巧拙が競争の行方を決める

センターB事業者が、いかに魅力的なサービスをエンドユーザに提供できるかがカギとなる。つまり、センターB事業者（非通信事業者）の創意工夫が問われる時代となる

5G時代のビジネスモデル

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