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abc Global Research Strategy and Economics Macro 2009 10 Primal Knowledge 新興経済:消えぬ炎

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abcGlobal Research

Strategy and Economics Macro

2009 年 10 月

Primal Knowledge 新興経済:消えぬ炎

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

新興国市場は、1990 年代末のロシア危機に続く 10 年で目覚しい成長を遂げた。さまざま

な分野で存在感を増し、影響力も強まった。しかし、今回の世界的な経済危機は新興国の

外需依存の大きさを改めて示す格好になった。

悪の事態は回避されたが、危機は形を変えただけで、本質は解決されていない。主要国

の政府・中銀が大規模な介入を行い、民間の債務が公的部門に移ったにすぎない。先進国

の巨額の財政出動は今後、世界経済の足かせになる可能性がある。中国のように貯蓄率の

高いケースを除き、新興国にとってクラウディングアウト効果をもたらしかねないからだ。

超過需要が赤字国から黒字国にスムーズに移行できたとしても、危機後の世界は低成長が

続く公算が大きい。

結局、世界は貯蓄と消費の不均衡を是正し、持続可能な均衡水準を目指す必要がある。そ

れは世界全体にとっての課題だ。新興国の外需依存の成長モデルも改革が求められる。た

だ、当面は、危機前と同様、ドルの還流を基本とする状況が続くだろう。先進国の過剰流

動性は新興国の通貨を押し上げ、新興国がドル買い介入で対抗しようとすることで、世界

経済の不均衡はむしろ拡大に向かう。だが、そうした状況は長続きしない。自国通貨高を

容認しない新興国では、やがて資産バブルのリスクが高まり、コモディティ高や金融資産

価格の高騰でインフレが加速する。そうなれば、当局は引き締めに転じざるを得ず、バブ

ル崩壊の再来が懸念される。

HSBC では、新興諸国が向こう数年にわたって先進諸国を上回る成長を遂げ、世界経済の

重心がこれまで以上に新興諸国に移るとみている。新興諸国には成長のアウトパフォーム

につながる構造的優位が目立つ。しかし、個々の国が自国通貨高に柔軟に対応できなかっ

たり、外需依存からの脱却に踏み切れなければ、事態が悪化に向かうリスクが高まる。先

進諸国からの富の再分配は一筋縄ではいきそうにない。

サマリー

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

サマリー 1

新興国経済の規模の拡大 3

ハード・コモディティ 3

石油消費パターン 5

株式市場 6

国際金融制度改革 7

基軸通貨体制のきしみ 11

ドル支配の崩壊 11

トリフィンのジレンマ 11

基軸通貨体制の現状 12

今後の改革余地 12

複数基軸通貨体制の可能性 13

持続成長への処方箋 18

危機の元凶 18

出口戦略 19

従来モデルの崩壊 24

保護主義の影響 28

ドル還流は変わらず 30

<Appendix>

新興諸国の大躍進 35

国・地域別分析

ブラジル 40

中国 44

香港 48

インド 52

インドネシア 56

韓国 60

マレーシア 64

フィリピン 68

ロシア 72

サウジアラビア 76

シンガポール 80

南アフリカ 84

台湾 88

タイ 92

トルコ 96

アラブ首長国連邦 100

ベトナム 102

重要開示事項 107

ディスクレーマー 108

目次

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は 34~38 ページ

の Appendix を参照されたい)は、石油などの

鉱物資源を中心とするコモディティ需要に大

きな影響を与えた。この点については 2008年 6 月の「Primal Knowledge ― 移転する富」

で解説しているが、今回、 新の状況を踏ま

えて再度取り上げてみたい。

新興諸国は、コモディティ需要を左右する一

大勢力に成長した。1人当たりのコモディテ

ィ消費が低水準で推移していた新興諸国は、

人口、経済活動のいずれについても急拡大を

遂げ、投資集約度の高さも追い風となった。

本稿では、まず、新興諸国のこれまでの成長

に基づいて今後の見通しを確認してみたい。

石油消費の予測は、1 人当たりの消費見通し

と国連の人口予測を基にした。まず、石油消

費実績を人口で割って 1 人当たりの消費実績

を求め、これを、2004~08 年の平均年間変動

率と国連人口予測を使って外挿した。

新興国経済の規模の拡大

新興諸国の経済発展は世界の経済秩序を大きく変えた。

新興諸国は世界のコモディティ需要を左右している。

世界の金融システム改革についても新興諸国の発言力が増した。

投資対象としての新興市場の魅力は今後、一段と高まる。

1 人当たり石油消費(バレル/年) 石油消費(千バレル/日)

14.515.015.516.016.517.017.518.0

1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006

0.00.51.01.52.02.53.03.5

Dev eloped EconomiesBRICs (RHS)Top 20 EM (inc. BRICs, RHS)

0

20000

40000

60000

80000

100000

1965 1975 1985 1995 2005 2015 2025Dev eloped Economies BRICs EM (ex l. BRICs)

Ex trapolation

Source: BP, UN population statistics, HSBC Source: BP, HSBC

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

分析対象は、先進諸国の代表として米国、ユ

ーロ圏、日本、英国を選び、新興諸国の代表

として現在の GDP で上位 20 カ国を選んだ。

この 2 つのグループを合計すると、2003~08年の石油消費は年平均 1.1%の伸びになるが、

そのすべては新興諸国の寄与によるものであ

る。先進諸国の 1 人当たり消費は 05 年以来減

少が続き、同年の 17.74 バレルから 08 年には

16.37バレルまで落ち込んだ。

一方、新興諸国の 1 人当たり消費は、1995 年

の 2.24 バレルから 2008 年に 2.86 バレルまで

増えているが、絶対水準では依然大幅に低い。

しかし、今回分析対象とした 2 グループ全体

の人口に占める新興諸国の比率は 8 割を超え

る。このため、1 人当たり消費が小幅増でも、

全体の消費量は大きく押し上げられることに

なる。

2004~08 年の平均消費を外挿(Extrapolation)することで、今後の需要見通しを立てることが

できる。この分析によると、先進諸国の需要

が 2008~25 年に 15%程度減少すると見込ま

れるのに対し、新興諸国は(条件が同じとす

れば)75%前後の急拡大になる。

新興諸国の中では、予想通り、BRICs 諸国の

需要が多く、分析対象とした GDP 上位 20 カ

国全体の 50%以上を占めた。外挿結果による

と、この比率は 2025 年までに 60%を上回る

見通しだ。BRICs の中では中国のシェアが実

績ベースでも、外挿ベースでも 大で、08 年

の 50%超が 25 年には 60%超まで拡大する。

今後、中国の石油消費が 2004~08年の平均ペ

ースで進むとすれば、中国は、2020~25 年に

米国を抜いて世界 大の石油消費国になる。

BRICs 以外では、サウジアラビア、メキシコ、

韓国の需要が多い。なかでもサウジアラビア

は、過去 5 年の平均伸び率が続くとすれば、

2020 年に、新興諸国中、中国に次ぐ消費国に

成長する。

BRICs の石油消費(千バレル/日)

0

5000

10000

15000

20000

25000

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025

China India Russia Brazil

Ex trapolation

Source: BP, HSBC

石油消費(1985 年=100)

050

100150200250300350

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025Top 20 EM Dev eloped Economies

Extrapolation

Source: BP, HSBC

BRICs の石油消費(シェア)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025

China India Russia Brazil

Ex trapolation

Source: BP, HSBC

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

石油消費パターン

1 人当たり石油消費と人口の伸び(2003~08 年平均)

USUnited Kingdom

Japan Euro Zone

China

IndiaRussiaBrazil

MexicoKorea

Turkey

Indonesia

Poland Saudi ArabiaArgentina

Thailand South Africa

EgyptPakistan

ColombiaMalaysia

Venezuela

Ukraine

-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

8%

-1% -1% 0% 1% 1% 2% 2% 3%5 year average population growth rate (%)

5 yea

r ave

rage

per

capi

ta o

il co

nsum

ptio

n gr

owth

rate

(%)

Source: BP, UN population statistics, HSBC

1 人当たり石油消費とエネルギー消費に占める石油の比率(2008 年)

2008

Thailand

PhilippinesPakistan

Malaysia

Japan

IndonesiaIndiaChina

South AfricaEgypt

Saudi Arabia

Ukraine Turkey

Spain

SlovakiaPortugal

Poland

Netherlands

Italy

Greece

Germany

FranceFinland

Czech RepublicAustria

Venezuela

Colombia

ChileBrazil

Argentina Mexico

US

0.000.01

0.020.03

0.040.050.06

0.070.08

0.090.10

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%Oil as % of total energy consumption

Per c

apita

oil

cons

umpt

ion

(bpd

)

Source: BP, UN population statistics, HSBC

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

銅需要も中国が急拡大

他のコモディティについても状況は同じだ。

ここでは銅の例をみてみよう。英調査会社

Brookhunt のデータによると、今回分析対象

とした上位 20 の新興諸国は、2003 年以降、

先進諸国(米、英、日本、ユーロ圏)の合計

より銅の消費量が多い。外挿による予測につ

いても同じことが言える。2008 年には、新興

諸国の消費量が先進諸国を 60%上回った。今

後、先進諸国の需要が伸び悩む一方、新興諸

国は急増が予想される。

過去 5 年の平均に基づいて外挿法による予測

を行うと、先進諸国の銅需要は 2020 年まで

の予測対象期間を通して 08 年水準で横ばい

(640 万トン前後)が見込まれる。一方、新興

諸国はこの間に現在の 1,020 万トンから 1,700万トンまで 70%増の見通しだ。BRICs 諸国の

銅消費は過去 5 年の平均で 10%以上伸びたが、

先進諸国は年 1.4%減少している。

中国は、石油と同様、銅についても世界の需

要を左右してきた。2002 年には米国を抜いて

世界 大の消費国となり、08 年には他の新興

諸国(19 カ国)の合計に匹敵する銅を消費し

ている。単純な外挿予測によると、2020 年ま

でに中国とインドを合わせて、世界の銅消費

(今回分析を行った先進、新興諸国の合計)の

半分を占める見通しだ。

株式市場 新興諸国の株式市場は、コモディティ消費や

GDP、貿易規模(Appendix 参照)ほどの伸び

はないものの、ここ数年、MSCI 指数でみた

相対規模の拡大が目立つ。

株式市場についても、コモディティ消費と同

様、1 人当たりの時価総額を基に新興諸国と

先進諸国の比較を行った。BRICs 諸国の 1 人

当たり時価総額は過去 5 年で急拡大している

が、先進諸国と比べればまだ規模が限られる。

中国を例にとると、2003 年の 340 億米ドルが

08 年に 3,200 億米ドルと 10 倍近く増えている

が、新興国株式市場は、今後、新興国経済の

一段の発展に伴って、なお拡大余地が大き

いとみられる。

先進、新興諸国の銅消費(千トン)

0

5000

10000

15000

20000

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

Dev eloped Economies Top 20 EM (inc. BRICs)

Ex trapolation

Sourec: Brookhunt, HSBC

世界の銅消費(相対シェア) BRICs 諸国の銅消費(千トン)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

Dev eloped Economies BRICs EM (ex l. BRICs)

Ex trapolation

02000

40006000

800010000

12000

2000 2003 2006 2009 2012 2015 2018

China India Russia Brazil

Ex trapolation

Sourec: Brookhunt, HSBC Sourec: Brookhunt, HSBC

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

過去の例をみると、株式市場は経済の成長期

に大きく伸びる傾向がある。本稿では、1980年代、1990 年代のスペイン株式市場の伸びを

分析し、現在の BRICs 市場と比較して類似点

の有無を確認した。経済にはさまざまな決定

要因があるが、こうした比較には一定の価値

があると考えられる。 スペインの MSCI 指数が MSCI World 指数の時

価総額に占める比率は 1985 年の 0.42%から

2000 年に 1.34%まで上昇した。世界の株式市

場におけるスペインのシェアが 15 年で 3 倍

強拡大したことになる。一方、BRICs 指数が

MSCI All Country 指数の時価総額に占める比

率は 1993 年の 1%から 2009 年に 5.1%まで急

伸し、15 年で 5 倍強の成長を遂げた。拡大期

のスペイン市場と現在の BRICs 市場は同様に

大幅な伸びを示していることが分かる。

スペイン株式市場の拡大はその後も続いた。

2000~05 年においても、MSCI World 指数に占

める比率が 1995~2000 年とほぼ同じペースで

伸びている。このパターンを BRICs 市場にも

当てはめ、2003~08年の伸びを 2008~13年に

外挿すると、13 年には MSCI All Country 指数

に占める比率が 25%前後まで拡大する見通し

になった。

新興国市場の 1人当たり時価総額はまだ拡大余

地が大きく、過去のスペインなど、成長期の

市場と類似点が多い。新興国株式市場は今後、

相対的な重要性が大幅に高まるとみられる。

国際金融制度改革 議決権再配分

「主要国」と「周辺国」を基本とする従来の

国際金融制度は、新興国市場の急成長を反映

しておらず、もはや時代にそぐわない。長年、

世界経済の調整の場として機能してきた G-7然りである。IMF や IBRD などブレトンウッ

ズ機関も議決権再配分の問題に揺らいでいる。

ドル基軸体制にも疑問符が付いた。いずれも、

今後は新興諸国がカギを握る問題ばかりだ。

1 人当たりの株式時価総額(米ドル)

34000

35000

36000

37000

38000

39000

40000

US UK China

India

Russia

Brazil

Mexico

0

500

1000

1500

2000

2500RHS

Source: Thompson Financial Datastream, UN, HSBC. 2008 年のデータ

スペインと BRICs 諸国の株式時価総額の推移(それぞれ対 MSCI World 指数、対 MSCI All Country 指数の比率)

19851990 1995 2000

20052008

0%

2%

4%

6%

8%

10%

1993 1998 2003 2008 2013 2016China India Russia Brazil Spain

Extrapolated for BRIC

Source: Thompson Financial Datastream, HSBC

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

代わって存在感を増しつつあるのが G-20 であ

る。G-20 に参加しても、それは参加している

との“幻想”にすぎない、との議論もあるが、

世界経済の重心の変化は疑いの余地がない。

その象徴となっているのが IMF の議決権再配

分の問題だ。BRICs を中心とする新興諸国は、

経済力と資金力の拡大を背景に、ブレトンウ

ッズ機関における役割の拡大を求めている。

ストラスカーン IMF 専務理事は 10 月の IMF総会に先立って、IMFC(国際通貨金融委員

会)を新たな意思決定評議会に改組すべく意

見の集約を図ったが、この提案は、議決権問

題の解決が先と主張する新興諸国の反対で実

現しなかった。

IMF の出資割当額と現行 GDP の関係には国

によってバラツキがある。9、10 ページの図

は、両者の関係を先進諸国と新興諸国につい

て示したもので、対角線は経済規模に見合っ

た割当水準を表す。中国は明らかに出資割当

(議決権)が適正水準を下回っている。新興

諸国の中には経済規模に比べて割当が多いケ

ースも散見されるが、数が少なく、全体への

影響は限られる。

主な新興諸国は対角線の下側にあり、経済規

模に見合った議決権を得ていないとするそれ

ら諸国の不満を裏付ける格好になっている

(GDP のデータは PPP ベースではない)。ただ

し、サウジアラビアは対角線を大きく上回る。

米国と日本は経済規模に比べて議決権が少な

い。一方、西欧先進国は割当水準が高く、

近の景気後退で経済規模とのギャップが一段

と広がっている。逆に、BRICs は経済規模が

急拡大しているが、議決権は変わっていない。

IMF、IBRD の議決権の見直しは、微妙な問

題をはらむ。中国など台頭する新興諸国の議

決権が拡大すれば、その分、他の諸国が減ら

されることになり、西欧などがその候補にな

る。そうした調整を行わない限り、国際金融

システムの改革は進まないだろうが、既得権

や、米国外で保有されるドル資産の多さが調

整の障害になっている。

とはいえ、“外枠”の改修は進んでいなくて

も、“内装”レベルでは入れ替えが行われて

いる。IMF が今年 3 月に導入した「フレキシブ

ル・クレジット・ライン」(FCL)がその例だ。

この融資制度は、既に進められている国際通

貨システムの見直しの一環として位置付けら

れるもので、事前の資格審査を厳しくする代

わりに、事後の柔軟性を大幅に高めている。

今回の経済危機は新興諸国にとって長期的な

影響が大きい。危機の教訓は、国際金融シス

テムの再編に役立つだろう。新興諸国にとっ

て特に重要な教訓は、短期債務に対する外貨

準備の比率が高いと、危機に対する有効な緩

衝材になる、という点だ。平時に自ら“保険

をかけて”危機に備える必要がある。また、

今回の危機に際し、(中国を除く)新興諸国は、

債務/GDP 比が高水準で推移するなか、「長

期間の財政出動は困難」との一般的な認識が

景気対策の足かせになった。この意味で、

IMF としては、民間の貸し出しを支援する融

資制度やスワップ協定の拡充が重要になる。

FCL やスワップ枠の存在は、理論上、外貨準

備の所要水準を押し下げることになるが、今

のところ、新興諸国が外貨準備を積み上げる

傾向は変わっていない。国際金融協定のもう

1 つの形は、アジアのチェンマイ・イニシア

チブ(2 国間ドルスワップのネットワーク)

などの域内協定が拡大する可能性だ。従来の

スタンドバイ融資がより柔軟に適用されて、

各国景気対策の補完財源として活用される可

能性もある。

国際金融制度の改革は既に始まっている。既

得権が絡んでいることを考えると、今後、紆

余曲折が予想され、中断もあり得る。しかし、

新興諸国の発言力拡大は変わることのない流

れであり、今回の危機はそれをさらに加速さ

せたと言える。

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Prim

al Know

ledge S

trategy & Economics

2009年

10月

9

ab

cIMF 出資割当水準と経済規模(世界 GDP 比)の関係:BRICs vs 西欧諸国

20082009f

2008 2009f7

10

13

16

19

22

25

28

31

34

7 10 13 16 19 22 25 28 31 34

% Share in World Nominal GDP

% S

hare

of Q

uota

in T

otal

Developed Europe BRICs

Source: IMF

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Prim

al Know

ledge S

trategy & Economics

2009年

10月

10

ab

c

各国の IMF 出資割当水準と経済規模(世界 GDP 比)の関係

Sw edenAustralia

India

Russia

Italy

Germany

China

Japan

NigeriaCzech Republic

Malay sia

UAEThailandIreland

South AfricaVenezuela

Argentina IranGreece

AustriaNorw ay

Saudi Arabia

Sw itzerland

Belgium

Poland Turkey

Netherlands

KoreaMex ico

Canada

Brazil

Spain

UKFrance

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

% Share in World Nominal GDP

% S

hare

of Q

uota

in T

otal

Developed countries Emerging markets

Source: IMF

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ドル支配の崩壊 フランスのサルコジ大統領は 7 月の G8 サミ

ットで「政治的に多極化した世界は経済的に

多極化した通貨体制に対応すべきではないの

か」と述べた。現時点で通貨体制の多極化を

求めることは政治的な思惑を背景としたもの

にならざるを得ない。ドル基軸体制の崩壊は

米国が地政学上の主導権を失うことを意味す

る。だが、前章で指摘した新興国経済の台頭

は、主要な準備通貨としてのドルの地位が後

退することを不可避にしている。問題は、中

国などの新興諸国が巨額のドル資産を抱える

なかで、ドル基軸体制の終焉が市場の混乱を

招くことなく可能か否か、である。

現実には既にドル支配の崩壊が始まっている。

ドル安定化のカギとなる米国の政策への信認

が、金融規制の不備や財政、金融緩和からの

出口戦略の不透明感を反映して、低下傾向を

たどっているからだ。この流れは今後さらに

強まると予想され、純債権国のドル離れにつ

ながる可能性もある。外貨準備がドルに集中

しすぎたことが世界の金融システムを不安定

にし、行き過ぎたドル増刷への懸念を高める

結果になっている。

トリフィンのジレンマ OECD 開発センターのエコノミスト Helmut Reisen は、ドル増刷への懸念を「トリフィン

のジレンマ」で説明している(“Shifting wealth: Is the US dollar empire falling?”2009 年 6 月 20 日)。

「トリフィンのジレンマ」は、ドルが基軸通

貨になると、諸外国から外貨準備としてのド

ル需要が高まり、米国は経常赤字の拡大によ

ってドルを供給し続けるしかないが、それは

ドルの信認低下につながる、というものだ。

Reisen は「米国が経常赤字を通じて外貨準備

需要に応えることを止めてしまえば、ドルの

流動性が低下し、世界経済は一気に縮小に向

かう」としている。一方、発展途上段階にあ

る国は、外貨準備を増やすためにドル資産を

買い増さざるを得ない。

基軸通貨体制のきしみ

新たな基軸通貨体制への移行には長期間を要する。長年のドル使用による「慣性」

の影響と「ドルの罠」が移行への障害。

しかし、新たなうねりが起きようとしているのは間違いない。世界経済の重心が中

国を中心とする新興諸国に移りつつあることを考えると、基軸体制の変化は不可避

にみえる。

通貨の国際的活用形態

民間部門 公的部門

兌換目的 決済 介入

価値基準 建値 アンカー

価値の蓄積 投資、負債 外貨準備

Source: OECD Development Centre、Kenen による分類 (“The Role of the Dollar as an International Reserve Currency”, Occasional Papers No.13, Group of Thirty.)

Page 13: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

12

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

基軸通貨体制の現状 ドルは依然として基軸通貨である。世界の外

貨準備に占める比率は比較的安定している

(上表)。しかし、国別では、外貨準備の通貨

構成にバラツキが目立つ。対外債務の通貨別

構成に加え、主な貿易相手国や為替政策(変

動性、ペッグ制など)の違いが影響している。

近年は投資リターン重視の傾向もみられるが、

この点の優先度は比較的低い。

現状が変わるとすれば、どのような要因が影

響することになるのか。現在、世界の外貨準

備で存在感の大きいのは新興諸国であり、そ

の政策が外貨準備の今後の傾向を左右する。

中銀が外貨準備の構成を変えれば、通貨需要

に直接影響するほか、心理面の影響も大きい。

外貨準備についての中銀のスタンスが市場で

注目されるのも当然と言える。新興諸国の当

局がどの通貨を重視するかは、基軸通貨体制

の今後を占ううえで重要な要因になる。

今後の改革余地 中国にとっては外準通貨の安定がカギ

中国経済を輸出主導から内需主導型に転換す

世界の外貨準備の通貨別構成 (%)

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 Q1 2009

米ドル 71.5 67.1 65.9 65.9 66.9 65.5 64.1 64.1 65.0 ユーロ 19.2 23.8 25.2 24.8 24.0 25.1 26.3 26.5 25.9 ポンド 2.7 2.8 2.8 3.4 3.6 4.4 4.7 4.1 4.0 円 5.0 4.4 3.9 3.8 3.6 3.1 2.9 3.2 2.9 スイスフラン 0.3 0.4 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 その他 1.3 1.6 2.0 1.9 1.7 1.8 1.8 2.0 2.1

2009 年 1Q を除き、年末時点の推計。 Source: Bloomberg, HSBC

外貨準備のドル保有は新興諸国に集中

0

500

1000

1500

2000

China

Japan

Russia

India

Korea

Brazil

Hong Kong

Singapore

Thailand

Libya

Malaysia

Mexico

Turkey

US Poland

Indonesia

Switzerland

Nigeria

Norway

Bil U

SD

0

5

10

15

20

25

30

35

40

mon

ths

International Reserv es( lhs) Import cov er (months)

Source: Joint external debt hub (JEDH) and Thompson Financial Datastream

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13

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

るには数十年を要するだろう。現在、米国の

貯蓄率が上昇して世界全体としては不均衡が 是正されつつあるが、世界の経常黒字全体に

占める中国の比率は依然として高い。中国政

府が安全で安定した資産運用を望むのは当然

と言える。

中国は、金融危機の影響で、既に損失をこう

むっている。人民元に対するドル安が進めば、

中国が保有する巨額の米国債は人民元建ての

価値が大きく落ち込む。中国が準備通貨をめ

ぐる議論で積極的に発言し、ドル一辺倒の現

状に代わる安定的な体制を模索しているのも

無理からぬ話だ。先の G8 サミットに出席し

た中国の戴秉国・国務委員は、通貨問題につ

いて、「主要準備通貨の相対的な安定を確保

し、多様で合理的な体制を確立する必要があ

る」と述べ、「安定」を重視する中国の立場

を明確に示した。

中国が安定を志向する背景には 2 つの現実が

ある。まず、長年の貯蓄余剰で蓄積された中

国の資産はドルを中心とする外国通貨建てで

保有されている。また、そうした資産は今後

も急増が続くと予想される。中国が嫌ってい

るのは、ドル自体ではなく、急激な変動(特

にドル安)による保有資産への影響である。

中国が米国の量的緩和に警戒感を示している

のも、それがドル安に拍車をかける可能性を

意識したものであろう。

今年 6 月にロシアのエカテリンブルグで初

の BRICs 首脳会議が開催された。メドベー

ジェフ露大統領によると、準備通貨の安定

と多様化が必要との認識で各国首脳が合意

したという。大統領は「現在のドル基軸体

制はもはや有効に機能していない」として、

「新たな基軸通貨の確立には時間がかかる

が、その必要性が今回の首脳会議で再確認

された」と語った。以下、ドルに代わる基

軸通貨として、どのような選択肢があるか

みてみたい。

複数基軸通貨体制の可能性 Barry Eichengreen、Marc Flandeauが指摘してい

る(The rise and fall of the dollar, 2008)ように、世

界の基軸通貨は、1920 年代にポンドからドル

に代わった。米国が世界 大の工業国になっ

てから 40 年後の主役交代である。しかし、

その後も、ポンドは一定の役割を維持した。

それ以前のポンドがフラン、マルクとの複数

体制を続けたのと同様の状況だ。むしろ、現

在のようなドル単独の体制の方が珍しい。現

行体制には、次のような問題点がある。

Jose Antonio Ocampo はドル基軸体制の問題点

を分かりやすくまとめている(Reforming the global reserve system, in Time for a Visible Hand: Lessons from the 2008 World Financial Crisis.)。Ocampo が指

摘する問題は 3つある。

① デフレバイアス:対外赤字国が収支を改

善しようとしても、黒字国が受け皿になると

は限らず、デフレバイアスを生む。そうした

バイアスは今回の経済危機で重要な要因にな

った(後述)。

② トリフィンのジレンマ:前述の通り、特

定国の通貨(単数、複数の別を問わず)を基

軸通貨とする体制には、「トリフィンのジレ

ンマ」で指摘される不安定要因が内包される。

基軸通貨の発行国は、その需要に応えるため、

経常赤字の継続を余儀なくされるが、赤字が

続けば、準備通貨に対する信認が低下する。

③ 不公平性:現行体制においては、新興国

は外貨準備を増やすためにはドル資産を買い

増さざるを得ない。

以上の状況を踏まえて中国、ロシア、ブラジ

ルが進めつつあるのは、自国通貨による決済

を拡大することだ。現在の SDR 構成を見直

し、新興国通貨を含める可能性を探ることも

この文脈の動きと言える。

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

準備通貨になることのメリットは明らかだ。

準備通貨の発行国は、他国が外貨準備をその

通貨で積み増すことによって、事実上の無利

子融資を受けることになり、「シニョリッジ」

(通貨発行益)が増大する。また、コモディテ

ィ貿易などでインボイス通貨として使われる

ことは、為替リスクを第三国にシフトさせる

ことを意味し、発行国のリスクをなくす。

基軸通貨としての人民元の可能性

新興国の通貨が準備通貨の役割を果たす可能

性はあるのか。現時点では、資本規制に加え、

米欧と比べて債券などの資産市場に十分な規

模と流動性がないことがネックになっている。

Helmut Reisen が指摘するように、ポンドから

ドルへの主役交代を参考にして予想すると、

人民元が準備通貨になるのは 2050 年頃にな

る。Menzie Chinn、 Jeffrey Frankel(Why the Euro Will Rival the Dollar, 2008)によれば、米

国が経済規模で英国を抜いたのは 1872 年、

輸出に限ると 1915 年である。純債務国、純

債権国の状況は 1914 年に変化し始め、ドル

が兌換可能な純債権国通貨として浮上すると、

金融、貿易分野のドル使用が急速に広がった。

現在の米国は、1918 年以降の英国と同様、純

債務国であるのに対し、中国は世界 大の債

権国に成長している。前章で示した通り、中

国は経済規模、輸出規模で世界のトップを狙

う位置にある。歴史が繰り返すとすれば、次

の準備通貨は人民元になる可能性が高い。

だが、現在の人民元はまだドルに代わる準備

ができていない。Reisen によると、まず「国

際資本移動の自由化、完全兌換の実現、国内

金融改革の継続、債券市場の流動性拡大」が

必要になる。「トリフィンのジレンマ」で指

摘される準備通貨としての需要増は、経常黒

字国から赤字国に転じる可能性を示唆すると

同時に、人民元高の加速を伴うと予想される。

HSBC の中国担当チーフ・エコノミスト、Qu Hongbin が指摘するように、中国は既に人民

元国際化に向けて動き出している(2009 年 7月 6日付 From greenbacks to ‘redbacks’)。中

南米、アジアの数カ国と通貨スワップ協定を

締結し、香港で人民元建て債券の発行を解禁

した。中国は、内外の人民元市場を深化させ

るために第 1歩を踏み出したと言える。

人民元決済の試験実施も始まった。第 1 弾は

香港、インドネシアとの貿易が対象だ。これ

は、人民元の兌換性を高めるとともに、ドル

依存を徐々に軽減させることが目的とみられ、

BRICs 諸国間の貿易

China's Exp to Brazil Brazil's exp to China Total trade India's Exp to China China Exp to India Total trade2000 334 281 615 Q4 2000 216 477 693Q4 2008 3896 2691 6586 971% Q4 2008 4699 7956 12655 1727%Q1 2009 2325 3395 5720 Q1 2009 5092 6097 11190

India's Exp to Russia Russia's Exp to India Total trade China's Exp to Russia Russia exports to china Total TradeQ4 2000 234 356 590 Q4 2000 745 984 1730Q4 2008 394 1569 1963 233% Q4 2008 9178 5442 14620 745%Q1 2009 295 2154 2448 Q1 2009 5839 4916 10755

China- Brazil China- India

China-RussiaIndia-Russia

Source: Data stream, HSBC. グレーの網掛け部分は 2000 年 4Q~2008 年 4Q の変化率。

世界貿易に占める新興諸国の比率

30%

35%

40%

45%

50%

55%

199119921993

1994199519961997

1998199920002001

2002200320042005

2006200720082009

EM Ex port v olume % of global ex port trade v olume

Source: Netherland Bureau of Economic Policy Analysis

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

人民元決済に移行する中国企業は為替リスク

の低下という恩恵を受ける。

中国が保有する巨額のドル資産(外貨準備の

7 割)を考えると、人民元決済への移行は緩

やかなものにならざるを得ないが、保有資産

の人民元建て価値を維持したい中国側の意向

は当然と言える(後述の「ドルの罠」参照)。

ロシア

新興国通貨を二国間貿易の決済に使う可能性

は特に BRICs 諸国で積極的に議論されてきた。

下の 4 図にあるように、BRICs 間の貿易規模

は急速に拡大しつつある。

ロシアと中国の貿易だけでも今年前半に 170億米ドルに達した。ロシアのメドベージェフ

大統領やクドリン財務相は、CIS(独立国家

共同体)諸国でルーブル、新興アジア諸国で

人民元など、各地域でドルに代わる決済通貨

を持つ構想を打ち出している。また、メドベ

ージェフ大統領は、中国が南米、アジア諸国

と結んだようなスワップ協定をルーブル・人

民元間で実現する可能性にも言及したとされ

る。

ルーブルの域内準備通貨構想は、3 年以上前

のプーチン政権時代から推進されてきた。し

かし、具体的な成果は上がっていない。例え

ば、ロシアが「ロシア・ベラルーシ連邦国

家」構想の下でベラルーシにルーブル融資を

約束しても、ベラルーシ側は受け入れに消極

的な姿勢を見せている。また、ロシアと中国

は準備通貨にルーブルを加える可能性を探っ

てきたが、具体的な進展はない。ロシアの原

油、天然ガス輸出の契約、決済通貨としてド

ルの代わりにルーブルを使い、ルーブルの地

位向上につなげるとする計画も進んでいない。

中国の総輸出に占めるブラジル、ロシア、インド向

け輸出の比率 ロシアの総輸出に占めるブラジル、中国、インド向

け輸出の比率

10%

12%

14%

16%

18%

20%

22%

24%

26%

28%

Q4 2000

Q2 2001

Q4 2001

Q2 2002

Q4 2002

Q2 2003

Q4 2003

Q2 2004

Q4 2004

Q2 2005

Q4 2005

Q2 2006

Q4 2006

Q2 2007

Q4 2007

Q2 2008

Q4 2008

3%

5%

7%

9%

11%

13%

Q4 2000

Q2 2001

Q4 2001

Q2 2002

Q4 2002

Q2 2003

Q4 2003

Q2 2004

Q4 2004

Q2 2005

Q4 2005

Q2 2006

Q4 2006

Q2 2007

Q4 2007

Q2 2008

Q4 2008

Source: Datastream, HSBC Source: Datastream, HSBC

インドの総輸出に占めるロシア、中国、ブラジル向

け輸出の比率 ブラジルの総輸出に占めるロシア、中国、インド向

け輸出の比率

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

Q4 2000

Q2 2001

Q4 2001

Q2 2002

Q4 2002

Q2 2003

Q4 2003

Q2 2004

Q4 2004

Q2 2005

Q4 2005

Q2 2006

Q4 2006

Q2 2007

Q4 2007

Q2 2008

Q4 2008

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

Q4 2000

Q2 2001

Q4 2001

Q2 2002

Q4 2002

Q2 2003

Q4 2003

Q2 2004

Q4 2004

Q2 2005

Q4 2005

Q2 2006

Q4 2006

Q2 2007

Q4 2007

Q2 2008

Q4 2008

Source: Datastream, HSBC Source: Datastream, HSBC

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

また、CIS 諸国との貿易をルーブル建てにす

る構想も相手国の支持は得られていないよう

だ。他の資源国通貨についても同じことが言

えるが、決済通貨としてのルーブルの普及は、

原油や天然ガスの貿易で相手国がルーブルの

使用に同意するかどうかにかかっている。

その他の新興国通貨

中国は、ドルに代わる人民元の使用に加え、

ブラジルとの貿易でブラジル・レアルを使う

など、他の諸国との貿易でその国の通貨を使

う可能性についても協議を続けてきたが、当

面、成果は期待できそうにない。また、アル

ゼンチンとブラジルは自国通貨での貿易決済

に向けて交渉を重ねてきた。しかし、強制力

がなく、アルゼンチンの輸出業者は引き続き

ドルを選好している。両国は今年 8 月、上限

19 億米ドルの通貨スワップ協定を結んだ。ブ

ラジル側にとって協定の規模は問題ではなか

ったが、アルゼンチンとしては、必要な場合

に外貨準備の積み増しが可能になる取り決め

であるだけに、規模へのこだわりがあったよ

うだ。現地の報道によると、アルゼンチンは、

中国と結んだ協定と同規模の 100 億米ドルを

望んでいたとされる。

だが、ブラジル、アルゼンチンの場合も普及

へのハードルは高い。ブラジルでは、以前か

ら、ラテンアメリカ諸国との間に CCR と呼

ばれる相互信用協定があった。CCR は主に中

小輸出業者のために取引コストを抑えること

が目的だったが、ブラジルの輸出は大半が大

企業によるものであることに加え、ドル決済

が好まれるケースが多く、CCR の利用拡大に

はつながらなかった。HSBC のブラジルでの

企業ヒヤリングから判断しても、輸出入業者

のドル選好は変わっていないとみられる。

インドでも、この問題についての進展はない。

また、インドの場合、中国、ロシア、(規模

は限られるが)ブラジルとは異なり、政府が

ドルに代わる決済通貨を模索する動きはみら

れない。

準備通貨としての SDR

SDR を準備通貨として普及させる案は注目に

値するが、実現の可能性は低い。中国も先の

G8 サミットで SDR に言及することはなかっ

た。ユーロが準備通貨として今ひとつ普及し

ていないのは、ガバナンスの問題があるから

だ。米国とユーロ圏はいずれも単一通貨を持

つが、ユーロのガバナンスは、個々の加盟国

の問題となる。同じことが SDR についても

言える。SDR が準備通貨になるとすれば、

IMF が世界の中央銀行として、より広範な役

割を果たす必要があり、SDR の資本市場も整

備しなければならない。BRICs 通貨が SDR に

採用される可能性はどうか。それも、人民元

の兌換性の問題などが障害になり、短期的に

は期待薄だ。

金の役割

金は、唯一、国のしがらみがない資産である。

この点は、主な準備通貨が大幅な金融緩和で

価値の低下にあえぐなか、大きなメリットと

言えるかもしれない。中国が近年、金保有を

急拡大させていることはそうした魅力を裏付

けている。しかし、金市場や関連する資金の

流れは世界の外貨準備と比べて規模が小さす

ぎる。年間の世界生産量は中国外貨準備の

5%にも満たない。外貨準備としての金の役

割は限定的な範囲にとどまる。

ドル基軸体制崩壊の現実性

HSBC の為替ストラテジー・チームで指摘し

ているように、ドルは依然として世界の準備

通貨である。貿易決済では圧倒的な首位に立

ち、経済の規模と安定度についても、少なく

とも 近までは、優位が目立った。ドルは資

産保有媒体の中心的存在と認識され、世界で

も発展した資本、金融市場の裏付けもある。

さらに、長年、基軸通貨として使われてきた

ことによる「慣性」の影響や取引コストの低

下もドルの支援材料だ。また、今回の金融危

機を通じて、準備通貨にとっての流動性の重

要性が再確認された。ドル資産が流動性の象

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

徴であり続ける限り、流動性の不足は新たな

準備通貨を目指すレースで足かせになる。

ドルの罠

巨額のドル資産を保有する国がドル一辺倒の

体制から逃れようとすることは、ドルの価値

の低下を招いて自らの首を絞めるジレンマを

意味し、それが変化を遅らせる結果になって

いる。世界経済の不均衡是正と「ドルの罠」

からの脱却は、国際金融の改革を進めるうえ

で表裏一体の課題と言える。Paul Krugman は

2009 年 4 月 2 日付のニューヨークタイムズ紙

でこの問題を論じ、「中国は“ドルの罠”に

はまった。もはや脱出することも、そこに至

った政策の変更をすることもできない」とし

ている。これは、現在のドル基軸体制が機能

しなくなった背景を示唆すると同時に、改革

が遅れていることの理由も示している。

問題は、新興諸国のドル買い介入でドル資産

の利回りが低下していることではなく、ドル

安による資産価値の下落である。中国は大量

のドル資産を保有し、売るに売れない状況に

ある。短期的な解決策は見当たらず、中国は

当面、外貨準備の大半を米国債で保有し続け

るしかない。巨額の外貨準備の受け皿になる

ことができるのは、規模、流動性の点で米国

債しかないのである。

Olivier Accominotti は、中国がはまった「ドル

の罠」を 1920 年代の状況と重ね合わせてい

る( China’s Syndrome: The ‘dollar trap’ in historical perspective)。当時は、フランスが世界の外貨準

備の半分以上をポンドで保有していた。

Accominotti によると、フランスにとっての

「ポンドの罠」は悲劇的な結末を迎える。ポ

ンドが暴落し、フランスの資産は一瞬で吹き

飛んだ。その後の政策対応が大恐慌を一段と

深刻化させていくことになる。

今回は、そうした事態を回避するにはどうし

たらいいのか。中国は、国有企業にエネルギ

ーセクターを中心とする海外の実資産購入を

促している。そのために企業の対外投資規制

を緩和した。石油関連などのコモディティ投

資で「ドルの罠」を抜け出そうとしているの

は中国だけではない。ブルームバーグが伝え

たところによると、韓国の石油セクター担当

相は、政府系ファンド「韓国投資公社」が韓

国企業の海外買収に資金援助をする可能性を

示唆した。中国は、今年に入ってから、既に

数十億米ドル規模でそうした支援を行い、韓

国、インドなどの国営石油企業と競う格好に

なっている。また、このような公的支援はエ

ネルギー関連資産の価格を押し上げ、原油高

圧力を高める結果にもなった。しかし、そう

した資産購入は、ドル買い介入で膨らんだ中

国など新興諸国の外貨準備を相殺するほどの

規模ではない。さらに、購入先で政治的な反

発を受けやすく、その点も足かせになる。

結局、中国は「ドルの罠」にはまっていると

の Krugman の結論にたどり着く。資産多様化

の余地は限られると言わざるを得ない。実際、

「ドルの罠」から抜け出そうとすることは、

相互に依存した中米双方にとって危険をはら

む。唯一安全な脱出方法は、両国がそれぞれ

の貯蓄投資バランスを調整し、不均衡を是正

することだ。だが、それには時間を要する。

先行きの落とし穴も多いだろう。ただ、中国

のドル資産は巨大すぎて売却できないとして

も、他の諸国は、流動性を維持するために

低限のドル資産を保有しながらも、多様化に

向けた動きを進める可能性が高い。

ドル基軸体制からの脱却は、さまざまな制約

から、現時点では困難であり、今後、長期間

を要する。ドルが長年主役の座にあったこと

による「慣性」の影響や「ドルの罠」が新体

制への移行を妨げている。しかし、新たなう

ねりが起きようとしているのは間違いない。

世界経済の重心が中国を中心とする新興諸国

に移りつつあることを考えると、基軸体制の

変化は不可避にみえる。

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

危機の元凶 今回の金融危機の元凶は、主要国の政府がレ

バレッジの拡大を放置し、行き過ぎた消費に

つながったことにある。規制当局の失政が事

態をさらに悪化させた。米国では需要が生産

を上回り、新興の純輸出国は、製品供給と引

き換えに、ドル建てが大半の外貨準備を膨ら

ませていった。これが問題の核心部分だが、

新興諸国の中銀がドル買い介入で市場を歪め

たことも経済の調整機能を阻害する結果にな

った。規制は 小限にとどめた方がいいと考

えられていたこともマイナスに作用した。過

剰流動性が長期にわたって積み上がっていっ

たが、インフレ指標にその兆しは表れず、資

産価格、コモディティ価格だけが上昇する事

態が続いた。狭義のインフレ指標を政策決定

の判断材料とすることは誤りであった。資産

バブルを防ぐことができなかったからだ。こ

れは、新興諸国、特にインフレターゲット制

をとる新興諸国にとって金融政策上の重要な

教訓となる。インフレの監視には狭義の指標

を参照すべきではない。

持続成長への処方箋

危機以前のドル還流は現在も変わらず。

新興諸国はバブル再燃とインフレ加速のリスクに直面。

新興諸国は G7 を上回る成長を遂げる見通し。

しかし、為替調整ができず、G7 の需要に引き続き依存した新興諸国は先行きに大

きなリスクを抱えている。

世界の経常黒字(GDP 比) 先進・新興諸国の経常収支(10 億米ドル)

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

2.00%

2.50%

3.00%

3.50%

1980

19821984

1986

19881990

1992

199419961998

200020022004

20062008

2010

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1980

1984

1988

1992

1996

2000

2004

2008

CA b

alan

ce (b

n US

D)

Adv anced economiesEmerging and dev eloping economies

Source: IMF Source: IMF

Page 20: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

19

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

金融危機が本格化すると、新興諸国への影響

は 3 つの経路で広がった。貿易の急減、資源

輸出国を直撃したコモディティ価格の急落、

借り換え時などの資金調達難をもたらした短

期流動性の急低下、の 3 つである。信用収縮

は基本的に企業、銀行の問題だったが、先進

諸国では政府が介入し、政府保証を含む金融

支援を行った。

出口戦略 今後の新興諸国は、有事の体制から脱却し、

景気の足取りを確かなものとして安定成長軌

道に戻す必要がある。世界レベルの政策対応

が奏功したことは間違いない。特に効果が大

きかったのは、今年 4 月のロンドン金融サミ

ットで IMF の貸付可能資金が従来の 3 倍に相

当する 7,500 億米ドルまで増額されたことだ。

各国レベルの施策とも相まって、この措置は、

G20 諸国が「世界経済の回復に向けたかつてな

い規模の計画」と評価した重要な危機対策と

なった。実際、IMF 資金の増額は、世界をデ

フレのブラックホールの淵から救うことに

なる。

今回ばかりは誇張ではない。中銀による民間

資産の買い取りを例にとってみても、財政政

策に近い極めて異例の措置だ。世界的な規模

で財政、金融面の対策を打ち出したことも前

例がない。

ロンドン・サミットの声明にも異例の決意が

表れている。声明では、「必要とされるあら

ゆる手法」を活用しながら、次の目標を達成

するとしている。

世界経済の成長、雇用の回復 金融システムと貸し付けの回復

預貸比率の国際比較

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

160%

180%

200%

UkraineBrazilHungaryNetherlandsIrelandSwitzerlandSpainRom

aniaRussiaKoreaUS Germ

anyAustraliaUkrainePolandItalyPortugalFinlandThailandDenm

arkNigeriaCanadaChileFranceBelgiumSaudi ArabiaJapanM

alaysiaIndonesiaAustriaCzech RepublicKuwaitSouth AfricaColom

biaTurkeyNorwayArgentinaHong KongM

exicoPhilippinesChinaVenezuelaEgypt

SAVERSDISAVERS

Source: Datastream, HSBC, Bloomberg

新興国市場への民間資金流入

-100,000

100,000

300,000

500,000

700,000

900,000

2000200120022003200420052006200720082009f2010f

mil U

SD

Private flows, net Equity investment, net Commercial banks, net

-100,000

100,000

300,000

500,000

700,000

900,000

2000200120022003200420052006200720082009f2010f

mil U

SD

Private flows, net Equity investment, net Commercial banks, netSource: IIF database

貸出超過 預金超過

Page 21: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

20

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

経常収支と GDP 成長率(前年比) 世界 中国

-2

-1

0

1

2

3

4

5

6

Country 2006 2007 2008 2009

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

World GDP World Surplus

0

2

4

6

8

10

12

14

2006 2007 2008 2009 2010-10

0

10

20

30

40

50

China- GDP China- CA

ドイツ 日本

-8

-6

-4

-2

0

2

4

2006 2007 2008 2009 2010

-80

-60

-40

-20

0

20

40

60

Germany- GDP Germany- CA

-7

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

2006 2007 2008 2009 2010

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

Japan- GDP Japan- CA

サウジアラビア ロシア

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

2006 2007 2008 2009 2010

-150

-100

-50

0

50

100

150

200

250

Russia- GDP Russia- CA

Source: IMF

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21

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

信頼回復に向けた金融規制の強化

今回の危機を克服し、将来の危機を未然

に防ぐための国際金融機関の資金拡充、

権限強化

世界の貿易・投資の促進と保護主義への

対抗

万人のための、環境に優しい持続的回復

の確保

対策の効果を具体的にみてみよう。新興諸

国にとって、今年 1Q 時点の 大の懸念は、

企業や銀行の対外債務がロールオーバーで

きるかどうか、であった。特に短期債務が

流動性資金の多くを占めるケースで資金繰

りが心配された。しかし、2 国間のスワップ

協定に加え、IMF が新たに導入した FCL 融

資、外貨準備の拡大、(全般的な環境改善

による)ロールオーバー比率の上昇など、

プラス材料が続くなかで懸念は急速に後退

していった。

事態の改善は韓国で特に目立った。2Q には

対外債務が 3 月末比で 110 億米ドル増えたが、

外貨準備はそれを上回る 275 億米ドルの拡大

となった。その結果、資金調達が順調に進ん

だほか、短期債務比率も 2008 年 9 月の 97%から今年 6 月で 80%まで低下し、年初に広が

った流動性懸念を抑える格好になった。

緩和継続が妥当

「危機における経済政策の典型的な誤りは、政

府の対策が遅れ、規模も不十分で、かつ、回

復局面でブレーキをかけるタイミングが早す

ぎることだ。今回はそうした誤りを繰り返さ

ない」 ― 2009年 9月、ガイトナー米財務長官

今回の危機からの出口戦略はまだ不透明な点

が多い。金融セクターに提供されたセーフテ

ィネットはいつまでも維持できるものではな

い。多くの当局者が指摘しているように、ネ

ットは、他の非伝統的支援策とともに、いず

れ解消されなければならない。だが、その時

期はまだはっきりしない。FRB の 8 月の議事

録、ECB(欧州中央銀行)の 近の声明、ブ

ラジル中銀の直近の声明などをみると、共通

のテーマが浮かび上がる。1 つは、危機の

悪期が過ぎたということであり、もう 1 つは、

企業の余剰能力と価格決定力の欠如が続くな

かで、当面、物価の落ち着きが見込まれるこ

とだ。一方、世界経済については、回復基調

にあるものの、伸び悩みが予想される。

こうした状況から判断すると、大半の中銀は、

1Q 以降にリスク資産価格の押し上げにつな

がっている緩和策の解除を急ぐ必要はないと

みていると思われる。「回復の芽吹き」には

まだ水分の補給が必要であり、実際、政策当

局は、早期の解除で景気腰折れのリスクを冒

すより、緩和継続が妥当と考えているとみら

れる。

ただ、新興諸国にとっては微妙な状況だ。コ

モディティ価格の再上昇は、先進諸国でデフ

レのリスクを低下させたが、コモディティの

CPI ウエートが高い新興諸国ではインフレ加

速の可能性をはらむ。メキシコ中銀のオルテ

ィス総裁は「コモディティ高が新興諸国の金

融政策を縛ることになりかねない」と警戒し

ている。HSBC でも、こうした状況を踏まえ、

新興諸国では先進諸国より早い時期の利上げ

転換が多くなるとみている。

近の新興諸国では、外需の低迷が続くな

かで、比較的堅調な内需と財政出動の持続

性が注目されている。当然ながら、いずれ

は財政刺激策の代わりに民間需要がけん引

役にならなければならない。インドのシン

首相の経済顧問を務める Raghuram Rajan は、

「危機の初期段階では一定の刺激策は悪く

ない。しかし、財政支出には限界があるこ

とを認識する必要がある。刺激策で大幅な

乗数効果が得られない限り、長期的には債

務増をもたらすだけだ。一時しのぎの刺激

策で将来の繁栄を犠牲にしていることにな

る」と述べている。

Page 23: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

22

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

財政収支と実質金利

米国 ユーロ圏

2011e

2009e

2010e

2008

2007

-4

-3

-2

-1

0

1

-15 -10 -5 0Fiscal balance (% GDP)

Real

Rates

2007

2008

2010e

2009e 2011e

-1-0.5

00.5

11.5

22.5

-8 -6 -4 -2 0Fiscal balance (% GDP)

Real

Rates

日本 英国

2011e2007

2008

2010e2009e

-2-1.5

-1-0.5

00.5

11.5

2

-6 -5 -4 -3 -2 -1 0Fiscal balance (% GDP)

Real

Rates

2011e

2009e

2010e

2008

2007

-2

-1

0

1

2

3

4

-15 -10 -5 0Fiscal balance (% GDP)

Real

Rates

ブラジル 中国

2010e

2007

2008

2011e

2009e

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

-3.5-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.5(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

2010e

2007

2008

2011e

2009e

0.0

1.02.0

3.0

4.05.0

6.0

-5.0-4.0-3.0-2.0-1.00.01.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

ロシア インド

2009e

2011e

2008

2007

2010e

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

-10.0 -8.0 -6.0 -4.0 -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0(consolidated govt balance % GDP)

(real rates)

2009e

2011e

2008

2007

2010e

-10.0-8.0-6.0-4.0-2.00.02.04.0

-15.0-10.0-5.00.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

Page 24: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

23

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

さらに、多くの新興諸国が依然外需に依存し

ていることを考えると、G3 の景気低迷が続

けば、新興諸国にとって回復の足かせになる

ことは避けられない。短期間で輸出依存度を

低下させることは難しいだろう。貯蓄抑制と

消費拡大を積極的に進めたとしても、成果が

出るのはかなり先になる。結局、外需依存は

先進諸国からのデカップリングを不可能にす

る。再びオルティス・メキシコ中銀総裁の言

葉を借りれば、「世界経済の持続的成長は、

主要国の消費、投資などの 終需要が維持さ

れることが前提になる」のである。オルティ

ス総裁は「そうした 終需要が続かないので

あれば、新興諸国が独力で持続的成長を遂げ

ることは難しい」としている。

とはいえ、先進諸国のなかでは、日本の景気

指標にようやく安定化の兆しが見え始め、他

の主要国でも経済環境が改善しつつある。言

うまでもなく、カギになるのは米国経済であ

る。HSBC の米国担当エコノミスト Ian Morrisは、9 月に米成長率予測を大幅に引き上げた。

2009 年は前年比+2.9%、2010 年は+3.6%を見

込み、今年 3Q は、新車買い替え支援制度や

在庫調整を背景に、5%まで伸びるとみてい

る。ただ、景気見通しが改善しても、政策金

利は 2011 年いっぱい据え置きが続くと予想

している。

米景気見通しの上方修正は、新興国市場にも

影響を与える。米経済の回復が(米国の)輸

出の持ち直しを一因とすることを考えると、

対米黒字国にとっては貿易収支の悪化を通じ

て成長率の押し下げ要因になる可能性がうか

がえる。しかし、米景気の改善が世界経済全

体のプラスになることは間違いない。特に低

金利が続く状況での回復は波及効果が大きい。

政策金利の見通し

2008 2009 2010 2011

FRB 0.0-0.25 0.0-0.25 0.0-0.25 0.00-0.25 ECB 2.5 1.0 1.5 2.5 BOE 2.0 0.5 2.0 3.5 アルゼンチン 10.5 9.0 8.5 8.0 ブラジル 12.2 11.0 11.0 10.1 中国 5.3 5.3 5.8 5.8 チリ 8.3 0.5 3.0 4.5 コロンビア 9.5 4.0 5.0 6.0 エジプト 20.2 10 10.1 8.2 香港 0.5 0.5 0.5 2.2 ハンガリー 10.0 6.0 4.5 4.0 インド 6.5 4.7 5.5 6.8 インドネシア 12.0 6.9 8.1 8.1 イスラエル 2.5 1.0 3.3 4.5 カザフスタン 10.5 7.0 7.5 5.5 韓国 4.1 2.6 3.2 3.4 マレーシア 3.3 2.0 2.5 2.7 メキシコ 8.3 4.5 5.5 6.5 ナイジェリア 9.75 6.0 8.0 8.5 パキスタン 15.0 11.0 10.0 9.0 フィリピン 5.5 4.0 4.7 5.5 ポーランド 5.0 3.3 3.5 4.0 ロシア 13.0 9.7 12.0 19.0 サウジアラビ

1.5 0.2 0.2 0.2

シンガポール 2.4 1.0 0.6 0.9 南アフリカ 11.5 7.0 7.5 8 台湾 2 1.3 1.8 2.2 タイ 2.7 1.3 2.0 2.0 トルコ 15.0 6.5 9.5 8.5 ウクライナ 22.0 14.0 9.5 13.0 ベネズエラ 22.2 19.0 20.0 22.0 ベトナム 8.5 7.0 11.0 11.0

Source: HSBC, national sources

BRICs 諸国個人消費の対米比率

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

Source: Data stream, HSBC estimates

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24

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

先進経済との連動性

新興経済が先進経済とどの程度連動している

かをみるために、両者の GDP 成長率前年比

の 5年ローリング相関を調べた。

右上図にあるように、両者の相関性は、2000年以前は低いが、2004~06 年に急上昇し、ほ

ぼ一致した動きになった。相関係数は 06 年

から一時的に低下したが、それでも 0.5 を上

回り、統計上有意な水準が続いた。

右中図は、アジア新興諸国(中国、インド、

韓国、インドネシア、台湾、タイ、パキスタ

ン、マレーシア、フィリピン)と先進諸国

(米国、英国、日本、ユーロ圏)について、

鉱工業生産前月比平均の 6 カ月ローリング相

関を示したものだ。相関係数は 06 年から上

昇傾向をたどり、08 年前半の急低下後に再び

上昇して 09 年 6月から再度低下に転じた。

アジア新興諸国と先進諸国の鉱工業生産は従

来、相関性が高かったが、経済危機の影響で、

08 年初めから相関係数が低下した。その後の

ボトムアウトはアジアの方が早く、回復のペ

ースも急であったため、相関係数は 09 年に

入ってから大幅に低下し、デカップリング傾

向が強まった(右下図)。

従来モデルの崩壊 本稿では、ここまでの段階で新興諸国の経済

発展と、今回の危機による影響について分析

を試みた。危機は、先進諸国の富の破壊を通

じて、新興諸国の影響力を拡大させることに

なったのか。それとも、外需依存という新興

諸国のアキレス腱を露呈したのか。世界経済

は、新興諸国も含め、構造的な低成長時代へ

突入することになるのか。中国などが消費主

導型経済に移行しない限り、新興諸国は先進

諸国を上回る成長率を維持できないのか。

アジア諸国の大半は日本型の成長モデルで発

展してきた。しかし、比較優位に基づく「雁

行モデル」の経済発展は“リーダー雁”の存

在を大前提としている。これまでは、工業化

を加速させた先進諸国が、アジアに需要を提

供することで、その役割を果たしてきた。そ

うした成長モデルから内需主導型への移行は

極めて難しいが、アジアにとどまらず、世界

の新興諸国の未来はその成否にかかっている。

アジア新興諸国と先進諸国の鉱工業生産前年比

Av . %y oy change in IP

-30%

-20%

-10%

0%

10%

20%

Jan-00

Jan-01

Jan-02

Jan-03

Jan-04

Jan-05

Jan-06

Jan-07

Jan-08

Jan-09

Asian EM Dev eloped

Source: Datastream, HSBC

新興・先進諸国成長率の 5 年相関

-100%

-50%

0%

50%

100%

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

BRICs:Dev eloped Top 20 EM:Dev eloped

*黒線は「BRICs」対「先進諸国」、赤線は「新興上位 20 カ国」対「先進諸国」

Source: IMF, HSBC

アジア新興諸国と先進諸国の鉱工業生産相関性

Asian EMs & Dev eloped-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

Jan-06

Jul-06

Jan-07

Jul-07

Jan-08

Jul-08

Jan-09

Jul-09

6M rolling correlation of Av . %mom IP grow th rate

Source: Datastream, HSBC

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

従来の成長モデルがもはや機能しなくなって

いる点については、為替制度の硬直性の問題

とも絡め、これまでにも取り上げている

(2009 年 7 月の Primal Lite: How green was my rally、 2006 年 12 月の Primal Knowledge: Wild geese flying)。しかし、この問題は新興諸国の今後を左右す

るカギとなるため、今回、再度解説を加えて

みたい。

貯蓄・消費の新たな均衡水準を求めて

世界経済は、大きく崩れた状態にある貯蓄・

消費バランスを是正し、持続可能な均衡水準

を探る必要がある。これまで新興諸国が基礎

としてきた外需依存の成長モデルでは、新た

な均衡は実現できない。現在の大幅な緩和政

策はいずれ解除される。資金調達が再び困難

になる局面もあるかもしれない。そうなった

場合に従来のモデルが機能しないことは明ら

かだ。そのときには、以前のような信用拡大

に支えられた需要増は期待できないのである。

米国の労働者が貯蓄を減らし、さらに中国の

貯蓄から還流した資金を借り入れて、中国の

労働者が製造した製品を買う―。かつてはこ

うした資金還流モデルが指摘された。だが、

振り返ってみれば、不自然さは否めない。従

来も、米消費者は中国以外の製品、サービス

を購入していたはずだ。結果的に還流が断た

れ、米消費者は失業、所得減、ローン返済難

のリスクに直面した。だが、新興諸国の多く

が依拠してきた成長モデルはまさにこうした

資金還流を前提としたものだったのである。

世界の経常赤字国(2000 年時点の構成比) 世界の経常黒字国(2000 年時点の構成比)

United States, 61.3%

Spain, 3.4%

Mex ico, 2.7%

Other, 18.5%

Brazil, 3.6%

Germany , 4.8%

United Kingdom,

5.7%

Russia, 9.3%

Other, 47.6%

Japan, 23.6%

Norw ay , 5.0%

France, 4.3%

Sw itzerland, 6.1%

China, 4.1%

Source: IMF Source: IMF

世界の経常赤字国(2008 年時点の構成比) 世界の経常黒字国(2008 年時点の構成比)

Australia3%

Spain10%

Italy5%

Greece3%

UnitedKingdom

3%

Others26%

India2%

Turkey3%

France3%

UnitedStates42%

Sw itzerland2%

United ArabEmirates

2%

China23%

Germany13%

Japan9% Saudi

Arabia8%

Russia6%

Norw ay5%

Kuw ait4%

Others28%

Source: IMF Source: IMF

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26

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

成長維持の観点から言えば、純貯蓄国が支出

を増やし、過去に過剰な支出を続けた国の貯

蓄増を補うのが理想的である。この問題を解

く 1 つの方法は、世界を純需要国(純支出

国)と純資金供給国に分けることだ。経常収

支の赤字と黒字に相当する色分けである。理

論的には、経常赤字と経常黒字は差し引きゼ

ロになるはずだが、実際には分類方法などの

問題でそうはならない。例えば、2008 年の世

界の経常黒字を合計すると、経常赤字の合計

を 2,620 億米ドル上回る。しかし、こうした統

計誤差が均一に分布していると仮定すれば、

黒字と赤字の合計をそれぞれ地域別に振り分

けて、過剰支出や過剰貯蓄の合計に占める地

域シェアを割り出すことができる。

IMF 統計によると、08 年の世界の経常赤字は

1.6 兆米ドルであった。うち 42%を米国が占め、

以下、スペイン 10%、イタリア 5%となる。

これらが純需要国として世界の経済活動を支

え、新興諸国の成長に貢献していることにな

る。その対極にあるのが純資金供給国であり、

それら諸国は貯蓄の対外還流を通じて、事実

上、赤字国の経済主体に財・サービスを“掛

け売り”していることになる。世界 大の純

貯蓄国はシェア 23%の中国で、以下、ドイツ

(13%)、日本(9%)の順になるが、石油やコ

モディティの輸出国を 1 つのグループとして

みれば、そのシェアは中国を上回る。こうし

た資金供給国は、赤字国の官民経済主体に対

する債権として富の蓄積を続け、その大半は

ドル建てになる。

これがどのように変わりつつあるのか。今の

ところ、調整過程は世界経済にとって好まし

くない方向で進んでいる。例えば、日本は経

常黒字が縮小しつつあるが、これは輸入が増

えたからではなく、輸出需要が減ったからだ。

従来のモデルで日本と同様の純貯蓄国であっ

たドイツや中東諸国についても同じ変化が生

じている。黒字が縮小すれば、資金供給が需

要を上回り、短期的にはデフレ圧力になる。

デフレは労働、財市場の余剰から生じ、労働

者や企業の価格決定力を弱める。

世界経済が第 2 次大戦後初のマイナス成長と

なるなかで、信用拡大が膨らませていた不均

衡も縮小に向かいつつある。そうした不均衡

は世界の成長をかさ上げし、新興諸国にとっ

て追い風になっていた。中国の経常黒字は今

年前半に前年同期比で 32%減少し、景気の重

中国の経常黒字が縮小 (GDP 比、%)

-5

-3

-1

1

3

5

7

9

11

19801982198419861988

19901992199419961998

20002002200420062008

Source: IMF and HSBC estimates

主要国の経常収支の推移

Country 2006 2007 2008 2009 2010 Country 2006 2007 2008 2009 2010US -788 -731 -673 -386 -299 China 253 372 440 240 230Spain -110 -145 -154 -106 -99 Germany 179 250 235 138 153Italy -48 -51 -73 -52 -53 Japan 170 211 157 155 209Greece -30 -44 -51 -44 -42 Saudi 100 96 139 16 48UK -83 -81 -45 -35 -30 Russia 94 76 102 40 6

Deficit SurplusCurrent account balance (USD bn)

Source: IMF and HSBC

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27

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

しとなった。中国の黒字減は米国の赤字減を

意味し、世界の不均衡は是正方向に向かって

いる。これは世界の貯蓄・消費バランスを調

整する上で不可欠なプロセスだ。世界は、持

続可能な成長を担保する新たな均衡水準を目

指す必要がある。だが、先に述べた通り、こ

のプロセスは現在、黒字国が輸入や消費を増

やすことによってではなく、黒字国の輸出が

輸入を上回るペースで減少していることによ

って進行している。

BRICs 諸国の中でも、ブラジルやインドは中

国ほど外需に依存していない。しかし、コモ

ディティ価格の下落で、ロシアや中東諸国な

ど資源国の経常黒字が大幅に圧縮された。輸

出主導の成長モデルから国内消費主導に移行

することの難しさはしばしば指摘される。過

去においてもそうであったし、現在の中国も

例外ではないようだ。実際、中国を含むアジ

ア諸国の多くは、民間消費の GDP比が G7諸国より低い。所得水準の低さや貯蓄性向の高

さが背景である。

予防的貯蓄の多さは社会保障や年金制度の不

備を映したものだが、アジアの場合は、元来、

貯蓄性向が特に高いと考えられる。アジアで

も発展した段階にある日本でさえ、民間消

費の GDP 比は 55%と比較的低水準にとどま

る。所得が急増している中国も、貯蓄増など

を受けて民間 終消費の GDP 比が減少傾向

にある。現在では 40%を割り込み、70%前後

の米国とはむしろ差が広がった。また、内需

はある程度外需にも左右される。農業以外の

輸出関連セクターで多数の労働者が雇用され

ているからだ。

民間消費

BRICs 諸国の民間消費は近年、急拡大してい

る。2004~08 年の平均伸び率は 10.9%に達し、

先進諸国の 5.2%を大幅に上回った。

だが、これでも輸出と比べると見劣りがする。

BRICs 諸国による輸出は 2001~08 年で平均

22%余り伸びている。 一方、先進諸国の輸出は同じ期間に 9%程度

先進諸国と BRICs 諸国の民間消費(前年比)

-5%

0%

5%

10%

15%

20%

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

Dev eloped BRIC

Source: Thompson Financial Datastream, IMF, HSBC

先進諸国と BRICs 諸国の輸出の伸び (平均) 消費の GDP 比

0%

5%

10%

15%

20%

25%

1971-1980 1981-1990 1991-2000 2001-2008Dev eloped BRIC

30%

40%

50%

60%

70%

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

Dev eloped EM BRIC

Source: Thompson Financial Dtatstream, HSBC Source: Thompson Financial Dtatstream, IMF, HSBC

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28

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

の伸びにとどまり、消費とのギャップも小さ

い。これは、BRICs 諸国の成長が消費より輸

出に依存していることを示唆する。事実、

BRICs の民間消費は GDP 比が先進諸国より

大幅に低い。将来の消費拡大余地が大きいと

も言えるが、過去の例から判断する限り、そ

の実現にはまだ不透明な点が多い。

消費主導への構造調整はどの程度進んでいる

のか。8 月の中国経済指標は内需の回復が続

いていることを示している。新規融資はやや

減速したが、インフラ整備中心の投資が引き

続き堅調で、1~8 月の累計で前年同期を

33%上回っている。個人消費も底堅く、8 月

の小売売上高は前年同月比 15.4%増と予想以

上の好調で、数量ベースでは 16.6%増と過去

高水準に迫っている。HSBC の中国担当エ

コノミクス・チームでは、季節要因の影響と

不動産、自動車販売の拡大を背景として指摘

している。また、農村部の小売売上高は 8 月

に 15.5%増と都市部をやや上回り、農村部向

けの景気刺激策が効果を上げていることがう

かがえる。

中国が長期的に内需主導型経済への移行を目

指すのであれば、家計、企業部門の貯蓄を減

らす必要がある。そのためには年金、社会保

障制度を抜本的に拡充しなければならない。

高齢化が進み、労働人口比率が低下に転じる

見通しの 2015 年以降はそうした改革の重要

性が一段と高まる。消費に回る余裕資金を増

やすために、医療、教育分野の政府支出拡大

も欠かせない。

だが、Willem Buiter が指摘しているように、

消費需要の押し上げには、産業構造を工業中

心から消費財、サービス中心にシフトさせる

必要がある(Crisis Talk: Emerging markets and the financial crisis、国際金融公社、2009年 5月)。そ

うした変化は、中国ではまだ始まったばかり

だ。消費主導型経済に移行するためには、サ

プライサイドの構造改革がカギになる。特に

製造業の比重を抑え、サービスセクターを拡

大させることが重要であり、経済の裾野を新

規分野に広げることも求められる。こうした

構造改革を進めるためには、国内銀行システ

ムを強化し、個人向け信用の拡充につなげる

必要があるだろう。今回の危機が始まった当

時に HSBC で指摘したように、新興諸国の銀

行システムは、バルト沿海諸国など一部のケ

ースを除き、先進諸国と比べて危機による打

撃がはるかに少ない。とはいえ、インフラ面

ではまだ遅れが目立つ。消費主導モデルに移

行するためには、銀行システムのインフラ投

資を大幅に拡充しなければならない。

中国などの新興諸国にとって当面の解決策に

なり得るもう 1 つの道は、投資主導の成長を

続けながらも、輸出の軸足を高付加価値分野

に移すことだ。中国では、研究開発費の

GDP 比が拡大していることに示されるよう

に、既にこの方向の政策が打ち出されている。

しかし、それだけでは、都市化の過程で急増

した非熟練労働者を吸収することは難しい。

輸出品の高付加価値化と同時に、労働集約的

なサービスセクターの拡大が必要になるだろ

う。また、先進、新興国の別を問わず、既に

高付加価値分野を製造業の中心に据えている

国から保護主義的な反発を招く可能性がある。

次のセクションでは、保護主義台頭の懸念と、

それに対する G20、WTO(世界貿易機関)の

取り組みに触れてみたい。

保護主義の影響 いつか来た道

世界貿易は 1929 年から 1934 年にかけて 3 分

の 1 の規模に急減した。その主因となったの

が保護主義の広がりである。逆に、第 2 次大

戦後は貿易の急拡大が世界の繁栄に貢献した。

しかし、現在の世界貿易は、25 年ぶりの縮小

過程にある。需要の後退に加え、保護主義の

台頭と貿易信用の収縮が状況の悪化に拍車を

かけている。貿易と投資の再活性化は、世界

経済の回復に欠かせない。4 月の G20 金融サ

ミットでは、保護主義の過ちを繰り返すこと

Page 30: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

29

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

がないよう、以下の点が声明に盛り込まれた。

投資あるいは物品・サービスの貿易に対

する新たな障壁を設けず、新たな輸出制

限を課さず、WTO と整合的でない輸出

刺激策をとらない。

財政政策や金融セクター支援措置を含む

国内政策措置が貿易・投資に与えるいか

なる悪影響も 小化する。

金融保護主義、特に途上国に対する世

界の資本フローを抑制する措置に逃避し

ない。

そのようなあらゆる措置について、

WTO に迅速に通報する。WTO に対し、

他の国際機関とそれぞれの権限の範囲内

で協働しつつ、これらの取り組みに対す

る遵守状況を監視し、四半期毎に公表す

るよう求める。

同時に、貿易・投資を促進し、円滑化す

るためにあらゆる手段を講ずる。輸出信

用及び投資機関並びに国際開発金融機関

を通じた貿易金融を支援するため、今後

2 年間で少なくとも 2,500 億米ドルが利用

可能であることを確保する。

また、G20 は、必要性が叫ばれながら合意に

至っていない「ドーハ開発ラウンド」の妥結

に向けて引き続きコミットしている。

声明では広範囲にわたって強い決意が示され

ているが、保護主義の現実は厳しい。WTOの枠組みでは、国内補助金などの非関税障壁

には対応しにくい。関税障壁などには WTOの紛争解決制度が利用できるが、通常、解決

までに 3 年程度を要し、遡及補償はない。す

なわち、WTO で撤廃を求められることを見

越して障壁を設け、自国にとって当面の利益

とする動きもあり得ることになる。現在はさ

らに厄介な問題がある。経済危機対策として

財政、金融面を一体化した刺激策、金融支援

策が打ち出されたことで、金融、財政、貿易

政策の境界線があいまいになってしまった。

特に主要国の中銀が実施した国内金融機関へ

の“非伝統的”支援策は事態の複雑さに拍車

をかけた。金融保護主義は既に広がりつつあ

ると言え、その影響は今後本格化する可能性

がある。

このところ、IMF は貿易、金融分野における

保護主義の台頭に警戒感を強めている。IMFでは、保護主義を否定する G20 の姿勢にもか

かわらず、懸念される兆しが広がりつつある

としており、特に、先進諸国が大規模な政府

介入で金融危機対策を進めた結果、長期的な

持続性が疑問視される産業への不適切な生産

補助金との境界線があいまいになってきたと

指摘している。個々の金融支援についても、

国内向けの貸し出し増を重視する圧力につな

がっているケースが認められる。また、IMFは、一部の新興諸国が、対外不均衡の是正に

向けて、資本規制を強化する可能性を懸念し

ている。さらに、先進諸国でも保護主義の広

がりが心配される。中国やロシアは、今回の

経済危機以前の段階で、海外の実物資産を取

得しようとする動きを強め、取得先の先進諸

国で経済ナショナリズムをあおる結果になっ

た。今後、ドル安が加速すれば、そうした動

きが再燃する可能性があり、先進諸国の対内

投資規制強化を引き起こしかねない。

先進・新興諸国の世界貿易シェア

30%

40%

50%

60%

70%

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

% o

f glo

bal t

rade

vol

umes

Adv ance economies ex port trade v olumeEM economies trade v olumes

Source: Netherland Bureau of Economic Policy Analysis

Page 31: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

30

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

グリーン保護主義

先進諸国では温暖化ガスの排出権取引に向け

た動きが広がりつつあるが、中国、インドな

どと比べて厳しい排出上限を設けることで企

業の国際競争力を低下させる懸念が指摘さ

れている。このため、EU や米国などは、す

べての工業国を対象とした排出規制が合意さ

れない限り、規制の緩い国からの輸入品を制

限する可能性を検討している。それらの輸

入品に国内企業と同等の負担を求める、な

どの案だ。

しかし、そうした事実上の「炭素税」は、不

公正な国内産業保護と紙一重の政策と言える。

排出量の多い重工業などには優遇措置が適用

され、排出を抑制しようとするインセンティ

ブが働かないからだ。WTO もこの点に懸念

を強め、炭素税は、付加価値税の国境調整措

置と同等に扱う必要性を示唆している。

米国では、排出量の多い重工業が規制の緩い

国に工場を移転する「炭素リーケージ」によ

って国内の雇用が失われるとの懸念から、対

策を法制化する動きが強まっている。具体的

な対策には 2 つの流れがある。すなわち、鉄

鋼、セメント、紙などのエネルギー集約型、

貿易集約型の国内製造業に排出枠を無償で割

り当てる一方で、同等品の輸入には「国際リ

ザーブ排出枠」の“購入”(“グリーン”関

税)を義務付けるやり方だ。EU も、域外か

らの競争にさらされる恐れがあるエネルギー

集約型産業に無償で排出枠を割り当てる

「ETS」(排出量取引制度)を実施している。

中国はグリーン関税に強く反発し、「気候変

動を口実にした保護主義の高まりに断固反対

する」1としている。インドもグリーン関税は

「グリーンのラベルを貼った保護主義だ」2と

批判し、カナダも「世界経済を混乱させるだ

け」3と警戒感を強めている。

ドル還流は変わらず 今回の危機を経た世界経済は、超過需要が赤

字国から黒字国にスムーズに移行できたとし

ても、トレンド成長の低下が予想される。危

機前の世界経済は潜在力を超える過熱状態に

あった。多くの諸国で設備や労働力の逼迫が

続いた。その後、 悪の事態は回避されたが、

危機は形を変えただけで、本質は解決されて

いない。主要国の政府・中銀が大規模な介入

を行い、民間の債務が公的部門に移ったにす

ぎない。

1 chinapost.com.tw/business/asia/b-china/2009/07/02/214676/China-opposed.htm

2 http://www.boston.com/news/world/europe/articles/ 2009/08/14/india_against_us_trade_barrier_for_climate_policy

3 http://www.nationalpost.com/news/canada/story. \html?id=1593753

温室効果ガス排出規制が米製造業に与える影響(CO2 1 トン=15 ドルの排出権取引を実施した場合)

セクター 生産 消費 競争力 雇用

化学 –2.7% –1.8% –0.9% –1.5% 紙 –3.3% –2.4% –0.9% –2.1% 鉄鋼 –2.7% –1.9% –0.8% –1.6% アルミニウム –2.0% –1.4% –0.7% –1.0% セメント –1.6% –0.9% –0.7% –0.4% バルクガス –3.4% –2.7% –0.6% –2.3% 製造業平均 –1.3% –0.6% –0.7% –0.2%

Source: http://www.pewclimate.org/international/CompetitivenessImpacts

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

これまで、新興諸国の経済政策は、財政余力

が限られるなかで、景気変動の影響を受けざ

るを得なかった。だが、今回の危機では、少

なくとも一部の新興諸国が景気変動への抵抗

力を見せ始めた。中国がその代表例であり、

今後、新興諸国の間で純債権国の強みと外貨

準備積み増しの重要性が改めて認識されるこ

とになるかもしれない。しかし、先進国の巨

額の財政出動は今後、世界経済の足かせにな

る可能性がある。民間部門に加え、中国のよ

うに貯蓄率が高いケースを除く新興国にとっ

て、クラウディングアウト効果をもたらしか

ねない。先進国のソブリン・リスクも高まる

だろう。従来は新興国に限られていた懸念が

先進国にも広がることになる。

とはいえ、前述のように米成長率見通しが多

少なりとも上方修正されたことは、世界経済

や新興諸国のさまざまな資産市場にとってプ

ラス材料であることは間違いない。米国経済

の見通しが以前より上向いているのは輸出の

拡大を一因とするものであり、その意味では、

新興諸国の貿易収支を悪化させるマイナス面

も併せ持つ。だが、米国の景気が少しでも持

ち直せば世界経済の下支えになる。特に低金

利環境が続く場合はそうだろう。当面は、今

年 2 月以来の新興国市場の堅調が持続する可

能性が高く、通貨を含め、新興国資産の上昇

圧力となる。

ただ、ドルの還流は危機前と変わっていない。

潤沢な流動性がリスク資産の価格を世界的に

押し上げ、新興国の中銀が自国通貨高を抑え

ようとドル買い介入を続けることで、ドル資

金が米国に還流している。この流れはなお続

くことになるだろうが、いずれは破綻せざる

を得ない。新興諸国が自国通貨高を容認しな

い限り、上昇を続ける新興国市場はバブル化

し、コモディティと金融資産の価格高騰でイ

ンフレ圧力が高まる。そうなれば、新興諸国

で引き締めが必要になり、再びバブル崩壊の

可能性が広がる。

現状における 大の問題は、これまでに膨れ

上がった資産規模が危機による崩壊プロセス

を経てもなお高水準にとどまっていることだ。

資産規模が、将来の金利負担余力に見合った

水準まで縮小していないのである。巨額の公

的資金の投入で富の破壊は食い止められ、資

産の再拡大が始まった。将来の金利負担余力

を超える資産は、実質的な価値が低下に向か

うことになる。モーゲージ証券がそうであっ

たし、今後の米国債も例外ではないだろう。

負債を将来の所得水準に見合った規模まで減

らすには長期にわたる削減が必要だ。民間、

公的部門がともに貯蓄を増やし、負債を減ら

すプロセスを続けなければならない。それに

代わる選択肢はインフレ高進か、人民元など

の新興国通貨に対するドルの切り下げである。

ドルが切り下げられれば、海外のドル資産保

有者は自国通貨ベースでの資産価値が急減

する。

本稿では、ドルと米国債価格の急落がドル建

て外貨準備に与える影響について、定量化を

試みた。過去のデータを分析すると、米 10年国債の利回りが 10%変動すると、価格は

大で±4%動く。ここでは、価格変動を多め

にみて 5%下落した場合の影響を推計した。

想定したシナリオは次の 2つである。

① ドルが 5%、10%、20%下げ、国債価格は

変わらない。

② ドルが 5%、10%、20%下げ、国債価格が

5%下落する。

世界の外貨準備に占めるドル資産の比率は

2009 年 1Q 時点で平均 65%だった。総額 6.8兆米ドル相当の外貨準備のうち 4.4 兆米ドル

前後がドル建てということになる。ドル資産

の規模は、中国、日本、ロシア、インド、韓

国の順で多く、これら 5 カ国で世界の外貨準

備の 58%余りを保有している。

Page 33: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

上図の赤で示した数字は、それぞれのケース

で失われるドル建て資産の規模を示している。

悪のケースである 20%のドル安と 5%の債

券安の組み合わせで、1 兆 590 億米ドルが吹き

飛ぶ。中国だけでも 3,320 億米ドルの損失だ。

1 兆 590 億米ドルといえば、S&P 500 銘柄の時

価総額(2009年 9月 30日時点)の 11.3%に相当

する。

民間部門も含むと損失はさらに広がる。米

国外の民間部門で保有される米国証券の規

模は、入手可能な直近統計である 08 年 6 月

の数字でおよそ 6.8 兆米ドルに上る。これに

ついて外貨準備と同じ方法で影響額の推計

を行った。

その結果、 悪の「20%のドル安+5%の証

券価格下落」で、損失は 1 兆 6,390 億米ドル

となった(次ページの図)。これを外貨準備

の 悪ケースと合計すると、実に 2.7 兆米ド

ルが現地通貨ベースで消滅することになる。

上記と同様、9 月 30 日時点の S&P 500 と比較

すれば、時価総額の 29%に相当する。

現状では、資産価格を将来の金利負担余力に

合わせる調整機能が働かない状態にある。ド

ル買い介入が為替調整を阻み(同時に米国へ

のドル還流をもたらす)、米国債の価格が、

大量増発にもかかわらず、低下していないこ

と(これはドル還流の結果でもある)が背景

だ。為替調整は成長の不均衡を是正するうえ

でカギになる。中国は、「ドルの罠」にはま

っている限り、対外不均衡の是正につながる

人民元高・ドル安を容認できず、そうした状

況は、他国の為替調整も阻む結果になる。結

局、ドルの還流はこれまで通り続き、不均衡

の是正ができないなかで、再びバブルの膨張

と崩壊の道筋をたどるリスクが高まる。

外貨準備:ドル安と米国債利回り上昇による資産価値の低下(10 億米ドル)

1385 13151246

11081250

11841052

220.7441.4

882.9

430.4640.1

1059.4

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

5000

Total currentUSD

denominatedreserves(US$, bn)

5% 10% 20% 5% 10% 20%

All other China Japan Russia India Korea

I. No change in Treasury price II. 5% fall in Treasury price

Assuming 65% of total reserves are US$ denominated

% fall in USD by

Source: Joint External Debt Hub (JEDH), IMF, HSBC

Page 34: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

新興諸国の中でも状況の違いを認識する必要

が高まっている。また、先進国を「核」、新

興国を「周辺」とする世界観も今後、変わる

ことになるだろう。それに合わせて、金融セ

クターの構造変化も避けられない。ただ、当

面は先進国、新興国の色分けが続くとみられ、

世界経済の新たな重心となった新興国が先進

国以上の成長を遂げることは間違いない。し

かし、為替調整ができず、(コモディティ、

製造品の別を問わず)G7 諸国の需要に引き

続き依存した新興諸国は先行きに大きなリス

クを抱えていると言える。先進国経済からの

富の再分配は一筋縄ではいきそうにない。

Philip Poole, Paras Patel, Amit Shrivastava

執筆協力:Kubilay Ozturk, Nick Robins

民間資産:ドル安と価格下落による資産価値の低下(非米国居住者、10 億米ドル)

1639990666

1366683

3426829

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

CurrentNon

officialholdings(US$, bn)

5% 10% 20% 5% 10% 20%

Equity LT debt ST debt

% fall in USD by

I. No change in Securities' price II. 5% fall in Securities' price

Source: Treasury International Capital System, IMF, HSBC

Page 35: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

34

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

Appendix

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35

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

急成長 この「Appendix」では、新興諸国の急成長ぶ

りを経済活動、人口、貿易の各観点からまと

めた。

経済活動

経済のパフォーマンスを測るうえで も重要

な尺度は成長の度合いである。ここでは、

1980 年までさかのぼって、先進諸国と新興諸

国(1980 年当時はまだ「低開発国」と呼ばれ

ていた)の相対的な経済成長を分析した。本

編のコモディティ需要の分析と同様、先進諸

国については米国、日本、英国、ユーロ圏の

データを使い、新興諸国は GDP で上位 20 カ

国のデータを使った。

データの整合性を確保し、比較可能とするた

めに、名目 GDP と GDP デフレーターから実

質 GDP 系列を求め、基準年を 2000 年とした。

基準年の調整はデータに影響を与える可能性

があるが、すべての国が一定の比率で影響を

受けるため、大きな歪みにはならないと考え

られる。基準年の統一によって相対比較が可

能になる。

また、過去のデータを基に 2025 年までの予

測を行った。新興諸国の経済成長が今回の危

機以前の水準に回復するとすれば、先進諸国

との比較でどのような状況が予想されるか判

断するためだ。具体的には 2004~08 年の平均

実質成長率を外挿して 2025 年までの予測を行

った。

この分析では、購買力平価(PPP)は加味し

ていない。それでも十分な相対比較が可能に

なったが、万全を期して PPP ベースの比較も

行った。

分析の結果、先進諸国と新興諸国の GDP 格

差は大幅に縮小していることが分かった。過

去 5 年のペースが今後も続くと仮定すれば、

2025~2030 年には、購買力の差を加味しなく

ても、新興諸国上位 20 カ国でほぼ先進諸国

と並ぶ経済規模になる。

新興諸国と先進諸国の成長率の差は 2000 年

以降、前者のペースが加速する形で拡大が続

いた。今回の危機ではともに急ブレーキがか

かったが、依然として開きが大きい。一方、

新興諸国の中では、中国とロシアの間の格差

が広がるなど、ばらつきが目立つようになっ

た。1980 年以来の平均成長率(前年比)は新

興諸国(上位 20 カ国)で 4.5%、先進諸国で

2.5%である。

新興諸国の大躍進

世界経済の重心は新興諸国に移っている。新興諸国は、経済活動、貿易、人口のいず

れの点においても先進諸国を凌駕する。

新興諸国の中でも特に BRICs の伸びが大きい。

新興諸国の重要性は今後さらに拡大する。

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36

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

この間、BRICs 諸国は平均 5.5%の成長を続け、

その結果、2008 年には、BRICs の GDP 合計

が他の 16 カ国の合計を上回った。また、

BRICs 諸国は、先進国平均を 3%程度上回る

成長が続き、全体に占めるシェアが拡大した。

2004~08 年にはこの差がさらに広がり、

BRICs の平均 8.6%に対し、先進諸国は 2.2%にとどまった。このペースで外挿すれば、

BRICsの GDP 合計は 2025 年に 23兆~28兆米

ドル(2000 年価格)になり、先進諸国の 45兆米ドル(現在は 30 兆米ドル)との差が縮

まることになる。

2025 年の外挿見通しによると、新興諸国の

GDP が世界全体(この分析の対象とした先

進諸国+新興 20カ国)に占める比率は、2008年の 23%前後から 43%まで拡大する。この

比率は、1980 年で 12%、1990 年で 13%、

2000 年で 18%だった。BRICs 諸国の比率は現

在の 13%から 2025 年に 32%まで上昇し、新

興諸国内のみならず、世界全体への成長寄与

が拡大することになる。新興諸国で も伸び

が大きい中国は 2030 年に世界 大の経済大

国に成長する。

PPP ベースでみると、新興諸国の急成長ぶり

はさらに際立つ。IMF 統計に基づく PPP 換算

の成長率は、2003~08 年の平均で、先進諸国

の 5.1%に対し、新興 20 カ国は 10.3%となり、

これを外挿すると、新興諸国の GDP は 2014年に先進諸国と肩を並べる。

PPP ベースでみた BRICs 経済の世界シェアは

1980 年の 10.1%から、1990 年で 12.2%、2000年で 19.4%、2008 年で 26.7%と急拡大が続い

ている。2004~08 年の平均ペース(11.9%)

で外挿すると、世界シェアは 2025 年に 48.6%に達する。ここでも中国の伸びが大きく、

2018 年に世界 大に躍り出る。

貿易

輸出と貿易全体の伸び率についても、新興諸

国と先進諸国で差が広がっている。新興諸国

の貿易全体の伸びは 1991~2000 年平均の

11.4%から 2001~2008 年に 15.6%まで加速し、

実質 GDP の実績と外挿結果(2000 年価格)

GDP (US$ bn)

0

10000

20000

30000

40000

50000

1980

1985

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

2025

Dev eloped Top 20 EM

Ex trapolation

Source: IMF, HSBC

GDP 成長率の推移 2000 年を 100 とした場合の GDP 実績と見通し

YOY % change in GDP

-2%0%2%4%6%8%

10%12%

1981

1986

1991

1996

2001

2006

Dev eloped EM (ex cl. BRIC) BRICs

Index ed GDP (2000=100)

0

200

400

600

800

1000

2000

2005

2010

2015

2020

2025

Dev eloped Top 20 EM BRICs

Ex trapolation

Source: IMF, HSBC Source: IMF, HSBC

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37

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

先進諸国の伸び(5.1%→9.7%)を大幅に上

回った。新興諸国の貿易規模は、直近の拡大

ペースが今後も続くとすれば、2015~2020 年

に先進諸国の合計を上回る。

2008 年の輸出額は先進諸国と新興諸国の合計

でおよそ 12 兆米ドルとなり、2004~08 年の

平均伸び率は 14%強に達した。この輸出増は

主に新興諸国が牽引したもので、輸出全体に

占める新興諸国のシェアは 08 年で 35%まで

拡大した。04~08 年の平均伸び率も、先進諸

国の 12%に対し、新興諸国は「南-南」貿易

の広がりを受けて 19%余り伸びている。先進、

新興諸国の輸出額は、03~08 年のペースを外

挿すると、2020 年に 75 兆~80 兆米ドルに増

加し、うち 60%以上が新興諸国の寄与となる。

BRICs 諸国は、新興諸国の輸出と貿易全体に

占めるシェアを急拡大させ、2000年の 32%が

2008 年に 52%強となった。BRICs 諸国が新興

諸国の貿易全体に占めるシェアは、04~08 年

の平均拡大ペースが今後も続くとすれば、

2025 年には 85%前後に達する。BRICs 諸国の

輸出は、先進諸国との伸び率の差が現行水準

で続けば、2020 年までに先進諸国の輸出を上

回り、貿易全体についても、2025 年までに先

進諸国を超えることになる。

BRICs 諸国の中ではやはり中国の存在感が大

きい。2008 年の輸出、貿易全体のいずれにつ

いても 60%以上を占める。1991~2000 年の貿

易全体の伸びは年平均 15.4%だったが、2000~2008年には 24%まで加速した。中国に続く

ロシアは、BRICs の貿易全体に占めるシェア

が 2008 年の 19%から 2025 年には 25%程度ま

で拡大するとみられる。インドのシェアは 10~14%でほぼ横ばいが見込まれる。

人口

今回分析対象とした新興諸国の上位 20 カ国は、

1950 年以来、対象先進諸国の総人口を上回っ

ている。2005 年の国連統計によると、20 カ国

の合計で、先進、新興諸国全体の 80%以上を

占める。

PPP ベースの GDP シェア:実績と外挿予測

BRICs EM (ex cl. BRIC) Dev eloped

19902000

20102020

Source: IMF, HSBC

輸出に占める先進、新興諸国のシェア 貿易全体に占める先進、新興諸国のシェア

Exports-Shares

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1970 1980 1990 2000 2008 2015 2020 2025Dev eloped Economies BRIC EM (ex cl. BRIC)

Ex trapolation

Total Trade-Shares

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1970 1980 1990 2000 2008 2015 2020 2025Dev eloped Economies BRIC EM (ex cl. BRIC)

Ex trapolation

Source: Thompson Financial Datastream , HSBC Source: Thompson Financial Datastream , HSBC

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38

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

新興諸国は人口の伸び率でも先進諸国を上回

る。前者の 1950~2005 年平均が 1.83%である

のに対し、先進諸国は 0.77%にとどまる。し

かし、2040~2050 年までには 5 年平均が新興、

先進いずれについても 2%を割り込む見通し

で、人口の伸びは世界のすべての地域で鈍化

するとみられる。世界の総人口に占める新興

諸国のシェアは 2050 年で 85%程度まで拡大す

る見込み。

新興諸国上位 20 カ国に占める BRICs 諸国の人

口シェアは 2005 年で 70%強。当面、この水準

での推移が予想される。BRICs の中では、中

国とインド(計 24.4 億人)で 2005 年の 4 カ国

計のおよそ 90%を占めた。これは先進、新興

諸国計の 50%以上に相当する。今後はすべて

の国で人口の伸びが鈍化するとみられるため、

BRICs の世界シェアは 2010~2050 年に 60%近

い水準で推移する見通し。 Philip Poole, Paras Patel, Amit Shrivastava

5 年平均人口伸び率(%)

-2%0%2%4%6%8%

10%12%14%

1950-1955

1965-1970

1980-1985

1995-2000

2010-2015

2025-2030

2040-2045

Dev eloped BRIC TOP 20

Forecast

Source: UN population statistics, HSBC

国連の人口予測(百万人)

1980 1990 2000 2010 2020

先進諸国 696 737 785 833 868 BRICs 1934 2302 2630 2904 3143 新興諸国 ( BRICs を除く)

730 899 1053 1202 1304

Source: UN population statistics, HSBC. 新興諸国 (BRICs を除く) は対象

20 カ国から BRICs を差し引いた数字。

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

国・地域別分析

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 40

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ブラジル:概況

堅調な労働市場に支えられすでに V 字型回復が実現。インフレ率の小幅の上昇が予想されるが、これだけではブラジル

中銀が予防的な利上げに動くには不十分なため、引き続き引き締め開始は 2010 年 4Q となる見込み。

Andre Loes: +55 11 3371 8184 [email protected] Tatiana Gomes: +55 11 3371 81843 [email protected]

インフレ率が小幅上昇する可能性があるが… …引き締め転換は 2010 年 4Q

ブラジルの前年比のインフレ率は目標値まで低下しており、しば

らく 4.5%前後にとどまる見通しである。これまでインフレ低下に

大きく貢献してきた食品とコア貿易財に代わり、今後は価格管理

品目とコア非貿易財がインフレの低位安定に寄与する見込みであ

る。一部の政府管理価格は過去のインフレ率に連動しており、世界

的な金融危機の表面化後の総合インフレ率の低下によるメリットが

期待できる。コアの非貿易財価格は主にサービス価格であり、 大

12 カ月のタイムラグを置いて総合インフレ率に収れんする傾向に

あるが、労働市場が堅調なため収れんが遅れる可能性もある。イン

フレに(正式および非公式に)連動する価格の収れんが遅れること

による好影響と需要の拡大による影響を総合すると、2010 年のイ

ンフレ率は小幅上昇する見込みで、2010 年のインフレ率は+5.0%と予想される。

しかし、今後 2010 年前半までに予想されるインフレ率の上昇は、

特に総選挙が予定されていることもあり、予防的な利上げを促す

ような規模のものではない。潜在的なインフレ圧力が足元のイン

フレ率の顕著な悪化につながるとは考えにくく、イールドカーブ

は金利上昇を織り込んでいるが、インフレ期待の上昇には時間が

かかる見通しである。

HSBC では早期の金融引き締めは予想していないが、力強い景気回

復が実現しているため、ブラジル中銀は断固とした対応をとらざる

を得ないだろう。従って、HSBC では 2010 年末の政策金利の予想水

準を 9.50%から 10.25%に上方修正した。また、引き締めの規模も従

来の予想よりも大きくなる見通しである。2011 年末には政策金利

は 12.25%に上昇する見込みで、累計の利上げ幅は 350bpと予想。

景気と CPI 政策スタンス

-20-15-10-505

1015

4Q07 2Q08e 4Q08e 2Q09e 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

2345678

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial grow th (LHS) CPI (RHS)

-8

-6

-4

-2

0

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08e 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qm

a)

051015202530

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

Source: IBGE and HSBC forecasts Source: IBGE, BCB and HSBC forecasts

危機を脱出

近の各種経済統計は、すでに V 字型回復が始まっていることを

裏付けている。国内消費主導型の回復が進むなか、2009 年 2Q の

GDP は前期比+1.9%(2008 年 4Q は-3.4%、2009 年 1Q は-1%)

となった。コンセンサス予想を上回る GDP 成長の内訳を見ると、

家計消費が大きく貢献していることが明らかで、季調済みベース

で 2009 年 1Q の前期比+0.6%に続いて 2Q は同+2.1%となった。

固定資産投資はなお出遅れており、前年比マイナスとなっている

が、前期比では 2009 年 1Q の-12.1%から 2Q は横ばいへと大幅に

改善した。企業景況感指数が急回復しているため、4Q にも設備投

資が本格的に再開される可能性がある。

3Q の高頻度データによると、2Q に始まった回復が勢いを増して

いるようである。鉱工業生産と HSBC の PMI 指数(製造業、サー

ビス業とも)は、生産の加速を示唆している。

さらにプライマリー収支が黒字となっていることを背景とした追加的

な景気刺激策の効果も加味し、HSBC では 2009 年の GDP 成長率予想

を 0%から+0.4%に、2010 年は+4.6%から+5.3%に上方修正した。

景気の急回復の原動力となっているのは労働市場だ。失業率は 4月にピークに達し、雇用創出も減少から増加に転じており、労働

市場の堅調ぶりを示している(内外要因の「金融危機を通じて労

働市場の構造的な変化が明らかに」を参照)。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 6.8 1.3 -1.8 -1.2 0.1 4.4 5.9 5.8 5.2 4.3 鉱工業生産 (前年比%) 6.7 -6.3 -14.6 -12.2 -9.7 2.0 12.8 12.4 10.4 7.2 CPI (四半期末%、前年比) 6.3 5.9 5.6 4.8 4.4 4.7 4.8 4.5 4.9 5.0 WPI (四半期末%、前年比) 14.3 9.8 5.0 -1.7 -3.3 -2.5 0.8 3.0 5.0 5.1 貿易収支 (% GDP) 1.9 1.6 1.7 2.0 1.9 1.8 1.5 1.2 0.9 0.6 経常収支 (% GDP) -1.6 -1.8 -1.6 -1.4 -1.1 -0.8 -1.1 -1.4 -1.7 -2.0 外貨準備高 (USDbn) 206.5 206.8 202.4 208.4 214.2 219.9 224.5 229.1 233.8 238.4 政策金利, 四半期末(%) 13.75 13.75 11.25 9.25 8.75 8.75 8.75 8.75 8.75 10.25 2年利回り, 四半期末 (%) 14.4 12.2 10.4 10.6 11.0 11.0 10.5 10.5 11.5 11.0 BRL/USD, 四半期末 1.91 2.34 2.32 1.95 1.85 1.80 1.75 1.70 1.70 1.70 BRL/EUR, 四半期末 2.68 3.23 3.07 2.83 2.68 2.66 2.63 2.55 2.55 2.55

Page 42: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 41

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ブラジル:チャート一覧 金利スプレッド(対 USD Libor) イールドカーブ

0

4

8

12

16

20

1/06 5/06 9/06 1/07 5/07 9/07 1/08 5/08 9/08 1/09 5/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 2yr spread over US-Libor

8.0

9.0

10.0

11.0

12.0

3M 6M 1y r 2y r

(%)

Now -4 months +4 months

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

0

1

2

3

4

5

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009e

0102030405060

(%)

BRL v s USD (LHS) Annualised v olatility (RHS)

50100150200250300

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal ex change rate v s USDCumulativ e CPI Cumulativ e PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

050

100150200250

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

0306090120150

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2010e

2007

2008

2011e

2009e

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

-3.5-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.5(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0

1000

2000

3000

4000

5000

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0

200

400

600

800

(spre

ad bp

s)

MSCI Brazil sub-index (LHS)EMBI Brazil sub-index (RHS)

0300600900

12001500

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spre

ad b

ps)

Brazil 5yr SwapEMBI Brazil sub-index

Page 43: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 42

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ブラジル:内外要因

財政収支悪化の主因は税収減にあり、従って循環性のもの。しかし 2011 年以降、政府債務/GDP 比率を健全な水準に

維持するために財政黒字の拡大が求められる。当面、BRL 高が続く見込み。

金融危機を通じて労働市場の構造的な変化が明らかに

ブラジル経済が堅調を維持した 大の理由は、金融危機のさなか

においても労働市場が好調だったことにある。実際、ブラジルの

労働市場では構造変革が生じている。その一因は、当面の雇用の

安定と引き換えに労働時間の短縮と時間当たり賃金の引き下げを

受け入れた労使間の協定により、極めて硬直的なブラジルの労働

市場の特徴だった大量の人員カットを通じた調整が小幅にとどま

ったことにある。労働市場の硬直性の改善を目的とした 2000 年代

初頭の法整備を通じて可能になったこのような協定には、失業率

の緩やかな低下と正規雇用制度の整備により労働力が大きく不足

したことが影響していると考えられる。

下図は過去の失業率の推移を示しているが、ここ数年の平均失業

率が 2000 年代初頭に比べて大きく変化していることが分かる

(2009 年後半から 2010 年は当社予想)。

労働省の正規雇用統計(CAGED)を見ると、ブラジルの労働市場

の見通しは明るい。8 月の労働統計は全般に好調で、9 セクターの

うち 8 セクターで雇用が増加した。また、2008 年 10 月以来初めて

12 カ月間の累計雇用創出の減少に歯止めがかかった。

失業率統計によると、2010 年には労働市場は 2008 年の水準に回復

する見通しである。HSBC では 2010 年の失業率を 7.7%と予想して

いる。

月次ベースの失業率の推移(%) 正規雇用の創出(千人)

6

7

8

9

10

11

12

13

14

Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec

2004 2006 2008 2009 2010

6

7

8

9

10

11

12

13

14

Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec

2004 2006 2008 2009 2010

-800,000

-600,000

-400,000

-200,000

0

200,000

400,000

Jan-0

0

Jul-0

0

Jan-0

1

Jul-0

1

Jan-0

2

Jul-0

2

Jan-0

3

Jul-0

3

Jan-0

4

Jul-0

4

Jan-0

5

Jul-0

5

Jan-0

6

Jul-0

6

Jan-0

7

Jul-0

7

Jan-0

8

Jul-0

8

Jan-0

9

Jul-0

9

-2,400-2,000

-1,600-1,200

-800-4000

400800

1,2001,600

2,0002,400

MoM (LHA) Last 12 months (RHA) Source: IBGE and HSBC forecasts Source: Ministry of Labour

財政収支が著しく悪化する可能性は低い BRL 高が続く

積極財政策が引き続き需要を下支えしている。プライマリー収支

の黒字額が 2008 年 4Q から大幅に減少しており、この傾向は景気

回復に加えて 2009 年に導入された税還付制度の撤廃に伴い税収が

大幅に増加する 2010 年初頭まで続く見通しである。

近の財政支出の増加に伴い懸念が高まる可能性があるが、財政

収支見通しに基づくと、政府債務/GDP 比率が悪化する可能性は

低い。当社が定期的に実施している試算によると、財政収支が小

幅黒字に改善し、政策金利が 10%前後に維持されれば、純政府債

務/GDP 比率は安定化する見通しである(下図の中立的シナリ

オ)。

2009 年と 2010 年の成長率予想を上方修正したため、経常収支赤字

も拡大することになる。ブラジルの主要輸入品目は原材料と資本

財であり、2010 年に鉱工業生産と固定資産投資が回復するにつれ

て輸入の伸びは年 20%前後に加速する見通しである。利益拡大と

BRL 高に伴い多国籍企業による海外送金が増えるため、利益送金

も 2008 年半ばの水準に回復する可能性がある。

しかし、これは資本流入により十分相殺される見通しである。

現在ブラジルの経済成長はプラスで、国内環境は良好であり、

利回りは高く、株式投資、債券投資双方にとって魅力的な状況

にある。外部資金の使途と源泉を示した下表は、これを如実に物語

っている。

純政府債務/GDP 比率予想(%) 外部資金の使途と源泉

20

25

30

35

40

45

50

55

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

Pessimistic Neutral Optimistic

Source: HSBC forecasts Source: BCB and HSBC forecasts

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 43

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ブラジル:内外要因

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用 GDP 成長率 (% 前年比) 5.7 3.2 4.0 5.7 5.1 0.4 5.3 4.2名目 GDP (USDbn) 663.6 881.8 1088.5 1333.3 1575.3 1506.7 1957.6 2054.41 人当たり GDP (USD) 3664 4808 5866 7107 8309 7868 10127 10541民間消費 (% 前年比) 3.8 4.5 5.3 6.3 5.4 2.5 4.5 4.2政府支出 (% 前年比) 4.1 2.3 2.6 4.7 5.6 3.5 3.2 3.8投資 (% 前年比) 9.1 3.6 9.8 13.5 13.8 -10.0 15.0 9.0鉱工業生産 (% 前年比) 8.3 3.1 2.8 6.0 3.1 -8.7 10.6 5.5国内総貯蓄 (% GDP) 18.5 17.3 17.6 17.5 16.9 17.0 17.2 17.0失業率 (% 年末) 9.6 8.4 8.4 7.4 6.8 7.5 7.7 6.2

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 6.6 6.9 4.2 3.6 5.7 5.0 4.8 5.2CPI, 年末 (% 前年比) 7.6 5.7 3.1 4.5 5.9 4.7 5.0 5.3WPI, 年末 (% 前年比) 14.7 -1.0 3.3 9.4 9.8 -2.5 5.1 6.2製造業賃金, 名目 (% 前年比) 4.6 7.6 7.2 7.3 9.9 6.2 7.4 7.6

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 17.9 18.0 18.1 17.4 17.8 14.0 18.0 18.0民間融資実質伸び率 (% 前年比) 11.9 15.0 17.0 22.3 23.8 2.0 14.9 13.3政策金利, 年末 (%) 17.8 18.0 13.3 11.3 13.8 8.8 10.3 12.32 年利回り, 年末 (%) 17.0 15.7 12.3 12.8 12.2 11.0 11.0 10.1BRL/USD, 年末 2.65 2.34 2.14 1.77 2.34 1.80 1.70 1.85BRL/USD, 平均 2.93 2.44 2.18 1.95 1.83 2.02 1.72 1.79BRL/EUR, 年末 3.60 2.77 2.82 2.60 3.23 2.66 2.55 2.68BRL/EUR, 平均 3.64 3.04 2.73 2.66 2.68 2.79 2.57 2.61

対外部門 商品輸出 (USDbn) 96.5 118.3 137.8 160.6 197.9 156.6 172.1 194.0商品輸入 (USDbn) -62.8 -73.6 -91.4 -120.6 -173.2 -129.0 -161.0 -193.0貿易収支 (USDbn) 33.6 44.7 46.5 40.0 24.7 27.6 11.1 1.0経常収支 (USDbn) 11.7 14.0 13.6 1.6 -28.3 -12.8 -39.0 -54.6経常収支 (% GDP) 1.8 1.6 1.3 0.1 -1.8 -0.8 -2.0 -2.7純対内直接投資 (USDbn) 8.3 12.5 -9.4 27.5 24.6 26.0 21.0 21.0純対内直接投資 (% GDP) 1.3 1.4 -0.9 2.1 1.6 1.7 1.1 1.0経常収支+対内直接投資 (% GDP) 3.0 3.0 0.4 2.2 -0.2 0.9 -0.9 -1.6輸出 (% 前年比) 32.0 22.6 16.5 16.6 23.2 -20.9 9.9 12.7輸入 (% 前年比) 30.1 17.1 24.1 32.0 43.6 -25.5 24.8 19.9外貨準備高(金を除く)(USDbn) 52.9 53.8 85.8 180.3 206.8 219.9 238.4 238.4輸入カバー月数 10.1 8.8 11.3 17.9 14.3 20.5 17.8 14.8

公的・対外債務ソルベンシー指標 商業銀行外貨資産 (USDbn) 17.4 20.5 24.6 38.7 38.9 37.5 40.0 40.0対外債務総額 (USDbn) 201.4 169.5 172.6 193.2 198.3 192.1 191.6 195.0短期対外債務 (外貨準備%) 35.4 34.9 23.7 21.6 19.3 16.6 14.9 14.9民間対外債務 (USDbn) 69.1 69.2 83.3 107.3 114.2 123.5 123.1 127.0連結財政収支 (% GDP) -2.8 -3.4 -3.5 -2.8 -2.0 -3.2 -1.6 -1.9政府財政収支 (% GDP) -1.4 -3.4 -3.1 -2.3 -0.9 -3.0 -1.4 -1.0プライマリーバランス (% GDP) 3.8 3.9 3.2 0.0 3.7 2.0 2.5 3.3公的部門対内債務総額 (BRLbn) 1111.2 1262.9 1186.1 1426.1 1595.9 1846.2 1942.7 2204.9公的部門対内債務総額 (% GDP) 54.6 58.5 48.9 52.1 53.7 60.6 57.8 59.8公的部門対外債務総額 (USDbn) 83.1 81.5 70.4 65.9 62.0 63.3 63.2 62.8公的部門対外債務総額 (% GDP) 10.8 8.8 6.2 4.3 4.9 3.7 3.2 3.2公的部門債務総額 (% GDP) 65.4 67.4 55.1 56.4 58.6 64.4 61.0 63.0

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 44

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

中国:概観

インフラ投資が成長のけん引役となるほか、景気刺激策の 2 次的な効果が個人消費を下支えするため、2010 年も景気

回復傾向が持続。

Hongbin Qu: +852 2822 2025 [email protected]

インフラ投資が大幅に拡大 短期的なインフレ圧力は限定的

2009 年 1-8 月の都市部の固定資産投資は名目ベースで前年比 33%増となった。実質ベースでは、地方政府による投資の加速と不動

産投資の回復を反映して 8 月の都市部の固定資産投資の伸びは 7月の前年比 38%から同 41%に加速した。インフラ投資が好調

だ。たとえば、2009 年 1-8 月の鉄道投資の伸びは前年比 107%に

達した。これに対して前年同期は約 30%だった。しかし、不動産

投資以外では民間投資の伸びは公共投資の伸びを依然として下回

っている。ただし、2009 年 1-8 月の新規プロジェクトへの投資は

前年比+80%を超えており、必要に応じて政府によるインフラ投

資が追加される可能性も高く、投資の大幅な伸びが維持される見

通しである。

依然として前年比マイナスにとどまっているが、総合 CPI、PPI ともに底入れしており、8 月にデフレ圧力は後退し始めた。ベース

効果が徐々に消えるにつれて、総合 CPI は 2009 年 4Q にプラスに

転じると予想される。ただし、即座にインフレ圧力や利上げの可

能性が台頭することはないだろう。その理由は以下のとおり。①

成長率は潜在成長率を下回る見込みで、インフレは抑制される、

②世界需要の回復が緩やかで余剰生産能力が維持されるため、消

費財価格の上昇率は限定的なものにとどまる、③5 年連続で豊作

が続いて十分な供給が維持されているため、CPI の 3 分の 1 を占

める食品価格は安定化する。さらに景気回復を確実なものとする

ための対策も加味すると、2010 年 2Q までは利上げはないと見ら

れる。

景気と CPI 政策スタンス

0

4

8

12

16

20

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

-20246810

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial grow th (LHS) CPI (RHS)

-3-2-1012

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qm

a)

-20246810

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

2010 年も回復傾向を維持

2008 年 11 月に導入された 4 兆元の景気刺激策が予想以上に早く

実施に移されたことで、中国経済は V 字型の回復軌道にある。

インフラ整備を中心とした投資が内需のけん引役となっている。

銀行の新規貸出の大幅な伸びを背景に今年 1-8 月の固定資産投資

は名目ベースで前年比 33%増を記録した。これが鉱工業生産と消

費の拡大につながっており、輸出の減少による影響を一部相殺し

ている。8 月の鉱工業生産の伸びは 1 年ぶりの高水準となる

12.3%に達した。個人消費も好調で、不動産市場の回復と自動車

販売の伸びを反映して小売売上高は前年比 17%近い伸びを記録

している。

2010 年も回復傾向が続く見通しで、インフラ投資をけん引役に景

気刺激策の 2 次的な効果が個人消費を下支えする形で 2010 年の

GDP 成長率は前年比+9.5%に達する見込みである。インフラプロ

ジェクトが着手されれば数年にわたって国内景気の浮揚効果を発

揮することになり、さらに現在計画中のプロジェクトも多い。ま

た、政府は経済成長のけん引役の公共投資から民間投資および消

費へのシフトを促すことに注力している。

しかし、政府は現在の積極的な財政政策を維持し、政府が弱々し

いと判断している回復を下支えするために適度な金融緩和策を維

持する見通しである。2010 年 2Q まで利上げはないだろう。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP成長率 (前年比%) 9.0 6.8 6.1 7.9 8.6 9.2 9.7 9.5 9.3 9.4 鉱工業生産 (前年比%) 13.0 6.4 6.0 9.6 10.6 12.6 14.2 14.0 13.8 14.0 CPI (四半期末%、前年比) 4.6 1.2 -1.2 -1.0 -0.2 0.3 3.1 2.8 2.6 3.3 PPI (四半期末%、前年比) 9.1 -1.1 -6.0 -7.8 -5.5 3.5 2.5 3.0 3.5 4.0 貿易収支 (% GDP) 7.9 8.5 6.5 3.1 6.7 5.0 4.7 1.9 5.6 3.8 外貨準備高 (USDbn) 1,905.6 1,946.0 1,953.7 2,130.0 2,180.0 2,250.0 2,285.7 2,302.5 2,354.1 2,398.7 政策金利, 四半期末(%) 7.2 5.3 5.3 5.3 5.3 5.3 5.3 5.6 5.8 5.8 5年利回り, 四半期末 (%) 7.6 5.8 5.8 5.8 5.8 5.8 5.8 6.0 6.3 6.3 CNY/USD, 四半期末 6.85 6.82 6.83 6.83 6.83 6.80 6.80 6.80 6.73 6.66 CNY/EUR, 四半期末 9.73 9.48 9.02 9.56 9.90 10.20 10.20 10.20 10.10 9.99

Note: * Industrial production is measured as the output of companies with annual sales over CNY5m

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 45

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

中国:チャート一覧 金利スプレッド(対 USD Libor) イールドカーブ

-4-3-2-10123

1/06 5/06 9/06 1/07 5/07 9/07 1/08 5/08 9/08 1/09 5/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 10yr spread over US Tbond

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

6M 1y r 3y r 5y r 10y r

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

6.0

6.5

7.0

7.5

8.0

8.5

2004 2005 2006 2007 2008 2009e

-1.00.01.02.03.04.05.0

(%)

CNY v s USD (LHS) Annualised v olatility (RHS)

8090

100110120130

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

8090

100110120130

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

0300600900

120015001800

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

(USD

bn)

036

91215

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2010e

2007

2008

2011e

2009e

0.0

1.02.0

3.0

4.05.0

6.0

-5.0-4.0-3.0-2.0-1.00.01.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

020406080

100120

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

050100150200250300350

(spre

ad bp

s)

MSCI China sub-index (LHS)EMBI China sub-index (RHS)

0

150

300

450

600

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spr

ead

bps)

China 12M base lending rateEMBI China sub-index

0

150

300

450

600

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spr

ead

bps)

China 12M base lending rateEMBI China sub-index

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 46

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

中国:内外要因

向こう数四半期の中国の経済成長率の大きな不確定要因は輸出だが、内需主導の景気回復に影響を与えることはないだ

ろう。

鉱工業生産の伸びが加速 個人消費は堅調を維持

新規投資プロジェクトにより工業製品需要が大幅に増加したこと

を反映して 8 月の鉱工業生産の伸びは 7 月の前年比+10.8%から 1年ぶりの高水準となる同+12.3%に加速した。発電量の伸びも

2008 年 5 月以来 高の前年比+9.3%に達し、政府の景気刺激策が

奏功して景況が著しく回復していることを裏付けた。投資に重点

を置いた景気刺激策と好調な自動車販売を反映して、重工業が軽

工業を上回る伸びを示している。建設工事が本格化するにつれ

て、今後鉱工業生産の伸びは一段と加速する見通しである。景気

先行指標である PMI 製造業指数は 3 カ月連続で拡大を示唆する水

準を上回っており、鉱工業生産の伸びの加速を示唆した。

中国の個人消費は好調だ。8 月の数量ベースの小売売上高伸び率

は前年比+16.6%と、1993 年の統計開始以来の 高値に近い水準

となった。所得の順調な伸びに加えて、政府の景気刺激策を背

景とした住宅販売と自動車販売の伸びが個人消費を下支えして

いる。政府の消費奨励策の効果が見込まれるため、個人消費は

今後も着実に増加する見通しである。農家の家電購入補助金制

度、農村年金制度の試験的導入、医療制度改革、病院と教育関

連の支出拡大などが個人消費を下支えすることになる。

鉱工業生産の伸びが加速 自動車販売の伸びが貢献して個人消費が拡大

0

5

1 0

1 5

2 0

2 5

0 5 0 6 07 08 09

%yr , 3m m a

35

40

45

50

55

60

IP M anu factur ing PM I

-2 0

0

2 0

4 0

6 0

8 0

0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9

(% yr ,3 m ma)

0

5

1 0

1 5

2 0(% y r, 3m ma )

C a r sa le s (u nit)

R e ta il sa le s (R h s, a djuste d by C PI)

銀行貸出が正常化 輸出は底入れ

2009 年 7-8 月の新規銀行貸出は 2009 年前半の月平均 1 兆 2,000 億

元から 4,000 億人民元前後に大きく鈍化した。償還を迎えた割引

債が中長期貸出により借り換えられたため、8 月の新規貸出は

6,860 億元となった。企業向け中長期貸出が新規貸出の 50%以上

を占めており、政府主導のインフラプロジェクトが貸出の 大の

押し上げ要因となった。しかし、今年前半に巨額の貸出が実施さ

れており、新規貸出の正常な水準への鈍化が実体経済の回復に影

響を与えることはない。2009 年 1-8 月の新規貸出は 8 兆元を超え

ており、貸出残高は前年比+34.1%と、2009 年の 8%の GDP 成長

率の維持に十分な水準に達している。

2009 年 7-8 月の輸出の減少幅は前年比 23%で安定化する一方、コ

モディティ価格の低下を反映して輸入金額の伸びは同 16%に鈍化

した。数量ベースでは、コモディティ輸入は増加している。従っ

て、 先端の機械輸出企業と同じように、コモディティの輸出国

も投資主導型の中国経済の回復により 大の恩恵を享受すること

になる。この結果、貿易黒字は前年比 19%減の 1,228 億米ドルに

とどまった。輸出の減少は中国経済の 大の懸念材料だが、内需

主導の景気回復の足かせとなることはない。中国の輸出の安定化

と世界経済の緩やかな回復を反映して、向こう数カ月に中国の輸

出が底入れする可能性がある。ただし、その後の回復は緩やかな

ペースとなろう。

政府主導のインフラプロジェクトが貸出の増加の原動力 輸出の減少に歯止め

-5000

5001000150020002500

02/07 06/07 10/07 02/08 06/08 10/08 02/09 06/09

RMB bn

ST MLT Bill Others

-10000

0

10000

20000

30000

40000

50000 US$m,3mma

-40

-20

0

20

40

60

80%yr,3mma

Trade balance (LHS) Export (RHS) Import (RHS)03/93 03/96 03/99 03/02 03/05 03/08

-10000

0

10000

20000

30000

40000

50000 US$m,3mma

-40

-20

0

20

40

60

80%yr,3mma

Trade balance (LHS) Export (RHS) Import (RHS)03/93 03/96 03/99 03/02 03/05 03/08

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 47

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

中国:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用 GDP 成長率 (% 前年比) 10.1 10.2 11.6 13.0 9.0 8.1 9.5 8.9 名目 GDP (USDbn) 1,931.7 2,239.1 2,661.2 3,385.9 4,330.9 4,735.5 5,366.0 6,202.9 1 人当たり GDP (USD) 1,495 1,723 2,035 2,576 3,278 3,566 4,021 4,625 民間消費 (% 前年比) 7.2 8.5 8.7 9.0 8.9 8.0 8.5 8.6 政府支出 (% 前年比) 8.6 12.9 11.7 14.3 12.0 18.0 16.0 14.0 投資 (% 前年比) 21.5 22.3 21.5 22.7 19.2 31.4 22.8 16.5 鉱工業生産 (% 前年比) 16.3 15.9 16.2 16.0 12.9 9.5 14.0 13.0 国内総貯蓄 (% GDP) 45.7 48.2 50.1 51.0 51.4 50.0 50.5 50.0 失業率 (% 年末) 4.2 4.2 4.1 4.0 4.2 6.0 5.5 5.0

物価・賃金 CPI, 平均 (% 前年比) 3.9 1.8 1.5 4.8 5.9 -0.6 2.6 2.5 CPI, 年末 (% 前年比) 2.4 1.6 2.8 6.5 1.2 0.3 3.3 2.3 PPI, 年末 (% 前年比) 7.1 3.2 3.0 5.4 -1.1 3.5 4.0 3.3 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 12.3 12.3 14.0 16.2 17.0 9.0 13.0 11.5

マネー・為替・金利 広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 16.2 16.0 18.1 17.5 16.7 21.9 21.5 16.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 16.2 16.0 16.0 17.0 15.0 13.0 15.5 13.0 政策金利, 年末 (%) 5.6 5.6 6.1 7.5 5.3 5.3 5.9 5.9 5 年利回り, 年末 (%) 5.8 5.8 6.5 7.7 5.8 5.8 6.3 6.3 CNY/USD, 年末 8.28 8.07 7.81 7.30 6.82 6.80 6.66 6.40 CNY/USD, 平均 8.28 8.18 7.96 7.60 6.94 6.83 6.77 6.53 CNY/EUR, 年末 11.25 9.52 10.29 10.66 9.48 10.20 9.99 9.60 CNY/EUR, 平均 9.69 10.19 10.01 10.56 10.11 9.87 10.15 9.80

対外部門 商品輸出 (USDbn) 593.3 762.0 969.0 1,218.6 1,429.2 1,258.4 1,371.6 1,508.6 商品輸入 (USDbn) 561.2 660.0 791.5 956.0 1,131.8 1,007.9 1,159.1 1,263.4 貿易収支 (USDbn) 32.1 102.0 177.5 262.7 297.3 250.5 212.5 245.2 経常収支 (USDbn) 68.7 160.8 253.3 371.8 426.1 240.0 230.0 260.0 経常収支 (% GDP) 3.6 7.2 9.5 11.0 9.8 5.1 4.3 4.2 純対内直接投資 (USDbn) 60.6 72.4 72.7 83.5 108.3 85.0 86.0 98.9 純対内直接投資 (% GDP) 3.1 3.2 2.7 2.5 2.5 1.8 1.6 1.6 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 6.7 10.4 12.2 13.4 12.3 6.9 5.9 5.8 輸出 (% 前年比) 35.4 28.4 27.2 25.8 17.2 -12.0 9.0 10.0 輸入 (% 前年比) 36.0 17.6 19.9 20.8 18.5 -11.0 15.0 9.0 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 609.9 818.9 1,066.3 1,528.2 1,946.0 2,250.0 2,400.0 2,550.0 輸入カバー月数 13.0 14.9 16.2 19.2 20.6 26.8 24.8 24.2

公的・対外債務ソルベンシー指標 商業銀行外貨資産 (USDbn) 129.7 169.3 200.3 188.4 180.9 211.6 245.5 292.4 対外債務総額 (USDbn) 247.5 281.0 323.0 373.6 374.7 350.0 330.0 360.0 短期対外債務 (外貨準備%) 20.2 19.1 17.2 14.4 10.8 6.7 5.0 5.1 連結財政収支 (% GDP) -1.3 -1.2 -1.0 0.6 -0.4 -2.9 -4.3 -3.2 政府財政収支 (% GDP) -1.3 -1.2 -1.0 0.6 -0.4 -2.9 -4.3 -3.3

注:鉱工業生産統計の対象は全企業。

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

香港:概況

2010 年に景気回復が本格化する見込み。2010 年の GDP 成長率予想を前年比+2.4%から+3.8%に上方修正。

Janus Chan: +852 2996 6975 [email protected]

アジアの回復が貢献

香港経済は予想以上に早く回復している。2009 年 2Q の実質 GDPは前期比+3.3%(季調済み)となった。前年比では 1Q の-7.8%に続いて-3.8%となった。一部低迷が尾を引く分野もあるが、

2010 年には回復が本格化する見通しである。G3 に加えて、香港の

2010 年の GDP 成長率予想も 2.4%から 3.8%に引き上げる。

2Q の消費者信頼感は世界的な資産市場の上昇と域内の雇用削減が

予想より低水準にとどまったことを反映して前期比+12%と大幅に

改善した。これに伴い、民間消費は前期比+4%(季調済み)とな

った。雇用の純増はまだみられないが、失業率は 2010 年 1Q に

6.2%でピークに達する見通しである。前回のピークは 6.7%だっ

た。このため、民間消費の回復ペースが加速するのは 2010 年とな

る見込みである。

2Q の財の貿易も予想以上に好調で、前期比 11%増(季調済み)

となり、依然として減少している中国の輸出をアウトパフォーム

した。香港の好調な輸出には中国の公共投資の拡大が貢献してお

り、中国の財の輸入は前期比 16%増となった。G3 の回復ペース

が加速する見通しであるため、香港の輸出伸び率も改善すると予

想される。

成長の 大の足かせとなっているのは民間投資で、2Q の減少幅は

予想を上回った。銀行は融資基準を緩和しているが、企業借り入

れは低水準にとどまっている。企業は、世界経済が本格的に回復

するまでは事業の拡大には慎重と考えられる。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP成長率 (前年比%) 1.5 -2.6 -7.8 -3.8 -3.1 -1.1 4.0 3.5 3.7 3.9 鉱工業生産 (前年比%) -7.0 -10.6 -10.2 -9.5 -8.0 -6.5 2.3 0.8 1.3 1.5 CPI (四半期末%、前年比) 3.1 2.0 2.0 -0.5 0.5 1.8 2.1 3.3 2.5 1.2 PPI (四半期末%、前年比) 5.4 3.8 -1.4 -2.9 -2.0 -1.3 0.3 1.1 1.6 1.8 貿易収支 (% GDP) -9.6 -7.0 -9.1 -10.0 -7.1 -7.5 -8.9 -9.5 -6.4 -6.9 財・サービス収支 (% GDP) 13.2 15.8 10.6 7.7 13.3 14.1 11.1 9.0 14.5 15.2 外貨準備高 (USDbn) 160.6 182.5 186.3 207.0 230.0 245.0 246.0 245.0 245.0 247.0 政策金利, 四半期末(%) 3.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 5年利回り, 四半期末 (%) 2.6 1.2 1.6 2.1 1.9 1.5 1.5 1.5 1.5 1.5 HKD/USD, 四半期末 7.80 7.80 7.75 7.75 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80 HKD/EUR, 四半期末 11.08 10.84 10.23 10.85 11.31 11.70 11.70 11.70 11.70 11.70

デフレは長期化せず HIBOR は低位安定

香港のヘッドラインインフレ率は引き続き財政政策の影響を受け

ている。2009 年 1-7 月の総合 CPI は前年比+0.5%、基調的な CPIは同+1.8%となった。基調的な CPI に基づくと、香港は 2009 年 7月にデフレ局面に入っており、2009 年 1Q~2Q の景気の縮小に沿

った形となった。景気の縮小を反映して依然として物価に対す全

般的なる低下圧力が存在するが、経済成長率の予想以上に早期の

回復により物価が下支えされる可能性がある。また、不動産市場

の上昇に伴い、4 月には不動産賃貸指数が上昇に転じた。これが住

宅の CPI に反映されるまでにタイムラグが存在するため、住宅価

格は今年 4Q に下げ止まる可能性が高い。従って、1998~2004 年と

は異なり、今回のデフレ局面は短期で終了する見通しである。

世界的に信用環境が緩和されているため、今年に入り香港への資

本流入が続いている。香港金融管理局(HKMA)は今年 3 月から

9 月 16 日までに 2,560 億香港ドルの追加資金供給を実施してお

り、全体の供給量(銀行の HKMA における決済勘定残高)は 8 月

初めに過去 高の 2,340 億香港ドルに達した。その後、為替基金

証券の追加発行を受け 1,900 億香港ドルに減少した。こうした潤

沢な流動性を反映して HIBOR はすべての期間で 1%以下に低下

した。しかし、9 月に入り資本流入が鈍化しており、HIBOR とド

ルの LIBOR の格差が縮小した。ただし、少なくとも年末までは

緩和策が維持される見通しであるため、流動性は高水準に維持さ

れよう。

景気と CPI 政策スタンス

-12

-8

-4

0

4

8

2Q07 4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

-2

0

2

4

6

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial grow th (LHS) CPI (RHS)

-5

-21

47

10

4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

-6-4-202468

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

香港:チャート一覧

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

0306090

120150180210

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

40

50

60

70

80

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserv es (RHS)

2010e

2007

20082011e

2009e-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

-5.00.05.010.0(consolidated govt balance % GDP)

(real rates)

株式・債券市場

02000400060008000

1000012000

1/05 7 /05 1/ 06 7/ 06 1 /07 7/07 1 /08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0

200

400

600

800

1000

(spre

ad bp

s)

MSCI Hong Kong sub-index (LHS)Hong Kong HS BC av . s pread

金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

-3

-2

-1

0

1

1/06 5/06 9/06 1/07 5/07 9/07 1/08 5/08 9/08 1/09 5/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 2y r spread ov er US-Libor

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

3M 6M 1yr 2yr 3yr 4yr 5yr 7y r 10yr

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

7.70

7.75

7.80

7.85

7.90

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009e-0.1

0.4

0.9

1.4

1.9

(%)

HKD vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

-2000

200400600800

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spre

ad b

ps)

Hong Kong 5yr Govt. Hong Kong HSBC av. spread

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abc

香港:内外要因

景気後退から脱したが本格回復はまだ実現ぜず。

小売売上高の減少ペースが鈍化 2010 年に輸出は増加へ 香港の 2009 年 1-7 月の小売売上高は前年比 4.6%減だった。これに

は観光客の減少(前年比 4.9%減)も影響しているが、民間消費の

前年比での減少が大きく響いた。しかし、資産市場の上昇と雇用

削減が予想より小幅にとどまったことを反映して、消費者信頼感

は急回復している。このため、2Q の民間消費は前期比で増加し

た。すでに 悪期は脱したもようだが、雇用の広範囲にわたる回

復はまだみられず、引き続き失業率が回復の足かせとなろう。観

光客の減少ペースは、①世界経済の底入れ、②出張が増えている

こと(ただし依然として通常の水準を下回る)、③新型インフルエ

ンザを巡る懸念の後退に伴い、今後鈍化する可能性がある。

香港の輸出の伸びは、1960 年代以降の 低水準となった 2009 年

2 月の前年比-23%から急回復しており、1-7 月の輸出は前年比

17.7%減となった。香港は引き続き中国貿易の重要な玄関口であ

り、中国の旺盛な資本財需要を反映して香港の輸出の改善ペー

スはアジア全体を上回っている。今後も、香港の輸出の前期比

での伸びの改善傾向が続く見通しである。今年 2Q の世界の

GDP 成長率は予想を上回り、その後も見通しが改善している。

HSBC では G3 の GDP 成長率予想を上方修正しており、香港の

輸出も G3 の回復を受け回復に向かい、2010 年には増加に転じる

見通しである。

小売売上高伸び率が改善 輸出の減少が続く

-15-10

-505

101520

Jan-

05M

ay-0

5

Sep-

05Ja

n-06

May

-06

Sep-

06

Jan-

07M

ay-0

7

Sep-

07Ja

n-08

May

-08

Sep-

08

Jan-

09M

ay-0

9

Retail sales val Retail sales vol

% y-o-y, 3mma

-24-18-12

-606

121824

Jan-

05

Jul-0

5

Jan-

06

Jul-0

6

Jan-

07

Jul-0

7

Jan-

08

Jul-0

8

Jan-

09

Jul-0

9

Imports Exports

% y-o-y, 3mma

固定投資の本格的な回復は見込めず 資本流入の鈍化に伴い住宅ローン金利が上昇する可能性

固定投資は、民間投資の低迷を主因に 2008 年 4Q 以来 3四半期連続

で減少している。銀行の融資基準は緩和されているが、それまで

減少していた企業負債は前期比 0.4%(季調済み)の微増にとどま

った。その主因は、世界経済の先行き見通しが不透明であるた

め、企業の投資意欲が低下していることにある。対照的に、政府

の公共プロジェクトに対する支出は昨年後半に発表された景気刺

激策を反映して拡大している。また、政府による 10 件の大型イン

フラプロジェクトの準備工事も建設支出の増加につながってい

る。しかし、民間投資の減少を埋め合わせるには至っていない。

2009 年 7 月のマネーサプライ M1 は、大量の資本流入を反映して

前年比 35.5%と大幅に増加した。しかし、貸出が低迷したため

(2009 年 7 月の香港ドル建て貸出額は 2.4%減)、M3 伸び率は

13.8%にとどまった。この結果、香港ドル建ての預貸比率は 高

値となった 2008 年 8 月の水準から 13 ポイント低下して 2009 年 7月は 71%にとどまった。企業向け、個人向けともに貸出の伸びは

なおマイナスとなっているが、不動産市場の回復と低金利を反映

して住宅ローン認可件数は 2009 年 1 月以降前月比で増加してい

る。住宅ローン金利の低下リスクは限られており、資本流入次第

で上昇する可能性がある。これは、年末まで緩和策が継続される

見通しであるものの、量的緩和策が小規模にとどまっているため

である。

公共投資は堅調 不動産価格と香港ドルの M3 伸び率

-6%

-4%

-2%

0%

2%

4%

98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

-30%

-20%

-10%

0%

10%

20%

Public B&C contribution (LHS) Real GFCF grow th (RHS)

-25-15

-55

15253545

Jan-

05

May

-05

Sep-

05Ja

n-06

May

-06

Sep-

06Ja

n-07

May

-07

Sep-

07Ja

n-08

May

-08

Sep-

08Ja

n-09

May

-09

-15

-5

5

15

25

35

HKD M3 (LHS) Property price (RHS)

%y-o-y % y -o-y

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

香港:マクロ環境

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用 GDP 成長率 (% 前年比) 8.5 7.1 7.0 6.4 2.4 -4.0 3.8 4.3 名目 GDP (USDbn) 165.9 177.8 189.9 207.0 215.7 209.2 219.5 233.6 1 人当たり GDP (USD) 24,093 25,629 25,630 25,630 25,631 28,812 29,647 30,627 民間消費 (% 前年比) 7.0 3.0 5.9 8.5 1.7 -1.0 2.1 3.0 政府支出 (% 前年比) 0.7 -3.2 0.2 3.0 1.8 1.8 1.5 1.3 投資 (% 前年比) 2.7 4.1 7.1 3.4 0.0 -8.3 5.0 6.0 鉱工業生産 (% 前年比) 2.9 2.5 2.2 -1.5 -6.6 -8.5 1.5 2.3 国内総貯蓄 (% GDP) 30.2 33.3 33.3 31.0 30.4 30.3 30.6 32.6 失業率 (% 年末) 6.6 5.2 4.4 3.4 4.1 6.0 6.0 5.4

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) -0.4 0.9 2.0 2.0 4.3 0.6 2.3 3.0 CPI, 年末 (% 前年比) 0.3 1.4 2.3 3.8 2.1 1.8 1.2 3.2 PPI, 年末 (% 前年比) 1.4 1.0 2.1 4.2 3.8 -1.3 1.8 1.9 製造業賃金, 名目 (% 前年比) -2.5 2.6 1.3 0.2 3.7 1.0 3.3 3.5

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 7.8 7.4 12.7 18.4 7.0 7.7 27.0 15.8 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 2.4 6.9 6.9 13.2 12.5 -1.6 8.4 16.0 政策金利, 年末 (%) 3.8 5.7 6.8 5.7 0.5 0.5 0.5 0.5 5 年利回り, 年末 (%) 2.7 4.1 3.7 3.1 1.2 1.5 1.5 2.0 HKD/USD, 年末 7.78 7.75 7.77 7.80 7.75 7.80 7.80 7.80 HKD /USD, 平均 7.79 7.77 7.77 7.80 7.78 7.78 7.80 7.80 HKD /EUR, 年末 10.57 9.15 9.69 10.30 10.84 11.70 11.70 11.70 HKD /EUR, 平均 9.69 9.68 9.67 9.80 10.82 11.32 11.28 11.70

対外部門

商品輸出 (USDbn) 259.9 288.7 316.3 346.0 364.6 319.3 346.6 379.5 商品輸入 (USDbn) 269.2 296.3 330.3 365.7 387.7 336.8 363.9 397.7 貿易収支 (USDbn) -9.3 -7.6 -14.0 -19.7 -23.1 -17.5 -17.3 -18.2 経常収支 (USDbn) 14.7 22.1 21.7 22.4 23.5 24.1 27.5 30.9 財・サービス収支 (% GDP) 8.9 12.4 11.4 10.8 10.9 11.5 12.5 13.2 純対内直接投資 (USDbn) -11.7 6.4 0.1 -6.7 3.1 6.0 8.0 10.0 純対内直接投資 (% GDP) -7.0 3.6 0.0 -3.3 1.4 2.9 3.6 4.3 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 1.8 16.0 11.4 7.6 12.3 14.4 16.2 17.5 輸出 (% 前年比) 15.9 11.1 9.6 9.4 5.4 -12.7 8.8 9.5 輸入 (% 前年比) 17.0 10.1 11.5 10.7 6.0 -13.3 8.3 9.3 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 123.6 124.3 133.2 152.7 182.5 245.0 247.0 250.0 輸入カバー月数 5.5 5.0 4.8 5.0 5.6 8.7 8.1 7.5

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 529.4 531.4 603.9 789.1 864.0 870.0 900.0 950.0 対外債務総額 (USDbn) 29.0 43.0 52.0 83.0 47.6 40.0 45.0 50.0 連結財政収支 (% GDP) 1.7 1.0 4.0 7.7 0.1 -3.9 -1.2 2.5 公的部門対内債務総額 (HKDbn) 1.7 1.6 1.6 N/A N/A N/A N/A N/A 公的部門対内債務総額 (% GDP) 1.0 0.9 0.9 N/A N/A N/A N/A N/A 公的部門対外債務総額 (USDbn) 1.6 1.6 1.6 N/A N/A N/A N/A N/A 公的部門対外債務総額 (% GDP) 1.0 0.9 0.9 N/A N/A N/A N/A N/A

注:公的債務は政府分のみ。

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 52

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インド:概況

回復基調にあり、引き続き 2009/10 年度の GDP 成長率を 6.2%、2010/11 年度を 8%と予想。

Robert Prior-Wandesforde: +65 62 390 840 [email protected] Prithviraj Srinivas (Economics Associate)

タカ派的姿勢を強める RBI 総裁 国民寄りの予算案

RBI は直近の 7 月の理事会で政策金利を据え置いた。RBI 総裁

は 近、タカ派的な姿勢を強めているが、現段階では利上げの

メリットはないと見られる(後記参照)。総裁のスタンスの変

化の主因は、CPI 上昇率が予想を上回っていることにあると考

えられる。特に、CPI で大きなウエートを占める食品の価格が

急上昇している。当社の分析によると、食品中間財価格は下落

しているものの、国内市場における食品価格は主に供給要因を

反映してそれほど大幅に下落していない。モンスーン期の雨量

不足による干ばつもインフレ懸念に拍車をかけている。

財務相が発表した予算案は過去 大規模となり、支出が前年比

36%拡大された。その目的は景気刺激と国民の人気取りにあり、

特に下院選挙での勝利につながった農村部の有権者の支持に応え

ることに主眼が置かれた。このため、景気減速の影響もあって予

算案は前例のない規模の資金調達を必要とする内容となってお

り、政府の直近の試算によると 2010 年度の所要資金は総額 930 億

米ドルに達する。政府はすでに所要資金の調達を進めており、大

量の国債発行を受け利回りが上昇している。政府は、景気回復が

本格化するまで RBI は政策転換を先送りすると期待している。

HSBC では、2010 年 4 月に利上げが実施される可能性が高いと見

ている。

景気と CPI 政策スタンス

02468

1012

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

0

3

69

12

15

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial grow th (LHS) CPI (RHS)

-8

-6

-4

-2

0

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

03691215

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y-o-y (RHS)

インド経済の基本的な見通しに変更なし 成長のけん引役は内需

年初来、HSBC では 2010 年度の成長率予想を 6.2%に据え置いてお

り、当初、当社予想はコンセンサス予想に比べて極めて悲観的だ

ったが、その後コンセンサス予想を大きく上回ることになり、現

在ではコンセンサス予想とほぼ同水準となっている。また、

2010/11 年度の予想も 8%に据え置いており、市場予想の中で も

楽観的となっているが、格差は縮小している。成長のけん引役に

関する当社の前提は現在も変わらない。すなわち、①2008 年 9 月

以降のインド中銀(RBI)による 425bp のレポ金利引き下げを受け

てベンチマークの 優遇貸出金利(PLR)が 240bp 低下しており、

金融緩和による景気刺激効果が本格化するのはこれからと考えら

れる、②政府は 7 月に積極的な予算案を発表しており、農村部と

都市部の貧困層の購買力の改善が見込まれる、③対外貿易に改善

の兆しが見られ、6 月と 7 月の 3 カ月ベースの輸出の伸び(季調済

み)は 2 ケタに達した、④やや遅れているものの、石油・ガス生産

の増加に伴い深刻なエネルギー不足に悩むインドの発電量が増加

する見通しであり、その経済全体への波及効果は大きい。インド

の原油需要の 25%に匹敵する生産能力を誇るケアン・エナジー社

のインド北西部の油田での生産がすでに開始されている。

2010 年度 1Q の GDP 統計では、公共部門による貢献度は低下して

いる一方、鉱工業生産が大幅に増加していることが明らかになっ

た。サービスセクターは全般に堅調だが、個別ではまちまちの展

開となっており、輸送と通信は前年比+8.1%となった一方で金融

サービスと社会サービスは軟化した。 近では、自動車販売、鉱

工業生産、貨物輸送などの改善が続いており、景気の順調な回復

を示唆している。干ばつにより回復がとん挫する可能性は低いと

見られる(「内外要因」を参照)。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 7.7 5.8 5.8 6.1 6.0 6.7 6.1 6.8 7.5 8.5 鉱工業生産 (前年比%) 4.7 0.8 0.5 3.9 6.5 9.6 9.4 9.6 8.4 8.6 CPI (四半期末%、前年比) 9.8 9.7 8.0 9.3 11.8 12.3 12.0 9.7 7.5 6.5 WPI (四半期末%、前年比) 12.3 6.2 1.2 -1.0 2.0 6.0 8.0 7.2 6.8 6.3 貿易収支 (% GDP) -13.6 -11.8 -5.2 -5.8 -11.1 -10.7 -5.0 -5.7 -11.3 -11.0 経常収支 (% GDP) -4.4 -4.4 1.7 1.1 -3.8 -4.3 0.8 0.8 -4.0 -4.4 外貨準備高 (USDbn) 277.3 246.6 241.4 254.1 251.4 246.0 258.4 270.1 266.1 257.5 政策金利, 四半期末(%) 9.0 6.5 5.0 4.7 4.7 4.7 4.7 5.0 5.2 5.5 5年利回り, 四半期末 (%) 8.6 5.3 6.7 7.0 6.0 6.3 6.5 6.8 7.0 7.3 INR/USD, 四半期末 47.00 48.70 50.70 47.90 48.60 48.0 48.0 47.5 47.0 46.5 INR/EUR, 四半期末 66.74 67.69 66.92 67.06 70.47 72.00 72.00 71.25 70.50 69.75

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 53

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インド:チャート一覧

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

050

100150200250300350

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

01020304050

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2009e

2011e

2008

2007

2010e

-10.0-8.0-6.0-4.0-2.00.02.04.0

-15.0-10.0-5.00.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0

200

400

600

800

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0

500

1000

1500

2000

2500

(spre

ad bp

s)

MSCI India sub-index (LHS)India HSBC av. spread

0300600900

1200150018002100

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spre

ad b

ps)

India 5yr Govt.India HSBC av . spread

金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

0

2

4

6

8

10

1/06 5/06 9/06 1/07 5/07 9/07 1/08 5/08 9/08 1/09 5/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 2y r spread ov er US-Libor

2.03.04.05.06.07.08.09.0

3M 6M 1yr 2yr 3yr 5yr 7yr 10yr

(%)

Now -4 months+4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

35

40

45

50

55

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009e0

5

10

15

(%)

INR vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

80100120140160180

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 54

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インド:内外要因

回復基調にあるが、財政・金融面での刺激策がなくても回復が本格化するかは不明。楽観的な見通しは依然としてリス

クを伴うが、現在の景気刺激策により景気の悪化は回避できる見込み。

民間貸出の伸びの回復に期待… 財政収支…

2009 年 8 月末までの 1 年間の食品関連を除く貸出の伸びは 2002年以降 低の 14.1%にとどまった。しかし銀行システムの流動性

は潤沢で、翌日物銀行間金利は RBI の設定する変動枠の下限にと

どまっている。商業銀行は余剰資金を RBI への貸出や国債購入に

充てている。実際、大半の銀行では国債購入が RBI の定める上限

に達している。現在の水準を上回る国債購入に対しては、銀行が

採用に消極的な時価評価が求められることになる。一部の銀行

は、小売業界を中心に融資の問い合わせの増加を指摘しており、

民間貸出に改善の兆しも見られるが、これが実際の融資に結び付

くかどうかは不明だ。

現在 GDP 比 6.8%の巨額の財政赤字を抱えるインド政府は、経費

節減のための財政引き締めを目指している。しかし、燃料/肥料補

助金の増加や農家所得の下支えを目的とした高価格での食品買い

取りを通じた政府支出の増加圧力が干ばつにより高まる可能性が

ある。HSBC では 2009/10 年度の中央政府赤字が GDP 比 6.9%に達

すると予想しており、一般政府赤字は GDP 比 11.5%となる見通し

である。構造的な赤字の増加も続く見込みで、いずれ削減を余儀

なくされることになる。これまでと同じように、赤字削減のため

インフラ支出が抑制される可能性がある。政府が課税対象を大幅

に拡大させるとは考えにくいが、少なくとも脱税を厳しく取り締

まる方針を示している。

…銀行システムにおける流動性は潤沢 …巨額の財政赤字を抱え、慎重な対応が不可欠

2468

101214161820

Jan-08 Apr-08 Jul-08 Oct-08 Jan-09 Apr-09 Jul-09

%

Ov ernight IB* rate Reverse repo Repo

-8%

-6%

-4%

-2%

0%

98 98 99 00 01 01 02 03 04 04 05 06 07 07 08 09

Central Govt Fiscal deficit as a % of Markt GDP

干ばつは… 実質購買力を圧迫…

インドの農地の 50%以上で灌漑に利用されているモンスーン期の

雨量が今年は 7 年来の 低水準にとどまった。農業生産が GDP に

占める割合は 20%以下だが、人口の 60%以上が農業で生計を立て

ている。農家所得が減少すると、政府は補助金の拡大や雇用推進

制度を通じた支援策を余儀なくされ、財政収支が一段とひっ迫す

ることになる。数十年前に比べると耕作地が拡大しており、灌漑

施設も改良されているが、干ばつの影響で価格が上昇する可能性

は高く、現在ゼロ強にとどまっている卸売物価上昇率は 2009/10年度末までに 8%に達する見通しである。

インドで重視されている物価指標である卸売物価指数(WPI)は

今後広範囲にわたって上昇する可能性が高い。エネルギー価格と

金属価格の上昇率がプラスに転じる見通しであり、これは食品お

よび食品加工製品の価格の急上昇とともに物価に著しい影響を与

えることになる。たとえば 9 月 5 日に発表された WPI では、果

物・野菜(前年比+24.1%)と食肉(同+14.4%)の価格が急騰し

た。食品価格上昇率の加速は需要ではなく供給面での圧力を反映

しており、金利調節による対応は正当化できない。早期の利上げ

は市場を動揺させ、商業銀行の金利の一段の低下に歯止めをかけ

ることになる。

…農業生産にはマイナス …CPI 上昇率は高止まり

Ag ricultur e rea l GDP gro wth

-20

-10

0

10

20

FY 5

2

FY 5

9

FY 6

6

FY 7

3

FY 8

0

FY 8

7

FY 9

4

FY 0

1

FY 0

8

Grey : Drought periods

% Yr

-10

-5

0

5

10

15

20

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

% Yr

-40

-20

0

20

40

60

80% Yr

Food CPI* (LHS) Food commod. Price** (RHS)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 55

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インド:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 7.5 9.5 9.7 9.0 6.7 6.2 8.0 8.5 名目 GDP (USDbn) 677.4 784.7 877.3 1,114.8 1,175.1 1,160.1 1,364.3 1,624.7 1 人当たり GDP (USD) 638 727 800 1,001 1,039 1,010 1,170 1,371 民間消費 (% 前年比) 5.2 7.1 6.3 8.5 2.9 5.0 8.0 8.3 政府支出 (% 前年比) 3.6 6.2 5.5 7.4 20.2 12.0 5.0 2.0 投資 (% 前年比) 18.9 17.6 14.5 12.9 8.2 6.0 11.0 12.5 鉱工業生産 (% 前年比) 8.4 8.2 11.5 8.5 2.6 5.0 9.0 7.7 国内総貯蓄 (% GDP) 33.8 35.1 37.0 38.1 36.3 38.5 39.0 39.5

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 3.9 4.0 6.3 6.4 8.3 10.5 9.6 6.0 CPI, 年末 (% 前年比) 4.6 5.3 6.7 5.5 9.7 12.3 6.5 6.4 WPI, 年末 (% 前年比) 6.7 4.4 5.7 3.8 6.2 6.0 6.3 5.0

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 14.1 16.1 19.6 21.8 20.3 19.0 19.0 19.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 25.0 19.9 18.4 15.6 14.1 8.0 12.0 15.0 政策金利, 年末 (%) 6.0 6.3 7.3 7.8 6.5 4.8 5.5 6.8 5 年利回り, 年末 (%) 6.4 6.7 7.5 7.7 5.3 6.3 7.3 8.0 INR/USD, 年末 43.5 45.1 44.3 39.4 48.7 48.0 46.5 44.5 INR/USD, 平均 44.8 44.1 45.2 40.9 44.7 48.8 47.4 45.5 INR/EUR, 年末 57.70 53.14 58.42 57.52 67.69 72.00 69.75 66.75 INR/EUR, 平均 55.5 54.9 56.8 56.8 65.1 70.6 71.2 68.3

対外部門

商品輸出 (USDbn) 77.9 102.2 123.8 149.3 187.9 157.0 175.9 196.4 商品輸入 (USDbn) 106.0 149.4 184.9 231.0 315.1 253.2 290.4 326.2 貿易収支 (USDbn) -28.0 -47.3 -61.2 -81.7 -127.2 -96.2 -114.5 -129.8 経常収支 (USDbn) 0.8 -14.7 -9.3 -11.3 -36.1 -17.0 -25.1 -26.6 経常収支 (% GDP) 0.1 -1.9 -1.1 -1.0 -3.1 -1.5 -1.8 -1.6 純対内直接投資 (USDbn) 3.6 4.6 6.0 7.8 22.8 10.7 17.5 30.5 純対内直接投資 (% GDP) 0.5 0.6 0.7 0.7 1.9 0.9 1.3 1.9 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 0.6 -1.3 -0.4 -0.3 -1.1 -0.5 -0.6 0.2 輸出 (% 前年比) 28.0 31.1 21.1 20.6 25.9 -16.4 12.0 11.6 輸入 (% 前年比) 40.3 41.0 23.8 24.9 36.4 -19.6 14.7 12.3 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 125.2 131.0 170.2 266.6 246.6 246.0 257.5 271.5 輸入カバー月数 14.2 10.5 11.0 13.8 9.4 11.7 10.6 10.0

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 148.4 162.8 209.5 324.3 265.4 270.0 300.0 320.0 対外債務総額 (USDbn) 133.0 138.1 171.3 224.6 229.9 235.0 250.0 270.0 短期対外債務 (外貨準備%) 6.0 6.6 7.0 16.4 19.5 16.3 17.1 18.4 連結財政収支 (% GDP) -9.0 -9.2 -7.0 -6.5 -9.8 -11.5 -10.0 -8.5 政府財政収支 (% GDP) -4.1 -4.2 -3.6 -2.8 -6.3 -6.9 -5.8 -4.9 プライマリーバランス (% GDP) -0.5 -0.7 -0.1 -0.1 -3.0 -4.5 -3.5 -2.5 注:4 月~翌年 3 月の年度。

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 56

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インドネシア:概況

インドネシアは経済成長が他アジア諸国を上回っているだけでなく、金融危機への対応でも優れている。インドネシア

の見通しは引き続き明るい。

Robert Prior –Wandesforde : +65 62 390 840 [email protected]

着実な成長を維持

今回の世界的な景気後退局面において、インドネシアは高い成長

率を維持している。これは、インドネシア経済が内需主導型であ

ることと選挙絡みの景気対策を反映している。2Q の GDP 成長率

は 2004 年 3 月以来 低の前年比 4%となったが、近隣諸国の水準

を大きく上回った。特に注目される点は、インドネシアでは 2008年 4Q と 2009 年 1Q に大半のアジア諸国のような生産の急減がみ

られず、2Q の回復は緩やかなものにとどまったとはいえ生産が安

定した拡大ペースを維持していることである。消費者信頼感が高

水準にあり、借り入れ需要の回復の兆しがみられるため、拡大傾

向が続く見通しである。大統領選挙でのユドヨノ氏再選はプラス

材料であり、経済政策運営の継続性が保たれることになる。2009年の成長率は平均 4.3%と予想され、2010 年は 5.8%に加速する見

通しである。

インドネシアの成長率は他アジア諸国を上回っており、金融危機

への対応という点でも、スリ・ムルヤニ財務相の優れた政策手腕

を反映して周辺国を凌いでいる。インドネシアは、必要不可欠な

バッファーを維持するため、即座に世銀のスタンドバイ融資枠を

確保し、通貨スワップ協定を拡大させた。こうした先手を打った

対応が奏功し、赤字の補填もスムーズに進んだ。2009 年の予算案

では財政赤字は GDP 比 2.5%(133 兆インドネシアルピア)と予想

されているが、前半の赤字額が 26 兆インドネシアルピアにとどま

ったため、赤字額は政府予想を下回る公算が大きい。2010 年の赤

字額は、GDP の 1%相当の景気刺激策を含め GDP 比 1.6%と予想

されている。対外収支も良好で、2009 年前半の経常黒字は 60 億米

ドル、7 月時点の外貨準備は 550 億ドル弱だった。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 6.4 5.2 4.4 4.0 3.7 4.9 5.5 5.8 6.2 5.8 鉱工業生産 (前年比%) 4.3 1.8 1.5 1.5 1.0 2.5 5.0 6.0 7.0 7.0 CPI (四半期末%、前年比) 12.1 11.1 7.9 3.7 3.0 5.5 7.2 8.7 9.2 8.0 PPI (四半期末%、前年比) 27.5 9.7 4.9 -5.9 0.0 10.0 12.0 13.0 12.0 10.0 貿易収支 (% GDP) 4.1 3.4 6.2 7.0 5.4 4.2 4.5 5.2 4.2 3.2 経常収支 (% GDP) -0.6 -0.6 2.6 2.5 0.9 0.4 0.1 1.2 0.5 -0.8 外貨準備高 (USDbn) 57.1 51.6 54.8 57.6 59.4 60.5 60.1 61.7 62.0 60.1 3 カ月 SBI 金利, 四半期末(%) 9.9 12.0 8.6 7.0 7.0 6.9 6.8 7.2 7.5 8.1 5年利回り, 四半期末 (%) 13.0 11.8 11.7 10.0 9.2 9.2 9.2 9.7 10.3 10.8 IDR/USD, 四半期末 9,506 11,325 11,700 10,208 10,018 9,500 9,200 9,000 8,900 8,800 IDR/EUR, 四半期末 13,499 15,742 15,444 14,291 14,526 14,250 13,800 13,500 13,350 13,200

インフレ率が再び上昇へ 緩和は打ち止め、次の動きは利上げ

インドネシアのインフレ率は 9 年ぶりの低水準となる 2.7%にとどま

っている。これに対して昨年は 12%に達していた。ラマダンの時期

がずれ込んだことによるベース効果を反映して、9 月の前年比のイン

フレ率は小幅低下する可能性がある。2008 年のラマダンは 9 月だっ

たが、今年は 8 月から 9 月にまたがった。しかし、コモディティ価

格の上昇と旺盛な内需を反映して今後インフレ率は上昇する見通し

である。消費者のインフレ期待も 3カ月連続で上昇しており、現在 7カ月ぶりの高水準にある。ただし、通貨高により輸入インフレの転

嫁は限定的なものにとどまろう。燃料価格に歪みが生じており、大

統領が予算演説で補助金制度改革に言及したため、燃料価格が引き

上げられる可能性がある。全般に、2009 年のインフレ率は平均 7.9%と予想され、一時的に 9%前後に達する可能性もある。

2008 年 12 月に緩和に転じて以来、インドネシア中銀は政策金利を

合計 300bp引き下げており、現在 6.5%となっている。これがフルに

実体経済に反映されているわけではないが、追加利下げが行われて

もこの状態が改善されるわけではないため、中銀は利下げ以外の対

策を検討している(「内外要因」参照)。インドネシアは好成長を

維持しており(中銀は 2009 年の成長率が 3.5~4%の予想レンジの

上限に達すると予想、HSBC 予想は 4%)、インフレ圧力は上昇する

見込みであるため、追加利下げは難しい状況にある。さらに、イン

フレ期待の上昇を受け、中銀は今後の金融政策は将来的なインフレ

見通しを反映したものになるとの考えを示している。このため、

HSBC では引き続き今サイクルの金利の底を 6.5%と予想しており、

2010年 2Qと 3Qにそれぞれ 50bpの利上げが実施される見通しである。

景気と CPI 政策スタンス

0

2

4

6

8

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

02468101214

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-3

-2

-1

0

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma

)

0

5

10

15

20

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

Page 58: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 57

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インドネシア:チャート一覧 金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

02468

1012

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(%)

3M spread ov er US-Libor 12M spread ov er US-Libor

02468

1012

1yr 2yr 4yr 5yr 7yr 10yr 20yr

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

6,0007,0008,0009,000

10,00011,00012,00013,000

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009e0

10

20

30

40

50

(%)

IDR vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

60100140180220260300

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Grow th of nominal ex change rate v s USDCumulativ e CPI Cumulativ e PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

010203040506070

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

0

20

40

60

80

(% of reserves)

International reserv es, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserv es (RHS)

2010e

20072008

2011e 2009e

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

-2.0-1.5-1.0-0.50.0(central govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0

200

400

600

800

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

020040060080010001200

(spre

ad bp

s)

MSCI Indonesia sub-index (LHS)EMBI Indonesia sub-index (RHS)

0

300600900

120015001800

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spr

ead

bps)

Indonesia 5y r Gov t.EMBI Indonesia sub-index

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 58

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インドネシア:内外要因

消費者信頼感と借り入れ需要の増加により国内景気が下支えされる見通し。巨額の経常収支黒字が IDR を下支え。

消費者信頼感が大幅に改善… 金融緩和の効果は限定的…

消費者信頼感は 2008 年 7 月から改善しており、現在 4 年半ぶりの

高水準となる 115.4 に達している。この水準は長期平均を 30%上

回っており、過去 高となった 2004 年 11 月は 120.4 だった。イン

ドネシアの成長率が近隣諸国を上回っていること、燃料価格引き

下げ、物価上昇圧力の緩和、大統領選でユドヨノ氏が圧倒的な勝

利を収めたことなどが信頼感の改善につながっている。ユドヨノ

氏再選により経済政策運営の継続性が保たれ、同氏が 1 期目に着

手した汚職対策も継続されることになる。消費者信頼感の著しい

改善により、経済成長の 1 つの原動力である個人消費が下支えさ

れよう。

中銀はこれまでに 300bp の利下げを実施しているが、実体経済へ

の波及効果は小さく、銀行の資金コストが高止まりしているため

貸出金利の低下幅は 120bp 前後にとどまっている。貸出金利の一

段の引き下げを目指し、中銀は 9 月 1 日以降、預金金利の上限を

政策金利+150bp(すなわち 8%)とし、12 月 1 日からは上乗せ幅

をさらに 50bp に縮小(すなわち 7%)することを発表した。中小

行はこの規制の対象外とされているが、上限設定を受け質への逃

避が生じ、一部の銀行では流動性の逼迫が深刻化する可能性があ

る。また、預金者が株式など他の資産に資金をシフトさせる可能

性があるため、預金の伸びが鈍化する公算もあり、借り入れ需要

が大幅に拡大した場合、問題が生じる可能性がある。

…今後消費は堅調に推移する見通し …中銀は追加策を検討

50

70

90

1 10

1 30

01 0 2 03 0 4 05 06 0 7 08 0 9C on sum e r co nfiden ce ind ex Av e ra ge

57

91113

1517

05 06 07 08 09Policy rate Lending rate Deposit rate

経常黒字が拡大しているが… 借り入れ需要が急増…

インドネシアの 2009 年前半の輸入は輸出を上回るペースで減少し

たため、対外収支が改善した。貿易黒字は前年同期比 20%拡大

し、160 億米ドル近くに達した。この間、経常黒字は 60 億米ドル

と、3 倍に急増した。これが通貨高要因となり、世界的なリスクア

ペタイトの拡大も貢献して、インドネシアルピアは大幅に上昇し

た。中間財を中心に内需が好調であることを踏まえると、今後輸

入は輸出を上回るペースで増加する見通しで、貿易黒字はすでに

ピークアウトしたとみられる。資本収支については、予想通り対

内直接投資が鈍化しており、本格的な拡大に転じるのはまだ先と

なる公算が大きい。

ここ 6 カ月、貸出の伸びが鈍化しており、2008 年 12 月の前年比

36%をピークに 2009 年 6 月はおよそ 22%に低下した。しかし他ア

ジア諸国と比較すると依然として順調に拡大しており、見通しも

良好だ。まず、直近の銀行融資調査によると、新規借り入れ需要

は昨年 12 月~2009 年 3 月まで低迷した後、2Q に入り急増してい

る。この調査結果は実際の貸出の伸びに 2~3 四半期先行する傾向

にあり、両者の相関係数は 0.60 である。第 2 に、域内貿易が回復

しているため、輸出企業の借り入れ需要が回復する見通しであ

り、また政府支出の拡大により景気が下支えされ、借り入れ需要

も拡大することになろう。

対内直接投資は鈍化 …一定のタイムラグを置いて貸出の伸びが上昇する見込み

-4-202468

10

04 05 06 07 08 09

USD

bn

C u rren t a/ c T rad e a/ c F DI

020

4060

801 00

01 0 2 0 3 0 4 05 06 07 0 8 0 9

0

1 0

2 0

3 0

4 0

N e w loa n de m and s urv ey Cred it y -o-y (R HS )

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 59

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

インドネシア:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 5.0 5.7 5.5 6.3 6.1 4.3 5.8 5.5 名目 GDP (USDbn) 256.9 285.6 364.4 432.0 517.4 518 688 796 1 人当たり GDP (USD) 1,188 1,300 1,635 1,914 2,264 2,226 2,931 3,358 民間消費 (% 前年比) 5.0 4.0 3.2 5.0 5.3 4.9 5.4 5.0 政府支出 (% 前年比) 4.0 6.6 9.6 3.9 10.4 12.8 2.5 2.3 投資 (% 前年比) 14.7 10.9 2.6 9.4 11.7 3.3 8.7 7.4 鉱工業生産 (% 前年比) 6.4 4.6 4.6 4.7 3.7 1.6 6.3 4.7 国内総貯蓄 (% GDP) 24.9 27.5 28.7 28.1 30.6 29.8 30.4 30.8 失業率 (% 年末) 9.9 11.2 10.3 9.1 8.4 9.6 9.1 8.5

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 6.1 10.5 13.1 6.4 10.2 5.3 7.9 7.0 CPI, 年末 (% 前年比) 6.4 17.1 6.6 6.6 11.1 5.5 8.0 6.4 PPI, 年末 (% 前年比) 8.9 24.4 6.6 21.9 9.7 10.0 10.0 0.0 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 16.4 8.5 6.3 5.1 10.0 6.0 8.0 8.0

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 7.4 12.4 15.5 15.9 16.1 15.3 16.0 15.5 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 17.2 18.9 1.1 15.0 19.6 9.5 8.0 12.0 3 カ月 SBI 金利, 年末 (%) 7.3 12.8 9.5 7.8 12.0 6.9 8.1 8.1 5 年利回り, 年末 (%) 10.1 13.3 9.4 9.2 11.8 9.2 10.8 11.9 IDR/USD, 年末 9,270 9,830 8,994 9,400 11,325 9,500 8,800 8,800 IDR/USD, 平均 8,933 9,705 9,166 9,143 9,575 10,585 9,063 8,800 IDR/EUR, 年末 12,607 11,595 11,860 13,724 15,742 14,250 13,200 13,200 IDR/EUR, 平均 11,336 12,083 11,519 12,708 13,944 15,313 13,594 13,200

対外部門

商品輸出 (USDbn) 70.8 87.0 103.5 118.0 139.6 110.6 120.0 130.7 商品輸入 (USDbn) 50.6 69.5 73.9 85.3 116.7 81.4 90.6 99.9 貿易収支 (USDbn) 20.2 17.5 29.7 32.8 22.9 29.3 29.3 30.9 経常収支 (USDbn) 1.6 0.3 10.9 10.5 0.3 7.8 1.6 5.3 経常収支 (% GDP) 0.6 0.1 3.0 2.4 0.1 1.5 0.2 0.7 純対内直接投資 (USDbn) -1.5 5.3 2.2 2.3 2.8 1.5 2.5 2.5 純対内直接投資 (% GDP) -0.6 1.8 0.6 0.5 0.5 0.3 0.4 0.3 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 0.0 1.9 3.6 3.0 0.6 1.8 0.7 1.2 輸出 (% 前年比) 10.4 22.9 19.0 14.0 18.3 -20.7 8.4 9.0 輸入 (% 前年比) 28.0 37.2 6.3 15.4 36.9 -30.3 11.4 10.2 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 36.3 34.7 42.6 56.9 51.6 60.5 60.1 64.6 輸入カバー月数 8.6 6.0 6.9 8.0 5.3 8.9 8.0 7.8

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 2.0 6.4 3.9 -0.7 4.0 2.0 2.0 3.0 対外債務総額 (USDbn) 137.0 130.7 128.7 136.6 149.1 145.8 147.8 152.0 短期対外債務 (外貨準備%) 47.1 53.9 47.0 50.2 53.8 43.0 44.9 44.9 民間対外債務 (USDbn) 54.3 50.6 52.9 56.0 62.6 59.8 60.8 62.0 政府財政収支 (% GDP) -1.0 -0.5 -0.9 -1.3 -0.1 -1.9 -1.6 -1.0 プライマリーバランス (% GDP) 1.7 1.8 1.5 0.8 1.7 -0.9 -0.2 1.1

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 60

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

韓国:概況

2Q に GDP 成長率が急回復しており、先行指標は鉱工業生産の一段の増加を示唆。このため主要政策金利の引き上げ余

地が生じている。輸出は前期比で増加。

Song-yi Kim – + 852 2822 4870 [email protected]

韓国経済は急回復

韓国は景気後退から脱したもようで、2Q の GDP 成長率は前期比

+2.6%となり、7 月も鉱工業生産とサービス業界の拡大が続い

た。2Q の GDP 成長率は年率-2.2%となったが、1Q の-4.2%か

ら改善しており、3Q はプラス成長が見込まれる。予想を上回る

経済成長は内需の回復を裏付けるものと言え、2Q の民間消費は

前期比+3.6%、設備投資は同+10.1%に達した。直近の景気先行

指数は、一段の回復を示唆している。また、不動産市場の回復を

示唆する兆候も多い。今年前半の政府支出主導の建設ラッシュに

続いて、民間建設にも一時的な回復の兆しがみられる。

韓国の 2009 年の成長率予想を-2.3%から-0.4%に、2010 年は+

3.6%から+4.6%に上方修正した。特に注目される点は、雇用が

小幅だが拡大していることで、これに伴いここ数カ月、失業率が

低下している。消費の回復により失業率の上昇に歯止めがかかっ

ている。また、輸出の前期比ベースの回復と政府の支援策も製造

企業による雇用の維持につながっている。輸出の低迷が続いてお

り、例年好調な 7-9 月も前年比 20%減となったが、原材料価格の

低下と通貨安により売上高と利益が押し上げられているため、企

業部門は黒字を維持している。前期比ベースでの成長率は鈍化す

る可能性があるが、今後年末にかけて V 字型の力強い回復が見込

まれる。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 3.1 -3.4 -4.2 -2.2 0.1 4.5 4.9 5.2 4.5 4.0 鉱工業生産 (前年比%) 5.6 -11.3 -15.5 -6.2 3.0 6.0 12.0 7.0 6.0 7.0 CPI (四半期末%、前年比) 5.1 4.1 3.9 2.0 2.4 2.6 2.8 3.0 3.4 3.2 PPI (四半期末%、前年比) 11.3 5.6 3.5 -3.1 -3.2 1.0 2.0 3.5 3.8 3.4 貿易収支 (% GDP) -1.5 2.3 4.6 8.9 7.7 -1.0 3.3 5.6 4.9 -0.9 経常収支 (% GDP) -3.7 3.5 4.8 6.6 4.9 -3.3 1.5 4.1 3.3 -2.8 外貨準備高 (USDbn) 239.7 201.2 206.3 231.7 251.1 248.4 252.8 263.8 274.6 267.8 政策金利, 四半期末(%) 5.2 3.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.5 2.7 3.0 3.0 5年利回り, 四半期末 (%) 5.8 4.3 3.8 3.9 4.9 5.0 5.3 5.3 5.5 5.5 KRW/USD, 四半期末 1,187 1,260 1,367 1,274 1,243 1,200 1,150 1,125 1,100 1,075 KRW/EUR, 四半期末 1,686 1,751 1,804 1,783 1,802 1,800 1,725 1,688 1,650 1,613

ウォン高を反映して CPI が鈍化 政府は 2010 年まで財政拡大策を維持することを約束

8 月の CPI は前月の 1.6%から 2.2%に急上昇した。4Q までに、

近のコモディティ価格の回復がヘッドライン CPI の上昇を促す可

能性がある。CPI の上昇は、原油価格の上昇と一部農産物価格の

季節的な上昇を反映したものである。コモディティ価格の上昇に

よる影響はウォン高により緩和されるため、インフレ懸念は存在

せず、消費者物価上昇率は中銀の目標レンジ(2.5~3.5%)内にと

どまる可能性がある。貿易財を中心にコアインフレ率の上昇圧力

も小さく、中銀にとって緩和バイアスの維持が可能となろう。さ

らに、成長の下振れリスクが極めて大きいため、輸出がリーマン

ショック前の 2008 年 9 月の水準に回復するまでは当面、利上げは

ないと思われる。

景気の縮小を 小限に抑えるために、財政・金融政策が大幅に緩

和されている。今年の予算案は大幅な赤字となっており、中銀は

合計 325bp の利下げを実施している。雇用削減を防ぐための政府

補助金制度と新規インフラプロジェクトを中心とした景気対策の

効果で、2009~2010 年の景気見通しは著しく改善している。ま

た、景気回復に伴って 2010~2011 年には税収増が期待できる。財

政面からの景気刺激策による内需の押し上げ効果が本格化するに

つれて、向こう 6 カ月以内に利上げが実施される見通しである。

政府支出の拡大が続く一方で景気回復は緩やかなものにとどまっ

ているため、2010 年の財政収支の均衡化は期待できず、政府の中

期財政計画に沿う形で 2013 年まで赤字が続く公算が大きい。

景気と CPI 政策スタンス

-20-16-12-8-4048

1216

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

0123456

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-101234

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

0123456

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 61

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

韓国:チャート一覧 金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

-2-1012345

1/06 5/06 9/06 1/07 5/07 9/07 1/08 5/08 9/08 1/09 5/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 2yr spread over US-Libor

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

3M 6M 1y r 2yr 3y r 5yr 10yr

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

9001,0001,1001,2001,3001,4001,5001,600

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 200720082009e

-551525354555

(%)

KRW v s USD (LHS) Annualised v olatility (RHS)

80

100

120

140

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate v s USDCumulativ e CPI Cumulativ e PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

050

100150200250300

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

0

20

40

60

80

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2010e

2007

2008

2011e

2009e

-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.5

-3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0(central govt balance % GDP)

(real

rate

s)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 62

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

韓国:内外要因

住宅価格が前期比で再び上昇し始めており、早期の利上げのきっかけになると同時に家計消費を下支えすることになる

が、依然としてピーク水準を下回る。

緩和的金融環境が消費を押し上げ 労働市場の悪化に歯止め

緩和的な金融環境を反映して不動産価格が急上昇しており、韓国

株式市場は年初来 50%上昇している。資産効果により民間消費が

押し上げられている。特に、ソウルの高級住宅地のマンション価

格の上昇を受け韓国中銀は資産価格の過熱に対する懸念を強めて

いる。株価と不動産価格は金融情勢にも影響を与えている。資産

価格の上昇は、実質的な緩和効果をもたらす。これは、家計と企

業のネットベースの資産状況の改善を促すうえ、銀行融資の担保

の価値が上昇するためである。韓国の不動産価格と株価は比較的

急速に 近の高値まで回復しているため、民間消費は引き続き好

調に推移する可能性が高い。

労働統計は、国内の雇用市場の改善を示している。8 月の雇用者

数は 2,362 万人、前年比 3,000 人増となった。特に、臨時雇用者の

削減に対する懸念は行き過ぎだったことが明らかになった。7 月

の関連法案の改正に伴い、臨時雇用者が正規雇用される可能性が

高まっている。輸出の伸びが低水準にとどまるなかで労働市場の

回復の兆しが出てきていることが注目される。雇用市場が安定化

すれば家計支出が一段と押し上げられることになろう。ただし、

労働市場環境を詳細に分析してみると、一見したほど状況は良好

ではないことが分かる。雇用増の大半は公共部門におけるもの

か、政府の補助金に支えられたものとなっている。

資産価格: 近の高値に向けて回復 雇用が増加傾向に

501 001 502 002 503 003 504 004 505 005 50

98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09024681 01 21 41 61 8

Seo ul a pa rtm en t pr ice s (1 998 =10 0)KOSP I (199 8=1 00 )91-da y C D ra te (rhs)

2345678

97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09-200 0-150 0-100 0-500050 010 0015 0020 00

C h ang e in e m ploy m ent from the p re v ious y ear (1 000 )U n em ploy m ent ra te sa

貿易黒字が減少 中銀は持ち家を担保とする融資の動向を注視

ここ数年、総輸出の 10%強を占めてきた船舶の出荷の伸び悩みの

影響で、8 月の輸出は前年比 21%減となった。10 月までは前年比

での増加は見込めないが、前月比ではすでに 5 カ月連続で増加し

ている。これには、消費財を中心とする中国向け輸出が貢献して

いる。8 月は 3 カ月ベースで輸入が前年比 13%増となった一方で

輸出は 9%増となっており、内需の回復と原材料価格の着実な上

昇を反映して輸入が増加しているため、貿易黒字は今後縮小する

公算が大きい。しかし、ウォン高により韓国企業の輸入コストは

抑制される見通しである。

6 月末の家計の借入残高は 697.75 兆ウォンとなり、前年比では+

5.7%と過去の水準からみて大幅に増加した。一方、2009 年前半

の可処分所得は 502.8 兆ウォンで、伸び率は 1970 年以来 低の

0.2%にとどまった。住宅を担保とするローンが家計の総負債の約

半分を占めた。その 8 月末の残高は 341.4 兆ウォンで、8 月だけで

4.2 兆ウォン増加した。政府は不動産バブルを回避するために住

宅を担保とするローンの規制策を導入したが、家計負債額は高止

まりしている。これが銀行セクターの不安定化を招く可能性は低

いが、負債比率の上昇は消費の伸びを圧迫することになる。

輸出と輸入が前月比で回復 不動産価格の上昇に伴い住宅ローンが増加

-40

-30-20

-10

0

10

20

Au g-97 Aug -9 9 Au g-01 Aug -0 3 Au g-05 Aug -0 7 Au g-09im po rts 3m / 3m sa % ex p or ts 3m / 3m % s a

0

5

10

15

01 02 03 04 05 06 07 08 09

-10

-5

0

5

10

15

HH loans 3m/3m s a mortgage loans 3m/3m s agangnam 3m/3m s a

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 63

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

韓国:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 4.6 4.0 5.2 5.1 2.2 -0.4 4.6 4.9 名目 GDP (USDbn) 693.1 790.8 890.1 970.7 947.4 824.6 997.3 1,107.0 1 人当たり GDP (USD) 14,428 16,428 18,430 20,033 19,494 16,924 20,428 22,629 民間消費 (% 前年比) 0.3 4.6 4.7 5.1 0.9 -0.5 3.2 3.5 政府支出 (% 前年比) 3.8 4.3 6.6 5.4 4.2 4.4 1.8 3.3 投資 (% 前年比) 2.1 1.9 3.4 4.2 -1.7 -2.0 4.3 5.5 鉱工業生産 (% 前年比) 10.4 6.3 8.4 6.9 3.1 -3.4 7.8 8.5 国内総貯蓄 (% GDP) 35.0 33.2 31.5 30.8 37.6 38.5 41.2 43.8 失業率 (% 年末) 3.8 3.5 3.3 3.1 3.3 3.8 3.4 3.2

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 3.6 2.8 2.2 2.5 4.7 2.8 3.1 3.2 CPI, 年末 (% 前年比) 3.0 2.6 2.1 3.6 4.1 2.6 3.2 3.4 PPI, 年末 (% 前年比) 5.3 1.5 0.3 3.6 5.6 1.0 3.4 3.6 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 9.9 7.8 5.6 6.9 3.7 2.3 4.3 5.5

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 6.1 7.0 8.2 10.3 11.6 8.0 9.0 11.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 1.5 5.8 11.7 12.4 9.4 4.2 4.9 4.8 政策金利, 年末 (%) 3.3 3.8 4.5 5.0 3.0 2.0 3.0 3.3 5 年利回り, 年末 (%) 3.3 5.0 4.8 5.6 4.3 5.0 5.5 6.0 KRW/USD, 年末 1,035 1,008 930 936 1,260 1,200 1,075 1,050 KRW/USD, 平均 1,124 1,025 953 928 1,081 1,268 1,128 1,100 KRW/EUR, 年末 1,411 1,189 1,226 1,367 1,751 1,800 1,688 1,575 KRW/EUR, 平均 1,302 1,276 1,197 1,290 1,574 1,834 1,692 1,650

対外部門

商品輸出 (USDbn) 257.7 289.0 331.8 379.0 433.4 360.3 398.0 447.9 商品輸入 (USDbn) 220.1 256.3 303.9 350.9 427.4 320.1 365.2 414.8 貿易収支 (USDbn) 37.6 32.7 27.9 28.2 6.0 40.2 32.7 33.1 経常収支 (USDbn) 28.2 15.0 5.4 5.9 -6.4 25.8 15.7 14.5 経常収支 (% GDP) 4.1 1.9 0.6 0.6 -0.7 3.0 1.4 1.2 純対内直接投資 (USDbn) 4.6 2.0 -4.5 -13.8 -10.6 -1.0 -4.0 -4.0 純対内直接投資 (% GDP) 0.7 0.3 -0.5 -1.4 -1.1 -0.1 -0.4 -0.4 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 4.7 2.1 0.1 -0.8 -1.8 2.9 1.0 0.8 輸出 (% 前年比) 30.6 12.1 14.8 14.2 14.3 -17.7 10.5 12.5 輸入 (% 前年比) 25.6 16.4 18.6 15.4 21.8 -24.8 14.1 13.6 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 199.1 210.4 239.0 262.2 201.2 245.3 263.3 279.8 輸入カバー月数 10.9 9.9 9.4 9.0 5.6 9.2 8.6 8.1

公的・対外債務ソルベンシー指標

対外債務総額 (USDbn) 172.3 187.9 260.1 383.2 381.1 350.0 335.0 330.0 短期対外債務 (外貨準備%) 28.3 31.3 47.6 61.1 75.1 63.9 50.4 46.5 民間対外債務 (USDbn) 155.9 172.3 240.2 329.5 329.9 252.4 224.4 207.0 政府財政収支 (% GDP) 0.7 0.4 0.4 3.8 1.2 -2.6 -1.8 -1.4 プライマリーバランス (% GDP) 1.8 1.7 1.9 5.2 2.6 -1.0 -0.2 0.2 公的部門対内債務総額 (KRWbn) 159,991.0 227,055.0 262,369.0 278,790.0 288,720.0 334,084.8 378,918.1 421,258.4 公的部門対内債務総額 (% GDP) 20.5 28.0 30.9 30.9 28.2 32.0 33.7 34.6 公的部門対外債務総額 (USDbn) 16.4 15.5 19.9 53.6 51.2 97.6 110.6 123.0 公的部門対外債務総額 (% GDP) 2.4 2.0 2.2 5.5 5.4 11.8 11.1 11.1 公的部門債務総額 (% GDP) 22.9 30.0 33.2 36.5 33.6 43.79 44.77 45.71

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 64

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

マレーシア:概況

景気が回復し始めており、金融・財政緩和策の効果の本格化と貿易の回復に伴い回復ペースが加速する見込み。中銀が

早期利上げに動く可能性は薄い。

Robert Prior-Wandesforde: +65 62 390 840 [email protected]

持続的な力強い回復が実現か

マレーシア経済は 2009 年 2Q に急回復し、前期比年率 17%の成

長率を記録した。景気先行指数の大幅な上昇、消費者信頼感の大

幅な改善を考慮すると、2Q の回復は一時的なものではない可能

性が高い。また、財政・金融面からの景気刺激策による実体経済

の浮揚効果は今後本格化する見込みで、さらに輸出が GDP のお

よそ 120%に相当するマレーシアはアジアおよび世界の貿易の回

復により大きなメリットを享受する。比較的高水準のパーム油価

格とゴム価格が農業セクターを下支えする見通しで、さらに規制

緩和策の効果がいずれ表面化して GDP に占める投資の割合が増

加することが期待される。全般に、マレーシア経済は持続的な V字型の回復を示す公算が大きく、HSBC ではコンセンサス予想を

上回る成長率予想をさらに引き上げた。

年初の著しい低迷の影響で、2009 年通年の GDP はなお縮小傾向

にあるが、その幅は 2%に過ぎず、2010 年には 7%近いプラス成

長が予想される。当社の予想通りとなった場合、2010 年には失業

率が低下し始め、不動産市場が押し上げられよう。ただし、その

道のりは平たんではない。インフレ率は今後急上昇する可能性が

高く、マレーシア中銀(BNM)は現在 2%に維持されている政策

金利の引き上げ時期を巡り難しい決断を迫られることになろう。

また、10 月に発表される予算案に盛り込まれる巨額の財政赤字へ

の政府の対応策と改革の継続の可否も注目材料である。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 4.8 0.1 -6.2 -3.9 -1.3 3.3 9.8 7.3 5.6 5.0 鉱工業生産 (前年比%) 1.8 -8.8 -17.9 -14.5 -7.0 0.0 4.0 7.0 9.0 10.0 CPI (四半期末%、前年比) 8.2 4.4 3.5 -1.4 -1.8 1.8 3.1 3.5 3.4 2.7 PPI (四半期末%、前年比) 8.7 -3.4 -8.9 -12.2 -3.5 3.5 6.5 7.5 6.5 11.5 貿易収支 (% GDP) 25.1 21.9 23.8 22.6 19.1 18.5 18.4 21.2 17.8 17.1 経常収支 (% GDP) 19.5 16.7 20.2 17.4 13.1 12.0 13.9 16.2 11.7 10.3 外貨準備高 (USDbn) 110.3 92.0 87.9 91.7 91.1 84.9 85.5 87.5 87.0 82.5 政策金利, 四半期末(%) 3.5 3.3 2.0 2.1 2.0 2.0 2.0 2.0 2.2 2.5 5年利回り, 四半期末 (%) 4.1 3.0 3.5 3.9 3.9 4.0 4.0 4.0 4.3 4.5 MYR/USD, 四半期末 3.44 3.45 3.65 3.52 3.50 3.50 3.50 3.50 3.48 3.46 MYR/EUR, 四半期末 4.88 4.80 4.82 4.93 5.08 5.25 5.25 5.25 5.22 5.19

デフレからインフレへ 利上げの時期は?

昨年の燃料価格引き上げとその他のコモディティ価格の上昇を反

映した価格引き上げによる影響が解消し、コモディティ価格も低

下しているため、ヘッドライン CPI 上昇率は-2.4%に低下してい

る。これは、労働市場が悪化するなか、実質個人所得を下支えす

るため、“良き”デフレと言える。しかし、インフレ率は底を打

った模様で、コモディティ価格が上昇に転じているため、今後上

昇する公算が大きい。現在のコモディティ価格に基づくと、今

後、ヘッドライン CPI 上昇率は 2010 年中盤までに 3.5%に達する

見通しである。これに対して、1986 年以降の長期平均は 2.8%であ

る。景気後退の遅行効果を反映して、食品とエネルギーを除くコ

アインフレ率は 1~2%にとどまる見込みである。労働市場、製品

市場ともに余剰能力は豊富である。

昨年、BNM はアジアの主要中銀の中では唯一利上げを見送り、コ

モディティ価格主導のインフレ率の急上昇の先に照準を合わせた

政策判断を行った。ヘッドライン CPI 上昇率が 1980 年代中盤以降

高の 8.5%に上昇する局面において、これは大胆な政策判断だっ

たと言える。個人消費も昨年前半は極めて好調で、コアインフレ

率の 2 次的な押し上げ効果が生じるリスクがあった。 終的に、

世界的な景気後退によりその可能性は消えた。昨年に比べると小

幅にとどまるとは言え、今年 12 月と 2010 年前半にはヘッドライ

ンインフレ率が上昇する見通しで、持続的な景気回復が予想され

る。BNM が利上げを急ぐとは考えにくいが、政策金利が低水準に

とどまっているため、2010 年に小幅(50bp)の利上げに動くと予

想される。

景気と CPI 政策スタンス

-20-16-12

-8-4048

12

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

-3

0

3

6

9

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial grow th (LHS) CPI (RHS)

-9

-6

-3

0

3Q06 2Q07 1Q08 4Q08 3Q09e 2Q10e

(% G

DP, 4

qma)

-3

0

3

6

9

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 65

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

マレーシア:チャート一覧 金利スプレッド(対 USD Libor) イールドカーブ

-2.5

-1.5

-0.5

0.5

1.5

2.5

6/05 10/05 3/06 7/06 11/064/07 8/0712/074/08 9/08 1/09 5/09

(%)

3M spread over US-Libor 2yr spread over US-Libor

-2.5

-0.5

1.5

3.5

1y r 2y r 3y r 5y r 7y r 10y r 15y r

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

2.602.803.003.203.403.603.804.00

2005 2006 2007 2009e 2009e

-11357911

(%)

MYR vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

75

100

125

150

175

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

020406080

100120140

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

10

15

20

25

30

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2009e

2010e

2008

2007

2011e

-1.5

-0.5

0.5

1.5

-9.0-8.0-7.0-6.0-5.0-4.0-3.0-2.0(central govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0

100

200

300

400

500

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0100200300400500600

(spre

ad bp

s)

MSCI Malaysia sub-index (LHS)EMBI Malaysia sub-index (RHS)

-200-100

0100200300400500

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spre

ad b

ps)

Malay sia 5yr Govt. EMBI Malays ia sub-index

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 66

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

マレーシア:内外要因

パーム油価格の回復も貢献して個人消費は急回復する見込み。財政赤字が懸念材料であり、構造的な解決策が不可欠。

消費は V 字型回復か 財政問題

2008 年後半から 2009 年初頭にかけて、輸出だけではなく個人消費

も著しく低迷した。マレーシアの個人消費は 2008 年 1Q の前年比

+11.3%から 2009 年 1Q には-0.7%に急速に冷え込んだ。下図に

示すように消費者信頼感の悪化ペースはさらに急激で、1980 年代

後半の調査開始以来 低の水準に落ち込んだ。しかし、マレーシ

アの個人消費は世界危機が本格化する前の 2008 年 2Q に底入れし

ており、国内要因が大きく影響した可能性が高い。その 大の理

由として考えられるのは、2008 年 6 月の燃料価格引き上げであ

る。 近、消費者信頼感は大幅に改善しており、民間消費の力強

い回復が期待される。近い将来、個人消費は再び 8%の伸びを記

録する可能性もある。

マレーシアの公共部門財政は景気後退に入る前から弱体化してい

たが、景気の低迷と景気対策のための財政出動を受け一段と悪化

する結果となった。2009 年半ばの時点で財政赤字は GDP 比 6.5%に達しており、今後赤字は一段と膨らむ公算が大きい。HSBC で

は 2009 年末に赤字は 2003 年半ばの水準をわずかに上回る GDP 比

8.5%に達すると予想している。HSBC の成長率予想が正しけれ

ば、その後財政赤字は急速に縮小する見込みだが、2011 年の時点

でも GDP 比 4%前後となる可能性がある。マレーシアの財政収支

はアジア諸国の中で も悪化しており、赤字の維持可能な水準へ

の削減には構造的な対策が不可欠である。

消費者信頼感は消費の力強い回復を示唆 赤字削減が急務

708090

1 001 101 201 30

0 0 0 0 0 1 0 2 03 03 04 05 06 06 0 7 0 8 0 9

-8-40481 21 62 0

C o ns um er C onf. (LH S) C o nsu m ption (R HS)

I nde x % Y rM a lay s ia

-10

-8

-6

-4

-2

000 01 0 2 03 0 4 05 0 6 07 08 0 9 10 1 1

Bud get ba la nce% G DP

F'cst

対内直接投資 コモディティ価格と景気動向

2009 年 2Q の対内直接投資はわずか 8 億 6,300 万米ドルだった。3億 4,400 万米ドルにとどまった 2008 年 3Q を除き、これは 6 年余ぶ

りの低水準となる。2009 年前半の対内直接投資は前年比 80%強減

少した。世界的な景気後退を考えれば大幅な減少は不可避であ

り、マレーシア政府は今後の急速かつ大幅な改善を期待している

ようである。実際、対内直接投資が期待通り回復する可能性は高

い。先に首相が発表したサービス業の自由化策(首相はいずれ他

の分野にも対象を広げることを約束)は、政策の重要かつ前向き

な方向転換を意味する。また、タイ政局の混乱により投資家の関

心がマレーシアに向かう可能性もある。

マレーシア経済にとって引き続きパーム油とゴムの重要性は大き

く、この 2 品目が貿易財輸出のおよそ 10%を占めており(ゴムと

パーム油ではパーム油の重要性の方がはるかに高い)、雇用と所得

に占める割合も大きい。下図に示すように、この 2 品目の価格は

ここ 1、2 年乱高下しており、2007 年から 2008 年前半に急騰した

後、2008 年後半から 2009 年初頭にかけて急落した。その後、再び

回復傾向にあり、依然として直近の高値を大きく下回るとは言

え、長期平均の 2 倍近い水準にある。現在の価格水準では、農家

はかなりの利益を手にしているとみられ、消費の押し上げ効果が

期待される。

対内直接投資が急減、どの程度回復するか? パーム油価格とゴム価格が再び上昇傾向に

-20 0

-10 0

0

10 0

20 0

0 0 0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9

F DI o utflo w F D I inflow

R M B b n

0

1 000

2 000

3 000

4 000

8 3 8 5 8 7 8 9 91 93 95 9 7 9 9 01 03 05 07 090

24

6

8

1 0

1 2

Pal m oi l p ric e (L H S) R u bb e r pr ice ( R HS )

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 67

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

マレーシア:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用 GDP 成長率 (% 前年比) 7.3 5.3 5.8 6.2 4.6 -2.0 6.8 5.5 名目 GDP (USDbn) 124.7 137.9 156.3 186.3 222.5 195.1 218 222 1 人当たり GDP (USD) 4,877 5,276 5,581 6,857 8,025 6,893 7,330 7,174 民間消費 (% 前年比) 10.5 9.1 6.8 10.4 8.5 2.5 5.6 5.0 政府支出 (% 前年比) 6.0 6.5 5.0 6.5 10.9 2.1 1.0 1.0 投資 (% 前年比) 3.1 5.0 7.5 9.6 0.8 -7.5 4.1 7.0 鉱工業生産 (% 前年比) 11.3 5.2 6.7 3.1 1.4 -9.9 7.5 6.5 国内総貯蓄 (% GDP) 44.0 43.5 43.4 46.1 49.1 44.3 47.1 44.9 失業率 (% 年末) 3.3 3.8 3.0 3.0 3.1 4.0 3.5 3.2

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 1.4 3.0 3.6 2.0 5.4 0.8 3.3 2.5 CPI, 年末 (% 前年比) 2.2 3.3 3.1 2.4 4.4 1.8 2.7 2.5 PPI, 年末 (% 前年比) 3.4 9.9 4.9 10.8 -3.4 3.5 11.5 2.0 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 3.4 3.9 10.1 7.3 0.5 2.0 4.0 3.5

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 10.5 11.7 8.6 12.7 12.5 7.0 9.7 11.5 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 4.6 5.8 4.2 6.1 4.9 7.0 5.0 4.0 政策金利, 年末 (%) 2.7 3.0 3.5 3.5 3.3 2.0 2.5 2.7 5 年利回り, 年末 (%) 3.6 3.7 3.7 3.8 3.0 4.0 4.5 4.8 MYR/USD, 年末 3.80 3.78 3.53 3.31 3.45 3.50 3.46 3.42 MYR/USD, 平均 3.80 3.79 3.67 3.43 3.32 3.54 3.49 3.43 MYR/EUR, 年末 5.16 4.46 4.65 4.83 4.80 5.25 5.19 5.13 MYR/EUR, 平均 4.79 4.72 4.62 4.77 4.83 5.12 5.24 5.15

対外部門

商品輸出 (USDbn) 126.8 142.3 160.6 176.5 200.1 165.3 181.6 202.1 商品輸入 (USDbn) 99.2 108.3 123.2 139.3 148.7 124.6 141.2 159.4 貿易収支 (USDbn) 27.6 34.0 37.4 37.2 51.4 40.7 40.5 42.8 経常収支 (USDbn) 15.1 20.7 25.4 29.2 38.8 30.1 28.1 29.3 経常収支 (% GDP) 12.1 15.0 16.3 15.7 17.4 15.4 12.9 13.2 純対内直接投資 (USDbn) 2.6 1.0 0.0 -2.7 -7.8 0.1 0.6 2.3 純対内直接投資 (% GDP) 2.1 0.7 0.0 -1.4 -3.5 0.0 0.3 1.1 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 14.1 15.7 16.3 14.2 13.9 15.4 13.2 15.4 輸出 (% 前年比) 21.1 11.9 9.4 2.7 9.6 -12.0 8.5 9.4 輸入 (% 前年比) 25.6 8.9 10.3 5.6 3.2 -10.8 11.8 10.9 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 66.2 70.2 82.3 101.5 120.2 84.9 82.5 84.0 輸入カバー月数 8.0 7.8 8.0 8.7 9.7 8.2 7.0 6.3

公的・対外債務ソルベンシー指標

対外債務総額 (USDbn) 52.8 53.1 56.0 55.8 54.3 50.0 52.0 55.0 短期対外債務 (外貨準備%) 17.5 16.5 16.2 12.7 13.1 14.3 16.4 17.5 民間対外債務 (USDbn) 27.1 29.1 31.0 29.8 27.3 25.0 23.0 28.0 政府財政収支 (% GDP) -4.1 -3.6 -3.3 -3.2 -4.8 -8.5 -5.8 -4.0 プライマリーバランス (% GDP) -1.9 -1.4 -1.2 -2.2 -3.5 -7.5 -4.0 -2.0 公的部門対内債務総額 (MYRbn) 182.0 198.7 217.2 247.1 286.1 330.0 360.0 370.0 公的部門対内債務総額 (% GDP) 38.4 38.0 37.8 38.6 38.7 47.7 47.3 48.6 公的部門対外債務総額 (USDbn) 25.7 24.0 25.0 26.0 27.0 25.0 29.0 27.0 公的部門対外債務総額 (% GDP) 20.6 17.4 16.0 14.0 12.1 12.8 13.3 12.2 公的部門債務総額 (% GDP) 59.0 55.4 53.8 52.6 50.9 60.5 60.6 60.8

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 68

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

フィリピン:概況

緩やかな回復基調にあるが、政府支出拡大と歳入の減少により財政収支見通しは悪化する見込み。

Frederic Neumann: +85 22 822 4556 [email protected]

景気は回復傾向にあるが財政収支の悪化が懸念材料 民間消費、輸出、投資の落ち込みに伴い、今年初めにフィリピン

経済の成長がストップした。しかし、域内景気の回復を反映し

て、ここ数カ月回復傾向にある。特に注目されるのは海外からの

本国送金が堅調なことで、フィリピン経済全体の成長を下支えし

ている。今年初め、HSBC では本国送金の減少を予想していたが、

実際には中東からの送金の拡大をけん引役に増加が続いた。これ

にインフレ圧力の鈍化が加わり、個人消費が持ち直している。家

計支出の本格的な回復は年末以降になるとみられるものの、消費

が安定化するにつれて建設も回復に転じる見込みで、住宅ローン

の増加が続いていることを踏まえると、向こう数四半期に不動産

ブームが到来する可能性もある。

全般的にみて、貸出の伸びは鈍化しているとは言えプラスを維持し

ており、銀行システムの流動性が潤沢であることを示唆してい

る。インフレ圧力が抑制されているため、これまで中銀は政策金利

を低水準に維持しており、今後も当面、4%に据え置く見通しであ

る。ただし、今後、インフレ圧力が台頭する見込みで、ヘッドラ

インインフレ率は 2010 年末に政府目標を突破する見通しである。

このため、HSBC では 2010 年に 75bp の利上げを予想しており、

初の利上げは 2Q に実施される見込みである。成長率は、特に海外

からの本国送金の増加傾向が続いた場合、予想を上回る可能性が

ある。1 つのリスクは、特に 2010 年 2Q の大統領選挙を控え財政赤

字の拡大が続くことだが、景気の回復傾向は維持されよう。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 4.6 2.9 0.6 1.5 1.9 3.0 4.7 4.9 4.4 2.8

鉱工業生産 (前年比%) 5.4 3.4 -7.6 -7.2 -1.0 2.0 1.0 1.0 2.0 2.0 CPI (四半期末%、前年比) 11.8 8.0 6.4 1.5 0.3 3.5 3.6 5.3 5.5 5.7 PPI (四半期末%、前年比) 6.5 7.3 0.9 -1.6 2.0 3.0 3.0 3.5 3.7 4.8 貿易収支 (% GDP) -10.4 -5.0 -5.8 -6.4 -10.4 -7.6 -6.2 -7.0 -10.8 -7.9 経常収支 (% GDP) -1.1 4.9 5.3 5.3 1.4 3.0 6.6 5.1 0.2 2.1 外貨準備高 (USDbn) 36.6 37.4 38.9 39.4 38.5 38.5 40.3 42.9 43.4 45.0 政策金利, 四半期末(%) 6.0 5.5 4.7 4.3 4.0 4.0 4.0 4.3 4.5 4.7 5年利回り, 四半期末 (%) 7.6 6.6 6.3 6.2 7.3 7.3 7.5 7.5 7.5 7.5 PHP/USD, 四半期末 47.10 47.40 48.40 48.40 48.40 46.00 45.50 45.00 44.50 43.50 PHP/EUR, 四半期末 66.88 65.89 63.89 67.76 70.18 69.00 68.25 67.50 66.75 65.25

インフレ率はサイクルの 低値、2010 年末に目標値を割り込む見込み

2010 年 2Q までは引き締めはなし

ここ数カ月、インフレ率は金融当局が望ましいとしている景気刺

激効果を発揮している。また、失業率の上昇により圧迫されてい

る国内消費を下支えしている。8 月のヘッドライン CPI 上昇率(前

年比)は過去 低の 0.1%に低下した。しかし、インフレ率は底入

れした可能性があり、ヘッドライン CPI はコモディティ価格の上

昇圧力が広がる一方でベース効果が解消するにつれて、上昇し始

める見通しである。ただし、余剰生産能力を反映してコアインフ

レ率の低下傾向が続くため、2010 年前半まではインフレ率の上昇

ペースは緩やかなものにとどまる見込みである。HSBC では 2009年の CPI 上昇率を前年比+3.2%、2010 年は同 4.8%と予想してお

り、いずれも中銀の目標圏内にとどまる見込みである。しかし、

2010 年末にかけて目標レンジを突破する見通しである。

2008 年 11 月以降、フィリピン中銀は景気浮揚を目的に主要な金融

政策手段を総動員しており、政策金利の 200bp の引き下げ、預金

準備率の 19%への 2 ポイントの引き下げ、ドルのレポ取引の開

始、フィリピンペソの再割引枠の引き上げなどを実施した。しか

し、緩和局面は終焉を迎えつつある。インフレ圧力の増大懸念か

ら中銀は前回の政策委員会で政策金利を 4%に据え置いた。主要経

済指標の低迷が続いているため、年内の金融引き締めの可能性は

ないが、2010 年 2Q に予定されている選挙までまだ間があるた

め、当局がインフレ抑制を図り、中立的な金融政策スタンスに戻

るに従い、利上げが続く見通しである。

景気と CPI 政策スタンス

0

2

4

6

8

4Q07 2Q08e 4Q08e 2Q09e 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

0

5

10

15

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-5-4-3-2-10

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08e 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

0246810

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y-o-y (RHS)

Page 70: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 69

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

フィリピン:チャート一覧 金利スプレッド(対 USD Libor) イールドカーブ

-2

0

2

4

6

8

1/05 5/059/051/065/069/06 1/075/079/07 1/085/089/08 1/095/099/09

(%)

3M spread over US-Libor 2yr spread over US-Libor

0

2

4

6

8

10

3M 6M 1YR 2YR 3YR 4YR 5YR 7YR 10YR

(%)

Now -4 months +4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

35

40

45

50

55

60

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 20082009e

05101520253035

(%)

PHP v s USD (LHS) Annualised v olatility (RHS)

050

100150200250

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

05

10152025303540

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

152535455565 (% of reserves)

International reserv es, IF I definition (LHS)Short-term debt % reserv es (RHS)

2010e

2007

2008

2011e

2009e

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

-5.0-4.0-3.0-2.0-1.00.01.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0

100

200

300

400

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0

200

400

600

800

1000

(spre

ad bp

s)

MS CI Ph ilipp ines s ub-index (LHS)EMBI Ph ilipp ines s ub-index (R HS)

0200400600800

1000

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spre

ad b

ps)

Philippines 5yr Govt.EMBI Philippines sub-index

Page 71: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 70

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

フィリピン:内外要因

海外からの本国送金が極めて堅調で、2009 年以降も増加傾向が続いて構造的な貿易赤字を相殺する見込み。

景気は回復傾向にあるが構造的なリスクは大きい 中東からの本国送金が大幅に増加

国際金融危機の影響でエレクトロニクス製品の出荷が急減した

2008 年 2Q 以降、輸出が低迷している。フィリピンでは輸出、輸

入ともに前例のないペースで減少しており、特に輸出の減少は大

規模な雇用削減につながっている。しかし、世界経済が回復に向

かうにつれて、極めて循環性の強いエレクトロニクス業界の見通

しが改善している。ただし、エレクトロニクスメーカー数社の破

たんにより輸出産業が構造的に弱体化している可能性があるた

め、急速な回復は期待できない。全般的にみて、輸出は 2010 年初

めから緩やかに回復する見通しである。しかし、原油高により輸

入が輸出を上回るペースで増加しているため、貿易赤字は高止ま

りする見込みである。

海外からの本国送金には国際金融危機や景気後退の影響はみられ

ず、減少予想に反して増加傾向にある。これは、フィリピン人の

海外労働者の 51%を雇用している中東における移民労働者に対す

る需要が旺盛なためと考えられる。原油価格の軟化にもかかわら

ず、サウジアラビアとアラブ首長国連邦からの本国送金は医療お

よび小売業界における堅調な労働需要を反映して増加傾向が続い

ている。フィリピン政府が日本など一部の海外労働者受け入れ国

と交わした 2 国間協定も移民労働者の雇用維持に貢献しており、

新規労働者や解雇された労働者の雇用促進につながっているよう

である。HSBC では、2009 年の本国送金が昨年の水準を上回ると

予想している。

輸出は回復軌道にあるが増加は小幅にとどまる見込み 海外からの本国送金が衰える兆しはみられず

0

0 .5

1

1 .5

2

Ju l-98 M ay -0 0 M a r-02 Ja n-04 Nov -0 5 S ep-07 Jul-09

-5 0-4 0-3 0-2 0-1 0010203040

US bo ok-to-bill ratio (lag ged b y 3 m onth s)Ex p orts % Yr, 3 m m a

0

5 00

1 ,0 00

1 ,5 00

2 ,0 00

Ja n-96 S ep-98 M ay -01 Ja n-04 Se p-06 M ay -09

USD

bn

R em itta nc es, sa

財政収支の悪化が深刻化 政府借り入れが民間部門の借り入れを抑制?

国際金融危機の影響で、政府の財政健全化策に遅れが生じてい

る。歳入が減少するなかでの財政出動に伴い、2009 年 1-8 月の財

政赤字は 2,100 億ペソに達した。フィリピンの 2009 年と 2010 年の

財政収支見通しは厳しく、景気の浮揚効果は期待できないため、

当面、歳入は低水準にとどまる見込みである。輸入の低迷と構造

的なボトルネックも歳入見通しの悪化につながっている。選挙が

近づくにつれて、政府にとって財政引き締めが難しくなる可能性

があり、2009 年の財政赤字は 2,970 億ペソ(GDP 比 3.8%)に達す

る公算もある。

フィリピンの銀行による貸出は 2008 年以降急ピッチで増加しお

り、国際金融危機による影響はほとんどみられない。このように

銀行貸出が大幅に拡大している 1 つの理由は、金融の再仲介、す

なわち株式・債券市場に対する圧力の高まりに伴い資本市場での

資金調達から銀行借り入れへのシフトが生じたことにある。しか

し、民間部門向け貸出の伸びは政府借入所要額が増加するにつれ

て鈍化し始めた。 近の統計によると、公共部門向け貸出は 2009年 7 月に過去 高の前年比 28%増に達した。今年の財政赤字は巨

額に達する見込みであり、引き続き公共部門借入所要額の増加に

より民間部門の借り入れのクラウディングアウトが生じる可能性

がある。

2009 年には財政政策が景気を圧迫 公共部門向け貸出の伸びが加速

-6

-4

-2

0

2

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

f

% o

f GDP

Cyclically neutral budget balance Actual budget balance

-6

-4

-2

0

2

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

2008

2010

f

% o

f GDP

Cyclically neutral budget balance Actual budget balance

-5

05

10

15

2025

Dec-02 Mar-04 Jun-05 Sep-06 Dec-07 Mar-09

% y-

o-y

-40

-20

0

20

40

% y-

o-y

Credit to private sector Credit to public sector

-5

05

10

15

2025

Dec-02 Mar-04 Jun-05 Sep-06 Dec-07 Mar-09

% y-

o-y

-40

-20

0

20

40

% y-

o-y

Credit to private sector Credit to public sector

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 71

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

フィリピン:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 6.4 5.0 5.3 7.1 3.8 1.8 4.2 4.7 名目 GDP (USDbn) 86.9 99.0 117.6 147.1 167.1 161.0 186.6 216.4 1 人当たり GDP (USD) 1,052 1,171 1,375 1,700 1,909 1,807 2,057 2,321 民間消費 (% 前年比) 5.9 4.8 5.5 5.8 4.7 2.4 3.7 5.2 政府支出 (% 前年比) 1.4 2.3 10.4 6.6 3.2 8.8 8.3 6.4 投資 (% 前年比) 1.3 -6.6 3.9 10.9 2.9 0.2 4.3 5.9 鉱工業生産 (% 前年比) 5.0 5.3 4.2 3.3 4.3 -3.2 1.5 1.6 国内総貯蓄 (% GDP) 21.2 21.0 20.1 20.8 19.2 13.8 13.0 11.7 失業率 (% 年末) 11.3 8.1 7.8 7.4 7.7 7.5 9.0 9.0

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 6.0 7.7 6.3 2.8 9.3 3.2 4.7 5.8 CPI, 年末 (% 前年比) 8.6 6.7 4.3 3.9 8.0 3.5 5.7 5.9 PPI, 年末 (% 前年比) 14.3 12.1 3.7 -3.0 7.3 3.0 4.8 2.5 製造業賃金, 名目* (% 前年比) 3.6 8.5 7.9 4.5 5.3 3.8 4.5 5.5

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 16.5 7.0 13.8 17.1 14.2 12.6 9.0 8.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) -3.7 -4.0 -2.3 2.7 10.0 9.1 3.0 2.2 政策金利, 年末 (%) 6.8 7.5 7.5 5.2 5.5 4.0 4.7 5.5 5 年利回り, 年末 (%) 12.9 9.6 6.0 5.7 6.6 7.3 7.5 7.5 PHP/USD, 年末 56.23 53.09 49.01 41.20 47.40 46.00 43.50 42.50 PHP/USD, 平均 56.04 54.99 51.29 45.18 44.43 47.98 44.94 42.88 PHP/EUR, 年末 76.34 62.65 64.63 60.15 65.89 69.00 65.25 63.75 PHP/EUR, 平均 70.06 68.46 64.45 62.80 64.69 69.40 67.41 64.31

対外部門

商品輸出 (USDbn) 38.7 40.3 46.5 49.5 48.2 38.1 40.4 44.5 商品輸入 (USDbn) 45.1 48.0 53.3 57.9 60.8 50.3 55.4 62.7 貿易収支 (USDbn) -6.4 -7.8 -6.7 -8.4 -12.6 -12.2 -15.0 -18.2 経常収支 (USDbn) 0.9 2.0 5.3 7.1 4.2 5.9 6.2 6.5 経常収支 (% GDP) 1.1 2.0 4.5 4.8 2.5 3.6 3.3 3.0 純対内直接投資 (USDbn) 0.1 1.7 2.8 -0.6 1.3 0.9 1.4 1.9 純対内直接投資 (% GDP) 0.1 1.7 2.4 -0.4 0.8 0.5 0.8 0.9 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 1.2 3.7 6.9 4.4 3.3 4.2 4.1 3.9 輸出 (% 前年比) 9.6 3.8 15.6 6.4 -2.6 -21.1 6.0 10.1 輸入 (% 前年比) 10.6 8.0 10.9 8.7 5.0 -17.7 10.0 13.2 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 16.1 18.4 22.8 33.6 36.5 38.5 45.0 48.0 輸入カバー月数 4.3 4.6 5.1 7.0 7.2 9.2 9.7 9.2

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 9.4 11.8 14.8 15.9 17.7 18.1 20.3 22.5 対外債務総額 (USDbn) 54.8 54.2 53.4 54.9 53.9 52.0 50.0 50.0 短期対外債務 (外貨準備%) 31.4 34.8 21.9 21.1 19.2 16.2 13.3 12.5 民間対外債務 (USDbn) 22.5 22.8 20.3 21.5 13.2 14.3 6.9 2.2 連結財政収支 (% GDP) -4.8 -1.8 0.2 0.4 -0.9 -3.8 -4.3 -3.3 政府財政収支 (% GDP) -3.8 -2.7 -1.1 -0.2 -0.9 -3.8 -4.3 -3.3 プライマリーバランス (% GDP) 1.5 2.8 4.1 3.8 2.7 -0.1 -0.3 0.5 公的部門対内債務総額 (PHPbn) 2,001 2,164 2,154 2,201 2,414 2,600 2,788 2,947 公的部門対内債務総額 (% GDP) 41.08 39.76 35.72 33.11 32.53 33.66 33.25 31.76 公的部門対外債務総額 (USDbn) 32.31 31.35 33.10 33.45 40.66 37.68 43.15 47.80 公的部門対外債務総額 (% GDP) 39.20 31.67 28.14 22.74 24.34 23.41 23.12 22.09 公的部門債務総額 (% GDP) 80.28 71.42 63.86 55.85 56.86 57.07 56.37 53.85

注:* 低賃金

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 72

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ロシア:概況

世界的な経済情勢の改善に伴い景気が回復。だが中期的な経済成長とインフレに対するリスクは依然大きい。

Alexander Morozov: +7495 783 8855 [email protected] Dmitry chernyadyev: Economics Associate

インフレ率は 1 ケタ台に低下 追加利下げが実施される見込み

経済危機とクレジットクランチは、少なくともインフレの抑制効

果を発揮する。これは内需が低迷し、マネーサプライ伸び率が鈍

化するためで、ロシアでは 2008 年 8 月以降、一時的なルーブル

切り下げ効果が 5 月に解消したことをきっかけに一定のタイムラ

グを置いてこれが現実となっている。2009 年 8 月のインフレ率

は前年比 11.6%に鈍化しており、向こう数四半期にわたり鈍化

傾向が続く見通しである。政府と市場はやや高めの水準を予想

しているが、年内に 1 ケタ台に低下する可能性もある。景気が本

格的な回復に向かえば、政府の拡大財政により発生する多額の

財政赤字が中期的に物価の上昇ペースの加速の促す可能性があ

る。

2008 年 11 月から 2009 年 1 月までの「管理された」ルーブル安に

クレジットリスクの上昇が重なり、実質金利が高止まりした。ル

ーブルの更なる切り下げ期待が後退し、インフレが安定化したこ

とを受け、ロシア中銀(CBR)は政策金利を合計 250bp 引き下げ

た。CBR は、実際のインフレ率ではなくインフレ期待を重視する

ことにより先手を打った政策対応を行ってきた。しかし貸出金利

の低下は緩やかなペースにとどまっているため、2010 年 2Q まで

毎月 25bp の利下げが続く可能性が高い。また、CBR は銀行向け

貸出残高の抑制を通じて出口戦略に踏み出している。これまでの

ところ、CBR の保有するルーブルにより財政赤字の貨幣化による

影響が相殺されている。

景気と CPI 政策スタンス

-16-12-8-4048

12

4Q07 2Q08e 4Q08e 2Q09e 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

6

8

10

12

14

16

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-16-12

-8-4048

12

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08e 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qm

a)

6

8

10

12

14

16

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

険しい回復の道のり

ロシアの生産高は危機前の水準から大幅に減少しており、国内

外の景気が安定化すれば力強く回復する可能性がある。低水準

からであれば生産は容易に拡大するが、まさに現在ロシアはそ

うした状況にあり、GDP は 2Q に前年比-10.9%で底入れし、6月に回復に転じた。だが、回復力は弱く、これまでのところ回

復をけん引しているのは輸出需要、在庫補充、国際的なコモデ

ィティ市場と金融市場の上昇であり、他の項目に回復の兆しは

見られない。民間消費は低迷し、実質賃金は依然として低下傾

向にあり、雇用の減少が続いている。銀行は不良資産を抱え、

国有銀行を除き貸出を削減している。政府の危機対策により生

産の更なる大幅な減少は回避されているが、財政規律を維持

するためには政府支出と公共投資の削減が不可欠である。

内需刺激策の効果は限定的なものにとどまる可能性が高い。銀

行セクターの抱える問題の抜本的な解決が図られていないた

め、貸出の低迷が続く見通しである。また、追加的な財政出動

による景気浮揚の可能性は薄れてきており、2009 年の財政赤字

の対 GDP 比は約 8%に急増する見通しである。このため、ロシ

アの景気回復は世界経済と金融市場の回復ペース次第となる。

また、効果的な財政面での出口戦略もまとまっていない。公共

支出を拡大させる一方で投資を削減する現在の政策を見直すた

めには政治的な障害が多い。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 6.0 1.2 -9.8 -10.9 -8.4 -4.3 4.6 4.2 2.1 1.5 鉱工業生産 (前年比%) 4.7 -6.1 -14.3 -15.4 -14.0 -4.5 5.0 4.6 2.0 2.0 CPI (四半期末%、前年比) 15.1 13.3 14.0 11.9 10.8 9.5 7.0 7.0 8.0 12.0 PPI (四半期末%、前年比) 25.7 -7.0 -2.8 -9.4 -8.0 11.0 11.0 10.0 12.0 15.0 貿易収支 (% GDP) 11.3 6.2 7.1 8.6 10.0 7.5 7.3 6.5 6.5 3.7 経常収支 (% GDP) 6.2 2.1 3.4 2.6 4.8 2.7 3.8 -0.1 0.7 -1.8 外貨準備高 (USDbn) 542.1 412.5 368.1 396.0 401.9 408.5 410.9 400.6 403.0 395.9 政策金利, 四半期末(%) 11.0 13.0 13.0 11.5 10.0 9.0 8.5 8.5 8.5 12.0 5年利回り, 四半期末 (%) 8.2 11.9 12.9 11.7 11.6 12.1 11.1 10.1 12.2 15.2 RUB/USD, 四半期末 25.25 29.38 34.01 31.16 30.88 31.17 29.80 31.17 31.86 33.23 RUB/EUR, 四半期末 36.37 41.44 44.94 43.71 44.78 46.76 44.70 46.76 47.79 49.84

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 73

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ロシア:チャート一覧 株式・債券市場 イールドカーブ

0

500

1000

1500

2000

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7 /07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0

200

400

600

800

1000

(spr

ead

bps)

MSCI Russia sub-index (LHS)EMB I Russia sub-index (RHS )

8.0

9.010.0

11.012.013.0

1y r 2yr 3yr 5y r 7yr 10yr

(%)

Now +3 months -3 months

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

22

26

30

34

38

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009e

05

1015202530

(%)

RUB vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

0100200300400500

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

0100200300400500600

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

02040

6080100

(% of reserves)

International reserv es, IF I definition (LHS)Short-term debt % reserv es (RHS)

2009e

2011e

2008

2007

2010e

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

-10.0 -8.0 -6.0 -4.0 -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0(consolidated govt balance % GDP)

(real rates)

現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0200400600800

1000

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/09

(spre

ad b

ps)

Russia 10yr Govt. EMBI Russia sub-index

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 74

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ロシア:内外要因

銀行セクターの抱える問題が景気回復の足かせとなり、公共財政が著しく悪化する可能性がある。

W 字型回復か、U 字型か 不良債権処理が課題

実体経済動向を示す指標は軒並みプラス成長への回復を示唆して

いる。経済発展貿易省の推計によると、5 月の鉱工業生産は前月

比で改善を示し、6 月の GDP も前月比プラス成長を記録したよう

だ。PMI も、時期はやや遅れるものの製造業とサービス業の生産

増を示唆している。見通し指数と失業指数を総合した PMI 製造業

総合指数は 8 月も依然として 50 を小幅ながら下回った。また、実

質賃金、失業率といった内需関連の指標は低迷しており、一段と

悪化する可能性がある。以上を総合すると、景気回復は W 字型ま

たは U 字型となる可能性が高く、景気が二番底を付け、低迷が続

く可能性がある。

依然として銀行では問題が山積している。不良債権が増加してお

り、引当金の積み増しと資本増強が急務となっている。しかし、

システミック危機と預金の取り付け騒ぎは回避されており、預金

は増加している。この結果、貸出の低迷も反映して預貸比率が妥

当な水準に改善している。

しかし、引当基準や会計基準が緩いため債権処理のペースは緩や

かである。債権処理が完了するまでは、公的資金へのアクセスが

乏しく増資が困難な民間銀行による新規貸出の拡大は期待できな

い。従って、危機前のような信用供与の拡大による内需と経済成

長の押し上げ効果は見込めない。

生産の伸びがプラスに改善 銀行セクターの不均衡は解消したが不良債権の増加が続く

-4-3-2-1012

Mar

-08

May

-08

Jul-0

8

Sep-

08

Nov-

08

Jan-

09

Mar

-09

May

-09

Jul-0

9

30354045505560

GDP grow th, % m-o-m SAManufacturing PMI, SA (RHS)

1.25

1 .30

1 .35

1 .40

1 .45

1 .50

1 .55

J un-08 Sep-08 Dec-08 Mar-09 Jun-091%

2%

3%

4%

5%

loan-to -deposit ratio, lhs Ov erdue Loans (% o f loans, rhs)

Source: Markit, MOED Source: CBR

積極財政策からの出口戦略 金利の低下傾向の維持が不可欠

ロシアは 2000 年代初頭から財政緩和策をとっており、財政収支が

均衡する原油価格は 1 バレル=15 米ドルから 100 米ドル超に上昇

している。現在、政府債務は低水準にとどまっているものの、こ

の結果長期的に財政収支の健全性を維持できなくなる可能性があ

る。2010~12 年の財政計画には 2012 年までの連邦政府支出の

GDP 比 7.5%、財政赤字の同 4.8%の大胆な削減が盛り込まれてお

り、2012 年の政府支出は名目ベースで 2009 年を下回ることにな

る。年金基金を対象とした給与税引き上げを考慮しても政府の財

政計画は大胆で、大半の公共投資プロジェクトが棚上げされてお

り、いずれ財源確保が必要となる。給与税引き上げや計画通りの

支出削減が実現しなかった場合、歳入不足が深刻化し、インフレ

圧力を招く可能性がある。

通貨切り下げ期待と高インフレを反映してインプライド NDF 利回

りを含め金利が高止まりしている。ボラティリティは上昇してい

るものの、為替が安定し、インフレが減速するにつれて、金利は

低下する見通しである。しかし、依然としてルーブル金利は高め

の水準にあり、今年に入りすでに低下しているものの、一段と低

下する可能性がある。 RUB/USD あるいは RUB/バスケットのロ

ングを通じてこうした見方により利益を得るための も流動性の

高い商品はルーブルの NDF である。しかし、ルーブルの変動枠は

対バスケットでかなりの変動性を容認した水準に設定されている

ため、取引を開始するポジションも重要である。RUB/バスケット

が 37.5~38.0 以上の水準が取引開始に有利である。

強気の財政再建計画 RUB の NDF 利回りは依然として高止まり

2009 2010 2011 2012

Revenues 6725 6950 7456 8070Expenditures 9692 9887 9390 9681Deficit 2967 2937 1934 1611

Revenues 17.7 16.1 15.4 15.0Expenditures 25.5 22.9 19.4 18.0Deficit 7.8 6.8 4.0 3.0

RUBbn

% of GDP

05

101520253035

1/12

/200

9

2/6/

2009

3/5/

2009

4/1/

2009

4/28

/200

9

5/25

/200

9

6/19

/200

9

7/16

/200

9

8/12

/200

9

9/8/

2009

RUB 12M NDF impied y ield

Source MOF

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ロシア:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 7.2 6.4 7.7 8.1 5.6 -8.3 3.1 2.4 名目 GDP (USDbn) 591.7 760.2 989.5 1,295.0 1,679.5 1,214.8 1,418.8 1,522.3 1 人当たり GDP (USD) 4,114 5,323 6,948 9,120 11,836 8,567 10,019 10,766 民間消費 (% 前年比) 12.1 11.8 11.3 13.6 11.5 -8.0 2.0 2.0 政府支出 (% 前年比) 2.1 1.3 2.4 3.4 2.5 -4.0 -3.0 -3.0 投資 (% 前年比) 12.6 10.6 18.0 21.1 10.3 -16.0 1.0 5.0 鉱工業生産 (% 前年比) 8.3 4.0 3.9 6.3 2.1 -12.1 3.4 2.7 国内総貯蓄 (% GDP) 24.9 25.1 26.7 28.4 28.7 24.9 24.7 25.4 失業率 (% 年末) 8.2 7.6 6.9 6.1 7.7 11.0 10.0 8.5

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 10.9 12.7 9.7 9.0 14.1 11.9 8.7 15.4 CPI, 年末 (% 前年比) 11.7 10.9 9.0 11.9 13.3 9.5 12.0 17.0 PPI, 年末 (% 前年比) 28.8 13.4 10.4 25.1 -7.0 11.0 15.0 21.0 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 21.9 26.9 24.3 27.8 25.9 5.2 10.9 17.7

マネー・為替・金利 広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 35.8 38.6 48.8 47.5 1.7 10.0 30.0 25.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 21.0 17.9 27.7 34.3 -8.8 0.7 13.0 5.9 政策金利, 年末 (%) 13.0 12.0 11.0 10.0 13.0 9.0 12.0 19.0 5 年利回り, 年末 (%) 6.8 6.4 6.3 6.3 11.9 12.1 15.2 17.1 RUB/USD, 年末 27.70 28.78 26.33 24.55 29.38 31.17 33.23 36.99 RUB/USD, 平均 28.81 28.45 27.19 25.57 24.81 32.14 31.26 35.22 RUB/EUR, 年末 37.70 33.96 34.72 35.93 41.44 46.76 49.84 53.63 RUB/EUR, 平均 34.46 34.99 34.17 35.05 34.86 45.54 46.89 51.06

対外部門 商品輸出 (USDbn) 183.2 243.8 303.9 354.4 471.6 285.9 306.2 317.8 商品輸入 (USDbn) 97.4 125.4 164.7 223.5 291.9 182.9 222.8 243.9 貿易収支 (USDbn) 85.8 118.4 139.2 130.9 179.7 103.1 83.4 73.9 経常収支 (USDbn) 59.9 84.3 94.3 77.2 102.3 41.6 7.7 -10.9 経常収支 (% GDP) 10.1 11.1 9.5 6.0 6.1 3.4 0.5 -0.7 純対内直接投資 (USDbn) 2.1 2.5 9.2 9.2 17.9 -1.4 10.0 12.0 純対内直接投資 (% GDP) 0.4 0.3 0.9 0.7 1.1 -0.1 0.7 0.8 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 10.5 11.4 10.5 6.7 7.2 3.3 1.2 0.1 輸出 (% 前年比) 34.8 33.1 24.7 16.6 33.1 -39.4 7.1 3.8 輸入 (% 前年比) 28.0 28.8 31.3 35.7 30.6 -37.4 21.8 9.5 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 120.7 175.9 295.6 465.9 412.5 408.5 395.9 408.5 輸入カバー月数 14.9 16.8 21.5 25.0 17.0 26.8 21.3 20.1

公的・対外債務ソルベンシー指標 商業銀行外貨資産 (USDbn) 26.0 39.2 65.2 93.3 159.3 160.3 181.2 191.8 対外債務総額 (USDbn) 214.5 257.2 310.6 459.6 483.5 479.5 533.5 589.5 短期対外債務 (外貨準備%) 29.9 24.7 19.2 23.2 19.3 19.4 22.2 23.8 民間対外債務 (USDbn) 108.9 176.2 262.0 413.9 453.8 443.8 483.8 523.8 連結財政収支 (% GDP) 4.9 8.1 8.4 6.1 4.8 -8.8 -8.3 -8.6 政府財政収支 (% GDP) 4.3 7.5 7.4 5.4 4.1 -8.0 -7.4 -6.6 プライマリーバランス (% GDP) 5.5 8.5 8.1 5.9 4.5 -7.4 -6.9 -6.1 公的部門対内債務総額 (RUBbn) 778.5 875.1 1,052.1 1,729.7 2,004.2 2,335.7 3,094.6 4,094.6 公的部門対内債務総額 (% GDP) 4.6 4.0 3.9 5.2 4.8 6.0 7.0 7.6 公的部門対外債務総額 (USDbn) 105.6 82.4 48.6 45.7 29.7 35.7 49.7 65.7 公的部門対外債務総額 (% GDP) 17.8 10.8 4.9 3.5 1.8 2.9 3.5 4.3 公的部門債務総額 (% GDP) 22.4 14.9 8.8 8.8 6.6 8.9 10.5 12.0

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 76

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

サウジアラビア:概況

回復は近いがまだ本格化しておらず、民間部門向け貸出は引き続き減少。

Simon Williams: +97 14 423 6925 [email protected]

成長回帰は遠い道のり

サウジアラビア経済が成長軌道に回復するとの HSBC の予想に変

更はないが、まだ回復は始まっていないとの見方にも変わりはな

い。タイムリーなデータは少ないが、銀行業界の統計が発表され

ており、それによると民間部門向け貸出額の減少が続いている。

これは、2004~08 年のクレジットブームが終焉を迎えたことを意

味し、民間消費と投資の鈍化を示唆している。今年前半の貿易統

計の低迷とインフレ率の低下が続いていることも、内需の伸び悩

みを示している。原油生産が前年比で減少しているため、引き続

き HSBC では 2009 年の GDP が 1999 年以降初めて縮小すると予想

している。

だが、景気回復の条件が整いつつある。これには外部環境の改善

も貢献している。西側諸国の景気後退からの脱出とエネルギー集

約型のアジア諸国の成長加速により、2010 年と 2011 年に原油価格

は上昇する可能性が高く、サウジアラビア政府にとって歳入不足

に陥らずに経常支出と投資支出を拡大させることが可能となる。

原油生産も増加する見込みである。また、石油収入の低迷が続い

ても、政府は大量に保有する資産の売却により財源を確保する考

えを示している。HSBC では、公共支出の 2 ケタの伸びにより

2009 年の景気の落ち込みに歯止めがかかり、2010 年の加速的な景

気回復と 2011 年にかけての持続的な拡大を促すと予想している。

また、現在銀行貸出は極めて低調にとどまっているが、銀行シス

テムの流動性は潤沢で、財政面からの景気刺激効果が本格化する

につれて貸出の伸びが加速し始める見通しである。HSBC では、

2010~2011 年の成長率を平均 5%強と予想している。

2009 年の景気後退からの回復と米国の低金利を反映して、サウジ

アラビア通貨庁(SAMA)は少なくとも向こう 1 年間は大幅な緩和

策を維持する見込みである。2010 年 1 月 1 日に予定される湾岸統

一通貨導入が金融政策の見直しにつながるとは考えにくく、サウ

ジリアルの現行水準でのドルペッグが維持される見通しである。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009e Q2 2009e Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

CPI (四半期末%、前年比) 10.4 9.0 6.0 5.2 4.5 3.4 3.3 3.3 3.6 4.2 外貨準備高 (USDbn) 35.9 30.3 29.8 31.1 33.6 35.6 37.6 39.8 42.3 44.6 政策金利, 四半期末(%) 2.0 1.5 0.5 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 5年利回り, 四半期末 (%) 3.9 1.9 1.9 2.2 2.6 2.5 2.7 2.9 3.0 3.0 SAR/USD, 四半期末 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 SAR/EUR, 四半期末 5.28 5.24 5.43 5.25 5.43 5.62 5.62 5.62 5.62 5.62

目先、インフレ圧力は消滅 貸出の伸びが加速するまでは緩和策が維持される見込み

2008 年に数十年ぶりの 高値に上昇したインフレ率は 2009 年を通

じて急速に低下し、直近の 8 月のインフレ率は 2 年来の 低値と

なる年率 4%強にとどまり、1 年前の水準から 7 ポイント低下し

た。しかもこの数値は基調的なインフレ圧力を実際よりも過大に

示している可能性があり、2009 年初め以降の実際の物価上昇率は

2%に過ぎない。目先、物価上昇率が加速する可能性は低いが、よ

り長期的には、消費者物価と資産価格の上昇率に影響されやすい

サウジアラビア経済の特徴が顕著となる可能性がある。サウジア

ラビアの成長率が加速し始めても、ドルペッグ制を反映して

SAMA は低金利策を維持せざるを得なくなる可能性がある。ま

た、サウジアラビアでは公共投資プロジェクトに関する合意がま

とまって執行されるまでに長い時間がかかる傾向にあるため、財

政出動の縮小も困難となろう。

SAMA は 2008 年 4Q から金融政策を大幅に緩和しており、預金準

備率の引き下げ、資金供給、FF 金利引き下げに追随した史上 低

の 0.25%への政策金利引き下げなどを実施している。銀行間金利

は金融政策に敏感に反応しており、1 カ月 SIBOR は 6 月以降 0.5%以下にとどまっている。このため、湾岸諸国のなかではドル

LIBOR との格差が も小さくなっている。

このように金利は大幅に引き下げられているが、統計によると商

業銀行は貸出ではなく SAMA への非法定預金を引き続き拡大させ

ている。貸出の伸び悩みの原因は流動性不足ではなくセンチメン

トの悪化にあるとみられ、貸出が回復し始めるまでは、引き締め

策は見送られる公算が大きい。

景気と CPI 政策スタンス

-2-1012345

4Q07 2Q08e 4Q08e 2Q09e 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

0.02.04.06.08.010.012.0

(% y-o-y)

GDP (LHS) CPI (RHS)

0123456

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08e 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

024681012

(%)

Policy rate (LHS) CPI, % y -o-y (RHS)

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

サウジアラビア:チャート一覧 金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

4/05 1/06 10/06 7/07 4/08 1/09

(%)

3M SAIBOR over US-Libor 12M SAIBOR over US-Libor

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

4/05 1/06 10/06 7/07 4/08 1/09

(%)

3M SAIBOR over US-Libor 12M SAIBOR over US-Libor

01

23

45

1yr 2yr 3yr 5yr 7yr 10yr

(%)

Now +4 months-4 months Current CPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

102030405060708090100110

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2010e2007

2008 2011e

2009e

-8.0

-4.0

0.0

-5.00.05.010.015.020.025.030.035.0(consolidated govt balance % GDP)

(real rates)

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abc

サウジアラビア:内外要因

財政出動による景気浮揚効果の本格化には銀行セクターの回復が不可欠。

貸出の伸びは極めて低いが、銀行の流動性は潤沢 外貨建て資産の減少は予想より大規模な財政出動を示唆

信用創造に急ブレーキがかかり、2003~08 年のクレジットブーム

に終止符が打たれあと、信用供与には回復はみられない。7 月の

民間向け貸出は年初の水準を下回り、貸出の伸びはわずか 8 カ月

で 33%から 4%弱に急減速した。大きな注目を集めた同族企業の

経営難により信用収縮に拍車がかかった側面もあるが、それ以前

から信用供与は縮小傾向にあり、これはより根の深いセンチメン

トの悪化に起因していると考えられる。信用供与が再び急拡大す

る可能性は低いが、預貸比率は年初から 10 ポイント低下してお

り、銀行セクターの流動性に問題はないため、景気信頼感が回復

すれば銀行は貸出を再び拡大させることが可能と考えられる。国

債発行が途絶えていることも民間の貸出の伸びを後押しする状況

にある。

原油価格が軟化するにつれて、2008 年 11 月以降、SAMA の外国資

産が減少し始めた。HSBC では、これは政府が国債を発行せずに

支出の伸びを維持するために外国資産を売却していることを示唆

すると考え、原油価格が 1 バレル 60 米ドルを突破すれば資産処分

に歯止めがかかると予想していた。しかし、平均原油価格が 1 バ

レル 70 米ドル近くに上昇しているにもかかわらず、 新のデータ

によると、2009 年 6 月と 7 月も外国資産は月間 70 億米ドルのペー

スで減少し続けており、政府支出の伸びが予想以上に増加してい

る可能性がある。こうした積極財政策は、十分維持可能である。

SAMA の保有資産はピーク水準から 600 億米ドル減少している

が、現在 4,000 億米ドル弱と、GDP の 100%弱、公共部門支出の 3年分に近い水準にある。

2008 年 4Q にクレジットサイクルが急変、依然として停滞 2008 年の財政黒字を財源に 2009 年に景気対策を導入

-2-101234

39356

39448

39539

39630

39722

39814

39904

39995

Monthly grow th lending

-20-10

0102030

39569

39630

39692

39753

39814

39873

39934

200

300

400

500

C hng m-o-m (US D bn, LHS)S AMA Foreign Ass sets (USD bn , RHS )

サウジアラビアの生産調整により原油市場の圧力が緩和 湾岸通貨統一構想を主導

2008 年末に世界的な景気後退が深刻化するにつれて、OPEC 加盟

国は急落する原油価格の下支えのため減産で合意した。その際、

サウジアラビアは加盟国の中で 大の減産を引き受けただけでな

く、生産枠を下回る水準に生産を引き下げた。さまざまな要因が

影響を与えているものの、スイングプロデューサーとしての役割

を果たすことに対するサウジアラビアの意気込みが市場に理解さ

れたことがその後の原油価格回復の重要なカギになったと考えら

れる。2009 年の OPEC 生産枠は据え置かれたが、価格が上昇して

いるため、サウジアラビアは原油生産を引き上げた。これにより

サウジアラビアのシェアは再び拡大した。同時に、原油価格を 60~80 米ドル/バレルに維持するために生産調整を行うサウジアラ

ビアの意向が示された。

5 月に湾岸中央銀行をアブダビではなくサウジアラビアに置くこ

とが決まったことを受け、アラブ首長国連邦は湾岸通貨統一構想

から脱退した。中東第 2 の大国の離脱は、2001 年に浮上して以来

同構想にほとんど進展がみられず、2010 年の期限を控えて湾岸諸

国が当初目標から大きくかけ離れた状態にあることを如実に物語

っている。しかし、通貨統一構想が消滅したと結論づけるのは尚

早である。サウジアラビアが中央銀行本部を同国内に置くことを

引き受けたことは、同構想への強い取り組み姿勢を示しており、

これまで欠けていたリーダーシップをサウジアラビアがとるよう

になることが予想される。課題は多いが、2015 年までの湾岸単一

通貨誕生の現実味は大きい。

スイングプロデューサーとしての役割を果たす サウジアラビアは中東諸国の経済的なリーダー

20406080

100120140

39630 39692 39753 39814 39873 39934 39995 40057

7.58

8.59

9.510

Brent (USD/b) Oil Production (mb/d)

0

100

200

300

400

SaudiArabia

UAE Kuwait Qatar Oman Bahrain

2009 USD GDP

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

サウジアラビア:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 5.3 5.6 3.1 3.4 4.3 -1.1 4.1 5.9 名目 GDP (USDbn) 250.3 315.6 356.6 382.0 487.8 393.2 470.3 545.4 1 人当たり GDP (USD) 10,453 12,843 14,132 14,739 18,343 14,412 16,819 19,027 名目民間消費 (% 前年比) 5.8 9.5 13.4 14.0 20.0 4.0 8.5 11.0 名目政府支出 (% 前年比) 11.9 18.4 18.4 3.5 14.0 9.0 10.0 12.0 名目投資 (% 前年比) 5.6 25.1 19.1 22.8 23.0 9.0 17.0 18.0 国内総貯蓄 (% GDP) 45.9 51.3 50.1 49.2 53.3 38.5 43.9 46.1 失業率 (% 年末) 11.0 11.5 12.0 12.4 11.2 11.9 12.0 11.8

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 0.3 0.4 2.3 4.1 9.9 5.0 3.8 6.0 CPI, 年末 (% 前年比) 0.4 1.4 3.2 6.5 9.0 3.4 4.2 7.0

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 18.8 11.6 20.7 19.9 17.7 11.6 16.9 18.3 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 37.1 38.5 6.9 17.3 17.2 -2.5 7.3 12.0 政策金利, 年末 (%) 2.2 4.3 4.7 4.0 1.5 0.2 0.2 0.2 5 年利回り, 年末 (%) 4.1 4.9 5.1 4.2 1.9 2.5 3.0 3.4 SAR/USD, 年末 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 SAR/USD, 平均 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 3.75 SAR/EUR, 年末 5.08 4.42 4.94 5.06 5.24 5.62 5.62 5.62 SAR/EUR, 平均 4.67 4.65 4.71 4.87 5.62 5.43 5.62 5.52

対外部門

商品輸出 (USDbn) 125.7 180.1 210.5 233.4 326.4 184.1 231.9 286.6 商品輸入 (USDbn) 41.1 54.6 63.8 82.5 107.3 97.6 106.4 127.7 貿易収支 (USDbn) 84.6 125.5 146.6 150.8 219.1 86.5 125.5 158.8 経常収支 (USDbn) 49.3 90.0 98.9 95.0 150.4 16.4 47.7 87.3 経常収支 (% GDP) 19.7 28.5 27.7 24.9 30.8 4.2 10.1 16.0 純対内直接投資 (USDbn) -0.3 0.4 0.6 1.1 2.8 0.8 2.3 4.1 純対内直接投資 (% GDP) -0.1 0.1 0.2 0.3 0.6 0.2 0.5 0.7 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 19.6 28.6 27.9 25.2 31.4 4.4 10.6 16.8 輸出 (% 前年比) 34.8 43.3 16.9 10.9 39.9 -43.6 26.0 23.6 輸入 (% 前年比) 21.2 32.9 17.0 29.3 30.0 -9.0 9.0 20.0 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 27.5 26.8 27.5 33.8 30.3 35.6 44.6 50.1 輸入カバー月数 8.1 5.9 5.2 4.9 3.4 4.4 5.0 4.7

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 24.7 24.4 34.6 39.4 40.8 46.3 49.5 51.4 対外債務総額 (USDbn) 27.8 33.7 46.9 53.5 58.7 57.2 61.5 68.3 短期対外債務 (外貨準備%) 61.7 69.1 69.0 63.9 75.9 57.5 48.9 51.2 政府財政収支 (% GDP) 11.4 18.4 21.7 12.5 31.7 -1.8 1.9 4.9 推定プライマリーバランス (% GDP) 14.4 20.2 22.9 13.4 32.6 -0.9 3.0 5.9 公的部門対内債務総額 (SARbn) 614.0 475.0 366.0 309.0 340.0 275.0 300.0 320.0 公的部門対内債務総額 (% GDP) 65.4 40.2 27.4 21.6 18.6 18.7 17.0 15.7

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 80

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

シンガポール:概況

シンガポールでは景気回復のすそ野が広がりをみせており、急ピッチでの回復が続く見通しである。インフレ率は底

入れしているが、2010 年 4 月の会合までは金融当局が通貨高政策にシフトする可能性は低い。

Robert Prior-Wandesforde: +65 62 390 840 [email protected]

急変動が続く

シンガポールは、史上 悪の景気後退に続いて、四半期ベースで

過去 高水準の成長を記録している。2009 年 2Q の前期比年率 20%を超える GDP 成長には、医薬品セクターの急回復が大きく貢献し

たが、金融サービスセクターも目覚ましい改善をみせており、建

設ブームも続いている。鉱工業生産、輸出、小売売上高などの高

頻度データによると、3Q も急ピッチの景気回復が続いているもよ

うで、政府の景気対策、資産効果、アジアおよび世界の貿易の力

強い回復見通しなどは、先行きの明るさを示唆している。これま

で HSBC では 2009 年の GDP が大幅に縮小すると予想しており、景

気が二番底を付ける可能性も想定していたが、縮小幅は 2.5%にと

どまる可能性が高い。2010 年の成長率予想を+5.3%から+6.5%に

引き上げた。

貿易依存度の高いシンガポール経済の成長率が予想水準をクリア

するためには、外需の急回復が不可欠である。HSBC が楽観的な

見方をとる理由は 2 つある。まず、輸出回復の基本的な原動力と

なる要因がほぼ出そろっている。アジア各国の内需は個人消費と

投資の回復に支えられ着実に拡大しており、アジア諸国による大

規模かつ同時進行的な金融緩和の効果が本格化することで今後も

順調な回復が続くと予想される。西側諸国も重要な需要源であ

る。 近、米国とドイツの内需は著しく改善している。第 2 に、

今回の輸出の冷え込みの規模を正確に予測することのできた

HSBC の景気先行指数は現在、2009 年後半の輸出の力強い回復を

示唆している。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 0.0 -4.2 -9.5 -3.5 -1.2 4.5 9.6 5.9 5.4 5.3 鉱工業生産 (前年比%) -10.9 -10.7 -24.2 -2.3 2.0 5.0 12.0 10.0 8.0 7.5 CPI (四半期末%、前年比) 6.7 4.3 1.6 -0.5 -0.1 0.8 2.1 3.2 2.6 2.3 PPI (四半期末%、前年比) 9.1 -11.2 -16.3 -18.6 -5.0 1.0 5.0 8.0 6.0 4.0 貿易収支 (% GDP) 19.8 10.9 13.2 17.0 18.6 8.7 9.0 16.4 16.7 8.9 経常収支 (% GDP) 17.1 10.4 10.7 11.6 14.9 4.3 5.5 13.8 14.1 3.4 外貨準備高 (USDbn) 169.4 173.9 166.5 173.0 175.9 180.1 179.2 184.1 189.5 189.7 3M インターバンク金利, 四半期末(%) 1.9 1.0 0.7 0.7 0.6 0.6 0.7 0.7 0.8 0.9 5年利回り, 四半期末 (%) 2.4 1.4 1.4 1.5 1.2 1.3 1.5 1.6 1.7 1.8 SGD/USD, 四半期末 1.43 1.44 1.52 1.45 1.44 1.40 1.40 1.38 1.36 1.34 SGD/EUR, 四半期末 2.03 2.00 2.01 2.03 2.09 2.10 2.10 2.07 2.04 2.01

インフレ率が上昇… …MAS は 10 月の会合で何らかの対応を示すか?

シンガポールの消費者物価の低下幅は、底となった 4月の前年比-

0.7%から直近の 8 月には同-0.3%に縮小した。前期比ベースでは

インフレ率の上昇傾向がさらに顕著となっており、消費者物価

(季調済み)は 5 カ月連続で前月比プラスとなっており、3 カ月ベ

ースの CPI は前 3 カ月比年率+2.2%となった。これに対して、底

となった 4 月は-5.5%だった。シンガポールは食品とエネルギー

をすべて輸入に依存しており、これらの製品の国際価格の上昇加

速による影響が浸透するにつれて、ヘッドライン CPI は 2010 年半

ばには前年比+3.3%に達する見通しである。この 3.3%という水準

は、シンガポールの CPI 上昇率の長期平均値の 2 倍に達するが、数

十年来の 高水準となった 2008 年半ばの 7.5%を大きく下回る。

CPI インフレ率の上昇を受け、シンガポール金融通貨庁(MAS)は

10月の定例政策委員会(6カ月毎に開催)において SGD 政策バンド

を引き上げるのだろうか。HSBC ではその可能性は低いとみてい

る。インフレが急加速しているわけではなく、国内および世界的な

景気回復が持続的なものであることが確認されるまでは、MAS が政

策変更に踏み切ることはないだろう。MAS は、シンガポールの景気

見通しについて HSBC よりも慎重な見方をとっている。だが、

HSBC の予想が正しければ、MAS は 2010 年 4 月の次回政策委で再び

貿易加重ベースでの“緩やかで段階的な”SGD 高政策をとる可能性

がある。一方、財政面での追加的な景気対策は不要と思われ、財政

赤字は 2009年がピークとなる見通しである。しかし、財政収支が従

来の黒字に改善するのは 1、2年後となる公算が大きい。

景気と CPI 政策スタンス

-28-24-20-16-12-8-4048

1216

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

-2

02

468

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-3

-1

1

3

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

-202468

(%)

Fiscal balance (LHS) 3M interbank rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 81

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

シンガポール:チャート一覧 金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

-4

-3

-2

-1

0

1

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(%)

3M spread over US-Libor 2yr spread over US-Libor

-1

0

1

2

3

3M 1yr 2yr 5yr 7yr 10yr

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

1.21.31.41.51.61.71.81.9

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009e

02468101214

(%)

SGD vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

80

100

120

140

160

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

04080

120160200

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

20406080100120

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2009e

2007 2010e

2008-4.0

-3.0

-2.0

-1.0

0.0

1.0

-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.00.51.01.52.02.53.0(central govt balance % GDP)

(real

rate

s) 2011e

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0

1000

2000

3000

4000

5000

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0100200300400500600700

(spre

ad bp

s)

MSCI Singapore sub-index (LHS)Singapore av . spread

-400-200

0200400600

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spre

ad b

ps)

Singapore 5yr Govt. Singapore av. spread

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

シンガポール:内外要因

シンガポール経済はここ 10 年、極めて激しく変動しており、将来の景気サイクルの振幅を抑えるためには消費が

GDP に占める割合の引き上げとより予防的な政策運営が不可欠。

エレクトロニクス業界が救世主となるか 不動産市場が改善

景気回復の力強さと持続性について HSBC が楽観的な見方をとる

もう 1 つの理由は、グローバルなハイテクサイクルに回復の兆し

がみられることにある。プラス材料ばかりではないが(たとえば

米国のハイテク関連の個人消費は低迷が続いている)、ここ数カ

月、米国と日本の半導体の BB レシオが大幅に上昇しているほか、

ドイツの電気製品に対する受注が急回復し、シンガポールのエレク

トロニクス業界の PMI 指数は大幅に改善している。現在、エレク

トロニクス業界の PMI 指数は 50 を大きく上回っており、エレクト

ロニクス生産の増加傾向と一致している。実際、下図に示すよう

に、エレクトロニクス製品の生産は今年 3 月から 7 月までに 40%強増加した(ただしピークとなった 2008 年 2 月の水準を依然とし

て 17%下回る)。

ここ数カ月、不動産取引が大幅に増加しており、ピークから 25%下落している民間の住宅用不動産価格は底入れした可能性があ

る。供給が豊富なため、不動産価格の急騰を予想する向きは少な

いが、政府はすでに不動産市場の緩やかな鎮静化策を導入してい

る。国家開発相は 9 月、未完の住宅開発プロジェクト向けの IO ロ

ーン(一定期間は利子のみを支払う住宅ローン)を廃止する一方

で、政府による土地売却を再開する意向を明らかにした。これ

は、資産バブルの発生を未然に防ぐための予防的な対策と言え

る。これが奏功すれば、シンガポール経済の変動性が低下する可

能性がある。

エレクトロニクス生産が回復 不動産取引の増加が価格を押し上げ

60708090

1 001 101 20

03 0 4 05 06 0 7 08 09

Elec tr onic s outpu t

I n d e x

0

1 0 0 0

2 0 0 0

3 0 0 0

4 0 0 0

5 0 0 0

6 0 0 0

7 0 0 0

9 9 0 0 0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 91 0 01 1 01 2 01 3 01 4 01 5 01 6 01 7 01 8 01 9 0

N u m b e r o f T r a n s a ctio n s P ro p e rty P r ic e s (R H S )

I n d e x ( '9 8 Q 4 = 1 0 0 )

シンガポールの GDP は大きく変動 資金需要を上回るマネーサプライの伸び

シンガポールはここ 12 年に 4 回の景気後退を経験しており、その

後急成長が続くというのが通例である。シンガポールの 2000 年以

降の GDP 成長率の標準偏差は 5.5 と、他アジア諸国より高く、そ

れ以前の期間に比べて上昇している。成長の原動力を多様化する

ための政府の果敢な試みにもかかわらず、シンガポールは好況と

不況を頻繁に繰り返している。GDP に占める消費の割合は 40%以

下であり、この数値はたとえば香港などを大きく下回る。また、

シンガポール経済は需要項目の中でも変動性の大きい投資、輸出

といった分野に大きく依存している。シンガポール経済の変動性

を抑えるためには、消費による成長寄与を大幅に引き上げると同

時に、より予防的な政策対応を図る必要がある。

2008~2009 年初頭までの景気後退は民間貸出に打撃を与えてお

り、7 月までの 1 年間の貸出額はここ 3 年強で 低となるわずか

3%にとどまった。預金が大幅に増加しており、銀行の貸出意欲は

旺盛と考えられるため、貸出の鈍化は供給不足ではなく需要の低

迷を反映している可能性が高い。貸出額と預金量の伸びの格差は

前例のない水準に拡大しており、これが短期金利の上昇を抑制す

る結果となっている。たとえば、3 カ月銀行間金利は依然として

0.6%にとどまっており、翌日物金利は 0.1%前後である。企業や

民間部門が景気回復の持続性について一段と自信を強めるように

なれば(それには数カ月かかる可能性がある)、貸出の伸びも大

幅に回復することになろう。

12 年間に 4 回の景気後退を経験 貸出の伸びは低下、狭義のマネーサプライ伸び率は高止まり

-10

-5

0

5

10

15

76 79 82 85 88 91 94 97 00 03 06 09

Real GDP

% Yr

-15-10-505

1015202530

92 94 96 98 00 02 04 06 08

M1 Priv ate domestic credit

% Yr

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 83

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

シンガポール:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 8.7 8.7 8.4 7.8 1.1 -2.5 6.5 5.5 名目 GDP (USDbn) 109.7 120.8 139.7 167.5 184.0 171.5 194.6 210.4 1 人当たり GDP (USD) 26,339 28,324 31,743 36,503 38,014 35,272 39,838 42,837 民間消費 (% 前年比) 5.9 3.1 4.0 5.2 2.4 -2.5 3.6 3.2 政府支出 (% 前年比) -1.1 9.6 6.6 2.2 8.1 3.6 4.2 0.0 投資 (% 前年比) 10.2 -2.0 13.3 19.2 13.7 -5.2 8.0 7.6 鉱工業生産 (% 前年比) 13.9 9.5 11.9 5.9 -4.2 -5.5 9.2 6.0 国内総貯蓄 (% GDP) 46.8 48.7 49.9 51.7 48.3 45.1 44.3 45.6 失業率 (% 年末) 3.0 2.6 2.7 1.7 2.5 3.7 3.6 3.4

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 1.7 0.5 1.0 2.1 6.5 0.3 2.5 2.0 CPI, 年末 (% 前年比) 1.3 1.3 0.8 4.4 4.3 0.8 2.3 2.3 PPI, 年末 (% 前年比) 8.6 4.1 -2.9 4.9 -11.2 1.0 4.0 3.0 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 2.6 4.3 3.5 4.1 5.0 1.5 3.0 4.0

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 7.7 5.2 11.9 20.6 10.9 10.0 12.0 8.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 4.4 1.8 2.6 8.1 12.8 4.0 8.0 7.0 3 カ月インターバンク金利 (%) 1.5 3.3 3.4 2.4 1.0 0.6 0.9 1.2 5 年利回り, 年末 (%) 2.1 3.0 3.0 2.3 1.4 1.3 1.8 1.8 SGD/USD, 年末 1.63 1.66 1.53 1.44 1.44 1.40 1.34 1.32 SGD/USD, 平均 1.69 1.67 1.58 1.50 1.40 1.47 1.41 1.40 SGD/EUR, 年末 2.22 1.96 2.02 2.10 2.00 2.10 2.01 1.98 SGD/EUR, 平均 2.13 2.07 1.99 2.09 2.04 2.12 2.11 2.10

対外部門

商品輸出 (USDbn) 199.6 232.3 276.0 305.0 347.6 270.3 300.8 330.0 商品輸入 (USDbn) 168.8 196.0 233.0 257.8 316.4 245.8 276.0 302.2 貿易収支 (USDbn) 30.7 36.3 43.0 47.2 31.2 24.5 24.8 27.8 経常収支 (USDbn) 29.0 33.2 35.5 39.3 27.3 17.6 17.8 20.7 経常収支 (% GDP) 26.4 27.5 25.4 23.5 14.8 10.3 9.1 9.8 純対内直接投資 (USDbn) 9.2 3.2 14.4 7.0 13.9 7.8 5.7 5.7 純対内直接投資 (% GDP) 8.4 2.6 10.3 4.2 7.5 4.5 2.9 2.7 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 34.8 30.1 35.7 27.7 22.4 14.8 12.1 12.6 輸出 (% 前年比) 23.4 16.4 18.8 10.5 14.0 -22.2 11.3 9.7 輸入 (% 前年比) 27.5 16.1 18.9 10.6 22.7 -22.3 12.3 9.5 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 112.4 115.9 136.2 162.9 173.9 180.1 189.7 196.4 輸入カバー月数 8.0 7.1 7.0 7.6 6.6 8.8 8.2 7.8

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) -5.8 1.2 11.0 3.9 9.8 2.0 5.0 5.0 政府財政収支 (% GDP) -0.8 -0.2 0.6 1.7 2.7 -2.6 -1.0 0.5

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 84

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

南アフリカ:概況

深刻な景気後退は回避したが回復は弱々しい。政府が公共部門投資と政治的な目標を重視しているため民間部門が低迷。

Juliet Sampson: +44 20 7991 5651 [email protected] Kubilay Ozturk: +44 20 7991 1360 [email protected]

景気後退入りが遅れたため回復も遅れ インフレは沈静化しているが追加利下げの是非は不透明

南アフリカは諸外国に遅れて景気後退に入ったため、回復も 1 四

半期前後遅れる見通しである。南アフリカ経済は 2Q に底入れし

た模様で、大半の国と同じように、回復は緩やかなものとなりそ

うだ。家計部門と消費は極めて低調にとどまっており、2Q は

3.5%減となった。3Q には改善の兆しを見せたものの、2Q には貿

易の減少ペースに拍車がかかった。公共部門を中心とする投資は

今年前半は極めて好調で、1Q は 6.6%増、2Q は 5.1%増となり、

今年後半も増加傾向を維持する見通しである。雇用創出の促進と

医療、教育、社会福祉制度の向上を目指す政府の取り組みを反映

して、公共支出の増加が続いている。だが、民間部門を取り巻く

環境は悪化しており、回復の重しとなる可能性がある。

2009 年 8 月の消費者物価は+6.4%に低下したが、依然として 3~6%の政府目標を上回っている。1 年ほど前の 13.7%の半分以下ま

で鈍化しているとはいえ、インフレ圧力が存在しないわけではな

く、特に物価の上昇傾向になかなか歯止めがかからないこと、寛大

な賃上げなどが懸念材料となっている。SARB はこうした懸念を認

識しているが、重要な賃上げ交渉がインフレ率だけでなくインフレ

目標レンジを大幅に上回る水準で妥結したにもかかわらず、それま

での累計 450bp の利下げに続いて 8 月に予想外の 50bp の利下げに

踏み切った。追加利下げの背景には、ランド高に加えて、根強いイ

ンフレにようやく沈静化の兆しが見られたことがある。こうした状

況が続いた場合、一段の利下げが実施される可能性も否定できな

い。だが、SARB総裁の交代により予想が難しくなっている。

景気と CPI 政策スタンス

-20-15-10

-505

10

4Q07 2Q08e 4Q08e 2Q09e 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

0

5

10

15

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-8-6-4-202

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08e 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

02468101214

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y- o- y (RHS)

安定化しているが回復はまだ先 南アフリカは若干のタイムラグを置いて世界的な景気低迷の影響

を受けており、従って回復も遅れる可能性がある。1Q の前年比-

1.3%に続いて 2Q の GDP も同-2.8%となり、少なくとも 3Q もマ

イナス成長が続く見通しである。製造業部門が も深刻な影響を

受けており(鉱業セクターが著しく低迷)、政府の支援策や公共

投資が導入されているセクターは健闘している。政府支出が奏功

して景気後退は緩やかなものにとどまっており、早期に後退局面

から脱する可能性がある。しかし、民間部門の低迷と投資不足に

より経済基盤が弱体化し、回復が緩やかなものとなる公算もあ

る。今年 4 月の議会選挙後、政局は安定化しており、極端な政策

変更はないと見られるが、発言力を強めている与党内の左派勢力

が自らの推す政策の導入を求めている。

金利は 2008 年 12 月から 2009 年 8 月までに合計 500bp 引き下げら

れており、利下げが打ち止めとなったかどうかはまだ不明だ。11月に退任する南アフリカ中銀(SARB)のムボウェニ総裁の後任に

マーカス元副総裁が指名されたことも、賃金交渉が予想の上限で

妥結された直後の 8 月の予想外の利下げにより生じた不透明感を

増幅させた。南アフリカのインフレ率は依然として高いが、3~6%の目標レンジまで 1%の水準に大幅に低下している。だが、こ

こ 1、2 年、物価の上昇圧力は根強く、大幅な賃上げ合意もインフ

レ改善の阻害要因となっている。財政面では、財政上の柔軟性の

高い国による景気後退に対する当然の対応として、政府支出が拡

大されている。しかし、政府の支出計画の大半は半永久的な支出

の拡大を促すもので、長期的な政府債務の増加につながる可能性

がある。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 2.9 1.0 -1.3 -2.8 -1.8 -1.2 0.9 1.2 2.0 2.2 鉱工業生産 (前年比%) 3.2 -6.2 -13.2 -18.7 -14.0 -6.6 1.4 10.8 11.3 9.1 CPI (四半期末%、前年比) 13.0 10.3 8.5 6.9 6.3 6.2 5.5 5.8 5.8 5.9 PPI (四半期末%、前年比) 16.0 11.0 5.3 -4.0 -1.5 1.3 3.8 5.9 5.7 7.2 貿易収支 (% GDP) -4.2 -3.4 -3.2 0.7 1.7 -0.9 -0.5 1.8 2.6 -0.1 外貨準備高 (USDbn) 30.5 30.2 30.0 31.5 32.0 32.0 32.5 33.0 33.8 34.5 政策金利, 四半期末(%) 12.0 11.5 9.5 7.5 7.0 7.0 7.0 7.0 7.0 7.5 5年利回り, 四半期末 (%) 9.0 7.3 8.2 8.6 8.2 8.1 8.2 8.5 8.5 8.5 ZAR/USD, 四半期末 8.29 9.53 9.50 7.71 7.50 7.75 8.00 7.75 8.25 8.50 ZAR/EUR, 四半期末 11.64 13.34 13.78 10.82 10.88 11.63 12.00 11.63 12.38 12.75

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 85

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

南アフリカ:チャート一覧 金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

0

2

4

6

8

10

1/05 8/05 3/06 10/06 5/07 12/07 7/08 2/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 2yr spread over US-Libor

778899

10

3M 6M 1y r 5y r 10y r 15y r

(%)

Now +4 months - 4 months

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

5

7

9

11

13

15

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 20082009e

0102030405060

(%)

ZAR vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

75100125150175200225

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

05

101520253035

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

0

50

100

150

200

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserv es (RHS)

2009e

2011e2008

2007

2010e

0.0

1.0

2.0

3.0

-8.0-6.0-4.0-2.00.02.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0100200300400500600700

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0

200

400

600

800

1000

(spre

ad bp

s)

MSCI South Africa sub-index (LHS)EMBI South Africa sub-index (RHS)

0

200

400

600

800

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spr

ead

bps)

South Africa 10y r Gov t.EMBI South Africa sub-index

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 86

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

南アフリカ:内外要因

インフレ低下、ランド高、財政赤字の拡大に加えて 11 月のムボウェニ SARB 総裁退任で不透明感が増大。

これまでの ANC の政策は革命というより進化 景気後退終了後も財政赤字拡大を促す支出が続く見込み

ズマ大統領は、ANC の内紛に伴う混乱が続くなかで大統領に就任

した。ANC 内の派閥間の緊張関係は続いているものの、政局はや

や安定化している。ズマ大統領は主要ポストを左派と中道派から

任命しつつ、政府機関に対する信任を損なうことを巧みに避けて

いる。政策の重点は医療、教育、貧困層支援策のための支出拡大

にシフトしている。南ア労働組合会議(COSATU)と南ア共産党

(SACP)は論議の的になっている主張を断念したわけではない

が、これまでのところ、土地改革、対内直接投資規制の強化、イ

ンフレ・ターゲット制の廃止といった政策はいずれも実現してい

ない。しかし、政府の経済政策運営の重要性が増すなか、民間部

門が厳しい状況に直面しているため、長期的に成長が抑制される

可能性がある。

ここ数年、財政収支は黒字となってきたが、再び赤字に転落して

いる。2008 年前半の 71 億ランドの黒字から 2009 年前半には 752億ランドの赤字に悪化しており、年末までに赤字額は倍増する見

込みである。南アフリカが柔軟な財政政策を通じて不況を乗り切

ることができたのは、これまでの財政黒字と債務負担が低水準に

とどまっていたことによるところが大きい。しかし、財政赤字拡

大につながる大規模で高コストの政府の施策に対する支出は景気

後退脱出後も続く見通しである。大規模なインフラ整備プロジェ

クトに加えて、国民皆保険制度、年金制度、社会福祉手当の大幅

な拡充などが計画されており、財政赤字が続く公算が大きい。

歳入減にもかかわらず政府支出は高水準を維持 財政黒字は過去のもの

-100-75-50-25

0255075

ZAR

bn

-100-75-50-250255075

Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec Jan Feb Mar

ZAR bn

Budget deficit, cum - 2007/08 Budget deficit, cum - 2008/09Budget deficit, cum - 2009/10 Govt expenditure - 2007/08Govt expenditure - 2008/09 Govt expenditure - 2009/10

-8

-6

-4

-2

0

2

04 05 06 07 08 2009e 2010e 2011e

Consolidated government balance (% of GDP)

Forecast

ムボウェニ SARB 総裁が退任 ZAR 高がインフレ低下に貢献も持続性は不明

ムボウェニ SARB 総裁が 11 月に退任し、マーカス新総裁が就任す

る。マーカス氏の就任は今後の金融政策を決定付けるばかりでな

く、同氏を指名したズマ大統領の才覚も問われることになる。名

家出身のマーカス氏はアフリカ民族会議(ANC)の信望の厚い関

係者であり、ABSA Bank 会長就任前には財務次官(1996~99 年)

と SARB 副総裁(1999~2005 年)を歴任した。またマーカス氏の

指名は、ズマ大統領が主要人事においてリスクをとらない方針で

あることを示しており、重要ポストに白人女性を指名したこと

は、性差意識のなさを強調している。だが、ムボウェニ総裁の退

任に伴い、マーカス新総裁のスタンスが明確になるまでは金融政

策の不透明感が増すことになる。

この 1 年、インフレ率が急低下しているが、2009 年もインフレ圧

力が続いており、懸念は解消していない。特にサービスセクター

の価格が堅調だ。また、ここ 1 年世界の食品とエネルギーの価格

は急低下しているが、南アフリカでは食品価格はなかなか低下し

ていない。2010 年の賃上げが高水準で妥結したことが将来的なイ

ンフレリスクを生む可能性もある。電力不足に加えて、発電設備

の建設コストが巨額に達するため、電力価格の大幅な上昇圧力が

生じており、当面、価格の上昇傾向が続く見通しである。3Q には

ランド高がインフレ抑制効果を発揮しており、ランド高が続く限

り物価上昇圧力が緩和される可能性があるが、長期的にランド高

のディスインフレ効果を期待するのは間違いである。

中銀総裁の交代で追加利下げ見通しが不透明に 食品価格の軟化とランド高に伴いインフレ率が鈍化

56789

101112131415

Jan-07 Jun-07 Nov-07 Apr-08 Sep-08 Feb-09 Jul-09

SARB policy rate CPI (y-o-y, % )

-5

0

5

10

15

20

25

y-o-y

%

6

7

8

9

10

11

12

Jan-07 Jun-07 Nov-07 Apr-08 Sep-08 Feb-09 Jul-09

Headline CPI Food inflationPPI USD/ZAR (RHS)

Source: SARB, Bloomberg and HSBC

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 87

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

南アフリカ:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 4.9 5.0 5.3 5.1 3.0 -1.8 1.6 2.8 名目 GDP (USDbn) 216.9 243.5 257.2 283.5 276.1 298.4 318.1 318.9 1 人当たり GDP (USD) 4,594 5,134 5,427 5,925 5,672 6,028 6,312 6,264 民間消費 (% 前年比) 6.7 6.9 8.3 6.6 2.3 -2.5 1.2 2.5 政府支出 (% 前年比) 6.2 4.8 5.1 4.8 5.0 4.8 5.1 5.3 投資 (% 前年比) 8.9 8.9 13.8 17.1 10.2 5.5 7.1 7.5 鉱工業生産 (% 前年比) 3.3 4.2 4.9 5.5 1.0 -13.1 8.1 3.5 国内総貯蓄 (% GDP) 13.0 13.3 12.5 13.9 15.4 18.0 17.2 17.1 失業率 (% 年末) 26.2 26.5 25.5 23.0 21.9 24.0 24.5 23.5

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 1.4 3.4 4.7 7.1 11.5 7.2 5.8 6.5 CPI, 年末 (% 前年比) 4.3 4.8 4.2 8.6 10.3 6.2 5.9 6.5 PPI, 年末 (% 前年比) 1.9 4.8 9.3 9.5 11.0 1.3 7.2 6.0 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 7.5 6.5 9.1 8.8 12.4 6.5 8.7 8.5

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 12.8 24.0 23.1 23.6 14.5 6.5 7.5 15.8 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 13.5 20.0 25.7 21.6 14.0 4.7 3.5 6.5 政策金利 (%) 7.5 7.0 9.0 11.0 11.5 7.0 7.5 8.0 5 年利回り, 年末 (%) 7.5 7.3 8.2 8.7 7.3 8.1 8.5 8.3 ZAR/USD, 年末 5.63 6.33 7.01 6.86 9.53 7.75 8.50 9.25 ZAR/USD, 平均 6.43 6.33 6.77 7.05 8.27 8.06 8.13 8.88 ZAR/EUR, 年末 7.66 7.54 9.25 10.01 13.34 11.63 12.75 13.41 ZAR/EUR, 平均 8.00 7.88 8.51 9.67 12.41 11.69 12.19 12.87

対外部門

商品輸出 (USDbn) 43.8 51.4 58.9 69.7 79.9 66.6 69.3 71.1 商品輸入 (USDbn) 48.5 56.9 70.4 79.7 88.0 67.8 71.2 73.1 貿易収支 (USDbn) -4.7 -5.5 -11.5 -10.0 -8.1 -1.2 -1.9 -2.0 経常収支 (USDbn) -6.9 -9.2 -16.4 -20.6 -20.5 -15.7 -18.5 -20.3 経常収支 (% GDP) -3.2 -3.8 -6.4 -7.3 -7.4 -5.3 -5.8 -6.4 純対内直接投資 (USDbn) -0.6 5.2 -6.0 3.4 12.5 8.7 5.6 7.0 純対内直接投資 (% GDP) -0.3 2.1 -2.3 1.2 4.5 2.9 1.8 2.2 経常収支+対内直接投資 (% GDP) -3.5 -1.6 -8.7 -6.1 -2.9 -2.3 -4.0 -4.2 輸出 (% 前年比) 27.4 17.3 14.6 18.4 14.7 -16.7 4.1 2.5 輸入 (% 前年比) 37.9 17.3 23.8 13.2 10.4 -23.0 5.1 2.5 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 12.8 18.3 22.7 29.2 30.2 32.0 34.5 36.0 輸入カバー月数 3.2 3.9 3.9 4.4 4.1 5.7 5.8 5.9

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 26.1 26.4 33.1 49.5 57.0 48.0 51.4 57.8 対外債務総額 (USDbn) 43.6 46.2 59.4 75.3 71.8 85.0 90.0 100.0 短期対外債務 (外貨準備%) 87.5 82.6 90.5 82.2 84.0 82.8 79.7 79.2 民間対外債務 (USDbn) 6.3 6.5 9.8 10.1 11.1 11.5 12.1 12.7 連結財政収支 (% GDP) -2.0 -0.5 0.2 0.7 -0.3 -5.8 -5.4 -5.7 政府財政収支 (% GDP) -2.1 -0.2 0.9 1.3 0.2 -5.2 -3.5 -2.7 プライマリーバランス (% GDP) 1.4 2.9 3.2 3.4 2.2 -3.3 -2.5 -2.7 公的部門対内債務総額 (ZARbn) 443.6 475.2 496.0 492.8 516.5 625.0 690.7 749.4 公的部門対内債務総額 (% GDP) 31.8 30.8 28.5 24.7 22.6 26.0 26.7 26.5 公的部門対外債務総額 (USDbn) 31.7 34.3 39.3 52.5 60.0 67.0 70.0 75.0 公的部門対外債務総額 (% GDP) 14.6 14.1 15.3 18.5 21.7 22.5 22.0 23.5 公的部門債務総額 (% GDP) 46.4 44.9 43.8 43.2 44.3 48.4 48.7 50.0

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 88

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

台湾:概況

輸出の伸びは徐々に改善しているが、景気回復の 大のけん引役となる可能性が高いのは内需の力強い回復。

Christopher Wong: +852 2996 6917 [email protected]

ようやく回復へ 台湾経済がようやく回復の兆しをみせている。台湾の実質 GDP は

2009 年 1Q に過去 大となる前年比 10.1%の縮小を記録した後、

2Q には同-7.5%へと予想外に改善した。さらに、前期比季調済

みベースでは 4.8%のプラス成長となり、台湾経済が回復に向かい

つつあることを示した。向こう数四半期に、内需の回復ペースは

輸出の回復を凌ぐ可能性が高い。国内のクレジット市場と金融市

場は基本的に安定しており、中台関係の改善と金融緩和が内需を

押し上げている。輸出は底の水準から回復しているが、欧米の需

要が依然低調にとどまっているため、回復ペースは緩やかなもの

となりそうである。現在、HSBC では台湾の 2009 年の成長率を-

4.2%、2010 年は+4.4%、2011 年は+4.9%と予想している。

近の内閣改造により、馬政権は台風 8 号による被害への対応を

巡る野党の批判を 小限に抑えることができた。政治的な圧力か

ら政府は早急に復旧工事に着手することになるとみられ、2010 年

に予定されている発表済みの大規模な公共建設計画を繰り上げ、

内需の一層の下支えを図る可能性もある。中国との金融覚書と経

済協力枠組み協定(ECFA)の調印は遅れているが、全体的にみる

と中期的に安定した中台関係が維持される見込みで、台湾への投

資拡大と景気信頼感の改善を通じて景気の浮揚効果を発揮するこ

とになろう。しかし、大半のアジア諸国に比べて台湾は深刻な構

造的な課題に直面しているため、アジア全体の回復には出遅れる

見通しである。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) -1.0 -8.6 -10.1 -7.5 -3.2 4.7 6.2 4.4 3.4 3.6 鉱工業生産 (前年比%) 0.5 -24.2 -32.4 -16.6 -6.5 4.7 7.6 9.4 7.8 5.5 CPI (四半期末%、前年比) 3.1 1.3 -0.1 -2.0 0.1 0.8 0.6 1.1 1.4 1.5 WPI (四半期末%、前年比) 6.1 -9.7 -9.3 -13.7 -7.5 -1.2 3.0 3.5 4.0 4.2 貿易収支 (% GDP) 1.6 7.0 9.9 8.7 2.1 6.9 8.7 7.5 2.2 6.5 経常収支 (% GDP) 1.9 8.1 13.9 11.6 1.8 5.3 8.6 7.7 2.3 6.8 外貨準備高 (USDbn) 281.1 291.7 300.1 317.6 319.7 324.0 333.4 342.0 344.4 352.4 政策金利, 四半期末(%) 3.5 2.0 1.3 1.3 1.3 1.3 1.4 1.5 1.6 1.8 5年利回り, 四半期末 (%) 2.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.3 1.4 1.5 1.6 TWD/USD, 四半期末 32.20 32.80 33.90 32.80 32.90 31.5 31.0 30.0 29.5 29.0 TWD/EUR, 四半期末 45.72 45.59 44.75 45.92 47.71 47.25 46.50 45.00 44.25 43.50

Sources: HSBC, CEIC

2010 年にはインフレ圧力が台頭 2009 年末まで金利は据え置き、2010年初めに段階的な引き締めへ

8 月に入り台湾のデフレ圧力が低下し、ヘッドライン CPI は 7 月

の前年比-2.3%に対して同-0.8%となった。これは主に食品価格

の急上昇を反映したもので、8 月の台風 8 号による一時的な供給

の混乱が響いて食品価格は前月比+6.6%に達した。コア CPI の低

下率も 7 月の前年比-0.9%から 8 月は同-0.8%にわずかに縮小し

た。卸売価格の下落率も、農産物価格の上昇を主因に 7 月の前年

比-14.1%から 8 月は同-11.2%に縮小した。今後、世界経済の回

復に伴い、2010 年にはインフレ圧力が再び台頭する見通しであ

る。さらに、低金利と国内の潤沢な流動性を反映して資産価格が

上昇する可能性がある。このため、HSBC では台湾の 2010 年の

CPI 上昇率を+1.1%、2011 年は+1.6%と予想している。

台湾中銀(CBC)は 9 月の政策会議において政策金利を史上 低

の 1.25%に据え置いた。景気は回復しているが、失業率が高止ま

りしているため、政策当局は依然として景気見通しについて懸念

を抱いている。成長モメンタムを維持するため、当局は年内いっ

ぱい金融緩和策を維持する見通しである。しかし、インフレ率が

上昇傾向にあり、特にエネルギー価格が急上昇する見込みであ

る。このため、CBC は 2010 年 1Q 末までに利上げに転じると予想

される。ただし、その理由はインフレ低下に歯止めがかかってい

ることのみにあるわけではなく、過剰流動性懸念の台頭と資産価

格バブルの発生リスクも影響している。段階的な利上げではこれ

らの要因は払しょくできないものの、台湾はアジアで 初に利上

げに転じる国の 1 つとなる可能性が高い。

景気と CPI 政策スタンス

-40-30-20-10

01020

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

-3-2-1012345

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-5-4-3-2-10

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma)

-2

0

2

4

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y-o-y (RHS)

Page 90: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 89

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

台湾:チャート一覧 金利スプレッド(対 USD Libor) イールドカーブ

-4

-3

-2-1

0

1

1/06 5/06 9/06 1/07 5/07 9/07 1/08 5/08 9/08 1/09 5/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 2y r spread ov er US-Libor

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

2yr 5yr 10y r 15yr 20yr

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

2930313233343536

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 20082009e

0

2

4

6

8

10

(%)

TWD v s USD (LHS) Annualised v olatility (RHS)

90100110120130140

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

050

100150200250300

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

(USD

bn)

6912151821

(% of reserves)

International reserv es, IF I definition (LHS)Short-term debt % reserv es (RHS)

2010e2007

2008

2011e

2009e

0.0

0.5

1.0

-4.5-4.0-3.5-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.50.0(central govt balance % GDP)

(real

rate

s)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 90

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

台湾:内外要因

中銀の金融緩和策に加えて、政府のインフラ投資奨励策、台中関係の正常化が引き続き景気回復を下支えする見込み。

民間消費が予想外に拡大 固定資産投資は緩やかに回復

2Q の GDP 統計における も明るい点は民間消費の著しい回復

で、1Q の前年比-1.6%に対して 2Q は同+0.4%となった。さら

に、7 月の実質小売売上高は前年比+3.6%と、2008 年 1 月以来

大の増加を記録した。8 月の自動車販売台数は 2002 年以降 大と

なる前年比+113%の伸びを示した。総額 1,860 億台湾ドルの商品

購入券の配布、一連の減税措置などの景気対策が消費支出を刺激

したことは確かだが、それ以外の要因も貢献しており、特に台中

関係の改善と資産価格上昇による資産効果が消費の大きな押し上

げ要因になったと考えられる。ただし、労働市場は依然として不

安定で、所得の伸びの鈍化が続いており、台湾政府にとってなお

課題は多い。

また、固定資産投資も 1Q の前年比-33.4%から 2Q は同-23.7%に改善した。季調済みベースではさらに大幅に改善しており、1Qの前期比-21.2%に対して 2Q は同+30.7%となった。台湾の固定

資産投資の伸びに密接に連動する資本財輸入は、政府の公共イン

フラ整備計画と金融緩和を反映して 6 月の前年比-23.9%から 7 月は同-13.6%に改善した。だが、固定資産投資の冷え込みに歯止

めがかかったわけではない。民間固定資産投資は依然低調で、民

間企業が余剰能力を抱え込み、投資が実質的に不要となる原因に

なった西側諸国の実需の急減による打撃から立ち直るにはまだ時

間がかかろう。このため、公共部門が固定資産投資の回復のけん

引役となる見通しである。

民間消費の推移(3 カ月移動平均、%) 資本財輸入が回復、固定資産投資が活発化

-1 0

-5

0

5

1 0

1 5

0 0 0 1 0 2 0 3 0 4 05 0 6 0 7 0 8 0 9

-1 0 0

-5 0

0

5 0

1 0 0

R e a l re ta il s a les (L HS )Do m e s tic m o tor v e h ic le s a le s (R HS )

-6 0

-4 0

-2 0

0

2 0

4 0

6 0

9 9 0 0 0 1 0 2 0 3 04 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9C a p ita l g o o d s im p o rts (% y r 3 m m a )

輸出が順調に回復 唯一の下方リスクは所得の減少

台湾の 8 月の輸出は台風 8 号による甚大な被害を考慮すると予想

以上に健闘したと言え、7 月の前年比-24.4%に対して同-24.6%となった。輸出の減少幅が予想より小幅にとどまった理由は、中

国を中心とするアジアの新興諸国の急回復にある。実際、中国で

は 3 回にわたる規制緩和を受けて資材調達額がおよそ 130 億ドル

に達しており、台湾の輸出企業の楽観論を強める結果となってい

る。しかし、米国と欧州の 終需要は依然として低迷しており、

輸出全体の回復見通しに歪みが生じている。明るい材料は、現在

の回復傾向が持続すれば、台湾の年間輸出の伸びが今年 12 月にプ

ラスに転じる可能性が高いことである。

台湾の 8 月の季調済み失業率は、大学の新卒者が労働力に加わっ

たことを主因に過去 高を更新し、6.1%となった。しかし、失業

率の上昇は頭打ちとなっているようである。さらに、労働問題評

議会の発表によると、無給の自宅待機状態にある労働者数は 8 月

も一段と減少して 58,983 人となり、ピークとなった 3 月の 238,975人の約 4 分の 1 にとどまった。これにより、雇用情勢が多少安定

化していることが確認された。ただし、民間企業が設備投資の拡

大に慎重であることを考慮すると、目先、失業率は高止まりする

見込みで、これが民間消費の回復の足かせとなる見通しである。

アジアの需要が台湾の輸出回復をけん引(3 カ月移動平均、%) 労働市場の低迷が民間消費の重しに

-60

-40

-20

0

20

40

60

99 0 0 0 1 02 03 0 4 05 06 0 7 0 8 09Ex po rts to C hin a E urope U SA

01234567

93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09U nem ploy m ent rate s a (% )

Page 92: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 91

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

台湾:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 6.2 4.2 4.8 5.7 0.1 -4.2 4.4 4.9 名目 GDP (USDbn) 331.2 356.2 364.9 385.5 393.0 364.1 419.0 474.7 1 人当たり GDP (USD) 14,645 15,701 16,011 16,857 17,131 15,827.6 18,160.0 20,512.9 民間消費 (% 前年比) 4.5 3.0 1.8 2.3 -0.3 0.4 2.1 2.6 政府支出 (% 前年比) -0.5 1.1 -0.4 0.9 1.1 2.4 2.0 1.2 投資 (% 前年比) 19.5 1.2 0.9 1.9 -10.6 -16.3 3.8 3.7 鉱工業生産 (% 前年比) 9.3 3.8 4.7 7.8 -1.8 -13.6 7.6 7.8 国内総貯蓄 (% GDP) 26.0 25.6 27.1 29.0 25.8 23.1 25.5 28.4 失業率 (% 年末) 4.4 4.1 3.9 3.9 4.1 5.9 5.8 5.2

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 1.6 2.3 0.6 1.8 3.5 -0.7 1.1 1.6 CPI, 年末 (% 前年比) 1.6 2.2 0.7 3.3 1.3 0.8 1.5 1.7 WPI, 年末 (% 前年比) 6.0 1.7 6.4 8.6 -9.7 -1.2 4.2 5.2 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 2.7 2.7 1.4 1.7 -0.3 -1.2 1.8 2.5

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 7.4 6.2 6.2 4.3 2.7 7.8 9.2 7.2 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 8.4 6.0 1.9 0.9 -1.0 -1.3 -0.6 0.4 政策金利, 年末 (%) 1.8 2.2 2.7 3.4 2.0 1.3 1.8 2.2 5年利回り, 年末 (%) 1.9 1.8 1.9 2.5 1.0 1.0 1.6 1.9 TWD/USD, 年末 31.74 32.83 32.59 32.40 32.80 31.50 29.00 28.00 TWD/USD, 平均 33.41 32.15 32.66 32.78 31.40 32.94 30.19 28.38 TWD/EUR, 年末 43.20 38.73 42.97 47.30 45.59 47.25 43.50 42.00 TWD/EUR, 平均 42.12 39.42 41.04 45.57 45.73 47.65 45.28 42.56

対外部門

商品輸出 (USDbn) 182.4 198.5 223.8 246.5 254.9 201.9 221.2 244.0 商品輸入 (USDbn) 165.0 179.0 199.6 216.1 236.7 176.8 195.1 213.1 貿易収支 (USDbn) 17.4 19.5 24.2 30.4 18.3 25.0 26.0 31.0 経常収支 (USDbn) 19.7 17.6 26.3 33.0 24.9 29.4 26.5 33.2 経常収支 (% GDP) 6.0 4.9 7.2 8.6 6.3 8.1 6.3 7.0 純対内直接投資 (USDbn) -5.2 -4.4 0.0 -3.3 -4.9 -6.5 1.6 -2.2 純対内直接投資 (% GDP) -1.6 -1.2 0.0 -0.9 -1.2 -1.8 0.4 -0.5 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 4.4 3.7 7.2 7.7 5.1 6.3 7.0 7.1 輸出 (% 前年比) 21.1 8.8 12.8 10.1 3.4 -20.8 9.6 10.3 輸入 (% 前年比) 32.6 8.5 11.5 8.2 9.5 -25.3 10.4 9.2 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 241.7 253.3 266.1 270.3 291.7 324.0 352.4 390.3 輸入カバー月数 17.6 17.0 16.0 15.0 14.8 22.0 21.7 22.0

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 278.4 324.5 336.3 346.6 411.9 404.5 454.5 498.1 対外債務総額 (USDbn) 80.9 86.7 85.8 94.5 90.4 114.9 118.8 136.2 短期対外債務 (外貨準備%) 25.4 29.1 27.9 30.8 27.0 30.3 28.5 28.6 民間対外債務 (USDbn) 75.9 72.8 75.2 91.1 88.9 113.0 116.5 127.5 政府財政収支 (% GDP) -3.2 -1.2 -0.5 -0.3 -1.3 -4.2 -2.9 -1.0 公的部門対内債務総額 (TWDbn) 2,543.8 2,831.0 3,046.0 3,394.8 3,705.0 4,193.8 4,558.1 4,728.5 公的部門対内債務総額 (% GDP) 23.0 24.7 25.6 26.9 30.0 35.0 36.0 35.1 公的部門対外債務総額 (USDbn) 5.0 13.9 10.6 3.5 1.5 1.9 2.3 8.7 公的部門対外債務総額 (% GDP) 1.5 3.9 2.9 0.9 0.4 0.5 0.6 1.8 公的部門債務総額 (% GDP) 24.5 28.6 28.5 27.8 30.4 35.5 36.6 36.8

Source: HSBC, CIEC

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 92

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

タイ:概況

製造業部門の回復に支えられ景気回復が本格化している。デフレは短期で終了する見通しで、政策金利は底入れして

おり、次の金利調節は 2010 年 2Q の利上げとなる見込み。

Frederic Neumann: +852 2822 4556 [email protected]

デフレは一時的 タイ中央銀行は堅実な政策運営を維持

タイのインフレ率は 1 月以降マイナスとなっており、1977 年以来

も長い期間にわたり物価の下落が続いている。その主因は国内

エネルギー価格の低下にあり、衣料品の値下げ、住宅関連費用の低

下もインフレ低下に貢献している。注目すべき点として、タイでは

コアインフレ率とエネルギー価格との相関性が強い(相関係数は

0.7、6 カ月遅行)。原油価格と為替レートが現行水準で変わらない

と想定しても、CPI のエネルギー品目の価格は今後上昇し始める見

通しで(12 月までの公共料金補助金制度の延長により上昇幅が多

少抑制される)、いずれその影響がコア価格に波及することにな

る。景気見通しが改善しているうえ、ベース効果も弱まるため、

年末にかけてデフレからインフレに変化する公算が大きい。

タイ中銀(BOT)は景気の下支えのため積極的な緩和策を実施し

ており、政策金利は 250bp 引き下げられ 5 年来の 低値となる

1.25%とされている。これに対して、2000 年以降の平均値は 2.5%である。しかし、実体経済への利下げの波及効果は低く、 低貸

出金利の低下幅はおよそ 130bp にとどまる。GDP が 2Q に回復して

おり、デフレ局面は短期で終わるとみられるため、1.25%が政策金

利の底になる見込みである。ただし、BOT は景気回復を後押しす

るため、2010 年半ばまで金利を据え置く可能性がある。BOT は、

利上げを検討するのは“実需”を反映してインフレ圧力が生じて

いる場合のみであり、原油価格上昇なと供給サイドのショックに

起因するインフレへの対応は無意味と語っている。しかし、GDPがプラス成長に回復しているため、2010 年 2Q には BOT は利上げ

に転じる見通しである。

景気と CPI 政策スタンス

-20-15-10-505

1015

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y-

o-y)

-6-4-20246810

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial growth (LHS) CPI (RHS)

-8

-6-4

-202

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qma

)

-5

0

5

10

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y-o-y (RHS)

成長率が回復 タイ経済は 2Q に回復に転じ、GDP は前期比+2.3%(季調済み)

となった。これに対して、2008 年 4Q は 6%、2009 年 1Q は 2%の

マイナスだった。本格回復への道のりは長いが、タイの経済情勢

が改善に向かっていることは確かだ。製造業生産と輸出が前期比

で大幅に回復しており、内需関連指標も改善している。これには

中銀による積極的な利下げが大きく貢献しており、政府の景気対

策も奏功している。全体的にみて、2009 年のタイの成長率は-

2.8%となり、2010 年には潜在成長率をわずかに下回る+4.5%に急

回復する見通しである。主なリスクは政局で、政情不安は景気見

通しの不透明化につながる。タイ政局の不透明感は依然として大

きい。

以前から注目を集めていた 3 カ年投資計画が 8 月中旬に議会で承

認された。その総額は 5 月時点の 1.4 兆バーツから 1.1 兆バーツ

(310 億米ドル)に修正され、このうち、約 270 億バーツが 2009年度(2009 年 9 月まで)中、残りは 2010 年 9 月までに支出され

る。しかし、この大規模な支出計画を反映して財政赤字は拡大す

ることになり、政府債務残高も増加する見通しである。

対外収支に関しては、タイの経常黒字額は前年同期の 30 億米ドル

から 114 億米ドルに拡大しており、輸入が輸出を上回るペースで

減少した結果、特に貿易黒字が拡大している。中銀のバーツ高抑

制策を反映して外貨準備が増加しており、6 月末時点で 1,200 億米

ドルに達した。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 3.9 -4.2 -7.1 -4.9 -3.1 3.8 5.4 4.5 4.4 3.6 鉱工業生産 (前年比%) 6.1 -6.7 -14.4 -8.4 2.0 3.0 4.0 4.0 4.5 4.5 CPI (四半期末%、前年比) 6.1 0.4 -0.2 -4.0 -0.5 2.0 3.0 3.8 3.8 3.8 PPI (四半期末%、前年比) 19.0 -1.7 -4.0 -10.5 -12.5 6.0 9.0 12.0 12.0 10.0 貿易収支 (% GDP) -0.3 -2.1 12.6 6.2 1.3 -2.6 10.8 4.2 -0.4 -1.5 経常収支 (% GDP) -2.0 -3.1 14.7 3.7 0.3 -3.1 11.0 2.1 -1.6 -2.3 外貨準備高 (USDbn) 102.4 111.0 116.2 120.8 122.1 121.41 131.08 134.83 136.60 137.73 政策金利, 四半期末(%) 3.8 2.7 1.5 1.3 1.3 1.3 1.3 1.5 1.8 2.0 5年利回り, 四半期末 (%) 4.3 2.5 2.6 3.2 3.3 3.3 3.4 3.6 3.8 3.8 THB/USD, 四半期末 33.90 34.70 35.47 34.06 34.00 33.00 32.50 32.00 31.50 31.50 THB/EUR, 四半期末 48.14 48.23 46.82 47.68 49.30 49.5 48.8 48.0 47.3 47.3

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 93

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

タイ:チャート一覧 金利スプレッド(対 USD Libor) イールドカーブ

-3.0-2.0-1.00.01.02.03.0

1/06 5/06 9/06 1/07 5/07 9/07 1/08 5/08 9/08 1/09 5/09 9/09

(%)

3M spread over US-Libor 2yr spread over US-Libor

-1.5

0.5

2.5

4.5

6.5

1yr 2y r 3yr 4yr 5y r 7yr 10yr 15yr

(%)

Now - 4 months+ 4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

26

30

34

38

42

46

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 20082009e

0

5

10

15

(%)

THB v s USD (LHS) Annualised v olatility (RHS)

75

100

125

150

175

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

020406080

100120

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

01020304050

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2009e

2011e

2008

2007

2010e-3.0

-2.0-1.0

0.0

1.02.0

3.0

-5.0-4.0-3.0-2.0-1.00.01.02.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

050

100150200250300350

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

020040060080010001200

(spre

ad bp

s)

MSCI Thailand sub-index (LHS)Thailand HSBC av. spread

C

-2000

200400600800

1000

1/055/059/051/065/069/061/075/079/071/085/089/081/095/099/09

(spre

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ps)

Thailand 5yr Govt. Thailand HSBC av. spread

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 94

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

タイ:内外要因

製造業生産と輸出が前期比で大幅に増加。また、企業と消費者のセンチメントも改善しており、国内要因も明るさを

増している。

製造業生産が… 企業景況感の回復が続く…

タイの製造業生産高が急回復している。前月比で生産はすでに 6カ月連続で増加しており、3 カ月間の前期比年率ベースでみると

1 月の-65%を底に 7 月には+30%に回復した。前年比では依然

としてマイナスが続いているが、減少幅は-21%から-7%に縮

小している。 も力強い回復を示しているのは食品とエレクトロ

ニクスで、エレクトロニクス業界では中国の農村の電気製品普

及策が貢献している。世界経済の回復と国内の景気信頼感指数

の改善を踏まえると、今後も製造業部門の回復傾向が続く見通

しである。

政局の混乱にもかかわらず、タイ企業の景況感は BOT による積

極的な利下げと政府の景気対策が奏功して 2008 年 11 月の底の水

準から着実に改善している。外部環境の安定化も貢献しており、

企業の総受注は昨年の 低値から 20 ポイントの上昇を記録して

いる。これは、今後の生産と輸出の拡大を示唆している。企業の

投資意欲も急回復しており、6-7 月は昨年 9 月以降初めて転換点の

50 を上回った。利益、雇用、生産など企業景況感を示す他の項目

も着実に改善している。

…急回復 …企業は設備投資の拡大を検討

-50

-30

-10

10

30

00 01 02 0 3 0 4 0 5 06 07 08 09IP % Yr IP % 3 m /3 m s aa r

3 0

3 5

4 0

4 55 0

5 56 0

9 9 0 0 01 02 03 04 05 0 6 0 7 0 8 09

Bus ines s sen tim e nt in dex inv e stm en t

消費者信頼感が改善… 輸出が上向いているが輸入はそれを上回るペースで改善

企業の楽観論と国内景気の安定化を受け、消費者信頼感も 2 カ月

連続で改善している。絶対水準は依然として低いが、少なくとも

改善傾向にあることは確かだ。また、中銀の総合民間消費指数も

4 カ月連続で回復しており、3 カ月間の前期比の変化率は 3 月の年

率-20%近い水準を底に 7 月は+14.5%に改善した。これは 2Q の

GDP 統計にも反映されており、個人消費支出(季調済み)は 1Qの前期比-3.6%に対して 2Q は+0.4%となった。今後も個人消費

の回復傾向が続く見通しである。

外需の急減に伴い、タイの輸出も昨年末から今年初めにかけて大

幅に減少した。しかし、 近輸出は前期比ベースで回復してお

り、3 カ月ベースの輸出伸び率(季調済み年率)は 1 月の-77%か

ら 7 月は-2%に改善した。輸入はこれを上回るペースで回復して

おり、輸出見通しの改善に伴う中間財需要の増加、原油高、内需

関連指標の回復などを反映して、20 年来の 低値となった今年 2月の-134%から現在では+41%に回復している。このため、月間

ベースの貿易黒字はすでにピークを打った可能性が高い。年初来

の貿易黒字額は前年同期の 14 億米ドルに対して 125 億米ドルとな

っている。

…中銀の消費関連指数が急上昇 …貿易黒字はピークアウト

- 20

- 10

0

10

20

00 01 0 2 0 3 04 05 06 0 7 0 8 09

6070

809010 0

11 012 0

p riv a te c on sum p tio n 3m / 3m saa rc ons um e r co nfid en ce inde x

- 40

- 20

0

20

40

60

99 0 0 01 02 0 3 04 05 0 6 07 08 0 9- 2

- 1

0

1

2

3

tra de ba lanc e, U S Dbn e x po rts % y -o -yim por ts % y -o -y

Page 96: abc3 Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年10 月 abc ハード・コモディティ 新興国市場の急成長(概略は34~38 ページ のAppendix を参照されたい)は、石油などの

Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 95

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

タイ:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 6.4 4.7 5.2 4.9 2.6 -2.8 4.5 4.7 名目 GDP (USDbn) 161.5 176.1 206.7 236.8 273.6 258.2 298.4 334.4 1 人当たり GDP (USD) 2,469 2,708 3,014 3,724 4,116 3,933 4,363 4,673 民間消費 (% 前年比) 6.1 4.9 3.0 1.6 2.5 -0.7 2.6 2.9 政府支出 (% 前年比) 5.8 11.4 2.4 9.2 0.5 7.0 6.0 5.0 投資 (% 前年比) 13.2 10.5 3.9 1.3 1.1 -8.1 7.1 7.1 鉱工業生産 (% 前年比) 11.7 9.1 7.3 8.2 5.3 -7.0 6.0 6.6 国内総貯蓄 (% GDP) 31.7 30.9 32.4 34.1 33.2 32.3 33.0 33.8 失業率 (% 年末) 1.5 1.4 1.0 0.8 1.4 3.3 2.7 2.7

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 2.8 4.5 4.6 2.2 5.5 -0.9 2.6 2.9 CPI, 年末 (% 前年比) 3.0 5.8 3.5 3.2 0.4 2.0 3.8 4.0 PPI, 年末 (% 前年比) 10.1 8.0 2.7 8.7 -1.7 6.0 10.0 11.0 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 2.3 6.9 6.2 3.0 10.2 -1.4 5.0 5.0

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 7.0 4.7 8.8 7.4 5.4 6.6 5.0 5.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 5.4 2.0 -0.9 3.4 15.7 5.9 6.7 6.4 政策金利, 年末 (%) 2.0 4.0 5.0 3.3 2.7 1.3 2.0 2.0 5年利回り, 年末 (%) N/A 5.5 4.9 4.6 2.5 3.3 3.8 4.3 THB/USD, 年末 38.92 41.03 35.45 33.70 34.70 33.00 31.50 31.00 THB/USD, 平均 40.28 40.28 37.93 34.58 33.28 34.35 32.06 31.06 THB/EUR, 年末 52.90 48.42 46.75 49.20 48.23 49.50 47.25 46.50 THB/EUR, 平均 50.69 50.15 47.67 48.07 48.46 49.69 48.09 1.25

対外部門

商品輸出 (USDbn) 94.9 109.4 127.9 150.0 175.3 148.0 162.5 178.6 商品輸入 (USDbn) 93.5 117.6 126.9 138.5 175.1 138.9 156.4 165.8 貿易収支 (USDbn) 1.5 -8.3 1.0 11.6 0.2 9.1 6.1 12.8 経常収支 (USDbn) 2.8 -7.6 2.3 14.0 -0.2 7.9 3.1 9.5 経常収支 (% GDP) 1.7 -4.3 1.1 5.9 -0.1 3.7 2.2 3.4 純対内直接投資 (USDbn) 5.8 7.5 8.5 9.4 7.0 4.6 6.7 6.7 純対内直接投資 (% GDP) 3.6 4.3 4.1 4.0 2.6 1.8 2.2 2.0経常収支+対内直接投資 (% GDP) 5.3 -0.1 5.2 9.9 2.5 4.9 3.6 5.6 輸出 (% 前年比) 21.6 15.2 17.0 17.3 16.8 -15.6 9.8 9.9 輸入 (% 前年比) 25.7 25.8 7.9 9.1 26.4 -20.6 12.6 6.0 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 49.8 52.1 67.0 87.5 111.0 121.4 137.7 614.5 輸入カバー月数 6.4 5.3 6.3 7.6 7.6 10.6 10.8 44.9

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 4.6 8.1 16.9 21.1 22.0 23.0 24.0 25.0 対外債務総額 (USDbn) 51.3 52.0 59.6 61.7 64.8 53.1 56.5 58.1短期対外債務 (外貨準備%) 24.4 31.5 27.7 24.7 21.7 15.6 14.5 3.4 民間対外債務 (USDbn) 36.4 38.0 45.6 49.7 51.8 44.0 46.0 47.0 連結財政収支 (% GDP) 1.4 1.0 2.4 -0.6 0.9 -4.4 -4.0 -3.1 政府財政収支 (% GDP) 0.0 0.3 1.2 -2.3 -1.1 -6.4 -6.1 -5.2 プライマリーバランス (% GDP) 1.1 1.9 2.2 1.6 1.5 1.1 1.6 1.9 公的部門対内債務総額 (THBbn) 2,482.3 2,704.9 3,186.8 3,226.2 3,434.0 4,167.5 4,376.8 4,552.3 公的部門対内債務総額 (% GDP) 38.2 38.1 40.6 39.4 37.7 47.0 45.7 43.8 公的部門対外債務総額 (USDbn) 14.9 14.0 14.1 12.0 13.0 9.3 10.5 11.1 公的部門対外債務総額 (% GDP) 9.2 7.9 6.8 5.1 4.7 3.6 3.5 3.3 公的部門債務総額 (% GDP) 47.4 46.1 47.5 44.5 42.5 50.6 49.3 47.2

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 96

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

トルコ:概況

景気の著しい縮小とトルコ中銀による大幅利下げに伴い金利が急速に収れん。構造改革により利回りの低下が促される

見通し。

Dr Murat Ulgen: +90 212 346 1955 [email protected]

2001 年の危機以来 悪の縮小を記録 インフレ率は急低下しているがコスト上昇圧力に要注意

実体経済は国際的な金融危機による深刻な影響を受けており、2008年 4Q の前年比-6..5%に続いて 2009 年前半は同-10.6%となっ

た。季調済みベースの生産の減少幅はこれよりさらに大きく、2009年 1Q までの 4 四半期の減少幅は 10%を超えた。しかし、耐久財を

対象とした減税策を通じた政府の景気刺激策が奏功し、2Q には前

期比+4.0%前後(季調済み)に急回復した。6 月半ばの減税策の一

部撤廃を受け、3Q に入ってからの高頻度データはまちまちないし

低調にとどまっている。金融緩和の遅行効果を反映して 2Q の景況

は改善した模様だが、財務省による国内債の償還が巨額に達し、

民間部門のクラウディングアウトが生じる可能性があるため、2010年前半には再び軟化する公算もある。EU を中心とする主要輸出市

場の早期回復が実現すれば、トルコの成長見通しも改善しよう。

大規模な生産ギャップと当初の国際コモディティ価格の軟化を反映

してインフレ率は過去 低水準に低下しており、春以降 5.0~6.0%で推移している。これを受けトルコ中銀(CBRT)は 9 月、政策金

利を 16.75%から史上 低の 7.25%に引き下げた。中期的にインフレ

率は低水準にとどまる見通しだが、コモディティ価格の上昇、財政

緩和策(統制価格引き上げ、税制の見直し)、大幅な負のベース効

果(2009 年前半は累計でわずか+1.83%にとどまった)を反映した

コスト上昇圧力により、総合インフレ率が不安定化する可能性があ

る。CBRT は引き続きコアインフレ指標を重視すると見られるが、

世界の金融サイクルの引き締め転換、景気見通しの改善、コモディ

ティ価格の一段の上昇、リスクプレミアムの大幅な低下などを考慮

すると、予想以上に早期に引き締め転換が図られる可能性がある。

景気と CPI 政策スタンス

-24-20-16-12-8-4048

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

4

6

8

10

12

(% y

-o-y

)

GDP (LHS) Industrial grow th (LHS) CPI (RHS)

-6-5-4-3-2-10

4Q04 4Q05 4Q06 4Q07 4Q08e 4Q09e 4Q10e

(% G

DP, 4

qm

a)

0

48

1216

20

(%)

Fiscal balance (LHS) Policy rate (RHS)CPI, % y -o-y (RHS)

国内政局は小康状態 EU 加盟問題が再び関心を集める可能性

2009 年 3 月の地方選挙では与党公正発展党(AKP)の支持率が低

下し、得票率は 2007 年 7 月の総選挙時の 46.5%に対して 38.8%に

とどまった。しかし、政界内の 大勢力であることに変わりはな

く、重要政策課題の決定権を維持している。AKP による 近の民

主化努力、すなわち少数民族のクルド人の人権保護、アルメニア

との関係改善、周辺地域内の紛争仲裁のための積極的な外交政策

などを通じて、国際社会におけるトルコの立場が改善している。

国内では、大幅な景気の縮小からの回復が緩やかなものにとどま

っており、高失業率にあえぐ国民の間で民族主義が高まる可能性

があるが、世論調査にはそのような明確な兆候は見られない。長

年にわたり続いた保守派と世俗派間の争いも鎮静化している。こ

の結果、国内政局は全般に落ち着いている。

トルコの内外政策は EU 内で評価される見通しだが、キプロス問

題の報告書と 12 月の EU 首脳会議の行方が注目される。2006 年、

欧州理事会は EC に対して、キプロス問題が完全に解決するまで

トルコ側が禁止しているギリシャ系キプロス船舶のトルコ国内へ

の入港の承認など、キプロス問題に関する条件の順守状況を 2009年まで調査するよう命じており、10 月中旬の EC 報告書と年末の

首脳会議の重要性が増している。トルコに対して懐疑的な向きに

よる反対意見が強まる可能性もあるが、 終的な結論はトルコの

EU 加盟の前進を意味するものとなる公算もある。その背景には、

トルコの重要性の高まり、民主化に向けた緩やかだが着実な進

展、戦略的に極めて重要なナブッコ・パイプラインプロジェクト

などがある。いずれにしても、この点についてはメルケル首相と

サルコジ大統領の意向を注意深く見守る必要がある。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 1.0 -6.5 -14.3 -7.0 -4.3 4.5 2.8 2.4 3.4 3.0 鉱工業生産 (前年比%) -1.4 -12.6 -22.0 -15.4 -6.4 4.2 4.0 3.5 3.8 3.2 CPI (四半期末%、前年比) 11.1 10.1 7.9 5.7 5.8 6.8 8.4 9.4 9.7 7.7 PPI (四半期末%、前年比) 12.5 8.1 3.5 -1.9 0.4 5.4 5.2 5.8 7.4 7.2 貿易収支 (% GDP) -10.4 -9.6 -8.8 -7.1 -5.8 -6.0 -6.5 -6.6 -6.7 -6.9 経常収支 (% GDP) -6.5 -5.5 -4.6 -3.1 -2.1 -2.0 -2.4 -2.5 -2.7 -2.8 外貨準備高 (USDbn) 76.6 70.1 66.5 64.9 71.1 69.0 70.0 71.5 73.0 73.0 政策金利, 四半期末(%) 16.75 15.00 10.50 8.75 7.25 6.50 6.50 9.50 9.50 9.50 1年利回り, 四半期末 (%) 19.3 15.8 13.5 10.9 8.7 8.5 9.5 10.9 11.3 11.5 TRY*/USD, 四半期末 1.24 1.52 1.67 1.52 1.52 1.58 1.63 1.60 1.62 1.60 TRY*/EUR, 四半期末 1.80 2.13 2.22 2.15 2.20 2.36 2.44 2.39 2.42 2.40

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 97

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

トルコ:チャート一覧 金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

0

5

10

15

20

25

7/07 11/07 3/08 7/08 11/08 3/09 7/09

(%)

3M spread over US-Libor 12M spread over US-Libor

5

7

9

11

3M 6M 9M 12M

(%)

Now -4 months +4 months

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009e0

20

4060

80

100

(%)

TRY vs USD (LHS) Annualised volatility (RHS)

0

200

400

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800

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

c

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

0

20

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60

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2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

0

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100

150

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2010e

2007

2008

2011e

2009e-2.0

0.0

2.0

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8.0

-8.0-6.0-4.0-2.00.0(central govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場 現地通貨建て債務とドル建て債務の利回りスプレッド

0

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1000

1/05 7/05 1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

0

200

400

600

800

1000

(spre

ad bp

s)

MSCI Turkey sub-index (LHS)EMBI Turkey sub-index (RHS)

0400800

1200160020002400

7/06

11/06

3/07

7/07

11/07

3/08

7/08

11/08

3/09

7/09

(spre

ad b

ps)

Turkey 1y r Gov t.EMBI Turkey sub-index

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 98

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

トルコ:内外要因

ほぼ 1 年にわたる交渉を経て政府は IMF の支援を受けない独自の政策を導入する見込み。国内貯蓄率の引き上げがトル

コの投資妙味の改善のカギとなる。

IMF 支援に対する市場の期待は消滅 政府は景気回復に期待しているが構造改革が不可欠

トルコ政府と IMF は多額の融資を盛り込んだ期間 3 年のスタンド

バイ取り決めを巡りほぼ 1 年にわたり交渉を続けてきた。当初の

大の争点は経済・財政見通しの相違と第 2 次財政改革に対する

取り組み姿勢の違いにあった。 近政府が発表した中期経済計画

におけるマクロ経済見通しははるかに現実的で、IMF の現在の予

想に近いものとなっている。また、2011 年の導入を目的に政府は

来年中に「財政規則」をまとめる計画である。だが、IMF は

近、トルコが安定化目標を達成し、政府債務の GDP 比率を引き下

げるためには一段の支援対策と構造改革(特に歳入面)が不可欠

であるとの見方を示した。

中期経済計画は 2010年の景気回復に大きく依存しており、プライマ

リー収支の改善策に大きな効果は期待できない。また、トルコ政府

が IMF 支援とは別に独自の対策を導入する可能性もある。これは確

かに選択肢の 1 つだが、そのためには課税基盤の拡大、「歳入管

理」の強化、違法に近く、無税状態にある大規模な経済活動の取り

締まり、公共財政の合理化、特にトルコが再び双子の赤字に苦しむ

ようになる可能性が高まった場合、世界的に金利が上昇傾向をたど

り、2010 年の国債償還額が多額に達しても低金利を維持できるとの

確信を投資家に促す国内貯蓄の拡大など、より徹底した財政改革努

力が求められる。引き続き HSBC では、十分な財源が確保され、周到

に準備された IMF支援策がトルコにとって極めて有益と考えている。

GDP 比で見た直接税収(個人および法人、%) 中期経済計画からの抜粋

0

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Pola

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Turk

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stan

All in % 2009 2010 2011 2012

Growth (real, YoY) -6.0 3.5 4.0 5.0Inflation (CPI, YoY) 5.9 5.3 4.9 4.8

IMF-defined, % of GDPCentral Administration Revenues 20.1 21.4 21.4 21.4Central Administration Primary Spending 22.3 22.2 21.6 21.0

Central Administration Primary Balance -2.2 -0.8 -0.2 0.4Other Public Primary Balance 0.1 0.5 0.6 0.6Consolidated Public Primary Balance -2.1 -0.3 0.4 1.0

% of GDPPrivatisation Revenues 0.5 1.0 0.8 0.7EU-defined Gross Public Debt Stock 47.3 49.0 48.8 47.8

Source: Ministry of Finance, HSBC Source: Turkish Treasury

金利が収れん 高水準のロールオーバーと政府債務の増加

実質金利と名目金利が収れんしている。その主因は景気の著しい

低迷を背景とした大幅なディスインフレにある。さらに、CBRTの極めてハト派的な姿勢と金融政策見通し(基本シナリオでは

2010 年末まで利上げは想定されていない)を反映して、財務省の

も流動性の高い基準借入金利(年限 1.5 年前後の割引債の利回

り)が初めて 1 ケタ台に低下した。また、CBRT はトルコの CDSスプレッドのアウトパフォーマンスを受け実質金利を過去 低水

準に引き下げた。加えて、世界的なリスク取得意欲の改善と IMFによる大規模な資金援助に対する期待の高まりを受け、金利市場

が急騰した。

かつてない金利の低下を背景にトルコが見直されており、 近で

は S&P や Moody’s の格付け見通しが引き上げられている。ただ

し、財務省の市場からの借り換え比率の上昇が懸念材料となって

おり、公共部門借入所要額の急増と民営化収益の低迷見通しを反

映して同比率は年初来で 107%に上昇している。民間需要の減退を

埋め合わせるための公共支出の拡大を背景とした歳出拡大圧力と

税収の低迷を反映して、プライマリー収支が悪化している。GDP比で見たトルコの税収は OECD の水準に比べて低く、循環的な税

収への依存度が極めて高い(OECD との直接税収の格差は GDP比 8~9%)。2001 年のトルコ危機後初めて、今年は政府総債務残

高の GDP 比率が急上昇する見通しである。

実質政策金利(実績 CPI に基づく事後的金利と予想 CPI に基づく事前的金利)

国内債務の借り換え比率

0%

5%

10%

15%

02/0

4

08/0

4

02/0

5

08/0

5

02/0

6

08/0

6

02/0

7

08/0

7

02/0

8

08/0

8

02/0

9

08/0

9

Ex-post Ex-ante

50%

55%

60%

65%

70%

75%

80%

85%

90%

95%

100%

105%

110%

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 YTD Source: TURKSTAT, CBRT Source:Turkish Treasury

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 99

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

トルコ:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 9.4 8.4 6.9 4.7 0.9 -5.3 2.9 4.1 名目 GDP (USDbn) 390.4 481.5 526.4 646.5 731.1 603.4 657.6 753.5 1 人当たり GDP (USD) 5,487 6,681 7,500 9,157 10,239 8,344 8,980 10,160 民間消費 (% 前年比) 11.0 7.9 4.6 5.5 -0.1 -2.2 2.9 4.0 政府支出 (% 前年比) 6.0 2.5 8.4 6.5 1.9 0.9 2.7 4.8 投資 (% 前年比) 28.4 17.4 13.3 3.1 -5.0 -15.9 3.6 3.8 鉱工業生産 (% 前年比) 9.8 5.4 7.8 7.2 -0.6 -9.9 3.6 4.3 国内総貯蓄 (% GDP) 16.8 16.5 17.1 16.5 18.2 21.5 21.0 19.7 失業率 (% 年末) 10.3 10.2 9.9 9.9 13.6 17.0 16.2 15.5

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 8.6 8.2 9.6 8.8 10.4 6.4 8.7 6.7 CPI, 年末 (% 前年比) 9.4 7.7 9.7 8.4 10.1 6.8 7.7 6.5 PPI, 年末 (% 前年比) 15.3 2.7 11.6 5.9 8.1 5.4 7.2 5.5 製造業賃金, 名目 (% 前年比) 9.2 11.6 12.8 8.8 6.5 4.0 5.4 7.2

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 39.5 30.8 33.8 17.6 23.7 19.5 15.5 20.8 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 59.6 51.4 43.6 26.3 25.9 0.9 5.7 12.1 政策金利, 年末 (%) 18.00 13.50 17.50 15.75 15.00 6.50 9.50 8.50 1年利回り, 年末 (%) 21.9 14.1 20.6 16.7 15.8 8.5 11.5 10.4 TRY*/USD, 年末 1.34 1.34 1.41 1.16 1.52 1.58 1.60 1.55 TRY*/USD, 平均 1.42 1.34 1.43 1.30 1.30 1.57 1.61 1.58 TRY*/EUR, 年末 1.83 1.60 1.85 1.71 2.13 2.36 2.40 2.10 TRY*/EUR, 平均 1.77 1.67 1.80 1.78 1.90 2.19 2.42 2.25

対外部門

商品輸出 (USDbn) 63.7 73.5 85.5 107.2 132.0 98.3 111.1 129.5 商品輸入 (USDbn) 97.5 116.8 142.6 170.0 201.8 133.2 156.5 187.0 貿易収支 (USDbn) -34.4 -43.3 -57.1 -32.8 -69.8 -34.9 -45.4 -57.6 経常収支 (USDbn) -15.6 -22.6 -32.2 -38.2 -41.6 -11.9 -18.6 -24.6 経常収支 (% GDP) -4.0 -4.7 -6.1 -5.9 -5.7 -2.0 -2.8 -3.3 純対内直接投資 (USDbn) 2.0 8.7 19.2 19.8 15.1 6.0 7.5 13.5 純対内直接投資 (% GDP) 0.5 1.8 3.7 3.1 2.1 1.0 1.1 1.8 経常収支+対内直接投資 (% GDP) -3.5 -2.9 -2.5 -2.9 -3.6 -1.0 -1.7 -1.5 輸出 (% 前年比) 33.5 16.4 16.4 25.3 23.2 -25.5 13.0 16.5 輸入 (% 前年比) 40.7 19.8 22.1 19.2 18.7 -34.0 17.5 19.5 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 36.0 50.5 60.8 71.3 70.1 69.0 73.0 76.5 輸入カバー月数 4.4 5.2 5.1 5.0 4.2 6.2 5.6 4.9

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 79.3 95.6 114.7 124.7 144.5 139.0 143.5 149.7 対外債務総額 (USDbn) 161.0 169.7 207.6 249.4 277.1 270.0 281.0 296.0 短期対外債務 (外貨準備%) 88.6 73.5 66.4 60.6 72.2 70.3 71.6 75.2 民間対外債務 (USDbn) 63.8 83.7 120.1 160.1 185.4 177.4 185.9 198.7 公的部門借入所要額 (% GDP) -4.7 -0.9 3.5 -0.4 -0.8 -5.8 -3.4 -4.5 政府財政収支 (% GDP) -5.4 -1.3 -0.5 -1.6 -1.8 -6.1 -4.2 -5.5 プライマリーバランス (% GDP) 3.9 3.7 4.4 3.5 2.0 -1.7 -0.9 -0.7 公的部門対内債務総額 (TRYbn) 224.5 244.8 251.5 255.3 274.8 330.0 365.0 395.7 公的部門対内債務総額 (% GDP) 40.2 37.7 33.2 30.3 28.9 34.8 34.4 33.3 公的部門対外債務総額 (USDbn) 75.7 70.4 71.6 73.5 78.2 76.5 78.5 81.9 公的部門対外債務総額 (% GDP) 19.4 14.6 13.6 11.4 10.7 12.7 11.9 10.9 公的部門債務総額 (% GDP) 59.5 52.3 46.8 41.6 39.6 47.4 46.4 44.2

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 100

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

アラブ首長国連邦:概況

2008 年後半に国内景気が悪化に転じ、低迷が続いている。景気回復のけん引役となるのはドバイではなくアブダビと

なる見込み。

Simon Williams: +97 14 423 6925 [email protected]

二都物語 UAE の 2 大首長国、すなわち石油資源に恵まれたアブダビ首長国

とサービス輸出を主力とするレバレッジの高いドバイ首長国は構

造的にまったく異なるが、ともに強い逆風に直面している。

中東で も経済の国際化が進んでいるドバイ首長国は国際資金へ

のアクセスを失い、同国の主力のサービス産業に対する需要の急

減に伴いその投資戦略の大きな歪みと脆弱さが浮き彫りになって

いる。ドバイよりもはるかに裕福なアブダビでさえ、景気信頼感

の低下と信用へのアクセスの低下の影響でインフラ開発戦略に支

障が生じている。また、政策当局は世界的な資産価格の急落への

対応を迫られている。アブダビ、ドバイの両首長国の GDP は今年

は縮小する見込みで、UAE 全体の成長率は HSBC 予想(-2%)

を下回る可能性がある。

しかし 2010 年には両首長国の差異がより明確になり、経済成長に

も格差が生じる見通しである。カギとなるのは財政面からの景気

刺激策で、HSBC ではドバイよりもアブダビの方が大規模な景気

対策を導入すると予想している。

債務負担の増大に対応できない限り本格回復が期待できないドバ

イに比べて、アブダビでは経済開発計画が国内主導型であること

も手伝って早期に景気回復が実現する可能性が高い。HSBC では

2010 年の UAE の GDP 成長率を 4%と予想している。2009 年に比

べると著しく改善するが、依然として潜在成長率を下回ってお

り、成長のけん引役となるのはアブダビとなろう。

2009~11 年の平均原油価格は 1 バレル=75 ドル近くと予想され、

上昇傾向をたどる公算が大きい。依然として 2008 年の水準を下回

るが、原油価格がこの水準を維持すれば UAE の財政収支と経常収

支は予測期間を通じて黒字となり、アブダビの政府系ファンドは

再び投資を活発化させることになろう。石油収入は増加している

が、外国資産を拡大させると同時に事業拡大計画の原資として国

外からの借り入れを活用する従来の戦略が維持されるため、アブ

ダビの政府系企業や金融機関は国際市場での資金調達を積極化さ

せる見通しである。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

外貨準備高 (USDbn) 44.6 31.6 34.0 33.5 36.0 37.0 38.5 38.1 39.0 40.0 政策金利, 四半期末(%) 2.0 1.8 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1年利回り, 四半期末 (%) 3.9 4.25 3.7 3.5 2.75 2.2 2.0 2.0 2.0 2.0 AED/USD, 四半期末 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 AED/EUR, 四半期末 5.18 5.14 5.33 5.15 5.33 5.51 5.51 5.51 5.51 5.51

信用が一段とひっ迫、インフレが低下 ドバイの対外債務懸念は後退しているがなお課題は山積

タイムリーなデータは少ないが、 近集計され始めた月次ベース

のインフレ統計と銀行統計は、国内景気が 2008 年後半に縮小に転

じ、その後も低迷が続いていることを示している。今年中盤のイ

ンフレ率は前年比 1%強となり、2008 年の平均値から 12 ポイント

低下した。貸出の伸びは 2008 年 4Q には前年比 50%に達していた

が、2009 年前半の伸びはゼロとなり、流動性がひっ迫している。

資産価格も軟化している。 近、銀行セクターを中心に正常化の

兆しがみられ、大規模な政府支援策により銀行の自己資本比率が

改善している。不動産価格は安定化しており、国際資金の流入が

回復し始めている。しかし、銀行のバランスシートは相変わらず

著しくひっ迫しており、ドバイを中心に 2010 年も貸出の伸びと資

産価格の大幅な回復は期待しにくい。

100 ポイント強でピークに達したあと、ドバイの 5 年 CDS は 9 月

に 300 ポイントを下回り、年初来 低値を付けた。ドバイの政府

関連機関の発行する現物債も大幅高となった。これには国際資本

市場の動向とリスクアペタイトの改善も貢献しているが、市場で

ドバイの借り換えニーズが見直され、デフォルトの可能性が低下

したと判断された可能性が高い。その理由として、ドバイの構造

改革が進んでいる兆しがみられること、UAE による支援などが挙

げられる。しかし、ドバイの対外債務は GDP の 100%を超えてお

り、向こう 1 年に GDP の少なくとも 20%に相当する債務が返済

期限を迎える。デフォルトを回避できるかどうかは、債権者の協

調的な姿勢と UAE 当局からの支援次第となろう。

景気と CPI 政策スタンス

050

100150

200250300

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

(USD

bn)

-5

0

5

10

15

(% y-o-y)

USD GDP (LHS) Real grow th y -o-y (RHS)CPI ann av g (RHS)

-1 0

0

1 0

2 0

3 0

4 0

20 02 2 003 2 004 2 00 5 200 6 20 07 20 08 20 09

(% G

DP)

Gross fisc al b alan ce Cu rren t a cco unt ba la nce

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 101

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

アラブ首長国連邦:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用 GDP 成長率 (% 前年比) 7.4 10.5 9.4 5.2 7.0 -2.0 4.2 6.4 名目 GDP (USDbn) 105.2 139.7 170.1 198.7 226.5 225.0 248.7 277.3 1 人当たり GDP (USD) 24,359 29,941 33,749 36,854 39,270 39,796 42,298 44,486 名目民間消費 (% 前年比) 29.1 17.6 12.2 18.0 20.0 2.0 6.0 11.0 名目政府支出 (% 前年比) 3.8 16.4 12.4 21.0 16.0 9.0 9.0 10.0 名目投資 (% 前年比) 11.1 15.5 29.0 25.0 26.0 -5.0 8.0 14.0 国内総貯蓄 (% GDP) 35.3 42.8 47.2 45.7 43.2 41.0 43.1 43.4

物価・賃金 CPI, 平均 (% 前年比) 7.0 9.0 10.5 11.1 13.5 1.8 3.0 6.0 CPI, 年末 (% 前年比) 8.0 9.8 10.0 9.0 12.0 2.0 4.5 6.0

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 20.8 33.8 23.2 40.2 35.2 7.0 15.0 18.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 17.0 32.8 22.4 18.9 22.5 1.3 7.0 11.0 政策金利, 年末 (%) 3.0 4.7 5.2 4.3 1.8 1.0 1.0 1.0 1年利回り, 年末 (%) 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 AED/USD, 年末 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 3.67 AED/USD, 平均 4.98 4.35 4.85 4.96 5.14 5.51 5.51 5.33 AED/EUR, 年末 4.57 4.55 4.62 4.77 5.51 5.33 5.51 5.42

対外部門

商品輸出 (USDbn) 91.0 117.3 145.6 178.6 239.2 200.7 222.6 247.2 商品輸入 (USDbn) 63.4 74.5 88.0 132.1 176.3 144.5 154.7 171.7 貿易収支 (USDbn) 27.6 42.8 57.5 46.5 62.9 56.1 68.0 75.6 経常収支 (USDbn) 10.5 24.4 36.0 19.6 22.3 19.9 27.3 34.8 経常収支 (% GDP) 10.0 17.4 21.2 9.9 9.8 8.8 11.0 12.5 純対内直接投資 (USDbn) 10.0 11.0 13.0 12.5 8.5 1.0 4.0 8.0 純対内直接投資 (% GDP) 9.5 7.9 7.6 6.3 3.8 0.4 1.6 2.9 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 19.5 25.3 28.8 16.2 13.6 9.3 12.6 15.4 輸出 (% 前年比) 35.5 28.9 24.1 22.7 33.9 -16.1 10.9 11.0 輸入 (% 前年比) 38.4 17.4 18.2 50.0 33.4 -18.0 7.0 11.0 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 18.5 21.0 27.6 77.2 31.6 37.0 40.0 42.0 輸入カバー月数 3.5 3.4 3.8 7.0 2.1 3.1 3.1 2.9

公的・対外債務ソルベンシー指標

商業銀行外貨資産 (USDbn) 34.4 47.7 63.2 53.6 55.4 59.8 64.6 70.4 対外債務総額 (USDbn) 27.8 41.0 82.7 133.2 180.5 177.2 194.5 208.2 短期対外債務 (外貨準備%) 75.0 109.0 100.8 57.1 184.6 129.0 123.8 127.0 推計政府財政収支 (% GDP) 10.0 20.6 27.3 22.8 29.8 7.6 11.8 10.5

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 102

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ベトナム:概況

V 字型回復が実現し、貸出が急増しているため、中銀はインフレリスクに対する懸念を強めており、すでに緩やかな引

き締めに着手。

Robert Prior-Wandesforde: +65 6239 [email protected]

成長率が加速

迅速かつ大規模な景気対策が目覚ましい効果をあげており、2Q に

ベトナム経済は回復に転じた。2Q の GDP 成長率は年率 9.5%(季

調済み)に回復し、1Q の 6.5%の縮小分を完全に取り戻した。こ

の急回復を下支えしているのは政府の 4%の利子補助で、この制

度に基づきすでに 250 億米ドルの融資が実行されている。これに

より将来不良債権問題が顕在化する可能性は高いが、貸出が高水

準に達していることは、潜在的な借入需要の強さを示している。

また、政府は景気対策の規模を 20 億米ドル引き上げ 80 億米ドル

(2009 年の GDP 比 8.5%)とした。期待されていたアジア貿易の

回復が本格化しているため、HSBC ではベトナムの 2009 年の成長

率を平均 4.9%、2010 年は 7%弱と予想している。

若く勤勉な国民、都市化の進展、中国への地理的な近さ、対内直

接投資の拡大などを考慮すると、ベトナムの長期的な成長見通し

は引き続き明るく、向こう 15 年間、およそ 7.5% の GDP 成長率

を維持できる見通しである。大規模な政府支出計画により財政赤

字は 1990 年以来 大の GDP 比 8%に達する見込みだが、国内政

府債務残高は GDP 比 25%であり、アジアでは比較的低水準にと

どまる。対外収支も改善する見込みで、2009 年の経常赤字は 2008年の GDP 比 12%弱から 7%に縮小する公算が大きい。世銀の統計

によると、2Q の外貨準備は 54 億ドルの短期対外債務の 3 倍を超

える 180 億米ドルとなったが、1Q の 220 億米ドルからは減少し

た。

Q3 2008 Q4 2008 Q1 2009 Q2 2009 Q3 2009e Q4 2009e Q1 2010e Q2 2010e Q3 2010e Q4 2010e

GDP 成長率 (前年比%) 6.5 5.7 3.1 4.5 5.5 6.6 6.8 7.0 6.8 6.6 鉱工業生産 (前年比%) 10.6 5.5 2.3 1.8 6.0 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0 CPI (四半期末%、前年比) 27.9 19.9 11.3 3.9 3.0 9.0 13.0 11.0 9.0 8.0 貿易収支 (% GDP) -5.5 -5.9 8.5 -15.2 -16.8 -16.9 -24.5 -17.8 -16.9 -12.0 外貨準備高 (USDbn) 24.1 24.2 23.3 18.0 17.0 16.0 15.0 14.0 14.0 14.0 政策金利, 四半期末(%) 14 8.5 7.0 7.0 7.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 5年利回り, 四半期末 (%) 15.9 10.0 9.2 9.4 10.0 10.0 10.5 11.0 11.5 11.5 VND/USD, 四半期末 16,600 17,483 17,797 17,798 17,816 18,200 18,400 18,400 18,400 18,400 VND/EUR, 四半期末 23,572 24,301 23,492 24,917 25,833 27,300 27,600 27,600 27,600 27,600

インフレ圧力が顕在化 中銀は引き締めに転換

昨年の燃料価格引き上げによる影響が解消したため、ベトナムの

8 月のヘッドラインインフレ率は前年比 2%に鈍化した。これは

2001/02 年以降 も低い水準であり、2008 年 8 月には 28.3%に達し

ていた。しかし季調済みベースでは物価はすでに 6 カ月連続で上

昇しており、インフレ圧力が台頭している。食品、石油などのコ

モディティ価格動向を踏まえると、9 月以降、インフレ率は加速

し始める見込みである。また、内需も堅調で、小売売上高は 20%前後のペースで増加しており、総貸出額は 2008 年末の水準から

25%増加している。消費者向け貸出は 15%増となっている。全般

的にみて、HSBC ではインフレ率は年末までに 9%に上昇し、2010年 1Q 末に 13%に達すると予想している。

景気浮揚型の政策運営が続けられているが、ベトナム中銀

(SBV)は貸出の大幅な伸びとインフレ率に対する懸念を表明し

ており、すでに緩やかな引き締めに転じている。まず 8 月 1 日か

ら準備預金金利を従来の 3.6%から 1.2%に引き下げた。第 2 に、

貸出と M2 の伸びを 30%に抑える方針である(銀行貸出は今年 1-8月にすでに 25%増加しており、昨年の伸び率はおよそ 40%に達し

た)。第 3 に、SBV は中長期融資の原資に占める短期資金の上限

を 2010 年 1 月から 10 ポイント引き下げ 30%とすることを決め

た。こうした量的規制が今後も続く見通しだが、政策金利は年末

まで 7%に据え置かれ、2010 年前半に 200bp 引き上げられ 9%とさ

れる見込みである。

景気と CPI 政策スタンス

05

10152025

4Q07 2Q08 4Q08 2Q09 4Q09e 2Q10e 4Q10e

(% y

-o-y

)

2712172227

(% y-o-y)

GDP (LHS) Industrial grow th (LHS) CPI (RHS)

0

4

8

12

16

4Q06 4Q07 4Q08 4Q09e 4Q10e

(%)

051015202530

Policy rate (RHS) CPI, % y -o-y (RHS)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 103

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ベトナム:チャート一覧 金利スプレッド (対 USD Libor) イールドカーブ

0369

12151821

5/07 8/07 11/07 2/08 5/08 8/08 11/08 2/09 5/09 8/09

(%)

12M spread over US-Libor 2yr spread ov er US-Libor

02468

1012

1y r 2yr 3yr 5yr 10yr 15yr

(%)

Now -4 months+4 months Current CPI

為替レートとボラティリティ 為替レートとインフレ率

13,500

14,500

15,500

16,500

17,500

18,500

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 20082009e

0.02.04.06.08.010.012.0

(%)

VND v s USD (LHS) Annualised v olatility (RHS)

8090

100110120130

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09

(%)

Growth of nominal exchange rate vs USDCumulative CPI Cumulative PPI

外貨準備と流動比率 財政収支と実質金利

0

5

10

15

20

25

30

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

(USD

bn)

10

15

20

25

30

35

(% of reserves)

International reserves, IFI definition (LHS)Short-term debt % reserves (RHS)

2009e

2011e

2008

2007

2010e

-14.0-12.0-10.0-8.0-6.0-4.0-2.00.02.04.06.0

-9.0-8.0-7.0-6.0-5.0-4.0(consolidated govt balance % GDP)

(real

rate

s)

株式・債券市場

0

500

1000

1500

1/06 7/06 1/07 7/07 1/08 7/08 1/09 7/09

(inde

x)

020040060080010001200

(spr

ead

bps)

Vietnam stock-ex change (LHS)EMBI Vietnam sub-index (RHS)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 104

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ベトナム:内外要因

対内直接投資が予想以上に好調なため、GDP は急回復する可能性が高い。内需の拡大により輸入が増加し、貿易赤字

が拡大する見込み。

金輸出が輸出を下支え… V 字型回復が実現…

ベトナムの輸出は予想通り減少しているが、2009 年 1-7 月の減少

率は前年比 5%と、アジア地域の 20%を超える減少に比べはるか

に小幅にとどまった。これには、国内外の価格差とインフレ鎮静

化を反映した金の再輸出の急増が貢献した。すでに金の余剰在庫

は解消しているが、アジアの貿易サイクルに回復の兆しがみられ

る。一方、1-7 月の輸入は平均 31%減となった。しかし、昨年の

金と鉄鋼の輸入急増によるベース効果が消えており、内需が回復

しているため、ここ数カ月輸入は上向いている。総合すると、今

後貿易赤字は拡大する見通しであるが、急増した 2008 年初頭の水

準は大きく下回る見通しである。

予想通り V 字型回復が実現しており、2Q は前期比+2.3%(季調

済み)となった。前年比では 1Q の+3%から+4.4%に改善した。

回復のけん引役となっているのは、外需と国内消費の回復に支え

られた工業セクターの回復で、小売売上高は前年比 20%のペース

で増加している。貸出金利の低下、建設コストの急低下、政府の

インフラプロジェクトの進展などを反映して建設セクターの伸び

は現在前年比 10%に達している。サービスセクターも好調を維持

しており、金融サービスの伸び率は従来の 2 倍近い前年比 8%に

加速している。ただし、ホテル・レストラン分野では依然として

縮小が続いている。

…輸入が上向いており、貿易赤字が拡大する見込み …製造業の回復と建設ブームが下支え

-4

-3

-2

-1

0

1

9 8 9 9 0 0 01 02 03 04 0 5 0 6 0 7 08 09

USD

bn

- 50-25025507510 0

Trade b alan ce (LHS ) Ex p orts y /yIm por ts y / y

-1 0

-5

0

5

1 0

1 5

2 0

0 0 0 1 02 03 04 0 5 06 07 08 0 9

% y-

o-y

In dus try C on struction Se rv ic es

コアインフレ率は上昇へ 対内直接投資認可額が急減…

ベトナムはコアインフレ率を発表していないが、HSBC では独自に

コアインフレ率を算出している。ベトナムのコアインフレ率はヘッ

ドラインインフレ率と密接に連動していることが注目される。先進

国ではあまり例のないことだが、これは、先進諸国に比べてエネル

ギー価格が経済全体に急速に転嫁されるためと考えられる。1999 年

以降の月次データに基づくと、コアインフレ率とエネルギーのイン

フレ率への寄与度の同時期の相関は 0.75 で、データを 2 カ月遅行

させると相関は 0.80 に改善する。この両者間の強い相関は、ベト

ナム経済のエネルギー集約度の高さを反映していると考えられ

る。従って、原油価格とベトナムドンレートは現行水準で横ばい

と想定すると、エネルギーによるインフレ率の押し上げ効果が強

まるにつれてコアインフレ率も上昇すると予想される。

2009 年 1-7 月のベトナムの対内直接投資認可額は前年同期比 80%減の 100 億ドルだった。不透明な国際経済情勢を考えると、これ

はほぼ予想通りと言えるが、実行ベースの投資額は予想外に好調

で、1-8 月までの 8 カ月間に前年同期比わずか 8.5%減の 65 億米ド

ルに達した。これは政府の通期目標である 90 億米ドルの 72%に

相当する。これを受け、HSBC では 2009 年の直接投資予想を従来

の 50 億米ドルから 85 億米ドルに引き上げた。ここ数年、大幅に

拡大していた認可ベースと実行ベースの直接投資の格差が 2009 年

は縮小する見通しであることが注目される(注:下図の縦軸は

200 億米ドルまでとなっているが、2009 年の認可額は 600 億米ド

ルに達した)。

…エネルギーの寄与度が上昇… …しかし実際の対内直接投資は予想を突破

-5

0

5

1 0

1 5

2 0

9 9 00 0 1 02 03 0 4 05 0 6 07 0 8 09-1-10112233

C ore in fla tio n (L HS) En ergy co ntr ib p pts

0

5

1 0

1 5

2 0

01 02 03 04 05 06 07 08 09

USD

bn

F DI com m itm en ts F DI d isbu rs em en t (R HS)

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Data sources: Central Bank, Thomson Financial Datastream, Bloomberg, HSBC estimates and forecasts 105

Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

ベトナム:マクロ指標

2004 2005 2006 2007 2008 2009e 2010e 2011e

生産・需要・雇用

GDP 成長率 (% 前年比) 7.8 8.4 8.2 8.5 6.2 4.9 6.8 5.9 名目 GDP (USDbn) 45.4 52.9 60.8 70.7 87.7 92.4 107.3 121.0 1 人当たり GDP (USD) 554 636 723 829 1,016 1,056 1,214 1,354 民間消費 (% 前年比) 7.1 7.3 8.3 9.6 7.6 3.4 5.8 5.0 政府支出 (% 前年比) 7.8 8.1 8.6 9.0 5.8 6.5 5.0 3.0 投資 (% 前年比) 10.4 9.7 9.9 23.0 13.2 3.2 8.0 6.0 鉱工業生産 (% 前年比) 17.6 25.5 16.0 11.6 11.8 4.8 11.5 7.3 国内総貯蓄 (% GDP) 32.0 34.6 36.5 31.8 29.9 34.2 33.0 35.5 失業率 (% 年末) 5.6 5.3 4.8 4.6 4.7 5.4 5.3 4.9

物価・賃金

CPI, 平均 (% 前年比) 7.8 8.3 7.5 8.3 23.0 7.6 10.4 7.1 CPI, 年末 (% 前年比) 9.7 8.8 6.6 12.6 19.9 9.0 8.0 7.0 PPI, 年末 (% 前年比) 7.8 4.4 4.2 6.8 20.0 2.0 10.0 6.0

マネー・為替・金利

広義のマネーサプライ M3 (% 前年比) 29.5 29.8 33.6 43.2 25.0 15.0 20.0 18.0 民間融資実質伸び率 (% 前年比) 26.0 28.7 23.5 41.7 4.7 17.5 14.6 17.9 政策金利, 年末 (%) 7.5 7.8 7.8 8.3 8.5 7.0 11.0 11.0 5年利回り, 年末 (%) 8.5 8.8 8.3 8.7 10.0 10.0 11.5 11.5 VND/USD, 年末 15,754 15,896 16,050 16,017 17,483 18,200 18,400 18,400 VND/USD, 平均 15,738 15,866 16,006 16,096 16,759 17,903 18,400 18,400 VND/EUR, 年末 21,353 18,835 21,184 23,369 23,602 27,300 27,600 27,600 VND/EUR, 平均 19,583 19,743 20,114 22,066 24,803 25,900 27,600 27,600

対外部門

商品輸出 (USDbn) 26.5 32.4 39.6 48.6 63.1 59.7 67.0 74.0 商品輸入 (USDbn) 28.8 33.3 44.4 62.7 80.6 68.4 80.0 88.0 貿易収支 (USDbn) -2.3 -0.8 -4.8 -14.1 -16.3 -11.1 -18.3 -12.8 経常収支 (USDbn) -1.0 -0.6 -0.2 -7.0 -9.2 -6.5 -9.0 -7.0 経常収支 (% GDP) -2.1 -1.1 -0.3 -9.9 -10.5 -7.0 -8.4 -5.8 純対内直接投資 (USDbn) 1.9 2.0 2.4 6.6 11.5 8.5 6.0 8.0 純対内直接投資 (% GDP) 4.1 3.8 3.9 9.3 13.1 9.2 5.5 6.5 経常収支+対内直接投資 (% GDP) 2.0 2.7 3.7 -0.6 2.6 2.2 -2.8 0.8 輸出 (% 前年比) 31.4 22.5 22.1 22.7 29.9 -5.4 12.2 10.4 輸入 (% 前年比) 26.6 15.7 33.4 41.2 28.5 -15.1 17.0 10.0 外貨準備高(金を除く)(USDbn) 7.0 9.0 13.4 23.5 24.2 16.0 15.0 14.0 輸入カバー月数 2.9 3.2 3.6 4.5 3.6 2.8 2.3 1.9

公的・対外債務ソルベンシー指標

対外債務総額 (USDbn) 13.5 14.2 15.6 19.3 21.8 23.0 25.0 26.0 短期対外債務 (外貨準備%) 21.4 17.8 13.4 20.9 19.8 28.1 36.7 35.7 民間対外債務 (USDbn) 0.9 1.6 1.7 2.7 3.0 3.0 3.0 3.0 連結財政収支 (% GDP) -4.9 -4.9 -5.0 -5.0 -5.0 -8.0 -7.0 -5.5 プライマリーバランス (% GDP) -3.0 -3.0 -3.5 -3.4 -2.5 -5.0 -4.0 -3.0 公的部門対内債務総額 (VNDbn ) 7,007 9,239 11,346 12,400 14,500 21,528 25,000 27,000 公的部門対内債務総額 (% GDP) 1.0 1.1 1.2 1.1 1.0 1.3 1.3 1.2 公的部門対外債務総額 (USDbn) 12.6 12.6 13.9 16.6 18.8 20.0 22.0 23.0 公的部門対外債務総額 (% GDP) 27.8 23.8 22.9 23.5 21.4 21.7 20.5 19.0 公的部門債務総額 (% GDP) 28.7 24.9 24.0 24.6 22.4 23.0 21.8 20.2

Note: Data pertains to fiscal year starting April

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Primal Knowledge Strategy & Economics 2009 年 10 月

abc

Notes

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本レポートはマクロ経済に関する情報提供を目的として作成されたものです。当レポートで使用しているグラフ、

表等は参考データであり、将来の結果を保証するものではありません。 本レポートの原文(英語版)はHSBC グローバルリサーチに属するグローバルエマージングマーケット・マクロ・

アンド・ストラテジー・チーム(後記参照)によって2009年10月2日に発行されました。

追加重要事項開示: 以下HSBC グローバルリサーチが発行するリサーチレポート、アナリストレポートに関する重要事項を記述いた

します。 アナリストの報酬は投資銀行部門を含むHSBC 全体の収益性を一部勘案して支払われます。本レポートを執筆し

たアナリストの証言 ― 本レポートで述べられている個別企業や証券に関する見解はすべてアナリスト個人の見解

を正確に反映したものであり、アナリストの報酬は、直接・間接の別を問わず、本レポートで述べられている見解

と一切関連がなく、今後もないことを証します。

HSBC は、リサーチ業務に関連して起こる潜在的な利害の対立を適切に確認して、管理する手順を採用していま

す。リサーチの作成と配布に従事しているHSBC のアナリストとその他のスタッフは、HSBC の投資銀行業務とは

独立した管理報告ラインの下に業務を遂行しています。投資銀行業務とリサーチの間に適切なチャイニーズ・ウォ

ールを設置し、全ての機密および価格敏感情報が適切に取り扱われることを確実にしています。

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