音声ウェブブラウザ VOXplorer の評価音声ウェブブラウザ VOXplorer の評価西本卓也　藤澤正樹 新美康永

京都工芸繊維大学　工芸学部　電子情報工学科

発表内容：・確認応答モードの違いによる操作感の違い・音声の有無による没入感・楽しさの違い

音声ウェブブラウザの概要音声ウェブブラウザの概要

• 目的：　楽しさ・快適さ – タスクの達成しやすさを増す– ぎこちなさの排除– 処理時間の長い機能を排除

• 仕様の検討– 直接操作：システムを実装・評価– 対話的支援：模擬対話等から検討

音声認識レベルメータ（ドキュメントトーカ OCX ）

２種類の確認応答モデル２種類の確認応答モデル

リンク名 リンク名 はい / そうです 了解

ユーザ発話： リンク要求

システム発話： 確認

ユーザ発話：確認

システム発話：応答

どうぞ

システム発話：受付開始

リンク名 リンク名

ユーザ発話： リンク要求

システム発話：応答

どうぞ

システム発話：受付開始

確認応答あり

確認応答なしページ更新

ユーザの対話例ユーザの対話例

確認応答あり 確認応答なし

ユーザ ： システム：図書館 図書館？そうですはい 了解 ＜ページ移動＞戻る 戻る？そうです 了解 ＜ページ移動＞

ユーザ ： システム：もっと下 ＜下スクロール＞地域情報 地域情報 ＜ページ移動＞都道府県 都道府県 ＜ページ移動＞京都 京都 ＜ページ移動＞

確認応答の比較評価確認応答の比較評価

•　タスク：　 Yahoo JAPAN からリンクをたどり、指示されたページを発見する•　被験者：　５名•　実験回数：　確認応答あり・なし　各 3-4 回•　 1 対話の平均所要時間

－ ５～１０ 分•　処理速度：画面更新

－平均 約 8 秒

認識発話数認識発話数＋誤認識発話数＋棄却発話数

認識率＝

ページ移動発話数 ＝ リンク項目発話数総ページ

タスク達成発話数 ＝リンク項目発話数

総ページ － 誤認識による移動ページ数

ページ移動発話数の比較ページ移動発話数の比較

「確認応答なし」システムが効率的

１ページ移動毎に必要な発話数

2.70

3.18

1.47

3.18

1.07

3.44

1.00

1.57

3.02

1.28

2.79

1.27

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

3.5

4

確認応答あり 確認応答なし

[]

発話

数回 被験者１

被験者２被験者３被験者４被験者５平均

2) 確認応答なし

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

認識率

ページ移動効率タスク達成効率

ページ移動およびタスク達成に要した

発話数と認識率

ページ移動およびタスク達成に要した

発話数と認識率

1) 確認応答あり

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

認識率

ページ移動効率タスク達成効率

アンケート結果アンケート結果

•　確認応答を行うシステムは、集中しやすい、効率的、楽しい•　誤認識で他ページに移動するリスクを負うより、頻繁に確認を行いたい？

•　誤認識が極めて少ないユーザは、確認応答なしのシステムを好む。

集中できるかどうか

0 1 2 3 4 5

← → 低 評価 高

効率が良かったかどうか

0 1 2 3 4 5

← → 低 評価 高

楽しかったかどうか

0 1 2 3 4 5

← → 低 評価 高

簡単かどうか

0 1 2 3 4 5

← → 低 評価 高

被験者５被験者４

3被験者2被験者

被験者１

わかりやすいかどうか

0 1 2 3 4 5

← → 低 評価 高

楽しさの評価楽しさの評価

フロー

倦怠

不安

無気力挑戦

技能 high

high

• 最適体験＝ flow 体験（ Csikszentmihalyi ）• 挑戦と技能が均 衡した状態

• 没入感• 内在的楽しさ• 時間を忘れてのめりこむ• 興味が対象に集中する

• Hoffman&Novak, Chen ら• ウェブは flow を起こしやすいメディアであることを指摘

• 音声は flow に貢献するか？

• 被験者 5人に音声認識を使ったゲームで遊んでもらい、

孤立単語認識に慣れてもらう　（約４０分）最高認識率 57%, 73%, 100%, 100%, 91%

• VOXplorer を使って、特に目的を定めずにネットサーフィンをさせる。（約 1 時間）半分の時間はマイクをオフ（既存ブラウザとほぼ同等）

• 約 5 分（ランダム）な周期でネットサーフィンを中断させ、その時点での被験者の体験を質問する ESM : Experience Sampling Method

音声による楽しさの評価実験音声による楽しさの評価実験

※ ○「どちらでもない」を５として、０から１０までのどれかに をしてください。

● 　 いま画面の内容に意識のすべてを集中していましたか？

まったく集中していない 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

非常に集中していた

● 　 いま自分が何をやろうとしていたか、はっきり決めていましたか？

まったく決めていなかった 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

非常にはっきり決めていた

● 　 いま時間の流れについてどう感じていましたか？

非常にゆっくりに感じた 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

非常に速く感じた

● 　 いま画面の内容が面白い、または興味深いと感じていましたか？

まったく興味を感じていなかった 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

非常に面白い・興味深いと感じた

● 　 いま画面の内容が、自分になにか挑戦していると感 じていましたか？

まったく挑 戦を感 じなかった 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

非常に強く挑 戦を感 じた

● 　 いま画面の内容を操作するために、自分の持つ技能が充分だと感じていましたか？

まったく不充分だと感じた 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

完全に充分だと感じた

質問質問

• ４ -６分間隔（ランダム）

• 音声あり、なし各５回計１０回 × ５人

• フローの起きやすさ　：　音声なしと同等または増加• 音声の使用により挑戦のレベルが 上がる

操作しやすくなることが、必ずしも最適体験ではない

• しかし本当に、集中や楽しさをもたらしているか？

フロー回数の判定フロー回数の判定 挑戦と技能の 差

01234567

- 6 - 5 - 4 - 3 - 2 - 1 0 1 2 3 4 5 6（挑戦－技能）

回数

音声あり音声なし

• 挑戦と技能の均 衡で判断• 挑戦と技能の 差 <= 2• 挑戦 >= 3• 技能 >= 3

の条件で、• 音声あり：８回

音声なし：６回

• 音声入力を用いることで、ユーザの意識を対象に集中させ、自分の取るべき行動をより自覚させ、対象への興味を増すことができる

• 時間を忘れて没入させるためには、応答速度や対話制御など、さらに改善が必要

集中や興味への音声入力の貢献集中や興味への音声入力の貢献

音声あり音声なし意識集中 8.1 7.3行動の自覚 6.8 5.4時間の流れ 6.0 6.2対象への興味 7.2 6.2

被験者のアンケート回答（最高 10, 平均）

まとめまとめ

• 音声ウェブブラウザにおける確認応答モードの評価– 誤認識による誤ったページ移動のリスクよりも

毎回確認を行うことを好む

• 音声利用による没入感・楽しさの評価– 音声入力によりネットサーフィンの楽しさが増す– 対象への興味や集中を高める

• 課題– より多くの被験者による検証– 被験者の個人差の検討– システムの性能・頑健性の向上

• 英語や固有名詞の読み• 複雑なプラグインやコンテンツ

– 対話制御の拡張・改善

• 音声ウェブブラウザにおける確認応答モードの評価• 特定のページを探すタスクによる実験

– 誤認識による誤ったページ移動のリスクよりも毎回確認を行うことを好む

• 音声利用による没入感・楽しさの評価• フロー体験モデル・ ESM による実験ネットサーフィン中にランダムなタイミングでアンケートを行う

– 音声入力によりネットサーフィンの楽しさが増す– 対象への興味や集中を高める– 操作しやすさにつながらない場合でも、音声が最適体験に貢献でき

る

音声ウェブブラウザ VOXplorer の評価音声ウェブブラウザ VOXplorer の評価西本卓也　藤澤正樹 新美康永

京都工芸繊維大学　工芸学部　電子情報工学科