台湾の石油・ガス産業 · jpec レポート 1 平成25年8月27日...

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JPEC レポート 1 平成 25 8 27 台湾の石油・ガス産業 台湾中油股份有限公司( CPC Corporation, Taiwan)は今年 6 月、国際 石油開発帝石( INPEX)がオーストラリ アで進めている Ichthys LNG プロジェク トの一部権益を取得することに合意した。 CPC は、同プロジェクトから LNG を購 入することになっており、安定受給につ ながるとみられる。 CPC LNG 事業の 権益を取得するのは、カタール Rasgas および豪州の浮体式 LNG FLNG)プロ ジェクトである Prelude FLNG に続いて これが 3 件目となる。また、今年 4 月には ExxonMobil Chevron との間でカナダでの 油ガス開発事業へ参画することについて話し合った。 台湾の石油や天然ガス資源は極めて限られた量しかなく、石炭に至っては上層を掘り 尽くして 2001 年から生産を停止、水力資源も地理的制約から少ない。また、原子力も 国内世論を二分する争いになったことや新発電所建設でトラブルが発生しており、拡大 は厳しい。エネルギー需要を賄うには、石油と天然ガスの安定的な供給が必須であり、 台湾政府は、輸入ソースの多様化、海外自主開発油ガス田の確保、石油消費の抑制と LNG 輸入の拡大、利用効率化と省エネルギー、産油国との関係強化、中国本土を含めた周辺 国との協力事業などを進めている。石油・天然ガス分野を中心に台湾のエネルギー安定 供給に向けた取り組みを紹介する。 1. エネルギー管理体制と政策 1-1. エネルギー管理体制 台湾のエネルギー行政は、経済部能源局( BOE, MOEA Bureau of Energy, Ministry of Economic Affairs )が担当しており、能源管理法( Energy Management Law)や、電業 法( Electricity Law )、石油管理法( Petroleum Administration Law)、煤氣事業管理規則 Regulations Governing Administration of Gas Utilities )などエネルギー法制を執行し、 エネルギー企業の監督、エネルギー需給予測、エネルギー・データベース・システム運 営、省エネルギー・プログラム、研究開発、国際協力などを進めている。 2013 年度 12 1. エネルギー管理体制と政策 p.1 1-1. エネルギー管理体制 p.1 1-2. エネルギー政策 p.2 2. エネルギー需給 p.3 2-1. 一次エネルギー消費 p.3 2-2. エネルギー源別需給動向 p.5 3. 石油・天然ガス開発 p.11 3-1. 国内資源開発 p.11 3-2. 海外資源生産 p.13

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JPEC レポート

1

平成25年8月27日

台湾の石油・ガス産業

台湾中油股份有限公司(CPC

Corporation, Taiwan)は今年6月、国際

石油開発帝石(INPEX)がオーストラリ

アで進めている Ichthys LNGプロジェク

トの一部権益を取得することに合意した。

CPCは、同プロジェクトからLNGを購

入することになっており、安定受給につ

ながるとみられる。CPCがLNG事業の

権益を取得するのは、カタール Rasgas

および豪州の浮体式LNG(FLNG)プロ

ジェクトであるPrelude FLNGに続いて

これが 3 件目となる。また、今年 4 月には ExxonMobil、Chevron との間でカナダでの

油ガス開発事業へ参画することについて話し合った。

台湾の石油や天然ガス資源は極めて限られた量しかなく、石炭に至っては上層を掘り

尽くして 2001 年から生産を停止、水力資源も地理的制約から少ない。また、原子力も

国内世論を二分する争いになったことや新発電所建設でトラブルが発生しており、拡大

は厳しい。エネルギー需要を賄うには、石油と天然ガスの安定的な供給が必須であり、

台湾政府は、輸入ソースの多様化、海外自主開発油ガス田の確保、石油消費の抑制とLNG

輸入の拡大、利用効率化と省エネルギー、産油国との関係強化、中国本土を含めた周辺

国との協力事業などを進めている。石油・天然ガス分野を中心に台湾のエネルギー安定

供給に向けた取り組みを紹介する。

1.エネルギー管理体制と政策

1-1.エネルギー管理体制

台湾のエネルギー行政は、経済部能源局(BOE, MOEA :Bureau of Energy, Ministry of

Economic Affairs)が担当しており、能源管理法(Energy Management Law)や、電業

法(Electricity Law)、石油管理法(Petroleum Administration Law)、煤氣事業管理規則

(Regulations Governing Administration of Gas Utilities)などエネルギー法制を執行し、

エネルギー企業の監督、エネルギー需給予測、エネルギー・データベース・システム運

営、省エネルギー・プログラム、研究開発、国際協力などを進めている。

2013年度 第12 回

1.エネルギー管理体制と政策 p.1

1-1.エネルギー管理体制 p.1

1-2.エネルギー政策 p.2

2.エネルギー需給 p.3

2-1.一次エネルギー消費 p.3

2-2.エネルギー源別需給動向 p.5

3.石油・天然ガス開発 p.11

3-1.国内資源開発 p.11

3-2.海外資源生産 p.13

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石油事業は国営の CPC、発電事業は国営台湾電力股份有限公司(Taipower:Taiwan

Power Corporation)が担当しており、能源局の監督下にある。

CPCは、原油輸入から精製、石油製品輸出入、備蓄、流通業務を担当している。規制

緩和と自由化で、民間資本による製油所も稼働、CPCの民営化も論議されている。民営

化に先立って CPC の政策実施機能が分離されている。また、油ガス資源の探鉱開発は

CPC の開発部門である探採事業部(EPBD: Exploration and Production Business

Division)が、海外は子会社の海外石油及投資公司(OPIC:Overseas Petroleum and

Investment Corporation)が担当している。

1-2.エネルギー政策

台湾のエネルギー政策は、1973 年 4 月に台湾地区能源政策として策定以後、数度の

修正を経ており、主要項目は、エネルギー安定供給、利用効率化、市場開放、環境対策、

研究開発強化、広報推進からなる。1998年の全国エネルギー会議で、環境を保護しなが

ら経済成長を達成していくとの方針が採択され、電力消費抑制や再生可能エネルギーの

導入促進、天然ガスへの転換が方針化された。

2008年に成立した馬英九政権は、2008年6月に「永続的エネルギー政策綱領」を策

定、同 9 月に「永続的エネルギー政策綱領 省エネ・炭素削減行動方案」を可決した。

これに 2009 年の「全国エネルギー会議の結論行動方案」を統合して「永続的エネルギ

ー政策行動方案」を策定した。また、2010年には「国家省エネ・CO2削減総行動方案」

が可決されている。

永続的エネルギー政策の骨子は、「二高二低」として表現されており、エネルギー使用

効率の向上とエネルギー利用の付加価値拡大が「二高」、低炭素・低汚染と化石燃料輸入

依存の低減が「二低」となる。

具体的には以下のような方針が打ち出されている。

1) 2006年から2015年にかけて、エネルギー効率を年2%以上引き上げ、エネルギ

ー消費原単位を2015年に対2005年比で20%以上、2025年には同50%以上引

き下げる。

2) CO2排出量を2016–2020年に2008年水準に戻し、2025年には2000年水準に

まで削減する。発電における低炭素エネルギーの比率を40%から、2025年には

55%以上に引き上げる。

3) 2015年における1人当たり年平均所得3万米ドルという経済発展目標を達成で

きるエネルギー安全供給システムを確立する。

4) 2025年に再生可能エネルギーの発電に占める比率を8%以上とする。

5) 低炭素燃料として天然ガスの占める比率を25%以上に引き上げる。

6) 原子力は無炭素エネルギーの選択肢の1つとする。

7) 発電効率を世界最高水準に引き上げる。

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8) クリーンコール技術の導入やCO2貯留技術、発電分野でのCO2削減を進める。

9) エネルギー価格の合理化を促す。

10) 企業のCO2 排出削減のため、排出限度量割り当て、中小企業の省エネ指導、グ

リーンエネルギー産業の拡大を奨励する。

11) 緑化による低炭素都市、新建築物の省エネ設計、電器製品や照明器具の効率向上。

12) 府機関と学校の省エネ推進、政策計画にカーボンニュートラルの概念を導入する。

2.エネルギー需給

2-1.一次エネルギー消費

台湾経済は基幹産業やインフラなどの整備計画として 1973 年に開始された十大建設

を基礎に、1980 年代後半からは電子機器輸出の伸びで高度成長を遂げてきた。

1997-1998年のアジア通貨危機も、健全な財政や豊富な外貨準備などで影響は最小限に

抑え込み、2000年後半からの世界的な景気後退で2001年は経済成長率がマイナスを記

録したが、その後は電子機器の輸出拡大などで再び上昇、2007年までは年平均5%前後

の経済成長を達成した。2008年後半の国際金融危機で、2009年はマイナス成長となっ

たが、2010 年は 10.76%と急回復し、2011 年は 4.07%、2012 年は 1.26%の成長とな

り、2013 年も 2.96%の成長が見込まれている(IMF「World Economic Outlook

Databases」)。

一次エネルギー消費は、1995年の6,650万TOE(石油換算トン)から2000年で8,760

万TOE、2007年には11,390万TOEにまで増加した。その後は、世界不況下にあった

2008–2009 年の減少を経て、2010 年は 11,060 万 TOE に回復したものの、2011 年は

10,980万TOEに減少、2012年も前年比0.6%減の10,940万TOEと減少基調が続いて

いる(図1参照)。

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図1 台湾の一次エネルギー消費推移

2012年の構成比は、石油が38.6%、石炭が37.6%、天然ガスが13.4%、原子力が8.3%、

水力が1.1%、その他1.0%である(表1参照)。

石油は2007年を境に減少基調となっている反面、石炭と天然ガスは拡大基調にあり、

特に天然ガスの伸びが著しい。

図 2に 1982年から 2012年まで 10年ごとの一次エネルギー消費と構成比を示した。

この 30 年で、石油のシェアは 64.9%から 38.6%へ大幅に減少している。これに対し、

石炭は15.3%から37.6%へ、天然ガスは4.5%から13.4%へ大きく拡大している。

他方、原子力は 1985年以降の新規稼働がなく、この 20年のシェアは低下している。

その他(水力と再生可能エネルギー)のうち、水力が国土的制約から増加の余地が無く

シェアは低下、再生可能エネルギーは増加している。ただ、シェアは2.1%と小さい。

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表1 台湾のエネルギー消費

図2 エネルギー消費構成の推移

2-2.エネルギー源別需給動向

(1)石油

台湾は、西岸の大陸棚に広がる堆積層に炭化水素資源が存在し、少量の原油を生産し

てきた。しかし、それも1990年の18.24万kLから2012年はわずか1.14万kLに減少

しており(能源部データ)、ほぼ全量を輸入に依存している。

石油消費は2000年代初頭まで一貫して上昇を続けていたが、2003年頃から上昇のカ

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ーブがなだらかになり、2007年に5,040万トンとピークに達したのを境に、2008–2009

年は世界不況もあってかなり減少した。2010年は増加に転じたが、翌2011年からは再

び下降、2年連続の減少となった2012年の石油消費は前年比1.8%減の4,220万トンで、

2000年頃の水準にまで落ちている。

原油輸入も、2003年に 3億 bblを突破し、2005年に 3.8億 bblとピークを記録した

後は、減少基調で推移している(表2参照)。

2012年の原油輸入構成比は、サウジアラビアが31.5%と最大で、クウェートが21.1%、

アンゴラが13.6%、オマーンが10.7%、イラクが7.5%、UAEが6.8%と続いている(表

2参照)。

表2 原油の国別輸入量

中東依存度は1980年時点で87%と極めて高かったが、その後、分散化するとともに

アフリカの低硫黄原油が増加して、1990年代後半には60%程度となった。しかし、2001

年から輸入が増加して中東依存度は再び上昇、輸入量が年間 3億 bblを超えた 2003年

以降は、3億bblを下回った2011年を除いて、80%前後というかなり高い水準で推移し

ている(図3参照)。

台湾は中東依存からの脱却を図るため、2025年までにエネルギー消費に占める石油の

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比率を30%程度に引き下げるとともに、輸入ソールを、ベネズエラなど中南米やアフリ

カ、豪州などへ拡げ、分散化を進めていく方針。

図3 台湾の原油輸入推移と中東依存

(2)天然ガス(LNG)

台湾は、苗栗県の錦青や鐵砧で小規模なガス田を操業しており、LNG輸入開始直前の

1989 年までは、国内生産(当時は年間約 14 億m3)で天然ガス需要を賄っていたが、

現在の生産は年間4億m3程度で、供給量のほとんどを輸入LNGが占めている。

LNG輸入により天然ガス消費は急増、1990年の 19億m3から、2000年は 62億m3

となり、2004年に 100億m3を突破した。2009年は世界不況の影響から若干減少した

が、景気回復とともに増加し、2012年は前年比 4.7%増の 163億m3となった(図 1、

表1参照)。

台湾は第2次オイルショックを機に、石油依存率の高いエネルギー構造からの脱却を

目指し、クリーンエネルギーである天然ガスへのシフトを推進、日本、韓国に続いて1990

年から永安の輸入ターミナルでLNGの輸入を開始した。LNG輸入関税の引き下げ、ガ

ス火力発電所の新設で大口需要が開拓され、永安の輸入基地拡張と海底パイプライン敷

設に続き、2009 年には北部の台中で第 2 輸入ターミナルが稼働を開始しており、LNG

は発電用を中心に今後も増加する見通しで、台中ターミナルの増設や第3ターミナルの

新設も計画されている。LNGは2020年までに年率7%の伸び率を示すと予測されてい

る。

CPCが輸入している LNGの長期契約は、インドネシアのBadak-Ⅵから 184万トン

(契約期間1998–2017年)、マレーシアのMLNG-Ⅱから225万トン(1995–2015年)、

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カタールRasGas-Ⅱからの300万トン(2008–2032年)である(表3参照)。

このうち、インドネシアおよびマレーシアとの契約分は、台湾南部の高雄県永安ター

ミナルで受け入れており、新たに加わったRasGas-Ⅱとの売買契約は、台湾電力の桃園

県大潭のガス複合発電向けの年間168万トンを含んでおり、中部西海岸の台中ターミナ

ルで受け入れている。

LNG輸入量は、世界不況下の2009年を除いて拡大を続け、2012年は前年比4.2%増

の 1,249 万トンに達した。これまでの主要輸入先は 3 カ国で、2012 年のシェアはカタ

ールが46.3%、マレーシアが22.4%、インドネシアが15.2%である。

2009年まで台湾にとって最大のLNG供給国はインドネシアで、1990年から2009年

までBadak-Ⅲと年間158万トンの売買契約があったが、インドネシアはBontangガス

田の生産減を理由に、Badak-ⅢのLNG供給契約を更新しなかったため、2010年以降の

インドネシア産LNGの輸入は大幅に減少している(表4参照)。

表3 CPCの長期LNG輸入契約

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表4 LNG国別輸入量

これまでの 3 カ国 3 プロジェクトとの長期売買契約に、2013 年以降、以下のような

新契約が加わる(表3参照)。

CPCは2011年12月にRasGasとの間で年間150万トンのLNG長期売買契約を締

結した。期間は 2013 年からの 20 年間だが、2012–2016 年の増量分も含まれており、

最初のカーゴは2012年1月に永安ターミナルに到着した。

2010年2月には、ExxonMobil傘下のEsso Highlandsが進めているパプアニューギニ

ア(PNG)のLNGプロジェクトから20年間にわたり年間120万トンのLNGを輸入す

る契約に調印した。PNG初のLNGプロジェクトで、液化能力は年間660万トン(330

万トン×2系列)、2009年12月に最終投資決定しており、2013年に完成する。

Shell Eastern Tradingとの間で2011年5月、年間200万トン LNG長期売買に基本合

意した。期間は 2016年からの 20年間、供給源はShellの全世界の LNGポートフォリ

オからだが、浮体式LNG(FLNG)プロジェクトであるPrelude FLNG などShellの豪

州LNG事業が中心になる。これが、ShellとCPCの間の初めてのLNG長期取引になる。

さらに国際石油開発帝石(INPEX)とTotalが開発を進めている西豪州沖合Ichthys LNG

プロジェクトから年間175万トンを引き取ることに合意している。同事業の液化能力は

年間840万トンで、2017年からLNGの出荷を開始する。

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このほか、CPCは安価なシェールガスを液化して輸出するというカナダや米国の計画

に関心を持っている。CPCの林聖忠董事長は2013年4月、Chevronとの間でカナダの

シェールガス共同開発を話し合っており、生産したガスを台湾で引き取りたいと述べて

いる。Chevronはカナダ西海岸でApacheと協力してKitimat LNGプロジェクトを進め

ており、CPCは同計画からのLNG購入を検討しているものとみられる。

さらに、江宜樺行政院長は2013年6月、米国テキサス州のFreeport LNGプロジェク

トからの輸入を検討していることを明らかにしている。

なお、CPCは2007年11月にオーストラリアWoodside Petroleumとの間でBrowse

LNGプロジェクトから年間200–300万トンのLNGを引き取ることに基本合意し、交渉

を続けていたが、同LNG計画は最終投資決定が送れていることもあり、2012年6月を

もって交渉は決裂した。

CPC は、南部の永安で 1990 年から台湾初の LNG ターミナルを操業しており、2 度

にわたる増強工事で、現在の受入能力は年間900万トンに達している。

続いて中部の台中港に16万m3×3基のタンクからなるLNGターミナルを建設、2009

年 7 月より正式操業を開始した。現在の受入能力は年間 300 万トンだが、16 万 m3×3

基のタンク増設を計画しており、2018年までに竣工する予定である。

さらにCPC は、第 3 ターミナルを台北近郊に建設する計画を進めており、順調にい

けば2018年頃に完成する。

(3)石炭

1960 年代中期には年間 500 万トン以上の石炭を生産していたが、浅い炭層を掘り尽

くした結果、採炭コストの上昇に耐えきれず、2000年をもって国内生産は停止した。

これにより2001年以降は全面的に海外炭に切り替わり、2011年は6,658万トンとピ

ークを更新したが、2012年は若干減少して6,463万トンとなった。72.3%が発電用に使

用されている。輸入ソースはオーストラリアが最大で、燃料炭の 49.3%を占めている。

以下、インドネシアが29.7%、南アフリカが11.9%、ロシアが7.9%と続いている。か

つて、輸入の約 50%を占めていた中国は 2006 年以降、激減しており、2012 年のシェ

アはわずか2.5%しかない(能源部データ)。

(4)原子力

台湾は水力資源が乏しいため、石炭火力とガス火力発電さらに原子力発電がエネルギ

ー供給の大きな部分を占めている。

しかし、台湾では、1978-1979年に1985年に636MW×2基の第1原子力発電所(金

山)、1981-1983年に985MW×2基の第2原子力発電所(国聖)、1984-1985年に956MW×2

基の第3原子力発電所(馬鞍山)と、ほぼ毎年のように新規原子力ユニットが操業を開

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始した後、20年近く新規原子力発電所の運転開始が途絶えている。このため、この間の

原子力による発電量は横ばいで、エネルギー供給に占めるシェアは下降している(図 2

参照)。

台湾電力が計画している 1.350MW×2 基の第 4 原子力発電所(龍門)は、General

Electric(GE)を通じて 1 号原子炉を日立、2 号原子炉を東芝、発電機を三菱重工業が

受注して建設が進められているが、反対運動や度重なるトラブルで、完成は大幅に遅れ、

操業開始は2016年頃になるとみられている。

台湾では 2000年 5月、原子力発電所建設中止を公約に掲げた陳水扁民進党政権が成

立し、一度は建設中止を発表したが、国民党など推進勢力との妥協を強いられ、結局は

建設再開に合意した。再開にあたっては、エネルギー不足が生じないことを前提に脱原

発に向かうという条項が付記された。当時の民進党政権は、人口密度の高い地震多発地

帯にある島国での原子力の危険性や核廃棄物処理は大きな問題だとし、2002年10月に

再生可能エネルギーに力点を置くという非核国家推進基本法案を閣議承認し、2011年か

ら2017年までに原子力発電所を停止し、環境負荷の低いLNGと再生可能エネルギーで

代替するという方針を決定した。しかし、同法案は 2003年 5月に行政院を通過して立

法院に送られたが成立せず、2008年に発足した馬英九国民党政権は、低炭素社会を実現

するためには原子力も選択肢の 1 つとし、「永続的エネルギー政策綱領」にも原子力の

再評価を盛り込んだ。

ただ、こうした原子力見直しの動きも福島第1原発事故の影響で、再再度の見直し気

運が高まり、第4原子力発電所は安全確保を前提に操業するが、既存原子力発電所の寿

命延長は行わないとされている。

3.石油・天然ガス開発

3-1.国内資源開発

主に西岸の大陸棚に広がる堆積層に石油および天然ガス資源は存在するが、確認埋蔵

量は、石油が200万bbl、天然ガスが2,200億cf程度と報告されている。

台湾では清朝統治時代の 1861 年に苗栗県出礦坑で石油が発見されており、日本統治

時代には、出礦坑のほか錦水、竹東、六重溪、凍子脚、牛山、竹頭崎などで天然ガスが

発見され、「宝の島」と称されたこともある。第2次大戦後は、1946年6月に中国石油

股份有限公司が上海で設立され(1949 年に台北に移転)、1946 年 8 月に台湾油礦探勘

處が設置されて探査が再開された。

陸上では、出礦坑、鐵砧山、錦水、青草湖、白沙屯、永和山、八掌溪、新營、官田な

どで小規模ながら油ガス田を発見した。海域では、1968年から台湾海峡の探査を開始し、

基隆、澎湖、鹿港、新竹、高雄沖合などで探鉱を実施、新竹沖合で長康ガス田を発見し

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た。長康ガス田は1986年の開発から10年程度操業したに過ぎない。また、1997年末

からConocoが北部、中部および南部沖合で探鉱作業を実施したが、商業量の油ガス資

源発見には至らなかった。

ただ、南部高雄沖合のF構造で有望な天然ガス資源を発見して開発が進められている。

さらに CPC は、中国本土側の南シナ海珠江口盆地の大水深海域で茘湾 3-1 などの大型

ガス田が発見されていることに注目しており、大水深の探鉱開発ノウハウを持つ外国企

業と組んで本格的な探査にのりだしている。また、中国本土企業との共同事業として中

国海洋石油総公司(CNOOC)と協力しての台湾海峡の探査事業も進めている。このほ

か、台湾南西沖海域ではメタンハイドレートの調査を進めている。

(1)Husky Energyの台南盆地大水深鉱区探査

CPCは2012年12月、茘湾3-1ガス田を発見したカナダHusky Energyとの間で台湾

海峡台南盆地の探鉱に向けて、合弁事業契約に調印した。権益は Husky が 75%でオペ

レーターを務め、CPC が残り 25%を持つが、商業量の資源が発見されて開発に移行す

る場合、CPCは権益を50%まで引き上げる権利を保有する。期間は7年間で3段階に

分かれ、地質調査、地震探鉱、試掘井掘削を実施する。

(2)台南盆地F構造の開発

CPC は、台湾と中国大陸との中間線から台湾側に 40km 入った台南盆地中央部の F

構造で天然ガス田の開発を進めている。F構造は南部の高雄から西に100km、ガス可採

埋蔵量は59.73億m3と見積もられており、潜在的な埋蔵量を加味すると100億m3以上

となる可能性もある。100×50mの海洋プラットフォームと日量250万m3のガス輸送能

力をもつ 120km の海底パイプライン、高雄市永安区の陸上ガス受入・処理設備を建設、

11 坑の開発井を掘削し、開発後は日量 218 万m3の天然ガスと 566bbl のコンデンセー

トの生産が見込める。

もともと1970年代前半に発見し、1990年代後期に開発を提案しが、採算性の問題か

ら断念していた。技術の進歩で開発コストが下がり、採算性が確保できる見通しがつい

たことから、2005 年 7 月に開発計画の政府承認を得たが、原油価格高騰に伴って開発

コストが大幅に膨らみ、2006–2008年は開発の延期を申請、2010年 5月に修正開発案

の承認を得た。

(3)本土CNOOCとの台湾海峡共同探鉱

両岸共同探査計画は、1996年にCPC傘下のOPICとCNOOCが地球物理探査契約に

調印して具体化へ向けた準備を開始した。7,300kmの物理探査で含油地質構造17カ所、

うち 6カ所でかなり有望な発見があり、石油ガス埋蔵量は計 1兆 3,436億m3に達する

と報告された。探査の対象は台南盆地・潮汕凹陥の一部海域で、高雄市から250km、広

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東省汕頭市から150kmに位置し、総面積は1万5,400km2。CPCは2002年5月16日、

4月の行政院大陸委員会の承認を受け、CNOOCとの間で台湾海峡の共同探鉱契約に調

印した。両社は英領ヴァージン諸島に合弁会社を設立、2003 年 9 月に 1 号井を掘削し

たが、失敗した。2006年からは両岸関係が緊張し、作業は再び停滞、契約期間は2006

年末から2008年末に延長された。

2008年12月、CNOOCとCPCは一歩踏み込んだ戦略的提携関係を結び、台湾海峡

探査の2年延長や新規海域での探査に合意するとともに、天然ガス市場開拓、原油の委

託精製および原油貿易、海外での共同事業にも合意した。両岸間探査には、福建省南日

島の東側、台湾澎湖諸島の北側の 9,800km2 の海域についても探査に向け共同調査を実

施することになり、2009年4月に南日島盆地(烏丘嶼凹陥)共同調査契約に調印した。

2009年9月に2号井を掘削したが、失敗した。両社は3,300kmの2D震探データを処

理し、800kmのデータの再処理を実施した。ちなみに海外共同事業では、CNOOCが保

有しているケニア Anza 盆地ブロック 9 の権益 70%のうち 30%を CPC 傘下の OPIC

Chadに譲渡したが、探査は失敗した。

その後、CPC と CNOOC は新たな共同探査対象海域として台湾海峡北端海域(台湾

北部の基隆市および新竹市の沖合)の共同探査に向けて契約書を作成しているとされ、

2013年後半に正式契約する見通しだという。

(4)メタンハイドレートの調査

CPCは2005年11月、南シナ海でメタンハイドレートを確認したと発表した。2007

年7月の経済部報告によれば、南西部と南シナ海の東沙島(高雄の南西約450km)との

間のメタンハイドレート埋蔵量は5,000億m3以上に達し、国内ガス需要の50年分に達

すると見積もられている

2013年3月 31日から50日間にわたりドイツとの共同で南西部沖合のメタンハイド

レート調査を実施した。行政院国家科学委員会、台湾大学、海洋大学、ブレーメン大学

などが参加し、4700 トンのドイツ海洋調査船「Sonne」を使用、コストは 398 万ドル

で、4分の3をドイツ、4分の1を台湾が負担した。

国家科学委員会が建造した海洋調査船「海研五号」は2011年6月に進水しているが、

Sonneに搭載された機器の一部は海研五号に提供される。

3-2.海外資源生産

CPCは 1970年代から海外事業を進め、2007年から 5年間で保有する石油ガス埋蔵

量を倍増させるとの計画を進めてきた。これまでにアジア太平洋地域ではマレーシア、

インドネシア、ミャンマー、ベトナム、オーストラリア、パプアニューギニア、カザフ

スタンなど、中東・アフリカ地域ではUAE、ヨルダン、モーリタニア、ナミビア、ガボ

ンなど、米大陸では米国、コロンビア、エクアドル、アルゼンチン、ベネズエラなどで

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探鉱開発プロジェクトに参加してきた。最初の成果はUAEのRas Al Khaimarで、1983

年から5年間の生産を続け、1989年に撤退した。その後、エクアドルのブロック16と

17、オーストラリアのVIC/P20、ベトナムの11-1ブロック、マレーシアのSK-7、イン

ドネシアSanga Sanga、カザフスタンTenge、ベネズエラWest Paria、UAEのMubarek

などで探鉱・開発・生産プロジェクトに携わってきた。

現在、CPCは米国、エクアドル、ベネズエラ、オーストラリア、インドネシア、ミャ

ンマー、ニジェール、リビア、チャド、探鉱・開発・生産事業に参加、最近では、LNG

の安定受給をめざし、カタールに続いてオーストラリアで 2 件の LNG プロジェクトに

参画、北米のシェールガス開発や LNG 計画への参加も検討している。また、台湾海峡

の探鉱プロジェクトに加えて、オーストラリアやミャンマーなど第三国でも中国本土国

営石油企業との協力を進めている。(図4参照)

図4 CPCの主要海外プロジェクト(%はCPCの権益割合)

(1)米州地域

カナダ:CPCの林聖忠董事長は2013年4月、中国国営石油3社や海外石油大手が参

加した中国本土での国際会議に出席、カナダでの複数の事業参画について明らかにした。

ExxonMobil との間ではカナダ西海岸の鉱区の権利の一部を譲り受けることが決まっ

た。同鉱区はすでに石油も生産している大規模油田で、5%の権益を取得する場合、CPC

の投資額は100億台湾元を超えるという。

Chevronとはカナダ西海岸のシェールガスを共同開発し、生産した天然ガスを台湾に

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供給することを検討する。ChevronはApachと共同でシェールガス開発およびカナダ西

海岸のアジア向けLNG輸出計画であるKitimat LNGプロジェクトを進めている。

米国:CPC は、ルイジアナ州およびテキサス州で、Caviar、Manahuilla、Estrella、

Garden City Field、Hurricane Creek(Big Horn、Shorts Creek、Danub、Yellowstone)

に参加している。いずれも 10–18%のマイナーシェアでの参加。Caviar とManahuilla、

Hurricane Creekでは天然ガスを生産している。また、ConocoPhilipsとの間でShalimar

鉱区への参加に合意している。

エクアドル:ブロック 16 で 1994 年 5月から石油生産を開始、生産規模は日量 4 万

4,800bbl。このブロック16には本土の中国中化集団公司(Sinochem)がConocoPhillips

から権益譲渡を受けて参加しており、権益はオペレーターのRepsol YPFが55%、CPC

が31%、Sinochemが14%である。

続いてブロック17でも生産に移行、日量9,200bblで操業している。オペレーターは

EnCanaであったが、PetroOriental/Andes Petroleum(CNPC/Sinopec)にこの周辺鉱区

を含め全てを譲渡したため、現在の権益はPetroOrientalが70%とCPCが30%。

ベネズエラ:ConocoPhillipsと共同でParia EastとParia Westの2鉱区を保有、権益

はそれぞれ7.5%と10%。Paria West湾Corocora油田は、CPCにとって最大級の海外

事業だったが、ベネズエラによる国有化に伴い補償交渉を行っている。

コロンビア:同国第2の油田開発会社であるLive Oak Holdings Energy Corp(LOH

Energy)、韓国の韓進P&C(Hanjin P&C)と共同で、同国北東部Middle Magdalena Valley

Basin に位置する VMM-4 鉱区の開発を進めている。シェールオイルやシェールガスも

期待される同国北東部Middle Magdalena Valley Basinに位置するVMM4鉱区は、2009

年にLOHが獲得した鉱区で、Barrancabermeja Ayacuchoパイプラインが通り、製油所

にも近い。確認埋蔵量は10億bbl、可採埋蔵量は1億bbl以上。

(2)アジア・太平洋地域

オーストラリア: 2013年6月に、INPEXとTotalが進めている Ichthys LNGプロジ

ェクトの権益2.625%を取得することに合意した。権益は、WA-50-L鉱区(Ichthysガス

田を含む)およびWA-51-L鉱区、WA-285-P鉱区(WA-50-L鉱区に隣接)、ガスパイプ

ラインおよびLNGプラントを保有して液化・販売等を実施するIchthys LNG Pty Ltdの株

式を含んでいる。権益譲渡が成立すれば、比率は、INPEX が 63.445%、Total が 30%、

CPCが2.625%、東京ガスが1.575%、大阪ガスが1.200%、中部電力が0.735%となる。

LNG生産能力は年間 840万トンで、2016年末までに生産を開始、CPCが 175万トン

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を引き取る。

LNG事業では、Prelude FLNGプロジェクトでも5%の権益を取得している。同プロ

ジェクトは、豪州北西部沖合Browse BasinのPrelude/Concertoガス田ガス田を開発し、

生産した天然ガスを FLNG プラントで液化して輸出するもの。Shell にとって初の商業

FLNGプラントとなり、年間 360万トンの LNGとともに、日量 3万 bblのコンデンセ

ートと年間40万トンのLPGを生産する。INPEXが17.5%、韓国ガス公社(Kogas)も

10%の権益を取得している。LNG 生産開始は 2017 年の予定で、CPC は、同」プロジ

ェクトを含むShellのLNG事業から年間200万トン LNGを引き取る。

CPCは2009年8月、中国石油化工集団公司(Sinopec)との間でオフショアのNT/P76

鉱区を共同開発することに合意した。2008 年に Sinopec が取得した鉱区で、リスク分

散のためCPCに40%の権益を譲渡した。Darwinの沖合約330kmのBonaparte海盆に

位置し、天然ガス埋蔵量は 3,680億m3と見積もられており、11カ所の有望な構造が確

認されている。契約期間は6年で、最初の3年で3-D震探、次の3年で試掘井の掘削を

行う。

CPCは、Eniがオペレーターを務めるAC/P21に30%の権益をもっており、Sinopec

も参加しているが、2社での協力は初めて。

ミャンマー:2013年4月、Sinopecとの間でブロック Dに関する30%の権益譲渡契約に

調印した。ブロックDは、2004年9月にSinopecとミャンマー国営Myanma Oil & Gas

Enterprise(MOGE)がPS契約に調印した西Rakhineの陸上鉱区で、面積は約1万2,000km2。

これまでに6坑の探査井を掘削し、うち3坑で天然ガスを確認している。

インドネシア:東カリマンタンのSanga Sangaで石油可採埋蔵量1億9,000万bbl、

天然ガス同 1,670億m3を発見、生産規模は、原油が日量 1万 4,000bbl、天然ガスが同

1,150万m3。

2009年11月にBP、Eniおよび石油資源開発など日本4社と共同でSanga-Sangaの

炭層メタンガス(CBM)鉱区を落札した。ガス埋蔵量は 10–15兆 cfと見積もられてお

り、Bontang LNGにガスを供給する。

このほか、BulunganとAmborip VI、Arafura Sea鉱区に参画している。

(3)中東・アフリカ地域

ニジェール:2013年3月、CNPCが操業しているAgadem石油鉱区の開発・生産事業に参

加することに合意した。台湾経済部次長からCPC董事長(会長)に転じた林聖忠氏が、

CNPCを訪問した際に契約したもの。CPCは、2008年4月に当時の潘文炎会長が探鉱開発

部門上層部とともに本土国営石油3社を訪問、協力拡大を話し合った。CNPCとの間では、

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上流分野の協力に向けた覚書に調印し、協力拡大を進めてきた。これまで石油製品貿易や

スーダン原油委託精製などで協力していたが、上流分野で目立ったものはなかった。

リビア:第3次国際入札で、Murzuq 162(1&2)を落札、2007年4月に100%の権

益で探査・生産分与契約(PSEA)を結んだ。面積は3,757km2で、5億bblの原油が生

産可能とされる。2010年に2坑を掘削したが、油ガス資源の発見には至らなかった

チャド:2006年1月にチャド政府との間で陸上油田の探査契約に調印した。鉱区は、

BCO III、BCS 11、BLT Iで、権益は、オペレーターのCPCが70%、残り30%をチャ

ド政府が保有する。2007年から調査作業を開始し、2010年にBenoy-1井を掘削、2011

年2月の発表によれば、埋蔵量1億bbl規模の油ガス田を発見した。日量9,800bblの石

油と同3.5万m3の天然ガスの生産が可能と試算され、2015年の生産開始を目指す。単

独井としてはCPCにとって最大の発見だという。

ちなみに中国本土とチャドは2006年8月6日、突然の国交回復声明を発表、これに

より、台湾はチャドと断行した。チャドは1960年にフランスから独立、1997年8月か

ら台湾と国交があった。ただ、台湾政府と CPC はチャドとの国交断絶が同国での探鉱

開発事業に影響することはないとしている。

カタール:2008年9月、Rasgasトレイン5の権益5%を取得した。年産470万トン

で、シェアは、Qatar Petroleumが70%とExxonMobilが25%。

なお、上流権益ではないが、CPC はカタールの Qatar Fuel Additives Company

Limited(QAFAC)に20%の出資比率で参加しており、メタノールやMTBEを生産してい

る。

その他:コンゴの大水深鉱区であるHaute-MerAブロックに参画する。

また、2008年12月にCNOOCと戦略提携して台湾海峡と海外での共同事業に合意し、

CNOOC Africaが保有しているケニアAnza盆地ブロック9の権益70%のうち30%を取

得した。ただ、同鉱区の探査の成果はあがらず、撤退した。

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参 考

Statistical Review of World Energy各年版(BP)

能源統計月報、能源統計年報、能源局年報(台湾経済部能源局)

台湾中油年次報告書

東アジアの石油産業と石油化学工業 2012 年版(東西貿易通信社)

East & West Report各号(東西貿易通信社)

本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析

したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]

でお願いします。

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次回のJPECレポート(2013年度 第13回)は

「米国DOEのバイオリファイナリー・プロジェクトの最新状況」

を予定しています。