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©ARC Academy, 2014 1 アークアカデミー 平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ [解答と解説]

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アークアカデミー

平成26年度 日本語教育能力検定試験

試験Ⅲ

[解答と解説]

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試験Ⅲ

問題1

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

4 4 3 1 2

問 1 1の誤用訂正は「母からの」と「の」を付加するのみ。2は「事務所への(へ)」と「に」との置

き換え。3は「ハイキングの」という「が」との置き換えと,「中止になったの」の付加である

が,テンスを伴う。4は「会場までの」または「移動するの」の 2種類で,下線部 Aと同じ直し方

になる。

問 2 1は「~ようとしません」は,1人称以外を主語とする動作の外観に関する概言の表現である。

2は「~つもりです」の前が普通体である誤用である。3は「~ようとした」アスペクト表現とし

て人称にはこだわらないが,反実仮想(実際にはしなかった)のため,否定形には付かない。4は

「意志形+と思う」で 1人称を表せるが,否定は「意志形」ではなく「思う」で表す。この場合,

意志を「つもりだ」でも表現ができ,否定は普通,「つもり」の前で表現する。

問 3 「~ようとする」「~ようと思う」の誤用である。すべての人称で「~つもりはない」が使え,1

人称のみで「意志形+思いません」と訂正できるので,「人称」を選択する。

問 4 1は,無意志動詞「混む」と頻度の副詞「ばかり」の共起による誤用(共起しない「*晴れてばか

り」など)。2は「了解 → 理解」3も「降りて → 落ちて」4も「割れて → 壊れて」と語の選択

に関わる誤り。

問 5 1は条件の「と」の後件にモダリティが来ないという規則への違背。3は前件のテンスが過去で

ないという誤り。4は「だけしか」は特定のものに限定する用法だが,程度副詞を使った誤用。2

は論文調の「~において」を用いる文で「とか」の使用や「を」の脱落を招いているので,文章に

おける適切性を欠いている。

問題2

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

4 4 3 2 4

問1 「学習者の学習目的に関わらず」「網羅的に教える」という部分が不適切である。

問 2 複文,重文の区別は,学校文法のもので,日本語教育では従属節,並列節と呼ぶことがある。い

ずれにしても,「重文,並列節」のほうが理解は容易で,1は誤り。2の「内容語に関わる文末表

現」とは活用などのことであり,中級で特に増えるわけではない。形式的な学習はどちらも初級で

行う。「命題の構成」とは文の構造であり,中級以降はこれを踏まえて,話者の伝達態度(ムー

ド)の学習が増えてくる。

問 3 3の「来ます,いらっしゃいます」は文体の違いではなく,動作主体に対する待遇の違いであ

る。

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問 4 1は「いけない」「ならない」,3は「(恵まれない状況に対処できない)」,4は「(売上は増えな

い)」などのマイナスの表現に限定される。2は「よく分かる」「分かりにくくなる」「面白い」「退

屈だ」のようにプラスの表現もマイナスの表現も取り得る。

問5 一般に敬語表現は初級後半で教えるため,適切さに対する誤用訂正は,正確さに対する誤用訂正

より遅い段階になる。1は誤り。適切さに関する誤用訂正も,程度のみならず「適切か不適切か」

という二項対立の面もあるので2も誤り。3における「文頭」か「文末」かによる適切さの対立は

ない。文頭でも「熊田さん」を「熊田先生」と訂正する場合もあろう。4における「コミュニケー

ション重視」とはローカルエラー(意味の取り違えの起こらない誤用)程度であれば訂正しないこ

ともある。

問題3

問1 下線部は,2の隣接ペアの定義。1「挿入連鎖」とは,一つの隣接ペアにもう一つ以上の隣接ペ

アが入り込む拡張連鎖のことである。

A:UFOを見たのはこれで4回目だ。

B:えっ,何を見たの?

A:UFOだよ。

B:初めてだったの?

A:いや,もう4回目。

3のTRPは「遷移関連場所」とも訳され,会話のターンの終わり近くにある複数の話者交代可能

性の場所のことを指す。4のFTAは相手の面子を脅かす行為のこと。

問 2 3の「ごめんね」が何に対する謝罪かが相手に伝わらない。また,「もうお昼だから」と解釈する

のであれば,そもそもの「おはよう」という挨拶が不適当であった。芸能界などでは逆に「おはよ

う」が適当でもあり,3の解釈には無理がある。

問 3 1の「理由や説明が繰り返し述べられる」のは「受け入れ」ではなく,「依頼」や「断り」であ

る。3の「ターンの後方」とは,いくつかの発話の後で「で,ところで先ほどのお願い,遠慮なく

お引き受けします。」というような形になり,ルールに違背する感のある発話で,喜劇などで用い

られることしかない。同様に,沈黙や言いよどんで「受け入れる」ことは少ない。

問 4 「受け入れ」と「断り」の相反する二つの可能性が起こるのは「忠告」であり,「感謝」と「反

発」の二つの行為が反応として考えられる。

問 5 1と 4は伝達すべき内容の予告,3は依頼の申し出で発話行為を予測させるが,2の「あの犬,

かわいいですね。」が次にどう続くかは相手の反応次第である。

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

2 3 2 4 2

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問題4

問1 教室談話とは「『教室』という教育実践の場において現実に使用されている文脈化された話し言

葉による相互作用」で制度化された場における談話であり,役割が教室内外で固定している。

問2 1において,「リンゴ」と「みかん」のどちらを選んでも,IRE/IRFに基づく「評価」や「フィ

ードバック」を行うことはないであろう。

問3 1,3,4において,教室場面のくだけた雑談や日常会話と学習項目という場面の使い分けが行

われるが,2の「未習表現と既習表現」は学習習得場面のみで学習者が共同して場面を作り上げて

いるわけではなく教師単独で作られた場面の中の教師の役割である。

問4 「談話標識」に「品詞としての捉えなおし」はないので 3,4は不適当な記述である。また,談

話標識は「文と文」「段落と段落」の関係を表す論理の道筋を示すもので,非言語行動ではないた

め 1も誤りである。

問5 IRE/IRFやパターン・プラクティスは現状の教室の中で「排除すべきもの」としてまで取り扱わ

れていないので 1が不適当である。

問題5

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

1 2 4 3 4

問1 ビジター・セッションなどプロジェクト・ワークの事前活動において「正確な日本語のスピー

チ」を練習するものはない。

問2 非漢字圏学習者の理解促進に「漢字を一文字ずつ書く」というストラテジーはほとんど効果を生

まない。

問3 終助詞「よ」は,相手が知らないと思っている内容を話し手が伝えるときに用い,相手の意見へ

の応答で使うと「そんなことは私も知っていた」という一方的な通告になり,不快をもたらす。そ

れに最も近い記述は選択肢 4。

問4 問 1と同じく「正確な日本語」への誤用訂正ではなく「相互理解の妨げ(言葉の使用に伴う不快

感の増長)」の訂正を中心にすべきである。また,ワーク(活動)の間の訂正や指導は,それが一

種の妨害にもなりかねないので,ワーク後の振り返りの項目として取り上げ,参加者全員でシェア

するのが良い。

問5 モダリティは初級では未習が多く,擬音語・擬態語は文化による違いもある。カタカナ英語は,

和製のものや和風発音のものも多いので,いずれも多用を避けるべきである。初級では 4が適切で

ある。

問題6

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

3 2 3 4 4

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

2 1 2 2 1

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問1 1の「読解に必要な予測の力」とは,談話標識など論理の流れの確認を行うことで高められる。

ここでは,読解内容の「ストレス」に関して,学習者の背景知識を活性化させる点に狙いがある。

2は授業の中身と異なり,4であれば話題は何でもよい。

問2 教材シートの 10項目の分類を短時間で行う「グループ作業」であり,大意取りの読解を行う作

業と考えられる。1の「集中」は「短時間」「グループ」にそぐわない。3の「仮説」「検証」も

「短時間」の内容ではない。同様に 4の「客観的に認識」もこの作業の主目的ではない。

問3 授業の目標は「文章から目的に合わせて必要な情報を素早く読み取る。その情報をもとに話し合

う」であり,3の「場面による言葉の使い分けを練習できる」はこの目標に一致しない。

問4 4「単語」を「正しい発音で読める」はこの授業の目標ではない。

問5 初級後半であり,語彙・表現がまだ十分でないと考えられる。教材シートにある「体の疲れ」

「憂うつ」「なかなか頭に入らない」「~のためなら頑張れる」など。これに最も近い選択肢は 4。

問題7

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

3 2 4 2 1

問1 エントリーシートに書く内容についての活動なので,語彙・表現,文体,文型の正確さなどの選

択肢を除く。

問2 学生時代に頑張ったこと概論(自転車部の活動),その具体的経過,経過から得た経験と自信,

という構成なので「結論,結論の具体的な記述,まとめ」の 2を選択する。

問3 <資料 2>で句点は三つしかなく,節がただただ読点で繋がれている。主述の関係も分かりにく

いので,簡潔な一文を書くことが適切なアドバイスになる。

問4 下線部 Cで,「各部員が」の述部として「出し」「調整し」「堪能したりと」「味わってくれまし

た」が続くが,「案内したり」の主語は,前の文に出てきた「外国人で唯一の女性」である筆者で

あるはずで,主述の対応が見られず,読み取りにくい文になっている。よりよい文にするための指

摘は2である。

問5 ここでの誤用は,文末の「思いが高めました」である。これは,「思いを高めました」か「思い

が高まりました」の誤りで,自動詞,他動詞の区別を指導すべきである。その際,母語に訳して

も,母語の自他動詞の別と同一でもないので,意味のない不適当な指導となる。1が不適当。

問題8

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

2 3 3 2 3

問1 授業の目標は「待遇面で配慮のある適切な表現を用い,丁寧に依頼ができる」となっている。選

択肢2は「デパートで」「商品を説明してもらう」という場面で,依頼側からの「待遇面での配

慮」はあまり要らない。したがって,「扱う場面として不適当」である。

問2 3の「~てもよろしいですか」は単純な依頼の表現ではなく,許可要求の表現である。

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問3 動画を見せることの効果は非言語行動に着目させることである。結果が OKにしろ NOにしろ、

それに伴う非言語行動を学ぶことの効果は高く,特に,頼みにくいことを依頼する,相手の依頼を

断る,といった場面における非言語行動の習得は,重要な学習項目の一つであり,音声なしの動画

を見せることは本授業において効果的な活動である。

問4 本活動の手順におけるポイントは「タスク先行型」である。タスク先行型にあてはまる選択肢

は,2だけである。

問5 1は依頼会話の事後処理(謝辞,取りなしなど)についての配慮がない。2は事前処理(依頼の

必要性の暗示)がない。4は表情など非言語行動への配慮がない。

問題9

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

1 1 1 3 1

問 1 2「予測や推測をしない」で早く聞くのは困難。3「何度も聞く」4「その都度その語に注意を

向ける」のは実際的な聴解ではない。

問 2 「日本の学校の制服に対する討論」で「賛成できるかどうかを考える」ことは「自分の既有知識

と関連づけて解釈する段階」を通り越しているので誤り。

問 3 「下位レベルの処理の失敗」とは「聞き間違い」や「読み間違い」のことである。これを表して

いるのが「ビヨウイン」と「ビョウイン」を間違えた1。

問 4 「平仮名の表記と実際の発音が違う」ものを選ぶ。「いんねん,くさばな,せんたくき,あまも

り」では,「洗濯機」のみ「せんたっき」と発音する。

問5 1「意味内容の理解が自動化」は,大量のインプットによって起こるとされている。2では,取

り出す要素がより多くチャンキングされ,ワーキングメモリの空きが増えると言われる。3「プロ

ソディ」とはその言語らしさのことで節回しが似てくる。したがって,チャンクを早く捉えられ,

4「知覚段階の自動化」も進む。

問題10

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

2 3 2 2 不能

問 1 プライミング効果とは,あらかじめある事柄を見聞きしておくことにより,別の事柄が覚えやす

くなったり,思い出しやすくなったりすることをいう。

問 2 コロケーションとは,二つ以上の単語の慣用的なつながり,連語関係のことを言い,「風邪を」

「*かかる」とは言えず,「引く」と言う。

問 3 チャンキングとは,情報の一かたまりのチャンクへ変化させることを言い,ここでは2の「複数

の語が一まとまりとして処理されること」を指す。

問 4 初級学習者は,第二言語の音韻処理にも手間取っているため,多量の語彙の提出は仮に体系化さ

れていても記憶に負荷がかかり記憶化に失敗する可能性が高い。

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問5 複数解答あり。1「きれいな人(汚い人が対比されない)」「部屋が汚い」は本来の対義ではな

い。2の「長い」「短い」で頻度,必要度の差があるとは思えない。3は,学習者の知っている語

で例文を出すことは適当だが,あえて「異なるものと組み合わせて導入する」のは不適当である。

被修飾語は既習語にするのは当然だが,「新しい」「古い」という形容詞の導入であれば、同じもの

を修飾することで、意味の対比を提示するのが一般的である。あえて,「家」「本」とすることの意

図がまったく見えない。4の「母語との組み合わせ」は必ずしも意味が一致しないので不適当であ

る。

「不適当として」選ぶべき選択肢しかない。

問題11

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

4 3 4 2 3

問1 文化に「優劣はつけられない」というのが文化相対論の源である。

問2 エポケーとは「判断中止」である。1と4は相手への同調,2は自分の判断である。

問3 1はコミュニケーション・ストラテジー,2は情意ストラテジー,3は認知ストラテジーであ

る。

問4 1は「自分のことを大切に思い,自分のことをかけがえのない存在として,自分らしく生きてい

こうとするプロセス」,3は共感,4は補佐力。

問5 アサーティブ・コミュニケーションは当事者が感情的にならずに,お互いの主張を述べ合うこと

が目的となるので,「はい」「いいえ」でしか回答できない質問形式のみを用意することは不適当で

ある。

問題12

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

3 1 3 1 1

問1 一つの文を会話当事者で共同して作り上げている。これを「共同対話」と呼ぶ。4の「制度的談

話」とは,裁判における弁論のようなルールの下での談話である。

問2 日本は,言語以外の場面(コンテクスト)への依存度が「高い」ので高コンテクスト文化と言わ

れる。

問3 ターンを保持するのは話し手である。

問4 リペアとは,TBLT(タスク重視の言語教育)で用いられる誤用訂正の手法の一つで,相手の誤

用をそのまま会話の中で再生するものを言う。似たようなものにリキャストもあるが,これは正し

く言い直した形で相手に返す。両者ともコミュニケーションを壊さないように暗示的な訂正を行う

ものである。

問5 1実際の接触場面において,聞き手に徹することはなく,有効な指導とは言えない。

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問題13

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

2 2 3 4 2

問1 選択肢はそれぞれ,旧4,3,2,1級の出題基準である。

問2 以下に詳細がある。http://human.cc.hirosaki-.ac.jp/kokugo/EJ9tsukurikata.ujie.htm

「動詞を名詞化したものはわかりにくいので動詞を使う」1は不適当。「二重否定は避ける」3は不

適当。「可能は,することができます」2が適当。「指示は,『ましょう』ではなく『てください』」

4は不適当。

問3 言い換えない語の例として「消防車」「避難所」「余震」「炊き出し」などがある。

問4 「給水=水がもらえる」という言い替えだけではなく,「どこで」水がもらえるのか,バケツや

ポリタンクなどを持っていく必要があるのか,などの情報が伴う必要がある。

http://human.cc.hirosaki-.ac.jp/kokugo/EJ100go-top.html#kome4

問5 「支援者が現地の方言が分からず医療活動に支障を来す」と本文に書かれているところから「患

者」「オノマトペ(痛みの表現として)」を選ぶ。

余談だが,EPAで看護師,介護福祉士候補として地域に点在することになる候補生にとって,

最大の課題は,老齢の被介護者などが発話する「痛み」などの言語形式だと聞く。日本語学校など

で習得するものと全く異なり,分節すら理解できないと言う。これらのオノマトペが最初に習うべ

き「方言」とされているようだ。

問題14

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

1 4 2 4 1

問1 聞き手が「対者」,文中が「話題」になる。

問2 4は謙譲語Ⅱ(丁重語)である。

問3 郵便局,銀行とデパート,商店で使用場面が大きく変わるとは言えない。

問4 「おっしゃる」はラ行五段活用だが,マス形は「おっしゃいます」とイ音便(「おっしゃります

→ おっしゃいます」)の不規則変化になる。

問5 「です/だよ」と文末だけが異なるので,話し手と聞き手の関係性だけが変化したものと考えら

れる。

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問題15

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

1 4 3 1 4

問1 以下にデータがある。

http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/tourism_data/visitor_trends/pdf/2003_14_tourists.p

df

問 2 韓国語は日本語とほぼ文法が同じで過去時制がある。中国語(シナ・チベット語族),マレー語

(オーストロネシア語族),ベトナム語(オースト路アジア語族)などは過去時制がないと言われ

ている。

問 3 新学習指導要領は日本国籍の児童に対する内容で,外国籍児童についての記述はない。学校教育

法施行規則の改正で「日本語の指導」が実施できることになったが「母語の指導」ではない。

問 4 南米の日系人が来日するきっかけとなったのは,1990年の入管法改訂。

問5 以下のデータによれば,「コーディネーター資格の創設」の議論は見当たらない。

http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kyouiku/pdf/suishin_gaiyo_130801.pdf

問題16

問 1 問 2 問 3 問 4 問 5

3 4 1 1 2

問1 以下にデータがある。http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data13.html#no2

問 2 国費留学生は 1万弱である。

http://www.jasso.go.jp/statistics/intl_student/data13.html#no1

問 3 カルチャーショックとリエントリーショックの適応過程は概ね同じものと考えられており,2は

誤り。また,ショックは「最不適応期」を頂点に連続したカーブを描いて適応に至るとされてい

る。起こっては覚め,また落ち着いても不適応期に戻る,という「断続」性は見られないので 3も

誤り。さらに,中国から米国の中国人コミューンへの移住など同一言語内でもショックは起こると

いわれ4も正しくない。

問 4 法務省のデータによれば,2~4は否定される。

http://www.moj.go.jp/content/000113259.pdf

問5 第三者の介入を不適当とする当事者がいる場合,「理想的」とは言えない。

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問題17

【解答例 1】

グループ活動において,日本語のレベルは

様々なほうがよいと考える。協働で課題達成

を行う活動では,できるだけ異なる学習者が

それぞれの得意分野を活かして課題に取り組

むほうが多くの経験を得られる。上級者は,

自身の言語学習経験を中級者に伝達すること

により日本語を客観的に眺めることができ

る。中級者は,上級者の学習スタイル,方略

を学ぶことができる。こうした課題周辺の活

動が,学習者のコミュニケーション能力の発

達に寄与する。今後大学へ進学した際に日本

語ネイティブとのコミュニケーションや学内

での発表に利用できる。ただし,各グループ

に,同レベルの学習者が複数所属することが

望ましい。中級者が一人だけになると劣等感

を感じて萎縮するかもしれない。同様に,上

級者が単独でも,中級者に合わせてしまい日

本語習得への援助が行われない可能性もあ

る。そうした点に気を配れば,グループ内の

日本語レベルは様々なほうがよい。

(395字)

【解答例2】

グループ活動における学習者の日本語レベル

は,できるだけそろえたほうがよい。調査→

発表という課題であれば,通常は(1)必要

な日本語表現の学習,(2)調査のための日本

語使用,(3)まとめ,発表における日本語使

用という順になるだろう。もしグループ内の

日本語能力に大きな開きがあると,上級者の

みがリーダーシップをとる可能性がある。特

に(2)(3)の日本語使用の段階で,中級者

が気おくれして日本語使用が一方的になるお

それがある。一般に,グループ活動を活性化

する要因は日本語能力だけではない。学習者

の性格,関心,行動様式にも影響される。グ

ループは国籍,性別,年齢,職歴など多様な

構成が望ましい。日本語学習の場は異文化接

触の場であって,コミュニケーションの喜び

が日本語学習への意欲にもつながるからであ

る。ただし,日本語のレベルはできるだけそ

ろえたほうがよい。 (369字)

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【解説】

問題本文に,「なるべくそろえたほう」「様々なほう」の二つの意見があるので,どちらの立場から解答

することもできる。

「なるべくそろえたほうがよい」で論ずる場合の論点

グループ活動の目的が,たとえばネイティブにインタビューをしてまとめる「意識調査」というような

場合,目標となるべき被験者の数および内容の質は,同じような日本語レベルのほうが均等性も高くなる

と予想される。また,グループ内での日本語のやり取りについて,不必要な説明もないため時間も効率的

に進められる。アンケートの分析,プレゼンテーション資料の作成,発表など時間がかかる項目をも課題

に取り入れる場合は,「なるべくそろえたほうがよい」と言えよう。

「様々なほうがよい」で論ずる場合の論点

上級者と中級者で,コミュニケーションのもたつきが予想される。この場合,上級者は中級者に日本語

を説明することで,自分の日本語をより客観的に知ることができる。

日本語を説明する際に使われる言語(どんな言語であれ)をメタ日本語と呼ぶが,このメタ日本語の精

緻化を図ることができる。

中級者は,上級者のメタ日本語を理解することにより自分のメタ日本語を伸ばし,コミュニケーション

能力を伸ばすことができる。これは「協働」のもう一つの側面,つまり立場の違うものが共通の目的達成

のために力を合わせて活動する,という面から意味のある活動になる。

「なるべくそろえたほうがよい」で論ずる場合の難点

特に常日頃,同じクラスで学習している者でグループを形成した場合,なれ合いや日々の感情(よいも

のも悪いものも含めて)に左右され,目的となっている活動が部分的にしか達成されない場合がある。

「様々なほうがよい」で論ずる場合の難点

上級者が一人だけ,中級者が一人だけというような極端なグループができあがると,それぞれの良さを

発揮することができず,一方的なリーダーになったり,疎外感を感じる人が出てきたりして活動への積極

性が薄くなることもある。

上記のような内容を300字から400字程度でまとめればよく,その意味では論じやすい出題だと

思う。なお,「メタ認知」や「メタ言語」といった語彙によって得点が増加する問題だとは考えにくい。

また,原稿用紙の用法は問われないので,解答例も1,2と先頭マスを「空ける,空けない」で表示し

ている。